2012.3.3（土）
律「不思議な雰囲気ね」
み「居眠りしそうだよ」
律「その格好で寝ないでよ」
み「なんで？」
律「ぜったい股開くでしょ」
み「開かないように……。
浴衣の帯で、膝を縛ればいいのか」
↑の画像は、川瀬整体院さんのブログで、発見。
「ひざ縛りダイエット」なるものが存在するようです。
こちらのページに、やり方が書いてあります。
なお、「ヒモ縛り睡眠法」なるものまでありました。
寝てて火事になったら、どうすんだ？
律「ヒザ縛るなんて、縁起でもない。
心中じゃあるまいし」
律「第一、帯解いたら、上がはだけちゃうでしょ」
み「ままならぬのぅ」
律「さ、もう行きましょ」
み「もう行っちゃうの？」
律「お腹空いたの。
置いてくわよ」
み「待ってよぉ」
その他の設備として……。
広々とした休憩室もあります。
その奥には、キッズコーナーも。
家族連れなら、半日くらいは楽しめそうですね。
出口付近には、床屋さんまでありました。
み「ここも『あかすり』かな？」
律「男女共用なんだから、それは無いでしょ」
み「じゃ、なんだろ？
覗いてみよう」
律「ほんとにもぅ！
いい加減、出ようってば」
み「やっぱりさっきのリフレと同じみたいだよ。
なんで、内と外に、同じような施設があるんだろ」
律「ここは、マッサージでしょ」
↑イメージ（「華のゆ」ではありません）
み「だって、さっきのとこだって、マッサージだったじゃない」
律「マッサージとは、称してなかったでしょ。
“リフレ”とか、“あかすり”とかで」
み「どこが違うの？」
律「日本にはね、『あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律』ってのがあるの」
み「長い名前！」
律「その法律の第1条には、こう記されてあります。
『医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許を受けなければならない』
すなわち、マッサージを業として行えるのは……。
医師のほかでは、『あん摩マッサージ指圧師』だけなの。
もちろん、国家資格ね」
み「そうなんだ！
知らなかった……」
律「でも、昭和22年に公布されたこの法律には、重大な欠陥があってね。
そもそも、“あん摩”や“マッサージ”ってのがどういう行為を云うのか……。
まったく書かれてないの」
み「なんじゃそりゃ」
律「早い話……。
“マッサージ”とさえ称さなければ……。
事実上マッサージと同じことをしてても、罰せないわけよ。
柔道整復師の中には……。
保険を利用した激安マッサージを行う者さえいるのよ」
み「ふーん。
本物の『あん摩マッサージ指圧師』さんも、タイヘンなんだね」
律「そうよ。
目が不自由で、ほかの職業には就きにくい方もいるのにね」
み「なるほど。
そんな過当競争にさらされてたんじゃ、お気の毒だわ。
ところで、マッサージ、してく？」
律「今日は、パス。
お腹空いたって、さっきから言ってるでしょ」
ソッコーで部屋に戻り、着替えましょう。
律「パンツ穿きなさいよ」
み「わかっとるわい。
お化粧どうする？」
律「わたしはこのままでいいわ」
み「自信ですねー」
律「秋田で、知り合いには会わないでしょ」
み「会っても気づかないんじゃないの？」
律「失礼ね。
普段から、スッピンとたいしてかわらないわよ。
妊婦さんは、化粧品の匂いとかに敏感だからね」
さて、出陣です。
わたしたちは、外に食べに出ますが……。
お風呂に入ったら、もうメンドクサいという方もおられると思います。
特に、お化粧し直すのは億劫ですよね。
そんな方もご安心ください。
『華のゆ』の館内には、居酒屋が入ってるんです。
『海鮮ダイニング はなの夢 まぐろや』というお店です。
名前のとおり、お魚新鮮！
もちろん、浴衣での入店もオーケー。
浴衣にスッピンなら、普通ですから……。
めんどくさがりには、もってこいですね。
『華のゆ』の入浴料とセットのコースもあるようです。
ちなみに、『雅の宴』というコースは……。
お料理8品に、以下のオプションが無料で付きます。
①『華のゆ』入浴料
②館内着＋タオルセット
③貸切部屋（2時間）
↑これはちょっと、用途不明
④送迎（8名以上）
『雅の宴』コースのお値段は……。
なんと、3,950円！
ただし、飲み物は別料金ね。
でも、1,500円プラスすれば、2時間の飲み放題が付けられます。
新潟に、こんな施設があったらいいのにな。
宴会なんか、ここで決まりですよ。
秋田の幹事さんは、悩む必要なし！
と言いつつ……。
わたしたちは、利用しないんだけどね。
やっぱ、旅の醍醐味のひとつは、夜の町です。
外はもう、どっぷりと暮れてます。
夜陰に紛れ、スッピンで出かけましょう。
み「おぉ。
秋田の夜の匂い。
旅情ですねぇ」
↑『秋田竿燈まつり（2011年は、8月3日～6日）』
律「どこか予約してあるの？」
み「2人なんだから、予約なんて必要ないでしょ。
でも、面白そうなお店だけは調べておいた」
律「ほー。
楽しみね」
み「まずは、そこにある橋を渡って……」
この橋は、旭川に架かる『五丁目橋』。
渡りきったところから、川に沿って左右に伸びる通りが……。
秋田一の“歓楽街”、『川反通り』。
↑賑やかな写真が無い！
律「どっち行くの？」
み「お店は右の方だけど……。
その前に、ちょっと取材したい」
律「何の取材よ？」
み「取材って言うか……。
怖いもの見たさだけど」
律「お化け屋敷みたいね」
み「ちょっとそこの小路、覗いてみてよ」
律「何でわたしが覗くのよ」
み「大丈夫だって。
いきなり攫われたりしないから」
↑サーカスに売られる図
律「攫われてたまるか。
