Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(73)
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食「『くろくまの滝』です」
み「有名なわけ?」
食「『日本の滝百選』に入ってます」
『日本の滝百選』に入ってます

み「奥地っぽいじゃないか」
食「大丈夫。
 近くに駐車場がありますから。
 そこから、徒歩15分くらいです」
み「もうちょっと歩いたほうがいいんじゃないか?」
食「往復で30分です」
み「登山道か?」
食「遊歩道です」
遊歩道です

み「10往復しろ」
食「意味ないでしょ。
 とにかく、徒歩15分で『くろくまの滝』なんです。
 青森県で『日本の滝百選』に入ってるのは……。
 あとひとつ、十和田市の『松見の滝』だけです」
『松見の滝』。落差90メートル。
↑『松見の滝』。落差90メートル。残念ながら、国道から徒歩で3時間かかるようです。

み「ま、百選なんだから……。
 ひとつの都道府県あたり、2つくらいだわな」

 ちなみに新潟県には3つありました。
 一番多いのは、やはり北海道で、6つでした。
 わたしが見たことのある『オシンコシンの滝』も入ってました。
『オシンコシンの滝』も入ってました

 なんと、『日本の滝百選』を全制覇した方がいらっしゃいました(こちら)。

食「『くろくまの滝』は……。
 高さ85メートル、幅15メートルの大滝です」
『くろくまの滝』は、高さ85メートル、幅15メートルの大滝です

み「85メートルってのは高そうだな。
 『オシンコシンの滝』は、何メートル?」
食「あれで確か、50メートルくらいですよ」
み「なに!
 あの倍近くあるのか」
食「ビルにすると、25階建てくらいになります」
新潟県庁。高さ87.3メートル。
↑新潟県庁。高さ87.3メートル。

食「その高さから水が落ちる様も壮観ですが……。
 滝の姿が、観音様が合掌しているようにも見えることから、古くから信仰の対象となってます」
滝の姿が、観音様が合掌しているようにも見える
↑不信心のせいか、さっぱりそのようには見えませぬ。

み「ほー。
 でも、そんな滝じゃ、魚は上れんわな」
食「当然です。
 実は、この滝の上流が、赤石川渓流なんです」
この滝の上流が、赤石川渓流なんです
↑こんな澱みもあります。水量豊富ですね。

み「『金アユ』の?」
『金アユ』の?

食「そうです」
み「滝の下で待ってれば、金アユが落ちて来ないか?」
食「落ちてくるとしても……。
 『待ちぼうけ』級の確率だと思います」
『待ちぼうけ』級の確率だと思います

み「さて。
 トレッキングも堪能したし……」
食「いつ堪能したんです?」
み「耳だけで十分」
食「歩くの、好きじゃないんでしょ。
 人のこと言えないじゃないですか」
み「鰺ヶ沢話、終了?」
食「とんでもない。
 まだありますよ」
み「続けてよし」
食「鰺ヶ沢と言えば……。
 ある相撲取りの出身地です」
み「また、相撲取りの話か!
 岩木山が出たばっかりだろ」
食「もうちょっと古いですよ」
み「双葉山?」
双葉山?

食「古すぎです」
み「誰じゃい?」
食「舞の海ですよ」
舞の海ですよ

み「おー、微妙に懐かしいね。
 解説では、いつも出てるけど」
解説では、いつも出てるけど

食「『鰺ケ沢駅』から、徒歩15分のところに……。
 『海の駅わんど』があります」
『海の駅わんど』があります

み「『道の駅』じゃなくて?」
食「ま、基本的におんなじようなものですけど。
 魚介類や農産物が買えます」
魚介類や農産物が買えます

食「その2階に、『鰺ヶ沢相撲館』が併設されてるんです」
その2階に、『鰺ヶ沢相撲館』が併設されてるんです

み「そこに、舞の海がいるわけね」
写真が、曙と並んでるようです。なんで台に載ってるんだ?
↑写真が、曙と並んでるようです。なんで台に載ってるんだ?

