2013.8.10(土)
食「そんなわけないでしょ。
11,500円です」
み「高いではないか!」
食「5枚綴りになってます。
つまり、1枚、2,300円です。
この1枚、つまり、2,300円で、丸1日、普通列車に乗り放題になります」
み「どっからどこまで乗っても?」
食「そうです」
み「ふむ。
そりゃ、安いかも知れんな」
食「ですよ。
2,300円っていうと、東京から沼津くらいですからね」
食「この料金で、1日、どこまででも乗れるわけです」
み「沼津食わずで?」
食「ずいぶん古いギャグですね。
あ、そうそう。
この5枚綴りの切符は、複数人でも使えるんです。
つまり、5人のグループでの日帰り旅行も可能ということです」
み「ふーん。
便利そうな切符だな」
律「1綴り買って持ってれば、何かのときに使えるかもね」
食「残念ながら……。
利用には、さまざまな制限があるんです。
まずは、利用期間です」
み「使えない期間があるってこと?」
食「ていうより、使える期間が限られてるんですよ。
すなわち、学校が休みになる、春、夏、冬の一時期です」
み「一時期とは、いつからいつまでじゃ?
これは、一般読者に有益な鉄道情報を提供する番組である。
曖昧なことではいかんぞよ」
食「番組ってなんです?」
み「『日本の車窓から』」
↑もちろん、『世界の車窓から』のパロです。
食「聞いたボクがバカでした。
でも確かに、曖昧な情報は、時には害になったりしますからね。
それでは、正確な利用期間を発表します」
み「ダラダラダラダラ」
食「何です、それ?」
み「ドラムロールのサービスです」
食「いりません。
発表します。
まず、春は……」
み「曙」
食「だから……。
そういうの、やめてくれます?」
み「間を置くから、合いの手を入れたくなるんじゃないか。
間髪入れずに進めんかい」
食「春は、3月1日から、4月10日までです」
み「なるほど、春休みに合わせたということだな」
食「ただし、注意事項があります」
み「なんじゃい」
食「発売期間です」
み「今、3月1日から4月10日までって、言ったではないか」
食「それは、利用できる期間です。
発売期間は、また別なんです。
すなわち!
2月20日~3月31日までです」
み「期間の10日前ってことか」
食「そうです。
2月20日に買っても、使えるのは、3月1日からになります。
逆に、4月に入ってしまうと……。
利用期間はまだ残ってますが、切符は買えないわけです」
み「なるほど。
ややこしな」
↑ややこしい食べ方。
食「まだ付け加えたいことがあるんですが……。
とりあえず、あと2回の発売期間だけ、先に発表させてください」
み「ダラダラダラダラ」
食「それはいいですって。
続きまして……。
夏は!」
み「曙」
食「止めてくださいって。
それに、夏は曙じゃないでしょ」
み「それじゃ、なんじゃい?
武蔵丸か?」
食「話題が古いんですけど」
み「そんなら、大砂嵐」
食「新し過ぎます。
今は、2010年の10月ですよ。
大砂嵐は、まだ入門してないじゃないですか(2012年3月初土俵)」
み「なら、何でわたしが知ってるのじゃ?」
食「進めます。
夏の利用期間は、7月20日~9月10日までです」
み「おー。
春より長いな。
やっぱ、休みが長いからだな。
で、発売期間は例によって、10日前か。
てことは、7月10日からだな」
食「いえ。
7月1日からです」
み「なんでじゃ!」
食「うーん。
これはよくわかりませんね」
み「7月1日に買っても、使えるのは20日からなんだろ?
その20日間、切符を眺めて暮らせってわけ?」
食「夏場は、窓口が混むからかな?」
み「はっきりせんやつ。
そんなら、発売期間の終わりも、20日前?」
食「いえ。
そっちは、10日前です。
すなわち、7月1日~8月31日までが発売期間です」
み「イマイチ、納得できん」
食「納得してください。
続けていいですか?」
み「納得できん分は、貸しにしておく」
食「何でボクが、借りを作らなきゃならないんですか」
み「調査不足だから」
食「理由まで知りませんよ。
情報をお伝えしてるだけなんですから」
み「いいから、続きをお伝えせい」
食「じゃ、いきます。
冬は……。
曙じゃないです」
み「いらんこと言わいでいい」
食「冬の利用期間は、12月10日~1月10日までです」
み「一番短いな」
食「丸1ヶ月ですね。
でも、年末年始も使えますからね。
発売期間は、利用期間の10日前。
すなわち、12月1日~31日までです」
み「ずいぶん期間が限定される切符だな」
食「でも、合計すれば案外長いですよ。
春が、41日。
夏は、53日。
冬が、32日。
合計、126日です。
1年の3分の1以上あります」
み「ま、ひとつの期間に2枚くらいずつ使えば……。
けっこう、楽しめるな」
食「ここで、重大な注意事項を発表します」
↑狙いではないと思います。
食「さっき、まだ付け加えたいことがあるって言いましたでしょ」
み「ダラダラがいる?」
食「いりません」
いいですか。
最重要ポイントですよ」
み「穴の空くほど丸?」
食「何です、それ?」
み「高校の時の、英語教師の口癖」
食「続けます。
5枚綴りの切符は……。
ひとつの期間で、すべて使い切らなきゃダメなんです!」
み「なんじゃとー。
そんなの聞いてないぞー」
食「聞いてなくても、券面に書いてありますよ」
み「切符に書いてある文字なんか、読むわけなかろうが」
食「なんでです!
読みましょうよ」
み「まぁ、いい。
余ったら、払い戻してくれるんだろ?」
食「だから……。
ダメなんですって。
1枚でも使ったら、もう払い戻しはできません」
み「悪徳商法じゃないか」
食「なんでですか。
切符にそう書いてありますよ」
み「だから、読まんだろうが」
食「読んでくださいって」
み「クーリングオフ、効く?」
食「有効期間内で、しかも1枚も使って無ければ、払い戻しが効きます。
ただし、210円の手数料がかかりますけど」
み「1枚も使わないんなら、買わなきゃいいだけの話だろ。
あ、わかった。
JRの悪どい魂胆が」
食「何ですか?」
み「これは、ワナだな」
食「何のことです?」
み「すなわち、次の期間にまたがって使えると思って……。
券を使い切らない人が、必ずいるわけだ。
そういう善良な庶民をたぶらかし、結局は高くつく切符を買わせようという所業……。
不届き千万。
成敗いたす」
食「何でですか!
