Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(48)
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み「ふーん。
 カミナリウオなら、水族館で見たことがあるかも。
 ウツボみたいな魚じゃなかった?」
顎にぶら下がるエビは、ウツボ専門の掃除屋『アカシマシラヒゲエビ』
↑顎にぶら下がるエビは、ウツボ専門の掃除屋『アカシマシラヒゲエビ』

食「それは、オオカミウオだと思いますが」
それは、オオカミウオだと思いますが

み「あっ、そう。
 でも、顔はあの系統なんでしょ?」
哀れ、浦安の魚市場で売られる『オオカミウオ』くん
↑哀れ、浦安の魚市場で売られる『オオカミウオ』くん

食「ぜんぜん違うと思います」
み「じゃ、何でそんな怖い名前が付いてるわけ?
 音読みしたら、“ライギョ”でしょ」
音読みしたら、“ライギョ”でしょ

食「雷の鳴るころに、岸に押し寄せてくるからです」
『男鹿水族館GAO』のハタハタ水槽
↑『男鹿水族館GAO』のハタハタ水槽

み「雷が怖くて、岸に逃げて来るのか?
 臆病なヤツ」
食「産卵のためにですよ」
み「でも、雷と産卵と、どんな関係があるわけ?」
食「雷が鳴り始める季節ってことです」
雷が鳴り始める季節ってことです

食「日本海側では、晩秋から初冬にかけてですね」
み「あー、雪下ろしの雷ってヤツだね。
 日本海側では、雷の季節は初冬だもんね」
日本海側では、雷の季節は初冬だもんね

食「その季節が、産卵期ってわけです。
 海が荒れる時期なので……。
 波が多いと書いて、“波多波多”と呼ばれるようになった……」
波が多いと書いて、“波多波多”と呼ばれるようになった……

食「という説もあります」
み「イマイチ、説得力が無いのぅ」
食「ボクもそう思います」
み「おー。
 珍しく意見が一致したではないか。
 そもそも、ハタハタって、どーゆー魚なわけ?」
そもそも、ハタハタって、どーゆー魚なわけ?

食「一口で云えば、深海魚ですね」
一口で云えば、深海魚ですね

み「あらそう」
食「浮き袋がありませんから」
浮き袋がありませんから

み「“浮かばれない”ってやつ?
 沈んだっきりなの?」
食「昼間は、砂や泥の中に隠れて過ごし……」
昼間は、砂や泥の中に隠れて過ごし……

食「夜になると出てきて、海の底を徘徊するわけです」
み「泥棒だな」
泥棒だな

食「で、産卵期になると……。
 海底を這い上がって来て、浅瀬の藻場に集まるわけです」
海底を這い上がって来て、浅瀬の藻場に集まるわけです

み「そこを、一網打尽?」
インチキくさー。“耐水性デザイン”って何だ?
↑インチキくさー。“耐水性デザイン”って何だ?

食「ひとつ間違えれば、あっという間に捕り尽くしちゃうでしょうね」
ひとつ間違えれば、あっという間に捕り尽くしちゃうでしょうね

み「なるほどー。
 漁業が発展して、大量に捕れるようになったら……。
 一気に数を減らしたってことなんだね」
一気に数を減らしたってことなんだね

食「昔の漁は、そこそこの数しか捕れませんものね。
 海が荒れる季節だし」

↑名曲『兄弟船』

食「でも、冬の初めに捕れるハタハタは……。
 雪に閉ざされる冬の間の、貴重なタンパク源だったわけです」
雪に閉ざされる冬の間の、貴重なタンパク源だったわけです

み「ってことは、保存食?」
ってことは、保存食?

食「そうです」
み「新潟の鮭に似てるな」
新潟の鮭に似てるな

み「どんな保存法があるの?」
食「一番有名なのは、“しょっつる”ですね」
新潟の鮭に似てるな

み「出ましたねー、超有名どころ。
 “しょっつる”ってのは、塩辛い汁ってことでしょ?」
食「そうです。
 塩漬けのハタハタを発酵させて作る、魚醤です」
塩漬けのハタハタを発酵させて作る、魚醤です

