2014.5.3(土)
み「金木の町長が、東京出張からの帰りに、上野で『芦野公園駅』の切符を注文した」
↑芦野公園旧駅舎。開業の昭和5年から昭和51年まで使われました。
み「しかし、駅員に、そんな駅はないと言われたわけ。
ま、国鉄の駅じゃないんだから無理ないんだけどね。
今と違って、検索システムがあるわけじゃないし。
でも、金木の町長は納得しなかったわけ。
津軽鉄道の『芦野公園』を知らんかと怒って、駅員に30分も調べさせ……。
とうとう『芦野公園駅』行きの切符をせしめたそうよ」
律「後ろに並んでる人は、大迷惑だわ」
み「町長なんかになる人は、人の迷惑なんて忖度しないのです。
ま、町長が怒るのも無理ないほど、ここらでは有名なサクラの名所なんだよね」
小「サクラは、2,200本あると聞きました」
↑ポスターにもなりました。
み「ほー。
そりゃ大したもんだ」
↑ホームには、吉永小百合さんの立ち位置が。同じポーズで記念撮影する方が多いようです。
小「でも、人のほうがずっとたくさんいます」
律「そんなに有名なんだ」
小「このあたりのサクラは、ちょうどゴールデンウィークが見ごろなんです。
で、そのころ、『芦野公園』では“桜まつり”が開かれます」
み「ゴールデンウィークじゃ、賑わうわな」
小「津軽鉄道の列車は、その桜のトンネルを走り抜けます」
み「にゃるほど。
坂口安吾の『桜の森の満開の下』みたいな、静謐なサクラの風景は……。
もう、日本では望むべくもないということか」
小「お化け屋敷とかの屋台も並びますし……」
小「花火大会も開かれます」
み「ま、やっと来た春じゃもの。
浮かれたくもなるわな。
花見も盛大なんだろうな」
小「大賑わいです。
『津軽鉄道サポーターズクラブ』では……。
『幻の観桜会』を開催してます」
律「何それ?」
小「昭和30年台の花見を再現したイベントです。
参加者は、みんな当時の格好をして、重箱に入った料理を持参するというのが条件なんです」
小「つまり、コスプレ花見大会ですね」
み「そこまでするか」
小「『芦野公園駅』に向かう車中は、怪しい雰囲気ですよ」
み「そこでだ!
津軽のゴールデンウィークなんて、まだまだ寒いんだよ。
つまり、その桜まつりの時期に、ストーブ列車が復活するのじゃ!」
み「どうだ。
大当たりじゃろ。
その首に下げたる一眼レフ、こちらによこせ」
小「ハズレです」
み「ウソこけ。
その時期を過ぎたら、ストーブなんて秋まで要らないだろ」
小「だから、その要らない時期に、無理やり走らせるんですよ」
み「いつ?」
小「じゃ、クイズは降参でいいんですね?」
み「そんなにポケットティシュが欲しいか?
ひょっとして、うんち?」
小「違います。
ポケットティシュは要りませんから、答えを言います」
み「1枚だけやるわい」
↑これはイケてるデザインですね。
小「要りませんって。
ストーブ列車が走るのは……。
『立佞武多』のときです」
み「待たんかい。
『立佞武多』って、真夏だろ?」
小「8月の4日から8日までです」
律「そんな時期に、ストーブなんか焚くの?」
小「車内は50℃越えるそうです(参照)」
み「うーん。
これは、大したもんだ。
やるじゃないって感じだね。
乗るのはごめんこうむるが」
律「お化粧がみんな落ちて、誰だかわからなくなるわね」
↑『真夏のストーブ列車』、車中想像図。
み「やっぱり、夏と冬は避けて、いい季節に来たいものじゃ」
律「お花見は?」
み「混むからダメ。
たぶん、まだ寒いし」
律「単なるわがままじゃないの」
小「津軽鉄道には、あと2つ、イベント列車があります」
み「まだあるの?
イベントだらけじゃないか」
小「ひとつは、風鈴列車です」
み「わかった!
みなまで言うな。
それは、列車の中に、風鈴が吊るされるわけだな」
小「そうです」
律「誰でもそう思うわ」
み「いや。
風鈴の形をした列車が走るかも知れないではないか」
↑猫の形をしたバスはありますが(蚊取り線香入れ)。
小「そんな車両を作る予算は無いと思います」
み「『サポーターズクラブ』で出せ」
小「無理です」
み「しかし……。
風鈴とは、安あがりすぎじゃないの。
これも、もちろん夏限定だろ」
小「7月と8月です」
み「暑いではないか」
小「風鈴を聞いて、涼んでください」
み「ま、吊るした人にはいい音色かも知れないけど……。
隣の家の風鈴は、騒音でしかないからね」
↑吊るした家では、この音に迷惑してる人がいるとは思ってないんでしょうね。
律「いったい何個吊るすの?」
小「1両に6個だったと思います」
み「やかますい」
小「今は、金山焼の特注風鈴ですから……。
そんなにうるさくありません」
み「“かなやまやき”って、なんじゃい?」
小「地元の焼き物です」
↑工房前にある謎の置物。いったいこれはなんじゃい?
小「鉄やガラスの風鈴と違って、コロコロと鳴ります」
通販ページは、こちら。
残念ながら、風鈴は市販して無いようです。
み「ほー。
それは、聞いてみたい気がする。
“今は”ってことは、その前はどんな風鈴だったわけ?」
小「南部風鈴ですね。
鉄の」
小「平成18年から、金山焼のに代わりました」
律「でも、吊るすのは車内なんでしょ?」
小「そうです」
律「それなら、どうして風鈴が鳴るの?」
み「窓を開けるに決まってるでしょ」
律「あら。
列車の窓って、開かないんじゃないの?」
み「それは、特急とかの話でしょ。
↑なんと、JR九州の特急『はやとの風』は、窓が開きます。
み「ほら、この窓だって開くだろ。
あれ?
開かないの?」
小「この車両は開きません」
↑『走れメロス号』は、風情より、快適性、安全性を重視してる模様。
律「どれじゃ、どうやって風鈴が鳴るのかしら?」
み「扇風機、回すんじゃない?」
律「扇風機を持ちこむの?