食「本人はいませんって。
 舞の海ゆかりの品が並んでます」
み「ゆかりの品って……。
 新弟子検査を通過するために、たん瘤作ったシリコンとか?」
新弟子検査の写真は展示されてます。バレバレだったようですね。
↑新弟子検査の写真は展示されてます。バレバレだったようですね。

食「そんなの、あるわけないでしょ。
 引退したとき落とした髷とか……」
引退したとき落とした髷とか

食「現役時代の化粧まわし。
 あと、高校時代の写真とかです」
入門には、こんな秘話が
↑入門には、こんな秘話が。

み「あまり大した品ではないではないか」
2/3サイズの土俵もあります
↑2/3サイズの土俵もあります。

食「入場無料ですからね。
 でも、一番の見ものは……。
 20分の映像です」
み「エロいやつ?」
食「違います。
 舞の海の絶頂時の取組です。
 貴乃花、小錦、曙などを相手にした一番は……。
 見てる人から歓声が上がるほどだそうです」

↑大関時代の貴乃花との一番。舞の海の完勝です。

み「ま、確かにあの体格差の対戦は、ほかのスポーツじゃ有り得ないからね」
あの体格差の対戦は、ほかのスポーツじゃ有り得ない

食「舞の海は、『Mighty Mouse(マイティマウス)』と呼ばれ……」
舞の海は、『Mighty Mouse(マイティマウス)』と呼ばれ……

食「外人さんにも大人気でした」
み「確かに、今の相撲より、数段面白いだろうな。
 今は、デブだけだもんね」
左の力士は、北の湖部屋の大露羅(おおろら)
↑左の力士は、北の湖部屋の大露羅(おおろら)。ロシア出身。体重273㎏。三段目に10年以上いるようです。右も相当なデブですが……。残念ながら詳細不明です。

食「映像に夢中になるあまり、団体バスを遅らせた人が、何人もいるそうです」
み「うーむ。
 侮れぬ、鰺ヶ沢。
 1泊しても、いろいろ楽しめそうだな」
食「もちろんですよ。
 鰺ヶ沢温泉もありますから」
み「おー、どんな温泉じゃい?」
食「60年くらい前、石油を掘ろうとしてボーリングしたら……。
 温泉が湧いたそうです」
温泉が湧いたそうです

み「またそのパターンか」
食「これが、『山海荘』というホテルなんですが……」
これが、『山海荘』というホテルなんですが……

食「別館の『水軍の宿』もお勧めです」
別館の『水軍の宿』もお勧めです

食「30万年前の海水が、温泉となって湧き出してるそうです」
『水軍の宿』客室露天風呂です
↑客室露天風呂です。

み「料理はやっぱり、海鮮系だろうね」
食「それは当然ですよ。
 鰺ヶ沢港で水揚げされた、新鮮な魚介です。
 でも、事前に予約すれば……。
 イトウも食べられます(10人前からのようです)」
デカいので、1匹仕入れると、10人前くらいになっちゃうんでしょうね
↑デカいので、1匹仕入れると、10人前くらいになっちゃうんでしょうね。

み「ここにもいたのか、イトウさん!」
食「近くに、養殖場がありますから」
み「魚好きにはたまらんだろうね」
食「『海の駅わんど』の鮮魚コーナーには……。
 弘前からも、業者が仕入れに来るそうです」
弘前からも、業者が仕入れに来るそうです

食「水揚げされた魚がすぐに並びますから、鮮度抜群。
 しかも、安い」
み「ネタは?」
「ブリ、タイ、アンコウ、カレイ、ヤリイカ、ヒラメ」
ヒラメのヅケ丼

食「旬の魚はなんでも揃いますよ」
み「観光客は、そんなの買って帰れないではないか」
食「鮮魚だけじゃありませんから。
 イカの塩辛、生干し、サケの寒干し、ホッケ寿し、沖漬け、岩のり」
ホッケ寿し。個人的には、パス。
↑ホッケ寿し。個人的には、パス。

食「さらに、山の恵みも満載です。
 ワラビ、フキ、タケノコ、キノコ」
み「覗いて見る分には、面白そうだ。
 臭そうだけど。
 さて、鰺ヶ沢話も、このあたりで出尽くしかな?」
食「いえいえ。
 もうひとつ語らせてください。
 新しい鰺ヶ沢名物です」
み「なんじゃい?」
食「秋田犬の“わさお”です」
秋田犬の“わさお”です

み「秋田犬と云うからには……。
 犬だな」
食「当たり前です」
み「何で、青森犬じゃないわけ?」
『あおもり犬』ならいました(青森県立美術館)
↑『あおもり犬』ならいました(青森県立美術館)。

