2012.3.3(土)
食「『闘魂こめて』じゃないですか?」
律「あ、そんな感じかも」
食「『六甲おろし』も『闘魂こめて』も……。
正しくは、応援歌ではなく球団歌です」
み「学校で云えば、校歌みたいなもの?」
食「ですね」
み「歌ったんさい」
食「どっちからいきましょう?」
み「2つとも歌うつもりか?」
食「それじゃ、まず『六甲おろし』から」
み「フルコーラス、歌いあげるな!」
食「失礼しました。
それでは、続きまして……。
『闘魂こめて』、行きます」
み「歌いあげるなと言うに!」
食「すいません。
歌い出したら、ブレーキが効かなくなっちゃって」
み「暴走列車だな」
食「あ、問題出したの忘れてた」
み「なんだっけ?」
食「どうして、“バス”じゃなくて、“バース”なのか?」
み「それで先生が何か言いたかったのよね」
律「だから、わかったって言ったでしょ」
み「ウソこけ」
律「ホントです。
阪神の選手にはね、一人ひとり、テーマミュージックみたいな応援歌があるのよ。
その先生、『六甲おろし』を存分に歌い切ると……。
今度は、その応援歌を歌い始めるわけ」
み「つくずく、大迷惑だよな」
律「バース選手のは、すごく耳に残ってる」
み「何て云うの?」
律「えー。
歌うの?
恥ずかしいじゃない」
み「歌わなきゃわからないでしょ!」
食「ボクが代わりに歌っていいですか?」
律「あ、お願いします」
食「♪バース、かっとばせ、バース♪
♪ライトーにレフトにホームラン♪」
律「それそれ」
み「待てぃ」
食「何です?」
み「センターが無いではないか」
食「それは、歌詞の都合ですよ」
み「容赦ならん。
センターに打ったら、反則ではないか」
食「そんなわけないでしょ」
み「まぁ、いい。
でも、この応援歌が、どう関係してるわけ?」
律「わからない?
今の歌の、“バース”ってとこを“バス”に変えたらどうなると思う?」
み「はい、歌ったんさい」
食「♪バス、かっとばせ、バス」
律「ヘンでしょ?」
み「するってぇと何かい?
このメロディが先にあって……。
それに載せるために、“バース”になったとでも?」
律「じゃないの?」
み「なわけあるかい。
“バス”だったら、それなりのメロディになってるでしょ」
食「正解は、出そうにないですね。
ちょっとアッケに取られる理由ですよ」
み「もったいぶらずに、言ってみんさい」
食「“バス”だと……。
スランプに陥ったとき……。
新聞に、『阪神バス故障』とか書かれると危惧したからですよ」
み「は?
そんな理由なの?」
食「らしいです」
み「被害妄想的発想だよな」
食「でも、あんなに活躍するんなら……」
食「素直に“バス”にしとけば良かったと、地団駄踏んだかも知れませんね」
み「だけど、“バス”のまま登録されてたら……。
あの応援歌は、別のメロディになってたろうし……」
食「あんなに活躍しなかったかも知れませんね」
み「わからんもんだよ」
とか言ってるうちに、列車は2つめの駅に到着しました。
車内アナウンスは、『八郎潟』。
↑『追分 → 八郎潟』側面展望(掲載を忘れてました)
み「おー、懐かしや、八郎潟」
食「昨日、行かれたんですよね」
み「行かれた行かれた。
寒風山から眺めただけだけどね」
食「向こうに見えるのが、寒風山です」
み「東側から見ると、こんな風景なのか。
どこまでも真平らって感じだね」
食「干拓地ですからね」
み「なんで秋なのに、田植えしたばっかりなんだろ?」
食「そういうことは、気にしない!
そうそう。
ここは、冬景色がいいんですよ。
一面の雪原」
み「地吹雪が起きそうな感じだね」
食「怖いでしょうね。
方向がわからなくなるんじゃないかな」
み「そりゃ怖いわ。
昔、クルマで走ってて、怖い目にあったことあるもの」
食「どこでですか?」
み「新潟。
田んぼの中の一本道でさ。
横殴りの地吹雪に遭ったんだよ」
み「窓の外は、白一色。
前後左右、上も下も真っ白になる」
食「ホワイトアウトってやつですね」
み「まさに、白い闇だね。
ライト点けたって見えないんだから……」
み「夜の闇より、よっぽど怖い。
路肩まで雪の山だから……。
脇にクルマを寄せて退避するわけにもいかない。
かといって、道の真ん中で止めたら、もっと怖いからね」
律「どうして?」
み「追突されかねないもの。
ほとんど視界が効かないんだからさ。
大型トラックでも突っこんできたら……」
み「間違いなく、お陀仏よ」
律「それは怖いわ。
でも、助かったわけよね?
