2013.11.16(土)
み「所要時間は?」
食「21時間22分。
うち、乗車時間が、15時間18分。
待ち時間、6時間4分。
『鹿児島中央』の待ち時間が、5時間7分ですから……。
それ以外の接続は、かなりいいですよ」
み「で、乗車券が23,000円ね」
食「そうです」
み「ちょっと待て。
『リゾートしらかみ』や新幹線は、特急券とかがかかるだろ」
食「ご明察。
『リゾートしらかみ』で、510円。
新幹線は合計で、18,570円。
合計、19,080円。
乗車券を合わせると、42,080円になります」
み「それも、10枚綴りで仕入れにゃならんわけ?」
食「ですね」
み「始める前から倒産じゃ!」
食「簡易委託駅ってのは、ほぼボランティア活動と云ってもいいでしょうね」
み「簡易郵便局とは、大違いだ」
食「あ、そうそう。
この鰺ケ沢駅ですが……。
冬期間だけ、『五所川原駅』の駅員さんが1人、配置されます」
み「何のために?」
食「もちろん、除雪ですよ」
↑駅員さんの腰が引けて見えるのは、ここが、横浜市の『たまプラーザ駅』だからです。
み「1人で、あの駅全部、除雪するわけ?
死んじまうぞ。
ホームだけだって、大変じゃん」
↑雪の『鰺ヶ沢駅』
食「当然、出来る範囲ってことですよ。
ホームは、改札に近い部分だけかも知れませんね。
でも、小型の除雪機くらいは、あるんじゃないですか?」
↑新潟では、ホームセンターで売ってます。
み「屋根に除雪機は上げられんだろ」
↑北海道には、上げてる人がいました。後ろのクレーンで吊ったんでしょうね。
食「あの屋根は、1人じゃ無理ですよ。
基本的に、積もりっぱなしじゃないですか」
み「潰れるんじゃないか?」
食「ここらは、海っぱたですから……。
風は強いでしょうけど、雪はそれほど積もらないんじゃないかな」
↑1985年の『鰺ヶ沢駅』
み「五所川原駅員のためにも、そう祈りたいものじゃ」
↑これは『湯沢駅(秋田県湯沢市)』の様子。やっぱり、除雪機は必需品のようです。ここは直営駅ですので、JR東日本の駅員さんですね。
律「あら、ほんと。
海が見えなくなっちゃった」
↑【側面展望/鰺ケ沢⇒陸奥森田】2:30くらいに見える海が最後のようです。
食「ここからは、水田地帯を東へ向かいます。
まもなく、『鳴沢駅』を通過します。
この駅も、まもなく建て替えられる予定ですので……。
これが、見納めです。
はい、通過します」
↑2010年当時の駅舎。
み「五能線の駅って、なぜか夏が似合いそうだよね」
律「というより、冬は寂しすぎるんじゃない?」
↑冬の驫木駅。寂すぃ~。
み「それは言えてる。
無人駅?」
食「もちろんです」
み「除雪要員は?」
食「いるわけありません」
なお、建て替えられた『鳴沢駅』は……。
↓例によって、公衆トイレ化してしまいました。
↑寂寞感を禁じ得ません。
食「ここからは、右側の席の方が眺めがいいです。
遮るものなく、岩木山が見えますから」
み「立った方がいいか?」
食「立たなくても見えますって」
み「おー、見えた、見えた」
↑『鳴沢駅』付近から見た岩木山の画像がありました。撮影されたのは、“鉄”ではなく、チャリダーの方です(こちら)。
食「『鳴沢駅』を過ぎると、鰺ヶ沢町ともお別れです」
み「今度は、なに町だ?」
食「町じゃなくて、市です。
青森県に入って、初めての市ですね。
『つがる市』になります」
食「“つがる”は、ひらがな表記です」
み「最近、そういうところが増えてきたよね」
食「青森県では、『むつ市』『おいらせ町』がそうですね」
み「『おいらせ町』ってのは、奥入瀬川の?」
食「そうです」
↑奥入瀬川の下流域に拓けた町です。
み「ま、ある程度有名とは云え……。
読み間違えられる可能性はあるか。
“陸奥(むつ)”も、そうかな」
食「実は『むつ市』は、日本で最初のひらがなの市なんです」
み「ほー。
最初って、いつごろ?
平安時代とか?」
食「そんなわけないでしょ。
昭和30年代だったと思います」
み「“思います”ではいかんではないか。
検索してみよ」
食「ほんとに、何で最初からタブレットを出してなかったんだろ」
み「それは、言わいでもよい」
食「あ、ありました。
昭和35年8月1日です」
み「ほー。
けっこう昔だな。
50年前か。
でも、何事も、日本で最初ってのには意義がある。
どういう経緯で、ひらがなの市名になったわけ?」
食「前年の昭和34年9月1日に、下北郡の『田名部町(たなぶまち)』と『大湊町(おおみなとまち)』が合併してます。
で、最初に付いた市名が、『大湊田名部市(おおみなとたなぶし)』」
み「長すぎだろ!」
食「当時、日本一長い市名だったそうです」
↑現在は、『いちき串木野市』のほか、『かすみがうら市』および『つくばみらい市』の6文字。
み「日本初とか、日本一長いとか……。
まさか、下北半島でそんなことになってるとは思わなんだ」
↑下北半島といえば、サルしか思いつきませんでした。
食「市名で『大湊』を先にする代わりに、役場は『田名部』に置くという取り決めだったそうです」
み「ありがちじゃのぅ」
食「ところが、新市民からブーイングが起きた。
市名が長すぎて、住所を書くのが面倒くさいって」
み「わはは。
漢字5文字は、キツいわな。
冬は、特にそうだろうね。
手がかじかんでる時に……。
こんなに漢字が並んでたら、腹立つわ」
食「で、なんというか、極端に走ったわけですね。
というわけで、『むつ市』の誕生」
み「東北人によくあることじゃ。
てことは、“陸奥”をひらがなにしたのは……。
読みが難しいからではなく、書くとき簡単だから?」
食「それもあるかも知れませんね。
経緯から言って。
でも、“陸奥(むつ)”自体、漢字や読みにも転遷があったみたいですね」
み「最初は、どんな字を書いてたわけ?」
食「後のほうの“奥”はそのままなんですけどね。
“陸”は、道路の“道”でした」
み「読みは?」
食「そのまんま、“道奥(みちのおく)”です」
み「それが詰まって“みちのく”になったわけね」
食「そうらしいです」
み「じゃ、どうして“道”が“陸”に変わったんだ?」
食「それが、はっきりしないようです」
み「はっきりせい!」
食「無理言わないでくださいよ。
ただ、『常陸国』ってありますでしょ。
ここに、“陸”が使われてます」
み「わかった。
常陸の奥ってことか」
食「あるいは、“陸”自体、“道”と同じ使われ方をしてたのかも知れません」
み「ま、漢字が“陸奥”になったのはいいとして……。
この読みが、どうして“みちのく”から“むつ”に変わったんだ?」
↑『戦艦陸奥』。昭和18年6月8日、謎の爆発により山口県柱島沖で沈没。
食「2説あるそうです。
“陸”って字は、漢数字の“六”の正字でしょ」
み「領収書を書くとき、“六”は“陸”だな」
み「でもそれが何で、“むつ”になるんだ?」
食「わかりませんか?
