2013.1.13(日)
食「鉱山はどうしようもないですが……。
魚の方は、漁獲量も持ち直しつつあるようですよ」
食「八森漁港で、土日と祝祭日に開かれる『はちもり観光市』は、有名です」
食「新鮮な魚が、市価より安く買えますからね」
食「能代はもちろん、弘前からも業者が仕入れに来るそうです」
み「買った魚は、送ってくれるの?」
食「だと思います」(Mikiko注・不確かな情報です)
み「曖昧なヤツ。
重要なポイントじゃないか。
魚を持って列車に乗るの、ゴメンだぞ」
↑JR四国を走るお魚列車(魚が乗ってるわけではありません)。
食「魚は買わなくても、楽しめますよ。
食堂もありましたから」
食「タラのつみれ汁が美味しかったな」
食「やっぱり、大鍋で煮てるから味が違いますよ」
↑はちもり観光市の画像です
み「なんで?」
食「知りません」
み「気分的なものじゃないのか?」
律「“あく”が関係してるんじゃないの?」
み「“あく”?
悪の組織?」
律「なんで、悪の組織がタラ汁を作るのよ!」
↑ぬわんと、200円です。買い!(参照)
律「煮物すると、浮いてくるでしょ。
“あく”が。
あれを、一生懸命取らなきゃ、煮物は美味しくならないの」
み「ほー。
自分で作ってるような口調ですな」
律「作ってないわよ。
香純から聞いたの。
悪い?」
み「別に悪かないよ。
でも、何で“あく”を取らなきゃ美味しくならないんだろ?」
律「悪は除かなきゃならないってことでしょ」
み「シャレで片付けるな。
チミ、解説」
食「知りませんって。
そんな事まで知ってたら、不自然でしょ」
み「キャラのアイデンチチーが無くなるか?
まぁ、いい。
でも、大鍋だと、どうして美味しくなるんだろ?
“あく”が出るのは一緒だろ」
食「ですよねー」
み「あ、体積と表面積の関係かな?
ほら、北方の動物の体が大きいわけ」
↑『男鹿水族館GAO』の豪太くん。
食「あぁ。
ベルクマンの法則ですね。
体を大きくすると……。
体積に対する表面積を小さく出来るので……。
熱が逃げにくいって理由でしたよね」
み「それそれ」
律「そんな理屈があるの?」
み「知らんのか?
理系だろ」
律「その日、休んだかも」
み「それは、わたしの専売特許」
律「特許のわけないでしょ」
律「でも、どうしてそうなるの?」
み「解説しよう。
医者に数学の理屈を説くってのは、気持ちがいいな」
食「算数だと思いますけど」
み「黙らっしゃい。
いいかね、律子くん。
サイコロを思い描いてくれたまえ。
描いた?」
律「いいわよ」
み「そしたら……。
このサイコロを振ったら、何の目が出るでしょうか?」
律「はぁ?」
食「ピピー」
み「何だよ!」
食「明らかに脱線です」
み「小うるさいやっちゃ」
食「小さいところで芽を摘まないと……。
また、『日本海航路殺人事件』みたいな大脱線が起きかねません」
み「おもろかっただろ?」
食「3ヶ月も戻って来ないのは異常です。
こんなことしてたら……。
死ぬまでに青森に着けませんよ」
み「ハーレクインは、驫木あたりで寿命が尽きるな」
み「ま、それも可哀想だから……。
話を急ごう。
サイコロの1辺の長さを、1メートルとします」
律「そんな大きいサイコロ、無いわよ」
み「黙らっしゃい!」
み「計算がしやすいように、キリのいい数字にしてるんじゃない」
律「電卓、あるんでしょ?」
み「あるけど、いちいち叩かなくても答えが出るようにしてるの!」
律「それなら、1センチにすればいいじゃない」
み「笛を貸してくれ」
食「イヤです」
み「なんで!」
食「間接キッスになるじゃないですか」
↑直接キス
み「おまいは、小学生か!
気持ち悪いのは、こっちだ」
み「しかしながら……。
このアマの発言に対し、笛を吹かずにはいられない心境なわけ。
じゃ、自分で吹いていいよ」
食「吹きません」
み「なぜじゃ」
食「1センチ案に、賛成だからです」
み「おのれら……」
律「早く進めてちょうだい」
み「くっそー。
こうなったら、意地でも1メートルは譲らん。
いくぞ。
1辺の長さが1メートルのサイコロがあります。
この1面の面積は何平方メートルでしょうか?」
律「そんなの簡単じゃないの。
1掛ける1で、1平方メートル」
み「ま、これは、サルでも解けるわな」
食「解けないと思います」
み「やかましい。
それでは、このサイコロの体積は何立方メートルでしょう?」
律「あなた、そんなこともわからないの?」
み「わからないから聞いてるんじゃないの!
