Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(40)
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食「野球場内に、ベースはいくつあるでしょう?」
野球場内に、ベースはいくつあるでしょう?

み「12個くらい」
12個くらい

食「なんでですか!
 4つでしょ」
4つでしょ

み「そんなわけあるかい。
 予備のヤツが、用具室に仕舞ってあるはずじゃ」
予備のヤツが、用具室に仕舞ってあるはずじゃ

み「前に、テレビのスポーツニュース見てたら……。
 判定に怒った監督が、ベース引っこ抜いて……」
判定に怒った監督が、ベース引っこ抜いて……

み「退場になると、ベース抱えたまんま帰っちゃったことがあったからな」
食「はいはい。
 質問が不正確でした。
 言い直します。
 グランド上に、ベースはいくつあるでしょう?」
グランド上に、ベースはいくつあるでしょう?

み「これ以上ボケると、話が進まんな」
これ以上ボケると、話が進まんな

食「自分でわかってるじゃないですか」
み「4つだね」
4つだね

み「あ、それで思い出したことがある」
食「またですか」
み「中学のときの体育の時間。
 女子の授業が、自習になったの」
女子の授業が、自習になったの

み「体育教師からは、ソフトボールの試合をやるようにという指示が出てた。
 で、平和にやってたわけなんだけど……」
で、平和にやってたわけなんだけど……

み「やがてそれは、ものスゴいシュールな試合となった」
律「どんな?」
み「1塁ベースに、ランナーが2人いたの」
1塁ベースに、ランナーが2人いたの

律「は?」
み「なぜそうなったかは、覚えてないけどね。
 しかも、ファーストを守ってる子は……。
 それがルールだと思ってたのか、片足をずっとベースに着けてるわけ。
 ランナーがそうしてたから、自分もそうしたのかも知れないけどね。
 つまりさ。
 ファーストベースに、3人が足着けて立ってるのよ」
ファーストベースに、3人が足着けて立ってるのよ

食「誰も、何にも言わなかったんですか?」
み「淡々とゲームは進みましたね」
淡々とゲームは進みましたね

食「で、どうなったんです?」
み「どうにもならないわよ。
 何の支障も無く、自習の体育は終了」
何の支障も無く、自習の体育は終了

食「支障、あったと思うけどなぁ」
み「顛末を覚えてないんだから……。
 何ごとも無かったのよ。
 何年か経ってからだもん。
 わたしも、あれが間違いだって気づいたのは」
食「はぁ。
 話を続けていいですか?」
み「何の話?」
食「球場の話です。
 ホームベースからの距離。
 レフトとライトより、なぜセンター方向が広いのか?」
レフトとライトより、なぜセンター方向が広いのか?

み「あぁ、それで……。
 球場施工管理技士の話になったのか」
球場施工管理技士の話になったのか

食「進めますよ。
 ホームベースからの距離で測るから……。
 イビツに思えるんです」
み「で、ベースが12個の話だったね」
食「4つです!
 一塁ベース、二塁ベース、三塁ベース、ホームベース。
 これらのベースは、正四角形の四隅に置かれています」
これらのベースは、正四角形の四隅に置かれています

食「すなわち、これらのベースを結んだ線が作るエリアが、内野ですね。
 ダイヤモンドとも呼ばれます。
 一辺の長さは……」
一辺の長さは……

食「知るわけないですよね?」
み「失敬な」
食「知ってるんですか?」
み「知らん」
食「いちいち反応してると、話がまたどこかに行っちゃうので……。
 淡々と進めます。
 一辺は、90フィートあります」
一辺は、90フィートあります

み「90フィートなんて云われても、わからんわい。
 尺に換算せよ」
尺に換算せよ

食「尺ですか!」
み「メートルでも良い」
食「メートルにします。
 27.431メートル」
27.431メートル

食「塁間はすべて同じ。
 ホームベースから一塁も、ホームベースから三塁も……。
 同じ、27.431メートルです」
み「わたしを、バカと思ってるだろ?」
わたしを、バカと思ってるだろ?

