Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(38)
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律「そう言えばさ……」
み「何よ!」
何よ!

律「殺気立たないでよ」
み「すでに、とば口なの。
 顔が覗いてるかも知れないの」
顔が覗いてるかも知れないの

律「キタナイ人ね。
 あのさ。
 今見たら……。
 ここって、3号車じゃない」
み「当たり前でしょ。
 4号車の隣なんだから」
律「普通、先頭車両が1号車なんじゃない?」
み「都合があったんじゃないの」
律「どんな都合?」
み「JRの都合よ。
 わたしに聞かないで!」
律「もう。
 余裕が無いんだから」
余裕が無いんだから
↑こんな状態

律「諦めて漏らしたら?」
諦めて漏らしたら?

み「こんなとこで漏らしたら……。
 自我が崩壊するわい」
自我が崩壊するわい

律「あ、ほら。
 あれって、セリオンでしょ」
あれって、セリオンでしょ

み「昨日のことなのに……。
 とっても懐かしい気がするのは、ナゼ?
 ほら、見なさいってば」
律「トイレの帰りに見る」
み「通り過ぎちゃうでしょ」

 3号車を、ほとんど駆け足で通り抜けます。
 しかし……。

み「な、なんじゃこりゃー」
な、なんじゃこりゃー

 4号車ではトイレだった場所には、広々とした空間が……。
4号車ではトイレだった場所には、広々とした空間が

み「わたしのトイレが無い!」
わたしのトイレが無い!

律「あんたのじゃないでしょ」
み「何で無いの?」
律「都合じゃないの。
 JRの。
 諦めて、ここでする?
 新聞紙敷いてもらって」
新聞紙敷いてもらって

み「人ごとだと思って!
 クソったれ女!」
律「それは、あなたです」
それは、あなたです

み「まだ垂れてないわい!
 次行くぞ、次」
律「何だか、飲み屋のハシゴみたいね」
何だか、飲み屋のハシゴみたいね

 3号車を、風のように通りすぎ……。
 2号車へ。
2号車へ

律「何、この車両?
 寝台列車みたい」
寝台列車みたい

律「うそ。
 めちゃめちゃ素敵じゃない」
めちゃめちゃ素敵じゃない

律「ほら、あそこなんか、足投げ出してくつろいでる」
あそこなんか、足投げ出してくつろいでる

律「この席、高いの?」
み「料金はおんなじよ。
 指定席券、510円」
指定席券、510円

律「どうしてここにしなかったのよ?」
み「2人で予約したら……。
 もう2人の組と、相席になっちゃうでしょ」
律「あ、そうか。
 それじゃ、足も伸ばせないわね。
 4人組だったら、ぜったいここだわ」
シートは2人掛けですが、大人3人が余裕で座れます
↑シートは2人掛けですが、大人3人が余裕で座れます。

律「ほら、ああやって、座席をスライドさせるんだ」
ああやって、座席をスライドさせるんだ

律「ちょっと、そんなに急がないでよ。
 なんか、歩き方がヘンなんですけど。
 競歩の選手みたい」
競歩の選手みたい

律「今なら、オリンピック代表になれるかもよ」
み「うるさい!
 な、無い……。
 トイレが無い!」
トイレが無い!

律「ほんとだ。
 4号車にしか無いんじゃない?」
み「そんなわけないでしょ!」
律「非電化だから?」
非電化だから?

み「トイレと関係ないだろ!」
律「重くなると、走れないとか?」
重くなると、走れないとか?