“暮六つ”とか言うでしょ?」
↑長崎の飲み屋のようです。“暮六つ”は、日没に当たります。
み「“むっつ”の“むつ”か!
単なるダジャレじゃないか。
誰がこんな阿呆な説を唱えたわけ?」
食「本居宣長ですよ」
↑『敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花』で有名。神風特攻隊の部隊名『敷島隊』『大和隊』『朝日隊』『山桜隊』は、ここから採られました。
み「あらそう。
けっこうビッグネームだったわね。
もう一つの説は?」
食「東北弁です」
み「どういうこと?」
食「“みちのく”が訛って、“むつのく”になった」
み「はぁ。
これまた力が抜ける説だのぅ。
今度は誰じゃ?」
食「保田光則と云う人のようです」
み「知り合いか?」
食「知りませんよ。
江戸時代後期の国学者みたいです。
仙台藩士ですね」
み「でも、どっちの説も……。
“陸奥(みちのく)”の後ろ半分、“奥(のく)”が発音されなくなったことを言ってないではないか」
食「ま、省略されたんじゃないですか」
み「国名なんか、そんな簡単に省略されないだろ。
“にいがた”を、“にい”なんて言っても、誰もわからん」
食「“陸奥国(みちのくのくに)”が縮まって、“むつのくに”になったんじゃないですか。
そうなると、“陸奥”で“むつ”と読むことになります」
み「どうもすっきりせん」
食「言葉の変遷なんて、そんなもんですよ」
み「あっさり片付けおって。
ま、とりあえず“むつ市”はいいとしても……。
“つがる市”の“津軽”は、読み間違えようがないだろうが」
食「確かに。
漢字の『津軽市』には、近隣市町村から、異論が出たのかも知れませんね。
津軽地方の中心地みたいな感じになりますから」
み「新潟でも、銀行の名前が変わるとき、そういう問題が出たな」
律「また、新潟の話?」
み「良いではないか。
新潟には昔、『新潟相互銀行』って銀行があったの」
↑新潟県阿賀野市に残る琺瑯看板(2009年の画像)。
み「で、法律が変わったか何かで、『相互銀行』って種別が無くなった」
律「そう云えばあったわね。
『相互銀行』って」
↑これまた良い味わい(上2枚とも、こちらのページから拝借)。
律「何で無くなっちゃったの?」
み「はい、チミ」
食「何で、ぼくなんです?」
み「そういう役割なのだ」
食「知りませんよ」
み「タブレットで調べればいいではないか」
食「あ、そうか。
今まで、何でそうしなかったんだろ?
ぼく、不自然なまでに物知りでしたよね」
み「作者が、今ごろ気づいたのじゃ。
遡って書き直すことは叶わぬゆえ……。
このまま続けよとの神の思し召しじゃ。
はい、さっさと検索」
食「えーっと。
Wikiでいいですか?」
み「ウィッキーさんでもよい」
食「ありませんよ、そんなの。
えーっと。
昭和26年に、『相互銀行法』が出来て……。
無尽会社が免許を受け、相互銀行になったそうです」
み「むじん君がそのころからいたのか?」
食「字が違いますって。
“むじん”の“じん”は、尽くすの方です」
み「無尽とは、何ぞや?」
食「調べますから、ちょっと待ってください。
『無尽とは日本の金融の一形態である。複数の個人や法人等が“講”等の組織に加盟して、一定又は変動した金品を定期又は不定期に“講”等に対して払い込み、利息の額で競合う競りや抽選によって金品の給付を受ける』だそうです」
み「ようわからんが、ものすごくいかがわしい臭いがする。
ねずみ講でねえの?」
食「『無尽講(むじんこう)』とか、『頼母子講(たのもしこう)』とも呼ばれたようです」
食「始まったのは、鎌倉時代ですね。
これが発展して会社にまでなったのが、無尽会社だそうです」
み「それが、相互銀行になったわけね」
律「で、その『新潟相互銀行』が、どうしたのよ?」
み「相互銀行が普通銀行になるということで……」
み「『新潟相互銀行』は、“相互”を取って、『新潟銀行』に改名しようとした。
ここに、ほかの銀行から待ったがかかったわけ」
律「何で?」
み「『新潟銀行』って名称になったら……。
新潟県の中心銀行みたいな響きがあるでしょ?」
律「そうじゃないわけ?」
み「新潟県に本店がある銀行で、一番大きいのは……。
『第四銀行(だいしぎんこう)』」
↑旧第四銀行住吉町支店(昭和2年竣工)。『新潟市歴史博物館』に移築復元されてます。
律「“だいし”って、どんな字を書くの?」
み「『第四(だいよん)』と書いて、“だいし”と読むわけ。
第四の行員も、県外の銀行に電話するときは、“新潟の第四(だいよん)銀行”ですって云うらしいよ。
ただ“だいよんぎんこう”と云うと、新潟の銀行に聞こえないし……。
“だいしぎんこう”じゃ、文字が連想できない」
律「でも、何で“だいよん”じゃなくて、“だいし”になったの?」
み「知りません。
“だいし”の方が言いやすかったからじゃないの」
律「大して変わらないと思うけど。
で、『新潟相互銀行』はどうなったのよ?」
み「県内には、もうひとつの相互銀行、『大光相互銀行』があったんだけど……。
こっちは、あっさり『大光銀行』になってる」
律「『新潟相互銀行』は、あっさりなれなかったわけね」
み「『第四銀行』『北越銀行』に次ぐ、3番手の銀行だったからね。
『新潟銀行』になることを、ほかの銀行が承知しなかったらしい」
律「承知されないと、なれないわけ?」
み「無理やりしちゃったら、やっぱり関係が悪くなるでしょ。
消耗戦になったら、体力の劣る銀行は不利だし……。
やっぱ、共存共栄的な互換関係は崩したくなかったんじゃないの?」
律「で、結局、どうなったのよ?