ちゃんと確認して買わない方が悪いでしょ」
み「なぜにJRの肩を持つ?
金もらってるんじゃないか?
そうか。
『青春18きっぷ』の受託販売をしてるな。
懐に、100枚くらい束があるんじゃないか?」
み「1枚売ると、いくら入るわけ?
JRが、そんなに高い手数料出すわけないよな。
1%か?
なら、1枚売って、115円か。
安っ!
10枚売っても、1,150円じゃないか。
よくそんな安い商売するな」
食「だから、してませんって。
ま、素人向けの切符じゃないことは確かです。
素人が、注意書き見ないで旅行したら、トラブルばっかり起こすでしょうね」
み「例えば?」
食「例えば……。
時刻表の都合とかで、どうしても、急行や特急に乗らなきゃならなくなった」
食「『青春18きっぷ』で、乗れると思いますか?」
み「そんなの簡単じゃ。
急行券や特急券を別に買えば、乗れるに決まっとるじゃないか」
食「残念ながら……。
あなたは、車掌さんと一悶着起こしますね」
↑この車掌さんは、一言もしゃべらなかったそうです。
み「なんでじゃ!」
食「急行や特急に乗る場合は……。
急行券や特急券は当然のことながら!
乗車券も、別に買わなきゃならないからです」
み「なんじゃとー!」
食「つまり、急行や特急に乗る場合……。
『青春18きっぷ』は、何の効力も無いということです」
み「やっぱり成敗いたす」
↑本当のセリフは、何でしょう?
食「よく調べて乗りましょう」
み「じゃ、この『リゾートしらかみ』にも乗れないわけ?」
食「これは、快速列車ですから大丈夫です。
ただし、指定席券を別に買わなきゃなりませんけど」
↑覚えてますか?、『東能代駅』。これならタダで乗れます。
み「うーむ。
わけのわからん切符じゃ」
食「わかるでしょ。
単純に考えればいいんです。
快速を含む普通列車にだけ、1日2,300円で乗り放題という切符です。
さっきも言ったとおり、2,300円っていうと、『東京→沼津』間くらいです」
↑『ぬまづ燦々レディー』。意外に美人度高し!
食「この料金で、どこまででも行けるんですよ」
み「待てい。
1枚の切符は、1日しか効力が無いわけだろ?」
↑『ひろしまドリミネーション2010』より。靴がデカすぎだろ。
食「そうです」
み「普通列車だけ乗りついでたら……。
そんなに遠くまで行けっこないじゃないか」
食「ほー。
案外、鋭いですね」
み「案外とはなんじゃ!」
食「『青春18きっぷ』が発売されたのは、1982年。
もちろん、国鉄の時代です」
↑今のヤクルトの前身が『国鉄スワローズ』。しかし、80円って……(昭和37年)。
食「そのころは、長距離を走る普通列車が、けっこうあったんです」
み「あ、叔父に聞いたことがある。
上野と新潟間で、直通の普通列車があったんだって」
↑1964年5月号。上野発9:14分の普通列車『新潟』行きがあります。こちらのページに、詳しいタイムテーブルが載ってます。新潟着は、18:58分ですね。叔父が乗ったのは、これより15年くらい後になると思います。
律「今は無いの?」
み「おまへんがな。
そんな呑気な列車。
新幹線で2時間かからないのに。
叔父の話によると……。
上野を、朝9時過ぎに出るんだけどね。
山の上の駅で、1時間くらい、急行の通過待ちで停車するんだって」
↑プラモ『田舎の駅』。残念ながら、メーカーが倒産してます。
み「結局、新潟に着くのは、夕方の4時半ごろだったって」
律「7時間?」
み「そういうこと」
律「のんびりしてていいじゃない」
み「ま、ね。
夏休みの帰省に使ったらしいけど……。
冷房もなく、天井に扇風機が回ってるだけ」
み「結局、使ったのは、その1回きりだったって」
律「『青春18きっぷ』、使ったのかしら?」
み「まだ売ってなかったと思うよ。
ま、売ってても、買わなかっただろうけど」
律「どうして?