大丈夫なら、あんたが行きなさいよ」
み「じゃ、手、繋いでてよ。
覗くからね」
恐る恐る、小路の奥を覗きます。
み「あった～」
律「何があったのよ？」
み「覗いてみ」
律「ほんとにお化け屋敷でもあるの？
どれどれ。
……」
↑夜の写真が無かった
み「あったでしょ」
律「同じようなお店が並んでるわね。
派手なネオン。
なんとな～く……。
風俗店っぽいけど」
み「あたりです。
ここは、ソープランド街」
↑「レディース」さんから拝借しました。
ご存じの方も多いでしょうが……。
少し解説しますね。
“ソープランド”は、いわゆる「個室付特殊浴場」のことです。
かつては、“トルコ風呂”と呼ばれてました。
もちろん、トルコにある“トルコ風呂”は、性風俗とは関係ありません。
↑アングルの名作『トルコ風呂』
伝統的な公衆浴場のことで、「ハンマーム」と呼ばれてます。
女性の社交の場だったらしいです。
でも、西洋人旅行者の目には、そうは映らなかったようです。
ベールで顔を隠した女性が、浴場に赴く様子を見て……。
欲情したわけですね。
ハーレムのイメージと混同したようです。
どうやら、その西欧人のイメージが、そのまま日本に持ちこまれ……。
「個室付特殊浴場」の呼称となってしまったようです。
日本人は、あっさり受け入れてしまった“トルコ風呂”ですが……。
日本に来たトルコ人は、びっくり仰天。
カンカンに怒りました。
ま、当然ですわな。
もし外国で、性風俗店が“Japanese Bath”とか呼ばれてたら、日本人だって怒るでしょ？
日本の湯屋は、マジで混浴だったんだから……。
ほんとに呼ばれかねないよね。
さて、というわけで……。
東京大学に留学したトルコ人学生、ヌスレット・サンジャクリさんも、大憤慨したお一人。
彼は、厚生省に直訴するなどして、改名運動を起こしました。
↑左から2人目がサンジャクリさん（当時の厚生大臣・渡部恒三氏らと）
トルコ大使館も、これを支持しました。
というのも、実害を被ってたからです。
不敬にも、「トルコ大使館」という名前の店が存在したそうで……。
本物の大使館に予約の電話が入ったりして、大迷惑してたとか。
で、この運動は、マスコミに大きく取り上げられることになりました。
結果、横浜市の業界団体が、“トルコ風呂”の名称を用いないことを決議。
新名称を公募し、“ソープランド”と決定したわけです。
1984年のことでした。
ちなみに、お隣の韓国では……。
日本のトルコ風呂に、いたく感銘を受けた人物が……。
本国に帰り、同じような形態の性風俗店を開きました。
名称は、そのまんまトルコ風呂（トッキータン）。
日本のトルコ風呂が“ソープランド”に名称を変更した後も……。
韓国では、ほったらかしでした。
怒ったトルコは、政府直々に抗議を申し入れました。
トルコ国内では、性風俗街を“コリアンストリート”と呼ぼうというキャンペーンまで行われたそうです。
で、さすがの韓国政府も重い腰を上げ、公衆衛生法が改正され……。
トルコ風呂は、“蒸気風呂”と名称を変えたのです。
日本に遅れること、13年。
1997年のことです。
さて、この改称問題においては……。
別の問題が発生しています。
すなわち、“トルコ風呂”という名称が使われてたころの……。
小説やマンガ、映画などが、販売できなくなってるんですね。
それでも、小説やマンガなんかは、文章やセリフを書き換えたりすれば、出版できます。
でも、映画はほぼ無理。
特に、タイトルに“トルコ”の名称を用いた作品は……。
ほぼ視聴不可能になってるようです。
↑腕組みの男性は、梅宮アンナのお父さん
これについては……。
ちょっと、考えさせられますよね。
“ダッコちゃん”や“ちびくろサンボ”と同じく……。
オーバーランなんじゃないでしょうか？
焚書坑儒に通じる臭いを感じてしまいます。
ま、“トルコ風呂”の場合……。
特定の国名が明示されてるから、問題が深刻だったんでしょうけどね。
しかし……。
“トルコ風呂”時代に書かれた作品内の記述を……。
当時存在しなかった“ソープランド”という名称に書き換えるというのは……。
大いに疑問ですよね。
ちょっと、話題が重くなってしまいました。
お話を続けます。
律「へ～。
独特の雰囲気があるわね」
み「だよね。
どうする？
踏みこんでみる？」
律「とってもその勇気はないわ。
ここでお見送りするから……。
Mikiちゃん、行ってらっしゃい」
み「わたしだって、無理だよ」
律「新潟には、無いの？」
み「あるけどさ。
細い路地に、細々とね」
↑新潟市古町にある『昭和新道』
み「ま、昼間しか覗いたことないけど。
事前に調べてきた資料では、8軒だった」
律「なんで、そんなことまで調べて来たのよ」
み「川反を調べてたら、出てきたんだよ」
律「ここって、何軒あるのかしら？
8軒よりありそうだけど」
み「資料によると、21軒だった」
↑大阪がないのは、なぜじゃ？
律「秋田、スゴいじゃない」
み「川崎には負けるけどね」
律「あ、そうか。
わが町川崎は、何軒？」
み「堀の内と南町、併せて84軒」
↑堀の内
律「すごーい。
日本一？」
み「残念ながら……。
そうはいかないよ。
吉原があるでしょ」
律「何軒？」
み「154軒」
律「川崎の約2倍か。
でも、人口比から見たら……。
秋田川反の21軒ってのは、多いんじゃないの？」
み「仙台国分町が、6軒しかないからね」
律「何でこんなに多いわけ？」
み「秋田人が、スケベだからじゃないの？」
律「そんなこと言っていいわけ」
み「なんとなーく……。
柳葉敏郎とか、スケベそうじゃない」
↑GOの先には、ソープ街が……？
律「ガイドさんに怒られるわよ」
み「ファンだって言ってたもんね」
