Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(80)
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律「また、キセルで帰る?」
食「とすれば……。
 とりあえず、牟岐線で1駅先の『南小松島』まで行くわけですね。
 で、一旦改札を出て、『中田(ちゅうでん)』までの切符を買う」
律「また筆談?」
筆談。2,835円はお手頃価格ですね。
↑こんな製品もありました。2,835円はお手頃価格ですね。

食「『南小松島』は、駅員さんがいますよ。
 券売機はあるのかな?」
『南小松島駅』は、小松島市の中心駅だそうです
↑『南小松島駅』は、小松島市の中心駅だそうです。左端に見えるのが、券売機みたいですね。

み「なんでそんなややこしいことをするのだ?」
食「だって、帰るんでしょ?
 『南小松島』から、隣の『中田(ちゅうでん)』までの切符を持って……」
『南小松島』から、隣の『中田(ちゅうでん)』までの切符を持って……

食「五能線の『中田(なかた)』まで戻るんです」
五能線の『中田(なかた)』
↑あたりには田んぼしかありません(詳しくはこちらを)。

み「また、乗るのきゃー」
食「当たり前です。
 あ、待てよ。
 そんなことしなくても、『中田(ちゅうでん)』で改札を出なきゃいいんだ。
 そのまま反対方向の列車に乗って、五能線の『中田(なかた)』まで戻るんです。
 今度は、正々堂々と出れますよ。
 正真正銘の『中田(なかた)』までの切符なんだから」
み「日付が違うだろ」
食「ほー。
 そこに気づくとは大したものです」
そこに気づくとは大したものです

み「当たり前じゃ」
食「キロ数が100㎞までの場合、切符の有効期限は1日です。
 それじゃ、101㎞以上のときの有効期限の算出方法を知ってますか?」
み「そんなもん、知ってる方がおかしいわい」
食「『キロ数÷200+1日』なんですよ。
 小数点以下は切り上げです。
 ちなみに、『陸奥森田』から『中田(ちゅうでん)』までは、1,357キロですから……。
 8日ですね」
み「『中田(なかた)』までなら、1日だろ」
食「大丈夫。
 『中田(なかた)』は無人駅ですから」
駅舎に見えたのは単なる待合室で、乗客はこの階段からホームに登るようです。早い話、フリーパスですね。
↑駅舎に見えたのは単なる待合室で、乗客はこの階段からホームに登るようです。早い話、フリーパスですね。

み「待て。
 根本的におかしいぞ」
食「何がです?」
み「『中田(ちゅうでん)』で改札を出ないんなら……。
 何のためにここまで来たんだ?」
食「それはもちろん……。
 鉄道に乗るためです。
 目的地なんていりません。
 乗ること自体が目的なんですから」
美しき“乗り鉄”、伊藤桃(青森県出身のタレント)。バリバリの“鉄子”だそうす。
↑美しき“乗り鉄”、伊藤桃(青森県出身のタレント)。バリバリの“鉄子”だそうす。

み「そんな崇高な目的があるんなら……。
 キセルすな!」
奇祭『きせる祭』
↑奇祭『きせる祭』。茨城県の加波山神社(かばさんじんじゃ)は、たばこの神さま。このキセル、長さ2.5メートル、重さ60キロだそうです。

食「あなたが企てたんでしょ」
み「とにかく、もう鈍行に乗るのはごめんだ。
 改札を出て、立ち食いそば以外のものを食べる」
食「それじゃ、そろそろリアルの旅に戻りますか」
み「ふー。
 空想だけでこれだけ疲れるんだから……。
 実際にやったら、ぜったいにリタイアしてるな」
食「どのあたりです?」
み「『新津』かな」
『新津駅』では、のんびりと遊ぶ【ばんえつ物語号】が見られます
↑『新津駅』では、のんびりと遊ぶ【ばんえつ物語号】が見られます。

み「そこで降りて、家に帰る」
食「だらしないですね」
み「それがまっとうな人間の神経なの。
 さて、ここ、どこだっけ?」
食「やだなぁ。
 『中田(なかた)駅』を出たところじゃありませんか」