名前は?」
み「『新潟中央銀行』になった」
律「なんか、恨みがましい名前ね」
み「どうして企業や学校って、“中央”とか“第一”とか付けたがるのかね?」
食「ま、そのエリアの一番手だというイメージを出したいんじゃないですか?」
み「逆に、チャチい感じがするんだけど」
律「で、その後、『新潟中央銀行』は、新潟の中央銀行になったの?」
み「潰れました」
律「あらまぁ。
名前が悪かったから?」
み「頭取が悪かったらしい。
元々、同族会社でね。
ワンマン経営。
バブル期の乱脈融資が原因。
ゴルフ場とか、テーマパーク」
律「テーマパークって?」
み「『新潟ロシア村』」
み「『柏崎トルコ文化村』」
み「あと、まだあったよな。
検索してみ」
「ありました。
『富士ガリバー王国』」
↑真ん中に、ガリバーが寝てます。
食「“オセアニア構想”と称してたそうです」
み「大バカものだよ。
『新潟ロシア村』は放置されたまま廃墟になって……。
逆に、心霊スポットとして有名になってる」
こちらに画像がたくさんあります。
食「『新潟中央銀行』は……。
『新潟ロシア村』に30億、『柏崎トルコ文化村』には70億も融資してたようですね」
み「『柏崎トルコ文化村』は、確か柏崎市が買い取ったと思う」
食「あ、書いてあります。
整理回収機構から、1億5千万で買い取ったそうです」
み「70億注ぎこんだ施設が、1億5千万だよ」
食「柏崎市が、入場料無料で再オープンしたようですが……」
↑『トルコ』が雪で閉鎖! やっぱ、構想自体に無理があります。
食「中越地震の被害を受け、入乗客が激減。
再閉鎖されたそうです」
律「ここも廃墟?」
食「ですね。
『富士ガリバー王国』も、そうみたいです」
↑死んでるようにしか見えません。
み「『新潟中央銀行』の本店は更地にされて……。
今は、新潟国際情報大学のキャンパスが建ってる。
一部は、小さい公園になって、鳩たちの憩いの場だね」
↑跡地に作られた、『柾谷小路ゆうあい公園』
律「祇園精舎の鐘の声……」
み「まさしく、そんな感じ」
律「でも、どっから銀行の話になったの?」
み「忘れた」
食「漢字の『津軽市』だと……。
津軽地方の中心地みたいな感じになるってことからです」
み「あ、それそれ。
でも、“津軽”って漢字も、当て字っぽいよね。
アイヌ語かな?」
食「北海道に、遠軽町(えんがるちょう)ってありますね」
↑どこからも遠い!
み「アイヌ語だろ?
引いてみ」
食「ありました。
見晴らしのいい高台を表す『インカルシ』が語源のようです」
↑遠軽町を見下ろす『瞰望岩』。まさに、“見晴らしのいい高台”そのものです。
み「“つがる”の“かる”も一緒か?」
食「そのものズバリ、“tukari”というアイヌ語がありますね」
み「意味は?」
食「“手前”という意味のようです。
北海道の手前の地ということで、“tukari”と呼ばれたとか」
↑北海道『白神岬』から見た津軽半島。
み「説は、それだけ?」
食「日本語の“漬かる”から来てるという説もありました。
津軽平野は低湿地ですからね。
沼や溜池が点在します」
↑『ベンセ湿原(つがる市木造館岡野崎地内)』
み「ちと苦しいのぅ」
食「あと、遠軽町の“かる”と一緒で……。
“崖”の意味だとか」
み「崖なんてあるの?」
食「竜飛崎の方なら、あるんじゃないですか?」
↑『竜飛崎』は、まさしく“崖”です。
み「アイヌの人が、北海道から見たら……。
海に突き出た崖に見えるってことか」
食「どうやら、定説は無いようです」
み「ふーん」
食「あれ?
“つがる”に、別の漢字がありました」
み「どんな字?」
食「東西の“東”、日本の“日”に、“流”れる。
で、“東日流”」
↑同じ表記の会社がありました。
み「読めんだろ」
食「『東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)』という古書がありますね」
み「あ、それ、どっかで聞いたことがある。
高橋克彦の小説だったかな?」
食「そうですね。
『竜の柩』に引用されてるようです」
↑面白いです。ぜひご一読を!
み「トンデモ本の一種だったんじゃない?」
食「偽書というのが、定説化してるみたいですね」
み「発見したって人が、インチキ親父だったんじゃなかった?」
食「五所川原市の和田喜八郎という人ですね。
天井裏から落ちてきたと言ってたそうです。
でも、和田の家は茅葺きで、天井裏は無かったとか」
↑実際の和田家ではありません。
み「初っ端からインチキじゃん。
どんな本よ?」
食「古代の津軽には、独自の文明が栄えていたという内容です。
遮光器土偶の姿をした「荒覇吐(アラハバキ)」神も登場します」
食「『十三湊(とさみなと)』に首都が置かれ……」
食「中国、朝鮮、東南アジアはもちろん、アラビアやヨーロッパとも交易してたとか。
カトリック教会まであったそうです」
み「いつごろの話よ?」
食「古代から、14世紀までですね。
1340年ころの大津波で、十三湊は壊滅的被害を受け……。
政権が崩壊したそうです」
み「その津波ってのは、実際にあったわけ?」
食「痕跡は見つからなかったみたいですね」
み「結局、その和田喜三郎って人が捏造した文書ってこと?」
食「それが定説になってるようです。
文書の中に、『光年』だとか、『冥王星』だとか……。
20世紀に入ってからの天文用語が使われてるそうですし」
み「カンペキに偽物じゃん」
食「でも、1980年代から90年代にかけては、ブームになったみたいです。
岡本太郎も信奉してたそうです」
み「うーむ。
余計に胡散臭い」
食「高橋克彦原作のNHK大河ドラマ『炎立つ』では……」
食「この文書の歴史観が取り込まれてたそうです」
み「そうだったのか。
逆に、見てみたかったな
いつごろの放送?」
食「平成5年ですね。
1993年」
み「うーむ。
20年近く前か。
再放送は……。
しそうも無いのぅ」
食「『東日流外三郡誌』のほかにも……。
『竹内文書』なんていう奇書もあったようですよ」
み「あ、それ聞いたことある。
高橋克彦も書いてたな」
食「『竜の柩』ですね。
しかし津軽って、伝記物が似合いますよね」
み「どっかに、キリストの墓があったんじゃないの?」
食「ほんとですか?