ここにいるんだから」
み「なんとかね。
前の車のテールランプが、かすかに見えたの」
み「必死にそれに着いていった。
前に誰か走ってなかったら、ほんとどうなってたかわからない。
真っ直ぐの道じゃないからさ」
律「道を外れちゃう?」
み「そう。
あの道で、ときどき見てたんだよ。
田んぼに突っこんでるクルマ」
み「あれは間違いなく……。
道がカーブしてることに気づかないで、真っ直ぐ行っちゃったんだね」
律「怖わ」
み「ほんとに雪は怖いよ。
橋の上でもエラい目にあったな」
律「まだあるの?」
み「急いでる時でさ……。
家を出る時、屋根の雪を落とさないまま走ったんだ」
↑さすがに、ここまでではありませんでしたが
み「しばらくは、何ごとも無かったんだけど……。
そのうち、暖房が効いてくるわけよ」
み「で、屋根と接してる部分の雪が解けるでしょ」
律「それが、橋の上でどうなったの?」
み「ちょっとブレーキ踏んだ途端……。
屋根の雪が、雪崩を打ってフロントガラスに落ちて来た」
律「ワイパーは効かないの?」
み「新潟の雪は重いんだよ」
み「ワイパーなんか、ビクともしない。
フロントガラス一面、真っ白な壁」
↑このクルマは、わずかにワイパーが動いてたようですね
み「何にも見えない。
橋の上で、路肩もない。
走るしかないの。
しかも、その橋のかかる川は……。
阿賀野川よ」
↑泰平橋(橋長938メートル)
食「あぁ、阿賀野川の河口を白新線で渡ったことがあります」
食「ものスゴい大河ですよね」
み「中国からの留学生が……。
阿賀野川の河口を見て……。
ふるさとの景色に似てるって言ったそう」
み「とにかく、茫洋としてて、日本みたいじゃないわね。
橋の長さも1キロ近くあるのよ」
み「歩いて渡れば、15分かかる」
律「そりゃスゴいわ。
うちのマンションから駅までより遠いじゃない。
10分でもかったるいのに」
み「ま、歩いて渡る人は、滅多にいないわな。
わたしは、何年か前、チャリで渡ったことがある」
律「何でまた?」
み「春風に誘われてよ」
み「ゴールデンウィークだったかな。
自転車散歩に出たら、気持ちよくて遠出したくなっちゃってさ。
そのころはまだ、『Mikiko's Room』もやってなかったし。
ゴールデンウィークなんて、ヒマのカタマリよ」
み「で、渡り始めたんだけど……。
途中から大後悔」
食「クルマが怖いんじゃないですか?」
み「ううん。
それは全然ないの。
わたしが渡ったのは、泰平橋って言って……。
河口から、4本めの橋なんだけどさ。
橋の本道は、片側一車線の自動車専用。
で、その脇に、歩行者と自転車用の側道が、独立して付いてるの」
み「だから、クルマに煽られる怖さとは無縁」
律「じゃ、何で怖いの」
み「下を見るのが怖いのなんのって。
側道は、鉄の柵で囲われてるから……」
み「落ちる心配は無いんだけどね。
その代わり、柵の隙間から水面が見えるわけよ。
ゴールデンウィークころは、会津の雪解け水で……。
もう、満々たる水量よ」
食「阿賀野川下流の水量は、スゴいみたいですね」
み「信濃川は、大河津分水と関屋分水で、大半の水が途中で海に落ちちゃってるから……」
み「河口近くの水量は大したことないわけ」
み「幅は、隅田川の2倍くらいかな」
↑まさに“春のうららの隅田川”。
み「でも、阿賀野川は違う。
奥会津からの水が全部下ってくるからね。
で、側道から下見るとさ……。
川面が波立ってるわけよ」
↓動画もありました。
み「水の厚みがはっきりとわかる色だし。
もう、海のど真ん中と一緒」
↑最下流の松浜橋付近
み「怖いのなんのって」
律「渡らなきゃいいのに」
み「しかたないでしょ。
渡り始めてから気づいたんだから」
食「結局、渡り切ったんですか?」
み「おうよ」
食「何で引き返さないんです?
渡っちゃったら、また戻らなきゃならないじゃないですか」
み「そうなのよー。
それも、渡り切ってから気づいた」
律「戻ったわけ?」
み「戻らなきゃ、おうちに帰れないでしょ」
み「もう、あんな冒険はゴメンだね」
食「で、フロントガラスの件はどうなりました?
その橋の真ん中だったんでしょ」
み「そう!」
み「屋根の雪が、フロントガラスに滑り落ちて……。
一面、真っ白」
み「ワイパー動かそうとしても、ピクリともしない」
律「どうしたのよ」
み「必死に窓開けてさ……。
窓から顔出しながら……。
手で、フロントガラスの雪を取ろうとするんだけどさ。
除いても除いても、上から新しい雪が落ちてくる」
み「結局……。
窓から顔出したまま、走ったわよ」
↑ここまでの顔は、してなかったはず……。
上の画像は、『車の窓から顔を出してやばい顔になった犬たちの写真17枚』というページから拝借。
おもろいよ。
み「対向車の人は、バカな女と思ったでしょうね」
食「でも、よく無事でしたね」
み「寿命が半年くらい縮んだ」
律「クルマ、止めれば良かったのに」
み「後ろに、ずーっと繋がってるんだもの」
み「追突事故でも起きたら、わたしの責任よ」
食「起きたら起きたときですよ。
それより、自分の命が大事でしょ」
み「確かにね。
でも、パニクると、正常な判断なんか出来なくなるのよ」
食「クルマの運転に向いてないんじゃないですか?」
み「わたしもそう思う」
み「ときどき、どこ走ってるかわからなくなるし」
律「ナビ、付いてないの?」
み「ないよ」
律「便利なのに」
み「たまーに、友達のナビ付きのクルマに乗ることがあるんだけどさ……。
ぜったい、わたしには無理だと思う」
律「操作が?