律「でも、ほんとになんでだろ？」
み「実は……。
わたしなりに考察し……。
ひとつの結論に至っております」
律「ほー。
お聞きしましょう」
み「早い話、秋田は東京から遠いからだよ」
律「何それ？
ソープ街の軒数と、関係あるの？」
み「まぁ、お聞きなさい。
東京本社から、秋田支社に出張するサラリーマンがいるとします」
み「朝一番の新幹線は、東京発6:40分の『こまち115号』」
律「スゴい早出ね。
早朝手当もらわなきゃ」
み「ところが……。
そんなに早い新幹線に乗っても……。
秋田着は、11:32分なんだよ」
律「うそ……。
5時間もかかるの？」
み「わたしも驚いた。
11時半に秋田駅に着いたら……」
み「迎えに出た秋田支社の社員とお昼食べて……」
↑稲庭うどん
み「支社に入るのは、13時だよね」
律「だいたいそうなるわね」
み「ところが！
その日のうちに、東京に帰ろうとしたら……。
秋田を何時に出なきゃならないと思う？」
律「5時間かかるわけでしょ？」
み「そう。
秋田発の最終便は……。
18:00分の『こまち140号』。
み「こんな時間に乗っても、東京着は23:08分なんだよ」
律「家に帰ったら、午前様ね」
み「東京駅までにかかる時間を、1時間と見ても……。
朝5時半に家を出て、家に帰り着くのは……。
夜の0時過ぎってこと」
律「過酷ねー」
み「それでもって、秋田支社で仕事ができるのは……。
13時から17時ころまでってこと」
律「たったの4時間？」
み「そう。
こんな出張、すると思う？」
律「効率悪すぎだわ」
み「だしょ。
つまり、秋田でみっちり仕事をするためには……。
泊まりがけってことになる。
前泊して、丸1日仕事するか……。
あるいは、午後から仕事して、その日は泊まり……。
翌日の午前中、続きをやるかってとこだろうね」
律「それが、ソープランドの数と、どう関係してくるのよ？」
み「わからんかのぅ。
本社の人間が泊まるとなったら……。
秋田支社としては、慰労会を準備せにゃならんでしょ。
当然、川反で飲ませて……」
み「仕上げは、ソープよ」
↑レディース（http://www.akita-ladies.net/）
律「そんな社内接待、経費で落とせるの？」
み「知らん。
ソープは自腹かもね」
律「当然でしょ。
でもつまり……。
秋田のソープは、社用族で持ってるってわけ？」
み「裏を取ったわけではないけどね。
で、新潟のソープが寂れてるわけは……。
秋田の事情と真逆。
近すぎるから」
律「新潟支社に出張すると、どうなるのよ？」
み「東京発の始発は、6:08分の『とき301号』」
律「ふむふむ」
み「で、この新潟着が……。
なんと、8:14分です」
律「始業前に、会社着いちゃうじゃないの」
み「左様です。
しかも、最終便の新潟発は……。
21:32分発、『とき352号』」
律「始業前に入れる上に……。
たっぷり、残業までできるってことね」
み「そういうわけ。
新潟出張に、泊まりが付けられると思う？」
律「許可できん」
み「だしょー。
田中角栄が新幹線を通したおかげで、確かに便利にはなったろうけど……」
↑上越新幹線・浦佐駅前に建つ田中角栄像
み「実は、いいことばっかりじゃなかったんだよ」
律「どんなこと？」
み「たとえば、今の出張の話で云うと……。
そもそも、出張自体が激減したと思う」
律「どうして？」
み「新潟支社を廃止した会社がたくさんあるからだよ」
律「なんでよ？」
み「東京から2時間で行ける場所に、支社なんて置く必要がないでしょ。
関東エリアに組みこめちゃう」
律「なるほど」
み「だから、新潟のオフィス街は……。
新幹線が通ってから、廃れたんだって」
律「便利になるってことは、いいことばかりじゃないのね」
み「昔はね、新潟支社は、転勤先として人気があったそうだよ」
律「どうして？」
み「新鮮な魚、おいしいお米に、おいしいお酒。
それになんといっても、花街ね」
↑大正初期の新潟古町芸妓
律「有名だったの？」
み「はいな。
ゆうべ飲んだ『越乃寒梅 Manjia』から、遠くないとこに……」
み「花街があるんだけどさ。
昔は、芸者さんが400人くらいいたみたい」
律「それって、多いのよね？」
み「東京の新橋、京都の祇園、それに新潟の古町。
これが、日本三大芸妓の街だったそうです（参照）」
律「そりゃスゴいわ」
み「だから、新潟転勤になった人には……。
大祝賀会が催されたくらいなんだってさ」
律「へー。
今でも、その花街ってあるの？」
み「あることはあるけどね。
芸者さんもいるよ。
でも、今の芸者さんは、株式会社の社員だね」
律「へ？」
み「『柳都振興株式会社』っていう、芸者さんを養成して派遣する会社があるんだよ」
律「それは初耳だわ」
み「昔ながらの置屋制度では……。
芸者さんの文化を維持していけなくなったんだね。
この会社が出来たのは、1987年なんだけど……。
その当時、一番若い芸者さんが、30代後半だったんだって。
芸者さんになるのは、10代だから……。
芸者の成り手が、20年くらいいなかったってことよ」
律「絶滅寸前ってこと？」
み「そうそう。
レッドデータブック級だね」
律「いったい誰が、そんな会社おこしたのよ？」
み「地元の財界人たち。
商工会議所とか……。
ホテルや銀行なんかの地元企業。
資本金の7,000万円は、すぐに集まったって」
↑第1期生
律「スゴいじゃない」
み「今なら無理なんじゃないかな。
1987年ってのは……。
バブルに向かって、日本経済がウナギ登りの時代だっただからね」
律「なるほどー。
でもその会社、今でも続いてるんでしょ？」
み「うん。
順調みたい。
2008年に、新潟でG8の労働大臣会合が開かれたんだけど……。」