電車じゃないんだから、コンセントが無いでしょ」
み「扇風機は天井に付いてるの」
↑千葉の小湊鉄道では、現役車両に付いてるようです。
律「付いてないじゃない」
み「今は秋だから、取り外したのかもしれん」
律「だから、電気が無いのに、どうやって回すのよ。
石炭?」
み「石炭で回る扇風機があるか!
ほれ、チミ、回答。
風鈴は、どうやって鳴らすの?」
小「車両の揺れで鳴るんですよ。
風鈴列車を始めた当初は、冷房車両じゃなかったそうです。
で、涼しさを感じてもらおうと、風鈴を吊るしたと聞きました」
み「これは、冷房車両なわけね」
小「もちろんです」
み「で、吹きこむ風じゃなくて、揺れで鳴ると。
ふーむ。
イマイチ、じゃのう。
youtubeで、音だけ聞くか」
↑やっぱり、揺れだけじゃ、イマイチでないの? ま、盛大に鳴るようなら、座ってられんでしょうけど。
律「風情のない人ね」
小「それじゃ、残るは一つ。
秋の鈴虫列車です」
↑ゴキブリではありません。
み「これまた、音系だな。
でも、本物の鈴虫か?
江戸家猫八が乗ってるんじゃないの?」
律「そっちの方が、高くつくでしょ」
小「もちろん、本物です。
もともと、駅員さんが駅で、鈴虫を飼育してたんですが……。
それを列車に乗せたのが始まりだそうです」
小「一両の前後に、鈴虫を入れた箱がひとつずつ置かれてます」
み「真ん中あたりの人は、聞こえるの?」
小「スゴい音量ですよ。
最初は、スピーカーがあるのかと思いました」
み「今でも、駅で育ててるわけ?」
小「そうです。
一匹が鳴くのは1週間くらいなので、次々と代わりが必要なんです」
み「鈴虫飼育のプロになってるんじゃないか?」
小「かもしれませんね。
昼間だから、まだ鳴いてないけど……。
発車したら、鳴き出すんじゃないかな」
み「え?
てことは、これ、鈴虫列車?」
小「そうです。
ほら、あそこに箱があるでしょ」
み「おー」
小「9月1日から10月の中旬くらいまで運行されます」
み「ギリギリだったな。
ぜひ聞きたいものじゃ。
早く鳴かせてくれ」
↑真っ昼間は、あんまり鳴かないそうです。
律「鳴くまで待ちなさい」
み「家康は好かん。
だけど……。
鈴虫の音色を聞くと、地元の人は気が重くなるんじゃないの?」
小「どうしてです?」
み「これからまた、長い冬がやって来ると思うからよ。
ま、この感覚は、太平洋側の人にはわからんわな。
東京に住んでたとき……。
わたしは、ほんとに秋が好きだった。
だんだん空気が澄んでくるし……」
み「街路樹が色づくのも綺麗だし」
↑神宮外苑
律「日本海側だって同じでしょ」
み「同じだけど、気分が違うんだよ。
東京だと……。
秋の次には、大好きな冬が来る」
律「どうして冬が好きなの?」
み「毎日晴れてるから」
み「東京育ちの人には、この気分はわからないよ。
ヨーロッパから来た外人さんも、東京の冬には感激するみたい」
律「イギリスとか、暗そうよね」
み「シャーロック・ホームズを読んでても、毎日どんよりって感じでしょ」
律「でも東京だって、冬は寒いじゃないの」
み「寒いくらいなんです。
澄んだ青空があれば、何もいりません。
それに対し!
新潟の秋は……。
これから暗く長い冬を迎えると思うと、気持ちが沈むわけよ。
空気が澄むのを感じても、街路樹が色づくのを見ても……。
すべてが、冬の前兆に思えるわけ」
↑新潟市西蒲区夏井の“はさ木”(昔は、刈り取った稲を、“はさ木”に渡した竹に掛けて干しました)。
律「新潟の人は、スキーとか楽しみがあるんじゃない?」
み「新潟県人が、全員スキーが出来ると思ってない?」
律「あんたは出来なさそうね。
見るからにドン臭そうだから」
み「ばきゃもん。
ドン臭く無くても、スキーが出来ない新潟人はたくさんいるのじゃ」
律「どうして?
雪が降るでしょうに」
み「あのね。
新潟市は、新潟平野にあるわけ。
特に、わたしの住んでるあたりは亀田郷と云って、昔は低湿地だったわけ」
み「それが、戦争中の食糧増産計画のおかげで、巨大な排水機が設置されることになった。
わかるか、チミ?」
小「湿地の水を、排水機で抜いたわけですね」
み「エラい!
さすが、東大を目指すだけある。
この先生より、遥かに物分かりがいい」
律「そのくらい、わたしもわかるわよ。
でも、それとスキーがどう関係してるのよ?」
み「湿地の水を抜くことによって、広大な穀倉地帯が出来たわけだ」
み「で、元低湿地帯ということは……。
土地が真っ平ということなの。
すなわち!
いくら雪が降っても、真っ平じゃスキーは出来んのです」
↑新潟県西蒲原郡弥彦村(新潟市の隣)あたり。雪の下は田んぼです。
律「あら。
距離スキーなら、平らでも出来るでしょ」
↑地味すぎる!
み「そんなことして、何が楽しい?
距離スキーで遊んでる子供なんて、おるかい」
律「じゃ、いくら雪が積もっても、何の役にも立たないってこと?」
み「そのとおり。
憂鬱なだけ。
ホントは、これからの時期、10月の半ばくらいが……。
一番、気候的にいいんだよ」
↑10月の新潟市。
律「春は?
5月とか、爽やかじゃない?」
み「そのころって、暑かったり、急に寒くなったりするでしょ。
やっと過ごしやすくなったと思うと、すぐ梅雨入りしちゃう」
み「それに対し、10月は、お天気もいいし、気温も安定してる。
だけど!