簡単よ」
み「機械の操作は、そんなに苦手じゃないのよ。
苦手なのは、脳内の地図処理能力」
み「ナビがあると……。
眼の前の道路と、ナビの地図と……。
ふたつの情報を処理しなきゃならんわけでしょ。
余計混乱するのよ」
律「何で別々に処理しようとするのよ。
重ね合わせればいいだけじゃない」
↑現実の風景に重ねて表示してくれるナビ、すでに製品化されてました(こちら)
み「そんな簡単にはいかんにょら。
友達のナビって、地図データが古いのかさ……。
現実の道路と違ってるのよ」
律「あー、それはあるわね」
み「川を渡ろうとしてたんだけど……。
ナビに無い橋があったわけ」
↑幻の橋(北海道遺産・旧国鉄士幌線タウシュベツ橋梁)
み「友達と2人で、迷ったわよ。
渡っていいものかどうか」
律「何で迷うのよ?」
み「だって、ナビの地図上では、何にも無いのよ。
ま、思い切って渡ったけどさ。
渡ってる間じゅう、生きた心地しなかった」
↑佐田沈下橋(四万十川)
律「なんで?」
み「ナビ見ると……。
川の中を渡ってるわけよ」
み「ひょっとしたら……。
眼の前の橋の方が、幻なんじゃないか……。
渡ってる途中で、消えてなくなるんじゃないかって」
み「渡り切ったときは、2人して歓声あげたね」
律「阿賀野川の橋?」
み「違うよ。
あんな長い橋だったら、途中で窒息してるって。
ほとんど息止めてたから」
律「呆れた話」
み「さてと、チミ。
途中になってる話は、無かったかな?」
食「取りあえず、大丈夫だと思いますよ。
なんだかボクも、よく覚えてません」
み「若いのに健忘症か」
み「気の毒にのぅ。
バースの話は終わったっけ?」
↑超リアルフィギュア(着脱出来てどうなる?)
食「『阪神バス故障』でケリが付いたと思いますよ。
あ、そう言えば……」
み「ほら、忘れてた」
食「違いますよ。
八郎潟とバースが繋がったんです」
み「まさか、八郎潟までボールが飛んできたとか?」
食「ありえないでしょ。
バースの本名が“Bass”だってことは、話しましたよね」
食「八郎潟は、バス釣りのメッカになってるんです」
み「バスって……。
あの、外来魚で評判の悪い?」
食「そうです。
2003年からは、八郎潟でもリリース禁止になってますね」
み「リリースってのは、釣った魚を、水に帰しちゃうことでしょ?」
食「ですね」
み「どうして、そんなことするわけ?」
食「さぁ。
ボクも、釣りは詳しくないですから。
結局は、美味しくないからじゃないですか?」
↑ブラックバスの燻製
食「網で捕ろうって人もいないみたいだし」
食「デカいから、食べでもあるだろうし」
↑10kgを越える大物も……
み「おー。
ここで再び、ある情景が、記憶の底から蘇ってしまった」
食「またですか」
み「忘れる前にしゃべらせて。
わが幼少のころの話」
み「父に連れられて、父の実家に遊びに行ったの」
律「あれ?
Mikiちゃんのお父さんって、マスオさん?」
み「そうそう。
婿養子。
実家は大きな農家でさ、父はそこの次男なわけ」
↑もちろん、こんな豪農ではありません
み「そのときは、もう父の兄が農業を継いでた。
その叔父さんにわたしは、ずいぶんと可愛がってもらったんだけどね。
で、父に連れられて遊びに行った日のことよ。
夏前だったと思うんだけど……。
夏のような日差しが、ギラギラ射してた」
食「なんか、『異邦人』みたいですね」
み「そう。
そんな雰囲気の日よ」
み「遊びに行ったときは、玄関から入らず、裏口から入るの」
↑これは、有楽町の飲み屋です
み「あ、言っとくけど……。
新潟の農家の敷地って、ものすげー広いからね。
叔父さんちも、敷地の中に、子供なら迷いそうな竹林があったから」
み「裏口って言うと、せせこましいイメージがあると思うけどさ。
そんなんじゃないのよ。
敷地の中、軽トラで走るからね」
み「裏口は、その軽トラの通り道に面してる。
そこに叔父さんがいてね……。
大きなタライの中を見てた」
み「挨拶しながら近づくと、叔父さんはニコニコしながら迎えてくれて……。
タライの中を指さした。
途端に、タライから水が跳ねたんだよ」
み「覗きこむと……。
キタナイ泥水みたいな中に、不気味な生き物が身をくねらせてた」
『お魚?』
『雷魚って云うんだよ』
『ライギョ?
