2012.3.3(土)
み「でも、そんな時期に、雪なんて……。
あっ。
魚沼なら残ってる!」
老「その通り。
春先の強い陽の光と……。
まっさらな深い雪。
この2つがそろってなければ、『雪晒し』は出来ないんじゃ」

み「確かに、その2つの条件を満たせるのは……。
魚沼みたいな地域しか無いだろうね。
でも、そもそも何のために『雪晒し』は行われるわけ?」

老「一言で云えば、布の漂白じゃな。
黄ばみが抜け、染料の色が鮮やかに浮かび上がる」

み「どういうカラクリよ?」
老「陽の光により……。
表層の雪が溶け、水蒸気となる。
日光と雪からの反射光、両方向からの強い紫外線を受けると……。
水蒸気中の酸素分子(O2)が、酸素原子(O)に分解される。
この酸素原子(O)が、酸素分子(O2)と結合すると……。
オゾン(O3)に変化するわけじゃ」

老「このオゾンに、漂白効果があるんじゃな」

↑の仕組み解説は、付け焼刃かつ理系素養ゼロのため、大いに怪しいです。
きっとハーレクインさんが、補足訂正してくださるでしょう。
でも、『オゾン漂白協会』なるものまで存在してますから……。
ちゃんと証明された効果だと思います。
み「へー。
昔の人って、そんなことまでわかってたんだ」
老「ま、理屈はわからなくても……。
効果は理解してたじゃろ」
み「でも、3月の『雪晒し』。
ほんとに嬉しいだろうね。
雪に閉ざされた長い長い冬が終わって……。
さんさんと陽光が降り注ぐ。
その光の中で……。
一冬かけて織りあげた反物を、雪に晒す」

律「なんか、わかるわ」
み「春の喜びは、新潟市民にだってあるけどさ。
新潟市あたりじゃ、3月に雪なんか無いからね。
残ってたとしても、汚ねーし。
『雪晒し』なんて、とーてームリ」
律「なんで汚いの?」
み「雪の解けた道端は、犬のうんこだらけ」

律「どうしてよ?
犬は、雪があると、うんこしないの?」

み「そんなわけないだろ!
雪のある間は……。
うんこの後始末をサボる飼い主が多いってこと」

み「足で雪を被せて……。
そのまんま立ち去るわけよ」
律「それは、いけないわねー」
み「雪が解けると……。
それがみんな出てくるわけだよ」
律「とっても、『雪晒し』なんてできないわね」
み「『クソ晒し』だよ。
ところで……。
何で小千谷縮の話してんの?」
老「また、忘れたのか。
これじゃよ、これ」

み「あ、お刺身のツマ」
律「布海苔、でしたよね」
老「すなわち、小千谷には……。
蕎麦に使う以前から、布海苔を大量に使用する産業があった、ということじゃ」
み「それが、小千谷縮?」

老「左様じゃ」
み「布海苔なんて、どこで使うのよ?」
律「ふふ。
わかっちゃった」
み「ウソこけ」
律「ほんとよ!
布海苔は、『雪晒し』で使われるんです」
み「どうやって使うの?」
律「雪に晒した織物の上に、バラ撒くわけよ」

↑『かんずり(唐辛子)』の雪さらし(新潟県妙高市)
み「何しに?」
律「ちゃんと、お話聞いてたの?
『雪晒し』は、晴れた日に行われるのよ。
つまり、布海苔の影が布に落ちるわけ」

み「落ちて、どうなる?」
律「模様になる」
み「はぁ?
落ちた影で、どうして模様が付くのよ」
律「そこが……。
ユネスコの文化遺産じゃない。
特殊技術よ」
み「じゃ、小千谷縮の柄は……。
ぜーんぶ、刺身のツマみたいな模様だってこと?」

律「そうなんじゃない?」
み「マスミン。
このスカポンタンに、引導渡しちゃってちょうだい」

↑ナゾの貼り紙。大阪のお店だそうです(何の店かは不明)。
老「うーむ。
惜しい、ですな。
69点といったところですかな」

老「残念ながら……。
『雪晒し』では使われません」

み「なんじゃそれ!
ぜんぜん惜しくないじゃないの!」
老「縮織の工程の中で使われるということは、合っておる」
み「そんなの当たり前だろ!
最初から、その中に絞られてるんだから。
それで、69点は甘すぎじゃ!」

老「それでは、お前さまが当ててみなされ」
み「よーし。
ど真ん中を射ぬいてやるからね」

老「制限時間、1分」
み「なんでわたしにだけ、制限時間があるのよ!」
老「チッチッチッチ……。
10秒経過」

み「この……。
ヒイキじじい」
老「20秒経過」
み「くそっ。
はい、わかった」
老「はずれじゃ」

み「まだ言ってないだろ!」
老「30秒経過」

み「こ、殺す……」

老「いちいち反応してないで、サラっと言えばいいのよ」
み「くっそー。
じゃ、これでどうだ。
縮織の工程は……。
一度始めると、途中で休めない。
だから、お腹が空いても、ご飯を食べに立てないわけ。
なので、傍らに布海苔をてんこ盛りにしといて……。
それを摘みながら仕事するの」

