Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(61)
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食「さー。
 ボクには、山に登る人の気持ちはわかりません」
『そこに山があるからだ』のジョージ・マロリー
↑『そこに山があるからだ』のジョージ・マロリー

み「少し登ったほうがいいんじゃないの?」
食「列車で登るのは大好きです」
HQさんご推奨『箱根登山鉄道』
↑HQさんご推奨『箱根登山鉄道』

食「あと登るのは、『余部鉄橋』の展望台くらいですかね」
あと登るのは、『余部鉄橋』の展望台くらいですかね

み「横着なヤツ。
 そのうち、糖尿か痛風になるぞ」
そのうち、糖尿か痛風になるぞ

食「イヤなこと言わないでください」
み「そもそも、白神山地って、どのくらいの広さなの?」
食「おおよそ、13万ヘクタールです」
み「ぜんぜん見当もつかん」
食「1,300平方キロですね」
み「なんだ。
 新潟市の面積の、2倍までいかないじゃない。
 思ったほどデカくないんだな」
食「新潟市自体が、デカいんですよ」
み「726平方キロあるからな」
食「東京23区全部合わせても、622平方キロですよ」
東京23区全部合わせても、622平方キロですよ
↑紫色の部分が、23の特別区から構成される東京都区部です。

み「ほー。
 東京都区部が、丸々2つ入るわけか。
 それ全部が世界遺産?」
食「いえ。
 原生的なブナ林で占められた中心域、170平方キロの部分です」
原生的なブナ林で占められた中心域、170平方キロの部分です
↑緑色の部分が、世界遺産。

食「世界遺産への登録は、平成5年(1993年)。
 自然遺産としては、屋久島とともに日本で最初の登録です」
自然遺産としては、屋久島とともに日本で最初の登録です
↑現在では、知床と小笠原諸島が加わってます。

み「そもそも、いつごろ出来た林なわけ?」
食「8,000年くらい前だそうです。
 縄文時代ですね」
縄文時代ですね

み「思ったほど古くないんだな」
食「10,000年前に、最終氷河期がありましたからね」
10,000年前に、最終氷河期がありましたからね

食「その後、すぐに形成された林です」
み「じゃ、屋久杉みたいに……。
 樹齢何千年のブナがあるわけだな」
食「ありません」
み「なんでじゃ!」
食「ブナってのは、寿命が短いんですよ。
 大量の実を付けますますからね」
大量の実を付けますますからね

食「果樹と一緒ですよ」
み「何年くらい?」
食「200年くらいです。
 希に、400年くらい生きる個体もあるみたいですけど」
“マザーツリー”と呼ばれる巨木。樹齢400年。
↑“マザーツリー”と呼ばれる巨木。樹齢400年。

み「ふーん。
 それでも、屋久杉の10分の1か」
屋久島の“縄文杉”。樹齢4000年。
↑屋久島の“縄文杉”。樹齢4000年。

食「でも、あまり長生きせずに、次々と倒れることによって……。
 森の栄養分となるわけです」
森の栄養分となるわけです

み「なるほど。
 たくさんの実も降らせて……。
 森の生き物を育んでるってわけか」
森の生き物を育んでるってわけか

食「さらに云えば……。
 このあたりの海の生き物も育んでるわけです」
み「あぁ。
 川だね」
川だね

食「森や海の生き物にとっては、無くてはならない木です。
 でも、人間にとっては、椎茸栽培のホダ木になるくらいで……」
でも、人間にとっては、椎茸栽培のホダ木になるくらいで……

食「あまり役に立たない木でした。
 腐りやすい上に、加工後に曲がったりするからです」
み「腐りやすいってのは、森にとってはいいわけだよね」
食「栄養分が、土に還元されるのも早いですからね」
栄養分が、土に還元されるのも早いですからね

