2014.4.12(土)
み「まぁ、いい。
ところでチミ。
わたしはチミの正体を、ひと目で見抜いてしまった。
これからわたしが、その推理を披瀝するので、拝聴するように。
良いか。
嘘をついても、わかるんだからね。
嘘ついたら、地獄で逆さ磔になるのよ」
み「わかる?
じゃ、指切り。
ほれ、小指出して。
何、おずおずしてんのよ」
律「恥ずかしいからに決まってるでしょ。
今どき、人前で指切りする人なんていないわよ」
み「いいの!
ほれ、さっさと出す。
大丈夫よ。
指、折ったりしないから」
律「しかねないわ」
み「やかましい!
ほら、早く出して。
よしよし。
じゃ、♪指きりげんまん、嘘ついたら……」
み「何で一緒に歌わないのよ?」
律「だから、恥ずかしいからに決まってるでしょ」
み「にゃにー。
すでに、無邪気な子供じゃいられないってか?
今から、そんなに屈折してどうする。
ほら、歌え。
♪指きりげんまん、嘘ついたら、ハリセンボン食ーわす」
律「飲ますでしょ」
み「あんたね。
ハリセンボン、知らないの?
フグみたいに膨らんで、針だらけになるのよ」
み「あんなの、飲めるわけないでしょ」
律「ハリセンボンってのは、針を千本ってことでしょ」
み「そんなに飲んだら、死んじゃうじゃないの」
律「だから、それくらい硬い約束ってことなの」
み「嘘ついたくらいで、針を千本も飲まされたらたまらんわな」
律「そんなら、指切りなんかしなきゃいいでしょ」
み「わたしはついてもいいの。
この子がつかないって指切りでしょ」
律「幕末の条約級に不平等だわ」
み「しかし……。
何の指切りだっけ?」
律「呆れた人」
み「はいチミ。
答えて」
小「ボクの正体を推理するとか」
み「そう!
それじゃ!
で、わたしが正解を言うから……。
そのときは、正直に賛辞を送るという指切りだったな。
それでは、推理その1じゃ。
まずチミは、東京から来ている」
律「それ、さっき聞いたじゃない」
み「推理の土台は、明白にわかっている事実。
まずは、その確認をしたまでじゃ。
それでは、推理を始めます。
チミは、小学生である」
律「そんなの、見ればわかるでしょ」
み「コナンは高校生だぞ」
律「漫画と一緒にしないで」
み「チミ、正直に答えなさい。
小学生?」
小「はい」
み「せいかーい。
ドンドンパフパフ」
み「まずは、1万点獲得」
律「得点が高すぎでしょ」
み「続いて、第2問」
律「いつからクイズ番組になったのよ」
み「これまでに確定した事実を確認する。
チミは、東京から来た小学生である。
Am I right?」
小「はい」
み「素直でよろしい」
律「わかった」
み「なにが?」
律「津軽鉄道のこと、調べてないんでしょ。
だから、こんなクイズで行稼ぎしてる」
み「さらに番組は続く」
律「誤魔化すんだから」
み「続けるぞ。
第2の推理。
チミは、男の子である」
律「見りゃわかるでしょ!」
み「今どき、わからないわよ。
女の子の一人旅は危険だから、男の振りしてるとかさ。
江戸時代の旅だって、女が男の格好することなんて、良くあったの」
↑こちら、お江戸ルの“ほーりー”です(勝海舟に扮しました)。
律「今は平成です」
み「どう?
正解よね?
違ってるって言うんなら、証拠を見せてもらうわよ」
律「止めなさいって」
小「男です」
み「ほれ、正解。
10万点獲得ぅぅぅ」
律「高すぎるって言ってるでしょ。
そろそろ読者に怒られるわよ」
み「さよか。
それじゃ、締めましょう。
チミはズバリ、“鉄”だよね」
み「メガネかけて、帽子被って……」
↑鳥取県『由良駅』にあります。駅のある北栄町は、コナンの作者、青山剛昌さんの出身地だそうです。
み「一眼レフ首から下げて、ひとりで津軽鉄道に乗ってる子なんて……」
“鉄”以外の何者でもないわ」
律「それって、推理じゃなくて、偏見じゃないの」
み「どうだ?
キリキリ答えよ」
小「“鉄”って呼び方は好きじゃありませんけど……。
鉄道愛好者であることは確かです」
↑『コナン駅』の愛称がつけられたそうです。コンナンで(失礼)、ファンが来るんでしょうかね?
み「にゃにー。
いっちょまえの口、利きおって。
この口で言うか」
律「止めなさい」
み「痛てっ。
手を叩くこと無いじゃないの」
律「今、この子のほっぺたを捻ろうとしたでしょ」
み「捻るのはダメで、手を叩くのはいいわけ?」
律「ボク、心配しなくていいからね。
こんど、この女がヘンなことしようとしたら……。
麻酔打って眠らせて、窓から捨てちゃうから」
み「やりかねん……」
律「ボク、どこまでいくの?」
小「『津軽中里』です」
律「そう。
どこ、それ?」
み「終点だよ」
律「あ、さっき話が出てたわよね。
ひょっとして、十三湖に行こうとしてる?」
み「そうだよなー。
十三湖のしじみで昼酒、最高だよな」
律「あんたと一緒にしないで。
ボク、十三湖に行くには、『五所川原』からバスの方が便利なのよ」
↑『五所川原ー小泊線(十三経由)系統番号99』。『中の島公園入口』でお降りください。1時間10分!(遠い……)
み「こういうのを、受け売りと云います」
律「黙ってなさい」
小「十三湖には行きません」
律「あらそう。
そしたら、どこに行くわけ?
まさか……。
樺太とか?」
↑渡樺の地『宗谷岬』に立つ間宮林蔵の立像。
み「どうやって行くんじゃ!」
小「どこにも行きません。
『津軽中里』から引き返して……。
また、ここまで戻ってきます」
み「でたー。
やっぱり、筋金入りの“鉄”じゃないの。
今からチミを、“小鉄(こてつ)”と命名する」
小「いいです。
命名なんて」
み「遠慮すな。
しかし……。
電車に乗って帰ってくるだけで、そんなに面白いか?