律「刺身のツマならぬ……。
縮のツマ?」
み「ウマい!
座布団一枚」

老「洒落は上手いが、答えの方は大外れじゃな」

み「でも、惜しいでしょ?
何点?」
老「マイナス10万点」
み「なんでよ!」
老「人が食ってどうする。
そもそも、何で布海苔を食わにゃならんのだ」
み「栄養満点だからでしょ」

律「確かに変よ。
だって、ご飯も食べれないような仕事なら……。
おトイレにだって行けないわけでしょ?」
み「だから……。
床には穴が開いてる」

み「機織りしながら、そこから用を足すのだ」

律「冬にそんなことしてたら、あっという間に風邪引いちゃうでしょ」
老「とにかく、お前さまの発想には、品というものが無い」
み「大きなお世話じゃ。
もういいから、答え教えて」
老「縮の皺は、どうやって作るんじゃったかの?」

み「確か、横糸を……。
引っ張るんだっけ?」
老「引っ張るのは、シアサッカー。
しかも縦糸じゃ」
み「じゃ、なんだよ?」
律「横糸を、撚るんでしたよね?」
老「左様です。
さすが、マイナス10万点の生徒とは大違いですな」
律「ほほほ。
記憶力は、いいんですのよ」

み「納得いかん……」
老「縮の皺を作るために……。
横糸に、強い撚りを加えるわけですな。
しかし、このまま織ったのでは、はしから撚りが戻ってしまい……。
はなはだ織りにくい。
で、どうするか?」
律「どうしましょう?」
老「横糸の撚りが、戻らないようにするわけです」
み「ちょっと、タンマ」
老「なんじゃ?
マイナス10万点女」
み「やかましい!
“撚りを戻す”って言い回し、こっから来てるの?」

老「そのとおり。
緩んだ糸を、もう一度捩り直すことを……。
“撚りを戻す”と云うんじゃ」
み「やっぱり」
老「“腕に撚りを掛ける”も、ここが語源じゃな」

律「機織りから派生した言葉って、結構あるんですね」
老「主要な生業(なりわい)でしたからな」

老「さて、横糸の撚りを戻らないようにするには、どうするか?」
律「どうするんです?」
老「ここで登場するのが、布海苔です」

み「わかった。
横糸を布海苔で縛って、戻らないようにする」
老「こんな切れやすい海藻で、そんなことができるか」
み「じゃ、どうするのよ」
老「布海苔というものはな……。
むしろ、食用以外の用途で使われて来たんじゃよ」
み「こんな刺身のツマに、どんな用途があるっての?」
老「漆喰材料とかな」

み「漆喰って、家の壁?」
老「左様じゃ」

み「わかった。
壁の模様付けだね。
布海苔を埋め込むと……。
毛細血管みたいな模様になるわけだ」

老「そういう壁を……。
どこかで、見たことがあるか?」
み「寡聞にして……」
老「それじゃ、わかりやすい例を上げて進ぜよう。
テレビで、力士の“さがり”を見たことがあるじゃろ?」

み「まわしから下がってる、縄のれんみたいなのでしょ?」

み「なんであんなの下げとくの?
取り組みの最中、どうせ落ちるのに」
老「昔は、廻しと一体化しておったのじゃが……。
指が絡んで怪我をしたりするので、わざと外れるようになったんじゃ」
み「そもそも、何のためにあるのよ?」
老「土俵入りのとき、力士は化粧廻しを付けてるじゃろ」

み「ふむふむ」
老「昔は、あの格好で相撲を取っておったのじゃ」
み「取りにくいだろ」
老「取りにくい。
そのため、化粧廻しの前垂れの代わりとして……。
“さがり”が付けられた。
一応、下半身を隠すという意味合いがあるようじゃ」
み「隠れてないだろ」

老「お前さんの好きそうな方面に話が行きそうじゃな」
み「望むところじゃ」
老「話を元に戻す」
み「なんだよ!」
老「その“さがり”じゃが……。
BSなどでは、幕下以下の取り組みも放送されているようじゃ」

老「見たことあるかな?」
み「オトコの裸には、興味無いしねー」
老「相撲を、そういう観点から見るものはおらんじゃろ」
み「おると思うよ」
律「女の人で?」
み「それはわからんけど……。
男には、ぜったいおる」
律「どういう人が?」
み「決まってるでしょ。
サブ系」

み「太った男って、妙に人気があるみたいよ。
うちも登録してるんだけど……。
『Gay Art Navigation』ってサイトがあってね。
そこのイラスト……。
太った男ばっかし(参照【要覚悟】)」
律「何で、そんなとこに登録してるのよ?」
み「うちも“GAY”の系統だからに決まってるでしょ」
律「どういうこと!
今度、そういう方向に行くわけ?」

み「あのね……。
大誤解があるみたいだね。
『MikiPedia』の『トラ!トラ!トラ!』を読み返すべし!
“GAY”ってのは、男同士だけの言葉じゃないのよ。
同性愛者を“GAY”って云うわけ。
つまり、レズビアンも立派な“GAY”なわけ」

律「えー。
知らなかった」
み「お願いだから、このくらい知ってて。
と云いながら……。
『Gay Art Navigation』は、圧倒的に男性同士優位のサイトだけどね」