食「思ってませんよ。
 誤解の無いように、説明してるんです。
 それでは、ここで問題です」
それでは、ここで問題です

み「出たな」
食「ホームベースから二塁までは、何メートルでしょうか?」
ホームベースから二塁までは、何メートルでしょうか?

み「電卓使っていいの?」
食「お。
 わかったみたいですね。
 いいですよ」
み「あ。
 残念ながら、座席のカバンの中じゃ」
残念ながら、座席のカバンの中じゃ

食「じゃ、ボクの貸しますから。
 かっこいい電卓でしょ」
かっこいい電卓でしょ

み「何でポケットに電卓なんか入れてるんだ?」
食「いろいろ便利だからですよ。
 乗ってる列車のスピードとか、計算できて」
乗ってる列車のスピードとか、計算できて

み「どうやって?」
食「線路脇に距離標が設置されてますから……」
線路脇に距離標が設置されてますから

食「その間を何秒で通過するか測れば、スピードがわかるわけです」
み「何メートル間隔?」
食「距離標は、甲乙丙と、3種類あります。
 スピード測定に使うのは、一番短い丙号(↑の写真)ですね。
 これは、100メートル間隔に置かれてます。
 ちなみに、甲号が1キロ間隔。
 乙号は、500メートル間隔です」
左:甲号/右:乙号
↑左:甲号/右:乙号

み「どういう計算になるんだ?」
食「簡単ですよ。
 100を、かかった秒数で割れば、秒速が出ます。
 単位は、メートルですね」
み「台風じゃないんだから……」
台風じゃないんだから

み「秒速何メートルなんて数字がわかったて、仕方ないだろ」
『秒速5センチメートル』
↑アニメ『秒速5センチメートル』。ちなみにこれは、桜の花びらの落ちるスピードだそうです。

食「換算すればいいじゃないですか。
 時速に」
み「どうやって?」
食「少しは考えましょうよ」
少しは考えましょうよ

み「下手な考え……」
下手な考え……

み「あ、この例えはやめ」
食「何でヤメなんです?
 そのとおりじゃないですか?」
み「失敬なヤツだな」
食「こちらから、説明してよろしいですか?」
み「特に許す」
食「もう、一々反応しません。
 秒速を時速に換算するには……。
 3,600をかければいいわけです。
 1時間は、3,600秒ですからね。
 で、メートルをキロメートルに換算するために、それを1,000で割るんです。
 すなわち、秒速メートルから時速キロメートルの換算は……。
 3.6を掛ければいいってわけです」
秒速メートルから時速キロメートルの換算は、3.6を掛ければいい

食「電卓と時計の秒針があれば、列車の速度は一瞬でわかります」
電卓と時計の秒針があれば、列車の速度は一瞬でわかります

み「わかって、どうする?」
食「どうもしませんけど」
み「どうもしないのに、何で測るわけ?」
食「乗り物に乗ってるとき……。
 今、どのくらいのスピードが出てるか、知りたくなりませんか?」
どのくらいのスピードが出てるか、知りたくなりませんか?

み「別に。
 運転手さんに聞きに行けばいいじゃん」
運転手さんに聞きに行けばいいじゃん

食「運転席には、入れませんよ。
 話を進めていいですか。
 ほら、電卓使って下さいよ」
ほら、電卓使って下さいよ

み「よく見ると安物だなぁ」
食「必要にして十分です。
 わかりますか?
 ここ押すと、電源が入るんですよ」
み「わかっとるわい!
 人をアホみたいに言いおって」
人をアホみたいに言いおって

み「さっき言っただろ。
 会社では経理をやってるって」
会社では経理をやってるって

食「あ、そうでしたね。
 失礼しました」
み「ほんまに、失礼なヤツじゃ。
 それでは、計算してつかわす。
 ホームベースから、二塁までの距離だったな」
ホームベースから、二塁までの距離だったな