そもそも、終点まで何分かかるの?」
小「45分です」
み「なんだ、そんなもんか。
でも、往復したら、1時間半だよな。
退屈しない?」
小「行きと帰りで、反対側の窓を見れば、ぜんぜん退屈しません。
景色自体は、そんなに絶景ってわけじゃないですけどね。
ずっと、津軽平野ですから」
↑津軽鉄道の車窓から。ずっとこんな景色が続くんだと思います。
み「そういう慣れた口調で言うということは……。
初めて来たわけじゃないわね」
小「4回目です。
やっぱり、小学生がここまで来るのはタイヘンです。
早く大人になりたいです」
み「大人になったら、大人料金がかかるではないか」
小「でも、会社に勤めて、お給料がもらえるでしょ。
そしたら、毎月来るんだけど」
み「ぱかもん。
新入社員が、青森に毎月来れるほどの給料もらえるかい」
小「入ってすぐは無理でも、頑張って偉くなればいいでしょ」
み「またチミは、世の中舐めてますね。
そんなに簡単に出世でけるか!」
小「大丈夫です。
ボク、東大に入りますから」
み「また……。
言っちゃってくれちゃってるじゃないの。
“とうだい”って、足摺岬にある灯台?」
小「違います。
本郷です」
小「教養課程は、駒場ですけど」
み「先生。
ほっぺたつねってもいい?」
律「よしなさいって。
でも、東大出た人が入るような会社だと……。
お金があっても、お休み取れないかもよ」
小「どうしてですか?
有給休暇は、労働者の権利です」
み「ばっきゃもーん!
そう簡単にはいかんのじゃ。
誰も有給を取らないような会社で……。
自分だけ取るってのは、ものすごく気まずいの。
残業だって、そうよ。
自分の仕事を片付けたから、とっとと帰ると……。
なんで、残ってる人の仕事を手伝わないんだとか言われる」
律「それはちょっと、ヒドいわね」
み「だよねだよね。
結局、仕事を効率化して、早くこなせるようになると……。
ほかの仕事まで押し付けられるってことになるんだよ。
とろとろ仕事して、残業代稼いでるヤツが一杯いる!」
み「ま、旅先で、こういう話は止めよう。
滅入ってくる」
↑『メーデーの歌』。なぜか、運動会でよく聞きました。
律「いつも一人で来てるの?」
小「最初に来たのは、小学校一年生のときでしたけど……。
そのときは、お父さんと一緒でした」
み「当然だわな」
小「でも、翌年からは一人で来てます」
み「げ。
スゴすぎ。
わたしが小学校2年のときなんて……。
バスにも乗れなかったわ」
律「バスが無かったんじゃないの?」
み「あるわい!
新潟をバカにすな」
律「自転車しかないかと思った」
み「自転車に乗れたのは、小学校6年のときじゃ」
↑人生計画では、このくらいの歳で乗るつもりだったのですが……。
律「遅っ!」
み「うちのバアちゃんも乗れなかったし……。
隣のおばさんも乗れなかった。
だから、自分が乗れなくても平気でいたんだけど……。
気づいたら、クラスで自転車乗れないの、わたしくらいだった」
律「当然でしょ。
気づくのが遅すぎよ」
み「でも、乗れたのが遅かったおかげで……。
乗れたときの喜びを、はっきりと記憶してる」
律「そうか。
わたしは忘れちゃったわね。
幼稚園で乗れてたから」
み「ザマミロ。
不思議な感覚だったな。
練習してたのは、廃工場の駐車場で……。
砂利の混ざったみたいなアスファルトだったんだ」
み「初めて乗れたとき、真下を見ると、砂利の粒が飛ぶように流れてた。
今でも目に焼きついてる」
律「ふーん。
そういう記憶があるのは、いいわね」
み「チミは、自転車、乗れるか?」
小「乗れます」
み「あっそ。
小学校2年から一人旅って……。
今回は、何度目になるわけ?」
小「そんなに来れません。
毎年1回です。
だから、一人で来たのは、これで3回目です」
み「え?
じゃ君、今、4年生?」
小「はい」
律「やっぱり、都会の子は大人びてるわね」
↑神木隆之介くん(このとき12歳)。
律「新潟の4年生なんて、鼻垂らしてるでしょ」
み「バカにすな!」
律「でも、どうして毎年、津軽鉄道に乗りに来るの?」
小「ボク、『サポーターズクラブ』の会員なんです」
み「なんじゃそれ?
津軽に、サッカーチームなんてあったか?
オヨネーズ?」
ちなみにサッカーでは、東北社会人サッカーリーグに……。
『ラインメール青森(1部)』と『ブランデュー弘前FC(2部)』が所属してます。
↑『ラインメール青森』のエンブレム。デザインは、もちろん“ねぶた”。
1部で優勝し、各地域リーグ上位チームとの対戦を勝ち抜くと……。
ようやく、JFLに上がれます。
その上が、J2ですね。
道は遥けし。
小「サッカーじゃありません。
『津軽鉄道サポーターズクラブ』です」
み「ってことは、津軽鉄道を応援するクラブってこと?」
小「そうです」
み「ってことは、存続するためには、応援が必要ってわけね」
小「そういうことです」
み「年間売上って、どのくらいなの?」
小「え?
それは調べたことないです」
み「そんなこっちゃいかんではないか。
どんな経営内容かも調べないで、サポートがでけるのか」
律「難詰することないでしょ」
小「そう言われてみれば、確かにそうです。
今、調べてみます」
み「素直でよろしい。
おっ。
生意気に、スマホだな。
わたしがまだガラケーなのに」
小「ガラケーは、検索機能がお粗末すぎです。
情報収集の道具としては、使えません」
み「……それは、言えてる」
↑お父さんのスマホでゲームをしてるようです。
小「ありました。
売上高は、1億2千万円くらいです」
財務情報は、こちらから閲覧できます。
み「ちょっと……。
それって、年間売上?」
小「だと思います」
み「少なすぎない?
月にすると、1,000万円じゃない。
これで、社員の給料から何から、みんな出るわけ?」
律「大丈夫なんじゃないの?
仕入れとかもいらないし。
今ある列車を動かすだけでしょ」
み「燃料費と社員の給料だけってことか。
強いて言えば、仕入れは切符だけ?(硬券印刷の専門店は、こちら)」
律「サポーターって、県外の人でもなれるの?」
み「当たり前でんがな。
青森県に絞ったら、3人くらいしか集まらないよ」
律「それはヒドいんじゃない」
しかし……。
『津軽鉄道サポーターズクラブ』。
ほんとに、やる気あるのか?
津鉄のホームページの左側下にバナーがありますが……。
クリックすると、「このページは現在準備中です」。
『入会申込書』のページを見つけましたが……。
どこからもリンクされてません。
しかもこの『入会申込書』には、「会費は、年会費1,000円と致します。高校生は、500円です」とあります。
中学生以下は、入会できないわけ?
それすら書いてありません。
最新の決算書を見ても、そうとう苦しそうです。
『退職給付引当金』の取り崩しで、どうにかプラスになってますが……。
これは、以前の損失処理を益金に戻してるだけなので、お金が入ってるわけではありません。
あと2年でこの戻しも無くなり、そうなれば、当期純利益が赤転します。
そもそも、貸借対照表の「鉄道事業固定資産」ってのが、ほんとにこんな価値を保ってるのか甚だ疑問です。
時価に置き換えたら、すでに債務超過なんでないの?