キリキリ答えよ!」
律「面積掛ける高さでしょ。
1平方メートル掛ける1メートルで、1立方メートル」
律「なんだか、変よね。
どうして増えないのかしら?」
み「それが“1”という数字の特徴です。
掛けても増えないけど……。
割っても減らない。
だから、あいこなの」
み「いい?
次、いくよ。
それでは……。
今度は、1辺が2メートルのサイコロで考えてみましょう」
律「そんなサイコロ、振れないわよ」
み「振らなくていいから、黙って聞かっしゃい!
このサイコロの1辺の面積は、何平方メートルでしょう?」
律「……」
み「わからないの?」
律「黙ってろって言ったじゃない」
み「質問には答えていいの!
私語禁止」
↑不思議な禁止があるものです
律「わがままな先生ね」
↑大阪市北区天神橋1丁目にあるようです
み「普通、そうだろ!」
律「医学部に合格したわたしに、どうしてこんな問題出すのかしら。
2×2で、4平方メートル」
み「よく出来ました。
ここまでは、サルでも解けます」
食「無理だと思います」
み「私語禁止!」
↑いったい何の禁止だ?
み「それでは、このサイコロの体積は何立方メートルでしょうか?」
律「普通に答えていいの?」
み「答えてください」
律「4平方メートル掛ける2メートルでしょ。
8立方メートルよ」
み「おめでとうございます。
正解です。
賞品として、わたしの握りっ屁を贈呈します」
律「いりません!」
み「これでわかったでしょ?」
律「なにが?」
み「1辺の面積と体積の比率よ」
み「つまり、1辺が1メートルのサイコロでは……。
面積と体積が一緒だったから、比率は1でしょ。
それに対し!
1辺が2メートルのサイコロでは……。
面積が4に対し、体積は8。
つまり、比率が2」
律「何が言いたいわけ?」
み「だから!
大きいほうが、体積に対する表面積の比率が小さい」
律「ちょっと待ってよ。
表面積の話をしてるの?」
み「さっきからな!」
律「それは、おかしいじゃないの」
み「何がよ?」
律「表面積だったら……。
サイコロの面、すべてを足さなきゃならないでしょ」
み「物事を複雑にしたがる女じゃ」
↑世界一複雑。東京の地下鉄路線図。
律「当然の理屈でしょ。
1メートルのサイコロの表面積は……。
面が6つだから、6平方メートル。
2メートルのサイコロの表面積は……。
4掛ける6で、24平方メートル」
み「それがどうした」
律「どうしたじゃないでしょ。
あなたが始末をつけてよ」
み「チミ、解説」
食「振らないでくださいよ」
み「理系だろ?」
食「文系です」
み「オタクは、理系じゃないのか?」
食「決めないでください。
でもこれは、理系文系が分かれる以前の問題ですね」
み「そんなら、解説」
食「表現を逆にすれば、わかりやすいとおもいますよ。
1辺が1メートルのサイコロでは……。
体積が1に対し、表面積が6。
つまり、6倍。
1辺が2メートルのサイコロでは……。
体積が8に対し、表面積が24。
つまり、3倍。
すなわち、大きいサイコロの方が……。
体積に対する、表面積の比率が小さい」
み「ほらみろ」
律「なんか納得出来ないわね。
1がインチキしてるって感じ。
1は、掛けても大きさが変わらないからじゃないの?」
み「わからん女だな」
律「3でやってみてちょうだい」
み「よし。
表面積は、3×3×6だから……。
いくつだ?
すでに数学の領域だな」
食「九九の領域です」
食「54でしょ」
み「おー。
ひょっとしてチミは、有名な暗算少年じゃないのか?」
食「だから、九九ですって」
み「じゃ、体積は……。
3×3×3だな。
これならわかるぞ。
27だ。
比率は……」
食「54÷27です」
み「2!」
食「ご明算」
み「ほら、みなさい。
さらに比率が小さくなったではないか。
まだ信用出来ないか?