み「曲がりやすいってのも、わかるよ。
 雪に耐えるためには、曲がらなきゃならないからね」
雪に耐えるためには、曲がらなきゃならないからね

食「曲がらなかったら、折れちゃいます」
み「でも、曲がってれば、材木にもならない」
食「そうした特性のために、伐採を免れてきたと言えます」
み「行ってみた?」
食「世界遺産のエリアには、入ったことありません」
み「なんでじゃ?」
食「秋田県側は入山自体禁止ですし……。
 青森県側も、事前に審査を受ける必要があります」
青森県側も、事前に審査を受ける必要があります

食「そもそも、世界遺産に登録された地域ってのは、人の手がまったく入ってないんですよ。
 すなわち、林道もありません。
 文字通り、人跡未踏の地なんです。
 さらに、白神山地自体、今でも隆起を続けてて……。
 地盤が弱く、そこここで斜面崩壊や地滑りが起きてます。
 その中を踏破して行くには、非常に高い技術と体力が必要になります。
 実際、遭難事故で死者も出てるんですよ」
み「ふーん。
 自然遺産ってのは、観光地じゃないってことか」
食「観光地じゃないから、世界遺産に登録されたわけです。
 素人が簡単に行ける場所じゃないです。
 入れるのは、マタギくらいでしょう」
入れるのは、マタギくらいでしょう

食「でも、登録地域は、禁猟区になっちゃいましたからね」
み「マタギは、昔から入ってたの?」
食「いつごろから入ってたのかは、定かでは無いようですが……。
 いたことは確かでしょう。
 でも、その文化も消失することになります」
でも、その文化も消失することになります

食「これについては、批判もあるようです」
これについては、批判もあるようです

み「だろうね。
 生活の糧を、そこから得ていた人は、どうするんだ?
 補償金とか、あったの?」
食「さぁ。
 無いと思いますよ」
み「理不尽じゃないか」
食「ま、マタギの人は……。
 我関せずで入ってるのかも知れませんけど」
み「世界遺産への登録さえ、知らなかったりして」
食「いるかも知れませんね」
み「そういう人が、いてほしいね。
 日本にも」
律「会ってみたい?」
み「会うのは、御免こうむる。
 半分、猿かも知れんし」
律「雪男じゃ無いんだから」
雪男じゃ無いんだから

み「動物も、いろいろいるんだろうね」
食「大きい動物では、ツキノワグマ、カモシカ、ニホンザルってところでしょうが……。
 小動物は、たくさんいると思いますよ。
 イヌワシやクマタカが生息してますから」
イヌワシやクマタカが生息してますから

食「あ、そうそう。
 生き物といえば……。
 変わったものが見つかってます」
み「雪男か?」
食「ずっと小さいものです」
律「ネズミとか?」
食「もっと」
み「アリ?」
食「もっと」
み「何だよ!」
食「酵母菌です」
酵母菌です

み「へ?」
食「『白神こだま酵母』と名付けられました」
『白神こだま酵母』と名付けられました

食「耐冷性に優れ、発酵力が極めて強い酵母です」
み「何に使えるの?」
食「パン作りですね。
 長時間の冷凍に耐えますから……。
 パン生地の長期冷凍保存が可能になりました」
パン生地の長期冷凍保存が可能になりました

み「ほー」
食「さらに、天然甘味料のトレハロースを大量に作り出し……。
 独特の甘み、焼いた時の香りの良さなど、優れた特性を持っています。
 実際、パン製造では、幅広く活用されつつあるようです」
実際、パン製造では、幅広く活用されつつあるようです

み「ふーん、さすが自然遺産だわ。
 バイキンまで珍しいってことか」
弁当にするとは、大胆です
↑弁当にするとは、大胆です。

食「バイキンじゃありませんって」
み「じゃ、なんだよ?
 細菌か?」
律「酵母は、細菌じゃないわよ」
み「どう違うわけ?」
律「細菌は単細胞で、かつ原核生物。
 つまり、核膜に包まれていない核を持ってる。
 対する酵母も、単細胞だけど……。
 核膜に包まれた核を持つ、真核生物なの。
 生物の分類は、原核か真核かで大きく分けられるから……。
 細菌と酵母は、全く異なる生物と言えるわけね」
細菌と酵母は、全く異なる生物と言えるわけね