ま、出資しようってわけじゃないので、あまり詮索はしないでおきますが。
み「『サポーターズクラブ』の会員と云うことは……。
いろいろ、詳しいわけね?」
小「一応」
み「それじゃ、質問。
津軽鉄道は、ここ『津軽五所川原』から『津軽中里』までだよね」
小「はい」
み「『津軽中里』って、すごく中途半端な場所じゃないの?
十三湖にも届かないし。
何か、理由があるわけ?」
小「最初に『津軽中里』まで行ったとき、ボクもそう思いました。
なので、お父さんに聞いたんです。
その時は、お父さんもわからなかったんですけど、後で調べてくれました」
み「ほー。
いいお父さんじゃの」
小「津軽鉄道は、『川部駅』と『五所川原駅』間を走ってた陸奥鉄道という私鉄が元なんです」
み「『川部』と『五所川原』間って、五能線じゃない」
小「そうです。
陸奥鉄道は、その後、国鉄に買収されたんです。
そのとき、陸奥鉄道に出資してた株主には……。
出資額の何倍ものお金が戻ってきたそうです」
み「おー。
羨ましいほど美味しい話じゃな」
小「で、出資してた人たちは……。
さらに鉄道を伸ばせば、また国鉄に買ってもらえると思ったわけです」
み「柳の下になんとやらだな」
小「津軽半島を一周する路線を目指したそうです。
で、とりあえず、『津軽五所川原』から『津軽中里』まで線路を伸ばして開業したのが、津軽鉄道です」
み「にゃるほど。
『津軽中里』は、とりあえずの終点だったわけね。
でもその後、線路が伸ばされなかったということは……。
思惑が外れたってことだな。
開業は、いつごろ?」
小「昭和5年です」
み「昭和5年ころって、何かあったっけ?」
↑昭和5年ころの日本(スライド)。
律「日本史の女王なんじゃなかったの?」
み「近代は苦手だったの」
小「金融恐慌というのがあったそうです」
小「どういうのか、よくわかりませんけど……。
たぶん、景気が悪くなったんだと思います」
み「ま、そんなもんでしょうね。
その後、戦争に突入するわけだから……。
中途半端な盲腸線なんて、国鉄が買ってくれるはずないわな。
で、現在に至るという次第ね。
利用客の推移はどうなの?」
小「今は、年間30万人くらいだそうです」
み「多いのか少ないのかわからん」
小「最盛期は、265万人だったそうです」
み「げ。
9分の1かよ。
苦しいどこしの話じゃないだろ」
小「それに昔は、貨車もスゴかったそうです」
み「何を運ぶわけ?」
小「リンゴです。
『津軽中里』を発車した列車が、駅ごとに、リンゴを満載した貨車を増結していくので……。
『津軽五所川原』では、客車の後ろに、貨車がズラーっと繋がってたそうです」
↑『貨物鉄道博物館(三重県いなべ市)』での、りんご箱の積みこみ実演。鉄道省職員立会のもと、日通の職員が積み込みを行うという設定だそうです(詳しくはこちら)。
み「ほー。
それは、見ものだったろうな」
小「ほんと、写真に撮りたかったです」
み「今でも、貨車はあるの?」
小「あるようですけど……。
五能線の貨車輸送が廃止されてますから、津軽鉄道内での輸送だけですね」
↑貨車も短いですねー。信越本線にはまだ、踏切がなかなか上がらないほど長い貨車が通ります。
み「たった、20キロ内の?」
小「そうです」
み「うーむ。
鉄道部門、そうとう苦しそうだのぅ。
鉄道以外の部門で、赤字を埋めてるんだろうな」
小「津軽鉄道は、ほかの事業をやってません。
鉄道専業です」
↑駅舎前で、矢印の出ていた建物が本社のようです。
み「あちゃー。
そうなの?
ものすごく、ヤバくない?」
律「だから、サポートするんじゃないの?」
み「なるほど。
確かにサポート、いりそうだな。
しかし……。
チミがわざわざ東京から乗りに来ても、そのほとんどの乗車料金は、途中のJRに落ちて……。
津軽鉄道に入るのは、五所川原から終点までの往復料金、千数百円だけか」
↑『津軽五所川原駅』の料金表。終点の『津軽中里駅』までは、20.7㎞。時間にして、41分。840円は、やっぱり高い。JRの倍はしますね。
小「ボク、今年のお年玉で、レールオーナーになりました」
み「なんじゃそれ?」
小「レール1メートルあたり、5,000円一口で、オーナーになれるんです」
み「レールを買ってしまったら、列車が走れないではないか」
小「レールはもちろん、そのまま敷いておくんです」
み「なんじゃそれ。
早い話、寄付じゃないの。
オーナー様の特典とか、ないの?」
小「『ケース付特製会員証』がもらえます。
これです」
↑原価150円くらい?
小「あと、もう使っちゃいましたけど『会員特別乗車券』」
↑何が特別なんだかわかりませんが……。『ケース付特製会員証』を首から下げて乗車する必要があるそうです(すごく恥ずかしいと思います)。客が一人増えても原価に変わりありませんので、原価は印刷代のみ。
小「それと、オーナーになってる場所を示した『オリジナル路線図』」
↑上の方の『津軽五所川原~十川』が路線図のようです。
み「やっぱり、ただの寄付だな」
ホームページには、『レール・オーナー募集』ページがあります。
全線で20.7㎞ですから、20,700口分あるわけです。
完売すると、1億350万円です。
とうてい、全口売り切れるとは思えないのですが……。
ページの一番下に、“19.2.28日追加19.12.17停止”の謎の表記があり、ネット申込は出来なくなってます。
だけど、申込書のPDFはダウンロードできます。
今でも申し込めるのでしょうか?
サポーターズクラブのページもそうでしたが……。
正直言って、大事なところが一本抜けてる感じがします。
津軽鉄道さん、わたしを雇いませんか?
もっとずっと、わかりやすいホームページに変えてみせますよ。
小「いいんです。
ボクは、たまに乗りに来れるだけで嬉しいですから。
お姉さんたちも、毎年来てください」
み「毎年はな……」
律「ちょっとね」
み「ま、10年に1回くらいならな」
律「もう何回も乗れないじゃない」
み「やかまし。
もし来るとしたら、いつごろがいいかな?」
小「一番人気があるのは、ストーブ列車でしょうね」
小「12月から3月一杯まで運行されます」
み「おー。
聞いたことがある。
津軽鉄道だったのか」
律「ストーブ列車って、何よ?
ストーブが動力なわけ?」
み「そんなわけあるかい!