よし。
それなら、4でやってみよう」
律「これって、明らかに行稼ぎじゃないの?」
み「真理の追求を止めるでない」
み「表面積は……。
4×4×6だな。
う。
これは、九九の領域ではないぞ」
み「16×6って、いくつだ?」
律「電卓の出番よ」
み「そうだった。
ポンポンポンっと。
答え一発!」
↑1972年発売の電卓。6桁です。
律「いくつよ?」
み「35」
律「そんなわけないでしょ!」
み「あ、歳聞いたんじゃないの?」
律「何でそんなもん、聞く必要があるのよ」
み「96です」
律「やだ。
そんな歳だったの」
律「もう死ぬんじゃない?」
↑罰当たりコスブレ衣装。FRONT,SIDE,BACKの表示は必要か?
み「歳じゃないって、そっちが言ったんでしょ!
よし、次は体積。
4×4×4だ。
これも、電卓の領域だな。
ポンポンポン」
律「何でいちいち、口でボタン音を出すわけ?」
み「場の臨場感を高めるためです」
律「高まってるとは思えないけど。
いくつよ」
み「64。
どや」
律「あんたがドヤ顔する必要ないでしょ」
↑鳥のドヤ顔は珍しい
み「比率が、2を切ったぞ。
まだ、納得いかない?
それじゃ、5の場合で計算してみよう」
食「ピピー」
み「吹くな!」
食「もう十分でしょ」
律「ところで、何がわかったの?」
み「人の話を聞いてたのか!」
律「サイコロの大きさの話でしょ」
み「だから!
北方の動物の体が大きい訳を説明するために、サイコロを例にしたわけ」
律「あら、そうだったの」
み「このアマ。
こら、ぼーっとしてないで、笛吹け!」
食「まぁ、いいじゃありませんか」
み「明らかに、待遇が違うだろ」
食「お願いですから、結論を言ってください」
み「くっそー。
つまり!
大きくなればなるほど……。
体積に対する表面積の比率が小さくなる。
すなわち!
体内の熱が逃げにくくなるわけ」
↑夏は暑いでしょうね
み「逆に暑い地方では……。
体が小さいほうが、放熱効果が高い」
↑放熱中のネコ
律「象はどうなのよ。
暑いところにいるのに、あんなに大きいじゃない」
み「象のことは忘れてくれ」
律「♪忘れられないの」
食「♪忘れられないの」
み「ハモるな!
あ、そうだ。
北には、マンモスがいたじゃないの」
律「アフリカ象より大きかったの?」
み「あたりまえでしょ。
体長、50メートル」
律「うそおっしゃい!
怪獣じゃないんだから」
律「じゃ、サイはどうなのよ?」
食「陸上動物では、確か、象に次ぐ大きさですよね」
み「知らんのか?
かつて……。
サイマンモスという巨大生物が、北の大地を支配していたことを」
律「ウソ言いなさい。
それじゃ、カバはどうなのよ」
食「体重では、象に次ぐ重さですね」
み「かつて……。
カバマンモスという巨大生物が……」
律「いい加減にしなさい」
み「裏拳はやめてちょうだい」
律「ところで、どうして動物の大きさの話になってるわけ?」
み「ベルクマンの法則を解いておるからだろ」
律「だから!
何でそんな話になってるわけ?」
食「鍋の大きさの話からですよ」
み「あ、そうだった」
食「で、どう繋がるんです?」
み「そんなこともわからんのか?
手間のかかる生徒どもじゃ。
すなわち!
鍋が大きければ大きいほど……。
体積、すなわちスープの量に対して……。
表面積、すなわちスープの表面の面積が小さくなる。
よって、表面に浮いて来る“あく”の量は……」
み「あれ?」
律「多くなるわよね」
食「ですよね」
み「なぜじゃ?」
律「あんたが言い出したんでしょ」
み「ふーむ。
わかった!
つまり……。
鍋の味に、“あく”は関係ないってことだね」
律「なんでよ!