み「塁間は、何メートルだっけ?」
食「27.431メートルです」
27.431メートルです

み「よし。
 27.431×2=54.862メートル。
 簡単すぎて、電卓が泣いとるわ」
簡単すぎて、電卓が泣いとるわ
↑笑ってる

食「……。
 何で、2を掛けるんです?」
み「チミは、掛け算が苦手か?
 それじゃ、足し算にしてやろう。
 27.431+27.431=54.862メートル。
 おんなじになるじゃろ?」
食「何で、足すんです?
 ホームから二塁の、直線距離ですよ」
ホームから二塁の、直線距離ですよ

み「チミは、野球のルールを知らんのか?
 ファーストにランナーが2人いても気づかないクチだな。
 良いかね。
 バッターは、直接二塁に走っちゃいけないの。
 いくら急いでても……。
 かならず、一塁ベースを回ってこなきゃならんことになっとる」
かならず、一塁ベースを回ってこなきゃならんことになっとる

み「もちろん、いきなり三塁に走ってもイカンわけよ」
食「そんなことはわかってます!」
み「そんなら、二塁までの距離もわかるだろうが。
 すなわち、塁間×2だよ」
すなわち、塁間×2だよ

食「今は、そういう話じゃないでしょ」
み「どういう話よ?」
食「ルールの話じゃなくて!」
ルールの話じゃなくて!

み「チミは、ルール無用の悪党か?」
チミは、ルール無用の悪党か?

食「ランナーがどう走るかじゃなくて……。
 ボクは、ホームから二塁までの直線距離を問いたいわけです」
ホームから二塁までの直線距離を問いたいわけです

み「なぜじゃ」
食「なんか……。
 目眩がしてきました」
目眩がしてきました

み「乗り物酔いじゃないの?
 トラベルミン飲んだか?」
トラベルミン飲んだか?

食「乗り物酔いする“鉄”なんて、いません。
 そういう話じゃなくて!
 ホームから二塁までの直線距離をお答え下さい」
ホームから二塁までの直線距離をお答え下さい

み「そないに怒らいでも……。
 2倍じゃないわけよね?」
2倍じゃないわけよね?

食「違います」
み「じゃ、だいたい1.5倍。
 これで手を打たないか?」
これで手を打たないか?

食「大体じゃなくてですね。
 ちゃんと式から導き出してください」
クラマース・クローニッヒの関係式
↑「クラマース・クローニッヒの関係式」だそうです(対角線の出し方ではありません)

み「つまりチミは……。
 正方形の対角線の長さを問うておるのだな」
正方形の対角線の長さを問うておるのだな

食「わかってるじゃないですか」
み「もちろん、問いはわかっておるぞ。
 残念ながら、答えがわからんだけじゃ。
 四角形の対角線の求め方なんて習ったっけ?
 先生、知ってる?」
律「忘却の彼方ね」
忘却の彼方ね
↑佐渡ヶ島の尖閣湾にあります

み「ほー。
 てことは、一度は覚えたってことだね」
律「当たり前でしょ。
 理系なんだから」
理系なんだから

み「あ、そうか。
 わたし文系だから、習ってないんだ」
たし文系だから、習ってないんだ

食「これは、中学校で習う問題です」
これは、中学校で習う問題です
↑ほんまか?

み「えー。
 新潟じゃ、習わなかったぞ」
食「必ず習ってますって」
み「その日、休んだかも」
食「ピタゴラスの定理ですよ」
ピタゴラスの定理ですよ

み「おー。
 そのお名前は知ってる。
 何した人だっけ?」
読んだ気もするのだが、まったく覚えてない
↑読んだ気もするのだが、まったく覚えてない。

食「だから、ピタゴラスの定理を発見した人ですって。
 別名、三平方の定理」
三平方の定理

み「三平三平(みひらさんぺい・『釣りキチ三平』の本名です)の定理?」
三平三平(みひらさんぺい・『釣りキチ三平』の本名です)