み「料亭での芸者衆のもてなしに、各国の大臣はいたく感激していったそう」
↑レセプションの行われた『行形亭（いきなりや）』（創業は元禄年間）
律「へー。
会社所属の芸者さんって、何人くらいいるの？」
み「今は、10人くらいかな」
律「案外少ないのね」
み「大量生産は、無理なんでしょうね。
柳都振興㈱のホームページには……。
“振袖さん”の『新卒採用情報』が載ってるよ」
律「“振袖さん”って、なに？」
み「祇園で云う“舞妓さん”でしょ」
↑振袖さんの後ろ髪と帯の結び方
律「じゃ、“芸妓さん”は？」
み「“留袖さん”」
↑留袖さんの後ろ髪と帯の結び方
律「お給料は、どのくらい？」
み「高卒の初任給で、20万」
律「けっこういいじゃないの」
み「わたしも、そう思う。
もちろん、社保はすべて完備。
退職金共済まで付いてる」
律「お休みは？」
み「日曜と祝日。
あと、月1回の指定日」
律「さすがに、週休2日ってわけにはいかないわね」
み「でも、月に2日生理休暇が取れるから……。
日祝以外に、3日休めるってこと。
そのほか……。
夏季休暇が4日（8月13日～16日）。
年末年始休暇が6日あります（12月29日～1月3日）」
律「芸者さんって、年末年始とか休んでいいの？」
み「社用族が相手だから、会社が休みの時は休めるんじゃない？」
律「なるほど。
でも、休日出勤だってあるんでしょ？」
み「その場合は、振替休日が取れます」
律「有給休暇は？」
み「会社組織なんだから、もちろん労働基準法どおり。
初年度10日、最高20日」
律「待遇いいわねー」
み「しかも！」
律「まだあるの？」
み「着物や小物は、すべて会社で用意（貸与）してくれるうえ……。
寮も完備。
ま、帰りが遅くなるからね」
律「そう言えば、勤務時間ってどうなってるの？」
み「15時30分～23時30分。
もっと遅くなることもあるかも知れないけどね。
もちろんそのときは、時間外手当も深夜手当も付きます」
律「なるほど。
それじゃ、近くに寮が無けりゃ不便よね」
み「寮って云っても、古町近くのマンションだよ」
↑古町近辺の街並み
み「家賃は、取られるだろうけど」
律「そのくらいあたりまえでしょ。
でも、着物も住むとこも用意してもらえるんなら……。
身ひとつで移って来れるわね」
み「実際、新潟以外の出身者も、入社してるみたい。
お盆や年末年始が休みだから、帰省も出来るからね」
律「わたしも応募してみようかな？」
み「あつかましい！
新卒採用情報だって言ったでしょ。
年齢制限があるよ。
22歳まで」
律「それじゃ、医学部出たら入れないじゃないの。
医学部は、6年なんだから」
み「医学部出て入るヤツがいるかい！」
律「中途採用とか無いの？」
み「そこまでの情報は載ってない。
あるとしたら、経験者に限るんじゃないの？」
律「医師免許じゃだめ？」
み「あたりまえです。
でもそれ……。
2時間ドラマとかのシリーズに出来るかも」
律「いいでしょ。
医師免許を持った美人芸者。
医学知識と美貌を使って……。
宴席で起きた殺人事件を解決！」
み「事件解決に、何で美貌を使うのよ？」
律「もちろん、惚れた弱みの警部どのから、情報を聞き出すためでしょ」
み「なんか、似たようなのあったぞ。
弁護士資格持った芸者だったかな？」
律「そんなのあった？
じゃ、二番煎じか……。
がっかり」
み「えーっと……。
ヘンなこと言い出すから、話がまとまらなくなったじゃないの」
律「どうぞ、まとめてください」
み「てなわけで……。
みなさんも、新潟に来て、“振袖さん”になってみませんか？」
↑春花さん
律「誰に向かって言ってんの？」
み「詳しくは、柳都振興㈱のホームページで！」
↑美人がいっぱい
み「何の話してたんだっけ？」
律「東京から近くなりすぎて……。
新潟支社が無くなっちゃったって話でしょ」
み「そうだった。
あのさ、地方都市がみんな持ってる、その街独自の雰囲気ってあるでしょ？」
律「アイデンティティみたいなもの？」
み「それそれ。
新潟の街からは……。
そのアイデンチチーが消えてしまった感じなんだよ。
たぶん旅行者は……。
新潟の街に“旅情”を感じないんじゃないかな。
風情みたいなのが無いもん。
東京近郊の都市といっしょだよ」
律「旅情ミステリーの舞台にならない？」
↑若い！
み「ならん」
律「ふーん。
わたしは、夕べ1日だけだったから……。
わかんないけど」
み「秋田の方が、ずっと雰囲気ある」
律「ソープもある」
↑レディース（注：「『Mikiko's Room』で見た」と言っても、割引にはなりません）
み「そうそう。
最初は、その話だったね。
秋田のソープは、社用族で持ってるに違いない。
どう、この推理？」
律「ここらを通るお客さんに聞いてみたら？」
み「なんて聞くのよ？」
律「今日はご出張ですか、とか」
み「街娼と間違われるじゃないの！」
律「また、古い言葉知ってるわね。
でも……。
こんなとこうろうろしてたら、ほんとに間違われかねないわね」
み「よし。
じゃ、取材は終わり」
律「もう終わり？
路地の入り口から覗いただけじゃない」
み「ま、謎は謎のまま残しておきましょう」
律「それじゃ、記事に出来ないでしょうに」
み「出来るよー。
新聞社じゃないんだから……。
『謎は結局解けませんでした』でも、十分記事になるの」
律「気楽な稼業ね」
み「そうでもなきゃ、週5回の連載なんか、こなせないって。
なにしろ自転車操業なんだから……」
み「止まるわけにはいかんのよ」
律「なるほど。
それはそれで、大したものだわ」
み「よし、飲みに行くぞ！」
律「ソープ街よ、さようなら」
み「居眠りしそうだよ」
律「その格好で寝ないでよ」