み「重さなんて、変わるかい!
 体の中にあるか、外に出るかの違いじゃない!」

 2号車を抜け、1号車の扉を開けます。
2号車を抜け、1号車の扉を開けます

み「あ、あったぁ」
律「ほんとだ。
 ざ~んねん。
 空いてるわね」
み「くそ!
 後で言い返してやる」
律「わたし、一番後ろまで探検してくるから」

 マジで余裕がありません。
 ここが空いてなかったらと思うと……。
 身の細る思いです。
身の細る思いです

 トイレに飛びこみ、便器のフタを開けるのももどかしく……。
 腰を下ろします。
 あ、もちろん、ちゃんとパンツも下ろしました。
 ここまで来てるのに、最後の最後でパンツを下ろし忘れたりしたら……。
 死んでも死にきれません。

 ばっふ~ん。


 お下品ですみませんが、ほんとにこんな音でした。
 思わず、股ぐらから覗いてしまいます。

「う~む。
 今日も元気だ、うんこが太い」
今日も元気だ、うんこが太い

 ようやく人心地つき……。
 あたりを見回すと……。
 どひゃー。
 ここって、ほんとに列車のトイレなの?
ここって、ほんとに列車のトイレなの?

 ホテルより立派なんじゃない?

 わたしが、最後に列車のトイレを使ったのは……。
 いったい、いつだったでしょうか。
 東京に住んでたころは……。
 当然、新潟への帰省がありました。
 でも、新幹線で2時間なので……。
新幹線で2時間なので……

 トイレに行きたくなることもありませんでした(ただ一度を除く・214回のコメント参照)。
 帰省時期の車内は混むので、乗る前に済ませておきますからね。
 帰省で使ったことが無いとすると……。
 ひょっとしたら、修学旅行まで遡るかも知れません。
修学旅行まで遡るかも知れません

 わたしの記憶にある列車のトイレは……。
 『由美美弥』の「高原列車」で書いたようなタイプ。
 和式便器です。
 それも、陶器ではありません。
 “いぶし銀”のような風合いの金属製。
“いぶし銀”のような風合いの金属製

 踏段式になっていて……。
 一段上がったところに、便器がある。
 男性は、段の下に立って用を足し……。
 女性および男性の大は、段の上にあがってしゃがむわけ。
女性および男性の大は、段の上にあがってしゃがむわけ

 その体勢だと……。
 列車が揺れると、バランスを崩す恐れがあります。
 てことで、前方の壁に、手すりが付いてたと思います(↑の画像を見ると、ちゃんとありますね)。
 手すりを掴んだスタイルは、まるで競馬の騎手です。
まるで競馬の騎手です

 個室の中とは云え、お尻丸出しでそんな格好をすることには……。
 哀歓を禁じ得なかった覚えがあります。

 今どきの列車では、和式はもう無いんでしょうかね?
 としたら、「由美美弥」の『高原列車』の章は、問題ありだよな。
『高原列車』の章は、問題ありだよな

 しかし……。
 なんであの便器、金属製である必要があるんだろう?
 陶器だと、振動で割れるのかね?

 さてさて。
 大仕事も済みました。
 すっきりした顔で、トイレを出ます。
 幸い、外で待ってる人もいませんでした。
外で待ってる人もいませんでした

 あの、爆弾が落ちたような音は……。
爆弾が落ちたような音は……

 誰にも聞かれずにすんだってことね。

 しかし……。
 先生の姿も見えません。
 1号車の中を覗いてみます。
 通路の彼方に、車両後方の景色が見えます。
通路の彼方に、車両後方の景色が見えます

 わたしたちの乗る4号車と同じく……。
 運転席の後方が、展望スペースになってるようです。
 でも、後ろ向きの景色を見る物好きはいないようで……。
 誰の姿もありません。

み「どこ行ったんだ、あのオナゴ」

 車両をひとつずつ、前方にさかのぼります。
 先頭の4号車まで戻りましたが……。
先頭の4号車まで戻りましたが……

 座席にも、頭が見えません。
座席にも、頭が見えません

 と、思ったら……。
 いた、いた。
 展望スペースです。
 最前列の特等席には、まさしく先生の後ろ姿。
最前列の特等席には、まさしく先生の後ろ姿

 しかし、隣にもうひとり座ってます。
 そのシルエットは……。
 まさしく!
 食い鉄オトコ。
 先生に向かって、しきりに何か説明しとる様子。
 まさか、“すいとー”をかましてるんじゃあるまいな?
“すいとー”をかましてるんじゃあるまいな?

