2012.3.3(土)
老「明治の末のことなんじゃが……。
国立醸造試験所の嘉儀金一郎という人が……」
↑旧国立醸造試験所(東京都北区滝野川)
老「米を摺り潰さなくても……。
『酌み掛け』と云って、麹の酵素がしみ出した液を何度も掛けることにより……。
米が仕込み水に溶けるということを発見した」
み「なんじゃそれ。
それじゃ、江戸時代までの“蔵人”の重労働は、無意味だったと云うこと?」
老「ま、まったくの無駄とまでは思いたくないがの。
コストパフォーマンス的には……。
かなり問題のある工程ではあったな」
み「なんで、もっと早く気づかなかったのかね」
老「昔からのやり方を忠実に守るという姿勢も、大事には違いないがの。
何の疑問も抱かず、盲目的に従うだけというのも、考えものじゃ。
やっていることの意味を理解した上で……。
もっと良い方法がないか、常に追求していく姿勢もまた、必要なことじゃろう」
み「改善を受け入れる土壌も必要ってことだね」
老「そうじゃな。
頑固なだけでは、決して良いものは造れん」
律「じゃ、今はその“山卸”をしてる蔵はまったく無いんですか?」
み「あるわけないじゃん」
老「ところが……。
あるんじゃな」
み「うそ。
なんで?
必要のない工程なのに」
老「時代が変わったということじゃよ。
昔のように、造れば売れたという時代なら……。
なにより効率が第一となろう。
しかし、今は違う。
付加価値を付けて、ほかと区別しなければ、売れない時代じゃ」
み「わかった。
昔ながらの“山卸”を行って仕込みましたという、付加価値だね」
老「そう。
その付加価値を認め、買う人がいればいいわけじゃ」
み「需要と供給の問題なんだね」
老「逆に云えば……。
日本酒が売れなくなった今こそが……。
ほんとうの日本酒造りが出来る時代、とも云えるのかも知れん。
そして、呑兵衛にとっても……。
ほんとうの日本酒が味わえる、ありがたい時代じゃな」
み「“山卸”をしたお酒の味って、違うの?」
老「飲み比べれば、明らかに違う」
み「美味しいわけ?」
老「美味しいと感じるかどうかは、まさに好き好きじゃ。
若い人は、味が強すぎると感じるかも知れんな」
み「じゃ、“山卸”をしない、“山廃仕込み”の味は?」
老「基本的には一緒と思って良い。
同じ“生もと”系じゃでな」
み「“きもと”って、何よ?
吉本の親戚?」
老「“山卸”をして造った“もと”を、“生もと”と云うんじゃ。
この“生もと”と“山廃もと”を合わせて、“生もと系”と呼ばれる」
老「これに対するのが、既成の乳酸菌を添加する、“速醸もと”じゃな」
↑上の図2点の載ってるページはこちら
み「ふーん。
味が強すぎるってのは、早い話、クドい味ってこと?」
老「しっかりと、酒の味がすると云ったほうが良いかな。
腰が強いとも表現するが……。
水で割っても、同じ酒の味がする。
お若い方は、水割りやロックで味わうのも良かろう」
み「へー。
冷やして飲んだ方が、いいのか」
老「燗酒の苦手な方はな。
しかし、ほんとうの味は燗でこそ味わえる、と云えるかも知れん。
“燗上がり”という言葉があるが……。
常温では隠れていた味や香りが、燗を付けることで、まさに花開くんじゃよ。
“生もと”系の特徴は、けだし、この“燗上がり”にあると云ってもいいほどじゃ」
律「おいしそうね」
み「そうかぁ?
なんか、苦手っぽいな」
律「なんでよ?」
み「新潟のお酒とは、真逆だもん」
律「どこが?」
み「お酒の味がしっかりするって感じなんでしょ」
律「新潟のお酒は、お酒の味がしないの?」
み「新潟のお酒のキーワードは、“淡麗”だからね」
み「水のように淡いってのが特徴」
↑『新潟淡麗倶楽部』
律「水っぽいってことじゃないの?」
み「ま、しっかりとお酒の味がした方がいいって人には……。
物足りないかもね。
でも、ノンベーには好評だよ。
うちの父も、大好きだった」
律「なんで?」
み「いくら飲んでも飽きないから。
舌に残らないんだね」
律「じゃ、結局飲まないの?
この飛良泉」
み「自腹では飲まん」
律「おごってもらえば飲むってこと?」
み「無論」
律「威張って言うな」
老「ほっほ。
それじゃ……。
長々と話を聞いてもらったお礼に……。
わしが一杯おごろうか」
み「ほんと!
さすがマスミン、太っ腹」
み「大したもんだよ。
人は、こういう具合に年齢を重ねたいもんだね。
気が変わらないうちに、注文しよう。
あ、店員さーん。
早く早く。
あのね。
聞いて驚かないでちょうだい。
今から、恐ろしい注文をしますから。
ひょっとして、開店以来、初めての注文かも。
いい?
このお酒、なんて読むと思う?
“ひらいずみ”?
さすがに、ちゃんと知ってるわけね。
わたしは今、この180mlのボトルを注文しようとしてるわけよ。
見てよ、この値段。
980円よ。
こんなの、注文した人いないでしょ?
え?
毎日出ます?
ほんまかー」
店「何本お持ちしましょう?」
み「恐ろしいこと、さらっと言うわね。
980円もするボトルを、何本もお持ちされてたまるもんですか。
って……。
そうか、これマスミンのおごりなんだ。
そうかそうか。
じゃ、あなた、あるったけ持ってきてちょうだい。
そうね。
100万本くらい」
老「バカを言うでない。
1本じゃ」
み「けちー」
老「お前さんが1本分を出せば、2本になる」
み「わたしのかわりに先生が出せば、2本になる」
律「なんでよ!