東京新潟間を、2,300円で行けたら、そうとう割安じゃない」
み「帰省の往復で2回分使うとしても……。
あと、3回も乗らなきゃならないでしょ」
律「あ、そうか」
み「普通列車なんて、座席のリクライニングも無いし……」
↑津軽鉄道『ストーブ列車』の車内。
み「長時間乗るのは、楽じゃないわよ」
律「それはそうね」
み「あと、5回分ってのが、JRも意地が悪いよな。
4回分なら、スゴく使い勝手がいいのに。
2人で買えば、帰省の往復にぴったりじゃない」
食「ぴったりすぎですよ」
↑ぴったりフィット。
食「そんな使われ方したら、大損です」
み「だから、わざと奇数にしてあるんだな」
↑“丁”は、丁度の“丁”。“半”は、半端の“半”だそうです。
食「ですかね。
さーて。
トンネルを4つ過ぎましたよ。
見逃さないでください。
あっという間ですから」
み「どーれ」
食「あ、そっちじゃないです。
駅は、山側になりますから、反対側の窓を見てください」
み「立った方がいいか?」
食「そこまでしなくても……」
み「すでに立っておる」
食「はい。
来ましたよ」
み「……。
何も来ないぞ」
食「もう過ぎましたって。
通ったでしょ、駅」
み「小屋みたいなのは見た」
食「それが駅です」
み「さっきから、あれだけ引っ張っておいて……。
これだけきゃ?」
食「やっぱり、降りなきゃダメですね」
↑動画『驫木駅を散策してみた』。
み「『青春18きっぷ』と、どう関係するんだ?」
食「ポスターになったんですよ。
2002年の春バージョンでした」
食「列車から駅を見ようとすると、後ろが山になっちゃいますけどね。
山側から見ると……。
駅舎があって、線路があって、そのすぐ向こうが日本海なんです。
あのポスター見て旅に出たくなった人、たくさんいると思いますよ」
み「そんなもんかのぅ。
そう言えば、駅名を聞いてなかったな」
食「『驫木(とどろき)』です」
み「おんなじ駅、世田谷にあるよな」
食「あぁ。
等々力ですね」
食「字が違いますけど……。
語源は一緒ですね。
世田谷の等々力には、等々力渓谷があります」
↑世田谷区にあるんですよ。
食「川の近くには、よくある地名ですね。
水音の轟きから来てます」
み「ここにも、そんな川があるのか?」
食「ここは、波の音の轟きですよ。
時化の時は、駅舎が波を被ることもありますから」
み「カニが飛んでくる?」
食「何です、それ?」
み「叔父が、出雲崎で見たって言ってた」
食「出雲崎って、新潟県のですか?」
み「そう。
良寛さんで有名な出雲崎。
冬、そこの工事現場に通っててね。
海っぱたに公園を作ってたのよ。
その公園の池に、ある朝、カニが沈んでた」
↑後ろ姿は、子供時代の良寛さん。その前に見えるのが池だと思います。
み「甲羅が手の平くらいもある、明らかに海のカニなわけ。
池は、普通の淡水の池なんだよ」
律「淡水にも住めるの?」
み「住めませんがな。
カニは、死んでたんです」
み「叔父は、地元の子供が、イタズラで投げ込んだんだろうと思ったわけ」
律「違ったの?」
み「ある風の強い日。
その真相がわかったそうよ。
波しぶきが、頭上はるかまで上がって……。
その波濤を目で追ったら、波頭に乗ってた何かが、池に飛びこんだ。
それが、カニだったわけ」
律「波で打ちあげられたの?」
み「左様です」
律「ほんとかしら」
み「かように、日本海の冬の波は強烈なわけよ。
あ、そうそう。
ちょっと前、外人の演歌歌手がいたじゃない?
ジェロニモだっけ?」
食「ただのジェロだと思います」
み「それそれ。
ジョロ」
↑おそらく日本で唯一のジョロ製作専門店(山里ジョロ)。“ジョーロ”ではなく、あくまで“ジョロ”なんですね。
食「ジェロです。
わざと間違ってるでしょ」
み「そのジェロの歌に、『海雪』ってのがあったわけ(2008年大晦日、『紅白歌合戦』で歌われました)」
み「冬の出雲崎が舞台なんだけど……。
2時間ドラマに出てくるみたいな断崖で、女性が海に降る雪を見て泣いてる歌よ。
秋元康め、出雲崎の冬の海を見てないなと思ったわけ」
律「何で?」
み「出雲崎の冬に……。
雪が海になんか降らないっての」
律「どうしてよ?」
み「暴風が吹いてるからよ」
み「雪なんて、頭上を真横に通りすぎて行くわよ。
そんな中、断崖なんかに立ってられますかって。
コートの裾は吹き捲られ、髪の毛は総立ち。
ズラなら、間違い無く吹っ飛んでるね」
↑カツラーなワシ。冬の日本海を飛ぶのはやめましょう。
み「吹き付ける風で、顔の皺なんか、みんな伸びて……。
どんな美人でも、ウーパールーパーみたいな顔になるのよ」
律「うそばっかり」
み「ほんとです。
今度、冬の出雲崎でやってみる?
わたしが、写真撮ってやるから。
脅迫に使えそうなほどオモロい顔になるから」
食「話を戻していいですか?」
み「何の話だっけ?」
食「『驫木駅』です。
どんな字を書くと思います?」
み「世田谷の『等々力』でも、車が3つの轟木でもないわけだな」
食「そうです」
み「ヒント!」
食「車が3つに似てます。
ある文字が、下に2つ、上に1つですね」
み「そんな字、ほかにあるか?」
食「まず使いませんけどね。
車以外で、轟くものです」
み「太鼓か?」
食「2文字じゃないですか」
み「鼓が3つ」
↑至芸『三つ鼓』。明治時代の写真。
食「そんな字、書けませんって」
み「じゃ、滝は?