買ってきたの?』
『ははは。
こんなもの、金出して買うバカはいないさ。
釣ったんだよ』
『阿賀野川で』
『鯉かと思ったら、とんだゲテモノだ』
『これ、飼うの?』
『飼うもんか。
食べるんだよ、今夜』
↑バンコクのスーパーに並ぶ雷魚くん
わたしが身をのけぞらせると、叔父は楽しそうに笑った。
あんな不気味な魚を食べるなんて、信じられなかった。
なんかさ、迷彩柄みたいな配色なんだよ。
ウロコは無くて、ヌルヌルしてる。
頭も口も大きい。
でも、ナマズみたいな愛嬌は無くて、ひたすら凶悪顔。
ウツボの系統だね。
『みきこも、食べていきなさい』
わたしは曖昧に笑いながら、ぜったい今日は早く帰らねばと思った。
その後、母屋に寄って、父が用事を済ませてる間、従姉妹と庭で遊んでた。
裏口とは別に、屋敷の前っかわにも大きな庭があるの。
土蔵の脇には、大人でも腕が回らないほどのタブノキが聳えてる。
↑香取五神社のタブノキ(滋賀県長浜市)
何十年前かの落雷で大枝が折れ……。
蔵の屋根瓦を壊したって話は、父からよく聞かされた。
雷魚のことは、すっかり忘れて遊んでたんだけど……。
縁側に出た父から、帰ることを告げられて思い出した。
雷魚を食べずに済んで、ほっとした。
帰るときも、裏口の脇を通った。
するとそこには叔父がしゃがみ込んで、水道の水で出刃包丁を洗ってた。
裏口を上がると、すぐ台所なのよ。
↑こんな立派な造りではありませんでしたが、板敷きでした。
『なんだ、食べていかないのか、これ』
叔父が突き出した包丁の先をたどると……。
まな板の上に、真っ白い肉が盛られてた。
↑本物の雷魚の肉です(こちら)
あんな黒い魚が、こんな白い肉の塊になることが……。
ちょっと信じられなかった。
でも、もちろん、食べる気になんかなれない。
曖昧な顔でいとまの挨拶しながら、父の手を引っ張るわたしに……。
叔父が手招きした。
『みきこ。
面白いもの見せてやる。
こっち来てごらん』
叔父が、タライの中を覗き込みながら、わたしを再度手招きする。
さっきまで、雷魚の泳いでたタライ。
雷魚料理も断ってることだし、あんまり断ってばかりじゃ悪いなって思った。
で、何の気なしにタライを覗いたわけ。
すると……。
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
律「ちょっと、何よ!
急に大声出して。
驚くじゃないの」
み「そう。
タライを覗きこんで、わたしもびっくり仰天よ。
マジで飛び退った」
律「何が入ってたのよ?」
み「だから、雷魚よ」
律「だって、料理されちゃったんでしょ?」
↑タイ料理(魚の“鯛”ではなく、国の“タイ”)
み「肉はね。
でも、頭と骨は残ってた」
律「捌いた残骸ってこと?」
み「違うのよ。
泳いでたの。
悠々と。
頭と骨だけの雷魚が」
律「ウソおっしゃい」
み「ホントだってば。
絶対アイツは……。
頭と骨だけにされたことに気づいてなかった」
食「確かに、雷魚の生命力はスゴいみたいですけど……」
↑それを食う人間は、もっとスゴい(雷魚の塩焼き・再びタイです)
食「にわかには信じがたい話ですね」
み「何でよ」
食「だって、骨だけで泳げるわけ無いじゃないですか。
骨は、筋肉が動かしてるんだから」
↑肝心要の“キン”肉が付いてないぞ。
み「わたしに、雷魚の事情はわからないわよ」
↑雷魚の蒸し焼き(当然のごとく……、タイです)
み「でも、この目に焼き付いてるんだもの。
真っ黒なでっかい頭と……。
そこに繋がる白い骨。
骨が、ゆらゆらと左右に揺らいでた」
律「もう。
気味悪い話、止めてくれない」
食「『白神鶏わっぱ』、吐きそうになりました」
み「吐くなよ!」
律「Mikiちゃんが悪いのよ」
み「思い出したものは、仕方ないでしょ」
律「どっから、こんな話になったのよ?」
み「コイツのせいだ」
食「ボクですか?」
み「チミが、バス釣りの話を持ちだしたんだろ」
↑ブラックバスの煮付け
食「はぁ。
でも……。
そっから、雷魚の話を始める人のほうが……」
↑雷魚の唐揚げ/やっぱり……、タイです
み「悪くない!
で?