食「そんな犬、いないでしょ」
み「訛って吠えそうだけど」
食「怒られますよ」
み「どうして有名なわけ」
食「いわゆる、ぶさ犬です。
 捨て犬だったそうです」
自らの足を食う“わさお”
↑自らの足を食う“わさお”。

み「あまりに不細工で捨てたのかな?」
食「もしそうなら……。
 捨てた人は、後悔してるでしょうね」
捨てた人は、後悔してるでしょうね

み「そのココロは?」
食「拾ったのは、海沿いにある『七里ヶ浜きくや商店』というお店なんですが……」
『七里ヶ浜きくや商店』商魂は逞しそうです
↑商魂は逞しそうです。

食「わさおのお陰で、大繁盛だそうです。
 なにしろ、わさお詣でのツアーが組まれるほどだそうですから」
わさお詣でのツアーが組まれるほどだそうですから

み「何のお店よ?」
食「生干しのイカを炭火で焼いて食べさせる店です」
生干しのイカを炭火で焼いて食べさせる店です
↑いか焼き(300円)

食「鰺ヶ沢の海岸通りの名物なんですよ。
 別名『焼きイカ通り』って言いまして……」
別名『焼きイカ通り』って言いまして……

食「生干しイカが潮風になびく“イカのカーテン”は見ものです」
生干しイカが潮風になびく“イカのカーテン”は見ものです

み「うーん。
 生臭そうな通りだ。
 猫なら堪えられんな」
『ネコとスルメ』作:長谷祐史(ポストカード作家)
↑『ネコとスルメ』作:長谷祐史(ポストカード作家)

食「ひょっとしたら、猫除けの番犬として拾われたのかも知れませんね」
番犬にはならないかも
↑番犬にはならないかも。

み「タダで拾った犬が、客を招いてくれたってことか」
わさおの小屋前に群がる人々
↑わさおの小屋前に群がる人々。前の道路は、交通整理の誘導員が出るほどだそうです。

食「2008年に、旅行記ブロガー、メレ山メレ子さんのブログで紹介されたのがきっかけのようです(こちら)」

律「同じブロガーでも、ブームまで作る人がいるのね」
しかも美人。しかも東大出。
↑しかも美人。しかも東大出。

み「何が言いたい?」
律「別に」
食「実は、“わさお”の名付け親も、メレ子さんなんです。
 それまでは、ライオンみたいな毛並みから、“レオ”と呼ばれてました」
これも、“わさお”に改名すれば?
↑これも、“わさお”に改名すれば?

み「それは、ぶさ犬には似合わんな」
食「以降は、トントン拍子の出世です。
 同じ年の7月、日本テレビ『99プラス』で取り上げられ、注目を浴びました。
 さっそく12月には、鯵ヶ沢町観光協会が“わさおTシャツ”を売り出します」
鯵ヶ沢町観光協会が“わさおTシャツ”を売り出します
↑公式Tシャツ販売サイトはこちら

み「けっこう、抜け目ないでねぇの」
食「確かに。
 それをきっかけに、テレビ、新聞、雑誌が一斉に取り上げ……。
 存在が広く知られるようになりました」
テレビ、新聞、雑誌が一斉に取り上げ、存在が広く知られるようになりました

み「わたしは知らんかった」
食「犬嫌いですか?」
み「小学校のころ、神社でノラ犬に追いかけられた」
これは、ハイエナさんですが……。確か、こんな顔をしてました。
↑これは、ハイエナさんですが……。確か、こんな顔をしてました。

律「何かしたんでしょ。
 石、投げるとか」
み「するかい!
 いきなり、言いがかり付けられたのだ。
 おぅおぅおぅ、って」
おぅおぅおぅ

律「犬が、そんな口、利くわけないでしょ」
み「翻訳してるの!
 人語に」
律「原語だと、どうだったのよ?」
み「わぅわぅわぅ」
わぅわぅわぅ

律「ウソこきなさい」
み「こいてないわい!」
律「で、どうなったのよ?
 頭から食べられた?」
頭から食べられた?