轟くぞ。
ぜひ、旧字の瀧にしてもらいたいものじゃ」
食「書けませんって」
み「もういいから、答え言って」
食「馬です。
馬が3つで、驫き。
駅名には、樹木の木が後ろに付きますけど」
み「じゃ、“とどろき”ではなく、“とどろ”ではないか」
食「『驫木』は、駅あたりの集落名です。
その地名自体に木が付いてますから、昔からそうなんでしょう」
み「わかった。
ここらには、車が無かったわけだな。
轟くものを例えるには、馬しかいなかった」
↑冬の日本海で、まれに網にかかるアシカウマ。
食「ま、そこまでは与り知りませんが……。
駅名に使用されてる漢字では、最も画数が多い文字です。
30画ありますから」
み「で、その駅がポスターになったわけね」
食「そうです。
駅の周りに何にもありませんから、絵になるんですよ。
あ、昔は、美味しいラーメン屋が1軒ありましてね。
駅の待合室の時計の下には……。
“時計が遅れてきたら『龍龍亭』へおしえて下さい”って貼り紙がされてたんですよ」
み「異様に詳しいではないか」
食「駅に泊まりました」
み「やっぱり」
食「硬いベンチに寝てると、波の音が聞こえるんですよ。
海まで10メートルくらいですから」
み「津波が来たら助からんな」
食「津波の話は止めましょうって。
こないだ、ネットで駅の情報を調べてたら……。
その『龍龍亭』が無くなってることを最近知って、ショックでした(無くなったのはだいぶ前のようで、画像がまったく見あたりませんでした)」
み「そのラーメン屋が、駅の時計の管理もしてたわけ?」
食「と思います」
み「わかった。
電波時計になったので、時間合わせの仕事が無くなったんだ。
で、廃業」
↑貼り紙が消えてます。
食「そんなわけ無いでしょ。
メニューは少なかったけど、美味しかったんですよ。
400円のジャンボ餃子、懐かしいなぁ。
さくらさんも食べたかも知れません」
み「誰じゃ、それ?」
食「『男はつらいよ』の“さくら”ですよ。
倍賞千恵子が演じた」
み「ずいぶん、古いネタを持ちだしたね」
食「ま、確かに。
あれは確か、第7作でした。
『男はつらいよ 奮闘編』」
食「昭和46年公開ですから……。
40年も前ですね」
み「“さくら”って、いつも『とらや』にいるんじゃないの?」
↑葛飾柴又にある『寅さん記念館』
み「その“さくら”が、驫木まで来たわけ?」
食「その回のマドンナは、榊原るみでした」
食「驫木出身の花子という設定でしてね。
その花子に振られたと思った寅さんが、旅に出た青森から、自殺でもしそうな葉書を寄越す。
心配になった“さくら”が、青森に向かうという筋立てです」
↑詳しくは、こちらを御覧ください。
み「ふーん。
でも40年前じゃ、逆にまだラーメン屋は無かったかも知れんぞ」
食「あ、それは有り得ましたね。
でも、もし『男はつらいよ 奮闘編』を視聴する機会があったら……。
目を凝らして見てください。
実は、『驫木駅』は、2008年に改修されまして、綺麗になっちゃってるんです」
↑改修から1年後、2009年11月の画像です。
み「ポスターの駅とは違ってるってこと?」
食「ですね。
でも、外観のフォルムや板張りは一緒ですから……。
すぐにまた、風情のある駅舎になってくれますよ。
なにしろ、冬の波しぶきがスゴいですから」
ここで、驫木駅の内部を、見てみましょう。
画像の多くは、『きまぐれ宿日記49』さんのこちらのページから拝借しました。
これらの写真が撮られたのは、2007年8月22日前後のようです。
つまり、改修前の旧駅舎ですね。
この時点で、ラーメン屋『龍龍亭』は無くなってたようです。
↓まずは、外観から。
右手にある白いボックスは、トイレでしょうか?
工事現場とか、イベントの仮設で見かけるやつですね。
臭いっぽいです。
その他は、見事に何も無し。
海だけ。
もし、列車を乗り過ごして、この駅に取り残されたことを考えると……。
心が凍りますね。
寂しすぎ。
乗り過ごしたら、マジで大変ですよ。
↓これが、駅構内にある時刻表(2012年3月17日改定)。
通勤通学に使えるのは、上下1本だけですよね。
冬場、波が荒いと運休するみたいだし……。
どうすんだろ?
学校なら、休んじゃえばいいでしょうが……。
会社は、マズいよね。
↓ホームから見ると、こんな感じ。
高波が来れば、駅舎まで届くでしょうね。
↓駅舎の中。
シンプルと云うことも可能ですが……。
早い話、何もありません。
長椅子のベンチがあるだけ。
寝るとしたらここになるのでしょう。
↓実際、『きまぐれ宿日記49』さんでは、このベンチで寝ておられます。
↓自炊までなさっておられました。
これはちょっと、マズいかなと。
↓現在、駅にはこのような貼り紙が。
良い子のみなさんは、決して真似をしないように。
『五所川原駅長』となっているのは……。
無人駅の『驫木駅』を管理するのが、『五所川原駅』だからです。
ちなみに、2010年の3月までは、管理駅が『深浦駅』でした。
管理駅が変わったことにより、宿泊に対する姿勢が変わったのかどうかは……。
わかりません。
しかし、この細いベンチで……。
朝まで、落ちずに眠れるとは思えませんよね。
背中も硬そうだし……。
新聞紙でも敷いて、床に寝た方がいいんじゃないすか。
冬だと、凍死するでしょうが。
なお、駅構内には、駅ノートが備え付けられてます。
読んでみたい気もしますが……。
寂しさのあまり書き付けた文章は、こっ恥ずかしい場合が多々ありますのでね。
読まない方がいいかも。
なお、こういうノートを備え付けて置くのは……。
決して、JRの好意では無いのではないかと思います。
ノートを置いておかないと……。
駅構内が、落書きだらけになるからではないでしょうか。
↓実際、掲示板には落書きがいっぱいです。
こんなところに落書きするヤカラには……。
“ニセ鉄”の称号を贈りましょう。
さて、それではそろそろ、『驫木駅』を出発しましょう。
さらに番組は続く!
食「次も、風情のある駅名ですよ」
み「駅名だけ?」
食「ま、駅舎は……。
ほぼプレハブ小屋ですが。
難読駅名のひとつです。
通り過ぎるとき、駅名標を読んでみてください」
み「駅は、また山側か?」
食「ですね。
線路が海っぱたを走るので、駅は山側になります」
↑こちらは、『リゾートしらかみ』“ぶな”編成。
み「立った方がいいか?」
食「すでに立ってるじゃありませんか」
み「まだ?」
食「そろそろです」
み「今、ブレーキかけられたら、ひっくり返るな」
食「何で爪先立ちしてるんです?」
み「心せくのじゃ。
駅は、まだきゃ!」
食「まだ見えませんって」
律「Mikiちゃん、ふくらはぎが震えてるわよ」
み「げ、限界が……」
食「座って見ましょうって」
み「あ、あぎゃ」
律「どうしたの?
何かの顔マネ?
わかった。
目玉ザル」
み「そんなサルがいるか!」
食「メガネザルだと思います」
み「冷静に訂正するな!
あ、足が吊ったぁぁぁ」
律「無理な格好するからよ」
み「医者だろ!
何とかして!」
律「整形外科医じゃないもん」
み「し、死ぬるぅ」
律「足が吊ったくらいで死なないわよ。
バナナがいいって聞くけど」
み「バナナは、予防!