八郎潟名物は、バス釣りしか無いの?」
み「あとは、地吹雪だけ?」
↑『雪国地吹雪体験ツアー(青森県五所川原市金木町)』
食「そんなわけ無いですよ。
珍しい温泉があります」
律「あ、そんな感じかも」
食「『六甲おろし』も『闘魂こめて』も……。
正しくは、応援歌ではなく球団歌です」
み「学校で云えば、校歌みたいなもの?」
食「ですね」
み「歌ったんさい」
食「どっちからいきましょう?」
み「2つとも歌うつもりか?」
食「それじゃ、まず『六甲おろし』から」
み「フルコーラス、歌いあげるな!」
食「失礼しました。
それでは、続きまして……。
『闘魂こめて』、行きます」
み「歌いあげるなと言うに!」
食「すいません。
歌い出したら、ブレーキが効かなくなっちゃって」
み「暴走列車だな」
食「あ、問題出したの忘れてた」
み「なんだっけ?」
食「どうして、“バス”じゃなくて、“バース”なのか?」
み「それで先生が何か言いたかったのよね」
律「だから、わかったって言ったでしょ」
み「ウソこけ」
律「ホントです。
阪神の選手にはね、一人ひとり、テーマミュージックみたいな応援歌があるのよ。
その先生、『六甲おろし』を存分に歌い切ると……。
今度は、その応援歌を歌い始めるわけ」
み「つくずく、大迷惑だよな」
律「バース選手のは、すごく耳に残ってる」
み「何て云うの?」
律「えー。
歌うの?
恥ずかしいじゃない」
み「歌わなきゃわからないでしょ!」
食「ボクが代わりに歌っていいですか?」
律「あ、お願いします」
食「♪バース、かっとばせ、バース♪
♪ライトーにレフトにホームラン♪」
律「それそれ」
み「待てぃ」
食「何です?」
み「センターが無いではないか」
食「それは、歌詞の都合ですよ」
み「容赦ならん。
センターに打ったら、反則ではないか」
食「そんなわけないでしょ」
み「まぁ、いい。
でも、この応援歌が、どう関係してるわけ?」
律「わからない?
今の歌の、“バース”ってとこを“バス”に変えたらどうなると思う?」
み「はい、歌ったんさい」
食「♪バス、かっとばせ、バス」
律「ヘンでしょ?」
み「するってぇと何かい?
このメロディが先にあって……。
それに載せるために、“バース”になったとでも?」
律「じゃないの?」
み「なわけあるかい。
“バス”だったら、それなりのメロディになってるでしょ」
食「正解は、出そうにないですね。
ちょっとアッケに取られる理由ですよ」
み「もったいぶらずに、言ってみんさい」
食「“バス”だと……。
スランプに陥ったとき……。
新聞に、『阪神バス故障』とか書かれると危惧したからですよ」
み「は?
そんな理由なの?」
食「らしいです」
み「被害妄想的発想だよな」
食「でも、あんなに活躍するんなら……」
食「素直に“バス”にしとけば良かったと、地団駄踏んだかも知れませんね」
み「だけど、“バス”のまま登録されてたら……。
あの応援歌は、別のメロディになってたろうし……」
食「あんなに活躍しなかったかも知れませんね」
み「わからんもんだよ」
とか言ってるうちに、列車は2つめの駅に到着しました。
車内アナウンスは、『八郎潟』。
↑『追分 → 八郎潟』側面展望(掲載を忘れてました)
み「おー、懐かしや、八郎潟」
食「昨日、行かれたんですよね」
み「行かれた行かれた。
寒風山から眺めただけだけどね」
食「向こうに見えるのが、寒風山です」
み「東側から見ると、こんな風景なのか。
どこまでも真平らって感じだね」
食「干拓地ですからね」
み「なんで秋なのに、田植えしたばっかりなんだろ?」
食「そういうことは、気にしない!
そうそう。
ここは、冬景色がいいんですよ。
一面の雪原」
み「地吹雪が起きそうな感じだね」
食「怖いでしょうね。
方向がわからなくなるんじゃないかな」
み「そりゃ怖いわ。
昔、クルマで走ってて、怖い目にあったことあるもの」
食「どこでですか?」
み「新潟。
田んぼの中の一本道でさ。
横殴りの地吹雪に遭ったんだよ」
み「窓の外は、白一色。
前後左右、上も下も真っ白になる」
食「ホワイトアウトってやつですね」
み「まさに、白い闇だね。
ライト点けたって見えないんだから……」
み「夜の闇より、よっぽど怖い。
路肩まで雪の山だから……。
脇にクルマを寄せて退避するわけにもいかない。
かといって、道の真ん中で止めたら、もっと怖いからね」
律「どうして?」
み「追突されかねないもの。
ほとんど視界が効かないんだからさ。
大型トラックでも突っこんできたら……」
み「間違いなく、お陀仏よ」
律「それは怖いわ。
でも、助かったわけよね?