食「これを調味料に使った鍋料理が、“しょっつる鍋”です」
これを調味料に使った鍋料理が、“しょっつる鍋”です

み「魚本体の保存食は無いの?」
食「もちろんあります。
 味噌漬けに塩漬け」
味噌漬けに塩漬け

食「一般家庭が、箱単位で買って……」
一般家庭が、箱単位で買って……

食「家ごとに漬けるわけです」
み「家伝の味ってやつ?」
食「ですね。
 それを取り出しては、煮たり焼いたりして、一冬を過ごすわけです」
それを取り出しては、煮たり焼いたりして、一冬を過ごすわけです

み「うーむ。
 高血圧にご注意だね」
これは、高ケツ圧
↑これは、高ケツ圧

み「あとは?」
食「お鮨があります」
み「お寿司は、生ものでしょうが」
新潟のお寿司『“極み”/地魚・ウニ・トロ・イクラ、特上全10貫で3,000円(お椀付き)』
↑新潟のお寿司『“極み”/地魚・ウニ・トロ・イクラ、特上全10貫で3,000円(お椀付き)』

食「あぁ。
 なれ鮨ですよ」
み「へー。
 なれ鮨って、琵琶湖あたりの鮒が有名だよね」
なれ鮨って、琵琶湖あたりの鮒が有名だよね

み「あれは、ハードルが高そうだな」
あれは、ハードルが高そうだな

律「どういう意味?」
み「玄人の舌じゃなきゃ、味わえないってこと」
玄人の舌じゃなきゃ、味わえないってこと

み「わたしは、食べなくてもわかるもの。
 苦手だってこと。
 ハンバーグとかカレーの対極にある味だよね」
『びっくりドンキー』のハンバーグカレー(もっとルーが欲しい)
↑『びっくりドンキー』のハンバーグカレー(もっとルーが欲しい)

律「お子ちゃま向けじゃないってこと?」
お子ちゃま向けじゃないってこと?

み「ま、その点は認めますけどね。
 いわゆる、酒の肴ってヤツは、苦手系が多い」
いわゆる、酒の肴ってヤツは、苦手系が多い

律「例えば?」
み「コノワタとか、↓カラスミとかさ」
カラスミとかさ

律「あぁ。
 なんとなくわかる。
 普段は、酒の肴、何食べてるの?」
塩ウニ(コノワタ、カラスミと合わせ、日本三大珍味だそうです)
↑塩ウニ(コノワタ、カラスミと合わせ、日本三大珍味だそうです)

み「普通のオカズですよ。
 夕食の」
我が家のダイニングです
↑我が家のダイニングです

み「だから、何でもありだね」
律「食後も、飲むんでしょ
 ひとりで」
ひとりで

み「ひとりで悪いか」
律「悪かないわよ。
 わたしだって飲むもの」
わたしだって飲むもの

み「だよね。
 飲みに行く?」
律「ひとりで?」
ひとりで?

律「行かないわよ」
み「なんで?」
律「めんどくさいから」
み「だよねー。
 飲みに行って嫌なのは……。
 帰らなきゃならないことだもんね」
家に帰れたとは思えませんが
↑家に帰れたとは思えませんが

律「そんな理由なの?」
み「先生は、違うの?」
律「話しかけられたりして、鬱陶しいの」
話しかけられたりして、鬱陶しいの

み「ふーん。
 こんなツンケン女に、よく話しかけられるな」
こんなツンケン女に、よく話しかけられるな

み「度胸あるよ、そういう男」
度胸あるよ、そういう男

律「むしろ女の子よ。
 話しかけてくるのは」
むしろ女の子よ。話しかけてくるのは

み「あ、そうか。
 やっぱ、オーラが出てるんだ」
やっぱ、オーラが出てるんだ

律「何のオーラよ?」
何のオーラよ?

み「わかってるくせに」
律「とにかく!
 外で、帰りたくなくなるまで飲むってのが、間違いでしょ」
外で、帰りたくなくなるまで飲むってのが、間違いでしょ

み「中途半端に飲んだって、楽しかないだろ」
中途半端に飲んだって、楽しかないだろ

律「ま、それは言えてるけどね。
 でも、わたしはひとりだからいいけど……。
 Mikiちゃんは、お母さんと一緒なんでしょ。
 そのままテーブルで飲むの?」
そのままテーブルで飲むの?

み「そんなこと、させてくれるはずないじゃん。
 お膳が片付かないって怒られるわよ」
お膳が片付かないって怒られるわよ

律「じゃ、どこで飲むわけ?」
み「トイレ」
じゃ、どこで飲むわけ?