食「わざとボケましたね」
み「わかる?」
食「字面がわからなきゃ、できない連想でしょ」
み「ま、そういう定理があるのは知ってるよ。
 中身は知らないけど」
中身は知らないけど

食「知らないんじゃなくて、忘れたんです」
知らないんじゃなくて、忘れたんです

食「質問は取り下げます。
 ボクの方で、一方的に進めさせてください」
み「許可する」
許可する

食「……。
 ありがとうございます。
 直裁に言うと……。
 直角三角形の斜辺の長さを“c”とし、その他の辺の長さを“a,b”としたとき……。
 “a2+b2=c2”なる関係が成立するという定理です」
a2+b2=c2

み「怒りを覚えるほど、わからん」
怒りを覚えるほど、わからん

食「二塁ベースとホームベースを直線で繋ぐと……。
 三角形が2つできますよね」
三角形が2つできますよね

食「この場合、四角形は正方形だから……。
 直角二等辺三角形になります。
 すなわち、直角を挟む2辺の長さは同じです。
 定理の証明は省いて、結論だけ言いますね。
 辺の長さの比は、『1:1:√2』」
1:1:√2

食「最後の√2が、斜辺、すなわち対角線の長さになります」
み「それで?」
食「それでって……。
 これでお分かりでしょ?」
み「お分かりにならない」
食「つまり……。
 正方形の1辺の長さ×√2ってことですよ」
正方形の1辺の長さ×√2

食「もう、電卓で計算できるでしょ」
み「ふーむ。
 √キーを使うのは、生まれて初めてかも」
√キーを使うのは、生まれて初めてかも

み「じゃ、いくぞ。
 塁間は何メートルだっけ?」
食「27.431メートルです」
27.431メートルです

み「よし。
 [27.431][*][√][2][=]。
 答えは……。
 なんだ、やっぱり54.862になるじゃんか」
食「そんな順番で押したらダメですよ。
 [√]が無視されちゃって、単なる[*][2]になったんです。
 こういう順番で押すんです。
 [27.431][*][2][√][=]。
 ほら。
 38.793」
み「何でそんな順番で押すんだよ。
 √2なのに、[2][√]って押すなんて、納得できん」
納得できん

食「√2がいくつなのか覚えてれば、√キーを使わなくても計算できます」
み「あ、それ思い出したかも。
 えーっと。
 『富士山麓にオウム啼く』」
富士山麓にオウム啼く

み「そんなとこで、オウムが啼くかい!」
そんなとこで、オウムが啼くかい!

食「それは、√5です」
それは、√5です

み「そうだっけ?
 それじゃ……。
 『一富士二鷹三茄子』」
一富士二鷹三茄子

食「違います!」
み「惜しい?」
惜しい?

食「5万光年離れてます」
5万光年離れてます

み「くっそー。
 なんだっけ?」
食「♪人世人世に人見ごろ」
み「なんじゃ、そのおかしな節は?」
食「知りませんか?
 『受験生ブルース』」


食「有名ですよ。
 ♪富士山麓にオウム啼く」
富士山麓にオウム啼く

み「♪一富士二鷹三茄子」
一富士二鷹三茄子

食「違います!
 ♪サインコサイン何になる♪
 ♪おいらにゃおいらの夢がある♪」
おいらにゃおいらの夢がある

み「いつごろの歌なの?」
食「1968年です」
1969
↑1年違いですが

み「ぜんぜん年代が合わないじゃないか」
食「オヤジに聞いたんですよ。
 でも、この歌を覚えとけば……。
 少なくとも、√2と√5だけは暗記できますよ」
√2と√5

み「そんなもん覚えたって、役にたたんだろ」
食「√5は、まず日常で使う用事は無いでしょうね」
√5は、まず日常で使う用事は無いでしょうね

食「でも、√2は、覚えといて損はないです。
 実際、今、使えるじゃないですか」
み「何で、√2から√5に飛ぶんだ?
 √3は?」
食「『人並みにおごれや』」
√3

み「なんで歌詞に入ってないわけ?」
なんで歌詞に入ってないわけ?