律「ぜったい女性は覗かないと思うわ」
み「ま、確かにね。
BL系とは、明らかに違うからね」

↑BLは、こんな感じ
み「男性のイラストは、マッチョや太っちょばっかり」

律「“太っちょ”って、“マッチョ”から派生した言葉なの?」
み「知らない。
今、思わず口をついて出てしまった。
案外、そうかもね」
老「また、話がずれておるぞ」
み「おー、そうだった。
危うく、またタダ酒飲まれるところだった」

み「何の話だっけ?」
老「相撲の“さがり”の話じゃ」

み「そうだった、そうだった」
老「幕下以下の力士の“さがり”を見たことがあるか?」
み「だから……。
そんなの見る趣味は、ありませんて」
老「趣味で“さがり”を見るやつは、滅多におるまい」
み「で、幕下以下の“さがり”がどうだっての?」
老「違いがあるじゃろ」
律「わかりました!」
老「ほー。
さすがに、出来が違いますな」
律「幕下以下の人の下がりは……。
柔らかいです。
フニャフニャ。
しゃがんでも、太ももの上に寝そべって……。
ダラーンってなってる」

み「なんか……。
例えがヤラシイね」
律「ヤラシイのは、あんたの頭でしょ。
で……。
幕下より上の人の“さがり”は……。
固いです。
しゃがむと、斜め上を向いて……。
ピン、って起ってる」

み「ぜったいヤラシイんですけど!」
律「だから、それはあなたの頭。
幕下より上の人って、何て云うんだっけ?」
み「関取でしょ」

律「違うわよ。
思い出した。
十両」

み「それは、位じゃないのよ」
律「だから、位でいいじゃない」
み「さっき、“人”って言ったでしょ?」
律「そう?
ともかく、幕下の上は、十両よ」
み「十両の上は?」
律「……。
百両?」

↑ティッシュです
老「ほっほっほ」
み「こんなので受けるな!
十両の上は、幕内」

み「でもって、十両と幕内の位の人を、関取って云うわけ」
律「お相撲さんのこと、関取って云うんじゃないの?」
み「違います。
幕下と十両の間には……。
深くて暗い川があるの」

み「関取と、それ以下の人では……。
待遇とか、雲泥の違いなのよ」
律「確かに……。
“さがり”は違うわね」
み「“さがり”が違うどこしじゃないの!
そもそも、関取にならないと、お給料を貰えないのよ」

↑たぶん、振り込みだと思います
律「うそ。
それじゃ、どうやって食べてるの?」
み「親方に養ってもらってるわけよ」
律「親方のポケットマネーってこと?」
み「そんなわけにいくかい。
あんな図体のオトコども、ポケットマネーで何人も養えますかって。
ちゃんと、協会からお金が出てるんだよ」

律「なんだ、そうか」
み「ま、食べさせてもらってるだけじゃなくて……。
お小遣いくらいは、渡されてるんじゃないの?」

律「贅沢ね」
み「あのね。
今どき、そうでもしなきゃ、相撲取りの成り手なんか無いのよ」
律「そう言えば、外人力士ばっかりよね」

み「でも、お小遣いくらいじゃ……。
十両の給料とは、雲泥の差なのよ」
律「いくら貰えるの?
十両になると」
み「100万くらいでしょ(正確には、103万6000円)」

律「うそ!
月給で?
給料無しから、いきなり100万円?」
み「差がありすぎだよね」
律「ほんとね。
まさに雲泥の差よね」
み「八百長がはびこった原因は、こういうとこにもあるのよ」

み「番付1枚で、タダから100万円まで違うんだからね。
幕下なんて、一場所で七番しか取らないから……」

み「一番の価値は、ものすごく大きいの。
4つ勝てば、勝ち越しなんだからさ。
20~30万で勝ち星ひとつ買えれば、安いもんなのよ」
律「なるほど。
ところで……。
何でお相撲さんの話してるの?」
み「こら、マスミン。
また、人のお酒飲んでる!」

↑再び、手酌猫
老「お話に夢中のようじゃったでな」
み「酒泥棒」
老「盗み酒というのは……。
一番ウマいものなのじゃ。
知っとるか、若山牧水?」

み「知らいでか」
●白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

律「あ、それ知ってる!
教科書に載ってたわね」
み「あとは……」
●幾山河越えさり行かば寂しさのはてなむくにぞ今日も旅ゆく

律「それも知ってる。
旅の歌人だったわよね」

老「と同時に……。
酒の歌人でもあった」
●白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ

老「さまざまな名歌はあるが……。
わしが一番好きな歌は、これじゃ」
●足音を忍ばせて行けば台所にわが酒の瓶は立ちて待ちをる

律「ずいぶん雰囲気が違いますね」
み「いきなり人間じみたって感じだね」
老「ということで……。
この徳利、空になり申した」

み「返せー」
老「これがほんとの……。
『覆水盆に返らず』じゃ」

み「くっそー。
仕方ない。
もう1本、注文するか」
老「お前さまは、ちと飲み過ぎじゃぞ」

老「わしのを分けてやるから、これ一杯にしなさい」

み「冷えちゃってるじゃない」
老「これは最初から冷酒じゃ」
み「何てお酒?」
老「『飛良泉 山廃純米酒』」

み「なんだ、吟醸じゃないのか」
老「贅沢言うでない。
ほれ、お猪口出しなさい」
み「おぅ」

老「偉そうじゃな」
み「飲んでつかわす」
老「それでは……」
み「おい」

老「秘技、2ミリ酒返し」
み「いい年こいて、そういうことするんじゃないの」
老「お前さまは、さんざんやったではないか」
み「わたしはいいの。
まだ、そういうことをしたい年頃なんだから」