あ、そうだ。
わたしとMikiちゃんが半分ずつ出せば……。
2本になるじゃない」
み「ふむ~。
980円の半分、490円で1合味わえるんだから……。
良しとするか。
このメニュー見ても、490円で飲める手酌酒は無いもんね」
み「じゃ、店員さん。
この“大吟醸”の飛良泉を、2本ね。
1本は、こちら、品のいいおじいさんの勘定に付けてください。
もう1本は、こちら、美人の先生のお勘定に」
律「わたしたち2人のでしょ」
み「もー。
せっかく褒めてあげたのに」
律「褒めてもらわなくてけっこう。
聞き飽きてるから」
み「こうは年を取りたくないもんだね」
律「年なんか取ってません」
み「アラフォーでしょ」
律「まだなってません」
み「“アラ”ってのは、“Around”のことじゃない」
み「40前後ってこと」
律「前と後を一緒にしないで。
わたしは、“前”です」
み「土俵際のくせに」
律「寄り返してやる」
み「恐ろしー」
店「お待たせしました」
み「げ。
もう持ってきちゃったの。
早や。
でも、まぁ、ボトルをそのまま出してくるだけだもんね」
み「それじゃ、先生。
改めて乾杯といきますか」
律「いきましょう。
秋田の夜に」
み「土俵際の夜に」
律「いらんこと言わんでいい」
み「カンパーイ」
律「カンパーイ」
というわけで……。
ここで2人は、飛良泉の大吟醸酒『秋田泉』を味わうわけですが……。
この『秋田泉』、残念ながらネットでは買えないようです。
しかし!
この夏、大吟醸ではありませんが……。
わたしは、飛良泉を飲んだんです。
秋田のお酒の小瓶詰め合わを、ネットで見つけたんですね。
で、頑張ってる自分へのご褒美として……。
自分自身に、お中元を送ることにしました。
夏限定の商品らしく、冷酒用のセットでした。
3種類のお酒が、300ml瓶で2本ずつ入ってました。
その中に、飛良泉もあったんです。
実は、これを注文したのは……。
例のレンジでチンする“きりたんぽ鍋”を取り寄せたころ。
そのころはまだ、飛良泉のことを書くなんて思ってませんでした。
なので、飛良泉が入ってたのは、まさしく偶然なんですね。
こんなに長々と飛良泉の話をするのなら……。
もっと味わって飲んどけばよかったと後悔しましたが……。
まさに、後の祭りです。
さて、お味の方です。
ほかのお酒もそうですが、吟醸酒なんかじゃありません。
飛良泉の場合、普通種のひとつ上、本醸造酒でした。
ラベルには、「夏季限定 生貯蔵」とありました。
この“生貯蔵”とは何かと云うことですが……。
普通、出来上がったお酒は、腐敗や変質を防ぐため、加熱殺菌されます。
出来た直後に一回、瓶詰め前にもう一回。
これを、“火入れ”と云います。
この“火入れ”をまったく行わないお酒を、「生酒」と呼びます。
一回目の“火入れ”だけ行うお酒を、「生詰め酒」。
そして、二回目の“火入れ”だけを行うお酒が、「生貯蔵酒」です。
これらのお酒の味が、普通のお酒といったいどう違うかと云うことについては……。
投稿に間に合わず、調べられませんでした。
きっと、ハーレクインさんが解説してくださることでしょう。
さて、この飛良泉を始め……。
3本ともが、『冷酒用』となってました。
わたしの冷酒の飲み方は、前にも書いたかも知れませんが……。
水割りです。
休日の昼酒として飲むんですね。
普段はだいたい、焼酎の野菜ジュース割り(HQ氏命名:ベジタブル・トミー)ですが……。
↑これは、ブラッディマリー(ウォッカのトマトジュース割り)
夏だけは、たまーに、冷たい日本酒が飲みたくなるんです。
スーパーでも、夏場は冷酒用の日本酒が売りだされてますね。
それを買ってきます。
銘柄もへったくれもありません。
紙パック入りです。
飲み方は……。
マグカップに氷を満杯に入れ……。
日本酒を7分目くらいまで注ぎます。
残った部分を、冷水(アルカリイオン水)で満たしたら、マドラーでかき混ぜます。
これだけ。
冷蔵庫が狭く、紙パックのお酒は入らないので……。
日本酒は冷やしてありません。
なので、すぐに氷が溶けます。
早い話、日本酒はものすごーく薄まります。
ほとんど、日本酒の味がしないくらいです。
ゴクゴク飲めます。
夏の昼酒にはサイコー、という具合です。
というわけで、自分へのご褒美に買った6本詰め合わせも……。
全部、休日の昼酒に飲んじゃいました。
さて、その感想です。
同じように、水と氷で薄めたのに……。
紙パックのお酒とは、ぜんぜん違ってました。
3種類ともそうでしたが……。
2倍くらいに薄めても、しっかりとお酒の味がするんですよ。
そのまま飲んだら、そうとう強い味がするはず。
飲んでみればよかったんですが……。
なんか、頭痛くなりそうな気がして、止めました。
正直……。
わたしには、苦手系の味でしたね。
新潟のお酒の特徴、“淡麗”とは遠く離れた味。
秋田と新潟は、同じ日本海側の雪国で、米どころ。
なので、もっと似た味がすると思ってました。
で、調べてみたんですね。
県別に、お酒の甘辛濃淡をグラフにした表がありました。
見難いと思うので、新潟と秋田が入るあたりを拡大してみます(全体が見てみたい方はこちら)。
新潟と秋田、かなり離れてますよね。
ていうか、秋田のお酒の方が、ほぼ全国平均なんですね。
離れてるのは、新潟の方。
思うに……。
昔の、いわゆる美味しいお酒の標準ってのは……。
関西のお酒だったのではないでしょうか。
伏見のある京都なんかも、秋田と同じ中心付近にあります。
灘を擁する兵庫などは、さらにかけ離れ……。
“淡麗”の対極にあることがわかります。
新潟の「越乃寒梅」がブームになったときは……。
それまでの基準とは真逆の“淡麗”さが、珍しがられたんじゃないでしょうか。
さて、関西のお酒で、思い出したことがあります。
「下らない」という言葉の語源です。
これが、お酒に関する用語だったってこと、ご存知でした?
昔々、物流の主役が船だったころ。
上方から江戸に行く物資を、「下りもの」と云いました。
天皇がいた京都方面に向かう便が「上り」、反対が「下り」だったわけです。
天皇が東京に移ってからは、列車も、東京行きが「上り」になりましたが。
で、上方から船に乗って下ってくるお酒が、江戸で非常に評判が高かったわけです。
「下り酒」と呼ばれ、高い値が付けられました。
その逆に、上方から下って来ないお酒は……。
「下らない酒」と言われ、評価が低かったわけです。
気位の高い江戸っ子が、上方のお酒を、なぜそれほどまでに評価したのでしょう?