 後ろから、摺り足で近づきます。
 もちろん、会話を傍受するつもり。
もちろん、会話を傍受するつもり

律「Mikiちゃん。
 見えてるわよ」
み「げ!
 何で?」
律「前のガラスに映ってるもの」
前のガラスに映ってるもの

み「ありゃ」
律「ほら、見てご覧なさい。
 いい景色よ」

↑前面展望(秋田駅→追分駅)

み「どこが。
 海も見えないし、フツーの住宅街じゃないの」
律「旅先で見る景色って、やっぱり違うわ」
食「ですよね。
 どんなにありふれた景色でも……。
 新鮮に見えて、わくわくします。
 だから、止められないんです。
 旅って」
だから、止められないんです、旅って

律「わかりますわ」
み「仲がおよろしいようで。
 わっちは、お邪魔でゲスか?」
律「バカなこと言わないの。
 Mikiちゃんも、ここに座ってみなさいよ」
ここに座ってみなさいよ

み「2人で満員じゃないか。
 1.5人前がいるから」
食「どうぞ、前へ。
 ボクは後ろでも見えますから」
み「おー、すまんのぅ。
 あ、あのさ」
食「なんです?」
み「わたしが今まで、どこ行ってたと思う?」
食「え?
 どこって……」
み「まさか……。
 トイレだなんて、思ってないよな?」
トイレだなんて、思ってないよな?

食「違うんですか?」
み「違わい。
 こんな長い時間のトイレなら……。
 うんこになっちまうだろ」
うんこになっちまうだろ

食「じゃ、何してたんです?」
み「ちょっと、列車を探検してたの」
食「4両しか無いのに……。
 ずいぶん、時間かかりましたね」
み「やっぱり、トイレだと思ってるな?
 時間がかかったのは……。
 ファンにサインしておったからじゃ」
ファンにサインしておったからじゃ
↑本人は、もっとスマートです。

食「は?
 あなた、芸能人かなんか?」
み「作家じゃ」
作家じゃ

食「へー。
 お見それしました。
 すみませんが……。
 あまり、マスコミを通しては見かけませんよね」
み「一度も出ない」
食「嫌いなんですか?」
み「まぁな。
 そういうオファーは、この秘書に断らせてる」
そういうオファーは、この秘書に断らせてる

み「残念ながら、準6級の秘書だが」
律「誰が秘書よ」
食「作家に、お医者さんの秘書がいるわけないでしょ」
み「実は……。
 主治医兼付き人じゃ」
主治医兼付き人じゃ

食「どうして主治医が、産婦人科医なんです?」
どうして主治医が、産婦人科医なんです?

み「旅先では、どんな出会いが待ってるかわからんじゃろ」
旅先では、どんな出会いが待ってるかわからんじゃろ

食「旅先で、どうにかなったって……。
 産婦人科医の出番は早すぎでしょ」
産婦人科医の出番は早すぎでしょ

律「バカなことばっかり言って。
 そうそう、隣の3号車のスペース」
そうそう、隣の3号車のスペース

律「何のためにあるか、教えてもらったわよ」
み「予算が足りなくて、トイレを作れなかったんじゃないの?」
律「そんなわけないでしょ。
 それなら、普通の座席にすればいいだけじゃない」
み「あ、わかった。
 あそこは、フェリーで云う“2等船室”なんだよ」
あそこは、フェリーで云う“2等船室”なんだよ

み「指定席券を買えない人が、ゴザを敷いて座るスペース」
指定席券を買えない人が、ゴザを敷いて座るスペース

律「どうしてそう、バカなことばっかり思いつくのかしら」
食「指定席券は、510円ですよ」
指定席券は、510円ですよ

み「その510円が、どうしても払えない人が……」
食「そんなら、指定席料金の要らない普通列車に乗ればいいじゃないですか。
 そもそも、『リゾートしらかみ』には、指定席しかありません」
み「じゃ、なんなんだよ?」
律「あそこはね、イベントスペースなんだって」
イベントスペースなんだって

み「イベントって……。
 出し物?」
イベントって……

律「そう」
み「どんな出し物?」
どんな出し物?

