Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(46)
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み「いいから、話を続けましょ。
 何の話だっけ?」
食「線虫でしょ」
これは、サナダムシ
↑これは、サナダムシ

み「あ、そうだ。
 線虫が、バラチラシの中に入ってるって話だったね」
虫たちはどこにでもいる

食「違うでしょ。
 ほんとに、意地が悪いな。
 あげませんからね」
揚げずにからあげ

み「意地汚いヤツ」
意地汚いヤツ

食「意地悪よりマシです」
意地悪よりマシです

食「ほら、続けてください。
 線虫が、どうして松から松へと移っていくのか。
 飛んでいくわけじゃないんですよね」
仮面ライダーに登場した、ムササビ怪人(弱そー)
↑仮面ライダーに登場した、ムササビ怪人(弱そー)。

み「そう。
 線虫は、文字通り、線みたいな虫だって……。
 さっき、この“くいだおれ太郎”くんが言ったでしょ」
さっき、この“くいだおれ太郎”くんが言ったでしょ

食「また、そのパターンですか。
 話が進まないでしょ。
 続けて、続けて」
み「ノリの悪いやつ。
 まぁ、いい。
 良いか。
 線虫は、文字通り、線のような虫なの。
 つまり、羽が無いのよ」
つまり、羽が無いのよ

み「飛べるわけないでしょ」
クマバチ。航空力学から見ると、飛べるはずが無いと云われて来ました。
↑クマバチ。航空力学から見ると、飛べるはずが無いと云われて来ました。

食「……」
み「反応しろよ!」
食「お腹が満たされて、脳が休眠に入りました」
お腹が満たされて、脳が休眠に入りました

食「どうぞ、続けて下さい」
み「張り合いのないヤツ。
 じゃ、仕方ない。
 先生に語るか」
律「仕方ないとは失礼ね」
み「じゃ、わかるの?」
律「もちろん」
み「ほー。
 何か、大外れの予感なんだけど」
大外れの予感なんだけど

律「空を飛んでは移動できないけど……。
 地面の下なら出来るでしょ。
 つまり、土の中を這って、隣の松の根に入ったのよ」
土の中を這って、隣の松の根に入ったのよ

み「なるほど。
 あんまり、バカにしたものでもないね。
 確かに、松林では、隣の松と根が交差してるはずだから……」
松林では、隣の松と根が交差してるはずだから……

み「土の中を這うとしても、それほどの距離じゃないよね」
律「当たりね」
み「残念ながら……。
 答えとの距離は、10万光年に開きました」
答えとの距離は、10万光年に開きました

律「何でよ!」
み「そもそもさ。
 線虫にとって、隣の松に移動しなきゃならない必然性って何よ?」
線虫にとって、隣の松に移動しなきゃならない必然性って何よ?

律「それは、今の松が、枯れちゃったからでしょ。
 生きてる松に移るのよ」
生きてる松に移るのよ

み「何で、生きてる松じゃなきゃダメなの?」
律「それは……、あれでしょ。
 グルメだからよ。
 生食しかしないわけ」
生食しかしないわけ

み「枯れた松なんざ食えるけー、って?」
枯れた松なんざ食えるけー、って?

律「そうそう」
み「しかしあなた。
 マツクイムシは、てっぺんの葉っぱにいるのよ。
 地上、30メートルの。
 材木の断面を見てもわかるとおり、材の中はびっしり詰まってるわけでしょ」
材木の断面を見てもわかるとおり、材の中はびっしり詰まってるわけでしょ

み「てっぺんから、幹の中を通って根まで降りるって、どんだけ大変だか」
てっぺんから、幹の中を通って根まで降りるって、どんだけ大変だか

律「幹の中を食べ進んで、根まで降りるって思ってるの?」
幹の中を食べ進んで、根まで降りるって思ってるの?