↑五能線側面展望『陸奥森田→木造』(『中田駅』通過は、2:28くらい)。

み「そんなわけないだろ!
 これだけ長々と話してて」
食「ですから……」
み「融通無碍はもういい」
食「ま、少し車窓を堪能しましょう。
 ここはまさしく、津軽平野の真ん中です」
田んぼの向こうに岩木山。まさに、日本の風景ですね。
↑田んぼの向こうに岩木山。まさに、日本の風景ですね。

み「なんにもない」
食「田んぼがあるじゃないですか」
み「そう言えば……。
 『つがるロマン』ってお米が、わたしが行くスーパーに売ってるんだよ」
先日も買ってきました。5キロで1,500円(税込)。安い!
↑先日も買ってきました。5キロで1,500円(税込)。安い!

食「お味は?」
み「言っちゃなんだけど、普通に美味しい。
 わたしの舌じゃ、コシヒカリと区別できんかった」
律「この田んぼも、『つがるロマン』かしら?」
食「かもしれませんね」
律「どこまでも続く田んぼと、岩木山。
 ほんとにロマンの古里ね」
どこまでも続く田んぼと、岩木山

み「あんたは、観光協会の回し者か。
 冬の風景を見ないから、そんなことが言えるんじゃ」
律「見たの?」
み「見なくてもわかるわい。
 この田んぼを、地吹雪が通り過ぎるに違いない」
津軽平野の地吹雪
↑津軽平野の地吹雪。

み「ホワイトアウトの恐怖は、味わった者しかわからん。
 特に、クルマ運転してるときに遭うと、ほぼパニクる」
食「どうなるんですか?」
み「どうもこうも、窓の外は全部真っ白」
マジで怖いです。胃の腑を鷲掴みされるような恐怖を感じます。
↑マジで怖いです。胃の腑を鷲掴みされるような恐怖を感じます。

み「雪の層が覆ってるんだから、ライト点けてもほとんど見通せない。
 路肩には除雪された雪がうず高く積もってるから、車を寄せて停めるわけにもいかない。
 かと言って、道路の真ん中で停めるわけにもいかない。
 ダンプにでも追突されたら、一巻の終わりだからね。
 もう、運を天に任せて進むしかないわけ」
律「そんなとき、車で出なきゃいいのに」
み「急変するの。
 お天気が」
律「そんなとこ、住まなきゃいいのに」
み「あんたね。
 それを言っちゃあおしめいよ」
食「寅さんですか」
『男はつらいよ』。お盆と正月、年に2回公開されてました。
↑『男はつらいよ』。お盆と正月、年に2回公開されてました。

み「ほれ、次は何駅だ?
 減速してきたぞ。
 停まるんでねえの?」
食「前の停車駅『陸奥森田』から2駅目ですが……。
 停車します」
み「『陸奥森田』から、何分?」
食「5分ですね」
み「その間に、『徳島』まで行ってきたのか」
食「それを言っちゃあおしめいよ」
み「声色を作るな。
 気色悪い。
 ほれ、何駅だ?」
食「今度の駅名も、ある程度全国区じゃないですか。
 聞いたことあると思いますよ。
 『木造(きづくり)』です」
『木造(きづくり)』

み「おー、あるある。
 “もくぞう”って書くんだよね。
 『木造駅』って、“もくぞうえき”と読んでしまうよな」
食「読みませんよ」
み「なんでじゃ!」
食「知ってますから。
 元々は、作物の“作”の字を宛てて、『木作』と書いたようです」
み「どういう由来?」
食「弘前藩主の津軽信牧(のぶひら)が、亀ケ岡に城を築く際……。
 湿地に木材を敷いて運搬路としたことが語源だと云われてます(諸説あるようです)」
『尾瀬ヶ原』に敷かれた木道
↑これは、『尾瀬ヶ原』に敷かれた木道。

み「なるほど。
 この真っ平らな田んぼは、元々は湿地か」
津軽平野を流れる岩木川。注いでいるのは海ではなく、十三湖です。遠く見えるのは、独立峰岩木山。
↑津軽平野を流れる岩木川。注いでいるのは海ではなく、十三湖です。遠く見えるのは、独立峰岩木山。