気分は、空のようには晴れないわけ。
なぜなら、暗く長い冬が、もう間近に迫ってると思うから」
↑冬の新潟市。毎日こんな天気です。
律「ふーん。
そんなものなの」
み「東京にいたときは、秋が深まっていくにつれて……。
わくわくして来た。
で、ある日。
朝、外に出ると、空気の匂いが変わってるの。
冬の匂いになってるのよ」
律「どんな匂いよ?」
み「鼻の奥まで、空気がキーンと入ってくるの。
まさに、冬の匂いよ」
律「そんなの感じたことないわ」
み「風情のない女じゃ。
チミはわかる?」
小「いえ。
ボクもずっと東京ですから」
律「わからないわよね」
み「日本海側に5年くらい住むことを、国民の義務にすべきだな」
律「徴兵制度みたい」
み「ある日突然、赤紙が来るわけだ。
『新潟居住を命ずる』とかね。
チミには、わたしが赤紙を送ってあげる」
↑なんと、昭和20年8月15日に届いた召集令状です。招集日が9月7日ですので、もちろん行かなくて済んだわけですね。
小「ボク、青森がいいな」
み「青森と云っても、太平洋側の八戸とかもあるではないか。
毎日晴れるだろうけど、恐ろしく寒いぞ」
↑これは明らかに、入力ミスでしょう。
小「五所川原でいいです」
み「こんなとこ、何にも無いじゃない」
律「聞こえるわよ」
み「津軽平野で平らだから、スキーも出来ないでしょ」
小「去年、『地吹雪体験ツアー』ってのに参加しました」
小「面白かったですよ」
み「なるほど。
『地吹雪体験ツアー』をやってるのは、このあたりだったのか」
小「旧金木町です」
み「確かに、地吹雪はありそうだ。
真っ平だもんね」
↑自動車のフロントガラスから撮った景色。マジでパニクります。
小「ハワイや台湾からも、観光客が来てました」
み「へー。
国際的に有名だったのか」
小「衣装も人気なんだそうです」
律「コスプレでもするの?」
小「昔の格好です。
モンペを穿いて……。
角巻(かくまき)という毛布みたいなのを羽織ります。
足元は、カンジキです」
み「にゃるほど。
それは考えたな。
スノーシューじゃ、海外までは評判にはならなかったろうね」
小「地吹雪体験の後は、馬橇体験も出来ますよ」
↑下痢腹馬にうんこされると、顔にかかるんじゃないでしょうか?
小「体験の最後は、津軽の郷土料理。
『鱈のじゃっぱ汁』です」
↑“じゃっぱ”とは、アラのことだそうです。
小「体が温まって、すごく美味しいですよ」
み「チミは東大出たら、五所川原市の観光課に就職しなさい」
小「えー。
津軽鉄道がいいな」
み「そのころはもう、潰れてるよ」
小「潰れませんって。
『サポーターズクラブ』も頑張ってるんですから」
み「潰れる方に、3,000点」
小「じゃ、潰れない方に、10,000点」
み「言っとくけど、1点1,000円のレートだからね。
10,000点なら、1千万だぞ」
小「いいですよ。
潰れなかったら、300万円くれるんですね?」
み「もちろんじゃ。
期限は、今から100年間。
潰れたら、即、1千万払うんだぞ。
100年経っても潰れなかったら、300万あげます」
律「めちゃめちゃ不平等じゃない。
100年後なんて、あんた生きてないでしょ」
み「それは、わかりませんぞ。
長寿の特効薬が開発されるかも知れないじゃない」
律「末端の個人にまでそんな薬が行き渡ったら……。
地球はパンクしちゃうわ」
↑インドの通勤列車
み「火星に植民地が出来るから大丈夫」
み「チミ、携帯の番号教えなさい。
潰れたら、即、連絡するから」
小「いいですよ。
XXX-XXXX-XXXX(個人情報のため、番号は伏せさせていただきます)」
律「こんな人に、教えちゃ危ないわよ」
小「大丈夫です。
潰れたら、番号変えますから」
み「悪党!」
↑『ぐれダルマ』だそうです。
律「どっちが」
小「あ、発車です」
み「朝からずーっとディーゼル車だから、慣れちゃったけど……。
やっぱり電車とは、出だしの感じが違うよね」
↑『芦野公園駅』を出発する『走れメロス号』。花見時は、3両編成のようです。
律「そう?
別に感じないけど」
み「あんたは鈍感なだけ」
律「失礼ね」
み「おー、これくらい揺れれば、風鈴も鳴るわな。
でも、やっぱり、窓開けて風で鳴らしてほしいよな。
最近の客車って、どうして窓が開かないのかな?」
小「冷房の効率を上げるためじゃないですか?」
み「冷房するときは、窓を閉めればいいだけでしょ」
小「途中から暑くなって、冷房を入れようとしたとき……。
開いてる窓を、ぜんぶ閉めなきゃなりませんよ」
み「車掌が閉めてまわればいいだろ」
小「車掌さんはいません。
アテンダントさんなら乗ってますけど」
↑美人度高し!
み「じゃ、アテンダントが閉めればいいんじゃないの。
1両しか無いんだから、大した手間じゃないでしょ」
小「たしかに、津軽鉄道はそうでしょうけど……。
ほかの鉄道には、アテンダントさんなんか乗ってないですよ。
何両も連結したワンマンカーなんかもありますから……」
↑JR東日本『弥彦線』のワンマン列車。運賃箱がありますね。乗ったことが無いので、システムはわかりません。
小「運転中に窓を閉めて回るなんて、無理ですよ」
み「車内放送して、お客さんに閉めてもらえば」
小「お客さんが寝てたりすれば、開けっ放しのままです」
↑この状態で落ちないというのがスゴい。ていうか、隣に平気で座ってるお姉さんもスゴい。
律「運転席のスイッチで、自動的に閉まるようにすればいいのに」
↑新幹線『N700系』の運転席。タッチパネルになってるようで、スイッチ類はほとんどありません。
み「そんな装置付けたら、製造費が跳ね上がるだろ。
あ、それだ!
わかったぞ。
最近の列車に、窓が無いわけ」
律「どういうこと?」
み「列車の窓って、上下2枚を組み合わせてるよね」
小「たいていそうですね」
み「でもって、両脇に洗濯バサミみたいな持ち手が付いてる」
み「それを摘んで、窓を上下させるわけだ」
小「けっこう重いんですよね」
み「小学生には、一仕事だわな。
自分で開け閉め出来ると、誇らしい気分になったりするわけだ」
小「はい」
み「で、あの窓の構造だが……。
ガラスが2枚ある。
そのガラスの四方には、金属の枠が嵌ってる。
しかも、ガラスの入った枠が上下にスライドする構造にしなければならない。
さらに、枠を好きな位置で止める構造も加えなければならない」
↑特急『踊り子号』。なんと、窓が開きます。
律「当たり前じゃないの。
ねぇ」
小「はい」
み「わからんかね。
めちゃめちゃ、構造が複雑だろ」
↑ほんとにこんなに複雑なの? 出典はこちら。
み「開かなくていい窓なら……。
ガラスを1枚、嵌め殺してしまえばいいだけじゃない」
み「窓ってのは、車両の両側にびっしり付いてんだよ。
どんだけ製造費が違うか。
構造が複雑なら、メンテナンスの手間や費用も発生する。
わかったかね?