み「食べられたら、ここにいないだろ!
 でも、給食のパンの残りを食われた」
給食のパンの残りを食われた

律「そんなの持って歩いてたの?」
み「ランドセルに入れてたの」
律「パンなんて、残していいの?」
み「残すのはダメだったけど……。
 持って帰るんならいいって。
 ま、わたしだけの特例だったかもね」
律「何で、あんただけ特別扱いされるのよ?」
み「入学して最初の給食で、ゲロ吐いたから。
 無理に食べさせたら、またゲロ吐くって思われたんでしょ」
無理に食べさせたら、またゲロ吐くって思われたんでしょ

律「汚い子供」
み「男子は悲惨だったね。
 トマトが食えないヤツなんか……。
 昼休み中、トマトの皿を前にして、脂汗流してた」
昼休み中、トマトの皿を前にして、脂汗流してた

律「今なら、ぜったい問題になるわ」
み「昔は、アレルギーとかって、ぜんぜん意識に無かったよね。
 今の子に無理に食べさせたりしたら……。
 アレルギーショックで死にかねないからね」
律「潔癖なお母さんだと……。
 子供が、無菌状態みたいな環境で育っちゃうのよ」
み「もうちょっと、小汚い環境で育てなさいってことか。
 先生の部屋みたいに」
なぜか落ち着けそうな部屋です
↑なぜか落ち着けそうな部屋です。

律「うるさい」
み「これは聞いた話だけど……。
 酢豚が食べれない子がいたんだって。
 でも、皿を空にするまで、席を立つことを許されない。
 その子ね……。
 先生の目を盗んで、酢豚を自分の靴下に詰めたそうよ」

↑靴下の臭いに驚愕する猫。

律「悲惨。
 トラウマだわ」
み「そんな目に合わされたら……。
 ゲロ吐けばいいんだよ」
ゲロ吐けばいいんだよ

み「居残りさせられる度にゲロ吐けば、先生も諦めてくれるって」
律「そんなの、矜持のない人間にだけ出来ることだわ」
み「悪うござんしたね」
律「だからバチが当たったのよ。
 でも、ランドセルに入れてたパンを、どうして食べられたの?
 犬が、ランドセル開けたの?」
犬が、ランドセル開けたの?

み「そんな器用な犬がいるかい。
 追いかけられて、すっ転んだ拍子に……。
 中身が散らばったわけ」


律「フタ閉めて無かったの?」
み「ときどき忘れて、バタバタいってた」
律「ほんとに、ダメな小学生ね。
 教育的指導が必要だわ」
み「大きなお世話じゃ。
 ほれ、チミ。
 さっさと話を続けんかい。
 妙なとばっちりが、わたしの方に来てしまったではないか」
「じゃ、“わさお”の話に戻ります。
 もうすぐ、映画になるんですよ。
 来年公開です(2011年2月11日青森で先行公開)」
“わさお”の映画

み「おー。
 そこまで行くか」
食「今や、鰺ケ沢駅観光駅長であり……。
 しかも、ユネスコ協会の『世界遺産活動 特別大使 “犬”(ワンバサダー)』です」
ユネスコ協会の『世界遺産活動 特別大使 “犬”(ワンバサダー)』です

み「大出世でねえの」
食「ほんとに」
み「でも本人は、もっとのんびり暮らしたいだろうね」
人気者はツライ
↑人気者はツライ

食「報酬は、干しイカか?」
まさか、陸で天日干しされて生涯を終えるとは、思ってなかったでしょうね
↑まさか、陸で天日干しされて生涯を終えるとは、思ってなかったでしょうね。

律「犬にイカはダメなんじゃないの?」
食「そうなの?」
律「腰を抜かすとか聞いたことがあるわ」
これは、“腰を使う”でした
↑これは、“腰を使う”でした。

み「なんで腰を抜かすわけ?」
律「知らないけど」
食「消化が悪いからじゃないですか?
 犬の歯じゃ、イカに穴を空けるくらいで飲み込んじゃうでしょうから」
犬の歯じゃ、イカに穴を空けるくらいで飲み込んじゃうでしょうから

み「消化が悪いくらいなら、腰は抜かさんだろ」
食「下痢のしすぎで、ふらふらになるんじゃないですか?」
こんなにゲッソリ痩せたことも。飼い主さんが入院したためだそうです。
↑こんなにゲッソリ痩せたことも。飼い主さんが入院したためだそうです。

み「あ、発車か?」
食「この『鰺ヶ沢』を出ると、海ともお別れです」
み「おー。
 お名残り惜しや、日本海。
 でも、この『鰺ケ沢駅』、今までの駅と雰囲気が違うよね」
この『鰺ケ沢駅』、今までの駅と雰囲気が違うよね
↑表から見ると、いっそう立派です。

律「どう違うの?」
み「『能代駅』を過ぎたあたりからって……。
 イカニモな感じだったじゃん。
 最果て路線って云うか」
見てみたい気はしますが、ここを生活の場とするのは、ちょっと……。
↑『驫木駅』。見てみたい気はしますが、ここを生活の場とするのは、ちょっと……。

律「確かに、それは言えてるわね。
 賑やいだ感じがする。
 駅員さんもいるし」
駅長は、これですが
↑駅長は、これですが。

食「同じ五能線でも……。
 『鯵ヶ沢』から『弘前』までは、乗客数がぜんぜん違うんです。
 『深浦駅』を覚えてますか?」
『深浦駅』を覚えてますか?