“あく”を取らないと不味くなるってのは、お料理の常識でしょ」
はい、これ以上会話を続けても、スープが煮詰まるばかりですので……。
“あく”について、少し補足します。
“あく”には、苦味や臭み、渋み、えぐ味などの雑味が含まれており……。
これを取らないと、スープにその味が混ざりこんでしまうということのようです。
しかしながら、なぜ、そういった雑味が“あく”として浮いてくるのかについては……。
さーっぱり、わかりませなんだ。
でも、“あく”には、旨味も含まれているので……。
あまり取り過ぎると、味も素っ気もないスープになってしまうのだとか。
ちなみに、“あく”を取り切ることに執念を燃やす人を『アク代官』と呼ぶそうです(ヨタではありません。Wikiに書いてありました)。
み「じゃ、何で大鍋で作ると、美味しいんだろう?」
律「気のせいなのかしら」
み「美味しいって、先入観?」
律「ひとりで鍋やっても、美味しくないじゃない」
み「そう言えば……。
一人用きりたんぽ鍋を取り寄せてみたけど……。
マズかった」
律「大勢で鍋を囲んで……。
わいわい言いながら食べるのが、美味しいのよ」
み「結局、結論なしかよ」
食「今、思いついたんですけど……」
み「思いつきでしゃべるな」
食「あなたに言われたくないです」
律「いいから、聞きましょうよ」
食「大鍋ってのは、スープに対流が起きるんじゃないですか?」
み「何よそれ?」
食「スープが、鍋の中をぐるぐる回り出すわけです。
当然、食材も、その流れに乗って撹拌される」
み「だから?」
食「つまり、食材に、熱が均等に通り……。
スープも均等に染みるわけです」
律「あ、そうか。
小さいお鍋だと、あんまり食材が動かないものね」
食「食材が動くほど加熱したら、噴きこぼれちゃいます」
食「食材が動かないから、均等に火を通すのが難しい。
すべてに火を通そうとすると……。
どうしても、煮過ぎる部分が出てくる」
み「腕の問題じゃないの?」
食「確かに、プロなら……。
小鍋でも満遍なく火を通す技術を持ってるでしょうからね」
み「技術が無い素人でも、大鍋なら美味しく作れる?」
食「スープの対流が、職人の技と同じ働きをしてくれるわけです」
み「なんかもっともらしいけどね。
根拠は?」
食「ありません」
み「断言すなよ」
食「さて、五能線に戻りましょう」
み「逃げたな」
食「逸れかけた軌道を、元に戻したんです」
み「次の駅は?」
食「さっき、『八森』の次の『滝ノ間』を通過しましたから……。
もうすぐ、『あきた白神』です」
食「停車しますよ」
み「じゃ、八森は……。
ハタハタと鉱山の町ってことで、終わりでいい?」
律「待ってよ。
まだ聞いてないことがあるわ」
み「なに?」
律「恒例の日帰り温泉」
み「あ、そうか。
温泉、出るの?」
食「もちろん。
八森の名前の付く日帰り温泉は、2つありますが……。
どちらも、最寄り駅は、次の『あきた白神』なんです」
み「ほー。
じゃ、何で八森の名前が付いてるの?」
食「今は合併して八峰町になってますが……。
もともと、青森県境までは八森町でしたから」
食「『あきた白神』駅ってのは、最近出来たんですよ。
平成9年だったかな?」
み「それじゃ、日帰り温泉は、便利になったってわけだね」
食「ハタハタ館なんか、駅の真ん前ですから」
み「それが、ひとつ目?」
食「失敬。
正式名称は、『八森いさりび温泉ハタハタ館』です」
み「例によって、400円?」
食「正解です」
み「400円で、温泉入れるんだよ。
東京の銭湯、なんとかならんか?」
律「450円だっけ?」
み「ま、考えてみれば……。
水道水を重油で沸かしてるんだからね」
み「温泉より、遥かにランニングコストは高いわけだ」
律「そうかー」
み「ところで!
個室はあるのか、個室は?」
↑寝台特急『北斗星』の個室扉です
食「ありません」
み「ダメじゃないか!」
食「何でですか?」
み「ちょいの間の御休憩所として使えんではないか」
食「休憩室ならありますよ」
み「個室じゃないわけ?」
食「畳敷きの広間です」
み「うーむ。
盛った夫婦なら、そこでも出来るか?」
食「人前でやったら犯罪ですよ。
ここは、宿泊できますから……。
そういう人は、部屋を取ればいいんです」
み「いくら?」
食「一番安いのが……。
素泊まりで、4,350円かな。
ただし、3人以上の料金です(参照)」
み「3人分で4,350円?」
食「まさか。
1人の値段です」
み「なんだ。
ぜんぜん安くないじゃん。
2人の値段で、一番安い部屋は?」
食「確か、1人5,400円です」
み「素泊まりだろ?
2人で10,800円?