み「だって、そう言ったじゃない」
律「言ってません。
 土の中を這ってとは言ったけど」
土の中を這ってとは言ったけど

み「だから、根から出るんでしょ?」
律「違うわよ。
 位置エネルギーに、身を任せればいいだけじゃない」
位置エネルギーに、身を任せればいいだけじゃない

み「どゆこと?」
律「飛び降りるのよ。
 てっぺんの葉っぱから、華麗に身を躍らせる」
てっぺんの葉っぱから、華麗に身を躍らせる

み「線虫が?」
律「そう。
 下は松葉が積もってるだろうから……」
下は松葉が積もってるだろうから……

律「落ちても大丈夫。
 これなら、一瞬で地面に降りられるでしょ」
み「で、そのまま地面に入り……。
 生きている根を見つけて潜りこむ?」
生きている根を見つけて潜りこむ?

律「完璧でしょ」
完璧でしょ

み「位置エネルギーは、どうすんのよ?」
律「だから、説明したとおりでしょ。
 飛び降りれば済む話」
飛び降りれば済む話

み「古い松を離れるときは、それでいいだろうけどさ」
律「何が言いたいわけ?」
み「新しい松の根に入った後……。
 どうやって、天辺までたどり着くわけ?」
どうやって、天辺までたどり着くわけ?

律「どうしてこう、鈍いのかしらね」
み「なんで!」
律「いいこと。
 松にかぎらず、樹木ってのは、水を吸い上げてるの」
樹木ってのは、水を吸い上げてるの

律「根っこから、幹を通って、てっぺんの葉っぱまでね。
 つまり、水の通り道があるってことよ」
水の通り道があるってことよ

み「ほー。
 なるほど。
 うっかり信じそうになるぜ。
 じゃ、いちいち飛び降りないで……。
 そこを伝って降りてくればいいじゃない」
そこを伝って降りてくればいいじゃない

律「わからない人ね。
 通り道には、水が上がって来るわけでしょ」
懐かしや、別府温泉『龍巻地獄』
↑懐かしや、別府温泉『龍巻地獄』

み「降りようったって、降りられないわよ」
太りすぎて降りられなくなったハムスター
↑太りすぎて降りられなくなったハムスター

み「あ、でもさ。
 その木から移ろうとしてるってことは……。
 その木は、もう枯れちゃったわけでしょ」
その木は、もう枯れちゃったわけでしょ

み「そんなら、水なんか上がってこないじゃないの」
律「あんたは、松の性質を知らなすぎ」
あんたは、松の性質を知らなすぎ

み「どんな!」
律「松脂よ」
松脂よ

律「松は、ちょっと木肌を傷つけただけで、樹脂が滲み出てくるのよ」
松は、ちょっと肌を傷つけただけで、樹脂が滲み出てくるのよ

律「水の通り道なんて、すぐに詰まっちゃうわ」
ダストシュートに詰まった男(ロシア)
↑ダストシュートに詰まった男(ロシア)

み「凹まない女ね」
凹まない女ね

律「正論正論」
み「何の話してるか忘れたじゃない」
食「線虫が、どうやって、松から松へと移動できるのか、でしたよね」
線虫が、どうやって、松から松へと移動できるのか、でしたよね

み「おー、そうだった」
律「だから、飛び降りるんだって言ってるの」
だから、飛び降りるんだって言ってるの

み「違うの!」
律「どう違うのよ」
み「線虫の運び屋がいるのだ」
江戸時代の飛脚の走法『なんば走り』
↑江戸時代の飛脚の走法『なんば走り』。右手右足を同時に出して走るスタイル。スタミナの消耗が少なく、江戸時代の飛脚は、1日に100キロを走り抜けたとか。

律「何よ、それ?」
み「線虫を、松から松へと運ぶ運び屋」
ベトナムの運び屋。生きた牛も、カブで運びます。
↑ベトナムの運び屋。生きた牛も、カブで運びます。

律「悪の組織?」
悪の組織?