この『走れメロス号』の窓が開かなわけ。
決して、特急車両のように豪華だからじゃないの。
車両の製造費が安く、しかも、メンテナンスも少なくてすむから。
まさしく、津軽鉄道には、こういう車両が必要なわけよ」
小「へー。
そんな考え方も出来るんですね」
み「大人になると、どんどん世の中の仕組みがわかってくるよ」
小「面白いです」
み「ま、わからなくていいことまでも、わかるようになるけどね。
それが、人の成長というものです」
律「あ、鳴いた」
み「何が?」
律「鈴虫よ。
ほら」
↑最後の方に鳴きます。
み「おー、ホントだ」
小「不思議ですね。
虫があんなきれいな音を出すなんて」
↑翅を擦り合わせて鳴く様子がわかります。
み「命がけで鳴いとるわけよ」
律「メスを呼んでるんじゃないの?」
み「音を出すということは……。
外敵にも、自分の位置を知らせるということ。
メスより先にトカゲが来たら、一巻の終わりです」
↑エリマキトカゲが来るとは思えませんが。でも、なぜ口を開いて走るんですかね?
小「あの箱なら、トカゲは来ませんから」
み「その代わり、メスも来んではないか。
鳴く意味がないわい」
律「どうも、あんたの話には風情が無いわね」
み「わたしの頭は、基本的に理系なんだな」
↑謎の人です。
み「理系科目が、極度に出来なかっただけで」
律「それじゃ、理系じゃ無いじゃないの」
み「わたしは、研究室とかに勤めてたら……。
何の文句も言わず、一生地道に働き続けたかも」
↑こんなコラにされてます。
律「だから、そういうところには入社出来ないでしょ。
化学0点じゃ」
↑魚の絵が褒められてました。原寸大でどうぞ。
み「化学じゃないわい。
0点取ったのは、物理です」
律「似たようなもんです。
ボク、この人に近づいちゃダメよ。
バカが伝染るから」
小「わかりました」
み「即答すな!」
律「あ、鉄橋。
でも、さっきのより、ずいぶん短いわね」
↑前面展望【津軽五所川原→十川】。1:40ころ、鉄橋を渡ります。
み「さっきは、岩木川だったろ。
チミ、これは何川?」
小「旧十川(きゅうとがわ)です。
金木のあたりで、岩木川に合流します」
旧十川(きゅうとがわ)とあるからには……。
現在、十川は、新しい経路に変わってるのでしょう。
このあたり、調べたら面白いのでしょうが……。
上っ面のネット検索では、引っかかりませんでした。
残念ながら、スルーさせていただきます。
み「あ、駅だ」
小「『十川(とがわ)駅』です」
↑なんでこんなトンガリコーンを付けたんでしょう? “はなわ”のようです。
律「もう着いたの?
さっき発車したばっかりじゃない」
小「『十川』までは、1.3キロしかありませんから。
2分で到着です」
み「歩いても15分だな」
律「この辺までは、まだ宅地とか工場があるわね」
小「もう少しすると、水田が広がりますよ」
み「ほうか」
小「お姉さんたちは、どこまで行くんですか?」
律「そうだ。
それ、教えられて無かったんだっけ。
どこよ?」
み「ま、今さら隠しても仕方ないか。
『金木』だよ」
小「なんだ。
そんなに早く降りちゃうんですか。
もったいないですね」
み「チミと違って、用もないのに終点まで行く趣味は無いの。
でも、津軽まで来たら……。
やっぱり、斜陽館だけは押えておかないとな」
律「太宰治ね」
↑津軽三味線会館には、なんと、太宰の“ねぷた”がありました。
み「大好きってわけじゃないんだけどね。
やはり、気になる作家です」
↑桜桃忌(6月19日)の禅林寺(三鷹市)。今もこのにぎわいです。
律「『金木』までって、あとどれくらい?」
小「もう、20分もありませんよ(18分くらい)」
律「なんだ、近いのね。
それでいくらだっけ?」
み「530円」
律「高いんじゃない?」
み「ま、高いわな。
バス並みだ」
小「仕方ありませんよ。
お客さんが少ないんですから」
↑ジモティーは1人もいないようです。
み「行って帰って、1,060円だぜ」
小「あ、そうだ。
もし、この近辺を楽しむつもりなら……。
いい切符があるんですよ。
その名も、『津軽フリーパス』」
小「2日間、フリーエリアの列車とバスが乗り放題なんです。
それで、2,000円ですよ(現在は、2,060円)。
ボクは子供料金ですから、1,000円です(同じく、1,030円)」
み「フリーエリアって、どういう範囲?」
小「JR奥羽本線では、『青森』から『碇ヶ関』まで。
JR五能線だと、『川部』から『五所川原』までです」
み「“いかりがせき”ってどこじゃい?」
小「『青森』からだと、『弘前』を過ぎて、『大鰐温泉』も過ぎて……。
もう、秋田県境に近いあたりです」
み「なるほど。
『青森』と『弘前』がエリアに入ってれば、そこそこ使えそうだな。
津軽鉄道も入ってるの?」
小「もちろんです」
み「じゃ、今、その切符で乗ってるわけ?」
小「いえ、違います」
み「なんでじゃ?」
小「フリーパスで乗れるのは、『金木』までですから」
み「なんじゃと!
全線乗っても、たった20キロしかないのに、何でそんなとこでちょん切るわけ?」
律「この子に怒ってどうすんのよ。
『金木』までで十分でしょ」
み「わかった。
この路線が一番賑わうのは……。
芦野公園の花見だ」
み「その稼ぎどきにフリーパスなんか使われたら損だから……。
エリアを、『芦野公園駅』のひとつ手前までにしたんだ。
姑息!