食「さすが、お医者さんですね」
み「さっぱりわからん」
食「冷涼なうえ、人が入り込まなかったから……。
 そういう菌が生き残ったんでしょうね。
 低温に強い乳酸菌も見つかってまして、『作々楽(ささら)』と名付けられました」
低温に強い乳酸菌も見つかってまして、『作々楽(ささら)』と名付けられました

食「『作々楽(ささら)』には……。
 血圧降下や精神安定作用のあるアミノ酸“GABA(ギャバ)”を作る能力があることも、確認されてます」
“GABA(ギャバ)”を作る能力があることも、確認されてます

み「バイオビジネスが進出して来そうじゃない」
食「実際、化粧品メーカーの研究施設が作られました」
実際、化粧品メーカーの研究施設が作られました
↑閉園になった保育園を改装したそうです。イマイチ、気勢があがりませんな。

み「ふーん。
 でも、転勤になる研究者は大迷惑だよな」
律「また、そういうことを言う。
 スゴく、やりがいのある仕事だと思うわ」
み「先生だったら、行くわけね」
律「もちろん、お断りします」
もちろん、お断りします

み「なんじゃそりゃ!」

食「ほら、また鉄橋ですよ。
 これが、大峰川。
 もう1本渡りますよ。
 小峰川です」
み「さっきから、川だらけだなぁ」
食「それだけの水を、白神山地が抱いてるってわけです。
 向こうの窓から、白神の連山が垣間見えるでしょ」
向こうの窓から、白神の連山が垣間見えるでしょ

食「ここらの海が豊かなのは、森からの栄養豊かな水が流れこんでるからです。
 あ、また駅を通過します。
 『松神』駅です」
『松神』駅です

み「駅名板がちらっと見えたけど、松の神さまで、『松神』か」
松の神さまで、『松神』か

 例によって、駅舎は強烈。
例によって、駅舎は強烈

 2003年ころ、建て替えられたみたいですが……。
 建設費、30万円くらい?
 向かって右側にある構造物は、トイレでして……。
 旧駅舎時代のままのようです。
 ↓そこには、恐るべき張り紙が。
そこには、恐るべき張り紙が

 たぶん……。
 汲み取りですよね。
 “足場老朽化”と云うことは……。
 足元が突然抜けて、奈落の底に転落するということじゃないんでしょうか。

 その後、このトイレが改修されたのか、探してみました。
 でも、新築のトイレは見つからず、代わりにこんな画像を発見。
新築のトイレは見つからず、代わりにこんな画像を発見

 トイレが無くなってます。
 どうやら、撤去されただけのようです。
 この駅で催した場合……。
 すべてを諦めるしか無さそうです。

 なんで、再建されなかったのかと云うと……。
 ↓こんなあたりに原因がありそうですね。
こんなあたりに原因がありそうですね

 無人駅なので、深浦駅が管理してるんでしょうか?
 『青春18切符』を持ったヤツとかで、泊まるのがいるんでしょうね。
 トイレが無かったら、泊まりにくいですもんね。

み「いわく有りげな地名だね」
食「ここらは、旧家が多いんですよ。
 元和7年の記録に、『北村久左衛門、松神、大間越を拓く』とあるそうです」
み「元和って、いつごろよ?」
律「日本史の女王なんじゃないの?」
み「元号まで、覚えてられまっかいな」
食「元和7年は、1621年です」
元和7年は、1621年です