それはですね……。
ほんとうに美味しかったからです。
あまりにも江戸での評判が高いので……。
逆に、上方の人たちが、首を捻りました。
で、江戸に行ったおり、半信半疑で飲んでみて……。
仰天したそうです。
地元で飲むお酒より、遥かに美味しかったからです。
樽の檜の香りも移って、なんとも云えない上級酒に仕上がってたそうです。
とても、積みこんだのと同じお酒とは思えなかったとか。
このわけは、現在解明されてます。
上方のお酒が美味しくなったのは……。
船で運ばれたおかげだったんです。
海路で運ばれてる間に……。
波に揺られ続けることによって、お酒の熟成が進んだということだそうです。
昔から漁師の間では、「船に載せた水は、真夏でも腐らない」など……。
船上の不思議については語られてました。
で、実際、船の上で、お酒がどう変化してたかなんですが……。
現代科学の超音波の分野では、お酒を振動させて熟成させる実験がなされてます。
その結果、出力の弱い超音波を酒に照射すると、酒の分子構造が変わることがわかりました。
アルコール分子の周りを、水の分子が包んだ構造となるんだそうです。
これによって、アルコール成分が、舌を直接刺激しなくなります。
つまり、舌にピリッとくる刺激が消えて……。
いわゆる、“まろやか”な味になったということです(超音波で酒がうまくなる)。
新潟県の佐渡にある酒造メーカー、『北雪酒造』さんでは……。
実際に、「下り酒」を再現する試みが行われてます。
この会社、実にユニークなことをすることで有名らしくて……。
このほかにも、音楽を聴かせた「音楽酒」なども造ってます。
北雪酒造さんが、「下り酒」を再現するにあたっては……。
実際、佐渡名物「たらい舟」に、お酒を乗せて実験したそうです。
↑ぜったいキケン
その結果、味、香りともに、数段引き立つ事を確認しました。
で、「下り酒」再現のプロジェクトを立ち上げたのだとか。
しかしながら……。
大量のお酒を、船に載せて長期間保存するとなると……。
温度湿度の管理など、非常に難しい問題が生じます。
海に浮かぶ酒蔵を造るようなものですからね。
設備投資額が、大きくなりすぎるでしょう。
そこで考案されたのが、「超音波」を利用した熟成法です。
酒造りの最終段階において、超音波振動を与えるという世界初の試みです。
すると……。
実に不思議なお酒が出来上がりました。
すなわち、古酒の熟成度と新酒の鮮度を併せ持ったお酒です。
豊醇な香りを立ち上げながら、しかもサラリとした飲み口。
従来の酒造りでは……。
いかなる神業を持った杜氏でも、造ることの出来なかったお酒です。
さらにこのお酒、さらに特筆すべき特徴を持ってました。
酔い心地が軽いうえ、酔い覚めが驚くほどすがすがしいのです。
なんでも、生体反応テストをしたところ、アルコールの影響が大きく減少してたそうです(参照)。
わたしも、昼酒のほかに、たまーに夜にも日本酒を飲みますが……。
外では、ほとんど飲みません。
飲むのは、そのまま潰れてもいい自室だけ。
酒で失敗する確率が、日本酒の場合、非常に高まるからです。
↑さすがに、ここまでは無かった
日本酒って……。
突然、深いところに引きずりこまれるような酔い方しますよね。
まぁ、飲み過ぎなんでしょうけど。
ほんとに突然、足首を掴まれて引きずり下ろされる感じなんです。
↑「溺れる者はファラオも掴む」だとか
こういう酔い方をしたときは、たいがい記憶を無くします。
友達の家で、布団に吐いたこともありますし……。
朝起きたら、手のひらが擦り傷だらけで真っ赤に染まってたこともあります。
とにかく、朝の目覚めは最悪。
というわけで、日本酒には苦手意識があるんです。
でも、この北雪酒造さんの記事を見つけて、俄然興味が湧きました。
このお酒……。
すでに、市販されてるんですよ。
その名も、「超音波熟成酒」。
略して「超熟酒」。
で、サイトの記事を読んでるうち、興味が抑えられなくなり……。
買ってしまいました。
でん!
久方ぶりに、我が家に来た一升瓶。
間近で見ると、迫力満点です。
一升瓶に、野暮ったいイメージを持つ方も多いかと思いますが……。
外国の日本酒ファンには、“Big Bottle”と呼ばれ、人気があるそうです。
さて、わたしがこの“Big Bottle”を買ったわけは……。
それしかなかったからです。
このあたりは、ちょっと考えてもらいたいものです。
こういう変わったものを買うには勇気が要ります。
もし口に合わなかったら……。
始末に困るからです。
口を切ってるから、よそにやるわけにいきませんしね。
泣く泣く料理酒として使うしかありませんよ。
北雪酒造さんには、ぜひぜひ小瓶での発売を希望します。
お試し用として、ペットボトル入りなんかいいんじゃないでしょうか?
そう云えば……。
日本酒のペットボトル入りって、ありませんよね?
何か、規制でもあるんでしょうか?
と思って調べてみました。
どうやら、日本酒が長時間にわたって日光にさらされると……。
臭いが発生するそうです。
これを、「日光臭」と云うのだとか。
↑日光違い
ビールにペットボトル入りが無いのも、同じ理由のようです。
ビールや一升瓶の色が濃い茶色なのは、日光を防ぐためなんですね。
↑新潟の地ビール「エチゴビール」
うーむ、勉強になるなぁ、『紙上旅行倶楽部』。
でもそれなら、陽の射さない室内であれば、ペットボトルでもぜんぜん大丈夫ってことですよね。
小さなペットボトルに詰め替えれば、うちの冷蔵庫でも冷やせるんだよなって……。
↑わたしの部屋の冷蔵庫は、実際このくらい
今、思いついてしまった。
生酒をキンキンに冷やして飲んだら、美味しそうだよね。
くそ、何で夏が終わってから気づくんだ。
さてさて、「超熟酒」の話でした。
まずは、ラベルのアップから。
歴史と伝統を感じさせないラベルで、とてもいいですね。
裏側も見てみましょう。
どうやら、元になったお酒は、アル添の普通酒のようです。
ま、元々いいお酒を使ったら……。
美味しくなったかどうか、わかりづらいですからね。
さて「超熟酒」、さっそく飲んでみたレポートです。
ラベルには、“冷や”で飲めとありますが……。
わたしはあえて、燗を付けてみました。
日本酒の飲みやすさ、飲みにくさは、燗酒に現れると思うので。
使ったのは、もちろん昨年買った酒燗器。
ハーレクインさんにそそのかされ……。
純米酒を、ぬる燗で飲むためだけに買ったものです。
春以降はまったく使われず、埃をかぶってました。
これまで、純米酒だけを温めてきた酒燗器。