そんなデカいストーブ載せたら、人が乗れんではないか」
律「じゃ、何のためにストーブなんか付いてるの?」
み「暖房に決まっとろうが」
↑津軽鉄道本社にあるストーブ列車を引く気動車の模型。『新潟トランシス』は、新潟県北蒲原郡聖籠町にある車両製造会社(旧新潟鐵工所)。新潟って、いろんなとこで鉄道車両を作ってたんですね。
律「列車の暖房は、電気じゃないの?」
み「それは、電車でしょ。
津軽鉄道は、非電化。
あれ?
でも、非電化だって……。
ストーブ付けてる列車なんか、見たことないぞ」
小「今の気動車は、エンジンの冷却水を暖房として供給するシステムになってるんです」
↑冷却水の配管。かつて京都に存在した『加悦鐵道』の車両です。
み「てことは、まだそのシステムが無かったころの客車ってわけだな。
この車両は、違うよね?」
↑『走れメロス号』。明るくてシック。新潟の車両より、ずっといいです。
小「ぜんぜん違います。
ストーブ列車は、古い気動車が引いてきます。
格好いいですよ」
↑1両だけ、『走れメロス号』と同じ客車が連結されてます。ストーブ列車は、300円の追加料金が必要になるので、一般客用にストーブ料金の要らない車両が付けられてるのです。
み「ストーブって、薪だよね?」
↑ストーブをくべるだけで、立派なイベントです。でも、静かに楽しめる雰囲気ではないですね。
小「そうです。
燃料は、古い枕木です」
↑中古枕木。ホームセンターで売ってます。薪にするのではなく、ガーデニング用の資材ですね。
ここで、脚注。
この記事のネタは、『ちゃぺ! 津軽鉄道四季ものがたり』という漫画です。
『ビッグコミック』増刊号に連載された作品ですが……。
この漫画が作られたのも、『サポーターズクラブ』の運動の一環だったようです。
で、この漫画の中のコラムに、ストーブ列車の燃料は枕木と出てるんです。
それで、画像を探したんですが……。
まったく見つかりません。
あるのは、石炭ばかりでした。
変わっちゃったんでしょうか?
ま、枕木じゃ、火をつけるのも火力を一定に保つのも大変でしょうからね。
でも、とりあえずここでは、燃料は枕木ということで、お話を続けます。
↑こちらは、石炭そっくりの食べられるクッキーです。
律「枕木って、長くない?
よっぽど大きなストーブね」
小「枕木は、細かく割って使います」
↑よく考えたら、枕木を薪にするのって、相当タイヘンなんじゃ……。
み「先生は、思いついたことをすぐに口にしないこと。
考えてからしゃべりなさい」
小「あんたに注意されたくないわね」
み「でも、薪ストーブの耐用年数ってどれくらいなんだ?
とうてい、何十年も持つとは思えないけど。
そのストーブ、今も売ってるの?」
↑“しゃこちゃん”に通じるものがあります。
小「もちろん、製造されてないそうです。
津軽鉄道では、オリジナルのストーブを1個持ってて……。
修理が必要になったら、そのオリジナルから型を取って部品を作るそうです」
み「ひぇ。
ほぼ鍛冶職人だな」
律「おもしろそうじゃない」
み「スルメとか、焼くんだよね」
↑かなり臭いと思われます。
小「そうです。
『津軽応援直売会』のおばさんたちが、スルメやお餅を売りに来るんですよ」
↑火加減も見てくれるようです。
小「ボクも、焼いてもらって食べました」
↑なんと、アテンダントのお姉さんが焼いてくれます。首のスカーフとスルメ。ミスマッチがいい味出してます。
律「美味しかった?」
小「味は、特別……」
み「ま、子供にスルメの味は無理か。
ビールがあればな」
↑もちろんビールも売ってますが……。たいていの観光客は、こっちを買ってしまうようです。
小「お父さんは、ビールもお酒も飲んで、ウマいウマいって言ってました」
↑弘前のお酒でした。
み「のんべだな。
でも、面白そうだね」
律「今度、来てみたいわ」
み「でも、12月から3月ってのがね」
律「だって、ストーブなんだもん、寒いのはしょうがないわよ」
↑ほぼラッセル車と化したストーブ列車。かっちょいーですね。
み「ま、寒いのは我慢するにしても……。
冬の青森は、列車ダイヤが心配。
特に、五能線はやめた方がいいね。
風が吹くと、そうとう乱れると思うよ。
タイトな旅程を組んでると、どうにもならなくなる」
み「やっぱ冬は、青森までは新幹線だな」
小「もうすぐ開業ですよね(2010年12月4日、『八戸-新青森』間が開通しました)」
↑愛称は『はやぶさ』。どう見ても、カモですが。
律「乗りに来る?」
小「新幹線なら、これからいくらでも乗れますから」
み「なるほど。
津軽鉄道は、いつ滅びるかわからんわな」
↑ストーブ列車の車内。カモ新幹線との、なんたる違い! 後ろ姿は、アテンダントさんです。
小「あ、さっきの話ですけど……。
ストーブ列車は、冬以外のあるときにも、運行されるんです。
いつだと思います?」
み「“鉄”って、どうしてこうクイズを出したがるかね?
当てたら、何かくれる?」
ここで注釈です。
前々回、『ちゃぺ!』からの情報として、ストーブの燃料が古い枕木だと書きましたが……。
わたしの読み違いでした!
燃料は、石炭です。
細く割った枕木は、石炭に火を点けるための焚き付けとして使われてたんです。
ちゃんとそう書いてありました。
すんませんでした……。
小「えー。
あげれるものなんて、持ってないです」
み「それでクイズを出そうとは、不届き千万。
ほれ、首から下げてるではないか。
当てたら、キミの一眼レフをちょうだい」
↑昔は、こんな雑誌があったんですね。これは、1971年(昭和46年)の号です。
み「外したら、ポケットティシュを1つあげます」
↑『加悦鐵道保存会』のポケットティッシュ(『加悦鉄道資料館』でもらえるようです)。
小「ものすごく不公平です」
↑鳥の世界も不公平。
み「よし。
真剣に当てにいくぞ。
ストーブ列車の通常運行は、12月から3月まで。
この4ヶ月以外ってことだな。
ふむ。
まず、秋は除外だね」
↑『芦野公園駅』。サクラの紅葉です。
律「どうしてよ?」
み「12月になったらストーブ列車が走るって楽しみが、薄らいじゃうもの。
わかった。
この先に、サクラの名所があったでしょ?