吊ってから食べても間に合うかい!」
11,500円です」
み「高いではないか!」
食「5枚綴りになってます。
つまり、1枚、2,300円です。
この1枚、つまり、2,300円で、丸1日、普通列車に乗り放題になります」
み「どっからどこまで乗っても?」
食「そうです」
み「ふむ。
そりゃ、安いかも知れんな」
食「ですよ。
2,300円っていうと、東京から沼津くらいですからね」
食「この料金で、1日、どこまででも乗れるわけです」
み「沼津食わずで?」
食「ずいぶん古いギャグですね。
あ、そうそう。
この5枚綴りの切符は、複数人でも使えるんです。
つまり、5人のグループでの日帰り旅行も可能ということです」
み「ふーん。
便利そうな切符だな」
律「1綴り買って持ってれば、何かのときに使えるかもね」
食「残念ながら……。
利用には、さまざまな制限があるんです。
まずは、利用期間です」
み「使えない期間があるってこと?」
食「ていうより、使える期間が限られてるんですよ。
すなわち、学校が休みになる、春、夏、冬の一時期です」
み「一時期とは、いつからいつまでじゃ?
これは、一般読者に有益な鉄道情報を提供する番組である。
曖昧なことではいかんぞよ」
食「番組ってなんです?」
み「『日本の車窓から』」
↑もちろん、『世界の車窓から』のパロです。
食「聞いたボクがバカでした。
でも確かに、曖昧な情報は、時には害になったりしますからね。
それでは、正確な利用期間を発表します」
み「ダラダラダラダラ」
食「何です、それ?」
み「ドラムロールのサービスです」
食「いりません。
発表します。
まず、春は……」
み「曙」
食「だから……。
そういうの、やめてくれます?」
み「間を置くから、合いの手を入れたくなるんじゃないか。
間髪入れずに進めんかい」
食「春は、3月1日から、4月10日までです」
み「なるほど、春休みに合わせたということだな」
食「ただし、注意事項があります」
み「なんじゃい」
食「発売期間です」
み「今、3月1日から4月10日までって、言ったではないか」
食「それは、利用できる期間です。
発売期間は、また別なんです。
すなわち!
2月20日~3月31日までです」
み「期間の10日前ってことか」
食「そうです。
2月20日に買っても、使えるのは、3月1日からになります。
逆に、4月に入ってしまうと……。
利用期間はまだ残ってますが、切符は買えないわけです」
み「なるほど。
ややこしな」
↑ややこしい食べ方。
食「まだ付け加えたいことがあるんですが……。
とりあえず、あと2回の発売期間だけ、先に発表させてください」
み「ダラダラダラダラ」
食「それはいいですって。
続きまして……。
夏は!」
み「曙」
食「止めてくださいって。
それに、夏は曙じゃないでしょ」
み「それじゃ、なんじゃい?
武蔵丸か?」
食「話題が古いんですけど」
み「そんなら、大砂嵐」
食「新し過ぎます。
今は、2010年の10月ですよ。
大砂嵐は、まだ入門してないじゃないですか(2012年3月初土俵)」
み「なら、何でわたしが知ってるのじゃ?」
食「進めます。
夏の利用期間は、7月20日~9月10日までです」
み「おー。
春より長いな。
やっぱ、休みが長いからだな。
で、発売期間は例によって、10日前か。
てことは、7月10日からだな」
食「いえ。
7月1日からです」
み「なんでじゃ!」
食「うーん。
これはよくわかりませんね」
み「7月1日に買っても、使えるのは20日からなんだろ?
その20日間、切符を眺めて暮らせってわけ?」
食「夏場は、窓口が混むからかな?」
み「はっきりせんやつ。
そんなら、発売期間の終わりも、20日前?」
食「いえ。
そっちは、10日前です。
すなわち、7月1日~8月31日までが発売期間です」
み「イマイチ、納得できん」
食「納得してください。
続けていいですか?」
み「納得できん分は、貸しにしておく」
食「何でボクが、借りを作らなきゃならないんですか」
み「調査不足だから」
食「理由まで知りませんよ。
情報をお伝えしてるだけなんですから」
み「いいから、続きをお伝えせい」
食「じゃ、いきます。
冬は……。
曙じゃないです」
み「いらんこと言わいでいい」
食「冬の利用期間は、12月10日~1月10日までです」
み「一番短いな」
食「丸1ヶ月ですね。
でも、年末年始も使えますからね。
発売期間は、利用期間の10日前。
すなわち、12月1日~31日までです」
み「ずいぶん期間が限定される切符だな」
食「でも、合計すれば案外長いですよ。
春が、41日。
夏は、53日。
冬が、32日。
合計、126日です。
1年の3分の1以上あります」
み「ま、ひとつの期間に2枚くらいずつ使えば……。
けっこう、楽しめるな」
食「ここで、重大な注意事項を発表します」
↑狙いではないと思います。
食「さっき、まだ付け加えたいことがあるって言いましたでしょ」
み「ダラダラがいる?」
食「いりません」
いいですか。
最重要ポイントですよ」
み「穴の空くほど丸?」
食「何です、それ?」
み「高校の時の、英語教師の口癖」
食「続けます。
5枚綴りの切符は……。
ひとつの期間で、すべて使い切らなきゃダメなんです!」
み「なんじゃとー。
そんなの聞いてないぞー」
食「聞いてなくても、券面に書いてありますよ」
み「切符に書いてある文字なんか、読むわけなかろうが」
食「なんでです!
読みましょうよ」
み「まぁ、いい。
余ったら、払い戻してくれるんだろ?」
食「だから……。
ダメなんですって。
1枚でも使ったら、もう払い戻しはできません」
み「悪徳商法じゃないか」
食「なんでですか。
切符にそう書いてありますよ」
み「だから、読まんだろうが」
食「読んでくださいって」
み「クーリングオフ、効く?」
食「有効期間内で、しかも1枚も使って無ければ、払い戻しが効きます。
ただし、210円の手数料がかかりますけど」
み「1枚も使わないんなら、買わなきゃいいだけの話だろ。
あ、わかった。
JRの悪どい魂胆が」
食「何ですか?」
み「これは、ワナだな」
食「何のことです?」
み「すなわち、次の期間にまたがって使えると思って……。
券を使い切らない人が、必ずいるわけだ。
そういう善良な庶民をたぶらかし、結局は高くつく切符を買わせようという所業……。
不届き千万。
成敗いたす」
食「何でですか!