操を破り、初のアル添酒に器を開きます。
さて、その感想ですが……。
まず、飲み口。
確かに、舌触りのまろやかさは感じました。
日本酒(アル添酒?)特有の、舌にピリッと来る感じがありません。
舌の上をサラっと流れて、スーッとノドに消えていく感じですね。
そう云えば、これを書き始めてから気づきましたが……。
食べ物との相性は、試してません。
ツマミなしで飲んだもんで。
うちの父は、酒を飲み始めると、食べ物には一切箸を付けなくなる人でした。
ま、胃をほとんど取ってしまってたので……。
食べ物なんか入れたら、酒の入るスペースがなくなると思ったんでしょうね。
どーも、この父の飲み方を見てた影響なのか……。
日本酒を飲むとき、食べものを口にするという発想が出てきませんでした。
もちろん、夕食はちゃんと食べてますよ。
このときは、赤ワインを飲みます。
ジョッキで、1杯くらいね。
↑こういう感じのアイスビアジョッキ(二重構造なので、見た目ほど入りません)
この日は土曜日だったので、夕食が18時~18時半。
わたしはお昼を食べないので、夕食はたっぷりいただきます。
食後は、お腹いっぱいで苦しい。
で、18時半から19時半は、休憩タイム。
ベッドに仰向けになり……。
目の上にタオルを載せ、テレビのニュースを耳だけで聞きます。
そのまま寝てしまうこともありますが……。
昼寝もしてるので、熟睡はしません。
で、19時半になると起き出します。
パソコンに向かい……。
コメントに付ける画像探しをするためです。
投稿1回分で、小一時間はかかります。
このとき、お酒は飲みません。
余計、はかどらなくなるので。
お茶だけで我慢。
画像探しを終え、コメントにレスを書くと……。
ようやく、晩酌タイムです。
時間は、20時半を回ってます。
普段は、ワインのジュース割りを飲みますが……。
この日は、日本酒のぬる燗。
やっぱり、寒くなってくると、暖かいお酒が恋しいですね。
で……。
どうも、話がだんだんずれてますね。
そうそう。
「超熟酒」の感想でした。
飲み始めの口当たりは、おおいに気に入りました。
しかし……。
1時間ほど飲むと、やはり舌にピリッと来るようになりましたね。
食べながら飲んでれば、気にならないかも知れませんけど。
で、結局、2時間くらい、ツマミなしで飲み続けました。
あ、「和らぎ水」は飲んでます。
冷えたアルカリイオン水ね。
普通の日本酒を、ツマミなしで2時間も飲むと……。
酔いが深くなっていくものですが……。
「超熟酒」では、それがありませんでした。
いつまでも水に浮いてるような気分。
深いところに引きずりこまれそうな気配は感じませんでした。
もっとも、飲んだ量が大したことないですからね。
「和らぎ水」と交互に、舐めるように飲んでましたから。
2合半くらいじゃないでしょうか。
で、実は、驚いたのは翌朝なんです。
前夜は、2時間「超熟酒」を楽しんだ後、もう30分ばかりワインを飲みました。
寝たのは、11時過ぎ。
でも、翌朝5時半に、清々しく起きられたんです。
↑わたしの部屋とは、似ても似つかぬ
二日酔いの気分は、まったくありませんでした。
6時半には、朝ごはんのカレーをバクバク食べてました。
普段、ワインのジュース割りだけを飲んでるときより、ずっと快調でした。
胃腸が、ちゃんと働いてる感じがするんですよ。
いつもなら、朝ごはんを食べると胃が重たくなって……。
お昼になっても、消化が終わらない感じがします。
ところがこの日は……。
お昼前に、お腹が鳴り始めました。
で、空腹を我慢できず……。
昼酒を飲む前に、カップラーメンを食べてしまいました。
で、結論です。
味は……。
たまげるほどの美味しさではありません。
飲みやすいですけどね。
味を求めるなら、それなりの値段の純米酒や吟醸酒を飲むべきでしょう。
あ、そうそう、肝心の値段のことを書いてませんでした。
「超熟酒」は、1升瓶で2,300円です。
北雪酒造さんのサイトからも購入できますが……。
かなりの送料がかかってしまいます。
現時点で、もっとも安く購入できるのは、『セブンネットショッピング』のようです。
販売価格は2,455円ですが、ここは1,500円以上送料無料なので、販売価格ポッキリです。
ま、いずれにしろ、値段だけの価値は、十分あると思いますよ。
特に、日本酒は好きだけど悪酔いしたくない、という人には最適。
この「超熟酒」なら……。
翌朝9:00から会議でも、前の晩飲めます。
電車に乗っても、臭わないんじゃないかな?
北雪酒造さんのサイトには、「北雪が飲める店」というページがあります。
日本全国で飲めるようですが……。
はたして、「超熟酒」を飲ませてくれる店は、あるんでしょうかね?
この次は、昼酒に水割りで飲んでみて、感想を書きますね。
ということで、秋田川反漁屋酒場の場面、再開です。
み「さーて、次は何飲もうかな」
律「ちょっと、もう飲んじゃったの?」
み「1合なんて、あっという間じゃない」
律「味わって飲みなさいよ。
高いんだから」
み「案外セコい女だね。
じゃ、今度は味わって飲むから……。
先生の分けてちょうだい」
律「イヤよ。
自腹で注文しなさい」
み「けちー」
み「お嫁に行けないよ」
律「わたしは行けないんじゃなくて……。
行かないんです。
その言葉、丸々お返します」
み「わたしは……。
行ってもいいけど」
律「あら、そうなの?」
み「全面的に食べさせてくれて……。
でもって、家事もしなくていいんならね」
律「旦那さんに家事までやらせるわけ?」
み「別にしなくていいよ。
母と同居すれば、母がするから」
律「で、あんたは……。
働きもせず、家事もしないってわけ?」
み「左様じゃ」
律「あんただけ、遊び暮らすわけ?
そんなこと、天が許すか!」
み「許してよー」
律「たとえ天が許しても……。
美少女仮面ポワトリンが許しません」
み「古るー」
律「あんただって、知ってるじゃない」
み「遊び暮らしたりなんか、しませんよ」
律「何すんのよ?」
み「小説を書く」
↑小説家と云うと、なぜかこのイメージ(坂口安吾です)
み「毎日投稿できるよ」
律「はいはい。
それだけは、立派だけどね」
み「そういう奇特な人、おらんもんかね?
先生の病院にいない?」
律「そんなバカ、いるか!」
み「じゃ、ほかを探すか……」
律「宝くじ買うほうが、まだ確率は高いわね」
み「ちぇ。
何で人は働かにゃならんのかね。
たった一度きりの人生なのに……。
切ない。
くそ。
やけ酒飲みたくなってきた。
マスミン、次のお勧めは?