み「そう。
 白蝋衆」
白蝋衆

み「違う!」
律「それを言うなら、松蝋衆の方が、良くなくて?」
これは“松廊”
↑これは“松廊”

み「いらんこと、言わんでいい。
 線虫の運び屋……。
 その名も、マツノマダラカミキリ」
その名も、マツノマダラカミキリ

律「ショッカーの怪人みたいね」
ショッカーの怪人みたいね

み「イー!」
イー!

律「いちいち乗らないでちょうだい」
いちいち乗らないでちょうだい

み「そんなら、振らないで!
 黙って聞かんシャイ」
律「何弁よ?」
み「九州弁ですたいまんねん!」
九州弁ですたいまんねん!

律「あのさ……。
 これって、タダの行稼ぎじゃないの?」
み「だから、本筋を語らせて!
 わたしだって、真っ直ぐに語りたいの」
長野県・野辺山高原を一直線に走る線路
↑長野県・野辺山高原を一直線に走る線路。

律「本気かしら?」
み「♪好きさ大好きさ」
♪好きさ大好きさ

律「やっぱり行稼ぎだ」
み「いちいち振るなというのに」
いちいち振るなというのに

み「いいですか?
 運び屋と言っても……。
 カミキリムシには……。
 線虫を運ぼうなんて気は、さらさらないの」
線虫を運ぼうなんて気は、さらさらないの

律「線虫が利用してるってこと?」
み「ノンノンノン」
ノンノンノン

み「カミキリムシには、運ぶ気なんかないし……。
 線虫にだって、運んでもらうつもりはないはず。
 聞いてみたことないけど」
聞いてみたことないけど

律「両者にその気がないのに、どうして運ばれるわけ?
 松にとっては、大迷惑じゃないの」
み「マツノマダラカミキリは、松の新芽だけを食べるわけ。
 そのとき、口の中に、線虫が一緒に入っちゃうのよ。
 で、カミキリムシには羽があるでしょ。
 彼は、新芽を求めて、別の松に移る。
 で、新芽を囓るわけ。
 そのとき、口の中の線虫が、新しい松に移るってわけ」
そのとき、口の中の線虫が、新しい松に移るってわけ

律「カミキリムシの口移し?」
カミキリムシの口移し?

み「そーゆーこと。
 先生の大好きなね」
先生の大好きなね

律「何よそれ」
み「というわけで……。
 マツクイムシ防除の薬剤散布ってのは……。
 実は、運び屋のカミキリムシを征伐する作業なのです」
岡山駅の桃太郎像
↑岡山駅の桃太郎像

み「なぜなら!
 線虫は木の中にいるので……。
 こいつらを直接退治するのは、甚だ困難だから」
こいつらを直接退治するのは、甚だ困難だから

律「ふーん。
 まどろっこしいわね」
み「仕方おまへん」
律「その薬剤は、効くの?」
み「強烈だそうです」
岩室温泉(新潟市)のとある旅館にて
↑岩室温泉(新潟市)のとある旅館にて【アートサイト岩室温泉2011】

み「例の、ジョガーの女が、目撃したところによると……。
 噴き上がった薬剤が、霧状になって落ちてくるところに……。
 一匹のトンボが飛びこんで来たんだって」
一匹のトンボが飛びこんで来たんだって

み「霧に入った途端、真下に落ちたそうよ。
 その女の言うことにゃ……。
 直角に落ちたそうです。
 野茂のフォークより、遥かに鋭かったと言っておった」
野茂のフォークより、遥かに鋭かったと言っておった

律「話半分としても、かなり強い薬剤みたいね」
み「なんで、半分にするんだよ」
なんで、半分にするんだよ

み「じゃ、もうひとつ。
 叔父のレポートも追加しましょう。
 西海岸公園には、住宅街が隣接してる」
西海岸公園には、住宅街が隣接してる

み「だから、風向きなんか気にしながら……。
 見張りを立ててやってるんだって。
 それでも、急に風が変わったりして……。
 屋根まで、霧状になった薬剤が届いちゃうことがある。
 でね。
 屋根を銅板葺きに葺き替えた家があったんだって」
屋根を銅板葺きに葺き替えた家があったんだって