成敗いたす」
律「誰をよ?」
み「チミじゃ」
小「なんでですか」
み「『サポーターズクラブ』に入ってるじゃないか。
連帯責任です」
↑磔台の女性は、妙に萌えます
小「そんなぁ」
↑芦野公園旧駅舎。開業の昭和5年から昭和51年まで使われました。
み「しかし、駅員に、そんな駅はないと言われたわけ。
ま、国鉄の駅じゃないんだから無理ないんだけどね。
今と違って、検索システムがあるわけじゃないし。
でも、金木の町長は納得しなかったわけ。
津軽鉄道の『芦野公園』を知らんかと怒って、駅員に30分も調べさせ……。
とうとう『芦野公園駅』行きの切符をせしめたそうよ」
律「後ろに並んでる人は、大迷惑だわ」
み「町長なんかになる人は、人の迷惑なんて忖度しないのです。
ま、町長が怒るのも無理ないほど、ここらでは有名なサクラの名所なんだよね」
小「サクラは、2,200本あると聞きました」
↑ポスターにもなりました。
み「ほー。
そりゃ大したもんだ」
↑ホームには、吉永小百合さんの立ち位置が。同じポーズで記念撮影する方が多いようです。
小「でも、人のほうがずっとたくさんいます」
律「そんなに有名なんだ」
小「このあたりのサクラは、ちょうどゴールデンウィークが見ごろなんです。
で、そのころ、『芦野公園』では“桜まつり”が開かれます」
み「ゴールデンウィークじゃ、賑わうわな」
小「津軽鉄道の列車は、その桜のトンネルを走り抜けます」
み「にゃるほど。
坂口安吾の『桜の森の満開の下』みたいな、静謐なサクラの風景は……。
もう、日本では望むべくもないということか」
小「お化け屋敷とかの屋台も並びますし……」
小「花火大会も開かれます」
み「ま、やっと来た春じゃもの。
浮かれたくもなるわな。
花見も盛大なんだろうな」
小「大賑わいです。
『津軽鉄道サポーターズクラブ』では……。
『幻の観桜会』を開催してます」
律「何それ?」
小「昭和30年台の花見を再現したイベントです。
参加者は、みんな当時の格好をして、重箱に入った料理を持参するというのが条件なんです」
小「つまり、コスプレ花見大会ですね」
み「そこまでするか」
小「『芦野公園駅』に向かう車中は、怪しい雰囲気ですよ」
み「そこでだ!
津軽のゴールデンウィークなんて、まだまだ寒いんだよ。
つまり、その桜まつりの時期に、ストーブ列車が復活するのじゃ!」
み「どうだ。
大当たりじゃろ。
その首に下げたる一眼レフ、こちらによこせ」
小「ハズレです」
み「ウソこけ。
その時期を過ぎたら、ストーブなんて秋まで要らないだろ」
小「だから、その要らない時期に、無理やり走らせるんですよ」
み「いつ?」
小「じゃ、クイズは降参でいいんですね?」
み「そんなにポケットティシュが欲しいか?
ひょっとして、うんち?」
小「違います。
ポケットティシュは要りませんから、答えを言います」
み「1枚だけやるわい」
↑これはイケてるデザインですね。
小「要りませんって。
ストーブ列車が走るのは……。
『立佞武多』のときです」
み「待たんかい。
『立佞武多』って、真夏だろ?」
小「8月の4日から8日までです」
律「そんな時期に、ストーブなんか焚くの?」
小「車内は50℃越えるそうです(参照)」
み「うーん。
これは、大したもんだ。
やるじゃないって感じだね。
乗るのはごめんこうむるが」
律「お化粧がみんな落ちて、誰だかわからなくなるわね」
↑『真夏のストーブ列車』、車中想像図。
み「やっぱり、夏と冬は避けて、いい季節に来たいものじゃ」
律「お花見は?」
み「混むからダメ。
たぶん、まだ寒いし」
律「単なるわがままじゃないの」
小「津軽鉄道には、あと2つ、イベント列車があります」
み「まだあるの?
イベントだらけじゃないか」
小「ひとつは、風鈴列車です」
み「わかった!
みなまで言うな。
それは、列車の中に、風鈴が吊るされるわけだな」
小「そうです」
律「誰でもそう思うわ」
み「いや。
風鈴の形をした列車が走るかも知れないではないか」
↑猫の形をしたバスはありますが(蚊取り線香入れ)。
小「そんな車両を作る予算は無いと思います」
み「『サポーターズクラブ』で出せ」
小「無理です」
み「しかし……。
風鈴とは、安あがりすぎじゃないの。
これも、もちろん夏限定だろ」
小「7月と8月です」
み「暑いではないか」
小「風鈴を聞いて、涼んでください」
み「ま、吊るした人にはいい音色かも知れないけど……。
隣の家の風鈴は、騒音でしかないからね」
↑吊るした家では、この音に迷惑してる人がいるとは思ってないんでしょうね。
律「いったい何個吊るすの?」
小「1両に6個だったと思います」
み「やかますい」
小「今は、金山焼の特注風鈴ですから……。
そんなにうるさくありません」
み「“かなやまやき”って、なんじゃい?」
小「地元の焼き物です」
↑工房前にある謎の置物。いったいこれはなんじゃい?
小「鉄やガラスの風鈴と違って、コロコロと鳴ります」
通販ページは、こちら。
残念ながら、風鈴は市販して無いようです。
み「ほー。
それは、聞いてみたい気がする。
“今は”ってことは、その前はどんな風鈴だったわけ?」
小「南部風鈴ですね。
鉄の」
小「平成18年から、金山焼のに代わりました」
律「でも、吊るすのは車内なんでしょ?」
小「そうです」
律「それなら、どうして風鈴が鳴るの?」
み「窓を開けるに決まってるでしょ」
律「あら。
列車の窓って、開かないんじゃないの?」
み「それは、特急とかの話でしょ。
↑なんと、JR九州の特急『はやとの風』は、窓が開きます。
み「ほら、この窓だって開くだろ。
あれ?
開かないの?」
小「この車両は開きません」
↑『走れメロス号』は、風情より、快適性、安全性を重視してる模様。
律「どれじゃ、どうやって風鈴が鳴るのかしら?」
み「扇風機、回すんじゃない?」
律「扇風機を持ちこむの?
電車じゃないんだから、コンセントが無いでしょ」
み「扇風機は天井に付いてるの」
↑千葉の小湊鉄道では、現役車両に付いてるようです。
律「付いてないじゃない」
み「今は秋だから、取り外したのかもしれん」
律「だから、電気が無いのに、どうやって回すのよ。
石炭?」
み「石炭で回る扇風機があるか!