シティホテル並みじゃん。
どうなってんの?」
食「ま、安く泊ろうという施設じゃありませんね」
食「部屋なんか、東京のシティホテルより、ずっと広いみたいですし」
み「貧乏夫婦が……」
み「ちょいの間に利用できる施設じゃないってことね」
魚の方は、漁獲量も持ち直しつつあるようですよ」
食「八森漁港で、土日と祝祭日に開かれる『はちもり観光市』は、有名です」
食「新鮮な魚が、市価より安く買えますからね」
食「能代はもちろん、弘前からも業者が仕入れに来るそうです」
み「買った魚は、送ってくれるの?」
食「だと思います」(Mikiko注・不確かな情報です)
み「曖昧なヤツ。
重要なポイントじゃないか。
魚を持って列車に乗るの、ゴメンだぞ」
↑JR四国を走るお魚列車(魚が乗ってるわけではありません)。
食「魚は買わなくても、楽しめますよ。
食堂もありましたから」
食「タラのつみれ汁が美味しかったな」
食「やっぱり、大鍋で煮てるから味が違いますよ」
↑はちもり観光市の画像です
み「なんで?」
食「知りません」
み「気分的なものじゃないのか?」
律「“あく”が関係してるんじゃないの?」
み「“あく”?
悪の組織?」
律「なんで、悪の組織がタラ汁を作るのよ!」
↑ぬわんと、200円です。買い!(参照)
律「煮物すると、浮いてくるでしょ。
“あく”が。
あれを、一生懸命取らなきゃ、煮物は美味しくならないの」
み「ほー。
自分で作ってるような口調ですな」
律「作ってないわよ。
香純から聞いたの。
悪い?」
み「別に悪かないよ。
でも、何で“あく”を取らなきゃ美味しくならないんだろ?」
律「悪は除かなきゃならないってことでしょ」
み「シャレで片付けるな。
チミ、解説」
食「知りませんって。
そんな事まで知ってたら、不自然でしょ」
み「キャラのアイデンチチーが無くなるか?
まぁ、いい。
でも、大鍋だと、どうして美味しくなるんだろ?
“あく”が出るのは一緒だろ」
食「ですよねー」
み「あ、体積と表面積の関係かな?
ほら、北方の動物の体が大きいわけ」
↑『男鹿水族館GAO』の豪太くん。
食「あぁ。
ベルクマンの法則ですね。
体を大きくすると……。
体積に対する表面積を小さく出来るので……。
熱が逃げにくいって理由でしたよね」
み「それそれ」
律「そんな理屈があるの?」
み「知らんのか?
理系だろ」
律「その日、休んだかも」
み「それは、わたしの専売特許」
律「特許のわけないでしょ」
律「でも、どうしてそうなるの?」
み「解説しよう。
医者に数学の理屈を説くってのは、気持ちがいいな」
食「算数だと思いますけど」
み「黙らっしゃい。
いいかね、律子くん。
サイコロを思い描いてくれたまえ。
描いた?」
律「いいわよ」
み「そしたら……。
このサイコロを振ったら、何の目が出るでしょうか?」
律「はぁ?」
食「ピピー」
み「何だよ!」
食「明らかに脱線です」
み「小うるさいやっちゃ」
食「小さいところで芽を摘まないと……。
また、『日本海航路殺人事件』みたいな大脱線が起きかねません」
み「おもろかっただろ?」
食「3ヶ月も戻って来ないのは異常です。
こんなことしてたら……。
死ぬまでに青森に着けませんよ」
み「ハーレクインは、驫木あたりで寿命が尽きるな」
み「ま、それも可哀想だから……。
話を急ごう。
サイコロの1辺の長さを、1メートルとします」
律「そんな大きいサイコロ、無いわよ」
み「黙らっしゃい!」
み「計算がしやすいように、キリのいい数字にしてるんじゃない」
律「電卓、あるんでしょ?」
み「あるけど、いちいち叩かなくても答えが出るようにしてるの!」
律「それなら、1センチにすればいいじゃない」
み「笛を貸してくれ」
食「イヤです」
み「なんで!」
食「間接キッスになるじゃないですか」
↑直接キス
み「おまいは、小学生か!
気持ち悪いのは、こっちだ」
み「しかしながら……。
このアマの発言に対し、笛を吹かずにはいられない心境なわけ。
じゃ、自分で吹いていいよ」
食「吹きません」
み「なぜじゃ」
食「1センチ案に、賛成だからです」
み「おのれら……」
律「早く進めてちょうだい」
み「くっそー。
こうなったら、意地でも1メートルは譲らん。
いくぞ。
1辺の長さが1メートルのサイコロがあります。
この1面の面積は何平方メートルでしょうか?」
律「そんなの簡単じゃないの。
1掛ける1で、1平方メートル」
み「ま、これは、サルでも解けるわな」
食「解けないと思います」
み「やかましい。
それでは、このサイコロの体積は何立方メートルでしょう?」
律「あなた、そんなこともわからないの?」
み「わからないから聞いてるんじゃないの!