確か、太宰の『津軽』にも出てきた」
↑小説『津軽』の像記念館(北津軽郡中泊町)
小「芦野公園ですね。
『金木駅』の次が『芦野公園駅』です」
み「そうそう。
金木町長の逸話を、太宰が書いてたんだ。
知ってる?」
小「知りません」
ところでチミ。
わたしはチミの正体を、ひと目で見抜いてしまった。
これからわたしが、その推理を披瀝するので、拝聴するように。
良いか。
嘘をついても、わかるんだからね。
嘘ついたら、地獄で逆さ磔になるのよ」
み「わかる?
じゃ、指切り。
ほれ、小指出して。
何、おずおずしてんのよ」
律「恥ずかしいからに決まってるでしょ。
今どき、人前で指切りする人なんていないわよ」
み「いいの!
ほれ、さっさと出す。
大丈夫よ。
指、折ったりしないから」
律「しかねないわ」
み「やかましい!
ほら、早く出して。
よしよし。
じゃ、♪指きりげんまん、嘘ついたら……」
み「何で一緒に歌わないのよ?」
律「だから、恥ずかしいからに決まってるでしょ」
み「にゃにー。
すでに、無邪気な子供じゃいられないってか?
今から、そんなに屈折してどうする。
ほら、歌え。
♪指きりげんまん、嘘ついたら、ハリセンボン食ーわす」
律「飲ますでしょ」
み「あんたね。
ハリセンボン、知らないの?
フグみたいに膨らんで、針だらけになるのよ」
み「あんなの、飲めるわけないでしょ」
律「ハリセンボンってのは、針を千本ってことでしょ」
み「そんなに飲んだら、死んじゃうじゃないの」
律「だから、それくらい硬い約束ってことなの」
み「嘘ついたくらいで、針を千本も飲まされたらたまらんわな」
律「そんなら、指切りなんかしなきゃいいでしょ」
み「わたしはついてもいいの。
この子がつかないって指切りでしょ」
律「幕末の条約級に不平等だわ」
み「しかし……。
何の指切りだっけ?」
律「呆れた人」
み「はいチミ。
答えて」
小「ボクの正体を推理するとか」
み「そう!
それじゃ!
で、わたしが正解を言うから……。
そのときは、正直に賛辞を送るという指切りだったな。
それでは、推理その1じゃ。
まずチミは、東京から来ている」
律「それ、さっき聞いたじゃない」
み「推理の土台は、明白にわかっている事実。
まずは、その確認をしたまでじゃ。
それでは、推理を始めます。
チミは、小学生である」
律「そんなの、見ればわかるでしょ」
み「コナンは高校生だぞ」
律「漫画と一緒にしないで」
み「チミ、正直に答えなさい。
小学生?」
小「はい」
み「せいかーい。
ドンドンパフパフ」
み「まずは、1万点獲得」
律「得点が高すぎでしょ」
み「続いて、第2問」
律「いつからクイズ番組になったのよ」
み「これまでに確定した事実を確認する。
チミは、東京から来た小学生である。
Am I right?」
小「はい」
み「素直でよろしい」
律「わかった」
み「なにが?」
律「津軽鉄道のこと、調べてないんでしょ。
だから、こんなクイズで行稼ぎしてる」
み「さらに番組は続く」
律「誤魔化すんだから」
み「続けるぞ。
第2の推理。
チミは、男の子である」
律「見りゃわかるでしょ!」
み「今どき、わからないわよ。
女の子の一人旅は危険だから、男の振りしてるとかさ。
江戸時代の旅だって、女が男の格好することなんて、良くあったの」
↑こちら、お江戸ルの“ほーりー”です(勝海舟に扮しました)。
律「今は平成です」
み「どう?
正解よね?
違ってるって言うんなら、証拠を見せてもらうわよ」
律「止めなさいって」
小「男です」
み「ほれ、正解。
10万点獲得ぅぅぅ」
律「高すぎるって言ってるでしょ。
そろそろ読者に怒られるわよ」
み「さよか。
それじゃ、締めましょう。
チミはズバリ、“鉄”だよね」
み「メガネかけて、帽子被って……」
↑鳥取県『由良駅』にあります。駅のある北栄町は、コナンの作者、青山剛昌さんの出身地だそうです。
み「一眼レフ首から下げて、ひとりで津軽鉄道に乗ってる子なんて……」
“鉄”以外の何者でもないわ」
律「それって、推理じゃなくて、偏見じゃないの」
み「どうだ?
キリキリ答えよ」
小「“鉄”って呼び方は好きじゃありませんけど……。
鉄道愛好者であることは確かです」
↑『コナン駅』の愛称がつけられたそうです。コンナンで(失礼)、ファンが来るんでしょうかね?
み「にゃにー。
いっちょまえの口、利きおって。
この口で言うか」
律「止めなさい」
み「痛てっ。
手を叩くこと無いじゃないの」
律「今、この子のほっぺたを捻ろうとしたでしょ」
み「捻るのはダメで、手を叩くのはいいわけ?」
律「ボク、心配しなくていいからね。
こんど、この女がヘンなことしようとしたら……。
麻酔打って眠らせて、窓から捨てちゃうから」
み「やりかねん……」
律「ボク、どこまでいくの?」
小「『津軽中里』です」
律「そう。
どこ、それ?」
み「終点だよ」
律「あ、さっき話が出てたわよね。
ひょっとして、十三湖に行こうとしてる?」
み「そうだよなー。
十三湖のしじみで昼酒、最高だよな」
律「あんたと一緒にしないで。
ボク、十三湖に行くには、『五所川原』からバスの方が便利なのよ」
↑『五所川原ー小泊線(十三経由)系統番号99』。『中の島公園入口』でお降りください。1時間10分!(遠い……)
み「こういうのを、受け売りと云います」
律「黙ってなさい」
小「十三湖には行きません」
律「あらそう。
そしたら、どこに行くわけ?
まさか……。
樺太とか?」
↑渡樺の地『宗谷岬』に立つ間宮林蔵の立像。
み「どうやって行くんじゃ!」
小「どこにも行きません。
『津軽中里』から引き返して……。
また、ここまで戻ってきます」
み「でたー。
やっぱり、筋金入りの“鉄”じゃないの。
今からチミを、“小鉄(こてつ)”と命名する」
小「いいです。
命名なんて」
み「遠慮すな。
しかし……。
電車に乗って帰ってくるだけで、そんなに面白いか?
