2013.7.27(土)
さて、お話を続けましょう。
み「文学系のミュージアムで……。
展示物を眺めてると、なぜかうんこがしたくなるよね」
律「何それ?
そんなの、あんただけでしょ」
み「にゃんと!
わたしだけきゃ?
チミは?」
食「図書館や書店に行くと、そうなる人がいるって云いますよね」
み「だっしょー。
ぜったいなるんだって。
なんでだろ?
やっぱり、小説執筆時の産みの苦しみを想像してしまうからかな?」
律「作家志望の人ばっかりじゃないんだから。
そんな人、聞いたことない」
食「けっこう有名ですよ。
『青木まりこ現象』と云われてるらしいですね」
律「誰なんですか?、その人。
芸人?」
み「青木さやかと混同してない?
そういえば彼女、最近見ないよね」
↑育児に専念されてるようです。
律「林真理子なら知ってるけど」
食「青木まりこは、ごく普通の読書好きな女性です。
この人が、『本の雑誌』に、一通の投書を送りました。
『わたしは何故か、長時間本屋さんにいると便意を催します』って。
1985年のことですね(当時29歳)」
↑この映画が作られた年。
み「そんな昔だったの?」
食「四半世紀も前ですね。
この投書が共感を呼んだわけです。
つまり、同じ思いをしてた人がたくさんいた。
で、『青木まりこ現象』と名付けられたんです」
み「どうしてそうなるか、解明されたの?」
食「謎のままみたいですよ」
律「Mikiちゃんもそうなの?」
み「昔は、そんな感じもしたね。
トイレに駆けこむほどじゃないけど。
でも今は、本屋自体行かないし」
律「何で?」
み「ヒマがないし……。
本は、ネットで注文しちゃうから。
いくつか、説はあるんでしょ?」
食「そうですね。
本の印刷に使われるインクの揮発性物質が原因だって説なんか、もっともらしいですね」
み「ふむ。
それは、いい着目点だぜ」
律「なんで?」
み「原因は本にあるってアプローチ。
だって、同じ症状が、図書館でも起きたもの」
律「それじゃ、図書館のトイレは、いつも満員?」
み「そうはならんが……。
利用者1人当りの大便率は、かなり高いと思う」
律「ほんとにぃ?」
み「だって、トイレ入ると、いつもうんこ臭いんだもん」
↑製作中、誰も気づかなかったのか?
律「ほんとに、どうしてこういう話題になるのかしらね」
み「女子トイレだとわかりにくいんだよな。
大か小か。
誰か、男子トイレで計ってくれないかな。
ほら、パイプ椅子に座って、カウンターをカチャカチャしてる人がいるじゃん」
律「トイレの中でやるの?」
み「さようです」
↑中央自動車道のトイレ。こんな使い方をする人が、まだいるのか?
律「1日中、臭いを嗅いでるわけね」
み「時給、800円でどうじゃ?」
律「安っ。
絶対ゴメンだわ」
み「正味8時間働けば、6,400円ももらえるぞ。
臭くて食欲がわかないから……」
み「昼食代も浮くし。
電卓電卓」
↑覚えてますか? 食くんの、かっちょいースライド電卓。
み「ふむふむ。
週5日働いて、32,000円か。
1ヶ月平均の週数は、365÷7÷12で……。
4.3週。
32,000円×4.3=137,600円。
う~ん。
暮らしていくには、ヒジョーにキビシ~」
み「やっぱり、800円ってことないよね。
臭い思いもするんだからさ。
900円。
900円出しましょう」
み「これだと、900円×8=7,200円。
7,200円×5日×4.3週=154,800円。
うーん。
微妙だわい。
よし!
時給、1,000円出そう」
↑この謎が知りたい方は、こちら。
律「いいかげんにしなさい」
食「トイレの利用人数を計測するバイトが、毎日あるとは思えません」
み「なにー。
根本から覆すようなことを」
律「覆すもなにも……。
最初から砂上の楼閣でしょ」
み「くそ。
せっかくの夢が壊された」
律「情けない夢。
でも、ほんとに本が原因なの?」
み「あ、今、洒落たでしょ。
この程度では、座布団はあげませんよ」
律「結構です」
み「ありゃ。
連れないのぅ。
でも、本が原因という説は、大いに納得できる」
律「この話題、異様に好きね」
み「なにしろ、『由美美弥』でも書いたしね。
由美が、図書館で催したことにより……」
み「物語が動き出したんだから」
律「本が原因っていうか……。
もっと深いところに根ざしてる気がするけど」
Wikiには、驚くほど多くの説が記述されてます(こちら)。
わたしには、浅田次郎の「活字に対する精神的プレッシャーが原因」という説が、いちばんしっくり来ましたが……。
ひょっとしたら、活字の匂い説もありかも。
昔、新聞紙でお尻を拭いてたころの記憶が、共通意識として残ってるんですよ。
で、活字の匂いを嗅ぐと、トイレを連想してしまうというわけ。
食「はい。
『深浦駅』到着です」
食「降りるんなら、付き合いますよ」
み「気楽な稼業じゃのぅ。
予定とか、立ててないの?」
食「大雑把な計画はありますけどね。
想定外のことが起きて、計画どおりに行かなくなるってのが……。
気ままな旅の醍醐味なんで」
み「すぐ発車だろ?」
食「深浦は4分停車ですから」
↑線路に草が生えてるってのが、1日の運行本数を物語ってますね。
み「普通の駅だね」
↑表側なのか裏側なのか、よーわからん駅です。
み「あ、そうだ。
こいつを聞いてなかった。
日帰り温泉。
ある?」
食「ございます」
み「あんたほんとは、深浦町役場の観光課じゃないの?」
食「ボクもそんな気がしてきました。
わが深浦町自慢の湯を紹介します。
その名も、『深浦町フィットネスプラザゆとり』でございます」
み「おー、知っておるぞ」
食「ほんとですか?」
み「かのユトリロが描いたという風呂じゃろ?」
食「描くわけないじゃないですか」
み「どんなお風呂があるわけ?」
食「大浴槽のほか、泡風呂、薬湯、打たせ湯、ジェット湯、ボディシャワー、サウナ、水風呂などです」
み「おー、揃えましたね」
食「『ゆとり』と『健康回復の場』をモットーにしております。
お風呂の前には、トレーニングルームで汗をお流しください。
お風呂を上がられたら、ボディソニックなどリラックス機器のある休憩ホールでおくつろぎください」
食「ラウンジでは、軽食も召し上がれます」
み「ほー。
大した施設じゃん。
入浴料って、いくら?」
食「それを聞いたら驚きますよ」
み「座りしょんべんする?」
律「下品なこと言わないの!」
食「これだけ揃って、なんと!」
み「10円?」
律「そんなわけないでしょ!」
食「10円は流石に無理ですが……。
なんと、大人一人350円です」
律「ちょっと……。
いくらなんでも、安すぎません?」
食「ま、公共施設でなければ、こんな料金設定は出来ません」
み「ラウンジの軽食も、300円の内か?」
食「別料金です」
律「当たり前でしょ。
でも、東京の銭湯が450円よね」
律「何だか不公平な気さえするわ」
食「降りますか?