あ、ちょっと、あの人何飲んでるんだろ?」
国立醸造試験所の嘉儀金一郎という人が……」
↑旧国立醸造試験所(東京都北区滝野川)
老「米を摺り潰さなくても……。
『酌み掛け』と云って、麹の酵素がしみ出した液を何度も掛けることにより……。
米が仕込み水に溶けるということを発見した」
み「なんじゃそれ。
それじゃ、江戸時代までの“蔵人”の重労働は、無意味だったと云うこと?」
老「ま、まったくの無駄とまでは思いたくないがの。
コストパフォーマンス的には……。
かなり問題のある工程ではあったな」
み「なんで、もっと早く気づかなかったのかね」
老「昔からのやり方を忠実に守るという姿勢も、大事には違いないがの。
何の疑問も抱かず、盲目的に従うだけというのも、考えものじゃ。
やっていることの意味を理解した上で……。
もっと良い方法がないか、常に追求していく姿勢もまた、必要なことじゃろう」
み「改善を受け入れる土壌も必要ってことだね」
老「そうじゃな。
頑固なだけでは、決して良いものは造れん」
律「じゃ、今はその“山卸”をしてる蔵はまったく無いんですか?」
み「あるわけないじゃん」
老「ところが……。
あるんじゃな」
み「うそ。
なんで?
必要のない工程なのに」
老「時代が変わったということじゃよ。
昔のように、造れば売れたという時代なら……。
なにより効率が第一となろう。
しかし、今は違う。
付加価値を付けて、ほかと区別しなければ、売れない時代じゃ」
み「わかった。
昔ながらの“山卸”を行って仕込みましたという、付加価値だね」
老「そう。
その付加価値を認め、買う人がいればいいわけじゃ」
み「需要と供給の問題なんだね」
老「逆に云えば……。
日本酒が売れなくなった今こそが……。
ほんとうの日本酒造りが出来る時代、とも云えるのかも知れん。
そして、呑兵衛にとっても……。
ほんとうの日本酒が味わえる、ありがたい時代じゃな」
み「“山卸”をしたお酒の味って、違うの?」
老「飲み比べれば、明らかに違う」
み「美味しいわけ?」
老「美味しいと感じるかどうかは、まさに好き好きじゃ。
若い人は、味が強すぎると感じるかも知れんな」
み「じゃ、“山卸”をしない、“山廃仕込み”の味は?」
老「基本的には一緒と思って良い。
同じ“生もと”系じゃでな」
み「“きもと”って、何よ?
吉本の親戚?」
老「“山卸”をして造った“もと”を、“生もと”と云うんじゃ。
この“生もと”と“山廃もと”を合わせて、“生もと系”と呼ばれる」
老「これに対するのが、既成の乳酸菌を添加する、“速醸もと”じゃな」
↑上の図2点の載ってるページはこちら
み「ふーん。
味が強すぎるってのは、早い話、クドい味ってこと?」
老「しっかりと、酒の味がすると云ったほうが良いかな。
腰が強いとも表現するが……。
水で割っても、同じ酒の味がする。
お若い方は、水割りやロックで味わうのも良かろう」
み「へー。
冷やして飲んだ方が、いいのか」
老「燗酒の苦手な方はな。
しかし、ほんとうの味は燗でこそ味わえる、と云えるかも知れん。
“燗上がり”という言葉があるが……。
常温では隠れていた味や香りが、燗を付けることで、まさに花開くんじゃよ。
“生もと”系の特徴は、けだし、この“燗上がり”にあると云ってもいいほどじゃ」
律「おいしそうね」
み「そうかぁ?
なんか、苦手っぽいな」
律「なんでよ?」
み「新潟のお酒とは、真逆だもん」
律「どこが?」
み「お酒の味がしっかりするって感じなんでしょ」
律「新潟のお酒は、お酒の味がしないの?」
み「新潟のお酒のキーワードは、“淡麗”だからね」
み「水のように淡いってのが特徴」
↑『新潟淡麗倶楽部』
律「水っぽいってことじゃないの?」
み「ま、しっかりとお酒の味がした方がいいって人には……。
物足りないかもね。
でも、ノンベーには好評だよ。
うちの父も、大好きだった」
律「なんで?」
み「いくら飲んでも飽きないから。
舌に残らないんだね」
律「じゃ、結局飲まないの?
この飛良泉」
み「自腹では飲まん」
律「おごってもらえば飲むってこと?」
み「無論」
律「威張って言うな」
老「ほっほ。
それじゃ……。
長々と話を聞いてもらったお礼に……。
わしが一杯おごろうか」
み「ほんと!
さすがマスミン、太っ腹」
み「大したもんだよ。
人は、こういう具合に年齢を重ねたいもんだね。
気が変わらないうちに、注文しよう。
あ、店員さーん。
早く早く。
あのね。
聞いて驚かないでちょうだい。
今から、恐ろしい注文をしますから。
ひょっとして、開店以来、初めての注文かも。
いい?
このお酒、なんて読むと思う?
“ひらいずみ”?
さすがに、ちゃんと知ってるわけね。
わたしは今、この180mlのボトルを注文しようとしてるわけよ。
見てよ、この値段。
980円よ。
こんなの、注文した人いないでしょ?
え?
毎日出ます?
ほんまかー」
店「何本お持ちしましょう?」
み「恐ろしいこと、さらっと言うわね。
980円もするボトルを、何本もお持ちされてたまるもんですか。
って……。
そうか、これマスミンのおごりなんだ。
そうかそうか。
じゃ、あなた、あるったけ持ってきてちょうだい。
そうね。
100万本くらい」
老「バカを言うでない。
1本じゃ」
み「けちー」
老「お前さんが1本分を出せば、2本になる」
み「わたしのかわりに先生が出せば、2本になる」
律「なんでよ!
あ、そうだ。
わたしとMikiちゃんが半分ずつ出せば……。
2本になるじゃない」
み「ふむ~。
980円の半分、490円で1合味わえるんだから……。
良しとするか。
このメニュー見ても、490円で飲める手酌酒は無いもんね」
み「じゃ、店員さん。
この“大吟醸”の飛良泉を、2本ね。
1本は、こちら、品のいいおじいさんの勘定に付けてください。
もう1本は、こちら、美人の先生のお勘定に」
律「わたしたち2人のでしょ」
み「もー。
せっかく褒めてあげたのに」
律「褒めてもらわなくてけっこう。
聞き飽きてるから」
み「こうは年を取りたくないもんだね」
律「年なんか取ってません」
み「アラフォーでしょ」
律「まだなってません」
み「“アラ”ってのは、“Around”のことじゃない」
み「40前後ってこと」
律「前と後を一緒にしないで。
わたしは、“前”です」
み「土俵際のくせに」
律「寄り返してやる」
み「恐ろしー」
店「お待たせしました」
み「げ。
もう持ってきちゃったの。
早や。
でも、まぁ、ボトルをそのまま出してくるだけだもんね」
み「それじゃ、先生。
改めて乾杯といきますか」
律「いきましょう。
秋田の夜に」
み「土俵際の夜に」
律「いらんこと言わんでいい」
み「カンパーイ」
律「カンパーイ」
というわけで……。
ここで2人は、飛良泉の大吟醸酒『秋田泉』を味わうわけですが……。
この『秋田泉』、残念ながらネットでは買えないようです。
しかし!
