2012.3.3(土)
み「また、話が転がりそうだ。
いい加減にしないと、読者に怒られるな。
あ、わかった。
“欽ドン”って、『めだかの兄妹』でしょ」
律「それは、“欽どこ”。
“欽ドン”は、『良い子悪い子普通の子』よ」
み「なんでそんなに詳しいわけ?」
律「見てたもの。
幼稚園くらいから……。
小学校の低学年くらいまでだったかな」
み「へー。
そういうテレビ、見るタイプだとは思わなかった」
律「子供のころは、ごくごく普通の子だったの。
自分の体が、ほかの人と違うなんて、思いもしなかったもの」
み「あ、そうか。
子供のころは、生えてなくてあたりまえだもんね」
律「そゆこと。
屈折し出したのは、中学くらいからね。
Mikiちゃんは、見てなかったの?」
み「欽ちゃんは、あんまりね。
あの、オクターブの高いノリにはついていけなかった」
律「案外、醒めた子ね」
み「でも、ドリフは見てたよ」
律「へー。
どう違うのよ?」
み「欽ちゃんは、アドリブメインなんじゃないの?
その点、ドリフのコントは、台本がしっかりしてるし……。
あと、やっぱり子供には……。
舞台の仕掛けみたいなのが面白かったんだと思う」
律「なるほどねー」
み「ところで……。
何の話だっけ?」
律「だから、テレビの話よ」
み「その前よ。
何でテレビの話になったの?」
律「不幸のズンドコ?」
み「その前!」
律「その前なんか、無いんじゃないの?
展望台に昇ってきたばっかりよ」
み「それだ!
万代島ビルの展望台の名前!
『Befcoばかうけ展望室』!」
律「それが、どうしてテレビの話になったのよ?」
み「『ばかうけ』だよ」
律「思い出した。
その『ばかうけ』って言葉……。
小学校のころ、流行ってたの」
み「流行らせたのが、“欽ドン”ってこと?」
律「そうそう。
視聴者からの投稿ハガキを読んで……。
面白かったら、『ばかうけ』って言ったわけ」
み「なるほど。
栗山米菓の『ばかうけ』が出たのは……」
み「わたしが中学生くらいだったと思うから……。
“欽ドン”より、ずっと後だね。
パクっちゃって、大丈夫だったんだろうか?」
律「『ばかうけ』って、普通の言葉じゃないの?」
み「そうかなぁ。
でも確かに、“バカに受ける”ってのを縮めただけだからね」
律「それを、ちゃっかり商品名にするってのは……。
一種の頭の良さよ」
み「バントヒットみたいなもんかね」
律「そうそう。
で、お味の方はどうなの?」
み「うーむ。
決して、おいしくないわけじゃないが……。
食べて感動するほどでもない」
律「そんなら、“ややうけ”ね。
あー、おせんべい食べたくなってきた。
“ばかうけ”、物産店に売ってないかな?」
み「あるかい!
そう言えば、“なまはげ”のお面、あったのかな?
OLさんたちの姿が見えないから、物産店に直行かもよ」
律「なんでそんなに“なまはげ”面にこだわるのか……。
鉄道くんには言ったのかしら?」
み「言ってたら大したものだけどね」
律「今夜、どうやって切り出すつもりかしら?