食「音数が合わないからでしょ」
み「√4は?」
食「√4は、2じゃないですか。
 2×2=4」
み「√4は、覚えなくてもいいわけね」
食「九九の世界でしょ」
九九の世界でしょ

食「とにかく!
 今は、√2が問題なんです」
み「イトヨイトヨに糸見ごろ、だっけ?」
食「違います。
 だいたい何のたとえですか、それ」
み「イトヨ釣りの極意じゃ」
イトヨ釣りの極意じゃ

食「『人世人世に人見ごろ』。
 つまり、1.41421356ですよ。
 ほら、掛けて下さい」
み「すでに座っておる」
すでに座っておる

食「席に掛けるんじゃなくて!
 塁間に掛けるんです!」
み「塁間って、何メートル?」
食「27.431!」
27.431!

み「[27.431][*]……。
 イトヨ……」
イトヨ……

食「人世!
 1.41421356!
 ほら、早くキー押して。
 忘れるじゃないですか」
忘れるじゃないですか

み「人をバカだと思ってるだろ。
 失敬な。
 [1.41421356][=]。
 おー、出た。
 38.79329216436」
食「おわかりでしょ?」
み「何が?」
食「だから、ホームベースから一三塁は、何メートルでした?」
ホームベースから一三塁は、何メートルでした?

み「イトヨイトヨに……」
イトヨイトヨに……

食「違います。
 27.431メートル。
 で、ほら、電卓の答えは……。
 38.793メートル」
38.793メートル

み「さっきまでの電卓と違う気がするが」
食「気のせいです!」
気のせいです!

み「液晶のフォントも、違う気がするが」
食「枝葉末節にこだわらない!」
枝葉末節にこだわらない!

食「いいですか。
 ここから、27.431メートルを引きますよ。
 ほら。
 その差は、11.362メートルもあるわけです」
み「それで、わたしに何が言いたいの?」
それで、わたしに何が言いたいの?

食「スタンドまでの距離の話でしょ。
 ライト、レフト方向より……。
 センターが広がってたわけでしょ」
センターが広がってたわけでしょ

食「もし、外野スタンド全体が、ホームベースから等距離だったら……。
 外野のセンター部分が狭くなっちゃうんですよ」
み「それで、何か不都合でも?」
それで、何か不都合でも?

食「センターの守備範囲が狭くなっちゃいます」
センターの守備範囲が狭くなっちゃいます

み「いいじゃん。
 楽になって」
食「それは、センターの言い分でしょ。
 とにかく、わかりましたよね?」
わかりましたよね?

み「球場の両翼とセンターでは、どのくらい距離が違うの?」
食「基本的に……。
 両翼が100メートル、センターが120メートルくらいですかね」
両翼が100メートル、センターが120メートルくらいですかね

み「おかしいじゃん」
食「何がです?」
み「ベースの距離の差は、11メートルくらいだっただろ?」
食「いやなことだけ覚えてますね」
み「うやむやにしようとしても、そうはいかん。
 何でスタンドまでが、20メートルの差になるんだ?」
何でスタンドまでが、20メートルの差になるんだ

食「ま、それはきっとあれですよ。
 センターは、両脇にライトとレフトが守ってるから……。
 横方向の守備は、助けてもらえる」
横方向の守備は、助けてもらえる

食「でも、ライトとレフトは、片側には誰もいませんからね」
ライトとレフトは、片側には誰もいませんからね

食「ということで、その分、センターは奥行きが深くなってる」
その分、センターは奥行きが深くなってる

み「ほんまかー。
 後で調べるぞ」
食「すいません。
 今、思いつきました」
み「ほれ、見ろ。
 まぁ、いい。
 でもそれって、守備側の理屈でしょ。
 バッターにとってみれば……。
 センターのスタンドまでの距離が、20メートルも遠いことには変わりないわけだ」
センターのスタンドまでの距離が、20メートルも遠いことには変わりないわけだ