この夏、大吟醸ではありませんが……。
わたしは、飛良泉を飲んだんです。
秋田のお酒の小瓶詰め合わを、ネットで見つけたんですね。
で、頑張ってる自分へのご褒美として……。
自分自身に、お中元を送ることにしました。
夏限定の商品らしく、冷酒用のセットでした。
3種類のお酒が、300ml瓶で2本ずつ入ってました。
その中に、飛良泉もあったんです。
実は、これを注文したのは……。
例のレンジでチンする“きりたんぽ鍋”を取り寄せたころ。
そのころはまだ、飛良泉のことを書くなんて思ってませんでした。
なので、飛良泉が入ってたのは、まさしく偶然なんですね。
こんなに長々と飛良泉の話をするのなら……。
もっと味わって飲んどけばよかったと後悔しましたが……。
まさに、後の祭りです。
さて、お味の方です。
ほかのお酒もそうですが、吟醸酒なんかじゃありません。
飛良泉の場合、普通種のひとつ上、本醸造酒でした。
ラベルには、「夏季限定 生貯蔵」とありました。
この“生貯蔵”とは何かと云うことですが……。
普通、出来上がったお酒は、腐敗や変質を防ぐため、加熱殺菌されます。
出来た直後に一回、瓶詰め前にもう一回。
これを、“火入れ”と云います。
この“火入れ”をまったく行わないお酒を、「生酒」と呼びます。
一回目の“火入れ”だけ行うお酒を、「生詰め酒」。
そして、二回目の“火入れ”だけを行うお酒が、「生貯蔵酒」です。
これらのお酒の味が、普通のお酒といったいどう違うかと云うことについては……。
投稿に間に合わず、調べられませんでした。
きっと、ハーレクインさんが解説してくださることでしょう。
さて、この飛良泉を始め……。
3本ともが、『冷酒用』となってました。
わたしの冷酒の飲み方は、前にも書いたかも知れませんが……。
水割りです。
休日の昼酒として飲むんですね。
普段はだいたい、焼酎の野菜ジュース割り(HQ氏命名:ベジタブル・トミー)ですが……。
↑これは、ブラッディマリー(ウォッカのトマトジュース割り)
夏だけは、たまーに、冷たい日本酒が飲みたくなるんです。
スーパーでも、夏場は冷酒用の日本酒が売りだされてますね。
それを買ってきます。
銘柄もへったくれもありません。
紙パック入りです。
飲み方は……。
マグカップに氷を満杯に入れ……。
日本酒を7分目くらいまで注ぎます。
残った部分を、冷水(アルカリイオン水)で満たしたら、マドラーでかき混ぜます。
これだけ。
冷蔵庫が狭く、紙パックのお酒は入らないので……。
日本酒は冷やしてありません。
なので、すぐに氷が溶けます。
早い話、日本酒はものすごーく薄まります。
ほとんど、日本酒の味がしないくらいです。
ゴクゴク飲めます。
夏の昼酒にはサイコー、という具合です。
というわけで、自分へのご褒美に買った6本詰め合わせも……。
全部、休日の昼酒に飲んじゃいました。
さて、その感想です。
同じように、水と氷で薄めたのに……。
紙パックのお酒とは、ぜんぜん違ってました。
3種類ともそうでしたが……。
2倍くらいに薄めても、しっかりとお酒の味がするんですよ。
そのまま飲んだら、そうとう強い味がするはず。
飲んでみればよかったんですが……。
なんか、頭痛くなりそうな気がして、止めました。
正直……。
わたしには、苦手系の味でしたね。
新潟のお酒の特徴、“淡麗”とは遠く離れた味。
秋田と新潟は、同じ日本海側の雪国で、米どころ。
なので、もっと似た味がすると思ってました。
で、調べてみたんですね。
県別に、お酒の甘辛濃淡をグラフにした表がありました。
見難いと思うので、新潟と秋田が入るあたりを拡大してみます(全体が見てみたい方はこちら)。
新潟と秋田、かなり離れてますよね。
ていうか、秋田のお酒の方が、ほぼ全国平均なんですね。
離れてるのは、新潟の方。
思うに……。
昔の、いわゆる美味しいお酒の標準ってのは……。
関西のお酒だったのではないでしょうか。
伏見のある京都なんかも、秋田と同じ中心付近にあります。
灘を擁する兵庫などは、さらにかけ離れ……。
“淡麗”の対極にあることがわかります。
新潟の「越乃寒梅」がブームになったときは……。
それまでの基準とは真逆の“淡麗”さが、珍しがられたんじゃないでしょうか。
さて、関西のお酒で、思い出したことがあります。
「下らない」という言葉の語源です。
これが、お酒に関する用語だったってこと、ご存知でした?
昔々、物流の主役が船だったころ。
上方から江戸に行く物資を、「下りもの」と云いました。
天皇がいた京都方面に向かう便が「上り」、反対が「下り」だったわけです。
天皇が東京に移ってからは、列車も、東京行きが「上り」になりましたが。
で、上方から船に乗って下ってくるお酒が、江戸で非常に評判が高かったわけです。
「下り酒」と呼ばれ、高い値が付けられました。
その逆に、上方から下って来ないお酒は……。
「下らない酒」と言われ、評価が低かったわけです。
気位の高い江戸っ子が、上方のお酒を、なぜそれほどまでに評価したのでしょう?