というわけで……。
“み”さんは、飛良泉の『飛良泉 山廃純米酒』を分けてもらうことになりました。
実はですね、この『山廃純米酒』……。
ネットで買って飲んでみたんです。

300ml入りで、525円。
7ネットショッピングが送料無料キャンペーン中だったので……。
この値段ポッキリです。
この値段なら、外しても、そんなに傷は深くないですからね。
で……。
飲んでみた感想ですが……。
ちょっと変わった味でしたね。
これが、飛良泉の特徴なのか、山廃の特徴なのかは……。
わかりません。
酸味が、けっこう強い感じなんです。
やっぱり、蔵の中の乳酸菌に乳酸を作らせると云う、“山廃もと”の特徴なんでしょうかね(812回のコメント参照)。

でも、イヤな酸っぱさじゃありませんでしたよ。
むしろ、好きな味かも知れません。
酸味があると、飲み飽きないんじゃないでしょうか?
300mlじゃ、わかりませんけどね。
ま、どんなお酒でも……。
このくらいで止めとけば、それなりに美味しいってことじゃないでしょうか。
老「お味は、どうじゃ?」
み「もう、よーわからんくなった」

老「張り合いのないオナゴじゃ。
それでは、話を続けるぞ」
み「何の話だっけ?」
老「相撲の“さがり”の話じゃろ」

み「あ、そうそう。
それで先生が、ヤラシイこと言ったんだよね」
律「言ってません!」
み「幕下以下がふにゃちんだとか」

↑実際に売ってます(こちら【動画あり】)
律「話を作るな!
幕下以下の“さがり”が、ふにゃっとしてるって言ったの」

み「似たようなものじゃない」
律「ぜんぜん違うでしょ!」
み「で……。
十両以上は、おっ起ててるのよね」

律「そんなこと言ってないでしょ!
ピンと立ってるって言ったの」

み「やっぱり言ってるじゃない」
律「違うでしょ!」
み「あのさ……。
お相撲さんのあそこって……。
案外、小さいんだってね」

律「また、そういう方向に行く。
見たことあるの?」
み「あるかい」
律「じゃ、なんで知ってるのよ」
み「昔、何かの本で読んだ」
律「もっとマシな本、読みなさいよ。
でも、何で小さいの?
あんな体してるのに」
み「腹が出てるからだよ」
み「ほら、下っ腹に脂肪が付いてるでしょ」

み「つまり……。
埋まっちゃってるわけ。
埋没よ。
脂肪に。
お医者さんならわかるだろ、構造が」

律「わたしは産婦人科」
み「男性の構造も習ったでしょ!」
律「その日、休んだかも」

み「とにかく……。
生えどころって云うか……。
付け根の位置は、太ったって変わらないわけよ」

律「で、だんだん太ってくと……。
棒状の部分が、腹肉に埋もれていく」
み「なんだか……。
魚沼の豪雪を思わせるわね」

み「妙な連想してくれたね。
そう云えば、昔の豪雪の写真で、スゴいのがあったのよ。
魚沼じゃないんだけどさ」
律「どこ?」
み「高田。
今は上越市になってるけど。
上杉謙信の春日山城の近くだね」

み「レルヒ少佐が、スキーを伝えた所として有名」

律「スゴい写真って、どんな写真よ?」
み「電線が、目線より低いとこに渡ってるわけ」
律「どうして?」
み「そこまで雪が積もってるのよ」
律「ウソでしょ」
み「ほんとだって。
さらに昔はね、もっとすごかった。
飛脚がようやく、高田と思われるところまでたどり着いたんだけど……」

み「町なんてどこにも見えない」

み「呆然としながらも、しばらく行くと……。
見渡す限りの雪原に、立て札がひとつ立ってた。
何て書いてあったと思う?」
律「知らないわよ」
み「『この下に高田あり』」

律「今度こそ、ウソよね」
み「ホントだってば。
ねー、マスミン」
律「確かに……。
本州日本海側の積雪量は……。
人が住んでいる地域としては、世界的にみても驚異的な量のようじゃな」

↑高田の雁木通りを再現した展示施設(新潟県立歴史博物館)
み「ほら、みなさい」
老「『北越雪譜』の中で、鈴木牧之は……。
秋山郷の積雪量を、18丈と書いておる」

み「18丈って、どのくらいだっけ?」
老「54メートルじゃな」

↑立山黒部アルペンルート「雪の大谷」(これで、20メートルくらい)
み「積雪、54メートル……。
わたしより上手がいたわ。
さすがのわたしも、そこまでは言えませんて」
律「雪国の人って、ホラ吹きなの?」

み「失礼なことを言うな!
でも確かに……。
雪のしんしんと降る夜……。
炉端で話をしてるとさ」

み「囲炉裏の火に揺らめいて……。
人の影が壁に大写りするみたいに……。
お話も大きくなるかもね」
律「じゃ……。
Mikiちゃんの体にも……。
雪国の人の血が流れてるってわけね」