ちょっと、引いてみましょう。
あ、ありました。
津軽と云うより、南部でしょうかね?
十和田湖の方です。
新郷村(しんごうむら)」
み「もっと、キリストっぽい名前の村じゃなかった?」
食「昔は、戸来村(へらいむら)と云ったようです」
↑恐るべき名物が!
み「それそれ。
“ヘブライ”から来てるって云われてるんだよね」
律「キリストの墓って、どういうこと?
ゴルゴダの丘で磔になったんでしょ?」
み「それは、実は、キリストではなかった!」
律「じゃ、誰なのよ?」
食「キリストの双子の弟です」
食「名前は、イスキリですね」
律「バカバカしい」
食「そういうことが、『竹内文書』に書いてあるわけです」
↑こーゆー文字で書かれてます。
み「キリストの遺言があったんじゃなかった?」
食「あ、ありました。
『イスキリス・クリスマスの遺言』」
律「何それ?」
み「だから、それがキリストだって」
食「またの名を、福の神。
あるいは、八戸太郎天空神」
み「わははは」
↑末裔が経営か?!
食「で、キリストの遺言として……。
『五色人(いついろひと)へ遣わし文』という文書が残ってるそうです」
律「“いついろひと”って何です?」
食「漢字で書くと、五つの色の人。
なんでも昔は、5色の人種が存在してたそうです。
黄人(きびと)は、日本人を含むアジア人。
赤人(あかびと)は、インディアンなど。
青人(あおびと)は、肌が青白いんですが……。
現在、純血種はいないそうです」
↑こーゆー人たちでしょうか?
食「黒人(くろびと)は、アフリカ系で……。
白人(しろびと)が、いわゆる白人」
↑阿蘇『幣立神宮(へいたてじんぐう)』に伝わる“五色人面”。詳しくはこちら。
み「それってさ。
五色不動に似てるよね」
食「色は一緒ですね」
律「何よそれ?」
み「知らないの?
目黒とか目白は知ってるでしょ?」
律「当たり前よ」
み「あそこには、お不動さんがあるの。
目黒不動に目白不動。
で、もちろん……。
目赤不動、目青不動、目黄不動ってのもあったわけ」
律「そんなの、どこにあったのよ?」
み「はい、検索」
食「↓こちらです」
み「四神の色も同じだよね。
東の青龍(せいりゅう)、南の朱雀(すざく)、西の白虎(びゃっこ)、北の玄武(げんぶ)。
朱雀は赤、玄武が黒」
↑怪獣でんな。
律「1つ足りないじゃないの。
えーっと、黄色ね」
み「黄色は中央ね。
黄龍(おうりゅう)」
↑中国山西省大同市『九龍壁』に描かれた黄龍。
律「黄色が一番偉いみたいね」
み「黄色ってのは、すなわち金色なわけよ」
律「じゃ、金龍にすればいいのに」
み「金龍だと、ラーメン屋になっちゃうだろ」
↑金というより、緑っぽいですね。
律「バカバカしい」
み「いいの。
そういう本なんだから」
律「その本がまた、天井裏から落ちて来たの?」
み「縁の下じゃなかった?」
↑こういうところに挟まった人がいたそうです。
食「皇祖皇太神宮天津教(あまつきょう)という、新興宗教の教祖の家から出たみたいですね」
↑茨城県に本宮を置き、現在も活動中。
み「インチキくさい臭いがプンプンする。
いいねー、そういうの。
ほれ、キリスト話の続き、続き」
食「キリストは、21歳のとき、日本に渡り……。
12年間、修行を積んだそうです」
律「どうして、日本で修行するの?」
み「問うではない!
あるがままを、受け入れるのじゃ」
食「来たのは、キリストだけじゃないそうです。
モーゼも来てます」
み「いらっしゃーい!」
食「で、天皇がモーゼに十戒を授けた」
み「ありがたやー」
食「ところが、モーゼが授けられた十戒は、表十戒で……。
さらに、真十戒、裏十戒もあったそうです」
律「忍術じゃあるまいし」
食「モーゼの墓も、石川県の宝達志水町(ほうだつしみずちょう)にあるそうです」
↑レポートはこちら。
食「ユダヤの民衆をイスラエルへ導いた後、シナイ山に登ったモーゼは……。
天浮船(あめのうきふね/文字通り、空飛ぶ船)に乗り、能登宝達山に辿り着いたそうです。
その後、583歳までを宝達山で過ごし、死後は三ッ子塚に埋葬されたとか」
↑動画レポートもありました。
律「受け入れがたいわ」
食「釈迦も来てますね」
↑ミャンマーの旧首都ヤンゴンにある寝釈迦。『富士ガリバー王国』に通じるものが……。
み「し、死ぬ~」
食「とりあえず、続けていいですか?」
み「まかす」
食「じゃ、キリストの経歴を続けます。
日本で、12年間修行を積んだキリストは……。
33歳でユダヤに帰り、伝道を始めます。
でも、受け入れられず、とうとう捉えられ、磔刑に処されようとした、その時!」
み「ベンベン!」
食「バチ音はいいです。
『平家物語』じゃないんですから」
↑『高松平家物語歴史館』の琵琶法師ロボット。詳しくはこちら。
み「それからどうした!」
食「それを救ったのが、双子の弟、イスキリです。
兄と入れ替わり、十字架の露と果てたのです」
律「どうやって入れ替わったのよ?」
み「問うでない!」
律「納得いかないわ」
み「それからどうした!」
食「磔から逃れたキリストは、再び日本に戻ります」
律「どうして戻るの~?」
み「問うでないというに!」
食「で、この戸来村に住み、106歳の長寿を全うした」
律「なんか、納得いかないわね。
弟さんが可哀想じゃないのよ」
食「ま、キリストもそう思ったんでしょうね。
で、遺言を残し……。
キリストの墓の隣に、イスキリの墓も作られてます」
↑これがキリストの墓だ!
律「胡散臭すぎる話」
食「このキリストの墓の近くに、ピラミッドもあるようです」
↑運転中、知らずにこれを見た人は、自分の正気を疑うでしょう。
律「何でもあればいいわけ?」
み「エデンの園もあったんじゃなかった?」
食「『迷ヶ平(まよがたい)』ですね」
↑ここにも餅の名物が!
み「アダムとイブが食べたリンゴは……」
み「青森リンゴだったのじゃ!」
律「呆れた話」
食「ついでに云うと……。
この新郷村からほど近くのところに、例の『おいらせ町』があるんですが……。
なんと、そこにには、自由の女神もあるんです。
4分の1サイズのようですが」
↑縮尺が変!