律「そこまで教えてくださらないのよ」
食「後のお楽しみと云うことで」
み「お楽しみねー。
 わかった!
 ストリップだな」
ストリップだな

食「なわけ無いでしょ」
み「でも、あんな狭いスペースに乗客が集まったら、大混雑じゃないの?」
パキスタンの満員列車
↑パキスタンの満員列車(実写です。中に乗ってる人は、途中下車不可能ですね)

律「ほら、座席の前の方に、モニターがあったじゃない」
座席の前の方に、モニターがあったじゃない

律「あれでも見れるんだって」
み「ストリップが?」
ストリップが?

食「だから、違いますって」

 そうこうするうち、われらが『くまげら』は……。
 最初の駅に停車しました。
 時間は、8:35。
 秋田駅を発車してから、まだ11分しか経ってないんですね。
 そんなわきゃねーだろ、と、わたしも思いますが……。
 作者の都合により、時間の流れは自在に伸縮することになります。

み「何て駅?」
食「車内放送、聞いてなかったんですか?」
み「サインに忙しくての」
食「『追分』です」
『追分』です

み「“おいわけ”って、民謡に出てくる“追分”?」
民謡に出てくる“追分”?

食「そうです」
み「全国的にありがちな名前だね」
食「駅名として有名なところでは、やっぱり信濃追分でしょうね」
信濃追分

律「軽井沢のあたりでしょ」
み「そうそう」
軽井沢のあたりでしょ

食「軽井沢駅に接続する『しなの鉄道』の駅です」
軽井沢駅に接続する『しなの鉄道』の駅

食「軽井沢からは、2つめですね」
み「JRじゃないんだ」
食「元は、JRの信越本線の駅だったんですよ」
元は、JRの信越本線の駅だったんですよ

み「JRから、『しなの鉄道』に変わったわけ?」
食「そうです」
み「赤字で切り離されたの?」
赤字で切り離されたの?

食「いいえ。
 だって、信越“本線”ですよ。
 盲腸線とは違います」
盲腸線とは違います

み「じゃ、何で切り離されたわけ?」
食「北陸新幹線……。
 現在は、事実上、長野新幹線ですけど……」
現在は、事実上、長野新幹線ですけど……

食「その開業に伴って……。
 並行在来線が、JRから切り離されたんです。
 で、第三セクターの『しなの鉄道』に経営移管されたわけ」
第三セクターの『しなの鉄道』に経営移管されたわけ

み「なるほど」
食「並行在来線経営分離の最初の例です」
み「北陸新幹線が、この先伸びると……」
北陸新幹線が、この先伸びると……

み「新潟県でも、並行在来線が分離されるみたいだね」
食「ですね。
 さて、ここで問題です」
さて、ここで問題です

み「また出た」
食「JR時代、『信濃追分』は、特急が通る一番高い駅といて知られてました。
 さて、標高は何メートルだったでしょう?」
み「5千メートル」
5千メートル

律「そんなわけ無いでしょ。
 富士山より高いじゃないの」
富士山より高いじゃないの

み「じゃ、634メートル」
食「スカイツリーじゃないですか」
新潟県にある弥彦山
↑新潟県にある弥彦山。標高なんと、634メートル。こちらも、テレビの送信所になってます。

食「正解は出そうもないですね。
 答えは、955メートルです」
み「だと思った」
律「ウソおっしゃい」
食「『しなの鉄道』になってからは、特急が通らなくなっちゃいましたけど……。
 今は、JR以外の普通鉄道では最も標高の高い駅、という肩書きに変わりました。
 それでは、再びここで問題です」
み「またかよ」
食「JRで最も標高の高い駅はどこでしょう?」
み「パソがあれば、すぐに検索できるんだが」
パソがあれば、すぐに検索できるんだが