み「なんで？」
律「ぜったい股開くでしょ」
み「開かないように……。
浴衣の帯で、膝を縛ればいいのか」
↑の画像は、川瀬整体院さんのブログで、発見。
「ひざ縛りダイエット」なるものが存在するようです。
こちらのページに、やり方が書いてあります。
なお、「ヒモ縛り睡眠法」なるものまでありました。
寝てて火事になったら、どうすんだ？
律「ヒザ縛るなんて、縁起でもない。
心中じゃあるまいし」
律「第一、帯解いたら、上がはだけちゃうでしょ」
み「ままならぬのぅ」
律「さ、もう行きましょ」
み「もう行っちゃうの？」
律「お腹空いたの。
置いてくわよ」
み「待ってよぉ」
その他の設備として……。
広々とした休憩室もあります。
その奥には、キッズコーナーも。
家族連れなら、半日くらいは楽しめそうですね。
出口付近には、床屋さんまでありました。
み「ここも『あかすり』かな？」
律「男女共用なんだから、それは無いでしょ」
み「じゃ、なんだろ？
覗いてみよう」
律「ほんとにもぅ！
いい加減、出ようってば」
み「やっぱりさっきのリフレと同じみたいだよ。
なんで、内と外に、同じような施設があるんだろ」
律「ここは、マッサージでしょ」
↑イメージ（「華のゆ」ではありません）
み「だって、さっきのとこだって、マッサージだったじゃない」
律「マッサージとは、称してなかったでしょ。
“リフレ”とか、“あかすり”とかで」
み「どこが違うの？」
律「日本にはね、『あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律』ってのがあるの」
み「長い名前！」
律「その法律の第1条には、こう記されてあります。
『医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許を受けなければならない』
すなわち、マッサージを業として行えるのは……。
医師のほかでは、『あん摩マッサージ指圧師』だけなの。
もちろん、国家資格ね」
み「そうなんだ！
知らなかった……」
律「でも、昭和22年に公布されたこの法律には、重大な欠陥があってね。
そもそも、“あん摩”や“マッサージ”ってのがどういう行為を云うのか……。
まったく書かれてないの」
み「なんじゃそりゃ」
律「早い話……。
“マッサージ”とさえ称さなければ……。
事実上マッサージと同じことをしてても、罰せないわけよ。
柔道整復師の中には……。
保険を利用した激安マッサージを行う者さえいるのよ」
み「ふーん。
本物の『あん摩マッサージ指圧師』さんも、タイヘンなんだね」
律「そうよ。
目が不自由で、ほかの職業には就きにくい方もいるのにね」
み「なるほど。
そんな過当競争にさらされてたんじゃ、お気の毒だわ。
ところで、マッサージ、してく？」
律「今日は、パス。
お腹空いたって、さっきから言ってるでしょ」
ソッコーで部屋に戻り、着替えましょう。
律「パンツ穿きなさいよ」
み「わかっとるわい。
お化粧どうする？」
律「わたしはこのままでいいわ」
み「自信ですねー」
律「秋田で、知り合いには会わないでしょ」
み「会っても気づかないんじゃないの？」
律「失礼ね。
普段から、スッピンとたいしてかわらないわよ。
妊婦さんは、化粧品の匂いとかに敏感だからね」
さて、出陣です。
わたしたちは、外に食べに出ますが……。
お風呂に入ったら、もうメンドクサいという方もおられると思います。
特に、お化粧し直すのは億劫ですよね。
そんな方もご安心ください。
『華のゆ』の館内には、居酒屋が入ってるんです。
『海鮮ダイニング はなの夢 まぐろや』というお店です。
名前のとおり、お魚新鮮！
もちろん、浴衣での入店もオーケー。
浴衣にスッピンなら、普通ですから……。
めんどくさがりには、もってこいですね。
『華のゆ』の入浴料とセットのコースもあるようです。
ちなみに、『雅の宴』というコースは……。
お料理8品に、以下のオプションが無料で付きます。
①『華のゆ』入浴料
②館内着＋タオルセット
③貸切部屋（2時間）
↑これはちょっと、用途不明
④送迎（8名以上）
『雅の宴』コースのお値段は……。
なんと、3,950円！
ただし、飲み物は別料金ね。
でも、1,500円プラスすれば、2時間の飲み放題が付けられます。
新潟に、こんな施設があったらいいのにな。
宴会なんか、ここで決まりですよ。
秋田の幹事さんは、悩む必要なし！
と言いつつ……。
わたしたちは、利用しないんだけどね。
やっぱ、旅の醍醐味のひとつは、夜の町です。
外はもう、どっぷりと暮れてます。
夜陰に紛れ、スッピンで出かけましょう。
み「おぉ。
秋田の夜の匂い。
旅情ですねぇ」
↑『秋田竿燈まつり（2011年は、8月3日～6日）』
律「どこか予約してあるの？」
み「2人なんだから、予約なんて必要ないでしょ。
でも、面白そうなお店だけは調べておいた」
律「ほー。
楽しみね」
み「まずは、そこにある橋を渡って……」
この橋は、旭川に架かる『五丁目橋』。
渡りきったところから、川に沿って左右に伸びる通りが……。
秋田一の“歓楽街”、『川反通り』。
↑賑やかな写真が無い！
律「どっち行くの？」
み「お店は右の方だけど……。
その前に、ちょっと取材したい」
律「何の取材よ？」
み「取材って言うか……。
怖いもの見たさだけど」
律「お化け屋敷みたいね」
み「ちょっとそこの小路、覗いてみてよ」
律「何でわたしが覗くのよ」
み「大丈夫だって。
いきなり攫われたりしないから」
↑サーカスに売られる図
律「攫われてたまるか。
大丈夫なら、あんたが行きなさいよ」
み「じゃ、手、繋いでてよ。
覗くからね」
恐る恐る、小路の奥を覗きます。
み「あった～」