み「うーむ。
青森、恐るべし」
食「21時間22分。
うち、乗車時間が、15時間18分。
待ち時間、6時間4分。
『鹿児島中央』の待ち時間が、5時間7分ですから……。
それ以外の接続は、かなりいいですよ」
み「で、乗車券が23,000円ね」
食「そうです」
み「ちょっと待て。
『リゾートしらかみ』や新幹線は、特急券とかがかかるだろ」
食「ご明察。
『リゾートしらかみ』で、510円。
新幹線は合計で、18,570円。
合計、19,080円。
乗車券を合わせると、42,080円になります」
み「それも、10枚綴りで仕入れにゃならんわけ?」
食「ですね」
み「始める前から倒産じゃ!」
食「簡易委託駅ってのは、ほぼボランティア活動と云ってもいいでしょうね」
み「簡易郵便局とは、大違いだ」
食「あ、そうそう。
この鰺ケ沢駅ですが……。
冬期間だけ、『五所川原駅』の駅員さんが1人、配置されます」
み「何のために?」
食「もちろん、除雪ですよ」
↑駅員さんの腰が引けて見えるのは、ここが、横浜市の『たまプラーザ駅』だからです。
み「1人で、あの駅全部、除雪するわけ?
死んじまうぞ。
ホームだけだって、大変じゃん」
↑雪の『鰺ヶ沢駅』
食「当然、出来る範囲ってことですよ。
ホームは、改札に近い部分だけかも知れませんね。
でも、小型の除雪機くらいは、あるんじゃないですか?」
↑新潟では、ホームセンターで売ってます。
み「屋根に除雪機は上げられんだろ」
↑北海道には、上げてる人がいました。後ろのクレーンで吊ったんでしょうね。
食「あの屋根は、1人じゃ無理ですよ。
基本的に、積もりっぱなしじゃないですか」
み「潰れるんじゃないか?」
食「ここらは、海っぱたですから……。
風は強いでしょうけど、雪はそれほど積もらないんじゃないかな」
↑1985年の『鰺ヶ沢駅』
み「五所川原駅員のためにも、そう祈りたいものじゃ」
↑これは『湯沢駅(秋田県湯沢市)』の様子。やっぱり、除雪機は必需品のようです。ここは直営駅ですので、JR東日本の駅員さんですね。
律「あら、ほんと。
海が見えなくなっちゃった」
↑【側面展望/鰺ケ沢⇒陸奥森田】2:30くらいに見える海が最後のようです。
食「ここからは、水田地帯を東へ向かいます。
まもなく、『鳴沢駅』を通過します。
この駅も、まもなく建て替えられる予定ですので……。
これが、見納めです。
はい、通過します」
↑2010年当時の駅舎。
み「五能線の駅って、なぜか夏が似合いそうだよね」
律「というより、冬は寂しすぎるんじゃない?」
↑冬の驫木駅。寂すぃ~。
み「それは言えてる。
無人駅?」
食「もちろんです」
み「除雪要員は?」
食「いるわけありません」
なお、建て替えられた『鳴沢駅』は……。
↓例によって、公衆トイレ化してしまいました。
↑寂寞感を禁じ得ません。
食「ここからは、右側の席の方が眺めがいいです。
遮るものなく、岩木山が見えますから」
み「立った方がいいか?」
食「立たなくても見えますって」
み「おー、見えた、見えた」
↑『鳴沢駅』付近から見た岩木山の画像がありました。撮影されたのは、“鉄”ではなく、チャリダーの方です(こちら)。
食「『鳴沢駅』を過ぎると、鰺ヶ沢町ともお別れです」
み「今度は、なに町だ?」
食「町じゃなくて、市です。
青森県に入って、初めての市ですね。
『つがる市』になります」
食「“つがる”は、ひらがな表記です」
み「最近、そういうところが増えてきたよね」
食「青森県では、『むつ市』『おいらせ町』がそうですね」
み「『おいらせ町』ってのは、奥入瀬川の?」
食「そうです」
↑奥入瀬川の下流域に拓けた町です。
み「ま、ある程度有名とは云え……。
読み間違えられる可能性はあるか。
“陸奥(むつ)”も、そうかな」
食「実は『むつ市』は、日本で最初のひらがなの市なんです」
み「ほー。
最初って、いつごろ?
平安時代とか?」
食「そんなわけないでしょ。
昭和30年代だったと思います」
み「“思います”ではいかんではないか。
検索してみよ」
食「ほんとに、何で最初からタブレットを出してなかったんだろ」
み「それは、言わいでもよい」
食「あ、ありました。
昭和35年8月1日です」
み「ほー。
けっこう昔だな。
50年前か。
でも、何事も、日本で最初ってのには意義がある。
どういう経緯で、ひらがなの市名になったわけ?」
食「前年の昭和34年9月1日に、下北郡の『田名部町(たなぶまち)』と『大湊町(おおみなとまち)』が合併してます。
で、最初に付いた市名が、『大湊田名部市(おおみなとたなぶし)』」
み「長すぎだろ!」
食「当時、日本一長い市名だったそうです」
↑現在は、『いちき串木野市』のほか、『かすみがうら市』および『つくばみらい市』の6文字。
み「日本初とか、日本一長いとか……。
まさか、下北半島でそんなことになってるとは思わなんだ」
↑下北半島といえば、サルしか思いつきませんでした。
食「市名で『大湊』を先にする代わりに、役場は『田名部』に置くという取り決めだったそうです」
み「ありがちじゃのぅ」
食「ところが、新市民からブーイングが起きた。
市名が長すぎて、住所を書くのが面倒くさいって」
み「わはは。
漢字5文字は、キツいわな。
冬は、特にそうだろうね。
手がかじかんでる時に……。
こんなに漢字が並んでたら、腹立つわ」
食「で、なんというか、極端に走ったわけですね。
というわけで、『むつ市』の誕生」
み「東北人によくあることじゃ。
てことは、“陸奥”をひらがなにしたのは……。
読みが難しいからではなく、書くとき簡単だから?」
食「それもあるかも知れませんね。
経緯から言って。
でも、“陸奥(むつ)”自体、漢字や読みにも転遷があったみたいですね」
み「最初は、どんな字を書いてたわけ?」
食「後のほうの“奥”はそのままなんですけどね。
“陸”は、道路の“道”でした」
み「読みは?」
食「そのまんま、“道奥(みちのおく)”です」
み「それが詰まって“みちのく”になったわけね」
食「そうらしいです」
み「じゃ、どうして“道”が“陸”に変わったんだ?」
食「それが、はっきりしないようです」
み「はっきりせい!」
食「無理言わないでくださいよ。
ただ、『常陸国』ってありますでしょ。
ここに、“陸”が使われてます」
み「わかった。
常陸の奥ってことか」
食「あるいは、“陸”自体、“道”と同じ使われ方をしてたのかも知れません」
み「ま、漢字が“陸奥”になったのはいいとして……。
この読みが、どうして“みちのく”から“むつ”に変わったんだ?」
↑『戦艦陸奥』。昭和18年6月8日、謎の爆発により山口県柱島沖で沈没。
食「2説あるそうです。
“陸”って字は、漢数字の“六”の正字でしょ」
み「領収書を書くとき、“六”は“陸”だな」
み「でもそれが何で、“むつ”になるんだ?」
食「わかりませんか?