み「脈々とな。
おい!
貶してるのか?」
律「もちろん、褒めてるわよ」
あっ。
魚沼なら残ってる!」
老「その通り。
春先の強い陽の光と……。
まっさらな深い雪。
この2つがそろってなければ、『雪晒し』は出来ないんじゃ」

み「確かに、その2つの条件を満たせるのは……。
魚沼みたいな地域しか無いだろうね。
でも、そもそも何のために『雪晒し』は行われるわけ?」

老「一言で云えば、布の漂白じゃな。
黄ばみが抜け、染料の色が鮮やかに浮かび上がる」

み「どういうカラクリよ?」
老「陽の光により……。
表層の雪が溶け、水蒸気となる。
日光と雪からの反射光、両方向からの強い紫外線を受けると……。
水蒸気中の酸素分子(O2)が、酸素原子(O)に分解される。
この酸素原子(O)が、酸素分子(O2)と結合すると……。
オゾン(O3)に変化するわけじゃ」

老「このオゾンに、漂白効果があるんじゃな」

↑の仕組み解説は、付け焼刃かつ理系素養ゼロのため、大いに怪しいです。
きっとハーレクインさんが、補足訂正してくださるでしょう。
でも、『オゾン漂白協会』なるものまで存在してますから……。
ちゃんと証明された効果だと思います。
み「へー。
昔の人って、そんなことまでわかってたんだ」
老「ま、理屈はわからなくても……。
効果は理解してたじゃろ」
み「でも、3月の『雪晒し』。
ほんとに嬉しいだろうね。
雪に閉ざされた長い長い冬が終わって……。
さんさんと陽光が降り注ぐ。
その光の中で……。
一冬かけて織りあげた反物を、雪に晒す」

律「なんか、わかるわ」
み「春の喜びは、新潟市民にだってあるけどさ。
新潟市あたりじゃ、3月に雪なんか無いからね。
残ってたとしても、汚ねーし。
『雪晒し』なんて、とーてームリ」
律「なんで汚いの?」
み「雪の解けた道端は、犬のうんこだらけ」

律「どうしてよ?
犬は、雪があると、うんこしないの?」

み「そんなわけないだろ!
雪のある間は……。
うんこの後始末をサボる飼い主が多いってこと」

み「足で雪を被せて……。
そのまんま立ち去るわけよ」
律「それは、いけないわねー」
み「雪が解けると……。
それがみんな出てくるわけだよ」
律「とっても、『雪晒し』なんてできないわね」
み「『クソ晒し』だよ。
ところで……。
何で小千谷縮の話してんの?」
老「また、忘れたのか。
これじゃよ、これ」

み「あ、お刺身のツマ」
律「布海苔、でしたよね」
老「すなわち、小千谷には……。
蕎麦に使う以前から、布海苔を大量に使用する産業があった、ということじゃ」
み「それが、小千谷縮?」

老「左様じゃ」
み「布海苔なんて、どこで使うのよ?」
律「ふふ。
わかっちゃった」
み「ウソこけ」
律「ほんとよ!
布海苔は、『雪晒し』で使われるんです」
み「どうやって使うの?」
律「雪に晒した織物の上に、バラ撒くわけよ」

↑『かんずり(唐辛子)』の雪さらし(新潟県妙高市)
み「何しに?」
律「ちゃんと、お話聞いてたの?
『雪晒し』は、晴れた日に行われるのよ。
つまり、布海苔の影が布に落ちるわけ」

み「落ちて、どうなる?」
律「模様になる」
み「はぁ?
落ちた影で、どうして模様が付くのよ」
律「そこが……。
ユネスコの文化遺産じゃない。
特殊技術よ」
み「じゃ、小千谷縮の柄は……。
ぜーんぶ、刺身のツマみたいな模様だってこと?」

律「そうなんじゃない?」
み「マスミン。
このスカポンタンに、引導渡しちゃってちょうだい」

↑ナゾの貼り紙。大阪のお店だそうです(何の店かは不明)。
老「うーむ。
惜しい、ですな。
69点といったところですかな」

老「残念ながら……。
『雪晒し』では使われません」

み「なんじゃそれ!
ぜんぜん惜しくないじゃないの!」
老「縮織の工程の中で使われるということは、合っておる」
み「そんなの当たり前だろ!
最初から、その中に絞られてるんだから。
それで、69点は甘すぎじゃ!」

老「それでは、お前さまが当ててみなされ」
み「よーし。
ど真ん中を射ぬいてやるからね」

老「制限時間、1分」
み「なんでわたしにだけ、制限時間があるのよ!」
老「チッチッチッチ……。
10秒経過」

み「この……。
ヒイキじじい」
老「20秒経過」
み「くそっ。
はい、わかった」
老「はずれじゃ」

み「まだ言ってないだろ!」
老「30秒経過」

み「こ、殺す……」

老「いちいち反応してないで、サラっと言えばいいのよ」
み「くっそー。
じゃ、これでどうだ。
縮織の工程は……。
一度始めると、途中で休めない。
だから、お腹が空いても、ご飯を食べに立てないわけ。
なので、傍らに布海苔をてんこ盛りにしといて……。
それを摘みながら仕事するの」