み「亀田郷に似てるな。
 なんか、親近感が湧いてきたぞ」
食「ここは、時間があったら、ぜひ降りていただきたい駅なんですが……。
 残念ながら、1分停車じゃ無理ですね。
 3分あればな」
み「たった3分じゃ、どこにも行けんだろ」
食「いえ。
 駅の表側を見るだけですから」
み「そんなとこ見てどうする」
食「見る価値ありますって。
 今、検索してお見せしますから……。
 ほら、あった」
み「なんじゃこりゃー」
日本人が見ても驚きですが……。外人が見たら、びっくら仰天でしょうね。
↑日本人が見ても驚きですが……。外人が見たら、びっくら仰天でしょうね。

食「日本で一番有名な土偶じゃないですか?
 遮光器土偶と呼ばれてます。
 愛称は、“しゃこちゃん”。
 列車の到着時と発車時に、目が光るんですよ」
列車の到着時と発車時に、目が光るんですよ
↑あまり派手には光らないようです。

み「しかし……。
 よくまぁ、JRがこんなの作ったね。
 バカでかくないか?」
食「17メートルあるそうです」
酔っ払ってるとき見たら、自らのアル中を疑うと思います
↑酔っ払ってるとき見たら、自らのアル中を疑うと思います。

み「5階建てビルくらいだな。
 JRのどっから予算が出たんだ?」
食「作ったのは、JRじゃありません。
 木造町です。
 この建物は、『木造ふれ愛センター』って云う施設なんです」
この建物は、『木造ふれ愛センター』って云う施設なんです

み「なるほど。
 駅と地域の施設が合体したパターン、前にもあったな。
 でも、こんなの作る予算、よく議会が通したね」
食「財源は例の、竹下さんの『ふるさと創生資金』ですよ」
ちなみに、全員B型だそうです
↑ちなみに、全員B型だそうです。

み「あぁ。
 あの、1億ずつ、ばら撒いたっていう?」
食「そうそう」
み「てことは、出来たのは、バブルのころ?」
食「と思います。
 調べてみましょう。
 えーっと。
 『ふるさと創生資金』が、ばら撒かれたのは……。
 1989年から90年ですね」
み「まさに、バブルの真っ盛りだな」
まさに、バブルの真っ盛りだな
↑けっこう面白かったです。

食「その資金で、『木造ふれ愛センター』を兼ねた駅舎が建てられたわけです」
み「あの事業のおかげで……。
 日本中に、珍スポットが誕生したんだよね」
食「ちなみに青森県では……。
 黒石市で、『純金製こけし』」
黒石市で、『純金製こけし』

食「そして、おいらせ町では、例の『自由の女神』」
おいらせ町では、例の『自由の女神』

み「あれも、創生資金か!
 金塊買ったとこもあったよね」
金塊買ったとこもあったよね

食「えーっと。
 あ、ありました。
 兵庫県の津名郡津名町。
 今は、淡路市になってますね。
 でも、買ったのではなく、1億円を保証金にして、レンタルしたそうです。
 2010年に返却し、保証金は返って来てます」
み「なんだ、買ったんじゃないのか。
 でも、1億円を預金しといて、後で引き出して使うのと一緒だな。
 頭いいね」
食「レンタルでなく、ほんとに金を買ってたら……。
 2億円で売却できたそうです。
 金価格が高騰しましたから」
金価格が高騰しましたから

み「あっちゃー。
 惜しいな。
 妙なとこで小ズルく立ちまわって、1億年儲けそこなったか」
 レンタル料金分だけ、目減りしちゃってるしな」
食「でも、その分くらいの元は取ったと思いますよ。
 展示会場には、日本中から見物客が殺到したらしいですから」
展示会場には、日本中から見物客が殺到したらしいですから

食「わずか1ヶ月で、町の人口の3倍の、5万人もの入場者があったとか。
 展示されたのは、『町立静(しずか)の里公園資料館』だそうですが……」
展示されたのは、『町立静(しずか)の里公園資料館』だそうですが……
↑今は、淡路市立になってるようです。