み「その情報を、市が把握してなかったんだろうだね。
 わかってりゃ、必ず業者に注意喚起があるはずから。
 で、薬剤が風に流され……。
 その屋根にかかってしまった。
 どうなったと思う?
 銅葺きの屋根一面が変色して……。
 水玉模様になっちゃったのよ」
水玉模様になっちゃったのよ

み「弁償だって。
 全面張替えよ。
 市が出したのか業者が出したのか、知らないけどさ」
律「へー。
 いろいろあるものね」
み「700万本の松林。
 子孫に伝えていきたい宝物だけど……。
 その維持は、想像以上に難しいってこと」
その維持は、想像以上に難しいってこと

み「さて。
 話を変えましょう。
 能代名物は……。
 バスケットと風の松原。
 あとは無いの?」
食「♪秋田音頭です」
♪秋田音頭です

み「出たな」
食「歌詞にありますよ」
み「何だっけ?」
食「♪秋田名物、八森ハタハタ」
♪秋田名物、八森ハタハタ

食「♪男鹿で男鹿ブリコ」
♪男鹿で男鹿ブリコ

み「ヨイヨイ」
ヨイヨイ

食「合いの手が違います。
 キタカサッサー、でしょ」
キタカサッサー、でしょ

み「早く進めろ!」
食「♪能代春慶、桧山納豆、大館曲げわっぱ」
♪能代春慶、桧山納豆、大館曲げわっぱ

み「おー、確かに出てくる。
 “しゅんけい”って、なんのこった?」
食「春慶塗りという、漆工芸です」
春慶塗りという、漆工芸です

み「そんなに有名なのか?」
食「春慶塗りは、全国的に分布してますが……。
 岐阜県の飛騨春慶」
岐阜県の飛騨春慶

食「茨城県の粟野春慶」
茨城県の粟野春慶

食「そして、秋田県の能代春慶。
 この3つが、日本三大春慶塗りと呼ばれてます」
み「春慶ってのは、創始者の名前?」
食「ちょっと違います。
 春慶塗りには、“透き漆”という、透明な漆が使われます」
春慶塗りには、“透き漆”という、透明な漆が使われます

み「えー。
 透明な漆なんてあるんだ。
 なんで透明なの?」
なんで透明なの?

食「ていうか、漆ってのは、もともと透明なんです。
 赤や黒の漆塗りは、漆に顔料を混ぜてあるんですよ」
赤や黒の漆塗りは、漆に顔料を混ぜてあるんですよ

み「げ、それは知らなんだ」
食「透明な漆を使うのは、木目の美しさをそのまま生かすためです」
透明な漆を使うのは、木目の美しさをそのまま生かすためです

食「春慶と云うのは、鎌倉時代の加藤景正の号です」
春慶と云うのは、鎌倉時代の加藤景正の号です

み「やっぱり、名人の名前なんだろ?」
食「春慶は、陶工です。
 瀬戸焼の開祖と云われてます」
瀬戸市古瀬戸小学校正門前の像
↑瀬戸市古瀬戸小学校正門前の像

み「陶工って、壺とか作る?」
陶工って、壺とか作る?

食「そうです」
み「なんで陶工の名前が、漆塗りの名称になるわけ?」
食「加藤景正(藤四郎)の名陶『飛春慶(とびしゅんけい)』の茶壷に似てるってことかららしいですよ」
真中古茶入(加藤景正)
↑真中古茶入/こちらから拝借。これが飛春慶なのか、わたしには、さーぱりわかりません。

み「ふーん。
 秋田は、『大館曲げわっぱ』とか、木工品の名物が多いみたいだね」
大館曲げわっぱのお弁当箱
↑大館曲げわっぱのお弁当箱。これで食べたら、美味しいだろうなぁ。