そろそろ、発車ですよ。
そうそう。
駅前に、ウマい食堂があるんです。
『広〆』って云います」
食「観光客相手なので、ちょっと高めですがね。
『いくら丼』なら、1,600円から。
豪華版では、『うにイクラ丼』の2,600円」
み「高っ」
食「漁師町だけに、新鮮さと味は保証しますよ」
↑夕凪の深浦港。露天風呂みたいですね。
み「そんな値段じゃ、地元の人は食べないだろ」
食「地元の常連さんは、牛丼を食べるようですね。
700円(画像なし。古い情報かもしれませぬ)」
み「海の真ん前で、牛丼食うのか。
しかも、牛丼屋なら2杯食える値段で」
食「試しに、食べてみませんか?
ちょうどお昼時だし」
み「まだ11時前だろ」
食「食堂は11時開店です。
食堂が開店する時間は、立派なお昼です」
み「やっぱ、パス」
食「なんでですか?」
み「わたし、海鮮系、苦手だから」
食「えー、そんな。
胃がすでに、臨戦態勢に入ってたのに」
み「チミだけ降りれば」
食「連れないなぁ。
まだまだお供させてくださいよ」
ガッタン。
律「あー、出ちゃった」
食「ボクの牛丼が……」
↑『吉野家』の懐かCM。
み「深浦まで来て牛丼食わなくてもいいの。
ほら、次はどこよ」
食「深浦を過ぎると、小一時間は止まりません」
み「あらそう」
律「いいじゃないの。
のんびり行きましょうよ」
さてここで……。
五能線が全通した昭和11年発刊の『旅窓に学ぶ(ダイヤモンド社)』の車窓描写を見てみましょう。
『深浦から線路は未だ斧鉞(ふえつ)の入らぬ原生林の山林を負ふて、先づ吾妻川を渡り、右方断崖海に落ちて直ぐ砂濱となる處に護岸波浪止の擁壁を置いてその間を走る。艫作崎以北は風向の關係で波浪グンと高く、殊に冬季雪を交へた烈風に直面するときは波浪、その擁壁に砕け凄まじき壮観は一見に値する』
↑五能線【側面展望】深浦→千畳敷
律「すごーい。
ほとんど波打ち際じゃない」
み「うーん。
でも、あの消波ブロックは何とかならんかのぅ」
律「確かに、もったいないわよね。
せっかくの景色なのに」
み「それと、このフェンス。
頻繁に視界を遮ってくれるじゃないの(【側面展望】の4:55あたりから)」
食「仕方ないです。
昭和47年の12月でした。
高波で線路の路盤が流出し、列車が転落したんです。
機関士が殉職してます」
み「なるほど。
こんな綺麗な海には似つかわしくない人工物だけど……。
冬期は、まさしく人の命を守ってくれる、大事な施設なんだね」
↑消波ブロックのジオラマ用キット。いろんなものがあるものです。
食「五能線は、地域の生活路線ですからね」
み「観光客の視点からだけ見ちゃいかんということか」
食「ですね。
あ、『広戸』駅通過します」
み「相変わらず、強烈な駅ですな。
農作業小屋でも、もちっとマシだぞ」
律「あら。
波打ち際はもう終わりかしら」
食「もうすぐ、追良瀬川です。
河口を避けて、内陸側を渡りますので」
律「奥入瀬川って、有名なんじゃないです?
聞いたことあるわ」
食「それはたぶん、もうひとつの奥入瀬川ですね。
同じ青森県ですが……。
そちらは、十和田湖から出て太平洋に注ぐ川です」
み「同じ県で同じ名前の川があっていいわけ?」
食「字が違います。
最初の2字。
ほら、鉄橋を渡りますよ」
み「何て鉄橋?」
食「『追良瀬川鉄橋』ですj
↑ズバリの画像がありました。山あり川あり海あり。いいところですね。
み「そのまんまじゃん。
第何とかも付かないの?」
食「付きません」
み「あらそう」
食「この川を6キロほど遡ったところに、『見入山観音堂』というお堂があります」
み「聞いたことないのぅ。
有名?」
食「うーん。
地元では有名です」
み「全国的には?」
食「知る人ぞ知る……」
み「早い話、無名ってことね」
食「地元の信仰は厚いようです。
お堂は、深浦町指定の文化財になってます」
み「地元では大事にされてるってことか」
食「参道も整備されてますし……。
駐車場やトイレもあります」
み「見どころは?」
食「崖の上の洞窟に、お堂が建てられてるんです。
岩の窪みに、造り付けられてるわけですね。
そこまで、急坂を登ってお参りするわけです」
み「山形にある『山寺』みたいな感じか?」
食「『山寺』は、洞窟じゃないですけど……。
高いところにあるという点では、同じ系統でしょうか」
↑『山寺(立石寺)』
み「何で、そんな不便なとこに、わざわざお堂なんか建てるかね?」
食「やっぱ、有り難みが増すからじゃないですか」
み「そんなもんかのぅ。
いつころできたお堂なわけ?」
食「創建は、室町時代初期のようです」
み「げ。
町指定どころか、国宝級じゃないの」
食「もちろん、当時の建物は残ってません」
み「ありゃー」
食「ご本尊の観音様も、天明6年(1786年)の火災で焼けてしまいました」
み「観音堂に観音様がいないわけ?」
食「今は、石仏の観音様がまつられてます」
↑道中に立つ案内観音。たくさん立ってるようです。
み「石なら、火事でも大丈夫だな。
しかし……。
崖の上の観音堂で、どうして火事が起こるわけ?」
↑酔っ払ったら歩けませんね。
食「さー。
蝋燭が倒れたりしたんじゃないですか?」
み「浮浪者が入りこんだりしたんじゃないの?」
↑観音堂内部。十分泊まれそうです。
食「どうでしょうね。
わざわざ崖の上のお堂まで登りますかね?