律「ウソ!」
み「ウソに決まってるでしょ」
ウソに決まってるでしょ

み「お部屋に帰って飲むのよ」
お部屋に帰って飲むのよ

律「オツマミは?」
オツマミは?

み「食べない」
律「ツマミなし?」
ウナギの骨。炙ると油が滲むそうです。
↑ウナギの骨。炙ると油が滲むそうです。

み「一切なし」
律「胃に悪いわよ」
胃に悪いわよ

み「大丈夫よ。
 夕飯食べた後なんだから。
 強いお酒も飲まないし。
 ツマミなしで飲めると、いいこともあるんだよ」
律「なに?」
み「翌日胃カメラでも、遅くまで飲める」
翌日胃カメラでも、遅くまで飲める

律「なんでよ?
 夜9時以降は食事しちゃダメなのよ」
夜9時以降は食事しちゃダメなのよ

み「だから、食事してないでしょ。
 おツマミ食べないんだから、大丈夫。
 こないだの胃カメラで試したけど、ぜんぜんバレなかったよ」
こないだの胃カメラで試したけど、ぜんぜんバレなかったよ

律「そういう問題じゃないでしょ。
 気持ち悪くならない?」
気持ち悪くならない?

み「そこまで飲んでないもの。
 ま、そういう話はいいの。
 今はハタハタの一件でしょ」

 そういえばまだ、ハタハタの全容を公開してませんでした……。
 ということで!
 ↓これがハタハタだっ。
これがハタハタだっ

 なんか……。
 普通の魚ですよね。
 てなわけで、続きをどうぞ。

み「保存食じゃない食べ方もあるんでしょ?
 捕れたて新鮮」
捕れたて新鮮

食「もちろんあります。
 生寿司じゃないですけど……。
 三枚におろして酢締めにすると、驚くほど美味しいです」
三枚におろして酢締めにすると、驚くほど美味しいです

食「これは、鮮魚が手に入る、産地ならではの食べ方ですね」
み「小鰭っぽいのかな?」
食「その系統ですね。
 小鰭より、さらに歯ごたえがあって……。
 皮の食感もプリプリです」
皮の食感もプリプリです
こちらのサイトさんから拝借。写真も、超ウマ。

み「そんなら食べれるかも。
 あとは?」
食「一般的なのは、焼き魚ですね」
一般的なのは、焼き魚ですね

食「ハタハタは鱗が無いので、料理も楽です」
ハタハタは鱗が無いので、料理も楽です

食「小骨もなく、食べやすい。
 頭の方から引っ張ると、背骨がすっぽり抜けるんです」
頭の方から引っ張ると、背骨がすっぽり抜けるんです
こちらから拝借。

食「面白いですよ」
み「一番のお勧めは、焼き魚ってことね」
食「実は……。
 取っておきの食べ方があるんです。
 昔、民宿の夕食に出たんですけどね」
わたしの頭にある“民宿”のイメージです
↑わたしの頭にある“民宿”のイメージです(千葉県鴨川市の『民宿宮本』さん)

食「美味しかったなぁ」
美味しかったなぁ

み「どんな食べ方よ?」
食「まず、新鮮なハタハタが手に入らなきゃなりませんから……」
新鮮なハタハタが手に入らなきゃなりませんから……

食「漁港近くの民宿ならではの味ですね」
刺し網からハタハタを外す作業(八森漁港)
↑刺し網からハタハタを外す作業(八森漁港)

み「勿体ぶらずに、早よ言わんかい!」
食「シンプルな料理ですよ。
 素材が良ければ、シンプルが一番です」
み「お刺身?」
ハタハタのお刺身
↑ハタハタのお刺身

食「刺身も、もちろん美味しいですけど……。
 ボクの一押しは、『湯あげ』です」
ボクの一押しは、『湯あげ』です

み「どうやんの?」
食「もう、簡単の局地ですね。
 頭と内臓を取って水洗いしたハタハタを、昆布出汁で茹でるだけ」
頭と内臓を取って水洗いしたハタハタを、昆布出汁で茹でるだけ

食「ポン酢で食べたら、こたえられませんよ」
ポン酢で食べたら、こたえられませんよ

み「うーむ。
 ウマそうじゃ。
 民宿に泊まりたくなった」
民宿に泊まりたくなった

食「でしょー」
み「あ、そうだ。
 もうひとつあった。
 ブリコ」
ブリコ

み「これは、ハタハタの卵でいいんだよね?」
これは、ハタハタの卵でいいんだよね?