“暮六つ”とか言うでしょ?」
↑長崎の飲み屋のようです。“暮六つ”は、日没に当たります。
み「“むっつ”の“むつ”か!
単なるダジャレじゃないか。
誰がこんな阿呆な説を唱えたわけ?」
食「本居宣長ですよ」
↑『敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花』で有名。神風特攻隊の部隊名『敷島隊』『大和隊』『朝日隊』『山桜隊』は、ここから採られました。
み「あらそう。
けっこうビッグネームだったわね。
もう一つの説は?」
食「東北弁です」
み「どういうこと?」
食「“みちのく”が訛って、“むつのく”になった」
み「はぁ。
これまた力が抜ける説だのぅ。
今度は誰じゃ?」
食「保田光則と云う人のようです」
み「知り合いか?」
食「知りませんよ。
江戸時代後期の国学者みたいです。
仙台藩士ですね」
み「でも、どっちの説も……。
“陸奥(みちのく)”の後ろ半分、“奥(のく)”が発音されなくなったことを言ってないではないか」
食「ま、省略されたんじゃないですか」
み「国名なんか、そんな簡単に省略されないだろ。
“にいがた”を、“にい”なんて言っても、誰もわからん」
食「“陸奥国(みちのくのくに)”が縮まって、“むつのくに”になったんじゃないですか。
そうなると、“陸奥”で“むつ”と読むことになります」
み「どうもすっきりせん」
食「言葉の変遷なんて、そんなもんですよ」
み「あっさり片付けおって。
ま、とりあえず“むつ市”はいいとしても……。
“つがる市”の“津軽”は、読み間違えようがないだろうが」
食「確かに。
漢字の『津軽市』には、近隣市町村から、異論が出たのかも知れませんね。
津軽地方の中心地みたいな感じになりますから」
み「新潟でも、銀行の名前が変わるとき、そういう問題が出たな」
律「また、新潟の話?」
み「良いではないか。
新潟には昔、『新潟相互銀行』って銀行があったの」
↑新潟県阿賀野市に残る琺瑯看板(2009年の画像)。
み「で、法律が変わったか何かで、『相互銀行』って種別が無くなった」
律「そう云えばあったわね。
『相互銀行』って」
↑これまた良い味わい(上2枚とも、こちらのページから拝借)。
律「何で無くなっちゃったの?」
み「はい、チミ」
食「何で、ぼくなんです?」
み「そういう役割なのだ」
食「知りませんよ」
み「タブレットで調べればいいではないか」
食「あ、そうか。
今まで、何でそうしなかったんだろ?
ぼく、不自然なまでに物知りでしたよね」
み「作者が、今ごろ気づいたのじゃ。
遡って書き直すことは叶わぬゆえ……。
このまま続けよとの神の思し召しじゃ。
はい、さっさと検索」
食「えーっと。
Wikiでいいですか?」
み「ウィッキーさんでもよい」
食「ありませんよ、そんなの。
えーっと。
昭和26年に、『相互銀行法』が出来て……。
無尽会社が免許を受け、相互銀行になったそうです」
み「むじん君がそのころからいたのか?」
食「字が違いますって。
“むじん”の“じん”は、尽くすの方です」
み「無尽とは、何ぞや?」
食「調べますから、ちょっと待ってください。
『無尽とは日本の金融の一形態である。複数の個人や法人等が“講”等の組織に加盟して、一定又は変動した金品を定期又は不定期に“講”等に対して払い込み、利息の額で競合う競りや抽選によって金品の給付を受ける』だそうです」
み「ようわからんが、ものすごくいかがわしい臭いがする。
ねずみ講でねえの?」
食「『無尽講(むじんこう)』とか、『頼母子講(たのもしこう)』とも呼ばれたようです」
食「始まったのは、鎌倉時代ですね。
これが発展して会社にまでなったのが、無尽会社だそうです」
み「それが、相互銀行になったわけね」
律「で、その『新潟相互銀行』が、どうしたのよ?」
み「相互銀行が普通銀行になるということで……」
み「『新潟相互銀行』は、“相互”を取って、『新潟銀行』に改名しようとした。
ここに、ほかの銀行から待ったがかかったわけ」
律「何で?」
み「『新潟銀行』って名称になったら……。
新潟県の中心銀行みたいな響きがあるでしょ?」
律「そうじゃないわけ?」
み「新潟県に本店がある銀行で、一番大きいのは……。
『第四銀行(だいしぎんこう)』」
↑旧第四銀行住吉町支店(昭和2年竣工)。『新潟市歴史博物館』に移築復元されてます。
律「“だいし”って、どんな字を書くの?」
み「『第四(だいよん)』と書いて、“だいし”と読むわけ。
第四の行員も、県外の銀行に電話するときは、“新潟の第四(だいよん)銀行”ですって云うらしいよ。
ただ“だいよんぎんこう”と云うと、新潟の銀行に聞こえないし……。
“だいしぎんこう”じゃ、文字が連想できない」
律「でも、何で“だいよん”じゃなくて、“だいし”になったの?」
み「知りません。
“だいし”の方が言いやすかったからじゃないの」
律「大して変わらないと思うけど。
で、『新潟相互銀行』はどうなったのよ?」
み「県内には、もうひとつの相互銀行、『大光相互銀行』があったんだけど……。
こっちは、あっさり『大光銀行』になってる」
律「『新潟相互銀行』は、あっさりなれなかったわけね」
み「『第四銀行』『北越銀行』に次ぐ、3番手の銀行だったからね。
『新潟銀行』になることを、ほかの銀行が承知しなかったらしい」
律「承知されないと、なれないわけ?」
み「無理やりしちゃったら、やっぱり関係が悪くなるでしょ。
消耗戦になったら、体力の劣る銀行は不利だし……。
やっぱ、共存共栄的な互換関係は崩したくなかったんじゃないの?」
律「で、結局、どうなったのよ?