食べ物もありませんよ」
み「追良瀬川があるではないか」
食「は?」
み「川には魚がおるだろう。
お堂の上から、釣糸下げたんじゃないの?」
↑ねずみ男ではありませねん。ムーミンです(千葉県夷隅郡大多喜町にて)。
食「確かに、お堂からは追良瀬渓谷を望むことができますけど……。
竿が届くような位置じゃありませんよ」
↑木々の隙間から遠く望めるようです。この画像では霧で見えず。
み「リールを使えば届くだろ」
↑飛距離を競う『スポーツキャスティング』という競技があるそうです。
食「江戸時代の話をしてるんですよね」
み「そうだっけ?
まぁ、いい。
でも実際、魚はいるんでしょ?」
食「追良瀬川は、川魚の宝庫と呼ばれてます。
かつては、集落で食べきれないほどのアユが採れたそうです」
食「今は、そこまではいきませんが……。
それでも、アユのほかに、イワナ、ヤマメなどが釣れます」
↑八郎太郎が我慢できずに食べた岩魚の塩焼き。確かに喉が渇きそうだ。
食「遠方からの釣り客も多いらしいですよ」
み「ふーん。
それにしては、釣り客らしい人は乗ってなかったけど」
↑かつて、紀勢本線を走ってた臨時夜行列車だそうです。
食「渓流釣りの解禁は、4月から9月までです」
↑伝説の達人、追良瀬川に降臨。
み「ありゃ、もう終わってたのか」
食「それに……。
『リゾートしらかみ』は、『追良瀬駅』に泊まりませんから……。
追良瀬川目当ての釣り客が乗ってるわけもないです」
み「ふん」
食「渓流釣りに、もちろん海釣り。
深浦は、釣り好きには堪えられない町でしょうね」
↑鉄女なんて、もう古いのか?
み「海釣りは、何が釣れるの?」
食「春は、クロダイにカレイ、ホッケ。
夏は、クロダイに加え、サバにマダイ、キス。
秋は、クロダイ、スズキ、アジ、イカ、サヨリ。
冬は……」
み「クロダイ!」
↑確かに、姿のいい魚です。
食「当たりです。
あと、アイナメ、ホッケ、イカ」
み「クロダイってのは、1年中釣れるわけ?」
食「棲み着いて、移動しないんでしょうかね?」
み「口が卑しいんじゃないの?
あと、バカだとか」
↑バカ魚ならぬ、魚バカ。新宿にあるようです。
食「さー。
そこまで詳しくないですから」
実際、悪食で、スイカやミカンでも釣れるそうです。
食「はい、『追良瀬駅』通過します」
み「ふーむ。
もちっと風情のある駅に出来んもんかの」
食「大丈夫です。
次の駅が、風情ありすぎですから」
み「何て駅?」
食「ま、それはお楽しみで」
律「あ、トンネル」
食「ここから、4つほどトンネルが続きます。
塩見崎を貫くトンネルです」
み「実に、類型的な名前の岬だな」
食「名前はそうかもしれませんが……。
外見は、けっこう特徴的です。
柱状節理が表れてますから」
↑白いのは、ウミウの糞だそうです。
み「おー。
名前だけは聞いたことがあるぞ。
どういうのだっけ?」
食「溶岩が冷えるとき、体積が縮むために出来る規則的な割れ目のことです」
↑米ワイオミング州にあるデビルズタワー。『未知との遭遇』の舞台です。
み「ほー。
次の駅名って、柱状節理と関係あり?」
食「ぜんぜん無いです」
み「向井理とも?」
↑ガラスの向うに、なにかいますよね?
食「ありません」
み「なんだよ。
駅名くらい教えてくれたっていいだろ」
食「後のお楽しみです」
み「ヒント!」
食「うーん。
これ言ったら、丸わかりですが……。
大ヒントをさしあげましょう。
ずばり、『青春18きっぷ』です」
み「なんじゃそれ?