そもそも、終点まで何分かかるの?」
小「45分です」
み「なんだ、そんなもんか。
でも、往復したら、1時間半だよな。
退屈しない?」
小「行きと帰りで、反対側の窓を見れば、ぜんぜん退屈しません。
景色自体は、そんなに絶景ってわけじゃないですけどね。
ずっと、津軽平野ですから」
↑津軽鉄道の車窓から。ずっとこんな景色が続くんだと思います。
み「そういう慣れた口調で言うということは……。
初めて来たわけじゃないわね」
小「4回目です。
やっぱり、小学生がここまで来るのはタイヘンです。
早く大人になりたいです」
み「大人になったら、大人料金がかかるではないか」
小「でも、会社に勤めて、お給料がもらえるでしょ。
そしたら、毎月来るんだけど」
み「ぱかもん。
新入社員が、青森に毎月来れるほどの給料もらえるかい」
小「入ってすぐは無理でも、頑張って偉くなればいいでしょ」
み「またチミは、世の中舐めてますね。
そんなに簡単に出世でけるか!」
小「大丈夫です。
ボク、東大に入りますから」
み「また……。
言っちゃってくれちゃってるじゃないの。
“とうだい”って、足摺岬にある灯台?」
小「違います。
本郷です」
小「教養課程は、駒場ですけど」
み「先生。
ほっぺたつねってもいい?」
律「よしなさいって。
でも、東大出た人が入るような会社だと……。
お金があっても、お休み取れないかもよ」
小「どうしてですか?
有給休暇は、労働者の権利です」
み「ばっきゃもーん!
そう簡単にはいかんのじゃ。
誰も有給を取らないような会社で……。
自分だけ取るってのは、ものすごく気まずいの。
残業だって、そうよ。
自分の仕事を片付けたから、とっとと帰ると……。
なんで、残ってる人の仕事を手伝わないんだとか言われる」
律「それはちょっと、ヒドいわね」
み「だよねだよね。
結局、仕事を効率化して、早くこなせるようになると……。
ほかの仕事まで押し付けられるってことになるんだよ。
とろとろ仕事して、残業代稼いでるヤツが一杯いる!」
み「ま、旅先で、こういう話は止めよう。
滅入ってくる」
↑『メーデーの歌』。なぜか、運動会でよく聞きました。
律「いつも一人で来てるの?」
小「最初に来たのは、小学校一年生のときでしたけど……。
そのときは、お父さんと一緒でした」
み「当然だわな」
小「でも、翌年からは一人で来てます」
み「げ。
スゴすぎ。
わたしが小学校2年のときなんて……。
バスにも乗れなかったわ」
律「バスが無かったんじゃないの?」
み「あるわい!
新潟をバカにすな」
律「自転車しかないかと思った」
み「自転車に乗れたのは、小学校6年のときじゃ」
↑人生計画では、このくらいの歳で乗るつもりだったのですが……。
律「遅っ!」
み「うちのバアちゃんも乗れなかったし……。
隣のおばさんも乗れなかった。
だから、自分が乗れなくても平気でいたんだけど……。
気づいたら、クラスで自転車乗れないの、わたしくらいだった」
律「当然でしょ。
気づくのが遅すぎよ」
み「でも、乗れたのが遅かったおかげで……。
乗れたときの喜びを、はっきりと記憶してる」
律「そうか。
わたしは忘れちゃったわね。
幼稚園で乗れてたから」
み「ザマミロ。
不思議な感覚だったな。
練習してたのは、廃工場の駐車場で……。
砂利の混ざったみたいなアスファルトだったんだ」
み「初めて乗れたとき、真下を見ると、砂利の粒が飛ぶように流れてた。
今でも目に焼きついてる」
律「ふーん。
そういう記憶があるのは、いいわね」
み「チミは、自転車、乗れるか?」
小「乗れます」
み「あっそ。
小学校2年から一人旅って……。
今回は、何度目になるわけ?」
小「そんなに来れません。
毎年1回です。
だから、一人で来たのは、これで3回目です」
み「え?
じゃ君、今、4年生?」
小「はい」
律「やっぱり、都会の子は大人びてるわね」
↑神木隆之介くん(このとき12歳)。
律「新潟の4年生なんて、鼻垂らしてるでしょ」
み「バカにすな!」
律「でも、どうして毎年、津軽鉄道に乗りに来るの?」
小「ボク、『サポーターズクラブ』の会員なんです」
み「なんじゃそれ?
津軽に、サッカーチームなんてあったか?
オヨネーズ?」
ちなみにサッカーでは、東北社会人サッカーリーグに……。
『ラインメール青森(1部)』と『ブランデュー弘前FC(2部)』が所属してます。
↑『ラインメール青森』のエンブレム。デザインは、もちろん“ねぶた”。
1部で優勝し、各地域リーグ上位チームとの対戦を勝ち抜くと……。
ようやく、JFLに上がれます。
その上が、J2ですね。
道は遥けし。
小「サッカーじゃありません。
『津軽鉄道サポーターズクラブ』です」
み「ってことは、津軽鉄道を応援するクラブってこと?」
小「そうです」
み「ってことは、存続するためには、応援が必要ってわけね」
小「そういうことです」
み「年間売上って、どのくらいなの?」
小「え?
それは調べたことないです」
み「そんなこっちゃいかんではないか。
どんな経営内容かも調べないで、サポートがでけるのか」
律「難詰することないでしょ」
小「そう言われてみれば、確かにそうです。
今、調べてみます」
み「素直でよろしい。
おっ。
生意気に、スマホだな。
わたしがまだガラケーなのに」
小「ガラケーは、検索機能がお粗末すぎです。
情報収集の道具としては、使えません」
み「……それは、言えてる」
↑お父さんのスマホでゲームをしてるようです。
小「ありました。
売上高は、1億2千万円くらいです」
財務情報は、こちらから閲覧できます。
み「ちょっと……。
それって、年間売上?」
小「だと思います」
み「少なすぎない?
月にすると、1,000万円じゃない。
これで、社員の給料から何から、みんな出るわけ?」
律「大丈夫なんじゃないの?
仕入れとかもいらないし。
今ある列車を動かすだけでしょ」
み「燃料費と社員の給料だけってことか。
強いて言えば、仕入れは切符だけ?(硬券印刷の専門店は、こちら)」
律「サポーターって、県外の人でもなれるの?」
み「当たり前でんがな。
青森県に絞ったら、3人くらいしか集まらないよ」
律「それはヒドいんじゃない」
しかし……。
『津軽鉄道サポーターズクラブ』。
ほんとに、やる気あるのか?
津鉄のホームページの左側下にバナーがありますが……。
クリックすると、「このページは現在準備中です」。
『入会申込書』のページを見つけましたが……。
どこからもリンクされてません。
しかもこの『入会申込書』には、「会費は、年会費1,000円と致します。高校生は、500円です」とあります。
中学生以下は、入会できないわけ?
それすら書いてありません。
最新の決算書を見ても、そうとう苦しそうです。
『退職給付引当金』の取り崩しで、どうにかプラスになってますが……。
これは、以前の損失処理を益金に戻してるだけなので、お金が入ってるわけではありません。
あと2年でこの戻しも無くなり、そうなれば、当期純利益が赤転します。
そもそも、貸借対照表の「鉄道事業固定資産」ってのが、ほんとにこんな価値を保ってるのか甚だ疑問です。
時価に置き換えたら、すでに債務超過なんでないの?