律「刺身のツマならぬ……。
縮のツマ?」
み「ウマい!
座布団一枚」

老「洒落は上手いが、答えの方は大外れじゃな」

み「でも、惜しいでしょ?
何点?」
老「マイナス10万点」
み「なんでよ!」
老「人が食ってどうする。
そもそも、何で布海苔を食わにゃならんのだ」
み「栄養満点だからでしょ」

律「確かに変よ。
だって、ご飯も食べれないような仕事なら……。
おトイレにだって行けないわけでしょ?」
み「だから……。
床には穴が開いてる」

み「機織りしながら、そこから用を足すのだ」

律「冬にそんなことしてたら、あっという間に風邪引いちゃうでしょ」
老「とにかく、お前さまの発想には、品というものが無い」
み「大きなお世話じゃ。
もういいから、答え教えて」
老「縮の皺は、どうやって作るんじゃったかの?」

み「確か、横糸を……。
引っ張るんだっけ?」
老「引っ張るのは、シアサッカー。
しかも縦糸じゃ」
み「じゃ、なんだよ?」
律「横糸を、撚るんでしたよね?」
老「左様です。
さすが、マイナス10万点の生徒とは大違いですな」
律「ほほほ。
記憶力は、いいんですのよ」

み「納得いかん……」
老「縮の皺を作るために……。
横糸に、強い撚りを加えるわけですな。
しかし、このまま織ったのでは、はしから撚りが戻ってしまい……。
はなはだ織りにくい。
で、どうするか?」
律「どうしましょう?」
老「横糸の撚りが、戻らないようにするわけです」
み「ちょっと、タンマ」
老「なんじゃ?
マイナス10万点女」
み「やかましい!
“撚りを戻す”って言い回し、こっから来てるの?」

老「そのとおり。
緩んだ糸を、もう一度捩り直すことを……。
“撚りを戻す”と云うんじゃ」
み「やっぱり」
老「“腕に撚りを掛ける”も、ここが語源じゃな」

律「機織りから派生した言葉って、結構あるんですね」
老「主要な生業(なりわい)でしたからな」

老「さて、横糸の撚りを戻らないようにするには、どうするか?」
律「どうするんです?」
老「ここで登場するのが、布海苔です」

み「わかった。
横糸を布海苔で縛って、戻らないようにする」
老「こんな切れやすい海藻で、そんなことができるか」
み「じゃ、どうするのよ」
老「布海苔というものはな……。
むしろ、食用以外の用途で使われて来たんじゃよ」
み「こんな刺身のツマに、どんな用途があるっての?」
老「漆喰材料とかな」

み「漆喰って、家の壁?」
老「左様じゃ」

み「わかった。
壁の模様付けだね。
布海苔を埋め込むと……。
毛細血管みたいな模様になるわけだ」

老「そういう壁を……。
どこかで、見たことがあるか?」
み「寡聞にして……」
老「それじゃ、わかりやすい例を上げて進ぜよう。
テレビで、力士の“さがり”を見たことがあるじゃろ?」

み「まわしから下がってる、縄のれんみたいなのでしょ?」

み「なんであんなの下げとくの?
取り組みの最中、どうせ落ちるのに」
老「昔は、廻しと一体化しておったのじゃが……。
指が絡んで怪我をしたりするので、わざと外れるようになったんじゃ」
み「そもそも、何のためにあるのよ?」
老「土俵入りのとき、力士は化粧廻しを付けてるじゃろ」

み「ふむふむ」
老「昔は、あの格好で相撲を取っておったのじゃ」
み「取りにくいだろ」
老「取りにくい。
そのため、化粧廻しの前垂れの代わりとして……。
“さがり”が付けられた。
一応、下半身を隠すという意味合いがあるようじゃ」
み「隠れてないだろ」

老「お前さんの好きそうな方面に話が行きそうじゃな」
み「望むところじゃ」
老「話を元に戻す」
み「なんだよ!」
老「その“さがり”じゃが……。
BSなどでは、幕下以下の取り組みも放送されているようじゃ」

老「見たことあるかな?」
み「オトコの裸には、興味無いしねー」
老「相撲を、そういう観点から見るものはおらんじゃろ」
み「おると思うよ」
律「女の人で?」
み「それはわからんけど……。
男には、ぜったいおる」
律「どういう人が?」
み「決まってるでしょ。
サブ系」

み「太った男って、妙に人気があるみたいよ。
うちも登録してるんだけど……。
『Gay Art Navigation』ってサイトがあってね。
そこのイラスト……。
太った男ばっかし(参照【要覚悟】)」
律「何で、そんなとこに登録してるのよ?」
み「うちも“GAY”の系統だからに決まってるでしょ」
律「どういうこと!
今度、そういう方向に行くわけ?」

み「あのね……。
大誤解があるみたいだね。
『MikiPedia』の『トラ!トラ!トラ!』を読み返すべし!
“GAY”ってのは、男同士だけの言葉じゃないのよ。
同性愛者を“GAY”って云うわけ。
つまり、レズビアンも立派な“GAY”なわけ」

律「えー。
知らなかった」
み「お願いだから、このくらい知ってて。
と云いながら……。
『Gay Art Navigation』は、圧倒的に男性同士優位のサイトだけどね」