知ってる?」
律「知らない」
食「なんか……。
思い切り、力が抜けます」
み「力抜け山か?」
食「何です、それ?」
み「昔の相撲取りのタニマチに、偉い書家がいたんだって。
で、贔屓の相撲取りを讃える書を書いて、贈ったんだって。
その中に……。
『力、山を抜き』という一節があった。
で、この部分を見た相撲取りが……。
ここは困りますと言ったんだって」
律「なんでよ?」
み「書ってのは、漢文で書いてあるわけよ。
読み下し文じゃないわけ。
つまり、『力、山を抜け』って一節は……。
『力抜山』となるわけよ」
↑力は山を抜き気は世を蓋う(項羽)
み「つまり相撲取りは……。
『力抜け山』と読んだってこと」
食「あの、続けていいですか。
説明する前に駅が来ちゃうとマズイので」
み「おー。
話の腰を折ってしまったようじゃの。
力が抜けるとか、妙な感想を言うから悪いんじゃぞ」
食「ボクのせいですか?」
み「にゃに?」
食「あ、すみません。
ボクのせいでした。
ここは、とにかく進めさせてください」
み「よかろう。
あ、“よかろう”と“なめろう”って、似てるよね?」
↑“なめろう”。見た目は良くありません。似たモノを、飲み屋街の電柱の根本で見かけます。
食「進めます!」
み「“ういろう”も似てた」
↑“ういろう”。こちらは素直に美味しそう。原材料が米粉ってとこが、羊羹(こちらは小豆)との違い。
食「『青春18きっぷ』の話をさせてください!」
み「聞いたことは、ある気がする」
食「ポスターを、駅で見てると思いますよ」
↑2013年夏バージョン。今、駅で見かけるのはこれですね。
キャッチコピーは、『はじめての一人旅を、人は一生、忘れない』。
わたしの初めての一人旅は……。
確かに、覚えてますね。
大学に入ってからでした。
高校の同級生に、信州大学の農学部に入った子がいたんです。
その子を訪ねて、東京から伊那まで行きました。
覚えてるのは……。
その子の住む学生アパート(下宿?)のトイレが、まだ汲み取りだったこと。
↑覚えてますか? 『松神駅』です。もちろん、その子のアパートに、こんな貼り紙はありませんでした。
あと、列車やバスを乗り間違えまくって、常時パニクってたことですね。
↑マジで、アンドロメダに連れて行かれるかと思った。
自分は旅には向かないと、つくずく思い知りました。
なので、こうして紙上だけで旅してるんですけどね。
さてさて。
お話を続けましょう。
み「早い話、電車の切符なわけでしょ?」
食「そうです」
み「駅のベンチで寝るようなヤツが使う切符だな」
↑これも『松神駅』。
食「ま……。
あえて否定はしません」
み「端的に説明せい」
食「まず……。
この切符の名称からくる誤解を解きたいと思います」
み「なんじゃい」
食「それでは、問題です」
食「『青春18きっぷ』を使えるのは……。
何歳から何歳まででしょうか?」
律「18歳までじゃないんですか?」
み「あんたも少し捻りなさいよ。
そうじゃないから、お題になってるわけでしょ」
食「ま、そういうことです」
律「じゃ、何歳なの?」
み「18と称しながら、18歳までじゃないとすると……。
これは、あらゆる可能性があると云わねばならん」
↑人の一生。
食「あの、答え言っていいですか?」
み「ならん!
考え中だ」
食「駅が来ちゃいますよ」
み「18ってのが年齢でないとすると……。
“青春”が18年間あるってことなんじゃないの?」
律「“青春”って、何歳から?」
み「青春の大御所、森田健作のドラマが……。
高校生を主人公としていたことから見て、高校生の年齢からだな」
律「じゃ、16歳?」
み「16歳が、『青春18きっぷ』使って家出したら、JRの責任になるぞ」
律「ならないわよ」
食「あの、答えを言います」
み「待たっしゃい!
すぐ答えを出して進ぜる。
車の免許って、何歳から取れる?」
律「18歳からでしょ」
み「左様じゃ。
で、高校を出て就職する若人は……。
高3の在学中に免許を取って、就職に備えるわけだな」
↑夜、うなされるほど苦手でした。
律「それとこれと、どう關係があるのよ?」
み「わからんかのぅ。
旧国鉄の深謀遠慮を。
つまり!
車の免許を取れる18歳に、この『青春18きっぷ』を使わせることによって……。
車に流れようとする若者を、列車に繋ぎ止めることが目的だったのじゃ」
↑こたつ列車でくつろぐナマハゲ。関係ないけど、おもろかったので。
律「ほんとかしら?
って、ちょっと待ってよ。
それなら、わたしが言った18歳からってのが、正解ってことじゃないのよ」
み「そんなこと言ってないだろ」
律「言いました」
み「あんたは、18歳までって言ったの」
律「そう?
じゃ、18歳から18歳までよ。
つまり、18歳だけが使える切符」
み「そんな幅の狭い切符があるか!」
食「答えを云います」
み「すでに出ておるではないか。
18歳からじゃ」
律「違います。
18歳まで」
食「ですから……。
そうならないから、お題になったわけですよ」
み「裏の裏という、幼稚な答えじゃな」
↑横浜市市民文化会館『関内ホール』にある“メビウスの帯”のオブジェ。これも税金。
食「答えは……。
年齢制限はありません」
み「そんな問題があるか!」
食「年齢に関係なく、誰でも利用できます」
み「反則だろ。
この“18”というのは何なんじゃ?」
食「ま、年齢制限は無いにしても……。
ターゲットは、青春まっさかりの若者だったわけです。
“18”ってのが、青春の象徴みたいな年齢だからということらしいですよ」
↑和久井映見さん。こんな人がそばにいた夏は、決して忘れないでしょうね。
み「そんないーかげんなネーミングでいいのか?
若者しか使えない切符だと思ってた大人が、たくさんいるはずだぞ」
食「それはそれでいいんです」
み「なんでよ?」
食「早い話……。
非常に安い切符です。
で、ターゲットは……。
こんな安い切符でも無ければ、旅行なんかしようと思わない若者なんです。
つまり、新たな利用者を掘り起こすための切符ですね。
普通の切符を買える人には、通常料金の切符を使ってもらいたいわけですよ。
だから、若者向けみたいなネーミングにしたんだと思います」
み「イマイチ、納得できんが。
まぁ、いい。
で、いくらなの?
350円?」
み「文学系のミュージアムで……。
展示物を眺めてると、なぜかうんこがしたくなるよね」
律「何それ?
そんなの、あんただけでしょ」
み「にゃんと!
わたしだけきゃ?
チミは?」
食「図書館や書店に行くと、そうなる人がいるって云いますよね」
み「だっしょー。
ぜったいなるんだって。
なんでだろ?