名前は?」
み「『新潟中央銀行』になった」
律「なんか、恨みがましい名前ね」
み「どうして企業や学校って、“中央”とか“第一”とか付けたがるのかね?」
食「ま、そのエリアの一番手だというイメージを出したいんじゃないですか?」
み「逆に、チャチい感じがするんだけど」
律「で、その後、『新潟中央銀行』は、新潟の中央銀行になったの?」
み「潰れました」
律「あらまぁ。
名前が悪かったから?」
み「頭取が悪かったらしい。
元々、同族会社でね。
ワンマン経営。
バブル期の乱脈融資が原因。
ゴルフ場とか、テーマパーク」
律「テーマパークって?」
み「『新潟ロシア村』」
み「『柏崎トルコ文化村』」
み「あと、まだあったよな。
検索してみ」
「ありました。
『富士ガリバー王国』」
↑真ん中に、ガリバーが寝てます。
食「“オセアニア構想”と称してたそうです」
み「大バカものだよ。
『新潟ロシア村』は放置されたまま廃墟になって……。
逆に、心霊スポットとして有名になってる」
こちらに画像がたくさんあります。
食「『新潟中央銀行』は……。
『新潟ロシア村』に30億、『柏崎トルコ文化村』には70億も融資してたようですね」
み「『柏崎トルコ文化村』は、確か柏崎市が買い取ったと思う」
食「あ、書いてあります。
整理回収機構から、1億5千万で買い取ったそうです」
み「70億注ぎこんだ施設が、1億5千万だよ」
食「柏崎市が、入場料無料で再オープンしたようですが……」
↑『トルコ』が雪で閉鎖! やっぱ、構想自体に無理があります。
食「中越地震の被害を受け、入乗客が激減。
再閉鎖されたそうです」
律「ここも廃墟?」
食「ですね。
『富士ガリバー王国』も、そうみたいです」
↑死んでるようにしか見えません。
み「『新潟中央銀行』の本店は更地にされて……。
今は、新潟国際情報大学のキャンパスが建ってる。
一部は、小さい公園になって、鳩たちの憩いの場だね」
↑跡地に作られた、『柾谷小路ゆうあい公園』
律「祇園精舎の鐘の声……」
み「まさしく、そんな感じ」
律「でも、どっから銀行の話になったの?」
み「忘れた」
食「漢字の『津軽市』だと……。
津軽地方の中心地みたいな感じになるってことからです」
み「あ、それそれ。
でも、“津軽”って漢字も、当て字っぽいよね。
アイヌ語かな?」
食「北海道に、遠軽町(えんがるちょう)ってありますね」
↑どこからも遠い!
み「アイヌ語だろ?
引いてみ」
食「ありました。
見晴らしのいい高台を表す『インカルシ』が語源のようです」
↑遠軽町を見下ろす『瞰望岩』。まさに、“見晴らしのいい高台”そのものです。
み「“つがる”の“かる”も一緒か?」
食「そのものズバリ、“tukari”というアイヌ語がありますね」
み「意味は?」
食「“手前”という意味のようです。
北海道の手前の地ということで、“tukari”と呼ばれたとか」
↑北海道『白神岬』から見た津軽半島。
み「説は、それだけ?」
食「日本語の“漬かる”から来てるという説もありました。
津軽平野は低湿地ですからね。
沼や溜池が点在します」
↑『ベンセ湿原(つがる市木造館岡野崎地内)』
み「ちと苦しいのぅ」
食「あと、遠軽町の“かる”と一緒で……。
“崖”の意味だとか」
み「崖なんてあるの?」
食「竜飛崎の方なら、あるんじゃないですか?」
↑『竜飛崎』は、まさしく“崖”です。
み「アイヌの人が、北海道から見たら……。
海に突き出た崖に見えるってことか」
食「どうやら、定説は無いようです」
み「ふーん」
食「あれ?
“つがる”に、別の漢字がありました」
み「どんな字?」
食「東西の“東”、日本の“日”に、“流”れる。
で、“東日流”」
↑同じ表記の会社がありました。
み「読めんだろ」
食「『東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)』という古書がありますね」
み「あ、それ、どっかで聞いたことがある。
高橋克彦の小説だったかな?」
食「そうですね。
『竜の柩』に引用されてるようです」
↑面白いです。ぜひご一読を!
み「トンデモ本の一種だったんじゃない?」
食「偽書というのが、定説化してるみたいですね」
み「発見したって人が、インチキ親父だったんじゃなかった?」
食「五所川原市の和田喜八郎という人ですね。
天井裏から落ちてきたと言ってたそうです。
でも、和田の家は茅葺きで、天井裏は無かったとか」
↑実際の和田家ではありません。
み「初っ端からインチキじゃん。
どんな本よ?」
食「古代の津軽には、独自の文明が栄えていたという内容です。
遮光器土偶の姿をした「荒覇吐(アラハバキ)」神も登場します」
食「『十三湊(とさみなと)』に首都が置かれ……」
食「中国、朝鮮、東南アジアはもちろん、アラビアやヨーロッパとも交易してたとか。
カトリック教会まであったそうです」
み「いつごろの話よ?」
食「古代から、14世紀までですね。
1340年ころの大津波で、十三湊は壊滅的被害を受け……。
政権が崩壊したそうです」
み「その津波ってのは、実際にあったわけ?」
食「痕跡は見つからなかったみたいですね」
み「結局、その和田喜三郎って人が捏造した文書ってこと?」
食「それが定説になってるようです。
文書の中に、『光年』だとか、『冥王星』だとか……。
20世紀に入ってからの天文用語が使われてるそうですし」
み「カンペキに偽物じゃん」
食「でも、1980年代から90年代にかけては、ブームになったみたいです。
岡本太郎も信奉してたそうです」
み「うーむ。
余計に胡散臭い」
食「高橋克彦原作のNHK大河ドラマ『炎立つ』では……」
食「この文書の歴史観が取り込まれてたそうです」
み「そうだったのか。
逆に、見てみたかったな
いつごろの放送?」
食「平成5年ですね。
1993年」
み「うーむ。
20年近く前か。
再放送は……。
しそうも無いのぅ」
食「『東日流外三郡誌』のほかにも……。
『竹内文書』なんていう奇書もあったようですよ」
み「あ、それ聞いたことある。
高橋克彦も書いてたな」
食「『竜の柩』ですね。
しかし津軽って、伝記物が似合いますよね」
み「どっかに、キリストの墓があったんじゃないの?」
食「ほんとですか?
ちょっと、引いてみましょう。
あ、ありました。
津軽と云うより、南部でしょうかね?