キリキリ答えよ!」
律「面積掛ける高さでしょ。
1平方メートル掛ける1メートルで、1立方メートル」
律「なんだか、変よね。
どうして増えないのかしら?」
み「それが“1”という数字の特徴です。
掛けても増えないけど……。
割っても減らない。
だから、あいこなの」
み「いい?
次、いくよ。
それでは……。
今度は、1辺が2メートルのサイコロで考えてみましょう」
律「そんなサイコロ、振れないわよ」
み「振らなくていいから、黙って聞かっしゃい!
このサイコロの1辺の面積は、何平方メートルでしょう?」
律「……」
み「わからないの?」
律「黙ってろって言ったじゃない」
み「質問には答えていいの!
私語禁止」
↑不思議な禁止があるものです
律「わがままな先生ね」
↑大阪市北区天神橋1丁目にあるようです
み「普通、そうだろ!」
律「医学部に合格したわたしに、どうしてこんな問題出すのかしら。
2×2で、4平方メートル」
み「よく出来ました。
ここまでは、サルでも解けます」
食「無理だと思います」
み「私語禁止!」
↑いったい何の禁止だ?
み「それでは、このサイコロの体積は何立方メートルでしょうか?」
律「普通に答えていいの?」
み「答えてください」
律「4平方メートル掛ける2メートルでしょ。
8立方メートルよ」
み「おめでとうございます。
正解です。
賞品として、わたしの握りっ屁を贈呈します」
律「いりません!」
み「これでわかったでしょ?」
律「なにが?」
み「1辺の面積と体積の比率よ」
み「つまり、1辺が1メートルのサイコロでは……。
面積と体積が一緒だったから、比率は1でしょ。
それに対し!
1辺が2メートルのサイコロでは……。
面積が4に対し、体積は8。
つまり、比率が2」
律「何が言いたいわけ?」
み「だから!
大きいほうが、体積に対する表面積の比率が小さい」
律「ちょっと待ってよ。
表面積の話をしてるの?」
み「さっきからな!」
律「それは、おかしいじゃないの」
み「何がよ?」
律「表面積だったら……。
サイコロの面、すべてを足さなきゃならないでしょ」
み「物事を複雑にしたがる女じゃ」
↑世界一複雑。東京の地下鉄路線図。
律「当然の理屈でしょ。
1メートルのサイコロの表面積は……。
面が6つだから、6平方メートル。
2メートルのサイコロの表面積は……。
4掛ける6で、24平方メートル」
み「それがどうした」
律「どうしたじゃないでしょ。
あなたが始末をつけてよ」
み「チミ、解説」
食「振らないでくださいよ」
み「理系だろ?」
食「文系です」
み「オタクは、理系じゃないのか?」
食「決めないでください。
でもこれは、理系文系が分かれる以前の問題ですね」
み「そんなら、解説」
食「表現を逆にすれば、わかりやすいとおもいますよ。
1辺が1メートルのサイコロでは……。
体積が1に対し、表面積が6。
つまり、6倍。
1辺が2メートルのサイコロでは……。
体積が8に対し、表面積が24。
つまり、3倍。
すなわち、大きいサイコロの方が……。
体積に対する、表面積の比率が小さい」
み「ほらみろ」
律「なんか納得出来ないわね。
1がインチキしてるって感じ。
1は、掛けても大きさが変わらないからじゃないの?」
み「わからん女だな」
律「3でやってみてちょうだい」
み「よし。
表面積は、3×3×6だから……。
いくつだ?
すでに数学の領域だな」
食「九九の領域です」
食「54でしょ」
み「おー。
ひょっとしてチミは、有名な暗算少年じゃないのか?」
食「だから、九九ですって」
み「じゃ、体積は……。
3×3×3だな。
これならわかるぞ。
27だ。
比率は……」
食「54÷27です」
み「2!」
食「ご明算」
み「ほら、みなさい。
さらに比率が小さくなったではないか。
まだ信用出来ないか?