律「ぜったい女性は覗かないと思うわ」
み「ま、確かにね。
BL系とは、明らかに違うからね」

↑BLは、こんな感じ
み「男性のイラストは、マッチョや太っちょばっかり」

律「“太っちょ”って、“マッチョ”から派生した言葉なの?」
み「知らない。
今、思わず口をついて出てしまった。
案外、そうかもね」
老「また、話がずれておるぞ」
み「おー、そうだった。
危うく、またタダ酒飲まれるところだった」

み「何の話だっけ?」
老「相撲の“さがり”の話じゃ」

み「そうだった、そうだった」
老「幕下以下の力士の“さがり”を見たことがあるか?」
み「だから……。
そんなの見る趣味は、ありませんて」
老「趣味で“さがり”を見るやつは、滅多におるまい」
み「で、幕下以下の“さがり”がどうだっての?」
老「違いがあるじゃろ」
律「わかりました!」
老「ほー。
さすがに、出来が違いますな」
律「幕下以下の人の下がりは……。
柔らかいです。
フニャフニャ。
しゃがんでも、太ももの上に寝そべって……。
ダラーンってなってる」

み「なんか……。
例えがヤラシイね」
律「ヤラシイのは、あんたの頭でしょ。
で……。
幕下より上の人の“さがり”は……。
固いです。
しゃがむと、斜め上を向いて……。
ピン、って起ってる」

み「ぜったいヤラシイんですけど!」
律「だから、それはあなたの頭。
幕下より上の人って、何て云うんだっけ?」
み「関取でしょ」

律「違うわよ。
思い出した。
十両」

み「それは、位じゃないのよ」
律「だから、位でいいじゃない」
み「さっき、“人”って言ったでしょ?」
律「そう?
ともかく、幕下の上は、十両よ」
み「十両の上は?」
律「……。
百両?」

↑ティッシュです
老「ほっほっほ」
み「こんなので受けるな!
十両の上は、幕内」

み「でもって、十両と幕内の位の人を、関取って云うわけ」
律「お相撲さんのこと、関取って云うんじゃないの?」
み「違います。
幕下と十両の間には……。
深くて暗い川があるの」

み「関取と、それ以下の人では……。
待遇とか、雲泥の違いなのよ」
律「確かに……。
“さがり”は違うわね」
み「“さがり”が違うどこしじゃないの!
そもそも、関取にならないと、お給料を貰えないのよ」

↑たぶん、振り込みだと思います
律「うそ。
それじゃ、どうやって食べてるの?」
み「親方に養ってもらってるわけよ」
律「親方のポケットマネーってこと?」
み「そんなわけにいくかい。
あんな図体のオトコども、ポケットマネーで何人も養えますかって。
ちゃんと、協会からお金が出てるんだよ」

律「なんだ、そうか」
み「ま、食べさせてもらってるだけじゃなくて……。
お小遣いくらいは、渡されてるんじゃないの?」

律「贅沢ね」
み「あのね。
今どき、そうでもしなきゃ、相撲取りの成り手なんか無いのよ」
律「そう言えば、外人力士ばっかりよね」

み「でも、お小遣いくらいじゃ……。
十両の給料とは、雲泥の差なのよ」
律「いくら貰えるの?
十両になると」
み「100万くらいでしょ(正確には、103万6000円)」

律「うそ!
月給で?
給料無しから、いきなり100万円?」
み「差がありすぎだよね」
律「ほんとね。
まさに雲泥の差よね」
み「八百長がはびこった原因は、こういうとこにもあるのよ」

み「番付1枚で、タダから100万円まで違うんだからね。
幕下なんて、一場所で七番しか取らないから……」

み「一番の価値は、ものすごく大きいの。
4つ勝てば、勝ち越しなんだからさ。
20~30万で勝ち星ひとつ買えれば、安いもんなのよ」
律「なるほど。
ところで……。
何でお相撲さんの話してるの?」
み「こら、マスミン。
また、人のお酒飲んでる!」

↑再び、手酌猫
老「お話に夢中のようじゃったでな」
み「酒泥棒」
老「盗み酒というのは……。
一番ウマいものなのじゃ。
知っとるか、若山牧水?」

み「知らいでか」
●白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

律「あ、それ知ってる!
教科書に載ってたわね」
み「あとは……」
●幾山河越えさり行かば寂しさのはてなむくにぞ今日も旅ゆく

律「それも知ってる。
旅の歌人だったわよね」

老「と同時に……。
酒の歌人でもあった」
●白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ

老「さまざまな名歌はあるが……。
わしが一番好きな歌は、これじゃ」
●足音を忍ばせて行けば台所にわが酒の瓶は立ちて待ちをる

律「ずいぶん雰囲気が違いますね」
み「いきなり人間じみたって感じだね」
老「ということで……。
この徳利、空になり申した」

み「返せー」
老「これがほんとの……。
『覆水盆に返らず』じゃ」

み「くっそー。
仕方ない。
もう1本、注文するか」
老「お前さまは、ちと飲み過ぎじゃぞ」

老「わしのを分けてやるから、これ一杯にしなさい」

み「冷えちゃってるじゃない」
老「これは最初から冷酒じゃ」
み「何てお酒?」
老「『飛良泉 山廃純米酒』」

み「なんだ、吟醸じゃないのか」
老「贅沢言うでない。
ほれ、お猪口出しなさい」
み「おぅ」

老「偉そうじゃな」
み「飲んでつかわす」
老「それでは……」
み「おい」

老「秘技、2ミリ酒返し」
み「いい年こいて、そういうことするんじゃないの」
老「お前さまは、さんざんやったではないか」
み「わたしはいいの。
まだ、そういうことをしたい年頃なんだから」