食「ですね」
み「そんならやっぱり……。
 ホームランの打ちこまれた場所によって、点数を変えるべきじゃないのか?
 コリントゲームは、入るポケットによって、点数が違うぞ」
コリントゲームは、入るポケットによって、点数が違うぞ

食「野球は、コリントゲームとは違います」
野球は、コリントゲームとは違います
↑似てるけど

食「あ、そうそう。
 バックスクリーンへのホームランと云えば……」
み「話題を変えおったな」
食「有名な出来事があります。
 バックスクリーン、3連発です」
バックスクリーン、3連発です

み「高校野球で?」
食「日本のプロ野球ですよ。
 昭和60年だから……。
 1985年ですね」
1985年ですね

み「新潟南の翌年だね」
食「阪神対巨人、伝統の一戦です」
阪神対巨人、伝統の一戦です

食「開幕直後の4月17日のことでした。
 阪神のクリーンアップ。
 バース、掛布、岡田の3人が……」
バース、掛布、岡田の3人が……

食「3者連続して、バックスクリーンにホームランを打ちこんだんです」

↑実況中継

み「珍しいわけ?」
食「もちろんですよ。
 その後は、出てないはずです」
み「ピッチャーがヘボなんじゃないの?」
ピッチャーがヘボなんじゃないの?

食「とんでもない。
 後のジャイアンツのエースですよ」
み「わかった!
 皆まで言うな。
 星飛雄馬だな」
星飛雄馬だな
↑いちいち泣くな!

食「違います!
 当時、入団4年目の槙原……」
み「敬之(のりゆき)か?」
敬之(のりゆき)か?

食「……言うと思った。
 槙原寛己(ひろみ)ですよ」
槙原寛己(ひろみ)ですよ

食「後に、完全試合も達成してます」
後に、完全試合も達成してます

み「ふーん。
 ところで、クリーンアップってなに?」
食「またですか……。
 打順の3番、4番、5番を、クリーンアップって云うんです」
み「その心は?」
食「塁上のランナーを掃除する役目だからです」
塁上のランナーを掃除する役目だからです

み「ほー。
 掃除屋ってこと。
 アメリカ人は、そういうとこ洒落てるよね」
食「ですね。
 もっともアメリカでは……。
 4番打者だけを、そう呼ぶみたいですけど。
 あ、そうそう。
 三連発の口火を切ったバースですが……」
三連発の口火を切ったバースですが……

食「綴りで書くと、“Bass”です」
綴りで書くと、“Bass”です

食「当然、その発音は、“バス”になります。
 では、ここで問題です」
では、ここで問題です

み「突然来たな。
 油断ならんヤツ」
油断ならんヤツ

食「日本での登録名が、なぜ“バス”では無く、“バース”になったのでしょう?」
律「あ、わたしわかった」
あ、わたしわかった

み「実に久しぶりに発言したな。
 いるの忘れてたぜ」
律「うちの先生で、熱烈な阪神ファンがいるのよ」
うちの先生で、熱烈な阪神ファンがいるのよ

律「優勝した時の話も、よく聞かされるわ。
 はっきり言って、迷惑だけど」
はっきり言って、迷惑だけど

食「はは。
 お気の毒に」
律「その先生が、飲み会で酔っ払うと、必ず阪神の応援歌を歌うの」
食「『六甲おろし』ですね」
『六甲おろし』ですね

律「それそれ。
 それがまた、いい声なのよ。
 ハリがあって。
 で、その先生が歌いだすと……。
 巨人ファンの先生が、対抗し始めるわけ」
巨人ファンの先生が、対抗し始めるわけ

み「大丈夫か、その病院?」
大丈夫か、その病院?

律「巨人の応援歌って、何て云うんだっけ?」
み「『雷おろし』」
『雷おろし』

律「何でよ?」
み「『六甲おろし』に対抗して……。
 東京名物『雷おこし』をもじった」
東京名物『雷おこし』をもじった

律「ぜんぜん面白くない」
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