よし。
それなら、4でやってみよう」
律「これって、明らかに行稼ぎじゃないの?」
み「真理の追求を止めるでない」
み「表面積は……。
4×4×6だな。
う。
これは、九九の領域ではないぞ」
み「16×6って、いくつだ?」
律「電卓の出番よ」
み「そうだった。
ポンポンポンっと。
答え一発!」
↑1972年発売の電卓。6桁です。
律「いくつよ?」
み「35」
律「そんなわけないでしょ!」
み「あ、歳聞いたんじゃないの?」
律「何でそんなもん、聞く必要があるのよ」
み「96です」
律「やだ。
そんな歳だったの」
律「もう死ぬんじゃない?」
↑罰当たりコスブレ衣装。FRONT,SIDE,BACKの表示は必要か?
み「歳じゃないって、そっちが言ったんでしょ!
よし、次は体積。
4×4×4だ。
これも、電卓の領域だな。
ポンポンポン」
律「何でいちいち、口でボタン音を出すわけ?」
み「場の臨場感を高めるためです」
律「高まってるとは思えないけど。
いくつよ」
み「64。
どや」
律「あんたがドヤ顔する必要ないでしょ」
↑鳥のドヤ顔は珍しい
み「比率が、2を切ったぞ。
まだ、納得いかない?
それじゃ、5の場合で計算してみよう」
食「ピピー」
み「吹くな!」
食「もう十分でしょ」
律「ところで、何がわかったの?」
み「人の話を聞いてたのか!」
律「サイコロの大きさの話でしょ」
み「だから!
北方の動物の体が大きい訳を説明するために、サイコロを例にしたわけ」
律「あら、そうだったの」
み「このアマ。
こら、ぼーっとしてないで、笛吹け!」
食「まぁ、いいじゃありませんか」
み「明らかに、待遇が違うだろ」
食「お願いですから、結論を言ってください」
み「くっそー。
つまり!
大きくなればなるほど……。
体積に対する表面積の比率が小さくなる。
すなわち!
体内の熱が逃げにくくなるわけ」
↑夏は暑いでしょうね
み「逆に暑い地方では……。
体が小さいほうが、放熱効果が高い」
↑放熱中のネコ
律「象はどうなのよ。
暑いところにいるのに、あんなに大きいじゃない」
み「象のことは忘れてくれ」
律「♪忘れられないの」
食「♪忘れられないの」
み「ハモるな!
あ、そうだ。
北には、マンモスがいたじゃないの」
律「アフリカ象より大きかったの?」
み「あたりまえでしょ。
体長、50メートル」
律「うそおっしゃい!
怪獣じゃないんだから」
律「じゃ、サイはどうなのよ?」
食「陸上動物では、確か、象に次ぐ大きさですよね」
み「知らんのか?
かつて……。
サイマンモスという巨大生物が、北の大地を支配していたことを」
律「ウソ言いなさい。
それじゃ、カバはどうなのよ」
食「体重では、象に次ぐ重さですね」
み「かつて……。
カバマンモスという巨大生物が……」
律「いい加減にしなさい」
み「裏拳はやめてちょうだい」
律「ところで、どうして動物の大きさの話になってるわけ?」
み「ベルクマンの法則を解いておるからだろ」
律「だから!
何でそんな話になってるわけ?」
食「鍋の大きさの話からですよ」
み「あ、そうだった」
食「で、どう繋がるんです?」
み「そんなこともわからんのか?
手間のかかる生徒どもじゃ。
すなわち!
鍋が大きければ大きいほど……。
体積、すなわちスープの量に対して……。
表面積、すなわちスープの表面の面積が小さくなる。
よって、表面に浮いて来る“あく”の量は……」
み「あれ?」
律「多くなるわよね」
食「ですよね」
み「なぜじゃ?」
律「あんたが言い出したんでしょ」
み「ふーむ。
わかった!
つまり……。
鍋の味に、“あく”は関係ないってことだね」
律「なんでよ!