食「木の国ってことですね」
白神山地の原生林
↑白神山地の原生林

み「そんなに語るからには、買ったんだろうな?
 春慶塗り」
春慶塗り

食「買いませんよ」
み「なんで?」
食「食べられないものには興味がありません」
食べられないものには興味がありません

食「第一、荷物になるでしょ。
 旅先で買うのは“消え物”だけと決めてます。
 旅は、身軽が一番」
旅は、身軽が一番

み「体が身重だろうが」
体が身重だろうが

み「じゃ、“消え物”でもいいから、名物をあげよ」
食「うーん。
 じゃ、まず甘党には……。
 『志んこ』と『だまこ餅』。
 上町の『セキト』というお店の名物です」
上町の『セキト』というお店の名物です

食「『志んこ』は、秋田米で作ったお餅を餡でくるんだ餅菓子」
『志んこ』は、秋田米で作ったお餅を餡でくるんだ餅菓子

食「蓋を開いた途端、満面が笑み崩れますよ」
蓋を開いた途端、満面が笑み崩れますよ

み「想像できすぎるな」
食「いくつでもいけます。
 『だまこ餅』は、お餅の中にゴマだれが入った生菓子です」
『だまこ餅』は、お餅の中にゴマだれが入った生菓子です

食「これもまた、ウマい!」
これもまた、ウマい!

み「甘党は、もういい。
 聞いてるだけで胸焼けしそうだ。
 辛い方、いって」
辛い方、いって

食「辛党には、もちろんお酒です。
 『喜久水酒造』って聞いたことありませんか?」
建物は、はなはだイケてません。消防団の倉庫みたい。
↑建物は、はなはだイケてません。消防団の倉庫みたい。

み「なんとなく」
食「ここの貯蔵庫はスゴいですよ」
ここの貯蔵庫はスゴいですよ

食「国鉄のトンネルを購入して、貯蔵庫にしちゃったんです」
国鉄のトンネルを購入して、貯蔵庫にしちゃったんです

み「列車が走れなくなるだろ」
食「廃線のトンネルに決まってるでしょ」
鶴形トンネル(奥羽本線旧線・明治33年完成)
↑鶴形トンネル(奥羽本線旧線・明治33年完成)

み「ボケてみただけじゃ」
ボケてみただけじゃ

食「見学できますよ」
み「試飲は?」
試飲は?

食「一杯くらいなら、大丈夫じゃないですか?」
み「十杯は?」
十杯は?

食「追い出されます」
追い出されます

食「あ、今、駅を通過したでしょ。
 北能代駅です」
貨車を転用した駅舎だそうです。仮設トイレかと思った。
↑貨車を転用した駅舎だそうです。仮設トイレかと思った。

み「能代から幾つめだっけ?」
食「向能代、北能代ですから、2つめです」
向能代、北能代ですから、2つめです

食「この北能代駅近くに、霊水(みたまのみず)という清水が湧く神社があります。
 『泉神社の霊水』として、古くから知られてました」
『泉神社の霊水』として、古くから知られてました

食「眼病に苦しんでいた第二代秋田藩主・佐竹義隆が……」
眼病に苦しんでいた第二代秋田藩主・佐竹義隆が……
↑クセのありそうなオヤジですね。

食「この水で目を洗ったところ……」
この水で目を洗ったところ……

食「たちどころに治ったと伝えられてます」
み「あぁ。
 その手の話は、世界中にあるよね」
食「ルルドの泉とか?」
ルルドの泉とか?