み「江戸幕府が開かれて、すぐか。
 『松神』の由来は?」
食「はっきりしないみたいですね。
 村が拓かれたとき、松浦と的神という地域から人が移住してきたそうで……。
 2つの地名を合体して『松神』となったという説が有力のようです」
み「なーんだ。
 案外つまらん謂われだな。
 神の宿った松でもあるのかと思った」
食「そんな松があるんですか?」
み「新潟には、蛇松明神社という神社がある。
 白山神社に間借りしてる、超小さい神社だけど」
新潟には、蛇松明神社という神社がある

食「どんな謂われがあるんです?」
み「白山神社の神主さんが、洪水の信濃川で溺れる白蛇を助けたんだと」
食「蛇って、泳げるんじゃ……」
蛇って、泳げるんじゃ……

み「黙って聞かんしゃい!
 で、境内の松の梢に放したところ……」
境内の松の梢に放したところ……

み「蛇はたちまち美しい姫君の姿に変わった」
こんな映画が見つかりました。1959年(昭和34年)製作
↑こんな映画が見つかりました。1959年(昭和34年)製作。うーむ、見てみたい。

み「そして、神主にこう告げたわけじゃ。
 『御恩は決して忘れません。これからは、白山神社の守り神となって、この地の繁栄のために祈ります』
 姫の姿が、煙と共に消えると同時に……。
 老松の木肌は、たちまち蛇の鱗のように変わった」
老松の木肌は、たちまち蛇の鱗のように変わった

食「松の木肌って、もともと鱗みたいなんじゃ……」
み「黙らっしゃい!
 すると、雨を降らせ続けていた雲に、鱗に似た切れ目が出来……。
 陽の光が射してきたという」
陽の光が射してきたという

食「なんでそんな口調になるんですか?」
み「気にするでない」
律「ときどき、ヘンな人が乗り移るのよ。
 頭叩いてやると、治るから。
 こんな風に」

 バシッ。

み「痛てっ!」
律「目が覚めた?」
み「最初から覚めとるわい」
律「じゃ、何の話してたか覚えてる」
み「覚えてなかったら、若年性アルツハイマーだろ。
 蛇松明神社の話だよ」
蛇松明神社の話だよ

食「聞いたことなかったなぁ。
 有名な神社なんですか?」
み「無名です」
律「あら、あっさり」
み「でも最近は、変わってきたみたいだよ。
 妙な地下通路を通らないと行けないこともあって……」
妙な地下通路を通らないと行けないこともあって……

み「密かなるパワースポットとして、人気が出てきてるんだって」
密かなるパワースポットとして、人気が出てきてるんだって

み「県外からも、参詣者があるんだって」
律「へー。
 どんなご利益があるの?」
み「現世的ですな」
律「当たり前でしょ。
 現世でご利益の無いものには、興味ありません」
み「昔から、“巳成金(みなるかね)”と云って……。
 蛇は商売繁盛の神様」
『ジャパンスネークセンター』群馬県太田市
↑やや欲張りすぎ?(『ジャパンスネークセンター』群馬県太田市)

み「商業高校の校章にも、蛇を象ったデザインは多いんだよ」
新潟商業高校の校章
↑新潟商業高校の校章

律「それは、いい神様ね。
 ぜひ、ご利益を頂戴したいわ」
み「先生は、すでに頂戴できてると思います。
 なので、蛇松明神社さま。
 まず、わたしにご利益をくださいまし」
夏場なんか、処分が大変でしょうね
↑夏場なんか、処分が大変でしょうね。

み「そしたら、このブログで大宣伝してさしあげます」
律「エロサイトで宣伝されても、迷惑なんじゃないの?」
み「そんなことあるかい」

 こちらこちらのサイトさんのページに、蛇松明神社の写真が多く掲載されてました。

食「あ、また川を渡りますよ。
 濁川です」
み「おぉ、わかりやすい名前。
 濁ってるんだな。
 新潟にも、濁川って地名があるよ」
新潟市北区濁川
↑新潟市北区濁川