み「おぅ。
 『鯵ヶ沢』と並ぶ、津軽四浦のひとつではないか」
食「『深浦駅』の1日の乗車人数は、100人弱です。
 でも、『鰺ケ沢駅』は、300人を超えるんですよ」
み「うーむ。
 道理で、人の臭いがプンプンするわい」
律「鬼ババみたい」
鬼ババみたい

食「『鯵ヶ沢』発着の列車も、けっこうありますので……」
『驫木駅』あたりとは、本数がぜんぜん違います
↑『驫木駅』あたりとは、本数がぜんぜん違います。

食「構内に車庫があって、翌朝の始発列車が留置されてます」
構内に車庫があって、翌朝の始発列車が留置されてます

み「それじゃ、駅員もいるわな」
食「でも、あの駅員さん、JR東日本の社員じゃないんですよ」
み「なに!
 また観光駅長か?」
食「観光駅長は、“わさお”ですって。
 ここは、業務委託駅なんです。
 女性の観光駅長がいた『あきた白神駅』は、簡易委託駅です」
女性の観光駅長がいた『あきた白神駅』は、簡易委託駅です

み「どう違うんだ?」
食「業務委託駅ってのは……。
 JRの関連会社なんかに、すべての業務が委託されてる駅のことです。
 ここらは、『ジェイアールアトリス』という、秋田市にある子会社に委託されてます。
 JR東日本秋田支社管内の業務を受託してる会社です」
正式名称は『東日本旅客鉄道秋田支社』。秋田駅の隣にあります。
↑正式名称は『東日本旅客鉄道秋田支社』。秋田駅の隣にあります。

み「なんで秋田支社なんじゃ?
 ここは青森ではないか」
食「実は……。
 JR東日本に、青森支社ってのは無いんです。
 盛岡支社の青森支店になります」
青森駅の2階にあります。
↑青森駅の2階にあります。

み「1県にひとつずつあるのかと思ってた」
食「JR東日本の支社があるのは……。
 東京、横浜、八王子、大宮、高崎、水戸、千葉、仙台、盛岡、秋田、新潟、長野ですね」
み「てことは……。
 青森のほかに、山形や福島にも無いってことか」
食「山形と福島は、共に仙台支社の支店があります。
 あと、栃木、山梨も無いですね。
 栃木は大宮支社、山梨は八王子支社の管轄で、支店はありません」
み「静岡も無いぞ」
食「静岡は、JR東海ですよ」
み「あ、そうか」
律「でも、子会社から来てる駅員さんかどうかなんて……。
 見分けが付きませんよね」
食「業務委託駅の駅員は、JRの制服を着てますからね。
 JRの正規社員がいる駅を、直営駅と云うんですが……。
 外見で見分けることは出来ません」
↑この方は車掌さんで、駅員ではありません
↑この方は車掌さんで、駅員ではありません。

み「観光駅長は、一発でわかったのにね」
観光駅長は、一発でわかったのにね

食「会社じゃなく、市町村や農協、駅前の商店などに委託された駅を……」
会社じゃなく、市町村や農協、駅前の商店などに委託された駅を、簡易委託駅と云います

食「簡易委託駅と云います」
み「『あきた白神駅』とか『ウェスパ椿山駅』がそうだったね」
食「『あきた白神駅』は簡易委託駅ですが……。
 『ウェスパ椿山駅』は、無人駅の扱いです」
『ウェスパ椿山駅』は、無人駅の扱いです

み「いたじゃん。
 制服着た、観光駅長」
制服着た、観光駅長

食「彼女は、ウェスパ椿山を運営する『ふかうら開発』の社員です。
 『リゾートしらかみ』が到着するときだけ、下車客を迎えるんですね」
み「ややこしいのぅ。
 どう違うんだ?」
食「簡易委託駅では、受託者が切符を売ってるわけです。
 『ウェスパ椿山駅』の観光駅長さんは、切符は売りません」
『ウェスパ椿山駅』の観光駅長さんは、切符は売りません
↑これは、夏服でしょうか?