律「何があったのよ？」
み「覗いてみ」
律「ほんとにお化け屋敷でもあるの？
どれどれ。
……」
↑夜の写真が無かった
み「あったでしょ」
律「同じようなお店が並んでるわね。
派手なネオン。
なんとな～く……。
風俗店っぽいけど」
み「あたりです。
ここは、ソープランド街」
↑「レディース」さんから拝借しました。
ご存じの方も多いでしょうが……。
少し解説しますね。
“ソープランド”は、いわゆる「個室付特殊浴場」のことです。
かつては、“トルコ風呂”と呼ばれてました。
もちろん、トルコにある“トルコ風呂”は、性風俗とは関係ありません。
↑アングルの名作『トルコ風呂』
伝統的な公衆浴場のことで、「ハンマーム」と呼ばれてます。
女性の社交の場だったらしいです。
でも、西洋人旅行者の目には、そうは映らなかったようです。
ベールで顔を隠した女性が、浴場に赴く様子を見て……。
欲情したわけですね。
ハーレムのイメージと混同したようです。
どうやら、その西欧人のイメージが、そのまま日本に持ちこまれ……。
「個室付特殊浴場」の呼称となってしまったようです。
日本人は、あっさり受け入れてしまった“トルコ風呂”ですが……。
日本に来たトルコ人は、びっくり仰天。
カンカンに怒りました。
ま、当然ですわな。
もし外国で、性風俗店が“Japanese Bath”とか呼ばれてたら、日本人だって怒るでしょ？
日本の湯屋は、マジで混浴だったんだから……。
ほんとに呼ばれかねないよね。
さて、というわけで……。
東京大学に留学したトルコ人学生、ヌスレット・サンジャクリさんも、大憤慨したお一人。
彼は、厚生省に直訴するなどして、改名運動を起こしました。
↑左から2人目がサンジャクリさん（当時の厚生大臣・渡部恒三氏らと）
トルコ大使館も、これを支持しました。
というのも、実害を被ってたからです。
不敬にも、「トルコ大使館」という名前の店が存在したそうで……。
本物の大使館に予約の電話が入ったりして、大迷惑してたとか。
で、この運動は、マスコミに大きく取り上げられることになりました。
結果、横浜市の業界団体が、“トルコ風呂”の名称を用いないことを決議。
新名称を公募し、“ソープランド”と決定したわけです。
1984年のことでした。
ちなみに、お隣の韓国では……。
日本のトルコ風呂に、いたく感銘を受けた人物が……。
本国に帰り、同じような形態の性風俗店を開きました。
名称は、そのまんまトルコ風呂（トッキータン）。
日本のトルコ風呂が“ソープランド”に名称を変更した後も……。
韓国では、ほったらかしでした。
怒ったトルコは、政府直々に抗議を申し入れました。
トルコ国内では、性風俗街を“コリアンストリート”と呼ぼうというキャンペーンまで行われたそうです。
で、さすがの韓国政府も重い腰を上げ、公衆衛生法が改正され……。
トルコ風呂は、“蒸気風呂”と名称を変えたのです。
日本に遅れること、13年。
1997年のことです。
さて、この改称問題においては……。
別の問題が発生しています。
すなわち、“トルコ風呂”という名称が使われてたころの……。
小説やマンガ、映画などが、販売できなくなってるんですね。
それでも、小説やマンガなんかは、文章やセリフを書き換えたりすれば、出版できます。
でも、映画はほぼ無理。
特に、タイトルに“トルコ”の名称を用いた作品は……。
ほぼ視聴不可能になってるようです。
↑腕組みの男性は、梅宮アンナのお父さん
これについては……。
ちょっと、考えさせられますよね。
“ダッコちゃん”や“ちびくろサンボ”と同じく……。
オーバーランなんじゃないでしょうか？
焚書坑儒に通じる臭いを感じてしまいます。
ま、“トルコ風呂”の場合……。
特定の国名が明示されてるから、問題が深刻だったんでしょうけどね。
しかし……。
“トルコ風呂”時代に書かれた作品内の記述を……。
当時存在しなかった“ソープランド”という名称に書き換えるというのは……。
大いに疑問ですよね。
ちょっと、話題が重くなってしまいました。
お話を続けます。
律「へ～。
独特の雰囲気があるわね」
み「だよね。
どうする？
踏みこんでみる？」
律「とってもその勇気はないわ。
ここでお見送りするから……。
Mikiちゃん、行ってらっしゃい」
み「わたしだって、無理だよ」
律「新潟には、無いの？」
み「あるけどさ。
細い路地に、細々とね」
↑新潟市古町にある『昭和新道』
み「ま、昼間しか覗いたことないけど。
事前に調べてきた資料では、8軒だった」
律「なんで、そんなことまで調べて来たのよ」
み「川反を調べてたら、出てきたんだよ」
律「ここって、何軒あるのかしら？
8軒よりありそうだけど」
み「資料によると、21軒だった」
↑大阪がないのは、なぜじゃ？
律「秋田、スゴいじゃない」
み「川崎には負けるけどね」
律「あ、そうか。
わが町川崎は、何軒？」
み「堀の内と南町、併せて84軒」
↑堀の内
律「すごーい。
日本一？」
み「残念ながら……。
そうはいかないよ。
吉原があるでしょ」
律「何軒？」
み「154軒」
律「川崎の約2倍か。
でも、人口比から見たら……。
秋田川反の21軒ってのは、多いんじゃないの？」
み「仙台国分町が、6軒しかないからね」
律「何でこんなに多いわけ？」
み「秋田人が、スケベだからじゃないの？」
律「そんなこと言っていいわけ」
み「なんとなーく……。
柳葉敏郎とか、スケベそうじゃない」
↑GOの先には、ソープ街が……？
律「ガイドさんに怒られるわよ」
み「ファンだって言ってたもんね」
律「でも、ほんとになんでだろ？」
み「実は……。
わたしなりに考察し……。
ひとつの結論に至っております」