食「カンニングはダメです」
カンニングはダメです

み「富士山頂駅」
富士山頂

律「そんなとこに、駅があるわけないでしょ」
み「あるじゃないか」
富士山頂駅

律「え!」
み「実は、こうでした」
実は、こうでした

律「なんだ」
食「正解は、小海線の『野辺山駅』です。
 標高、1,345.67mメートル」
小海線の『野辺山駅』

律「よく、そんな細かい数字まで覚えていられますね」
食「これは簡単ですよ。
 2が抜けてるだけで、あとは昇順の並びですから」
み「それで、コンマ以下の“67”まで、わざわざ付けるわけか」
食「そうそう」
み「野辺山って、おんなじ長野?」
食「そうです。
 山梨県に近いですけどね」
山梨県に近いですけどね

み「あぁ、そっちか。
 八ヶ岳の方だね」
八ヶ岳の方だね

食「そうです」
み「ヤツガタ系って人たちがいるの、知ってる?」
律「知らない。
 何よそれ?」
み「八ヶ岳の麓に住み着く人たち。
 知識人系統。
 ほら、『趣味の園芸』で司会やってた、柳生真吾っているでしょ?」
『趣味の園芸』で司会やってた、柳生真吾っているでしょ?

律「知らない」
み「ほんと、話の通じない人ね」
律「あ、思い出した。
 お笑いの人でしょ。
 歯の出てる」
み「それは、柳沢慎吾!」
それは、柳沢慎吾!

食「ボク、知ってます。
 俳優の柳生博さんの息子ですよね」
俳優の柳生博さんの息子ですよね

み「そうそう。
 あの一家が、八ヶ岳に住んでるの。
 で、ああいうタイプの人たちを……。
 ヤツガタ系って云うわけ」
ヤツガタ系って云うわけ

律「へー。
 初めて聞いた」
み「話は戻るけど……。
 『信濃追分』って歌は無いんだっけ?」
信濃追分駅
↑信濃追分駅

食「そのまんまの題名では、無いはずです。
 “追分馬子唄”ですね」
み「『江差追分』は、あるよな」
『江差追分』は、あるよな

食「追分節では、一番有名でしょうね」
み「『江差追分』って駅はあるの?」
食「ありません。
 江差駅です」
江差駅です
↑言っちゃなんだが、風情なさすぎ

み「何で?」
食「そもそも江差に、道路の分かれ道である“追分”は無いからです」
み「は?」
食「あるのは歌だけです。
 『信濃追分』の馬子唄が……」
『信濃追分』の馬子唄が……

食「北前船の船頭たちによって伝わったのが……」
北前船の船頭たちによって伝わったのが……

食「『江差追分』いうことです」
み「おぉ。
 ここでも北前船か。
 ひょっとしたら、弥助くんも聞いてたかも知れないね」
弥助くんも聞いてたかも知れないね

律「そうよね」
食「誰です、それ?」
み「きのう、知り合った友だち。
 なるほど。
 追分節のルーツは、『信濃追分』ってわけか。
 でも、『信濃追分』って、ほんと、いい名前だよね」
信濃追分『分去れ(わかされ)の碑』
↑信濃追分『分去れ(わかされ)の碑』。右が、越後に通じる北国街道。左が、京に向かう中山道。

食「旅情がそそられますよね。
 でも、一時期、『信濃追分』という駅名が変えられそうになったんですよ」
み「どうして?」
食「別荘分譲のためですよ」
別荘分譲のためですよ

食「不動産屋が画策して、『西軽井沢』にしようとしたんです」
み「とんでもねー話だ」
食「結局、地元住民や別荘住民の反対で実現されませんでした」
み「良識の勝利だね。
 でも、確か『沓掛』は変えられちゃったんだよね」
木曾街道六拾九次『沓掛』
↑木曾街道六拾九次『沓掛』(渓斎英泉画)