み「新潟の濁川は、いかにも泥臭い魚が棲んでそうなそうなところだけど……。
 白神山地から流れ出る川が、なんで濁ってるんだろう」
白神山地を下る濁川。とても濁っているようには見えません
↑白神山地を下る濁川。とても濁っているようには見えません。

食「この川の上流が、十二湖なんです」
この川の上流が、十二湖なんです

み「あ、そうなの。
 じゃ、十二湖の水が流れ出てるのか。
 でも、十二湖って、透明度が高いんじゃないの?」
十二湖って、透明度が高いんじゃないの?
↑青池の岸近くでは、こんな感じ。

み「なんで、流れ出る川が濁るわけ?」
食「覚えてませんか?
 十二湖の出来たわけ?」
み「どっかで聞いた気がする。
 マスミンに聞いたんだっけ?」
律「わたしに聞かないでちょうだい」
食「さっき、ボクが話したじゃないですか」
み「そうだっけ?」
食「『リゾートしらかみ』には、3編成の車両があって……。
 そのうちのひとつの名前が、『青池』だってことからですよ」
そのうちのひとつの名前が、『青池』だってことからですよ

み「思い出した気がする」
食「たった2時間前のことです。
 湖沼学の講義まで伺いました。
 『青池』は、湖沼学的には“池”じゃなくて“沼”だから、本当は『青沼』だって……。
 青沼静馬のモノマネまで始めたじゃないですか」
み「あ。
 鮮やかに思い出した。
 そんなこともあったのぅ」
湖沼学部

食「遠い目をしないでください」

 自分で言うのもなんですが……。
 忘れてしまうのも、無理ないんです。
 当該シーンの投稿は、昨年の2月でした(909回)から。
 『東北に行こう!(36)』に収録されております。

 あれからもう、1年になるんですね。
 早いものです。

み「ま、いいや。
 今一度、語っていただきましょう」
食「語るほどのこともありませんけどね」
み「どうぞ、遠慮なさらずに」
食「十二湖が出来たのは、1704年です」
十二湖が出来たのは、1704年です

み「げ。
 そんなに最近なの?
 太古からあるのかと思った」
食「1704年の能代地震で、崩山(くずれやま)が崩壊し……」
み「待てい。
 崩壊したから、崩山なんだろ」
崩壊したから、崩山なんだろ

み「崩壊する前は、別の名前だったはずだ」
食「そこまでは知りませんよ。
 とにかく、山崩れで、川が堰き止められ……。
 出来たのが、十二湖と云われてます」
出来たのが、十二湖と云われてます

み「能代地震って、象潟が陸地になった地震だっけ?」
地震前、田んぼの部分は、すべて海でした
↑地震前、田んぼの部分は、すべて海でした。

食「場所がぜんぜん違います。
 象潟は、秋田県の最南部でしょ。
 山形県境。
 能代は県北です」
象潟と能代

み「時期的にはどうなのよ?」
食「不思議なことに……。
 象潟地震は、能代地震のちょうど100年後でした。
 1804年ですね」
み「雷電為右衛門が、日記に残したんだよね」
食「『雷電日記』ですか」
雷電為右衛門が、日記に残したんだよね

食「よくご存知ですね」
み「侮れんだろ」
食「驚きました」
律「ただの受け売りよ」
ただの受け売りよ

み「江戸時代の秋田って……。
 地形が変わるほどの地震が、2回も起きてたんだね」
食「実は、能代地震は、もう1回起きてます。
 ていうか、こっちの方が、本家の能代地震です」
み「いつの話じゃ」
食「十二湖が出来た能代地震……。
 これは、岩館地震とも呼ばれてます。
 本家の能代地震は、このちょうど10年前。
 1694年に起きました」
能代地震は、能代断層帯が最後に動いた地震だそうです
↑能代地震は、能代断層帯が最後に動いた地震だそうです。10年前の岩館地震の震源は、断層帯の北方だとか。

み「たった10年で、大地震が2回も起きたってこと?」
食「そうです。
 最初の能代地震では、約400人が亡くなってます。
 うち、能代の死者は300人。
 家屋のほとんどが倒壊、もしくは焼失してます」
み「マグニチュードは?」
マグニチュードは?