ここにいるんだから」
み「なんとかね。
前の車のテールランプが、かすかに見えたの」
み「必死にそれに着いていった。
前に誰か走ってなかったら、ほんとどうなってたかわからない。
真っ直ぐの道じゃないからさ」
律「道を外れちゃう?」
み「そう。
あの道で、ときどき見てたんだよ。
田んぼに突っこんでるクルマ」
み「あれは間違いなく……。
道がカーブしてることに気づかないで、真っ直ぐ行っちゃったんだね」
律「怖わ」
み「ほんとに雪は怖いよ。
橋の上でもエラい目にあったな」
律「まだあるの?」
み「急いでる時でさ……。
家を出る時、屋根の雪を落とさないまま走ったんだ」
↑さすがに、ここまでではありませんでしたが
み「しばらくは、何ごとも無かったんだけど……。
そのうち、暖房が効いてくるわけよ」
み「で、屋根と接してる部分の雪が解けるでしょ」
律「それが、橋の上でどうなったの?」
み「ちょっとブレーキ踏んだ途端……。
屋根の雪が、雪崩を打ってフロントガラスに落ちて来た」
律「ワイパーは効かないの?」
み「新潟の雪は重いんだよ」
み「ワイパーなんか、ビクともしない。
フロントガラス一面、真っ白な壁」
↑このクルマは、わずかにワイパーが動いてたようですね
み「何にも見えない。
橋の上で、路肩もない。
走るしかないの。
しかも、その橋のかかる川は……。
阿賀野川よ」
↑泰平橋(橋長938メートル)
食「あぁ、阿賀野川の河口を白新線で渡ったことがあります」
食「ものスゴい大河ですよね」
み「中国からの留学生が……。
阿賀野川の河口を見て……。
ふるさとの景色に似てるって言ったそう」
み「とにかく、茫洋としてて、日本みたいじゃないわね。
橋の長さも1キロ近くあるのよ」
み「歩いて渡れば、15分かかる」
律「そりゃスゴいわ。
うちのマンションから駅までより遠いじゃない。
10分でもかったるいのに」
み「ま、歩いて渡る人は、滅多にいないわな。
わたしは、何年か前、チャリで渡ったことがある」
律「何でまた?」
み「春風に誘われてよ」
み「ゴールデンウィークだったかな。
自転車散歩に出たら、気持ちよくて遠出したくなっちゃってさ。
そのころはまだ、『Mikiko's Room』もやってなかったし。
ゴールデンウィークなんて、ヒマのカタマリよ」
み「で、渡り始めたんだけど……。
途中から大後悔」
食「クルマが怖いんじゃないですか?」
み「ううん。
それは全然ないの。
わたしが渡ったのは、泰平橋って言って……。
河口から、4本めの橋なんだけどさ。
橋の本道は、片側一車線の自動車専用。
で、その脇に、歩行者と自転車用の側道が、独立して付いてるの」
み「だから、クルマに煽られる怖さとは無縁」
律「じゃ、何で怖いの」
み「下を見るのが怖いのなんのって。
側道は、鉄の柵で囲われてるから……」
み「落ちる心配は無いんだけどね。
その代わり、柵の隙間から水面が見えるわけよ。
ゴールデンウィークころは、会津の雪解け水で……。
もう、満々たる水量よ」
食「阿賀野川下流の水量は、スゴいみたいですね」
み「信濃川は、大河津分水と関屋分水で、大半の水が途中で海に落ちちゃってるから……」
み「河口近くの水量は大したことないわけ」
み「幅は、隅田川の2倍くらいかな」
↑まさに“春のうららの隅田川”。
み「でも、阿賀野川は違う。
奥会津からの水が全部下ってくるからね。
で、側道から下見るとさ……。
川面が波立ってるわけよ」
↓動画もありました。
み「水の厚みがはっきりとわかる色だし。
もう、海のど真ん中と一緒」
↑最下流の松浜橋付近
み「怖いのなんのって」
律「渡らなきゃいいのに」
み「しかたないでしょ。
渡り始めてから気づいたんだから」
食「結局、渡り切ったんですか?」
み「おうよ」
食「何で引き返さないんです?
渡っちゃったら、また戻らなきゃならないじゃないですか」
み「そうなのよー。
それも、渡り切ってから気づいた」
律「戻ったわけ?」
み「戻らなきゃ、おうちに帰れないでしょ」
み「もう、あんな冒険はゴメンだね」
食「で、フロントガラスの件はどうなりました?
その橋の真ん中だったんでしょ」
み「そう!」
み「屋根の雪が、フロントガラスに滑り落ちて……。
一面、真っ白」
み「ワイパー動かそうとしても、ピクリともしない」
律「どうしたのよ」
み「必死に窓開けてさ……。
窓から顔出しながら……。
手で、フロントガラスの雪を取ろうとするんだけどさ。
除いても除いても、上から新しい雪が落ちてくる」
み「結局……。
窓から顔出したまま、走ったわよ」
↑ここまでの顔は、してなかったはず……。
上の画像は、『車の窓から顔を出してやばい顔になった犬たちの写真17枚』というページから拝借。
おもろいよ。
み「対向車の人は、バカな女と思ったでしょうね」
食「でも、よく無事でしたね」
み「寿命が半年くらい縮んだ」
律「クルマ、止めれば良かったのに」
み「後ろに、ずーっと繋がってるんだもの」
み「追突事故でも起きたら、わたしの責任よ」
食「起きたら起きたときですよ。
それより、自分の命が大事でしょ」
み「確かにね。
でも、パニクると、正常な判断なんか出来なくなるのよ」
食「クルマの運転に向いてないんじゃないですか?」
み「わたしもそう思う」
み「ときどき、どこ走ってるかわからなくなるし」
律「ナビ、付いてないの?」
み「ないよ」
律「便利なのに」
み「たまーに、友達のナビ付きのクルマに乗ることがあるんだけどさ……。
ぜったい、わたしには無理だと思う」
律「操作が?