食「“静か”どころか“大騒ぎ”になったってわけです」
み「そのころで言えば、フィーバーってやつだな」

↑ジョン・トラボルタのダンスシーン。古き良き時代哉。

律「それ、今でも使ってる人がいるわよ。
 うちの先生とか」
み「信じがたいセンス。
 あ、見学料取れば、レンタル料金は埋められるか」
2つに見えますが、鏡に映っているのです
↑2つに見えますが、鏡に映っているのです。

食「見学無料だったそうです」
み「惜しいではないか。
 1人100円取っても、1ヶ月50万だよ。
 レンタル料くらい出たろうに」
食「ま、見物料で回収しなくても、廻りまわって帰ってくるんじゃないですか」
み「どういうこと?」
食「資料館の売店コーナーでは、金箔入りの飴や金イオン入りの石鹸……」
妙に安いとこがそそられます。これなら、近所に配れますよね
↑妙に安いとこがそそられます。これなら、近所に配れますよね。

食「金塊を模したチョコレート、ティッシュケース、貯金箱などが売られてたそうですし……」
金塊を模したチョコレート、ティッシュケース、貯金箱などが売られてたそうですし……

食「会場近くの飲食店では、『金箔うどん』がメニューになったりしたそうです(残念ながら画像が見つかりませんでした)。
 そういうとこに、見物客がお金を落としてくれれば……。
 税金になって村に戻ってくるわけですからね」
み「しかし、なんでそこまで人が来るかわからん。
 金塊なんか見て、どうなるってもんでもないでしょ」
食「当時の町長が、アイデアマンだったんですよ。
 普通の頭なら、ガラスケースとかに入れて、見学させるでしょ?
 でも、津名町は違った。
 “むきみ”で置いて、見物客に自由に触らせたんです」
ベッカム様も触った!
↑ベッカム様も触った!

食「しかも、休日には町長自らが傍らに立って……。
 『どうぞ金塊に触ってください。触ると幸福になれます』と宣伝したそうです」
み「大した町長だな。
 でも、そんな展示して、盗まれる心配は無かったのかね?」
食「実際、怪盗ルパンを名乗る人物からは……。
 『金塊をいただく』という予告状も来たそうです」
『金塊をいただく』という予告状も来たそうです
↑ルパンがいませんが。

み「1億円の金塊って、どのくらいの大きさ?」
食「当時で、縦10センチ、横20センチだそうです」
当時で、縦10センチ、横20センチだそうです

み「小さ!
 片手で盗めるじゃん」
食「無理ですよ」
み「なんで!」
食「純金ですから……。
 重さは、63キロもあります」
み「どしえー。
 金って、そんなに重いの」
食「比重は、鉄の約2.5倍ですから」
み「握力が63キロ以上ないと、片手では持てんというわけか」
握力といえばこの人。100キロまで計れる握力計が振り切れたそうです。
↑握力といえばこの人。100キロまで計れる握力計が振り切れたそうです。

食「ま、今なら、金価格が高騰してますから……。
 片手で持てるくらいになっちゃってますけどね」
み「でもその予告状……。
 話題作りに、町長が自分で書いたんじゃないか?」
食「あり得ないことも無いですね。
 そもそも、一億円の使い道を巡って紛糾する町議会に……。
 金塊購入を匿名で投書したのは、当の町長だったそうですから」
町長在任は、7期26年。合併を見届けて退任。2008年死去。
↑町長在任は、7期26年。合併を見届けて退任。2008年死去。

み「わはは」
食「町の幹部職員は、大顰蹙だったそうです。
 『金塊を買うなんてみっともない』って」
み「さもありなん」
食「でも、議会が議決してしまいました。
 案を出したのが町長だってわかったんでしょうね。
 町長の案を通せば、議会が責任を取らなくて済みますから」
み「町民にも愛された、名物町長だったんだな」
食「とにかく、発想が面白い人だったようです。
 平成元年の大晦日には……。
 金塊を小槌で叩き、その音を町中にスピーカーで流して……」
金塊を小槌で叩き、その音を町中にスピーカーで流して……