やっぱり、小説執筆時の産みの苦しみを想像してしまうからかな?」
律「作家志望の人ばっかりじゃないんだから。
そんな人、聞いたことない」
食「けっこう有名ですよ。
『青木まりこ現象』と云われてるらしいですね」
律「誰なんですか?、その人。
芸人?」
み「青木さやかと混同してない?
そういえば彼女、最近見ないよね」
↑育児に専念されてるようです。
律「林真理子なら知ってるけど」
食「青木まりこは、ごく普通の読書好きな女性です。
この人が、『本の雑誌』に、一通の投書を送りました。
『わたしは何故か、長時間本屋さんにいると便意を催します』って。
1985年のことですね(当時29歳)」
↑この映画が作られた年。
み「そんな昔だったの?」
食「四半世紀も前ですね。
この投書が共感を呼んだわけです。
つまり、同じ思いをしてた人がたくさんいた。
で、『青木まりこ現象』と名付けられたんです」
み「どうしてそうなるか、解明されたの?」
食「謎のままみたいですよ」
律「Mikiちゃんもそうなの?」
み「昔は、そんな感じもしたね。
トイレに駆けこむほどじゃないけど。
でも今は、本屋自体行かないし」
律「何で?」
み「ヒマがないし……。
本は、ネットで注文しちゃうから。
いくつか、説はあるんでしょ?」
食「そうですね。
本の印刷に使われるインクの揮発性物質が原因だって説なんか、もっともらしいですね」
み「ふむ。
それは、いい着目点だぜ」
律「なんで?」
み「原因は本にあるってアプローチ。
だって、同じ症状が、図書館でも起きたもの」
律「それじゃ、図書館のトイレは、いつも満員?」
み「そうはならんが……。
利用者1人当りの大便率は、かなり高いと思う」
律「ほんとにぃ?」
み「だって、トイレ入ると、いつもうんこ臭いんだもん」
↑製作中、誰も気づかなかったのか?
律「ほんとに、どうしてこういう話題になるのかしらね」
み「女子トイレだとわかりにくいんだよな。
大か小か。
誰か、男子トイレで計ってくれないかな。
ほら、パイプ椅子に座って、カウンターをカチャカチャしてる人がいるじゃん」
律「トイレの中でやるの?」
み「さようです」
↑中央自動車道のトイレ。こんな使い方をする人が、まだいるのか?
律「1日中、臭いを嗅いでるわけね」
み「時給、800円でどうじゃ?」
律「安っ。
絶対ゴメンだわ」
み「正味8時間働けば、6,400円ももらえるぞ。
臭くて食欲がわかないから……」
み「昼食代も浮くし。
電卓電卓」
↑覚えてますか? 食くんの、かっちょいースライド電卓。
み「ふむふむ。
週5日働いて、32,000円か。
1ヶ月平均の週数は、365÷7÷12で……。
4.3週。
32,000円×4.3=137,600円。
う~ん。
暮らしていくには、ヒジョーにキビシ~」
み「やっぱり、800円ってことないよね。
臭い思いもするんだからさ。
900円。
900円出しましょう」
み「これだと、900円×8=7,200円。
7,200円×5日×4.3週=154,800円。
うーん。
微妙だわい。
よし!
時給、1,000円出そう」
↑この謎が知りたい方は、こちら。
律「いいかげんにしなさい」
食「トイレの利用人数を計測するバイトが、毎日あるとは思えません」
み「なにー。
根本から覆すようなことを」
律「覆すもなにも……。
最初から砂上の楼閣でしょ」
み「くそ。
せっかくの夢が壊された」
律「情けない夢。
でも、ほんとに本が原因なの?」
み「あ、今、洒落たでしょ。
この程度では、座布団はあげませんよ」
律「結構です」
み「ありゃ。
連れないのぅ。
でも、本が原因という説は、大いに納得できる」
律「この話題、異様に好きね」
み「なにしろ、『由美美弥』でも書いたしね。
由美が、図書館で催したことにより……」
み「物語が動き出したんだから」
律「本が原因っていうか……。
もっと深いところに根ざしてる気がするけど」
Wikiには、驚くほど多くの説が記述されてます(こちら)。
わたしには、浅田次郎の「活字に対する精神的プレッシャーが原因」という説が、いちばんしっくり来ましたが……。
ひょっとしたら、活字の匂い説もありかも。
昔、新聞紙でお尻を拭いてたころの記憶が、共通意識として残ってるんですよ。
で、活字の匂いを嗅ぐと、トイレを連想してしまうというわけ。
食「はい。
『深浦駅』到着です」
食「降りるんなら、付き合いますよ」
み「気楽な稼業じゃのぅ。
予定とか、立ててないの?」
食「大雑把な計画はありますけどね。
想定外のことが起きて、計画どおりに行かなくなるってのが……。
気ままな旅の醍醐味なんで」
み「すぐ発車だろ?」
食「深浦は4分停車ですから」
↑線路に草が生えてるってのが、1日の運行本数を物語ってますね。
み「普通の駅だね」
↑表側なのか裏側なのか、よーわからん駅です。
み「あ、そうだ。
こいつを聞いてなかった。
日帰り温泉。
ある?」
食「ございます」
み「あんたほんとは、深浦町役場の観光課じゃないの?」
食「ボクもそんな気がしてきました。
わが深浦町自慢の湯を紹介します。
その名も、『深浦町フィットネスプラザゆとり』でございます」
み「おー、知っておるぞ」
食「ほんとですか?」
み「かのユトリロが描いたという風呂じゃろ?」
食「描くわけないじゃないですか」
み「どんなお風呂があるわけ?」
食「大浴槽のほか、泡風呂、薬湯、打たせ湯、ジェット湯、ボディシャワー、サウナ、水風呂などです」
み「おー、揃えましたね」
食「『ゆとり』と『健康回復の場』をモットーにしております。
お風呂の前には、トレーニングルームで汗をお流しください。
お風呂を上がられたら、ボディソニックなどリラックス機器のある休憩ホールでおくつろぎください」
食「ラウンジでは、軽食も召し上がれます」
み「ほー。
大した施設じゃん。
入浴料って、いくら?」
食「それを聞いたら驚きますよ」
み「座りしょんべんする?」
律「下品なこと言わないの!」
食「これだけ揃って、なんと!」
み「10円?」
律「そんなわけないでしょ!」
食「10円は流石に無理ですが……。
なんと、大人一人350円です」
律「ちょっと……。
いくらなんでも、安すぎません?」
食「ま、公共施設でなければ、こんな料金設定は出来ません」
み「ラウンジの軽食も、300円の内か?」
食「別料金です」
律「当たり前でしょ。
でも、東京の銭湯が450円よね」
律「何だか不公平な気さえするわ」
食「降りますか?