食「ですね。
 『中軽井沢』になっちゃいました」
『中軽井沢』になっちゃいました

み「どのあたりの駅?」
食「『信濃追分』の隣ですよ。
 ひとつ『軽井沢』寄り。
 って言うか……。
 『軽井沢』から、一駅目です」
『軽井沢』から、一駅目です

み「なるほど。
 それじゃ、別荘地だわ。
 いつごろ?」
食「昭和31年ですね」
昭和31年ですね

み「案外早いね。
 終戦から10年じゃない」
終戦から10年じゃない

み「そんなころ、別荘持てる人なんかいたの?」
食「朝鮮戦争の特需がありましたからね」
米軍戦車の修理工場(東京・昭和25年)
↑米軍戦車の修理工場(東京・昭和25年)

食「あれで儲けた人が、別荘持ったんじゃないかな」
ホステス600人の大キャバレー出現(大阪・昭和26年)
↑ホステス600人の大キャバレー出現(大阪・昭和26年)

み「なるほど。
 戦争景気か。
 でも、もったいないよなぁ。
 『沓掛』なんて、いい名前だったのに。
 知らない?
 歌にあるでしょ。
 『沓掛時次郎』」
沓掛時次郎

律「誰?」
み「誰って……。
 渡世人よ。
 股旅物」
律「ネコが好きな?」
ネコが好きな?

み「違うにゃ!
 縞の合羽に三度笠!」
縞の合羽に三度笠

律「あぁ、わかった。
 氷川きよしの歌ね」
氷川きよしの歌ね

み「違う!」
律「えー、違わないわよ」
み「氷川きよしは、あれよ。
 ほら。
 なんとか音次郎」
律「オペッケペーの?」
み「そう!
 川上音二郎」
川上音二郎

み「違う!
 すっとぼけた顔で、かましおって……。
 でも先生、何でそんなことだけ知ってんのよ?」
律「それは……。
 謎ね。
 たぶん、筆が滑ったんじゃないの?
 ところで、誰の歌よ?」
食「橋幸夫じゃないですか?」
橋幸夫じゃないですか?

み「あ、あり得る。
 潮来の伊太郎の流れだね」
潮来の伊太郎の流れだね

み「でも、ほんともったいないよ。
 軽井沢を出て、『沓掛』、『信濃追分』」
軽井沢を出て、『沓掛』、『信濃追分』

み「すっげー、気分出るじゃん。
 時代劇に入ってくみたいなさ」
時代劇に入ってくみたいなさ

食「それは、ありますね」
み「だろー。
 わたし、東京で地下鉄の日比谷線に初めて乗ったとき……。
 感動したもの」
律「何によ?」
み「駅名よ。
 『小伝馬町』、『人形町』、『茅場町』、『八丁堀』って続くの」
『小伝馬町』、『人形町』、『茅場町』、『八丁堀』

み「地上に出たら、銭形平次がいそうだよね」
地上に出たら、銭形平次がいそうだよね

律「地下鉄に乗ってたら面白いんじゃない?」
「地下鉄に乗ってたら面白いんじゃない?

み「隣に座ってたりしてね。
 で……。
 スリを見つけたけど、銭を投げられない」
スリを見つけたけど、銭を投げられない

律「何で?」
み「切符買うのに、小銭使っちゃったから」
切符買うのに、小銭使っちゃったから

み「って……。
 また脱線だな」
また脱線だな

律「電車に乗ってて、その比喩は禁句でしょ」
み「これは電車じゃありません。
 ディーゼル車です」
ディーゼル車です

み「ま、いいか。
 でもさ。
 よく国鉄が、『信濃追分』なんて、洒落た名前を付けたもんだね。
 いつごろ?」
食「大正12年です。
 でも、『信濃追分』って名前になったのは……。
 この奥羽本線の『追分』駅のおかげなんですよ」
み「どういうこと?」
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