簡単よ」
み「機械の操作は、そんなに苦手じゃないのよ。
苦手なのは、脳内の地図処理能力」
み「ナビがあると……。
眼の前の道路と、ナビの地図と……。
ふたつの情報を処理しなきゃならんわけでしょ。
余計混乱するのよ」
律「何で別々に処理しようとするのよ。
重ね合わせればいいだけじゃない」
↑現実の風景に重ねて表示してくれるナビ、すでに製品化されてました(こちら)
み「そんな簡単にはいかんにょら。
友達のナビって、地図データが古いのかさ……。
現実の道路と違ってるのよ」
律「あー、それはあるわね」
み「川を渡ろうとしてたんだけど……。
ナビに無い橋があったわけ」
↑幻の橋(北海道遺産・旧国鉄士幌線タウシュベツ橋梁)
み「友達と2人で、迷ったわよ。
渡っていいものかどうか」
律「何で迷うのよ?」
み「だって、ナビの地図上では、何にも無いのよ。
ま、思い切って渡ったけどさ。
渡ってる間じゅう、生きた心地しなかった」
↑佐田沈下橋(四万十川)
律「なんで?」
み「ナビ見ると……。
川の中を渡ってるわけよ」
み「ひょっとしたら……。
眼の前の橋の方が、幻なんじゃないか……。
渡ってる途中で、消えてなくなるんじゃないかって」
み「渡り切ったときは、2人して歓声あげたね」
律「阿賀野川の橋?」
み「違うよ。
あんな長い橋だったら、途中で窒息してるって。
ほとんど息止めてたから」
律「呆れた話」
み「さてと、チミ。
途中になってる話は、無かったかな?」
食「取りあえず、大丈夫だと思いますよ。
なんだかボクも、よく覚えてません」
み「若いのに健忘症か」
み「気の毒にのぅ。
バースの話は終わったっけ?」
↑超リアルフィギュア(着脱出来てどうなる?)
食「『阪神バス故障』でケリが付いたと思いますよ。
あ、そう言えば……」
み「ほら、忘れてた」
食「違いますよ。
八郎潟とバースが繋がったんです」
み「まさか、八郎潟までボールが飛んできたとか?」
食「ありえないでしょ。
バースの本名が“Bass”だってことは、話しましたよね」
食「八郎潟は、バス釣りのメッカになってるんです」
み「バスって……。
あの、外来魚で評判の悪い?」
食「そうです。
2003年からは、八郎潟でもリリース禁止になってますね」
み「リリースってのは、釣った魚を、水に帰しちゃうことでしょ?」
食「ですね」
み「どうして、そんなことするわけ?」
食「さぁ。
ボクも、釣りは詳しくないですから。
結局は、美味しくないからじゃないですか?」
↑ブラックバスの燻製
食「網で捕ろうって人もいないみたいだし」
食「デカいから、食べでもあるだろうし」
↑10kgを越える大物も……
み「おー。
ここで再び、ある情景が、記憶の底から蘇ってしまった」
食「またですか」
み「忘れる前にしゃべらせて。
わが幼少のころの話」
み「父に連れられて、父の実家に遊びに行ったの」
律「あれ?
Mikiちゃんのお父さんって、マスオさん?」
み「そうそう。
婿養子。
実家は大きな農家でさ、父はそこの次男なわけ」
↑もちろん、こんな豪農ではありません
み「そのときは、もう父の兄が農業を継いでた。
その叔父さんにわたしは、ずいぶんと可愛がってもらったんだけどね。
で、父に連れられて遊びに行った日のことよ。
夏前だったと思うんだけど……。
夏のような日差しが、ギラギラ射してた」
食「なんか、『異邦人』みたいですね」
み「そう。
そんな雰囲気の日よ」
み「遊びに行ったときは、玄関から入らず、裏口から入るの」
↑これは、有楽町の飲み屋です
み「あ、言っとくけど……。
新潟の農家の敷地って、ものすげー広いからね。
叔父さんちも、敷地の中に、子供なら迷いそうな竹林があったから」
み「裏口って言うと、せせこましいイメージがあると思うけどさ。
そんなんじゃないのよ。
敷地の中、軽トラで走るからね」
み「裏口は、その軽トラの通り道に面してる。
そこに叔父さんがいてね……。
大きなタライの中を見てた」
み「挨拶しながら近づくと、叔父さんはニコニコしながら迎えてくれて……。
タライの中を指さした。
途端に、タライから水が跳ねたんだよ」
み「覗きこむと……。
キタナイ泥水みたいな中に、不気味な生き物が身をくねらせてた」
『お魚?』
『雷魚って云うんだよ』
『ライギョ?