“あく”を取らないと不味くなるってのは、お料理の常識でしょ」
はい、これ以上会話を続けても、スープが煮詰まるばかりですので……。
“あく”について、少し補足します。
“あく”には、苦味や臭み、渋み、えぐ味などの雑味が含まれており……。
これを取らないと、スープにその味が混ざりこんでしまうということのようです。
しかしながら、なぜ、そういった雑味が“あく”として浮いてくるのかについては……。
さーっぱり、わかりませなんだ。
でも、“あく”には、旨味も含まれているので……。
あまり取り過ぎると、味も素っ気もないスープになってしまうのだとか。
ちなみに、“あく”を取り切ることに執念を燃やす人を『アク代官』と呼ぶそうです(ヨタではありません。Wikiに書いてありました)。
み「じゃ、何で大鍋で作ると、美味しいんだろう?」
律「気のせいなのかしら」
み「美味しいって、先入観?」
律「ひとりで鍋やっても、美味しくないじゃない」
み「そう言えば……。
一人用きりたんぽ鍋を取り寄せてみたけど……。
マズかった」
律「大勢で鍋を囲んで……。
わいわい言いながら食べるのが、美味しいのよ」
み「結局、結論なしかよ」
食「今、思いついたんですけど……」
み「思いつきでしゃべるな」
食「あなたに言われたくないです」
律「いいから、聞きましょうよ」
食「大鍋ってのは、スープに対流が起きるんじゃないですか?」
み「何よそれ?」
食「スープが、鍋の中をぐるぐる回り出すわけです。
当然、食材も、その流れに乗って撹拌される」
み「だから?」
食「つまり、食材に、熱が均等に通り……。
スープも均等に染みるわけです」
律「あ、そうか。
小さいお鍋だと、あんまり食材が動かないものね」
食「食材が動くほど加熱したら、噴きこぼれちゃいます」
食「食材が動かないから、均等に火を通すのが難しい。
すべてに火を通そうとすると……。
どうしても、煮過ぎる部分が出てくる」
み「腕の問題じゃないの?」
食「確かに、プロなら……。
小鍋でも満遍なく火を通す技術を持ってるでしょうからね」
み「技術が無い素人でも、大鍋なら美味しく作れる?」
食「スープの対流が、職人の技と同じ働きをしてくれるわけです」
み「なんかもっともらしいけどね。
根拠は?」
食「ありません」
み「断言すなよ」
食「さて、五能線に戻りましょう」
み「逃げたな」
食「逸れかけた軌道を、元に戻したんです」
み「次の駅は?」
食「さっき、『八森』の次の『滝ノ間』を通過しましたから……。
もうすぐ、『あきた白神』です」
食「停車しますよ」
み「じゃ、八森は……。
ハタハタと鉱山の町ってことで、終わりでいい?」
律「待ってよ。
まだ聞いてないことがあるわ」
み「なに?」
律「恒例の日帰り温泉」
み「あ、そうか。
温泉、出るの?」
食「もちろん。
八森の名前の付く日帰り温泉は、2つありますが……。
どちらも、最寄り駅は、次の『あきた白神』なんです」
み「ほー。
じゃ、何で八森の名前が付いてるの?」
食「今は合併して八峰町になってますが……。
もともと、青森県境までは八森町でしたから」
食「『あきた白神』駅ってのは、最近出来たんですよ。
平成9年だったかな?」
み「それじゃ、日帰り温泉は、便利になったってわけだね」
食「ハタハタ館なんか、駅の真ん前ですから」
み「それが、ひとつ目?」
食「失敬。
正式名称は、『八森いさりび温泉ハタハタ館』です」
み「例によって、400円?」
食「正解です」
み「400円で、温泉入れるんだよ。
東京の銭湯、なんとかならんか?」
律「450円だっけ?」
み「ま、考えてみれば……。
水道水を重油で沸かしてるんだからね」
み「温泉より、遥かにランニングコストは高いわけだ」
律「そうかー」
み「ところで!
個室はあるのか、個室は?」
↑寝台特急『北斗星』の個室扉です
食「ありません」
み「ダメじゃないか!」
食「何でですか?」
み「ちょいの間の御休憩所として使えんではないか」
食「休憩室ならありますよ」
み「個室じゃないわけ?」
食「畳敷きの広間です」
み「うーむ。
盛った夫婦なら、そこでも出来るか?」
食「人前でやったら犯罪ですよ。
ここは、宿泊できますから……。
そういう人は、部屋を取ればいいんです」
み「いくら?」
食「一番安いのが……。
素泊まりで、4,350円かな。
ただし、3人以上の料金です(参照)」
み「3人分で4,350円?」
食「まさか。
1人の値段です」
み「なんだ。
ぜんぜん安くないじゃん。
2人の値段で、一番安い部屋は?」
食「確か、1人5,400円です」
み「素泊まりだろ?
2人で10,800円?
シティホテル並みじゃん。
どうなってんの?」
食「ま、安く泊ろうという施設じゃありませんね」
食「部屋なんか、東京のシティホテルより、ずっと広いみたいですし」
み「貧乏夫婦が……」
み「ちょいの間に利用できる施設じゃないってことね」