そろそろ、発車ですよ。
そうそう。
駅前に、ウマい食堂があるんです。
『広〆』って云います」
食「観光客相手なので、ちょっと高めですがね。
『いくら丼』なら、1,600円から。
豪華版では、『うにイクラ丼』の2,600円」
み「高っ」
食「漁師町だけに、新鮮さと味は保証しますよ」
↑夕凪の深浦港。露天風呂みたいですね。
み「そんな値段じゃ、地元の人は食べないだろ」
食「地元の常連さんは、牛丼を食べるようですね。
700円(画像なし。古い情報かもしれませぬ)」
み「海の真ん前で、牛丼食うのか。
しかも、牛丼屋なら2杯食える値段で」
食「試しに、食べてみませんか?
ちょうどお昼時だし」
み「まだ11時前だろ」
食「食堂は11時開店です。
食堂が開店する時間は、立派なお昼です」
み「やっぱ、パス」
食「なんでですか?」
み「わたし、海鮮系、苦手だから」
食「えー、そんな。
胃がすでに、臨戦態勢に入ってたのに」
み「チミだけ降りれば」
食「連れないなぁ。
まだまだお供させてくださいよ」
ガッタン。
律「あー、出ちゃった」
食「ボクの牛丼が……」
↑『吉野家』の懐かCM。
み「深浦まで来て牛丼食わなくてもいいの。
ほら、次はどこよ」
食「深浦を過ぎると、小一時間は止まりません」
み「あらそう」
律「いいじゃないの。
のんびり行きましょうよ」
さてここで……。
五能線が全通した昭和11年発刊の『旅窓に学ぶ(ダイヤモンド社)』の車窓描写を見てみましょう。
『深浦から線路は未だ斧鉞(ふえつ)の入らぬ原生林の山林を負ふて、先づ吾妻川を渡り、右方断崖海に落ちて直ぐ砂濱となる處に護岸波浪止の擁壁を置いてその間を走る。艫作崎以北は風向の關係で波浪グンと高く、殊に冬季雪を交へた烈風に直面するときは波浪、その擁壁に砕け凄まじき壮観は一見に値する』
↑五能線【側面展望】深浦→千畳敷
律「すごーい。
ほとんど波打ち際じゃない」
み「うーん。
でも、あの消波ブロックは何とかならんかのぅ」
律「確かに、もったいないわよね。
せっかくの景色なのに」
み「それと、このフェンス。
頻繁に視界を遮ってくれるじゃないの(【側面展望】の4:55あたりから)」
食「仕方ないです。
昭和47年の12月でした。
高波で線路の路盤が流出し、列車が転落したんです。
機関士が殉職してます」
み「なるほど。
こんな綺麗な海には似つかわしくない人工物だけど……。
冬期は、まさしく人の命を守ってくれる、大事な施設なんだね」
↑消波ブロックのジオラマ用キット。いろんなものがあるものです。
食「五能線は、地域の生活路線ですからね」
み「観光客の視点からだけ見ちゃいかんということか」
食「ですね。
あ、『広戸』駅通過します」
み「相変わらず、強烈な駅ですな。
農作業小屋でも、もちっとマシだぞ」
律「あら。
波打ち際はもう終わりかしら」
食「もうすぐ、追良瀬川です。
河口を避けて、内陸側を渡りますので」
律「奥入瀬川って、有名なんじゃないです?
聞いたことあるわ」
食「それはたぶん、もうひとつの奥入瀬川ですね。
同じ青森県ですが……。
そちらは、十和田湖から出て太平洋に注ぐ川です」
み「同じ県で同じ名前の川があっていいわけ?」
食「字が違います。
最初の2字。
ほら、鉄橋を渡りますよ」
み「何て鉄橋?」
食「『追良瀬川鉄橋』ですj
↑ズバリの画像がありました。山あり川あり海あり。いいところですね。
み「そのまんまじゃん。
第何とかも付かないの?」
食「付きません」
み「あらそう」
食「この川を6キロほど遡ったところに、『見入山観音堂』というお堂があります」
み「聞いたことないのぅ。
有名?」
食「うーん。
地元では有名です」
み「全国的には?」
食「知る人ぞ知る……」
み「早い話、無名ってことね」
食「地元の信仰は厚いようです。
お堂は、深浦町指定の文化財になってます」
み「地元では大事にされてるってことか」
食「参道も整備されてますし……。
駐車場やトイレもあります」
み「見どころは?」
食「崖の上の洞窟に、お堂が建てられてるんです。
岩の窪みに、造り付けられてるわけですね。
そこまで、急坂を登ってお参りするわけです」
み「山形にある『山寺』みたいな感じか?」
食「『山寺』は、洞窟じゃないですけど……。
高いところにあるという点では、同じ系統でしょうか」
↑『山寺(立石寺)』
み「何で、そんな不便なとこに、わざわざお堂なんか建てるかね?」
食「やっぱ、有り難みが増すからじゃないですか」
み「そんなもんかのぅ。
いつころできたお堂なわけ?」
食「創建は、室町時代初期のようです」
み「げ。
町指定どころか、国宝級じゃないの」
食「もちろん、当時の建物は残ってません」
み「ありゃー」
食「ご本尊の観音様も、天明6年(1786年)の火災で焼けてしまいました」
み「観音堂に観音様がいないわけ?」
食「今は、石仏の観音様がまつられてます」
↑道中に立つ案内観音。たくさん立ってるようです。
み「石なら、火事でも大丈夫だな。
しかし……。
崖の上の観音堂で、どうして火事が起こるわけ?」
↑酔っ払ったら歩けませんね。
食「さー。
蝋燭が倒れたりしたんじゃないですか?」
み「浮浪者が入りこんだりしたんじゃないの?」
↑観音堂内部。十分泊まれそうです。
食「どうでしょうね。
わざわざ崖の上のお堂まで登りますかね?