食「除夜の鐘代わりにしたそうです」
み「大した、たまげた。
 平成の大合併は……。
 そういう愛すべき首長たちも、リストラしちゃったというわけだね。
 1億円の面白い使い道、まだ無かったっけ?」
食「確か、宝くじを買った自治体があったはずです」
み「どこじゃい?」
食「うーん。
 検索してもヒットしないな。
 どこかの村だったと思うんですが。
 テレビでも取りあげられたと聞きました。
 なにしろ、単に買うんじゃなくて……。
 わざわざ、東京まで買いに来たそうです。
 しかも!
 その道中がスゴかった。
 大道具小道具を取り揃え、衣装まで作って……。
 幟旗を立て、大名行列かチンドン屋みたいな格好で練り歩いて来たそうです」
幟旗を立て、大名行列かチンドン屋みたいな格好で練り歩いて来たそうです
↑想像図。

み「発想がスゴい!
 それで、1億円分買って帰ったわけ?」
食「いえ。
 少しずつ、毎年買いに来たそうです。
 『今年もやってきました~』とか言って」
み「陽気でいいではないか」
食「目的は、宝くじを買うことではなく……。
 過疎化の進む村の名を、全国に知らしめるためだったそうです」
み「なるほど。
 話題作りか。
 頭いいね」
食「毎年のようにテレビで取りあげられたそうですから……。
 広告費として使ったと思えば、大成功だったんじゃないですか」
律「で、宝くじの方は当たったんですか?」
で、宝くじの方は当たったんですか?

食「ダメだったようですね。
 結局、1億円全部使い果たして終わり、ってことだったとか」
律「でも、潔い使い方じゃないの。
 聞いてて、スカッとする」
み「もっとない?
 面白い使い方したとこ」
食「えーっと。
 あ、秋田県で強烈なところがありました。
 仙北郡の仙南村。
 今は、美郷町になってます。
 ここはなんと!
 村営のキャバレーを作ったそうです」
村営のキャバレーを作ったそうです
↑イメージです。なぜか、画像が見当たりません。

み「どっひゃー!」
食「田んぼの真ん中に、白亜の殿堂が出現したそうです」
かつて新潟市にあった『キャバレー香港』
↑なぜか画像がヒットしません。代わりに載せた画像は、かつて新潟市にあった『キャバレー香港』。日本海側最大と云われてたそうです。一度行ってみたかった。

み「なんでまた、そんな発想が?」
食「実はですね、人口9,000人の仙南村には、食堂は2軒あったんですが……。
 お酒を飲める店が、1軒も無かったそうです」
2004年、合併して美郷町となる直前の仙南村
↑2004年、合併して美郷町となる直前の仙南村。人口8,000人。平安時代の『後三年の役』の戦場だったそうです。

み「居酒屋も?」
食「もちろん。
 バーもスナックも、パブもキャバレーもありませんでした」
み「なんでまた?」
食「仙南村の北は、大曲市。
 南は横手市」
仙南村の北は、大曲市。南は横手市

食「ともにJRの駅を中心に、それなりの盛り場があります。
 仙南村は、ちょうどその真ん中に位置してるんです」
み「みんな家飲みか?
 若者は、そうはいかんだろ?」
食「タクシーで3,000円かかる、大曲や横手まで行ってたようです」
み「3,000円もあれば、そこそこ飲めるぞ」
食「『地元に飲み屋を!』というのは、村の若者たちの悲願だったそうです」
み「それで、一気にキャバレー?」
食「村としても……。
 村内に若者の集まれる場所が無いことが、若者流出の原因のひとつと案じてたそうです」
み「で、渡りに船?」
渡りに船?

律「棚から牡丹餅?」
棚から牡丹餅?

食「降って湧いたように、村に1億円が転がりこむことになった」
降って湧いたように、村に1億円が転がりこむことになった

み「それで、キャバレーか。
 スゴい発想だね。
 過激サービスもあったわけ?」
食「あなた、誤解してません?」
み「なにを?
 キャバレーと云えば、お触りくらいじゃすまないだろ」
食「あなたの頭の中にあるのは、ピンサロでしょ」
あなたの頭の中にあるのは、ピンサロでしょ