ちゃんと確認して買わない方が悪いでしょ」
み「なぜにJRの肩を持つ?
金もらってるんじゃないか?
そうか。
『青春18きっぷ』の受託販売をしてるな。
懐に、100枚くらい束があるんじゃないか?」
み「1枚売ると、いくら入るわけ?
JRが、そんなに高い手数料出すわけないよな。
1%か?
なら、1枚売って、115円か。
安っ!
10枚売っても、1,150円じゃないか。
よくそんな安い商売するな」
食「だから、してませんって。
ま、素人向けの切符じゃないことは確かです。
素人が、注意書き見ないで旅行したら、トラブルばっかり起こすでしょうね」
み「例えば?」
食「例えば……。
時刻表の都合とかで、どうしても、急行や特急に乗らなきゃならなくなった」
食「『青春18きっぷ』で、乗れると思いますか?」
み「そんなの簡単じゃ。
急行券や特急券を別に買えば、乗れるに決まっとるじゃないか」
食「残念ながら……。
あなたは、車掌さんと一悶着起こしますね」
↑この車掌さんは、一言もしゃべらなかったそうです。
み「なんでじゃ!」
食「急行や特急に乗る場合は……。
急行券や特急券は当然のことながら!
乗車券も、別に買わなきゃならないからです」
み「なんじゃとー!」
食「つまり、急行や特急に乗る場合……。
『青春18きっぷ』は、何の効力も無いということです」
み「やっぱり成敗いたす」
↑本当のセリフは、何でしょう?
食「よく調べて乗りましょう」
み「じゃ、この『リゾートしらかみ』にも乗れないわけ?」
食「これは、快速列車ですから大丈夫です。
ただし、指定席券を別に買わなきゃなりませんけど」
↑覚えてますか?、『東能代駅』。これならタダで乗れます。
み「うーむ。
わけのわからん切符じゃ」
食「わかるでしょ。
単純に考えればいいんです。
快速を含む普通列車にだけ、1日2,300円で乗り放題という切符です。
さっきも言ったとおり、2,300円っていうと、『東京→沼津』間くらいです」
↑『ぬまづ燦々レディー』。意外に美人度高し!
食「この料金で、どこまででも行けるんですよ」
み「待てい。
1枚の切符は、1日しか効力が無いわけだろ?」
↑『ひろしまドリミネーション2010』より。靴がデカすぎだろ。
食「そうです」
み「普通列車だけ乗りついでたら……。
そんなに遠くまで行けっこないじゃないか」
食「ほー。
案外、鋭いですね」
み「案外とはなんじゃ!」
食「『青春18きっぷ』が発売されたのは、1982年。
もちろん、国鉄の時代です」
↑今のヤクルトの前身が『国鉄スワローズ』。しかし、80円って……(昭和37年)。
食「そのころは、長距離を走る普通列車が、けっこうあったんです」
み「あ、叔父に聞いたことがある。
上野と新潟間で、直通の普通列車があったんだって」
↑1964年5月号。上野発9:14分の普通列車『新潟』行きがあります。こちらのページに、詳しいタイムテーブルが載ってます。新潟着は、18:58分ですね。叔父が乗ったのは、これより15年くらい後になると思います。
律「今は無いの?」
み「おまへんがな。
そんな呑気な列車。
新幹線で2時間かからないのに。
叔父の話によると……。
上野を、朝9時過ぎに出るんだけどね。
山の上の駅で、1時間くらい、急行の通過待ちで停車するんだって」
プラモデル 箱庭シリーズ 田舎の駅(通常版)[河合商会]《在庫切れ》 |
↑プラモ『田舎の駅』。残念ながら、メーカーが倒産してます。
み「結局、新潟に着くのは、夕方の4時半ごろだったって」
律「7時間?」
み「そういうこと」
律「のんびりしてていいじゃない」
み「ま、ね。
夏休みの帰省に使ったらしいけど……。
冷房もなく、天井に扇風機が回ってるだけ」
み「結局、使ったのは、その1回きりだったって」
律「『青春18きっぷ』、使ったのかしら?」
み「まだ売ってなかったと思うよ。
ま、売ってても、買わなかっただろうけど」
律「どうして?