買ってきたの?』
『ははは。
こんなもの、金出して買うバカはいないさ。
釣ったんだよ』
『阿賀野川で』
『鯉かと思ったら、とんだゲテモノだ』
『これ、飼うの?』
『飼うもんか。
食べるんだよ、今夜』
↑バンコクのスーパーに並ぶ雷魚くん
わたしが身をのけぞらせると、叔父は楽しそうに笑った。
あんな不気味な魚を食べるなんて、信じられなかった。
なんかさ、迷彩柄みたいな配色なんだよ。
ウロコは無くて、ヌルヌルしてる。
頭も口も大きい。
でも、ナマズみたいな愛嬌は無くて、ひたすら凶悪顔。
ウツボの系統だね。
『みきこも、食べていきなさい』
わたしは曖昧に笑いながら、ぜったい今日は早く帰らねばと思った。
その後、母屋に寄って、父が用事を済ませてる間、従姉妹と庭で遊んでた。
裏口とは別に、屋敷の前っかわにも大きな庭があるの。
土蔵の脇には、大人でも腕が回らないほどのタブノキが聳えてる。
↑香取五神社のタブノキ(滋賀県長浜市)
何十年前かの落雷で大枝が折れ……。
蔵の屋根瓦を壊したって話は、父からよく聞かされた。
雷魚のことは、すっかり忘れて遊んでたんだけど……。
縁側に出た父から、帰ることを告げられて思い出した。
雷魚を食べずに済んで、ほっとした。
帰るときも、裏口の脇を通った。
するとそこには叔父がしゃがみ込んで、水道の水で出刃包丁を洗ってた。
裏口を上がると、すぐ台所なのよ。
↑こんな立派な造りではありませんでしたが、板敷きでした。
『なんだ、食べていかないのか、これ』
叔父が突き出した包丁の先をたどると……。
まな板の上に、真っ白い肉が盛られてた。
↑本物の雷魚の肉です(こちら)
あんな黒い魚が、こんな白い肉の塊になることが……。
ちょっと信じられなかった。
でも、もちろん、食べる気になんかなれない。
曖昧な顔でいとまの挨拶しながら、父の手を引っ張るわたしに……。
叔父が手招きした。
『みきこ。
面白いもの見せてやる。
こっち来てごらん』
叔父が、タライの中を覗き込みながら、わたしを再度手招きする。
さっきまで、雷魚の泳いでたタライ。
雷魚料理も断ってることだし、あんまり断ってばかりじゃ悪いなって思った。
で、何の気なしにタライを覗いたわけ。
すると……。
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
律「ちょっと、何よ!
急に大声出して。
驚くじゃないの」
み「そう。
タライを覗きこんで、わたしもびっくり仰天よ。
マジで飛び退った」
律「何が入ってたのよ?」
み「だから、雷魚よ」
律「だって、料理されちゃったんでしょ?」
↑タイ料理(魚の“鯛”ではなく、国の“タイ”)
み「肉はね。
でも、頭と骨は残ってた」
律「捌いた残骸ってこと?」
み「違うのよ。
泳いでたの。
悠々と。
頭と骨だけの雷魚が」
律「ウソおっしゃい」
み「ホントだってば。
絶対アイツは……。
頭と骨だけにされたことに気づいてなかった」
食「確かに、雷魚の生命力はスゴいみたいですけど……」
↑それを食う人間は、もっとスゴい(雷魚の塩焼き・再びタイです)
食「にわかには信じがたい話ですね」
み「何でよ」
食「だって、骨だけで泳げるわけ無いじゃないですか。
骨は、筋肉が動かしてるんだから」
↑肝心要の“キン”肉が付いてないぞ。
み「わたしに、雷魚の事情はわからないわよ」
↑雷魚の蒸し焼き(当然のごとく……、タイです)
み「でも、この目に焼き付いてるんだもの。
真っ黒なでっかい頭と……。
そこに繋がる白い骨。
骨が、ゆらゆらと左右に揺らいでた」
律「もう。
気味悪い話、止めてくれない」
食「『白神鶏わっぱ』、吐きそうになりました」
み「吐くなよ!」
律「Mikiちゃんが悪いのよ」
み「思い出したものは、仕方ないでしょ」
律「どっから、こんな話になったのよ?」
み「コイツのせいだ」
食「ボクですか?」
み「チミが、バス釣りの話を持ちだしたんだろ」
↑ブラックバスの煮付け
食「はぁ。
でも……。
そっから、雷魚の話を始める人のほうが……」
↑雷魚の唐揚げ/やっぱり……、タイです
み「悪くない!
で?
八郎潟名物は、バス釣りしか無いの?」
み「あとは、地吹雪だけ?」
↑『雪国地吹雪体験ツアー(青森県五所川原市金木町)』
食「そんなわけ無いですよ。
珍しい温泉があります」