それはですね……。
ほんとうに美味しかったからです。
あまりにも江戸での評判が高いので……。
逆に、上方の人たちが、首を捻りました。
で、江戸に行ったおり、半信半疑で飲んでみて……。
仰天したそうです。
地元で飲むお酒より、遥かに美味しかったからです。
樽の檜の香りも移って、なんとも云えない上級酒に仕上がってたそうです。
とても、積みこんだのと同じお酒とは思えなかったとか。
このわけは、現在解明されてます。
上方のお酒が美味しくなったのは……。
船で運ばれたおかげだったんです。
海路で運ばれてる間に……。
波に揺られ続けることによって、お酒の熟成が進んだということだそうです。
昔から漁師の間では、「船に載せた水は、真夏でも腐らない」など……。
船上の不思議については語られてました。
で、実際、船の上で、お酒がどう変化してたかなんですが……。
現代科学の超音波の分野では、お酒を振動させて熟成させる実験がなされてます。
その結果、出力の弱い超音波を酒に照射すると、酒の分子構造が変わることがわかりました。
アルコール分子の周りを、水の分子が包んだ構造となるんだそうです。
これによって、アルコール成分が、舌を直接刺激しなくなります。
つまり、舌にピリッとくる刺激が消えて……。
いわゆる、“まろやか”な味になったということです(超音波で酒がうまくなる)。
新潟県の佐渡にある酒造メーカー、『北雪酒造』さんでは……。
実際に、「下り酒」を再現する試みが行われてます。
この会社、実にユニークなことをすることで有名らしくて……。
このほかにも、音楽を聴かせた「音楽酒」なども造ってます。
北雪酒造さんが、「下り酒」を再現するにあたっては……。
実際、佐渡名物「たらい舟」に、お酒を乗せて実験したそうです。
↑ぜったいキケン
その結果、味、香りともに、数段引き立つ事を確認しました。
で、「下り酒」再現のプロジェクトを立ち上げたのだとか。
しかしながら……。
大量のお酒を、船に載せて長期間保存するとなると……。
温度湿度の管理など、非常に難しい問題が生じます。
海に浮かぶ酒蔵を造るようなものですからね。
設備投資額が、大きくなりすぎるでしょう。
そこで考案されたのが、「超音波」を利用した熟成法です。
酒造りの最終段階において、超音波振動を与えるという世界初の試みです。
すると……。
実に不思議なお酒が出来上がりました。
すなわち、古酒の熟成度と新酒の鮮度を併せ持ったお酒です。
豊醇な香りを立ち上げながら、しかもサラリとした飲み口。
従来の酒造りでは……。
いかなる神業を持った杜氏でも、造ることの出来なかったお酒です。
さらにこのお酒、さらに特筆すべき特徴を持ってました。
酔い心地が軽いうえ、酔い覚めが驚くほどすがすがしいのです。
なんでも、生体反応テストをしたところ、アルコールの影響が大きく減少してたそうです(参照)。
わたしも、昼酒のほかに、たまーに夜にも日本酒を飲みますが……。
外では、ほとんど飲みません。
飲むのは、そのまま潰れてもいい自室だけ。
酒で失敗する確率が、日本酒の場合、非常に高まるからです。
↑さすがに、ここまでは無かった
日本酒って……。
突然、深いところに引きずりこまれるような酔い方しますよね。
まぁ、飲み過ぎなんでしょうけど。
ほんとに突然、足首を掴まれて引きずり下ろされる感じなんです。
↑「溺れる者はファラオも掴む」だとか
こういう酔い方をしたときは、たいがい記憶を無くします。
友達の家で、布団に吐いたこともありますし……。
朝起きたら、手のひらが擦り傷だらけで真っ赤に染まってたこともあります。
とにかく、朝の目覚めは最悪。
というわけで、日本酒には苦手意識があるんです。
でも、この北雪酒造さんの記事を見つけて、俄然興味が湧きました。
このお酒……。
すでに、市販されてるんですよ。
その名も、「超音波熟成酒」。
略して「超熟酒」。
で、サイトの記事を読んでるうち、興味が抑えられなくなり……。
買ってしまいました。
でん!
久方ぶりに、我が家に来た一升瓶。
間近で見ると、迫力満点です。
一升瓶に、野暮ったいイメージを持つ方も多いかと思いますが……。
外国の日本酒ファンには、“Big Bottle”と呼ばれ、人気があるそうです。
さて、わたしがこの“Big Bottle”を買ったわけは……。
それしかなかったからです。
このあたりは、ちょっと考えてもらいたいものです。
こういう変わったものを買うには勇気が要ります。
もし口に合わなかったら……。
始末に困るからです。
口を切ってるから、よそにやるわけにいきませんしね。
泣く泣く料理酒として使うしかありませんよ。
北雪酒造さんには、ぜひぜひ小瓶での発売を希望します。
お試し用として、ペットボトル入りなんかいいんじゃないでしょうか?
そう云えば……。
日本酒のペットボトル入りって、ありませんよね?
何か、規制でもあるんでしょうか?
と思って調べてみました。
どうやら、日本酒が長時間にわたって日光にさらされると……。
臭いが発生するそうです。
これを、「日光臭」と云うのだとか。
↑日光違い
ビールにペットボトル入りが無いのも、同じ理由のようです。
ビールや一升瓶の色が濃い茶色なのは、日光を防ぐためなんですね。
↑新潟の地ビール「エチゴビール」
うーむ、勉強になるなぁ、『紙上旅行倶楽部』。
でもそれなら、陽の射さない室内であれば、ペットボトルでもぜんぜん大丈夫ってことですよね。
小さなペットボトルに詰め替えれば、うちの冷蔵庫でも冷やせるんだよなって……。
↑わたしの部屋の冷蔵庫は、実際このくらい
今、思いついてしまった。
生酒をキンキンに冷やして飲んだら、美味しそうだよね。
くそ、何で夏が終わってから気づくんだ。
さてさて、「超熟酒」の話でした。
まずは、ラベルのアップから。
歴史と伝統を感じさせないラベルで、とてもいいですね。
裏側も見てみましょう。
どうやら、元になったお酒は、アル添の普通酒のようです。
ま、元々いいお酒を使ったら……。
美味しくなったかどうか、わかりづらいですからね。
さて「超熟酒」、さっそく飲んでみたレポートです。
ラベルには、“冷や”で飲めとありますが……。
わたしはあえて、燗を付けてみました。
日本酒の飲みやすさ、飲みにくさは、燗酒に現れると思うので。
使ったのは、もちろん昨年買った酒燗器。
ハーレクインさんにそそのかされ……。
純米酒を、ぬる燗で飲むためだけに買ったものです。
春以降はまったく使われず、埃をかぶってました。
これまで、純米酒だけを温めてきた酒燗器。