食「正解です」
み「何で、ブリコって言うの?」
何で、ブリコって言うの?

食「普通、イクラなんかの魚卵は、柔らかいものが好まれますよね」
普通、イクラなんかの魚卵は、柔らかいものが好まれますよね

食「口の中で、プチプチと弾けるみたいな」
口の中で、プチプチと弾けるみたいな

み「おー。
 イクラとかの旨さは、歯応え半分だよな」
イクラとかの旨さは、歯応え半分だよな

食「生のハタハタを焼くと……。
 その歯ざわりと味が楽しめます」
その歯ざわりと味が楽しめます

食「でもそれは、本物のブリコじゃない」
でもそれは、本物のブリコじゃない

み「なんで?」
食「味噌漬けや塩漬けで保存すると……」
味噌漬けや塩漬けで保存すると……

食「卵の皮が、ゴムみたいに硬くなるんです」
卵の皮が、ゴムみたいに硬くなるんです

食「噛むと、ほんとに『ブリッブリッ』って音がするんですよ」
み「ブリブリ、ブリッコ?」
ブリブリ、ブリッコ?

み「それで、『ブリコ』?」
浜に打ち上げられたブリコ
↑浜に打ち上げられたブリコ。でも、拾ってはいけません!↓
でも、拾ってはいけません!

食「そうです。
 皮を噛み潰してエキスを楽しんだら……。
 皮の殻は、ペッと吐き出す。
 これが、本式のブリコの食べ方です」
煮立たせて火を止めた醤油に、ブリコをくぐらせる。食べ出すと止まらなくなるそうです。
↑煮立たせて火を止めた醤油に、ブリコをくぐらせる。食べ出すと止まらなくなるそうです。

み「ほー。
 それは面白そうじゃ」
これはもちろん、スイカの種飛ばし
↑これはもちろん、スイカの種飛ばし

食「ぜひ、お試しください。
 秋田に来て、ハタハタとブリコを食べないなんて、あり得ませんよ」
秋田に来て、ハタハタとブリコを食べないなんて、あり得ませんよ

食「これまで秋田で、何を食べました?」
み「最初の食事は、ラーメンだったな」
最初の食事は、ラーメンだったな

食「は?」
み「と言っても、ご当地ラーメンだよ。
 秋田駅近くの市民市場にあった……」
秋田駅近くの市民市場にあった"

み「その名も、『支那そば伊藤』」
その名も、『支那そば伊藤』

食「あぁ。
 十文字中華ですね」
十文字中華ですね

食「『三角そばや』の系統でしょう?」
『三角そばや』の系統でしょう?

み「そうそう。
 ♪四角四面の櫓の上で」
♪四角四面の櫓の上で

食「それは三角野郎でしょ」
それは三角野郎でしょ

み「ちょいな」
ちょいな

食「あそこは最近、ちょっと変わったメニューが名物になってるんですよ」
み「スルーしたな。
 しかし、皆まで言うな。
 冷やし中華でしょ。
 その名も、『そのまんま冷やし』」
その名も、『そのまんま冷やし』

食「へー、ご存知でしたか。
 侮れませんね」
その名も、『そのまんま冷やし』

み「曲者じゃろ?
 ラーメンと『そのまんま冷やし』を、分けあって食べたんだもんね」
ラーメンと『そのまんま冷やし』を、分けあって食べたんだもんね

み「驚いたことに、お代も割り勘だったのよ」
驚いたことに、お代も割り勘だったのよ

律「何で驚くのよ。
 当然でしょ」
当然でしょ

み「普通、稼ぎの多い方が全額持つか……。
 収入に比例して払うんじゃないの?」
収入に比例して払うんじゃないの?

律「あんたには、矜持ってものが無いわけ?」
あんたには、矜持ってものが無いわけ?