食べ物もありませんよ」
み「追良瀬川があるではないか」
食「は?」
み「川には魚がおるだろう。
お堂の上から、釣糸下げたんじゃないの?」
↑ねずみ男ではありませねん。ムーミンです(千葉県夷隅郡大多喜町にて)。
食「確かに、お堂からは追良瀬渓谷を望むことができますけど……。
竿が届くような位置じゃありませんよ」
↑木々の隙間から遠く望めるようです。この画像では霧で見えず。
み「リールを使えば届くだろ」
↑飛距離を競う『スポーツキャスティング』という競技があるそうです。
食「江戸時代の話をしてるんですよね」
み「そうだっけ?
まぁ、いい。
でも実際、魚はいるんでしょ?」
食「追良瀬川は、川魚の宝庫と呼ばれてます。
かつては、集落で食べきれないほどのアユが採れたそうです」
食「今は、そこまではいきませんが……。
それでも、アユのほかに、イワナ、ヤマメなどが釣れます」
↑八郎太郎が我慢できずに食べた岩魚の塩焼き。確かに喉が渇きそうだ。
食「遠方からの釣り客も多いらしいですよ」
み「ふーん。
それにしては、釣り客らしい人は乗ってなかったけど」
↑かつて、紀勢本線を走ってた臨時夜行列車だそうです。
食「渓流釣りの解禁は、4月から9月までです」
↑伝説の達人、追良瀬川に降臨。
み「ありゃ、もう終わってたのか」
食「それに……。
『リゾートしらかみ』は、『追良瀬駅』に泊まりませんから……。
追良瀬川目当ての釣り客が乗ってるわけもないです」
み「ふん」
食「渓流釣りに、もちろん海釣り。
深浦は、釣り好きには堪えられない町でしょうね」
↑鉄女なんて、もう古いのか?
み「海釣りは、何が釣れるの?」
食「春は、クロダイにカレイ、ホッケ。
夏は、クロダイに加え、サバにマダイ、キス。
秋は、クロダイ、スズキ、アジ、イカ、サヨリ。
冬は……」
み「クロダイ!」
↑確かに、姿のいい魚です。
食「当たりです。
あと、アイナメ、ホッケ、イカ」
み「クロダイってのは、1年中釣れるわけ?」
食「棲み着いて、移動しないんでしょうかね?」
み「口が卑しいんじゃないの?
あと、バカだとか」
↑バカ魚ならぬ、魚バカ。新宿にあるようです。
食「さー。
そこまで詳しくないですから」
実際、悪食で、スイカやミカンでも釣れるそうです。
食「はい、『追良瀬駅』通過します」
み「ふーむ。
もちっと風情のある駅に出来んもんかの」
食「大丈夫です。
次の駅が、風情ありすぎですから」
み「何て駅?」
食「ま、それはお楽しみで」
律「あ、トンネル」
食「ここから、4つほどトンネルが続きます。
塩見崎を貫くトンネルです」
み「実に、類型的な名前の岬だな」
食「名前はそうかもしれませんが……。
外見は、けっこう特徴的です。
柱状節理が表れてますから」
↑白いのは、ウミウの糞だそうです。
み「おー。
名前だけは聞いたことがあるぞ。
どういうのだっけ?」
食「溶岩が冷えるとき、体積が縮むために出来る規則的な割れ目のことです」
↑米ワイオミング州にあるデビルズタワー。『未知との遭遇』の舞台です。
み「ほー。
次の駅名って、柱状節理と関係あり?」
食「ぜんぜん無いです」
み「向井理とも?」
↑ガラスの向うに、なにかいますよね?
食「ありません」
み「なんだよ。
駅名くらい教えてくれたっていいだろ」
食「後のお楽しみです」
み「ヒント!」
食「うーん。
これ言ったら、丸わかりですが……。
大ヒントをさしあげましょう。
ずばり、『青春18きっぷ』です」
み「なんじゃそれ?