ま、出資しようってわけじゃないので、あまり詮索はしないでおきますが。
み「『サポーターズクラブ』の会員と云うことは……。
いろいろ、詳しいわけね?」
小「一応」
み「それじゃ、質問。
津軽鉄道は、ここ『津軽五所川原』から『津軽中里』までだよね」
小「はい」
み「『津軽中里』って、すごく中途半端な場所じゃないの?
十三湖にも届かないし。
何か、理由があるわけ?」
小「最初に『津軽中里』まで行ったとき、ボクもそう思いました。
なので、お父さんに聞いたんです。
その時は、お父さんもわからなかったんですけど、後で調べてくれました」
み「ほー。
いいお父さんじゃの」
小「津軽鉄道は、『川部駅』と『五所川原駅』間を走ってた陸奥鉄道という私鉄が元なんです」
み「『川部』と『五所川原』間って、五能線じゃない」
小「そうです。
陸奥鉄道は、その後、国鉄に買収されたんです。
そのとき、陸奥鉄道に出資してた株主には……。
出資額の何倍ものお金が戻ってきたそうです」
み「おー。
羨ましいほど美味しい話じゃな」
小「で、出資してた人たちは……。
さらに鉄道を伸ばせば、また国鉄に買ってもらえると思ったわけです」
み「柳の下になんとやらだな」
小「津軽半島を一周する路線を目指したそうです。
で、とりあえず、『津軽五所川原』から『津軽中里』まで線路を伸ばして開業したのが、津軽鉄道です」
み「にゃるほど。
『津軽中里』は、とりあえずの終点だったわけね。
でもその後、線路が伸ばされなかったということは……。
思惑が外れたってことだな。
開業は、いつごろ?」
小「昭和5年です」
み「昭和5年ころって、何かあったっけ?」
↑昭和5年ころの日本(スライド)。
律「日本史の女王なんじゃなかったの?」
み「近代は苦手だったの」
小「金融恐慌というのがあったそうです」
小「どういうのか、よくわかりませんけど……。
たぶん、景気が悪くなったんだと思います」
み「ま、そんなもんでしょうね。
その後、戦争に突入するわけだから……。
中途半端な盲腸線なんて、国鉄が買ってくれるはずないわな。
で、現在に至るという次第ね。
利用客の推移はどうなの?」
小「今は、年間30万人くらいだそうです」
み「多いのか少ないのかわからん」
小「最盛期は、265万人だったそうです」
み「げ。
9分の1かよ。
苦しいどこしの話じゃないだろ」
小「それに昔は、貨車もスゴかったそうです」
み「何を運ぶわけ?」
小「リンゴです。
『津軽中里』を発車した列車が、駅ごとに、リンゴを満載した貨車を増結していくので……。
『津軽五所川原』では、客車の後ろに、貨車がズラーっと繋がってたそうです」
↑『貨物鉄道博物館(三重県いなべ市)』での、りんご箱の積みこみ実演。鉄道省職員立会のもと、日通の職員が積み込みを行うという設定だそうです(詳しくはこちら)。
み「ほー。
それは、見ものだったろうな」
小「ほんと、写真に撮りたかったです」
み「今でも、貨車はあるの?」
小「あるようですけど……。
五能線の貨車輸送が廃止されてますから、津軽鉄道内での輸送だけですね」
↑貨車も短いですねー。信越本線にはまだ、踏切がなかなか上がらないほど長い貨車が通ります。
み「たった、20キロ内の?」
小「そうです」
み「うーむ。
鉄道部門、そうとう苦しそうだのぅ。
鉄道以外の部門で、赤字を埋めてるんだろうな」
小「津軽鉄道は、ほかの事業をやってません。
鉄道専業です」
↑駅舎前で、矢印の出ていた建物が本社のようです。
み「あちゃー。
そうなの?
ものすごく、ヤバくない?」
律「だから、サポートするんじゃないの?」
み「なるほど。
確かにサポート、いりそうだな。
しかし……。
チミがわざわざ東京から乗りに来ても、そのほとんどの乗車料金は、途中のJRに落ちて……。
津軽鉄道に入るのは、五所川原から終点までの往復料金、千数百円だけか」
↑『津軽五所川原駅』の料金表。終点の『津軽中里駅』までは、20.7㎞。時間にして、41分。840円は、やっぱり高い。JRの倍はしますね。
小「ボク、今年のお年玉で、レールオーナーになりました」
み「なんじゃそれ?」
小「レール1メートルあたり、5,000円一口で、オーナーになれるんです」
み「レールを買ってしまったら、列車が走れないではないか」
小「レールはもちろん、そのまま敷いておくんです」
み「なんじゃそれ。
早い話、寄付じゃないの。
オーナー様の特典とか、ないの?」
小「『ケース付特製会員証』がもらえます。
これです」
↑原価150円くらい?
小「あと、もう使っちゃいましたけど『会員特別乗車券』」
↑何が特別なんだかわかりませんが……。『ケース付特製会員証』を首から下げて乗車する必要があるそうです(すごく恥ずかしいと思います)。客が一人増えても原価に変わりありませんので、原価は印刷代のみ。
小「それと、オーナーになってる場所を示した『オリジナル路線図』」
↑上の方の『津軽五所川原~十川』が路線図のようです。
み「やっぱり、ただの寄付だな」
ホームページには、『レール・オーナー募集』ページがあります。
全線で20.7㎞ですから、20,700口分あるわけです。
完売すると、1億350万円です。
とうてい、全口売り切れるとは思えないのですが……。
ページの一番下に、“19.2.28日追加19.12.17停止”の謎の表記があり、ネット申込は出来なくなってます。
だけど、申込書のPDFはダウンロードできます。
今でも申し込めるのでしょうか?
サポーターズクラブのページもそうでしたが……。
正直言って、大事なところが一本抜けてる感じがします。
津軽鉄道さん、わたしを雇いませんか?
もっとずっと、わかりやすいホームページに変えてみせますよ。
小「いいんです。
ボクは、たまに乗りに来れるだけで嬉しいですから。
お姉さんたちも、毎年来てください」
み「毎年はな……」
律「ちょっとね」
み「ま、10年に1回くらいならな」
律「もう何回も乗れないじゃない」
み「やかまし。
もし来るとしたら、いつごろがいいかな?」
小「一番人気があるのは、ストーブ列車でしょうね」
小「12月から3月一杯まで運行されます」
み「おー。
聞いたことがある。
津軽鉄道だったのか」
律「ストーブ列車って、何よ?
ストーブが動力なわけ?」
み「そんなわけあるかい!