み「おまへんな」
何も持たないということは、失うものがないということでもある
↑何も持たないということは、失うものがないということでもある

律「呆れた女」
み「何とでも言え。
 先生とわたしの収入比率は……。
 たぶん、10対3くらいだと思う。
 くそ!
 言いながら、腹立ってきた。
 10対3じゃ、コールド負けじゃないか」
10対3じゃ、コールド負けじゃないか

食「甲子園の本戦に、コールドゲームはありませんよ」
地方予選です。5回コールドでもこの大差。
↑地方予選です。5回コールドでもこの大差。

み「よけい惨めじゃ。
 切腹させて、介錯がないようなもんだろ」
切腹させて、介錯がないようなもんだろ

食「かなり違うと思います」
み「今からでも遅くないから、収入比分返して」
今からでも遅くないから、収入比分返して

律「誰が」
点眼補助器具『アカンベー』
↑点眼補助器具『アカンベー』平成11年度「なるほど展」日本商工会議所会頭賞受賞/平成10年度「オール発明コンクール」特別賞・東久邇宮記念賞受賞

み「どう思う、この女?」
食「ここは、あまり戦線を広げない方がいいと思います」
ここは、あまり戦線を広げない方がいいと思います

み「ふん。
 ま、今日はこのくらいにしといたるか」
ま、今日はこのくらいにしといたるか

み「楽しい旅行の最中だもんね。
 で、ラーメン食べて……。
 お昼には……」
食「ちょっと待って下さい。
 ラーメンがお昼じゃないんですか?」
ラーメンがお昼じゃないんですか?

み「朝ラーだよ」
朝ラーだよ

食「ホテルで朝食食べて、しかもラーメンまで?」
ホテルで朝食食べて、しかもラーメンまで?

み「アホか!
 チミじゃあるまいし。
 きのうの朝、秋田に着いたの」
ホテルで朝食食べて、しかもラーメンまで?

食「えー。
 秋田駅に朝着く夜行なんて、あったかな?」
秋田駅に朝着く夜行なんて、あったかな?

み「夜行列車では、なーい」
百鬼夜行』/河鍋暁斎(1831~1889)
↑『百鬼夜行』/河鍋暁斎(1831~1889)

食「そもそも、どちらから来られたんですか?」
み「新潟じゃ。
 新潟の話、何度も出してるだろ」
新潟秋田間って、けっこう遠いですね。仙台より遠いんだ。
↑改めて見ると、けっこう遠いですね。仙台より遠いんだ。

食「うーん。
 新潟秋田間に、夜行バスなんて無いしな」
新潟秋田間に、夜行バスなんて無いしな

食「わかった。
 長距離トラックだ」
長距離トラックだ

食「ヒッチハイク」
度胸あるよな。こういうの見ると、日本は素晴らしい国だと思う。
↑度胸あるよな。こういうの見ると、日本は素晴らしい国だと思う。

み「勤め人が、そんな不確定要素に左右される旅行、できるわけないでしょ」
食「降参です」
降参です

み「フェリーだよ」
フェリーだよ

み「新潟発、23:30。
 秋田着、翌朝5:50」
新潟発、23:30 秋田着、翌朝5:50

食「フェリーかぁ。
 盲点でした。
 ていうか、新潟から秋田まで、フェリーで来る人は、ほとんどいないと思いますけど」
新潟から秋田まで、フェリーで来る人は、ほとんどいないと思いますけど

み「2時間ドラマのアリバイ作りに使えそう?」
2時間ドラマのアリバイ作りに使えそう?

食「そりゃ無理でしょ」
そりゃ無理でしょ

み「なんでよ」
食「新潟から秋田までのアリバイ作りに使えるのは……。
 列車や自動車より早く行ける方法がある場合でしょ」
もちろん、航空便はありません。
↑もちろん、航空便はありません。

食「フェリーは、ずっと遅いんだから、お話になりませんよ」
フェリーは、ずっと遅いんだから、お話になりませんよ

食「フェリーに乗ってたってアリバイを崩す方なら、ドラマになりますけど」
フェリーに乗ってたってアリバイを崩す方なら、ドラマになりますけど

み「わかった。
 新潟秋田間での乗船が確認されてる人物がいて……。
 そいつが疑わしいんだけど……」
そいつが疑わしいんだけど……

み「犯行時間は、新潟から秋田までの航行時間内って謎だね」
犯行時間は、新潟から秋田までの航行時間内って謎だね

食「何か反則技がなきゃ、無理ですよ」
何か反則技がなきゃ、無理ですよ

食「フェリーから抜けだして戻るなんて……。
 忍者だって出来っこありません」
忍法、透明人間の術
↑忍法、透明人間の術。

み「飛びこんだら?
 泳ぎが得意なら、出来るでしょ」
泳ぎが得意なら、出来るでしょ

食「フェリーの甲板から海まで、どれだけの高さがあると思うんです?」
フェリーの甲板から海まで、どれだけの高さがあると思うんです?