知ってる?」
律「知らない」
食「なんか……。
思い切り、力が抜けます」
み「力抜け山か?」
食「何です、それ?」
み「昔の相撲取りのタニマチに、偉い書家がいたんだって。
で、贔屓の相撲取りを讃える書を書いて、贈ったんだって。
その中に……。
『力、山を抜き』という一節があった。
で、この部分を見た相撲取りが……。
ここは困りますと言ったんだって」
律「なんでよ?」
み「書ってのは、漢文で書いてあるわけよ。
読み下し文じゃないわけ。
つまり、『力、山を抜け』って一節は……。
『力抜山』となるわけよ」
↑力は山を抜き気は世を蓋う(項羽)
み「つまり相撲取りは……。
『力抜け山』と読んだってこと」
食「あの、続けていいですか。
説明する前に駅が来ちゃうとマズイので」
み「おー。
話の腰を折ってしまったようじゃの。
力が抜けるとか、妙な感想を言うから悪いんじゃぞ」
食「ボクのせいですか?」
み「にゃに?」
食「あ、すみません。
ボクのせいでした。
ここは、とにかく進めさせてください」
み「よかろう。
あ、“よかろう”と“なめろう”って、似てるよね?」
↑“なめろう”。見た目は良くありません。似たモノを、飲み屋街の電柱の根本で見かけます。
食「進めます!」
み「“ういろう”も似てた」
↑“ういろう”。こちらは素直に美味しそう。原材料が米粉ってとこが、羊羹(こちらは小豆)との違い。
食「『青春18きっぷ』の話をさせてください!」
み「聞いたことは、ある気がする」
食「ポスターを、駅で見てると思いますよ」
↑2013年夏バージョン。今、駅で見かけるのはこれですね。
キャッチコピーは、『はじめての一人旅を、人は一生、忘れない』。
わたしの初めての一人旅は……。
確かに、覚えてますね。
大学に入ってからでした。
高校の同級生に、信州大学の農学部に入った子がいたんです。
その子を訪ねて、東京から伊那まで行きました。
覚えてるのは……。
その子の住む学生アパート(下宿?)のトイレが、まだ汲み取りだったこと。
↑覚えてますか? 『松神駅』です。もちろん、その子のアパートに、こんな貼り紙はありませんでした。
あと、列車やバスを乗り間違えまくって、常時パニクってたことですね。
↑マジで、アンドロメダに連れて行かれるかと思った。
自分は旅には向かないと、つくずく思い知りました。
なので、こうして紙上だけで旅してるんですけどね。
さてさて。
お話を続けましょう。
み「早い話、電車の切符なわけでしょ?」
食「そうです」
み「駅のベンチで寝るようなヤツが使う切符だな」
↑これも『松神駅』。
食「ま……。
あえて否定はしません」
み「端的に説明せい」
食「まず……。
この切符の名称からくる誤解を解きたいと思います」
み「なんじゃい」
食「それでは、問題です」
食「『青春18きっぷ』を使えるのは……。
何歳から何歳まででしょうか?」
律「18歳までじゃないんですか?」
み「あんたも少し捻りなさいよ。
そうじゃないから、お題になってるわけでしょ」
食「ま、そういうことです」
律「じゃ、何歳なの?」
み「18と称しながら、18歳までじゃないとすると……。
これは、あらゆる可能性があると云わねばならん」
↑人の一生。
食「あの、答え言っていいですか?」
み「ならん!
考え中だ」
食「駅が来ちゃいますよ」
み「18ってのが年齢でないとすると……。
“青春”が18年間あるってことなんじゃないの?」
律「“青春”って、何歳から?」
み「青春の大御所、森田健作のドラマが……。
高校生を主人公としていたことから見て、高校生の年齢からだな」
律「じゃ、16歳?」
み「16歳が、『青春18きっぷ』使って家出したら、JRの責任になるぞ」
律「ならないわよ」
食「あの、答えを言います」
み「待たっしゃい!
すぐ答えを出して進ぜる。
車の免許って、何歳から取れる?」
律「18歳からでしょ」
み「左様じゃ。
で、高校を出て就職する若人は……。
高3の在学中に免許を取って、就職に備えるわけだな」
↑夜、うなされるほど苦手でした。
律「それとこれと、どう關係があるのよ?」
み「わからんかのぅ。
旧国鉄の深謀遠慮を。
つまり!
車の免許を取れる18歳に、この『青春18きっぷ』を使わせることによって……。
車に流れようとする若者を、列車に繋ぎ止めることが目的だったのじゃ」
↑こたつ列車でくつろぐナマハゲ。関係ないけど、おもろかったので。
律「ほんとかしら?
って、ちょっと待ってよ。
それなら、わたしが言った18歳からってのが、正解ってことじゃないのよ」
み「そんなこと言ってないだろ」
律「言いました」
み「あんたは、18歳までって言ったの」
律「そう?
じゃ、18歳から18歳までよ。
つまり、18歳だけが使える切符」
み「そんな幅の狭い切符があるか!」
食「答えを云います」
み「すでに出ておるではないか。
18歳からじゃ」
律「違います。
18歳まで」
食「ですから……。
そうならないから、お題になったわけですよ」
み「裏の裏という、幼稚な答えじゃな」
↑横浜市市民文化会館『関内ホール』にある“メビウスの帯”のオブジェ。これも税金。
食「答えは……。
年齢制限はありません」
み「そんな問題があるか!」
食「年齢に関係なく、誰でも利用できます」
み「反則だろ。
この“18”というのは何なんじゃ?」
食「ま、年齢制限は無いにしても……。
ターゲットは、青春まっさかりの若者だったわけです。
“18”ってのが、青春の象徴みたいな年齢だからということらしいですよ」
↑和久井映見さん。こんな人がそばにいた夏は、決して忘れないでしょうね。
み「そんないーかげんなネーミングでいいのか?
若者しか使えない切符だと思ってた大人が、たくさんいるはずだぞ」
食「それはそれでいいんです」
み「なんでよ?」
食「早い話……。
非常に安い切符です。
で、ターゲットは……。
こんな安い切符でも無ければ、旅行なんかしようと思わない若者なんです。
つまり、新たな利用者を掘り起こすための切符ですね。
普通の切符を買える人には、通常料金の切符を使ってもらいたいわけですよ。
だから、若者向けみたいなネーミングにしたんだと思います」
み「イマイチ、納得できんが。
まぁ、いい。
で、いくらなの?
350円?」
コメント一覧
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1. ビビ&八十郎- 2013/07/29 21:35
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拝見してます。
今回の私のツボは、
先ず結婚した里子の住む青森。
九州とは全く雰囲気を異にする文化圏ですね。
高校の先輩である、
ひじょうにキビシ~!
の財津一郎。
さよならは誰に言う
さよならは悲しみに
吉川君!
の、“さらば涙と言おう”。
いやあ~、18才の青春真っ盛り。
さらば涙と言おう、なんて言ってる時に
エマニエル夫人のビアンシーン。
愕然としましたなあ。
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2. Mikiko- 2013/07/30 07:35
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熊本県立済々黌高校ですか。
甲子園に何回も出てますよね。
てっきり、私立だと思ってました。
しかし、この“黌”の字。
今、これが書けるのは、済々黌高校関係者しかいないでしょう。
シルビア・クリステルさんも、昨秋亡くなりました。
60歳だったそうです。