東京新潟間を、2,300円で行けたら、そうとう割安じゃない」
み「帰省の往復で2回分使うとしても……。
あと、3回も乗らなきゃならないでしょ」
律「あ、そうか」
み「普通列車なんて、座席のリクライニングも無いし……」
↑津軽鉄道『ストーブ列車』の車内。
み「長時間乗るのは、楽じゃないわよ」
律「それはそうね」
み「あと、5回分ってのが、JRも意地が悪いよな。
4回分なら、スゴく使い勝手がいいのに。
2人で買えば、帰省の往復にぴったりじゃない」
食「ぴったりすぎですよ」
↑ぴったりフィット。
食「そんな使われ方したら、大損です」
み「だから、わざと奇数にしてあるんだな」
↑“丁”は、丁度の“丁”。“半”は、半端の“半”だそうです。
食「ですかね。
さーて。
トンネルを4つ過ぎましたよ。
見逃さないでください。
あっという間ですから」
み「どーれ」
食「あ、そっちじゃないです。
駅は、山側になりますから、反対側の窓を見てください」
み「立った方がいいか?」
食「そこまでしなくても……」
み「すでに立っておる」
食「はい。
来ましたよ」
み「……。
何も来ないぞ」
食「もう過ぎましたって。
通ったでしょ、駅」
み「小屋みたいなのは見た」
食「それが駅です」
み「さっきから、あれだけ引っ張っておいて……。
これだけきゃ?」
食「やっぱり、降りなきゃダメですね」
↑動画『驫木駅を散策してみた』。
み「『青春18きっぷ』と、どう関係するんだ?」
食「ポスターになったんですよ。
2002年の春バージョンでした」
食「列車から駅を見ようとすると、後ろが山になっちゃいますけどね。
山側から見ると……。
駅舎があって、線路があって、そのすぐ向こうが日本海なんです。
あのポスター見て旅に出たくなった人、たくさんいると思いますよ」
み「そんなもんかのぅ。
そう言えば、駅名を聞いてなかったな」
食「『驫木(とどろき)』です」
み「おんなじ駅、世田谷にあるよな」
食「あぁ。
等々力ですね」
食「字が違いますけど……。
語源は一緒ですね。
世田谷の等々力には、等々力渓谷があります」
↑世田谷区にあるんですよ。
食「川の近くには、よくある地名ですね。
水音の轟きから来てます」
み「ここにも、そんな川があるのか?」
食「ここは、波の音の轟きですよ。
時化の時は、駅舎が波を被ることもありますから」
み「カニが飛んでくる?」
食「何です、それ?」
み「叔父が、出雲崎で見たって言ってた」
食「出雲崎って、新潟県のですか?」
み「そう。
良寛さんで有名な出雲崎。
冬、そこの工事現場に通っててね。
海っぱたに公園を作ってたのよ。
その公園の池に、ある朝、カニが沈んでた」
↑後ろ姿は、子供時代の良寛さん。その前に見えるのが池だと思います。
み「甲羅が手の平くらいもある、明らかに海のカニなわけ。
池は、普通の淡水の池なんだよ」
律「淡水にも住めるの?」
み「住めませんがな。
カニは、死んでたんです」
み「叔父は、地元の子供が、イタズラで投げ込んだんだろうと思ったわけ」
律「違ったの?」
み「ある風の強い日。
その真相がわかったそうよ。
波しぶきが、頭上はるかまで上がって……。
その波濤を目で追ったら、波頭に乗ってた何かが、池に飛びこんだ。
それが、カニだったわけ」
律「波で打ちあげられたの?」
み「左様です」
律「ほんとかしら」
み「かように、日本海の冬の波は強烈なわけよ。
あ、そうそう。
ちょっと前、外人の演歌歌手がいたじゃない?
ジェロニモだっけ?」
食「ただのジェロだと思います」
み「それそれ。
ジョロ」
↑おそらく日本で唯一のジョロ製作専門店(山里ジョロ)。“ジョーロ”ではなく、あくまで“ジョロ”なんですね。
食「ジェロです。
わざと間違ってるでしょ」
み「そのジェロの歌に、『海雪』ってのがあったわけ(2008年大晦日、『紅白歌合戦』で歌われました)」
み「冬の出雲崎が舞台なんだけど……。
2時間ドラマに出てくるみたいな断崖で、女性が海に降る雪を見て泣いてる歌よ。
秋元康め、出雲崎の冬の海を見てないなと思ったわけ」
律「何で?」
み「出雲崎の冬に……。
雪が海になんか降らないっての」
律「どうしてよ?」
み「暴風が吹いてるからよ」
み「雪なんて、頭上を真横に通りすぎて行くわよ。
そんな中、断崖なんかに立ってられますかって。
コートの裾は吹き捲られ、髪の毛は総立ち。
ズラなら、間違い無く吹っ飛んでるね」
↑カツラーなワシ。冬の日本海を飛ぶのはやめましょう。
み「吹き付ける風で、顔の皺なんか、みんな伸びて……。
どんな美人でも、ウーパールーパーみたいな顔になるのよ」
律「うそばっかり」
み「ほんとです。
今度、冬の出雲崎でやってみる?
わたしが、写真撮ってやるから。
脅迫に使えそうなほどオモロい顔になるから」
食「話を戻していいですか?」
み「何の話だっけ?」
食「『驫木駅』です。
どんな字を書くと思います?」
み「世田谷の『等々力』でも、車が3つの轟木でもないわけだな」
食「そうです」
み「ヒント!」
食「車が3つに似てます。
ある文字が、下に2つ、上に1つですね」
み「そんな字、ほかにあるか?」
食「まず使いませんけどね。
車以外で、轟くものです」
み「太鼓か?」
食「2文字じゃないですか」
み「鼓が3つ」
↑至芸『三つ鼓』。明治時代の写真。
食「そんな字、書けませんって」
み「じゃ、滝は?