み「100メートル?」
食「あるわけないでしょ。
 全長が、200メートルなんだから」
全長が、200メートルなんだから

食「それでも、甲板から海面までの高さは、15メートルくらいにはなります」
甲板から海面までの高さは、15メートルくらいにはなります

食「5階建てのビルくらいですよ」
5階建てのビルくらいですよ

食「そんな高さから飛びこんだら……。
 水面に叩きつけられて、下手すりゃ即死です」
水面に叩きつけられて、下手すりゃ即死です

食「第一、もし飛びこんでフェリーから抜け出したとしても……。
 どうやって戻るんです?」
み「登れない?」
登れない?

食「北朝鮮の工作員でも、ぜったいに無理です」
北朝鮮の工作員でも、ぜったいに無理です

み「吸盤みたいなので、ペタペタ登れんもんかのぅ」
吸盤みたいなので、ペタペタ登れんもんかのぅ

食「漫画の世界になっちゃいます」
漫画の世界になっちゃいます

み「あ、ヘリ使って戻ればいいじゃん」
あ、ヘリ使って戻ればいいじゃん

食「バレないわけないでしょ」
み「じゃ、オスプレイ」
じゃ、オスプレイ

食「どうやって調達するんです」
み「出前は、無理かのぅ」
まだ、こんなの作られてるんだ!
↑まだ、こんなの作られてるんだ!

食「フェリーの新潟秋田間で乗船事実のある人なら……。
 新潟から秋田まで、すなわち、23:30から翌朝5:50までのアリバイは崩せません」
新潟から秋田まで、すなわち、23:30から翌朝5:50までのアリバイは崩せません

み「じゃ、これは?
 ルームサービスを頼むわけよ」
ルームサービスを頼むわけよ

み「寝酒とかの」
寝酒とかの

食「ルームサービスは、食事だけじゃないかな?」
み「あら、そうなの?
 スイートでも?」
スイートでも?

食「スイートは、普通、グリルで食事が提供されますが……」
スイートは、普通、グリルで食事が提供されますが……

食「人員の都合で、ルームサービスになる場合もあるようです。
 でも、3度の食事だけで、寝酒とかは無理なんじゃないかな?」
アテ”は、きずし(しめ鯖)入りなます・スナップエンドウとイカの胡麻和え・筑前煮
↑“アテ”は、きずし(しめ鯖)入りなます・スナップエンドウとイカの胡麻和え・筑前煮。

み「何で、寝酒はダメなの?
 寝台特急は、無いの?」
食「こちらも、食事ならありますね。
 お弁当になりますけど」
カシオペア『スペシャル弁当』
↑カシオペア『スペシャル弁当』

食「フランス料理のコースなんかは、食堂車じゃなきゃダメです」
フランス料理のコースなんかは、食堂車じゃなきゃダメです

み「コース料理をルームサービスしたら、忙しくてしょうがないわ」
食「とにかく、フェリーで寝酒は頼めません」
み「じゃ、クリーニングは?」
じゃ、クリーニングは?

食「どこに頼むんです?
 海の上ですよ」
どこに頼むんです?

み「ヘリとか?」
ヘリとか?

食「クリーニング1枚、いくらかかるんですか!」
み「自前で無いの?
 クリーニング設備」
クリーニング設備

食「そんなフェリーはありませんよ」
み「洗濯機とアイロンがあればいいんじゃないの?」
洗濯機とアイロンがあればいいんじゃないの?

食「そんなわけにいかないでしょ。
 染み抜きとか出来ないし」
染み抜きとか出来ないし

み「洗って干すしかできませんって、看板出せば?
 あ、いっそのこと……。
 船員が風呂場で手洗いすればいいじゃん」
船員が風呂場で手洗いすればいいじゃん

み「アイロンは、寝押し」
アイロンは、寝押し

み「これで、設備費ゼロ」
食「そんなの、注文もゼロですよ。
 とにかく!
 クリーニングのルームサービスも無しなんです!」
み「ほかにないの?
 第三者を、部屋の前に呼ぶ方法。
 デリヘルは?」
デリヘルは?

食「来ません」
み「ヘリで来れないか?」
食「さっきもそれ言ったでしょ」
東北に行こう!(47)目次東北に行こう!(49)




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