み「切符を売るかどうかの違いなの?」
食「基本的にはそうです。
 切符を売ると言っても、駅構内で売ってるとは限りません。
 駅前商店が受託者の場合……。
 その商店の店先で売ってたりします」
その商店の店先で売ってたりします

食「つまり、駅は無人駅と変わりません」
つまり、駅は無人駅と変わりません

み「ふーん」
食「簡易委託駅の委託費って、どういう形で支払われてると思います?」
み「どういうって、月々、契約額が振り込まれるんじゃないの?」
食「実は、切符なんですよ」
み「どういうこと?」
食「受託者は、JRから、綴りになってる切符を仕入れるんです。
 ちなみに、JR東日本では、額面金額の5%引きです。
 これを客に売って、5%の利益を得るという仕組みです。
 JR西日本とかだと、11枚綴りの切符を10枚分の値段で仕入れるというシステムです。
 利益は10%ですが、1枚多く売らないと利益が出ません」
切り離すためのミシン目が入ってますね
↑切り離すためのミシン目が入ってますね。

み「なんか原始的だね」
食「定額契約じゃ、お店を頻繁に閉めてたりされれば……。
 JRは、損しますからね。
 売った分だけが利益になる仕組みにしておけば……。
 業務がちゃんと行われてるか、管理する手間も軽減できる」
み「しかし、5%って、どのくらいの利益になるわけ?
 『あきた白神駅』の乗車人数って、どれくらい?」
手前のプレハブ小屋みたいなのが、『あきた白神駅』
↑手前のプレハブ小屋みたいなのが、『あきた白神駅』。その後ろの建物が、駅の業務を受託している『八峰町緑地等管理中央センター』。“官(八峰町)”が“民(JR東日本)”の仕事を受託してるわけです。

食「1日、30人くらいじゃないでしょうか」
み「そのうち何人が、駅で切符を買うかだよね。
 すでに持ってる人もいるだろ?」
食「観光駅なら、そうでしょうね」
み「ま、3分の2が買うとして、20人。
 どこまでの切符だろ?
 駅で買う人って、そんなに長距離じゃないんじゃないか?
 たとえば、『弘前駅』までだといくら?」
たとえば、『弘前駅』までだといくら?

食「待ってくださいよ。
 今、時刻表調べますから。
 『あきた白神駅』から『弘前駅』は、127.4kmだから……。
 2,210円です」
み「そんなに高いの!
 それなら儲かるか。
 2,210円の5%って、いくら?
 電卓電卓」
律「お金の話になると、目の色が変わるんだから」
み「純粋な探求欲だ。
 出た?」
食「111円です」
み「×20人」
食「2,220円」
み「うーむ。
 これだけで食べていくのは、難しいのぅ」
働けど働けど我が暮らし楽にならざりじっと手を見る
↑働けど働けど我が暮らし楽にならざりじっと手を見る

律「でもさ、乗る人みんなが、『弘前駅』までの切符を買うわけじゃないんでしょ?」
み「当たり前でんがな」
律「さっき、切符はJRから仕入れるっておっしゃいましたよね?」
食「はい」
律「乗る人ごとに行き先が違うんだから、金額もまちまちでしょ?」
み「あ、そうか。
 そうだよね。
 どうやって仕入れるんだ?」
食「額面金額ごとに、10枚綴りになってるんです」
み「それ、全部仕入れるの?」
食「ある程度、揃えなきゃならないでしょうね。
 乗客が乗る区間の切符が無ければ、売れないわけですから」
み「じゃ、さ。
 たとえば、『枕崎駅』までだと、乗車料金はいくらよ」
たとえば、『枕崎駅』までだと、乗車料金はいくらよ

食「鹿児島のですか?
 そんなとこまでの切符、五能線の駅で買わないでしょ」
み「買うとして!
 ほれ、時刻表」
食「そんな遠くの区間、時刻表で距離計算するの大変ですよ」
み「スマホとか持ってないの?」
食「あいにく……。
 ガラケーなんで。
 あ、タブレットがあるんだった!」
み「そんなの出してどうする!
 駅で盗んできたな?」
久留里線『横田駅(千葉県袖ケ浦市)』(2009年12月19日)
↑久留里線『横田駅(千葉県袖ケ浦市)』(2009年12月19日)