食「7前後のようですね」
み「ま、耐震性を考えた建物なんてあるわけないから……。
 ひとたまりもないわな」
食「ほぼ壊滅状態だったようです」
み「その10年後って……。
 ようやく、元の暮らしに戻れたころじゃない」
山形県/庄内映画村オープンセット
↑山形県/庄内映画村オープンセット

食「その町を、再びマグニチュード7の地震が襲います。
 復興したばかりの町は、再び壊滅しました。
 時間が、午の下刻だったせいか……。
 死者は、60名程度にとどまったようですが」
み「牛の下刻って何時?」
食「午後1時前くらいです」
み「前回の地震は、何時ごろだったわけ?」
食「卯の下刻でした」
み「だから、それは何時!」
食「朝の7時前くらいじゃないですか」
朝の7時前くらいじゃないですか

食「朝餉の支度の最中だったかも知れません」
朝餉の支度の最中だったかも知れません

食「火を使ってますから、火事が起きやすかったんじゃないでしょうか」
み「そんなら、前の地震のときは、昼餉の最中だったんじゃないの?」
食「そのころはまだ、1日2食だったと思います」
元禄時代以前の食事
↑元禄時代以前の食事

み「あらそう。
 でも、火事も出たろうけど、寝てて潰された人もいたんじゃないの?」
律「昔の人は、もっと早起きなんじゃないの?」
「カムイ伝」の正助くん
↑「カムイ伝」の正助くん

み「ほうか?」
食「ま、とにかく……。
 能代は、10年間に2度も、壊滅的な厄災に遭ってるわけです。
 実は、このときまで、能代の“能”は、別の字を表記してたんです。
 もともとは、アイヌ語の“ヌシロ”が語源みたいですけど」
み「どういう意味よ?」
食「“台地上の草原地”を意味するという“ヌプシル(nup-sir)”からの転語とする説もあるそうですが……」
北海道猿払村(稚内市の隣)にある浅芽野台地
↑北海道猿払村(稚内市の隣)にある浅芽野台地

食「正確にはわかってないようです」
み「別の字って、どんな?」
食「渟足柵(ぬたりのき)と同じ字の“渟代(ぬしろ)”です」
渟足柵(ぬたりのき)と同じ字の“渟代(ぬしろ)”です

み「おー」
食「だから、元々の読みが“ヌシロ”だったのは、間違いないと思います」
み「そう言えば、“ヌタリ”ってのも、アイヌ語っぽいよね。
 これは、どういう意味?」
食「“ヌタ場”ってご存じですか?」
み「ご存じでない」
食「野生の猪なんかが、泥浴びをする場所のことです」
野生の猪なんかが、泥浴びをする場所のことです

食「泥に体をこすりつけることで、体に付いたダニなんかの寄生虫を落とすわけですね」

↑イボイノシシの泥浴び

み「つまり、低湿地みたいなとこを云うわけね」
縄文時代。低湿地での暮らし
↑縄文時代。低湿地での暮らし。

食「そうです」
み「それはよくわかるわ。
 昔の“渟足(ぬたり)”は、信濃川と阿賀野川の氾濫原だったろうからね。
 “渟代(ぬしろ)”もそっち系統じゃないの?」
食「米代川が海に出るところですからね。
 今の市街地は、低地に形成されてます」
み「だろ」
食「でも、米代川の右岸には、台地も広がってるんですよ」
米代川の右岸には、台地も広がってるんですよ