食「『キャバレー』って、ミュージカルにもあるじゃないですか」
『キャバレー』って、ミュージカルにもあるじゃないですか

食「いかがわしいサービスはなしです」
み「なんだつまらん」
食「そもそも、村がピンサロ経営なんて出来るわけないですよ」
み「でも、女の子くらいいるだろ。
 どういうのを集めたの?」
食「村の食堂の主婦が、ママに据えられたそうです」
食堂のおばちゃんをしながら『松本清張賞』を受賞した山口恵以子さん
↑こちらは、食堂のおばちゃんをしながら『松本清張賞』を受賞した山口恵以子さん。頭が下がります。

み「げ。
 一気に期待度ダウン」
食「美人だったそうですよ」
み「ほかの女の子は?」
食「さー。
 その情報は、ちょっと見つかりませんね。
 あとは、ウェイターだけじゃないですか?」
み「そんなキャバレーがあるかい。
 誰も来んぞ」
食「連日、盛況だったそうですよ」
み「ほかに酒場が無いから?」
食「それもあるでしょうし……。
 何しろ、若者を集めて、出会いの場にするのが村の目的ですから……。
 採算度外視!
 若者の懐にやさしい価格設定!」
食「おまいは客引きか」
横浜中華街の看板。栗の押し売りって……。売られたくは無いが、一度見てみたい。
↑横浜中華街の看板。栗の押し売りって……。売られたくは無いが、一度見てみたい。

食「実際、ビールの中瓶が400円。
 オールドをキープしても、4,000円だったそうです」
み「ほー。
 それって、安いのか?」
食「近くに飲み屋があったら、抗議が来るでしょうね。
 民業圧迫だって」
こちらは、那覇市の飲み屋さんです。やっぱり、400円なら安いんでしょうね?
↑こちらは、那覇市の飲み屋さんです。やっぱり、400円なら安いんでしょうね?

み「ふーん。
 でも、飲むだけじゃ、若者は満足せんだろ。
 お触り無しなんだから、ほかに何か売り物がなけりゃ」
食「もちろんです。
 村の力の入れようは相当なもので……。
 1億円のほかに、3千万も村費を注ぎこんだそうですから。
 カラオケ装置だけで、2千万したそうです」
み「なんともはや。
 生バンド呼んだほうが、安いんでないの?」
生バンド呼んだほうが、安いんでないの?

食「確かに。
 でも、話題性は抜群でした。
 全国の自治体から視察者が殺到し、マスコミの取材もスゴかったそうです」
み「だろうな。
 今もあるの?」
食「いえ。
 閉鎖されたそうです」
閉鎖されたそうです
↑実際の画像ではありません。

み「なんでまた?
 村で唯一の飲み屋なんでしょ?
 若者の殿堂になってるんじゃないの?」
食「それです。
 村の目的とは異なる方向に行ってしまったんですね」
み「どういうこと?」
食「客層です。
 豪華なカラオケ設備に熱狂したのは、若者ではなく……。
 中高年だったんです」
山科にあります
↑山科にあります。

み「それは、なんとなくわかる」
食「彼らが連日押しかけ、代わる代わる演歌を歌いあげました。
 なにしろ、人口比から云えば、圧倒的に中高年層が多いわけですからね」
これは、2012年の江戸川区のグラフ
↑これは、2012年の江戸川区のグラフ。仙南村では、もっと上が膨らんでると思います。

み「しかもたぶん、傍若無人だよな」
食「なまじ性能の良いカラオケだったので……。
 もの凄い音量なわけです。
 会話は、ほぼ不可能だったそうです」
わたしは、掃除機の音が大嫌い。掃除が嫌いなのは、そのせいかと。
↑わたしは、掃除機の音が大嫌い。掃除が嫌いなのは、そのせいかと。

み「出会いの場どころじゃないな」
食「店からは、次第に若者の姿が消えていったそうです」
み「彼らの行き先は?」
食「また、大曲や横手に戻っていったんですね」
み「残るは、中高年」
食「あと、冬場の出稼ぎの間は、嫁と姑の交歓の場となってたようです」
み「いずれにしろ、当初の目的からは大きく外れてしまったわけだな」
食「採算度外視だったのは、若者を村に定着させるという目的があったからです」
み「で、閉鎖?」
食「ですね。
 それ以上、村費を注ぎこむ意味がありませんから」
み「うーむ。
 やはり、バブルの徒花であったか。
 でも、広告費と考えれば、あながち丸損じゃなかったよね」
食「ま、楽しい使い方だったんじゃないですか」
み「まぁな」
食「で、この“しゃこちゃん”です。
 これはこれで、ずーっと残ってるという点では、いい使い方だったんじゃないですか?」
遠くからも、大いに目立ちます
↑遠くからも、大いに目立ちます。