というわけで……。
“み”さんは、飛良泉の『飛良泉 山廃純米酒』を分けてもらうことになりました。
実はですね、この『山廃純米酒』……。
ネットで買って飲んでみたんです。

300ml入りで、525円。
7ネットショッピングが送料無料キャンペーン中だったので……。
この値段ポッキリです。
この値段なら、外しても、そんなに傷は深くないですからね。
で……。
飲んでみた感想ですが……。
ちょっと変わった味でしたね。
これが、飛良泉の特徴なのか、山廃の特徴なのかは……。
わかりません。
酸味が、けっこう強い感じなんです。
やっぱり、蔵の中の乳酸菌に乳酸を作らせると云う、“山廃もと”の特徴なんでしょうかね(812回のコメント参照)。

でも、イヤな酸っぱさじゃありませんでしたよ。
むしろ、好きな味かも知れません。
酸味があると、飲み飽きないんじゃないでしょうか?
300mlじゃ、わかりませんけどね。
ま、どんなお酒でも……。
このくらいで止めとけば、それなりに美味しいってことじゃないでしょうか。
老「お味は、どうじゃ?」
み「もう、よーわからんくなった」

老「張り合いのないオナゴじゃ。
それでは、話を続けるぞ」
み「何の話だっけ?」
老「相撲の“さがり”の話じゃろ」

み「あ、そうそう。
それで先生が、ヤラシイこと言ったんだよね」
律「言ってません!」
み「幕下以下がふにゃちんだとか」

↑実際に売ってます(こちら【動画あり】)
律「話を作るな!
幕下以下の“さがり”が、ふにゃっとしてるって言ったの」

み「似たようなものじゃない」
律「ぜんぜん違うでしょ!」
み「で……。
十両以上は、おっ起ててるのよね」

律「そんなこと言ってないでしょ!
ピンと立ってるって言ったの」

み「やっぱり言ってるじゃない」
律「違うでしょ!」
み「あのさ……。
お相撲さんのあそこって……。
案外、小さいんだってね」

律「また、そういう方向に行く。
見たことあるの?」
み「あるかい」
律「じゃ、なんで知ってるのよ」
み「昔、何かの本で読んだ」
律「もっとマシな本、読みなさいよ。
でも、何で小さいの?
あんな体してるのに」
み「腹が出てるからだよ」
み「ほら、下っ腹に脂肪が付いてるでしょ」

み「つまり……。
埋まっちゃってるわけ。
埋没よ。
脂肪に。
お医者さんならわかるだろ、構造が」

律「わたしは産婦人科」
み「男性の構造も習ったでしょ!」
律「その日、休んだかも」

み「とにかく……。
生えどころって云うか……。
付け根の位置は、太ったって変わらないわけよ」

律「で、だんだん太ってくと……。
棒状の部分が、腹肉に埋もれていく」
み「なんだか……。
魚沼の豪雪を思わせるわね」

み「妙な連想してくれたね。
そう云えば、昔の豪雪の写真で、スゴいのがあったのよ。
魚沼じゃないんだけどさ」
律「どこ?」
み「高田。
今は上越市になってるけど。
上杉謙信の春日山城の近くだね」

み「レルヒ少佐が、スキーを伝えた所として有名」

律「スゴい写真って、どんな写真よ?」
み「電線が、目線より低いとこに渡ってるわけ」
律「どうして?」
み「そこまで雪が積もってるのよ」
律「ウソでしょ」
み「ほんとだって。
さらに昔はね、もっとすごかった。
飛脚がようやく、高田と思われるところまでたどり着いたんだけど……」

み「町なんてどこにも見えない」

み「呆然としながらも、しばらく行くと……。
見渡す限りの雪原に、立て札がひとつ立ってた。
何て書いてあったと思う?」
律「知らないわよ」
み「『この下に高田あり』」

律「今度こそ、ウソよね」
み「ホントだってば。
ねー、マスミン」
律「確かに……。
本州日本海側の積雪量は……。
人が住んでいる地域としては、世界的にみても驚異的な量のようじゃな」

↑高田の雁木通りを再現した展示施設(新潟県立歴史博物館)
み「ほら、みなさい」
老「『北越雪譜』の中で、鈴木牧之は……。
秋山郷の積雪量を、18丈と書いておる」

み「18丈って、どのくらいだっけ?」
老「54メートルじゃな」

↑立山黒部アルペンルート「雪の大谷」(これで、20メートルくらい)
み「積雪、54メートル……。
わたしより上手がいたわ。
さすがのわたしも、そこまでは言えませんて」
律「雪国の人って、ホラ吹きなの?」

み「失礼なことを言うな!
でも確かに……。
雪のしんしんと降る夜……。
炉端で話をしてるとさ」

み「囲炉裏の火に揺らめいて……。
人の影が壁に大写りするみたいに……。
お話も大きくなるかもね」
律「じゃ……。
Mikiちゃんの体にも……。
雪国の人の血が流れてるってわけね」

み「脈々とな。
おい!
貶してるのか?」
律「もちろん、褒めてるわよ」