み「おー、知っとるじゃないか」
律「どういう話?」
み「簡単に云うと……。
 ベルナデッタという貧しい少女が……」
ベルナデッタという貧しい少女が……

み「山で薪を拾ってるときに、聖母マリアが現れたという話」
山で薪を拾ってるときに、聖母マリアが現れたという話

律「マリアさまは、何しに出たの?」
み「出たのって……。
 幽霊みたいに言ったら、差し障りがあるでしょ」
幽霊みたいに言ったら、差し障りがあるでしょ

み「とりあえず、出てみたのよ。
 でも、場所が気に入ったのか、ベルナデッタが気に入ったのか……。
 彼女が山に入ると、頻繁に現れるようになった」
彼女が山に入ると、頻繁に現れるようになった

み「わたしなら、ぜったいレズビアンシーンにするんだけど」
わたしなら、ぜったいレズビアンシーンにするんだけど

律「罰あたりめ」
み「ベルナデッタは、聖母マリアに会ったことを隠さず話したんだけど……。
 誰も信じようとしなかった」
律「でしょうね」
み「で、マリアさま9回目のご出座のとき……」
マリアさま9回目のご出座のとき……

み「ベルナデッタに、近くの洞窟の中を掘るように命じた」
函館のトラピスチヌ修道院にある『ルルドの洞窟』
↑函館のトラピスチヌ修道院にある『ルルドの洞窟』。ベルナデッタもいますね。

律「ここ掘れワンワンって?」
ここ掘れワンワンって?

み「云うわけないでしょ。
 犬じゃないんだから」
律「でも、どうして少女に穴掘りなんか命じるの?
 屈強な男の前に出て、命じれば良かったのに」
屈強な男の前に出て、命じれば良かったのに

み「やっぱ、男はヤバいんじゃない?
 山の中で、2人きりなわけだし」
山の中で、2人きりなわけだし

律「そっちの方向に行くわけね。
 そんな気起こす不届き者がいるかしら?」
この不届き者の股間を咄嗟に隠した帽子は、後にチャリティー・オークションで2,400ユーロで落札されたそうです。
↑この不届き者の股間を咄嗟に隠した帽子は、後にチャリティー・オークションで2,400ユーロで落札されたそうです。

み「1対1で遭ったら、ぜったいに起こすやつがいると思う」
1対1で遭ったら、ぜったいに起こすやつがいると思う

み「やっぱ、美人だし、色っぽいもの。
 マリアさま」
ポルトガル・コインブラカルメル修道会の聖母マリア像
↑ポルトガル・コインブラカルメル修道会の聖母マリア像

律「じゃ、男性が何人かいるときに出ればいいわけね。
 穴掘りには、人出がいるから」
穴掘りには、人出がいるから

み「もっと悪いでしょ。
 白雪姫のジョーク、知らない?」
白雪姫のジョーク、知らない?

律「何よそれ?」
み「白雪姫の処女膜には……。
 小さな7つの穴が空いてましたって話」
左下が白雪姫のものと思われます
↑左下が白雪姫のものと思われます。でもよく見ると、8つ空いてますね。どうやら、動物のどれかともヤッたらしい。

律「どーしても、そっち方向に持ってくわけね」
み「とにかく、男の前に出るのは剣呑極まりない。
 何しろ、マリアさまはバージンだからね」
マリアさまはバージンだからね

律「あぁ、処女懐胎ってことね。
 そんなことが出来るのは、単細胞生物だけだわ」
そんなことが出来るのは、単細胞生物だけだわ

み「身も蓋もない。
 とにかく!
 ベルナデッタに、穴を掘れって言ったの。
 ベルナデッタが従ったところ、そこからは泉が湧き出した」
ベルナデッタが従ったところ、そこからは泉が湧き出した

み「里に戻ったベルナデッタは、この出来事もまわりに話した。
 誰も笑って取り合わなかったんだけど……。
 1人の青年だけが、その洞窟に向かった」
1人の青年だけが、その洞窟に向かった

み「彼は、重い眼病を患っててね。
 お医者さんからは、もうすぐ何も見えなくなるだろうと言われてた。
 で、藁にもすがる気持ちだったんだろうね」
こどもにんぎょう劇場 「わらしべ長者」
↑こどもにんぎょう劇場 「わらしべ長者」