食「古代人が住居を構えるとしたら……。
 そっちだったんじゃないかな」
台地に復元された竪穴住居跡/北斗遺跡(釧路市)
↑台地に復元された竪穴住居跡/北斗遺跡(釧路市)

み「ふむ」
食「で、その後の能代の表記ですが……。
 能代地震があったころには、野原の“野”に変わってました。
 で、この“野代”が、“野に代わる”と読めるということから……。
 地震後、“能(よ)く代わる”の“能代”に変えられたというわけなんです」
み「10年間に2回も大地震に遭ったら、変えたくもなるわな」
食「そのお陰か、1983年に日本海中部地震が起きるまで……。
 280年の間、能代には目立った地震は起きませんでした」
江戸末期の能代港
↑江戸末期の能代港

み「10年間に2回も大地震があれば……。
 エネルギーは、そうとう放出されたってことじゃないの」
食「ま、そういうことでしょう。
 で、もうお分かりでしょ」
み「何が?」
食「濁川という名前が付いた理由です」
み「あ、そうか。
 地震の山崩れで、川が濁ったのか」
地震の山崩れで、川が濁ったのか

食「大いに考えられると思います。
 今は、綺麗な川なんですから。
 でも、ときどきは濁るのかな?」
み「まだ、山崩れが続いてるってこと?」
食「この川を遡ったところに、『日本キャニオン』という景勝地があるんです」
み「ニャンだ、それは?
 胡散臭い名前」
食「胡散臭く無いですよ。
 文字通り、自然が作った景勝です。
 白っぽい断崖絶壁が連なって見えます」
白っぽい断崖絶壁が連なって見えます

食「ま、グランドキャニオンには遠く及ばないので……。
 『日本キャニオン』ということです」
み「なるほど。
 まだ崖の崩落が続いてるとしたら……。
 ときどき川が濁るってことか」
食「昔濁ったことがあるからなのか……。
 その後も、ときどき濁るからなのかは、わかりませんが」
今でも、大雨のときは、凝灰岩の砂により水が濁るそうです
↑水源近くの様子。今でも、大雨のときは、凝灰岩の砂により水が濁るそうです。

み「十二湖の湖の数って、ほんとは12じゃないんでしょ?」
律「あら、そうなの?」
み「そうなのじゃ」
食「30ちょいくらいあります。
 大崩という場所から見ると、12に見えるらしいですね」
大崩という場所から見ると、12に見えるらしいですね

食「でも、これは偶然でしょうが……。
 面積が10,000平方メートル以上の湖沼の数は、12なんです」
み「やっぱり、有名なのは青池?」
食「あの色は、尋常じゃないですね」
青池の色は、尋常じゃないですね

食「いつ見ても神秘的ですが……。
 お勧めは冬です。
 雪の中、かんじき履いて行かなきゃなりませんけど」
雪の中、かんじき履いて行かなきゃなりませんけど

食「青池は、十二湖の一番奥にありますから」
青池は、十二湖の一番奥にありますから

み「道はあるの?」
食「もちろん整備されてますが……。
 冬期は、ガイド無しでの立ち入りは禁止です」
冬期は、ガイド無しでの立ち入りは禁止です

食「マジで遭難しますから。
 でも、苦労しても見る価値はあるそうですよ」
み「てことは……。
 チミは、見てないわけね」
食「ボクの体じゃ、かんじき履いても埋まっちゃいますから。
 聞いた話です。
 でも、ほんとに綺麗だそうです。
 冬になると、池の色は、濃紺に近くなるそうです。
 雪の白さとのコントラストで、いっそう青さが際立って……。
 荘厳な景色だそうです」
荘厳な景色だそうです

律「女神様が浮かび上がってきそうね」
み「お前の落としたのは、この金の斧か、って?」
お前の落としたのは、この金の斧か、って?