ほれ、チミ、回答。
風鈴は、どうやって鳴らすの?」
小「車両の揺れで鳴るんですよ。
風鈴列車を始めた当初は、冷房車両じゃなかったそうです。
で、涼しさを感じてもらおうと、風鈴を吊るしたと聞きました」
み「これは、冷房車両なわけね」
小「もちろんです」
み「で、吹きこむ風じゃなくて、揺れで鳴ると。
ふーむ。
イマイチ、じゃのう。
youtubeで、音だけ聞くか」
↑やっぱり、揺れだけじゃ、イマイチでないの? ま、盛大に鳴るようなら、座ってられんでしょうけど。
律「風情のない人ね」
小「それじゃ、残るは一つ。
秋の鈴虫列車です」
↑ゴキブリではありません。
み「これまた、音系だな。
でも、本物の鈴虫か?
江戸家猫八が乗ってるんじゃないの?」
律「そっちの方が、高くつくでしょ」
小「もちろん、本物です。
もともと、駅員さんが駅で、鈴虫を飼育してたんですが……。
それを列車に乗せたのが始まりだそうです」
小「一両の前後に、鈴虫を入れた箱がひとつずつ置かれてます」
み「真ん中あたりの人は、聞こえるの?」
小「スゴい音量ですよ。
最初は、スピーカーがあるのかと思いました」
み「今でも、駅で育ててるわけ?」
小「そうです。
一匹が鳴くのは1週間くらいなので、次々と代わりが必要なんです」
み「鈴虫飼育のプロになってるんじゃないか?」
小「かもしれませんね。
昼間だから、まだ鳴いてないけど……。
発車したら、鳴き出すんじゃないかな」
み「え?
てことは、これ、鈴虫列車?」
小「そうです。
ほら、あそこに箱があるでしょ」
み「おー」
小「9月1日から10月の中旬くらいまで運行されます」
み「ギリギリだったな。
ぜひ聞きたいものじゃ。
早く鳴かせてくれ」
↑真っ昼間は、あんまり鳴かないそうです。
律「鳴くまで待ちなさい」
み「家康は好かん。
だけど……。
鈴虫の音色を聞くと、地元の人は気が重くなるんじゃないの?」
小「どうしてです?」
み「これからまた、長い冬がやって来ると思うからよ。
ま、この感覚は、太平洋側の人にはわからんわな。
東京に住んでたとき……。
わたしは、ほんとに秋が好きだった。
だんだん空気が澄んでくるし……」
み「街路樹が色づくのも綺麗だし」
↑神宮外苑
律「日本海側だって同じでしょ」
み「同じだけど、気分が違うんだよ。
東京だと……。
秋の次には、大好きな冬が来る」
律「どうして冬が好きなの?」
み「毎日晴れてるから」
み「東京育ちの人には、この気分はわからないよ。
ヨーロッパから来た外人さんも、東京の冬には感激するみたい」
律「イギリスとか、暗そうよね」
み「シャーロック・ホームズを読んでても、毎日どんよりって感じでしょ」
律「でも東京だって、冬は寒いじゃないの」
み「寒いくらいなんです。
澄んだ青空があれば、何もいりません。
それに対し!
新潟の秋は……。
これから暗く長い冬を迎えると思うと、気持ちが沈むわけよ。
空気が澄むのを感じても、街路樹が色づくのを見ても……。
すべてが、冬の前兆に思えるわけ」
↑新潟市西蒲区夏井の“はさ木”(昔は、刈り取った稲を、“はさ木”に渡した竹に掛けて干しました)。
律「新潟の人は、スキーとか楽しみがあるんじゃない?」
み「新潟県人が、全員スキーが出来ると思ってない?」
律「あんたは出来なさそうね。
見るからにドン臭そうだから」
み「ばきゃもん。
ドン臭く無くても、スキーが出来ない新潟人はたくさんいるのじゃ」
律「どうして?
雪が降るでしょうに」
み「あのね。
新潟市は、新潟平野にあるわけ。
特に、わたしの住んでるあたりは亀田郷と云って、昔は低湿地だったわけ」
み「それが、戦争中の食糧増産計画のおかげで、巨大な排水機が設置されることになった。
わかるか、チミ?」
小「湿地の水を、排水機で抜いたわけですね」
み「エラい!
さすが、東大を目指すだけある。
この先生より、遥かに物分かりがいい」
律「そのくらい、わたしもわかるわよ。
でも、それとスキーがどう関係してるのよ?」
み「湿地の水を抜くことによって、広大な穀倉地帯が出来たわけだ」
み「で、元低湿地帯ということは……。
土地が真っ平ということなの。
すなわち!
いくら雪が降っても、真っ平じゃスキーは出来んのです」
↑新潟県西蒲原郡弥彦村(新潟市の隣)あたり。雪の下は田んぼです。
律「あら。
距離スキーなら、平らでも出来るでしょ」
↑地味すぎる!
み「そんなことして、何が楽しい?
距離スキーで遊んでる子供なんて、おるかい」
律「じゃ、いくら雪が積もっても、何の役にも立たないってこと?」
み「そのとおり。
憂鬱なだけ。
ホントは、これからの時期、10月の半ばくらいが……。
一番、気候的にいいんだよ」
↑10月の新潟市。
律「春は?
5月とか、爽やかじゃない?」
み「そのころって、暑かったり、急に寒くなったりするでしょ。
やっと過ごしやすくなったと思うと、すぐ梅雨入りしちゃう」
み「それに対し、10月は、お天気もいいし、気温も安定してる。
だけど!