み「泉にひざまずくと、湧き出す水で目を洗ってみた」
懐かしの『洗眼水栓』
↑懐かしの『洗眼水栓』。わたしはこれが苦手でした。

み「するとなんと!
 たちどころに病が癒えたって」
たちどころに病が癒えたって

み「小躍りしながら里に帰った青年は……」
小躍りしながら里に帰った青年は……

み「泉の効能を振れて回った。
 その話を聞き、腕の痛みに悩む老女が泉に向かった」
その話を聞き、腕の痛みに悩む老女が泉に向かった

み「腕を泉に浸したところ……。
 たちまち痛みが消え、力まで湧いてきた」
たちまち痛みが消え、力まで湧いてきた

み「不思議な泉の噂は、たちまちヨーロッパ中に広がった」
不思議な泉の噂は、たちまちヨーロッパ中に広がった

み「なにしろ、まだ医学の発達してない時代だからね」
実際に使われてた手術道具だそうです。死んだ方がマシかも。
↑実際に使われてた手術道具だそうです。死んだ方がマシかも。

律「いつごろの話よ?」
み「たしか、1858年。
 日本で云えば、幕末のころだね」
ご存知、新撰組副長。超イケメン。
↑ご存知、新撰組副長。超イケメン。

律「確かに、当時の医学で治せる病気は、限られてたでしょうね」
当時の医学で治せる病気は、限られてたでしょうね

み「つまり、病に悩む人は大勢いたわけ。
 で、泉のあるルルドを目指し、ヨーロッパ中から人が集まるようになった」
泉のあるルルドを目指し、ヨーロッパ中から人が集まるようになった

み「やがてルルドの洞窟はカトリックの聖地となり、大聖堂が建てられた」
ルルドの洞窟はカトリックの聖地となり、大聖堂が建てられた

み「今でも、巡礼者が絶えないそうよ」
今でも、巡礼者が絶えない

律「でも、佐竹藩の2代目が目を洗ったんなら……。
 能代の霊水のほうが、ルルドより早いわね」
み「確かにね。
 日本にキリスト教が普及してたら……」
細川ガラシャ
↑細川ガラシャ

み「能代が聖地になってたかもね」
今は、バスケの聖地
↑今は、バスケの聖地

み「でも、マリアさまが出なきゃならないでしょ」
律「出ていただきましょうよ」
観音様みたいですね
↑観音様みたいですね

み「言葉、わかるの?」
律「わかるわよ。
 キリスト教布教のためには、それくらい勉強しなきゃ」
キリスト教布教のためには、それくらい勉強しなきゃ

み「マリアさまって、布教も担当してたの?」
顎に点を打って逆さにすると……。ペンギン現る!
↑ご存知フランシスコ・ザビエルの肖像。顎に点を打って逆さにすると……。ペンギン現る!

み「でも、東北弁までは習ってないだろ」
ご存知ダニエル・カール
↑ご存知ダニエル・カール

み「出会った村娘に話しかけても、何言ってるかわからんかもよ」
秋田美人(1953年撮影)。こんな人でも、東北弁だったんでしょうね。
↑秋田美人(1953年撮影)。こんな人でも、東北弁だったんでしょうね。

み「『おかしいわね、ここは日本のはずだけど』って、首ひねるんじゃないかしら」
首ひねるんじゃないかしら

食「案外、わかるかもしれませんよ」
み「何で?」
食「エデンの園は日本の青森にあったって……」
エデンの園があったとされる『迷ヶ平』
↑エデンの園があったとされる『迷ヶ平』

食「大真面目で唱える人もいましたからね」
大真面目で唱える人もいましたからね

み「アダムとイブは、東北弁をしゃべってた?」
アダムとイブは、東北弁をしゃべってた?

食「そうそう。
 で、2人が食べた果実は……」
2人が食べた果実は……

食「当然、青森リンゴだった」
当然、青森リンゴだった

み「ちゃんちゃん」
北海道名物『ちゃんちゃん焼き』。あまり美味しいとは思えなかった。
↑北海道名物『ちゃんちゃん焼き』。あまり美味しいとは思えなかった。
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