律「ほー。
お聞きしましょう」
み「早い話、秋田は東京から遠いからだよ」
律「何それ？
ソープ街の軒数と、関係あるの？」
み「まぁ、お聞きなさい。
東京本社から、秋田支社に出張するサラリーマンがいるとします」
み「朝一番の新幹線は、東京発6:40分の『こまち115号』」
律「スゴい早出ね。
早朝手当もらわなきゃ」
み「ところが……。
そんなに早い新幹線に乗っても……。
秋田着は、11:32分なんだよ」
律「うそ……。
5時間もかかるの？」
み「わたしも驚いた。
11時半に秋田駅に着いたら……」
み「迎えに出た秋田支社の社員とお昼食べて……」
↑稲庭うどん
み「支社に入るのは、13時だよね」
律「だいたいそうなるわね」
み「ところが！
その日のうちに、東京に帰ろうとしたら……。
秋田を何時に出なきゃならないと思う？」
律「5時間かかるわけでしょ？」
み「そう。
秋田発の最終便は……。
18:00分の『こまち140号』。
み「こんな時間に乗っても、東京着は23:08分なんだよ」
律「家に帰ったら、午前様ね」
み「東京駅までにかかる時間を、1時間と見ても……。
朝5時半に家を出て、家に帰り着くのは……。
夜の0時過ぎってこと」
律「過酷ねー」
み「それでもって、秋田支社で仕事ができるのは……。
13時から17時ころまでってこと」
律「たったの4時間？」
み「そう。
こんな出張、すると思う？」
律「効率悪すぎだわ」
み「だしょ。
つまり、秋田でみっちり仕事をするためには……。
泊まりがけってことになる。
前泊して、丸1日仕事するか……。
あるいは、午後から仕事して、その日は泊まり……。
翌日の午前中、続きをやるかってとこだろうね」
律「それが、ソープランドの数と、どう関係してくるのよ？」
み「わからんかのぅ。
本社の人間が泊まるとなったら……。
秋田支社としては、慰労会を準備せにゃならんでしょ。
当然、川反で飲ませて……」
み「仕上げは、ソープよ」
↑レディース（http://www.akita-ladies.net/）
律「そんな社内接待、経費で落とせるの？」
み「知らん。
ソープは自腹かもね」
律「当然でしょ。
でもつまり……。
秋田のソープは、社用族で持ってるってわけ？」
み「裏を取ったわけではないけどね。
で、新潟のソープが寂れてるわけは……。
秋田の事情と真逆。
近すぎるから」
律「新潟支社に出張すると、どうなるのよ？」
み「東京発の始発は、6:08分の『とき301号』」
律「ふむふむ」
み「で、この新潟着が……。
なんと、8:14分です」
律「始業前に、会社着いちゃうじゃないの」
み「左様です。
しかも、最終便の新潟発は……。
21:32分発、『とき352号』」
律「始業前に入れる上に……。
たっぷり、残業までできるってことね」
み「そういうわけ。
新潟出張に、泊まりが付けられると思う？」
律「許可できん」
み「だしょー。
田中角栄が新幹線を通したおかげで、確かに便利にはなったろうけど……」
↑上越新幹線・浦佐駅前に建つ田中角栄像
み「実は、いいことばっかりじゃなかったんだよ」
律「どんなこと？」
み「たとえば、今の出張の話で云うと……。
そもそも、出張自体が激減したと思う」
律「どうして？」
み「新潟支社を廃止した会社がたくさんあるからだよ」
律「なんでよ？」
み「東京から2時間で行ける場所に、支社なんて置く必要がないでしょ。
関東エリアに組みこめちゃう」
律「なるほど」
み「だから、新潟のオフィス街は……。
新幹線が通ってから、廃れたんだって」
律「便利になるってことは、いいことばかりじゃないのね」
み「昔はね、新潟支社は、転勤先として人気があったそうだよ」
律「どうして？」
み「新鮮な魚、おいしいお米に、おいしいお酒。
それになんといっても、花街ね」
↑大正初期の新潟古町芸妓
律「有名だったの？」
み「はいな。
ゆうべ飲んだ『越乃寒梅 Manjia』から、遠くないとこに……」
み「花街があるんだけどさ。
昔は、芸者さんが400人くらいいたみたい」
律「それって、多いのよね？」
み「東京の新橋、京都の祇園、それに新潟の古町。
これが、日本三大芸妓の街だったそうです（参照）」
律「そりゃスゴいわ」
み「だから、新潟転勤になった人には……。
大祝賀会が催されたくらいなんだってさ」
律「へー。
今でも、その花街ってあるの？」
み「あることはあるけどね。
芸者さんもいるよ。
でも、今の芸者さんは、株式会社の社員だね」
律「へ？」
み「『柳都振興株式会社』っていう、芸者さんを養成して派遣する会社があるんだよ」
律「それは初耳だわ」
み「昔ながらの置屋制度では……。
芸者さんの文化を維持していけなくなったんだね。
この会社が出来たのは、1987年なんだけど……。
その当時、一番若い芸者さんが、30代後半だったんだって。
芸者さんになるのは、10代だから……。
芸者の成り手が、20年くらいいなかったってことよ」
律「絶滅寸前ってこと？」
み「そうそう。
レッドデータブック級だね」
律「いったい誰が、そんな会社おこしたのよ？」
み「地元の財界人たち。
商工会議所とか……。
ホテルや銀行なんかの地元企業。
資本金の7,000万円は、すぐに集まったって」
↑第1期生
律「スゴいじゃない」
み「今なら無理なんじゃないかな。
1987年ってのは……。
バブルに向かって、日本経済がウナギ登りの時代だっただからね」
律「なるほどー。
でもその会社、今でも続いてるんでしょ？」
み「うん。
順調みたい。
2008年に、新潟でG8の労働大臣会合が開かれたんだけど……。」
み「料亭での芸者衆のもてなしに、各国の大臣はいたく感激していったそう」