轟くぞ。
ぜひ、旧字の瀧にしてもらいたいものじゃ」
食「書けませんって」
み「もういいから、答え言って」
食「馬です。
馬が3つで、驫き。
駅名には、樹木の木が後ろに付きますけど」
み「じゃ、“とどろき”ではなく、“とどろ”ではないか」
食「『驫木』は、駅あたりの集落名です。
その地名自体に木が付いてますから、昔からそうなんでしょう」
み「わかった。
ここらには、車が無かったわけだな。
轟くものを例えるには、馬しかいなかった」
↑冬の日本海で、まれに網にかかるアシカウマ。
食「ま、そこまでは与り知りませんが……。
駅名に使用されてる漢字では、最も画数が多い文字です。
30画ありますから」
み「で、その駅がポスターになったわけね」
食「そうです。
駅の周りに何にもありませんから、絵になるんですよ。
あ、昔は、美味しいラーメン屋が1軒ありましてね。
駅の待合室の時計の下には……。
“時計が遅れてきたら『龍龍亭』へおしえて下さい”って貼り紙がされてたんですよ」
み「異様に詳しいではないか」
食「駅に泊まりました」
み「やっぱり」
食「硬いベンチに寝てると、波の音が聞こえるんですよ。
海まで10メートルくらいですから」
み「津波が来たら助からんな」
食「津波の話は止めましょうって。
こないだ、ネットで駅の情報を調べてたら……。
その『龍龍亭』が無くなってることを最近知って、ショックでした(無くなったのはだいぶ前のようで、画像がまったく見あたりませんでした)」
み「そのラーメン屋が、駅の時計の管理もしてたわけ?」
食「と思います」
み「わかった。
電波時計になったので、時間合わせの仕事が無くなったんだ。
で、廃業」
↑貼り紙が消えてます。
食「そんなわけ無いでしょ。
メニューは少なかったけど、美味しかったんですよ。
400円のジャンボ餃子、懐かしいなぁ。
さくらさんも食べたかも知れません」
み「誰じゃ、それ?」
食「『男はつらいよ』の“さくら”ですよ。
倍賞千恵子が演じた」
み「ずいぶん、古いネタを持ちだしたね」
食「ま、確かに。
あれは確か、第7作でした。
『男はつらいよ 奮闘編』」
食「昭和46年公開ですから……。
40年も前ですね」
み「“さくら”って、いつも『とらや』にいるんじゃないの?」
↑葛飾柴又にある『寅さん記念館』
み「その“さくら”が、驫木まで来たわけ?」
食「その回のマドンナは、榊原るみでした」
食「驫木出身の花子という設定でしてね。
その花子に振られたと思った寅さんが、旅に出た青森から、自殺でもしそうな葉書を寄越す。
心配になった“さくら”が、青森に向かうという筋立てです」
↑詳しくは、こちらを御覧ください。
み「ふーん。
でも40年前じゃ、逆にまだラーメン屋は無かったかも知れんぞ」
食「あ、それは有り得ましたね。
でも、もし『男はつらいよ 奮闘編』を視聴する機会があったら……。
目を凝らして見てください。
実は、『驫木駅』は、2008年に改修されまして、綺麗になっちゃってるんです」
↑改修から1年後、2009年11月の画像です。
み「ポスターの駅とは違ってるってこと?」
食「ですね。
でも、外観のフォルムや板張りは一緒ですから……。
すぐにまた、風情のある駅舎になってくれますよ。
なにしろ、冬の波しぶきがスゴいですから」
ここで、驫木駅の内部を、見てみましょう。
画像の多くは、『きまぐれ宿日記49』さんのこちらのページから拝借しました。
これらの写真が撮られたのは、2007年8月22日前後のようです。
つまり、改修前の旧駅舎ですね。
この時点で、ラーメン屋『龍龍亭』は無くなってたようです。
↓まずは、外観から。
右手にある白いボックスは、トイレでしょうか?
工事現場とか、イベントの仮設で見かけるやつですね。
臭いっぽいです。
その他は、見事に何も無し。
海だけ。
もし、列車を乗り過ごして、この駅に取り残されたことを考えると……。
心が凍りますね。
寂しすぎ。
乗り過ごしたら、マジで大変ですよ。
↓これが、駅構内にある時刻表(2012年3月17日改定)。
通勤通学に使えるのは、上下1本だけですよね。
冬場、波が荒いと運休するみたいだし……。
どうすんだろ?
学校なら、休んじゃえばいいでしょうが……。
会社は、マズいよね。
↓ホームから見ると、こんな感じ。
高波が来れば、駅舎まで届くでしょうね。
↓駅舎の中。
シンプルと云うことも可能ですが……。
早い話、何もありません。
長椅子のベンチがあるだけ。
寝るとしたらここになるのでしょう。
↓実際、『きまぐれ宿日記49』さんでは、このベンチで寝ておられます。
↓自炊までなさっておられました。
これはちょっと、マズいかなと。
↓現在、駅にはこのような貼り紙が。
良い子のみなさんは、決して真似をしないように。
『五所川原駅長』となっているのは……。
無人駅の『驫木駅』を管理するのが、『五所川原駅』だからです。
ちなみに、2010年の3月までは、管理駅が『深浦駅』でした。
管理駅が変わったことにより、宿泊に対する姿勢が変わったのかどうかは……。
わかりません。
しかし、この細いベンチで……。
朝まで、落ちずに眠れるとは思えませんよね。
背中も硬そうだし……。
新聞紙でも敷いて、床に寝た方がいいんじゃないすか。
冬だと、凍死するでしょうが。
なお、駅構内には、駅ノートが備え付けられてます。
読んでみたい気もしますが……。
寂しさのあまり書き付けた文章は、こっ恥ずかしい場合が多々ありますのでね。
読まない方がいいかも。
なお、こういうノートを備え付けて置くのは……。
決して、JRの好意では無いのではないかと思います。
ノートを置いておかないと……。
駅構内が、落書きだらけになるからではないでしょうか。
↓実際、掲示板には落書きがいっぱいです。
こんなところに落書きするヤカラには……。
“ニセ鉄”の称号を贈りましょう。
さて、それではそろそろ、『驫木駅』を出発しましょう。
さらに番組は続く!
食「次も、風情のある駅名ですよ」
み「駅名だけ?」
食「ま、駅舎は……。
ほぼプレハブ小屋ですが。
難読駅名のひとつです。
通り過ぎるとき、駅名標を読んでみてください」
み「駅は、また山側か?」
食「ですね。
線路が海っぱたを走るので、駅は山側になります」
↑こちらは、『リゾートしらかみ』“ぶな”編成。
み「立った方がいいか?」
食「すでに立ってるじゃありませんか」
み「まだ?」
食「そろそろです」
み「今、ブレーキかけられたら、ひっくり返るな」
食「何で爪先立ちしてるんです?」
み「心せくのじゃ。
駅は、まだきゃ!」
食「まだ見えませんって」
律「Mikiちゃん、ふくらはぎが震えてるわよ」
み「げ、限界が……」
食「座って見ましょうって」
み「あ、あぎゃ」
律「どうしたの?
何かの顔マネ?
わかった。
目玉ザル」
み「そんなサルがいるか!」
食「メガネザルだと思います」
み「冷静に訂正するな!
あ、足が吊ったぁぁぁ」
律「無理な格好するからよ」
み「医者だろ!
何とかして!」
律「整形外科医じゃないもん」
み「し、死ぬるぅ」
律「足が吊ったくらいで死なないわよ。
バナナがいいって聞くけど」
み「バナナは、予防!
吊ってから食べても間に合うかい!」