操を破り、初のアル添酒に器を開きます。
さて、その感想ですが……。
まず、飲み口。
確かに、舌触りのまろやかさは感じました。
日本酒(アル添酒?)特有の、舌にピリッと来る感じがありません。
舌の上をサラっと流れて、スーッとノドに消えていく感じですね。
そう云えば、これを書き始めてから気づきましたが……。
食べ物との相性は、試してません。
ツマミなしで飲んだもんで。
うちの父は、酒を飲み始めると、食べ物には一切箸を付けなくなる人でした。
ま、胃をほとんど取ってしまってたので……。
食べ物なんか入れたら、酒の入るスペースがなくなると思ったんでしょうね。
どーも、この父の飲み方を見てた影響なのか……。
日本酒を飲むとき、食べものを口にするという発想が出てきませんでした。
もちろん、夕食はちゃんと食べてますよ。
このときは、赤ワインを飲みます。
ジョッキで、1杯くらいね。
↑こういう感じのアイスビアジョッキ(二重構造なので、見た目ほど入りません)
この日は土曜日だったので、夕食が18時~18時半。
わたしはお昼を食べないので、夕食はたっぷりいただきます。
食後は、お腹いっぱいで苦しい。
で、18時半から19時半は、休憩タイム。
ベッドに仰向けになり……。
目の上にタオルを載せ、テレビのニュースを耳だけで聞きます。
そのまま寝てしまうこともありますが……。
昼寝もしてるので、熟睡はしません。
で、19時半になると起き出します。
パソコンに向かい……。
コメントに付ける画像探しをするためです。
投稿1回分で、小一時間はかかります。
このとき、お酒は飲みません。
余計、はかどらなくなるので。
お茶だけで我慢。
画像探しを終え、コメントにレスを書くと……。
ようやく、晩酌タイムです。
時間は、20時半を回ってます。
普段は、ワインのジュース割りを飲みますが……。
この日は、日本酒のぬる燗。
やっぱり、寒くなってくると、暖かいお酒が恋しいですね。
で……。
どうも、話がだんだんずれてますね。
そうそう。
「超熟酒」の感想でした。
飲み始めの口当たりは、おおいに気に入りました。
しかし……。
1時間ほど飲むと、やはり舌にピリッと来るようになりましたね。
食べながら飲んでれば、気にならないかも知れませんけど。
で、結局、2時間くらい、ツマミなしで飲み続けました。
あ、「和らぎ水」は飲んでます。
冷えたアルカリイオン水ね。
普通の日本酒を、ツマミなしで2時間も飲むと……。
酔いが深くなっていくものですが……。
「超熟酒」では、それがありませんでした。
いつまでも水に浮いてるような気分。
深いところに引きずりこまれそうな気配は感じませんでした。
もっとも、飲んだ量が大したことないですからね。
「和らぎ水」と交互に、舐めるように飲んでましたから。
2合半くらいじゃないでしょうか。
で、実は、驚いたのは翌朝なんです。
前夜は、2時間「超熟酒」を楽しんだ後、もう30分ばかりワインを飲みました。
寝たのは、11時過ぎ。
でも、翌朝5時半に、清々しく起きられたんです。
↑わたしの部屋とは、似ても似つかぬ
二日酔いの気分は、まったくありませんでした。
6時半には、朝ごはんのカレーをバクバク食べてました。
普段、ワインのジュース割りだけを飲んでるときより、ずっと快調でした。
胃腸が、ちゃんと働いてる感じがするんですよ。
いつもなら、朝ごはんを食べると胃が重たくなって……。
お昼になっても、消化が終わらない感じがします。
ところがこの日は……。
お昼前に、お腹が鳴り始めました。
で、空腹を我慢できず……。
昼酒を飲む前に、カップラーメンを食べてしまいました。
で、結論です。
味は……。
たまげるほどの美味しさではありません。
飲みやすいですけどね。
味を求めるなら、それなりの値段の純米酒や吟醸酒を飲むべきでしょう。
あ、そうそう、肝心の値段のことを書いてませんでした。
「超熟酒」は、1升瓶で2,300円です。
北雪酒造さんのサイトからも購入できますが……。
かなりの送料がかかってしまいます。
現時点で、もっとも安く購入できるのは、『セブンネットショッピング』のようです。
販売価格は2,455円ですが、ここは1,500円以上送料無料なので、販売価格ポッキリです。
ま、いずれにしろ、値段だけの価値は、十分あると思いますよ。
特に、日本酒は好きだけど悪酔いしたくない、という人には最適。
この「超熟酒」なら……。
翌朝9:00から会議でも、前の晩飲めます。
電車に乗っても、臭わないんじゃないかな?
北雪酒造さんのサイトには、「北雪が飲める店」というページがあります。
日本全国で飲めるようですが……。
はたして、「超熟酒」を飲ませてくれる店は、あるんでしょうかね?
この次は、昼酒に水割りで飲んでみて、感想を書きますね。
ということで、秋田川反漁屋酒場の場面、再開です。
み「さーて、次は何飲もうかな」
律「ちょっと、もう飲んじゃったの?」
み「1合なんて、あっという間じゃない」
律「味わって飲みなさいよ。
高いんだから」
み「案外セコい女だね。
じゃ、今度は味わって飲むから……。
先生の分けてちょうだい」
律「イヤよ。
自腹で注文しなさい」
み「けちー」
み「お嫁に行けないよ」
律「わたしは行けないんじゃなくて……。
行かないんです。
その言葉、丸々お返します」
み「わたしは……。
行ってもいいけど」
律「あら、そうなの?」
み「全面的に食べさせてくれて……。
でもって、家事もしなくていいんならね」
律「旦那さんに家事までやらせるわけ?」
み「別にしなくていいよ。
母と同居すれば、母がするから」
律「で、あんたは……。
働きもせず、家事もしないってわけ?」
み「左様じゃ」
律「あんただけ、遊び暮らすわけ?
そんなこと、天が許すか!」
み「許してよー」
律「たとえ天が許しても……。
美少女仮面ポワトリンが許しません」
み「古るー」
律「あんただって、知ってるじゃない」
み「遊び暮らしたりなんか、しませんよ」
律「何すんのよ?」
み「小説を書く」
↑小説家と云うと、なぜかこのイメージ(坂口安吾です)
み「毎日投稿できるよ」
律「はいはい。
それだけは、立派だけどね」
み「そういう奇特な人、おらんもんかね?
先生の病院にいない?」
律「そんなバカ、いるか!」
み「じゃ、ほかを探すか……」
律「宝くじ買うほうが、まだ確率は高いわね」
み「ちぇ。
何で人は働かにゃならんのかね。
たった一度きりの人生なのに……。
切ない。
くそ。
やけ酒飲みたくなってきた。
マスミン、次のお勧めは?
あ、ちょっと、あの人何飲んでるんだろ?」