食「そのタブレットじゃありませんって。
 タブレット端末です」
タブレット端末です

み「何で、今まで出さなかったんだ?」
食「話の都合じゃないですか?
 作者に聞いてください」
み「この件は不問に付す。
 検索してみれ」
律「ご都合主義なんだから」
み「いいの!」
食「出ました。
 乗車距離、2,426.4km。
 乗車券は、23,000円になります」
み「おー、すげー。
 でも、儲けが5%だと……。
 1,150円か。
 食えん……。
 1日10人くらい、買ってくれんもんか」
食「一生に1枚も売れないと思います。
 第一、23,000円の切符なんて、仕入れておかないでしょ」
み「そんな遠くまでの切符、当日買うわけなかろ。
 注文されてから、仕入れに行けばいいじゃん」
食「10枚綴りですよ。
 あとの9枚はどうするんです?」
み「それも、10枚なの!」
食「そういう規則だと思います」
高岡市と新湊市を結ぶ路面電車『万葉線』の回数券
↑高岡市と新湊市を結ぶ路面電車『万葉線』の回数券。11枚綴りで10枚分のお値段。

み「うぬぬ。
 23万円分仕入れて……。
 全部回収するのに、何年かかるんだ?」
食「1,000年はみておかないとダメでしょうね」
み「『垂乳根イチョウ』しか、商売出来ん!」
垂乳根イチョウ

食「経路図が出てますけど、見ます?」
み「待て。
 それを当ててみようではないか。
 まず、『あきた白神』で『リゾートしらかみ』に乗って……。
 『秋田』まで行くわな」


食「いきなりハズレです」
み「なんで!
 五能線しかあり得ないだろ」
食「『リゾートしらかみ』は当たりですが……。
 方向が逆です。
 『新青森』に行きます」
『新青森』に行きます

食「『あきた白神』から、『リゾートしらかみ1号』9:58発」
『リゾートしらかみ1号』9:58発

食「『新青森』、13:16着」
『新青森』、13:16着

み「なんだ。
 あとは、新幹線を乗り継ぐだけだろ」
食「当たりです。
 『新青森』から、『はやて36号』13:42発」
『新青森』から、『はやて36号』13:42発
↑なんか可愛くないです。緑は似合わないんじゃないか?

食「『東京』、17:08着」
『東京』、17:08着

食「『東京』から、『のぞみ245号』17:20発」
『東京』から、『のぞみ245号』17:20発
↑緑よりマシですね。

食「『新大阪』、19:53着」
『新大阪』、19:53着
↑イマイチ、面白味のないデザインです。大阪らしく、たこ焼き形とかにすればいいのに。

食「『新大阪』から、『みずほ609号』19:59発」
『新大阪』から、『みずほ609号』19:59発
↑右が“みずほ609号”。左は何でしょう?(博多駅のようです)

食「『鹿児島中央』、23:44着」
『鹿児島中央』、23:44着
↑後ろに見えるのは、観覧車『アミュラン』。これなら、駅の場所が遠くからでもわかりますね。

み「ここまでで、1日がかりではないか」
食「鹿児島まで来てるんですから、あと一息です。
 『鹿児島中央』から、指宿枕崎線に乗り換えますが……」
『鹿児島中央』から、指宿枕崎線に乗り換えます

食「接続は、ちと悪いですね」
み「何時じゃ」
食「4時51分発です」
み「悪すぎだろ!
 5時間待ちじゃないか。
 逆に、泊まるにはもったいない」
食「『鹿児島中央駅』のベンチで、ウトウトするしかありませんね」
『鹿児島中央駅』のベンチで、ウトウトするしかありませんね
↑新幹線ホーム。ベンチは、ちょっと硬そうですね。

み「で、その先は?」
食「ここから先は順調です。
 『鹿児島中央』、4:51発」
『鹿児島中央』、4:51発
↑この色は、新潟では見られません。

食「『指宿』、5:56着」
『指宿』、5:56着
↑南国ですね~。

食「ここで、乗り換えになります。
 『指宿』、6:09発」
『指宿』、6:09発
↑これは、指宿枕崎線を走る観光特急『指宿のたまて箱』。JR九州の車両って、魅力的ですよね。

食「『枕崎』、7:20着」
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