み「『ふるさと創生事業』の記念碑みたいなもんだな」
食「ですね」
律「でもほんと、愛嬌のある顔よね。
 漫画チックで」
漫画チックで

み「宇宙人説があったよね」
宇宙人説があったよね

食「ですね。
 ほかにも、超古代文明の宇宙服説もありました」
超古代文明の宇宙服説もありました

食「あと、古代核戦争で使われた防護服だとか」
古代核戦争で使われた防護服だとか

み「デニケンだな。
 でも、目に見えるのは、雪中で目を保護する遮光器なんだろ?」
目に見えるのは、雪中で目を保護する遮光器なんだろ?

食「イヌイットが、雪中で付ける遮光器に似てることは確かです」
イヌイットが、雪中で付ける遮光器に似てることは確かです

食「でも今は、目の誇大表現だと云われてるようです」
でも今は、目の誇大表現だと云われてるようです
↑『津軽亀ケ岡焼』一戸広臣さん制作。

み「ま、確かにデザイン的ではあるけどね。
 でも、目をデフォルメする場合、こんなふうになるかね?」
食「そうですよね。
 ほかの部分は、これほど強烈にデフォルメされてませんよね」
み「この頭は、なんなんだ?」
この頭は、なんなんだ?

み「大阪のおばさんに、こんな髪型の人、いそうだけど」
律「女性なの?」
食「そう云われてます」
み「あ、これおっぱいか。
 こっちは、バカに控えめだな」
こっちは、バカに控えめだな

み「コインやで~」
食「古すぎです。
 ま、腰は大きく張り出してますけどね」
腰は大きく張り出してますけどね

み「上着のデザインじゃないの?
 でもこれ、左足がもげてるね。
 完全な形のは、出てないの?」
食「完全な状態では、出土しないようです。
 必ずどこか、欠損してます。
 でも、土中で壊れたって感じじゃなく……。
 明らかに、毀損されてから埋められてますね」
ミロのヴィーナスには、元々腕があったとか
↑ミロのヴィーナスには、元々腕があったとか。腕の付け根にホゾ穴があるそうです。腕だけではなく、この像は、いくつかのパーツから組み立てられてるそうです。

み「なんでじゃ?」
食「何かの儀式で使われるとき、切断されたんじゃないかと云われてます」
み「切られた方の部分は、出てこないの?」
食「さー。
 ちょっと、記述は無いみたいです」
み「きっと、粉々に砕かれて、みんなで食べたんだよ。
 団子とかに一緒に入れて」
律「どうして食べるのよ?」
み「食べるってことは、パワーを取り込むことでしょ」
律「美味しくないと思うわ。
 土のお団子なんて」
み「味の問題ではない。
 でもさすがに、土だけじゃ食べにくいだろうから……。
 栃餅かなんかに混ぜたんでないの?」
栃餅
↑鳥取県は倉吉産。餅米と一緒に蒸し、杵で搗いてるそうです。

食「そういえば、縄文クッキーとかも、ありましたよね」
み「あった、あった」
縄文クッキー
↑どう見ても、動物の糞ですねー。詳しくは、こちらを

み「団子より、クッキーの方がいいかな。
 元々、焼き物なんだから。
 トッピングにパラパラっと、土の粉を振るくらいにすれば、そんなに食べにくくないだろ。
 今度、やってみるか?
 遮光器土偶、どっかで貸してくれないか?」
食「ダメだと思います」
み「この土偶の出た遺跡って、何てとこだっけ?」
食「教科書で習ったと思いますよ」
み「ど忘れじゃ」
食「亀ヶ岡遺跡です」
亀ヶ岡遺跡