↑レセプションの行われた『行形亭（いきなりや）』（創業は元禄年間）
律「へー。
会社所属の芸者さんって、何人くらいいるの？」
み「今は、10人くらいかな」
律「案外少ないのね」
み「大量生産は、無理なんでしょうね。
柳都振興㈱のホームページには……。
“振袖さん”の『新卒採用情報』が載ってるよ」
律「“振袖さん”って、なに？」
み「祇園で云う“舞妓さん”でしょ」
↑振袖さんの後ろ髪と帯の結び方
律「じゃ、“芸妓さん”は？」
み「“留袖さん”」
↑留袖さんの後ろ髪と帯の結び方
律「お給料は、どのくらい？」
み「高卒の初任給で、20万」
律「けっこういいじゃないの」
み「わたしも、そう思う。
もちろん、社保はすべて完備。
退職金共済まで付いてる」
律「お休みは？」
み「日曜と祝日。
あと、月1回の指定日」
律「さすがに、週休2日ってわけにはいかないわね」
み「でも、月に2日生理休暇が取れるから……。
日祝以外に、3日休めるってこと。
そのほか……。
夏季休暇が4日（8月13日～16日）。
年末年始休暇が6日あります（12月29日～1月3日）」
律「芸者さんって、年末年始とか休んでいいの？」
み「社用族が相手だから、会社が休みの時は休めるんじゃない？」
律「なるほど。
でも、休日出勤だってあるんでしょ？」
み「その場合は、振替休日が取れます」
律「有給休暇は？」
み「会社組織なんだから、もちろん労働基準法どおり。
初年度10日、最高20日」
律「待遇いいわねー」
み「しかも！」
律「まだあるの？」
み「着物や小物は、すべて会社で用意（貸与）してくれるうえ……。
寮も完備。
ま、帰りが遅くなるからね」
律「そう言えば、勤務時間ってどうなってるの？」
み「15時30分～23時30分。
もっと遅くなることもあるかも知れないけどね。
もちろんそのときは、時間外手当も深夜手当も付きます」
律「なるほど。
それじゃ、近くに寮が無けりゃ不便よね」
み「寮って云っても、古町近くのマンションだよ」
↑古町近辺の街並み
み「家賃は、取られるだろうけど」
律「そのくらいあたりまえでしょ。
でも、着物も住むとこも用意してもらえるんなら……。
身ひとつで移って来れるわね」
み「実際、新潟以外の出身者も、入社してるみたい。
お盆や年末年始が休みだから、帰省も出来るからね」
律「わたしも応募してみようかな？」
み「あつかましい！
新卒採用情報だって言ったでしょ。
年齢制限があるよ。
22歳まで」
律「それじゃ、医学部出たら入れないじゃないの。
医学部は、6年なんだから」
み「医学部出て入るヤツがいるかい！」
律「中途採用とか無いの？」
み「そこまでの情報は載ってない。
あるとしたら、経験者に限るんじゃないの？」
律「医師免許じゃだめ？」
み「あたりまえです。
でもそれ……。
2時間ドラマとかのシリーズに出来るかも」
律「いいでしょ。
医師免許を持った美人芸者。
医学知識と美貌を使って……。
宴席で起きた殺人事件を解決！」
み「事件解決に、何で美貌を使うのよ？」
律「もちろん、惚れた弱みの警部どのから、情報を聞き出すためでしょ」
み「なんか、似たようなのあったぞ。
弁護士資格持った芸者だったかな？」
律「そんなのあった？
じゃ、二番煎じか……。
がっかり」
み「えーっと……。
ヘンなこと言い出すから、話がまとまらなくなったじゃないの」
律「どうぞ、まとめてください」
み「てなわけで……。
みなさんも、新潟に来て、“振袖さん”になってみませんか？」
↑春花さん
律「誰に向かって言ってんの？」
み「詳しくは、柳都振興㈱のホームページで！」
↑美人がいっぱい
み「何の話してたんだっけ？」
律「東京から近くなりすぎて……。
新潟支社が無くなっちゃったって話でしょ」
み「そうだった。
あのさ、地方都市がみんな持ってる、その街独自の雰囲気ってあるでしょ？」
律「アイデンティティみたいなもの？」
み「それそれ。
新潟の街からは……。
そのアイデンチチーが消えてしまった感じなんだよ。
たぶん旅行者は……。
新潟の街に“旅情”を感じないんじゃないかな。
風情みたいなのが無いもん。
東京近郊の都市といっしょだよ」
律「旅情ミステリーの舞台にならない？」
↑若い！
み「ならん」
律「ふーん。
わたしは、夕べ1日だけだったから……。
わかんないけど」
み「秋田の方が、ずっと雰囲気ある」
律「ソープもある」
↑レディース（注：「『Mikiko's Room』で見た」と言っても、割引にはなりません）
み「そうそう。
最初は、その話だったね。
秋田のソープは、社用族で持ってるに違いない。
どう、この推理？」
律「ここらを通るお客さんに聞いてみたら？」
み「なんて聞くのよ？」
律「今日はご出張ですか、とか」
み「街娼と間違われるじゃないの！」
律「また、古い言葉知ってるわね。
でも……。
こんなとこうろうろしてたら、ほんとに間違われかねないわね」
み「よし。
じゃ、取材は終わり」
律「もう終わり？
路地の入り口から覗いただけじゃない」
み「ま、謎は謎のまま残しておきましょう」
律「それじゃ、記事に出来ないでしょうに」
み「出来るよー。
新聞社じゃないんだから……。
『謎は結局解けませんでした』でも、十分記事になるの」
律「気楽な稼業ね」
み「そうでもなきゃ、週5回の連載なんか、こなせないって。
なにしろ自転車操業なんだから……」
み「止まるわけにはいかんのよ」
律「なるほど。
それはそれで、大したものだわ」
み「よし、飲みに行くぞ！」
律「ソープ街よ、さようなら」
![[官能小説] 熟女の園](https://livedoor.blogimg.jp/mikikosroom2008/imgs/3/e/3e07a9c3.gif)