食「それは、別のお話でしょ」
み「漫画で読んだんだっけかな?
 浮かび上がってきた女神様の脳天に、斧が刺さってるわけ。
 で、顔面を血に染めながら……。
 『お前が落としたのは、この斧か?』って、頭上の斧を指さすのよ。
 木こりは、一目散に逃げてたな」
律「バカな漫画」
食「『十二湖』駅に停まりますよ」
『十二湖』駅に停まりますよ

み「おー。
 青森県最初の停車駅だね。
 やっぱり、十二湖観光の拠点駅なわけ?」
食「ですね。
 『アオーネ白神十二湖』というリゾート施設があります」
『アオーネ白神十二湖』というリゾート施設があります

み「いかにもな名前じゃのう。
 青池の“アオ”と、“会おうね”を掛けたわけだね。
 三セク?」
食「当たりです。
 知ってらしたんですか?」
み「知るかい。
 でも、完全な民間施設なら、そーゆーネーミングはせんよ。
 語呂合わせ系には、ぜったいに“官”が絡んでるものじゃ」
食「ここには、名物料理があるんですよ」
み「なんじゃい?」
食「お魚です」
お魚です

み「また海鮮か?」
食「ちがいます。
 十二湖の水で育った淡水魚です」
み「十二湖の水って、魚が棲めるの?
 あんな真っ青で」
食「小魚が、すいすい泳いでます。
 透明だから、上からも見えますよ」
透明だから、上からも見えますよ

み「ライギョとか?」
ライギョとか?

食「あれは、汚い水に棲む魚じゃありませんか。
 そういうゲテモノじゃなくて……。
 『幻の魚』とも呼ばれる魚ですよ」
み「わかった。
 クニマス」
クニマス

食「クニマスは、山梨県の西湖にしかいませんって」
み「綺麗な水に棲む、『幻の魚』……。
 わかった。
 イトヨだ」
イトヨだ

食「うーむ。
 一瞬、びっくりしました。
 “イト”まで合ってましたから」
み「じゃ……。
 イトポとか?」
食「そんな魚、いるんですか?」
み「一文字ずつ入れてけば、いつか当たるだろ」
食「連続4回も不正解なので、失格です」
み「なんの失格じゃ!
 第一、4つも答えなかったぞ」
食「ライギョ、クニマス、イトヨ、イトポ。
 4つです」
み「ライギョはウォーミングアップで、イトポは冗談だから……。
 まだ2つじゃ」
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コメント一覧
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    • ––––––
      1. 八十郎
    • 2013/04/01 21:14
    • 盛り沢山で素晴らしいなあ。
      ところで、
      つげ義春の「沼」あたりの絵と、
      白土三平の絵が酷似しているのは
      何故なんだろう。
      さらにそれは、何かしら」
      水木しげるに関係があるんでしょうか。
      そもそも、
      つげ義春の絵が
      作品によって極端に趣が違うのは
      何故なんだろう。
      いやいや、もう気にせんでくだされ。
      “濁り川”ならぬ“濁り酒”を飲んでいる
      おじさんでした。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2013/04/02 07:44
    •  ↓忍者マンガも書いてました。
      http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130402074125710.jpg
       確かに、白土三平にそっくりですね。
       わたしにとってのつげ義春は、幻想文学、夢文学のひとつでした。
       ひょっとしたら、『東北に行こう!』の「み」さんの口調には……。
       ↓つげ義春の影響があるのかも知れません。
      http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130402063309cd7.jpg
       濁り酒、美味しいですよね。
       わたしのおすすめは、三輪酒造の『白川郷』。
       濃厚な、ミルクのような濁り酒です。

    • ––––––
      3. 八十郎
    • 2013/04/04 20:21
    • 桜も散りましたが、
      ミルクの如き濁り酒、
      今度飲んでみます。
      いつか日本最南端の清酒、「亀萬酒造」
      の濁り酒も賞味してくだされ。
      北の御仁には甘いかもしれませんが、
      美味いです。
      ではまた日本の旅、楽しみにしております。
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