気分は、空のようには晴れないわけ。
なぜなら、暗く長い冬が、もう間近に迫ってると思うから」
↑冬の新潟市。毎日こんな天気です。
律「ふーん。
そんなものなの」
み「東京にいたときは、秋が深まっていくにつれて……。
わくわくして来た。
で、ある日。
朝、外に出ると、空気の匂いが変わってるの。
冬の匂いになってるのよ」
律「どんな匂いよ?」
み「鼻の奥まで、空気がキーンと入ってくるの。
まさに、冬の匂いよ」
律「そんなの感じたことないわ」
み「風情のない女じゃ。
チミはわかる?」
小「いえ。
ボクもずっと東京ですから」
律「わからないわよね」
み「日本海側に5年くらい住むことを、国民の義務にすべきだな」
律「徴兵制度みたい」
み「ある日突然、赤紙が来るわけだ。
『新潟居住を命ずる』とかね。
チミには、わたしが赤紙を送ってあげる」
↑なんと、昭和20年8月15日に届いた召集令状です。招集日が9月7日ですので、もちろん行かなくて済んだわけですね。
小「ボク、青森がいいな」
み「青森と云っても、太平洋側の八戸とかもあるではないか。
毎日晴れるだろうけど、恐ろしく寒いぞ」
↑これは明らかに、入力ミスでしょう。
小「五所川原でいいです」
み「こんなとこ、何にも無いじゃない」
律「聞こえるわよ」
み「津軽平野で平らだから、スキーも出来ないでしょ」
小「去年、『地吹雪体験ツアー』ってのに参加しました」
小「面白かったですよ」
み「なるほど。
『地吹雪体験ツアー』をやってるのは、このあたりだったのか」
小「旧金木町です」
み「確かに、地吹雪はありそうだ。
真っ平だもんね」
↑自動車のフロントガラスから撮った景色。マジでパニクります。
小「ハワイや台湾からも、観光客が来てました」
み「へー。
国際的に有名だったのか」
小「衣装も人気なんだそうです」
律「コスプレでもするの?」
小「昔の格好です。
モンペを穿いて……。
角巻(かくまき)という毛布みたいなのを羽織ります。
足元は、カンジキです」
み「にゃるほど。
それは考えたな。
スノーシューじゃ、海外までは評判にはならなかったろうね」
小「地吹雪体験の後は、馬橇体験も出来ますよ」
↑下痢腹馬にうんこされると、顔にかかるんじゃないでしょうか?
小「体験の最後は、津軽の郷土料理。
『鱈のじゃっぱ汁』です」
↑“じゃっぱ”とは、アラのことだそうです。
小「体が温まって、すごく美味しいですよ」
み「チミは東大出たら、五所川原市の観光課に就職しなさい」
小「えー。
津軽鉄道がいいな」
み「そのころはもう、潰れてるよ」
小「潰れませんって。
『サポーターズクラブ』も頑張ってるんですから」
み「潰れる方に、3,000点」
小「じゃ、潰れない方に、10,000点」
み「言っとくけど、1点1,000円のレートだからね。
10,000点なら、1千万だぞ」
小「いいですよ。
潰れなかったら、300万円くれるんですね?」
み「もちろんじゃ。
期限は、今から100年間。
潰れたら、即、1千万払うんだぞ。
100年経っても潰れなかったら、300万あげます」
律「めちゃめちゃ不平等じゃない。
100年後なんて、あんた生きてないでしょ」
み「それは、わかりませんぞ。
長寿の特効薬が開発されるかも知れないじゃない」
律「末端の個人にまでそんな薬が行き渡ったら……。
地球はパンクしちゃうわ」
↑インドの通勤列車
み「火星に植民地が出来るから大丈夫」
み「チミ、携帯の番号教えなさい。
潰れたら、即、連絡するから」
小「いいですよ。
XXX-XXXX-XXXX(個人情報のため、番号は伏せさせていただきます)」
律「こんな人に、教えちゃ危ないわよ」
小「大丈夫です。
潰れたら、番号変えますから」
み「悪党!」
↑『ぐれダルマ』だそうです。
律「どっちが」
小「あ、発車です」
み「朝からずーっとディーゼル車だから、慣れちゃったけど……。
やっぱり電車とは、出だしの感じが違うよね」
↑『芦野公園駅』を出発する『走れメロス号』。花見時は、3両編成のようです。
律「そう?
別に感じないけど」
み「あんたは鈍感なだけ」
律「失礼ね」
み「おー、これくらい揺れれば、風鈴も鳴るわな。
でも、やっぱり、窓開けて風で鳴らしてほしいよな。
最近の客車って、どうして窓が開かないのかな?」
小「冷房の効率を上げるためじゃないですか?」
み「冷房するときは、窓を閉めればいいだけでしょ」
小「途中から暑くなって、冷房を入れようとしたとき……。
開いてる窓を、ぜんぶ閉めなきゃなりませんよ」
み「車掌が閉めてまわればいいだろ」
小「車掌さんはいません。
アテンダントさんなら乗ってますけど」
↑美人度高し!
み「じゃ、アテンダントが閉めればいいんじゃないの。
1両しか無いんだから、大した手間じゃないでしょ」
小「たしかに、津軽鉄道はそうでしょうけど……。
ほかの鉄道には、アテンダントさんなんか乗ってないですよ。
何両も連結したワンマンカーなんかもありますから……」
↑JR東日本『弥彦線』のワンマン列車。運賃箱がありますね。乗ったことが無いので、システムはわかりません。
小「運転中に窓を閉めて回るなんて、無理ですよ」
み「車内放送して、お客さんに閉めてもらえば」
小「お客さんが寝てたりすれば、開けっ放しのままです」
↑この状態で落ちないというのがスゴい。ていうか、隣に平気で座ってるお姉さんもスゴい。
律「運転席のスイッチで、自動的に閉まるようにすればいいのに」
↑新幹線『N700系』の運転席。タッチパネルになってるようで、スイッチ類はほとんどありません。
み「そんな装置付けたら、製造費が跳ね上がるだろ。
あ、それだ!
わかったぞ。
最近の列車に、窓が無いわけ」
律「どういうこと?」
み「列車の窓って、上下2枚を組み合わせてるよね」
小「たいていそうですね」
み「でもって、両脇に洗濯バサミみたいな持ち手が付いてる」
み「それを摘んで、窓を上下させるわけだ」
小「けっこう重いんですよね」
み「小学生には、一仕事だわな。
自分で開け閉め出来ると、誇らしい気分になったりするわけだ」
小「はい」
み「で、あの窓の構造だが……。
ガラスが2枚ある。
そのガラスの四方には、金属の枠が嵌ってる。
しかも、ガラスの入った枠が上下にスライドする構造にしなければならない。
さらに、枠を好きな位置で止める構造も加えなければならない」
↑特急『踊り子号』。なんと、窓が開きます。
律「当たり前じゃないの。
ねぇ」
小「はい」
み「わからんかね。
めちゃめちゃ、構造が複雑だろ」
↑ほんとにこんなに複雑なの? 出典はこちら。
み「開かなくていい窓なら……。
ガラスを1枚、嵌め殺してしまえばいいだけじゃない」
み「窓ってのは、車両の両側にびっしり付いてんだよ。
どんだけ製造費が違うか。
構造が複雑なら、メンテナンスの手間や費用も発生する。
わかったかね?