十和田湖の方です。
新郷村(しんごうむら)」
み「もっと、キリストっぽい名前の村じゃなかった?」
食「昔は、戸来村(へらいむら)と云ったようです」
↑恐るべき名物が!
み「それそれ。
“ヘブライ”から来てるって云われてるんだよね」
律「キリストの墓って、どういうこと?
ゴルゴダの丘で磔になったんでしょ?」
み「それは、実は、キリストではなかった!」
律「じゃ、誰なのよ?」
食「キリストの双子の弟です」
食「名前は、イスキリですね」
律「バカバカしい」
食「そういうことが、『竹内文書』に書いてあるわけです」
↑こーゆー文字で書かれてます。
み「キリストの遺言があったんじゃなかった?」
食「あ、ありました。
『イスキリス・クリスマスの遺言』」
律「何それ?」
み「だから、それがキリストだって」
食「またの名を、福の神。
あるいは、八戸太郎天空神」
み「わははは」
↑末裔が経営か?!
食「で、キリストの遺言として……。
『五色人(いついろひと)へ遣わし文』という文書が残ってるそうです」
律「“いついろひと”って何です?」
食「漢字で書くと、五つの色の人。
なんでも昔は、5色の人種が存在してたそうです。
黄人(きびと)は、日本人を含むアジア人。
赤人(あかびと)は、インディアンなど。
青人(あおびと)は、肌が青白いんですが……。
現在、純血種はいないそうです」
↑こーゆー人たちでしょうか?
食「黒人(くろびと)は、アフリカ系で……。
白人(しろびと)が、いわゆる白人」
↑阿蘇『幣立神宮(へいたてじんぐう)』に伝わる“五色人面”。詳しくはこちら。
み「それってさ。
五色不動に似てるよね」
食「色は一緒ですね」
律「何よそれ?」
み「知らないの?
目黒とか目白は知ってるでしょ?」
律「当たり前よ」
み「あそこには、お不動さんがあるの。
目黒不動に目白不動。
で、もちろん……。
目赤不動、目青不動、目黄不動ってのもあったわけ」
律「そんなの、どこにあったのよ?」
み「はい、検索」
食「↓こちらです」
み「四神の色も同じだよね。
東の青龍(せいりゅう)、南の朱雀(すざく)、西の白虎(びゃっこ)、北の玄武(げんぶ)。
朱雀は赤、玄武が黒」
↑怪獣でんな。
律「1つ足りないじゃないの。
えーっと、黄色ね」
み「黄色は中央ね。
黄龍(おうりゅう)」
↑中国山西省大同市『九龍壁』に描かれた黄龍。
律「黄色が一番偉いみたいね」
み「黄色ってのは、すなわち金色なわけよ」
律「じゃ、金龍にすればいいのに」
み「金龍だと、ラーメン屋になっちゃうだろ」
↑金というより、緑っぽいですね。
律「バカバカしい」
み「いいの。
そういう本なんだから」
律「その本がまた、天井裏から落ちて来たの?」
み「縁の下じゃなかった?」
↑こういうところに挟まった人がいたそうです。
食「皇祖皇太神宮天津教(あまつきょう)という、新興宗教の教祖の家から出たみたいですね」
↑茨城県に本宮を置き、現在も活動中。
み「インチキくさい臭いがプンプンする。
いいねー、そういうの。
ほれ、キリスト話の続き、続き」
食「キリストは、21歳のとき、日本に渡り……。
12年間、修行を積んだそうです」
律「どうして、日本で修行するの?」
み「問うではない!
あるがままを、受け入れるのじゃ」
食「来たのは、キリストだけじゃないそうです。
モーゼも来てます」
み「いらっしゃーい!」
食「で、天皇がモーゼに十戒を授けた」
み「ありがたやー」
食「ところが、モーゼが授けられた十戒は、表十戒で……。
さらに、真十戒、裏十戒もあったそうです」
律「忍術じゃあるまいし」
食「モーゼの墓も、石川県の宝達志水町(ほうだつしみずちょう)にあるそうです」
↑レポートはこちら。
食「ユダヤの民衆をイスラエルへ導いた後、シナイ山に登ったモーゼは……。
天浮船(あめのうきふね/文字通り、空飛ぶ船)に乗り、能登宝達山に辿り着いたそうです。
その後、583歳までを宝達山で過ごし、死後は三ッ子塚に埋葬されたとか」
↑動画レポートもありました。
律「受け入れがたいわ」
食「釈迦も来てますね」
↑ミャンマーの旧首都ヤンゴンにある寝釈迦。『富士ガリバー王国』に通じるものが……。
み「し、死ぬ~」
食「とりあえず、続けていいですか?」
み「まかす」
食「じゃ、キリストの経歴を続けます。
日本で、12年間修行を積んだキリストは……。
33歳でユダヤに帰り、伝道を始めます。
でも、受け入れられず、とうとう捉えられ、磔刑に処されようとした、その時!」
み「ベンベン!」
食「バチ音はいいです。
『平家物語』じゃないんですから」
↑『高松平家物語歴史館』の琵琶法師ロボット。詳しくはこちら。
み「それからどうした!」
食「それを救ったのが、双子の弟、イスキリです。
兄と入れ替わり、十字架の露と果てたのです」
律「どうやって入れ替わったのよ?」
み「問うでない!」
律「納得いかないわ」
み「それからどうした!」
食「磔から逃れたキリストは、再び日本に戻ります」
律「どうして戻るの~?」
み「問うでないというに!」
食「で、この戸来村に住み、106歳の長寿を全うした」
律「なんか、納得いかないわね。
弟さんが可哀想じゃないのよ」
食「ま、キリストもそう思ったんでしょうね。
で、遺言を残し……。
キリストの墓の隣に、イスキリの墓も作られてます」
↑これがキリストの墓だ!
律「胡散臭すぎる話」
食「このキリストの墓の近くに、ピラミッドもあるようです」
↑運転中、知らずにこれを見た人は、自分の正気を疑うでしょう。
律「何でもあればいいわけ?」
み「エデンの園もあったんじゃなかった?」
食「『迷ヶ平(まよがたい)』ですね」
↑ここにも餅の名物が!
み「アダムとイブが食べたリンゴは……」
み「青森リンゴだったのじゃ!」
律「呆れた話」
食「ついでに云うと……。
この新郷村からほど近くのところに、例の『おいらせ町』があるんですが……。
なんと、そこにには、自由の女神もあるんです。
4分の1サイズのようですが」
↑縮尺が変!
み「うーむ。
青森、恐るべし」