み「おー、それそれ。
 いつごろ発見された遺跡なの?」
食「江戸時代初期には発見されてたそうです。
 江戸になって間もない、1623年(元和9年)に書かれた日記に……。
 『ここより奇代の瀬戸物を掘し』と書かれてるそうです。
 菅江真澄も書いてるようですね」
そうとう歩きまわってますね
↑そうとう歩きまわってますね。徒歩なんだからスゴいよな。

み「おー、マスミンまで来てたのか。
 物好きじゃのー」
食「ま、江戸時代では当然のことながら……。
 大規模に乱掘されて、江戸、長崎などに売り飛ばされてます。
 優れた芸術品として、文人墨客には珍重されたそうですから」
み「さもありなん。
 長崎に行ってるってことは、海外にも流出してるな」
長崎に行ってるってことは、海外にも流出してるな

食「ですね。
 遺跡の学術的な発掘は、明治22年が最初のようです。
 その後の調査で、縄文時代晩期を代表する遺跡であることが確かめられてます。
 昭和19年には、国の史跡に指定されました」
み「昭和19年ってのが、スゴいね。
 『木造駅』のモデルになった遮光器土偶は、どこに収蔵されてるんだ?」
食「東京の国立博物館です」
思ったより小さいです
↑思ったより小さいです。ま、『木造駅』が大きすぎるんですが。

み「なんだ。
 『木造町』には無いの」
食「今は、『つがる市』ですけどね。
 重要文化財に指定されてますから」
み「『つがる市』に取り戻す運動とか、起こせばいいのに」
食「管理や防犯にお金がかかりますから……。
 市は、取り戻したくないと思います」
み「あらそう。
 亀ヶ岡遺跡って、駅から近いの?」
食「えーっと。
 地図を見ると、かなり離れてますね。
 七里長浜という海岸近くです」
七里長浜という海岸近くです

み「縄文時代は、住みやすい場所だったの?」
食「当時は、暖かかったんじゃないですか」
縄文時代は、今より1~2度気温が高く、海面も2~3メートル高かったそうです(『縄文海進』と呼ばれてます)
↑縄文時代は、今より1~2度気温が高く、海面も2~3メートル高かったそうです(『縄文海進』と呼ばれてます)。画像は、そのころの海水面を再現した関東平野のシミュレーション。

食「江戸時代は、七里長浜の砂丘からの飛砂で、不毛の地だったみたいですね。
 1682年、津軽藩四代藩主信政の時代に、藩の事業として新田開発に取り組んだそうです。
 砂丘に植林をして飛砂を防ごうとしたんですが、困難を極めたとか」
現在は、見事な保安林が形成されています(屏風山保安林)
↑現在は、見事な保安林が形成されています(屏風山保安林)。

み「さもありなん。
 新潟の西海岸もそうだったらしいから。
 てことは、遺跡のほかには何もない所か?」
食「何もない所が見どころでしょう。
 亀ヶ岡遺跡から南に少し行ったところに、ベンセ湿原というところがあります」
亀ヶ岡遺跡から、南に少し行ったところに、ベンセ湿原というところがあります
↑ほかに何も無さそうな気配マンマンです。

食「面積は、23ヘクタール。
 湿原植物の宝庫だそうです。
 6月上旬から咲くニッコウキスゲは見ものだとか」
6月上旬から咲くニッコウキスゲは見ものだとか
↑遠く霞むのは岩木山

食「一面の湿原が、黄金色に染まります」
臨死体験で見そうな光景です
↑臨死体験で見そうな光景です。

み「23ヘクタールって、23万平方メートルだろ。
 7万坪じゃん。
 『深川洲崎十万坪』より狭いではないか」
『深川洲崎十万坪』より狭いではないか

食「江戸時代と比べてもしょうがないですよ」
み「いまいち、触肢が動かん。
 坪1,000円として、7千万か。
 高い!」
食「買う気ですか」
み「坪1円なら買う」
食「売りませんって。
 駐車場や展望台もありますし……」
駐車場や展望台もありますし……

食「湿原には木道も渡してあります」
湿原には木道も渡してあります
↑タヌキも利用してます。

食「普通の格好で行っても大丈夫ですよ」
み「北海道の原生花園というところに行ったことがあるんだが……。
 とにかく、何も無くて驚いた」
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