この『走れメロス号』の窓が開かなわけ。
決して、特急車両のように豪華だからじゃないの。
車両の製造費が安く、しかも、メンテナンスも少なくてすむから。
まさしく、津軽鉄道には、こういう車両が必要なわけよ」
小「へー。
そんな考え方も出来るんですね」
み「大人になると、どんどん世の中の仕組みがわかってくるよ」
小「面白いです」
み「ま、わからなくていいことまでも、わかるようになるけどね。
それが、人の成長というものです」
律「あ、鳴いた」
み「何が?」
律「鈴虫よ。
ほら」
↑最後の方に鳴きます。
み「おー、ホントだ」
小「不思議ですね。
虫があんなきれいな音を出すなんて」
↑翅を擦り合わせて鳴く様子がわかります。
み「命がけで鳴いとるわけよ」
律「メスを呼んでるんじゃないの?」
み「音を出すということは……。
外敵にも、自分の位置を知らせるということ。
メスより先にトカゲが来たら、一巻の終わりです」
↑エリマキトカゲが来るとは思えませんが。でも、なぜ口を開いて走るんですかね?
小「あの箱なら、トカゲは来ませんから」
み「その代わり、メスも来んではないか。
鳴く意味がないわい」
律「どうも、あんたの話には風情が無いわね」
み「わたしの頭は、基本的に理系なんだな」
↑謎の人です。
み「理系科目が、極度に出来なかっただけで」
律「それじゃ、理系じゃ無いじゃないの」
み「わたしは、研究室とかに勤めてたら……。
何の文句も言わず、一生地道に働き続けたかも」
↑こんなコラにされてます。
律「だから、そういうところには入社出来ないでしょ。
化学0点じゃ」
↑魚の絵が褒められてました。原寸大でどうぞ。
み「化学じゃないわい。
0点取ったのは、物理です」
律「似たようなもんです。
ボク、この人に近づいちゃダメよ。
バカが伝染るから」
小「わかりました」
み「即答すな!」
律「あ、鉄橋。
でも、さっきのより、ずいぶん短いわね」
↑前面展望【津軽五所川原→十川】。1:40ころ、鉄橋を渡ります。
み「さっきは、岩木川だったろ。
チミ、これは何川?」
小「旧十川(きゅうとがわ)です。
金木のあたりで、岩木川に合流します」
旧十川(きゅうとがわ)とあるからには……。
現在、十川は、新しい経路に変わってるのでしょう。
このあたり、調べたら面白いのでしょうが……。
上っ面のネット検索では、引っかかりませんでした。
残念ながら、スルーさせていただきます。
み「あ、駅だ」
小「『十川(とがわ)駅』です」
↑なんでこんなトンガリコーンを付けたんでしょう? “はなわ”のようです。
律「もう着いたの?
さっき発車したばっかりじゃない」
小「『十川』までは、1.3キロしかありませんから。
2分で到着です」
み「歩いても15分だな」
律「この辺までは、まだ宅地とか工場があるわね」
小「もう少しすると、水田が広がりますよ」
み「ほうか」
小「お姉さんたちは、どこまで行くんですか?」
律「そうだ。
それ、教えられて無かったんだっけ。
どこよ?」
み「ま、今さら隠しても仕方ないか。
『金木』だよ」
小「なんだ。
そんなに早く降りちゃうんですか。
もったいないですね」
み「チミと違って、用もないのに終点まで行く趣味は無いの。
でも、津軽まで来たら……。
やっぱり、斜陽館だけは押えておかないとな」
律「太宰治ね」
↑津軽三味線会館には、なんと、太宰の“ねぷた”がありました。
み「大好きってわけじゃないんだけどね。
やはり、気になる作家です」
↑桜桃忌(6月19日)の禅林寺(三鷹市)。今もこのにぎわいです。
律「『金木』までって、あとどれくらい?」
小「もう、20分もありませんよ(18分くらい)」
律「なんだ、近いのね。
それでいくらだっけ?」
み「530円」
律「高いんじゃない?」
み「ま、高いわな。
バス並みだ」
小「仕方ありませんよ。
お客さんが少ないんですから」
↑ジモティーは1人もいないようです。
み「行って帰って、1,060円だぜ」
小「あ、そうだ。
もし、この近辺を楽しむつもりなら……。
いい切符があるんですよ。
その名も、『津軽フリーパス』」
小「2日間、フリーエリアの列車とバスが乗り放題なんです。
それで、2,000円ですよ(現在は、2,060円)。
ボクは子供料金ですから、1,000円です(同じく、1,030円)」
み「フリーエリアって、どういう範囲?」
小「JR奥羽本線では、『青森』から『碇ヶ関』まで。
JR五能線だと、『川部』から『五所川原』までです」
み「“いかりがせき”ってどこじゃい?」
小「『青森』からだと、『弘前』を過ぎて、『大鰐温泉』も過ぎて……。
もう、秋田県境に近いあたりです」
み「なるほど。
『青森』と『弘前』がエリアに入ってれば、そこそこ使えそうだな。
津軽鉄道も入ってるの?」
小「もちろんです」
み「じゃ、今、その切符で乗ってるわけ?」
小「いえ、違います」
み「なんでじゃ?」
小「フリーパスで乗れるのは、『金木』までですから」
み「なんじゃと!
全線乗っても、たった20キロしかないのに、何でそんなとこでちょん切るわけ?」
律「この子に怒ってどうすんのよ。
『金木』までで十分でしょ」
み「わかった。
この路線が一番賑わうのは……。
芦野公園の花見だ」
み「その稼ぎどきにフリーパスなんか使われたら損だから……。
エリアを、『芦野公園駅』のひとつ手前までにしたんだ。
姑息!
成敗いたす」
律「誰をよ?」
み「チミじゃ」
小「なんでですか」
み「『サポーターズクラブ』に入ってるじゃないか。
連帯責任です」
↑磔台の女性は、妙に萌えます
小「そんなぁ」