そんなデカいストーブ載せたら、人が乗れんではないか」
律「じゃ、何のためにストーブなんか付いてるの?」
み「暖房に決まっとろうが」
↑津軽鉄道本社にあるストーブ列車を引く気動車の模型。『新潟トランシス』は、新潟県北蒲原郡聖籠町にある車両製造会社(旧新潟鐵工所)。新潟って、いろんなとこで鉄道車両を作ってたんですね。
律「列車の暖房は、電気じゃないの?」
み「それは、電車でしょ。
津軽鉄道は、非電化。
あれ?
でも、非電化だって……。
ストーブ付けてる列車なんか、見たことないぞ」
小「今の気動車は、エンジンの冷却水を暖房として供給するシステムになってるんです」
↑冷却水の配管。かつて京都に存在した『加悦鐵道』の車両です。
み「てことは、まだそのシステムが無かったころの客車ってわけだな。
この車両は、違うよね?」
↑『走れメロス号』。明るくてシック。新潟の車両より、ずっといいです。
小「ぜんぜん違います。
ストーブ列車は、古い気動車が引いてきます。
格好いいですよ」
↑1両だけ、『走れメロス号』と同じ客車が連結されてます。ストーブ列車は、300円の追加料金が必要になるので、一般客用にストーブ料金の要らない車両が付けられてるのです。
み「ストーブって、薪だよね?」
↑ストーブをくべるだけで、立派なイベントです。でも、静かに楽しめる雰囲気ではないですね。
小「そうです。
燃料は、古い枕木です」
↑中古枕木。ホームセンターで売ってます。薪にするのではなく、ガーデニング用の資材ですね。
ここで、脚注。
この記事のネタは、『ちゃぺ! 津軽鉄道四季ものがたり』という漫画です。
『ビッグコミック』増刊号に連載された作品ですが……。
この漫画が作られたのも、『サポーターズクラブ』の運動の一環だったようです。
で、この漫画の中のコラムに、ストーブ列車の燃料は枕木と出てるんです。
それで、画像を探したんですが……。
まったく見つかりません。
あるのは、石炭ばかりでした。
変わっちゃったんでしょうか?
ま、枕木じゃ、火をつけるのも火力を一定に保つのも大変でしょうからね。
でも、とりあえずここでは、燃料は枕木ということで、お話を続けます。
↑こちらは、石炭そっくりの食べられるクッキーです。
律「枕木って、長くない?
よっぽど大きなストーブね」
小「枕木は、細かく割って使います」
↑よく考えたら、枕木を薪にするのって、相当タイヘンなんじゃ……。
み「先生は、思いついたことをすぐに口にしないこと。
考えてからしゃべりなさい」
小「あんたに注意されたくないわね」
み「でも、薪ストーブの耐用年数ってどれくらいなんだ?
とうてい、何十年も持つとは思えないけど。
そのストーブ、今も売ってるの?」
↑“しゃこちゃん”に通じるものがあります。
小「もちろん、製造されてないそうです。
津軽鉄道では、オリジナルのストーブを1個持ってて……。
修理が必要になったら、そのオリジナルから型を取って部品を作るそうです」
み「ひぇ。
ほぼ鍛冶職人だな」
律「おもしろそうじゃない」
み「スルメとか、焼くんだよね」
↑かなり臭いと思われます。
小「そうです。
『津軽応援直売会』のおばさんたちが、スルメやお餅を売りに来るんですよ」
↑火加減も見てくれるようです。
小「ボクも、焼いてもらって食べました」
↑なんと、アテンダントのお姉さんが焼いてくれます。首のスカーフとスルメ。ミスマッチがいい味出してます。
律「美味しかった?」
小「味は、特別……」
み「ま、子供にスルメの味は無理か。
ビールがあればな」
↑もちろんビールも売ってますが……。たいていの観光客は、こっちを買ってしまうようです。
小「お父さんは、ビールもお酒も飲んで、ウマいウマいって言ってました」
↑弘前のお酒でした。
み「のんべだな。
でも、面白そうだね」
律「今度、来てみたいわ」
み「でも、12月から3月ってのがね」
律「だって、ストーブなんだもん、寒いのはしょうがないわよ」
↑ほぼラッセル車と化したストーブ列車。かっちょいーですね。
み「ま、寒いのは我慢するにしても……。
冬の青森は、列車ダイヤが心配。
特に、五能線はやめた方がいいね。
風が吹くと、そうとう乱れると思うよ。
タイトな旅程を組んでると、どうにもならなくなる」
み「やっぱ冬は、青森までは新幹線だな」
小「もうすぐ開業ですよね(2010年12月4日、『八戸-新青森』間が開通しました)」
↑愛称は『はやぶさ』。どう見ても、カモですが。
律「乗りに来る?」
小「新幹線なら、これからいくらでも乗れますから」
み「なるほど。
津軽鉄道は、いつ滅びるかわからんわな」
↑ストーブ列車の車内。カモ新幹線との、なんたる違い! 後ろ姿は、アテンダントさんです。
小「あ、さっきの話ですけど……。
ストーブ列車は、冬以外のあるときにも、運行されるんです。
いつだと思います?」
み「“鉄”って、どうしてこうクイズを出したがるかね?
当てたら、何かくれる?」
ここで注釈です。
前々回、『ちゃぺ!』からの情報として、ストーブの燃料が古い枕木だと書きましたが……。
わたしの読み違いでした!
燃料は、石炭です。
細く割った枕木は、石炭に火を点けるための焚き付けとして使われてたんです。
ちゃんとそう書いてありました。
すんませんでした……。
小「えー。
あげれるものなんて、持ってないです」
み「それでクイズを出そうとは、不届き千万。
ほれ、首から下げてるではないか。
当てたら、キミの一眼レフをちょうだい」
↑昔は、こんな雑誌があったんですね。これは、1971年(昭和46年)の号です。
み「外したら、ポケットティシュを1つあげます」
↑『加悦鐵道保存会』のポケットティッシュ(『加悦鉄道資料館』でもらえるようです)。
小「ものすごく不公平です」
↑鳥の世界も不公平。
み「よし。
真剣に当てにいくぞ。
ストーブ列車の通常運行は、12月から3月まで。
この4ヶ月以外ってことだな。
ふむ。
まず、秋は除外だね」
↑『芦野公園駅』。サクラの紅葉です。
律「どうしてよ?」
み「12月になったらストーブ列車が走るって楽しみが、薄らいじゃうもの。
わかった。
この先に、サクラの名所があったでしょ?
確か、太宰の『津軽』にも出てきた」
↑小説『津軽』の像記念館(北津軽郡中泊町)
小「芦野公園ですね。
『金木駅』の次が『芦野公園駅』です」
み「そうそう。
金木町長の逸話を、太宰が書いてたんだ。
知ってる?」
小「知りません」