一緒に泊まりたい気分」
み「鉄道くんは、介添えが必要みたいだよね」
律「案外……。
テクニシャンかもよー」
み「ゴールドフィンガー?」
律「ははは。
だいぶ、話が落ちてきたわね」
み「立て直しましょう。
『ばかうけ展望室』の話だったね」
律「それそれ。
その前に、なんか付いてたじゃない。
“赤べこ”だっけ?」
み「思い切り違うでしょ。
『Befco(ベフコ)』だよ」
律「栗山米菓の頭文字とは、ぜんぜん繋がらないみたいだけど」
み「『Befco』は、いわゆる“コーポレートブランド”ってやつ」
律「どういう意味なの?」
み「たしか、“Beika Frontier Company”だったかな」
律「誰もわからないわよ。
“セリオン”みたいじゃないの」
み「あ、そうか。
“Sea Pavilion”で、“セリオン”だったね。
2つの展望台、もう一つ、共通点があったってわけか。
意味のわからん名前が付いてるっていう」
律「でも、ユニフォームに付けるのなら……。
『Befco』の方がカッコいいよね」
み「あ、それで思い出した。
栗山米菓は、バレーボールのチームを持ってるんだよ。
たしか、『Befcoビービースターズ』」
律「聞いたことないんですけど」
み「チャレンジリーグだからね」
律「どんなリーグよ?」
み「バレーボールでは……。
トップリーグが、プレミアリーグって云って……。
たしか、8チーム。
JTとか、東レとかが所属してる」
み「チャレンジリーグは、その下のリーグ」
律「サッカーのJ2みたいなもの?」
み「そうそう」
律「プレミアに上がれそうなの?」
み「ぜんぜん無理。
チャレンジリーグは、12チームくらい所属してるんだけど……。
『ビービースターズ』は、下から2番目くらいだね」
律「それじゃ、『ブービースターズ』じゃないの」
み「うまい!
座布団1枚」
律「お~。
今日、2枚目。
じゃ、プレミアへの道は遠いってわけね」
み「プレミア入りは、ハードルが高いんだよ。
チャレンジリーグでトップになっても、自動的に上がれるわけじゃないし」
律「そうなの?
サッカーは、自動入れ替えよね」
み「バレーは、入れ替え戦に勝たなきゃならないんだ。
プレミアの8位とチャレンジの1位、同じく7位と2位が戦う。
プレミアで負けが混んだチームは……。
リーグ戦捨てて、入れ替え戦に照準を合わせて調整して来るしさ」
律「それは、本末転倒だわね。
やっぱり、自動的に入れ替えるべきよ」
み「だよね。
ま、東京六大学野球なんかは……。
入れ替え戦自体無いけどね」
律「そうなの?」
み「知らない?」
律「東京六大学とは……。
無縁だわ」
み「卒業した先生とか、いない?」
律「六大学で医学部があるのは……。
東大と慶応だけよ。
どっちも、超難関。
卒業生がうちの病院に来るなんてこと、ぜったい無いわね」
み「律子先生は、どこの医学部だっけ?」
律「お茶の水女子大医学部」
み「ウソ!
超優秀じゃん」
律「ばーか。
お茶の水に医学部なんかありまっせん」
み「なんだ……。
びっくらこいた。
ほんとはどこなのよ?」
律「ヒ、ミ、ツ」
み「ニセ医者じゃないのか?」
律「それよか、栗山米菓!
バレーボールの2部リーグなんか持ってたって……。
あんまり宣伝効果、無いんじゃないの?」
み「ま、確かにね。
地元でも、知らない人の方が多いかも」
律「チームなんか持たないで……。
サッカーのスポンサーになればいいのよ。
胸マークの」
み「それは……。
同じ米菓同士で、亀田製菓が譲らないんじゃないの?」
律「それなら両方で競わせて、高い方と契約すればいいわけじゃない」
み「案外、シビアだね」
律「女は、洗練されてないものに対して厳しいものです。
あのユニフォームの色合いと、胸の『亀田製菓』は、一考の余地ありです」
み「わたしから、関係者に伝えます」
律「お願いします。
胸のスポンサーロゴは、Befcoにしましょう」
み「あ、栗山米菓で、もうひとつ。
本社に、面白い施設が併設されてるんだよ」
律「なに?」
み「その名も、『新潟せんべい王国』。
米菓に関する、体験・展示施設」
律「へ~。
誰でも入れるの?」
み「もちろん!
観光バスが来るよ。
おせんべいのアミューズメントパークだね」
み「おせんべい作りの行程も見学できるし……」
み「自分でおせんべいを焼く、手焼き体験コーナーもあります」
み「おせんべいに、いろんな絵を描いたり……」
み「“ばかうけ”に、オリジナルの味付けが出来たりします」
律「へ~。
面白そう」
み「子供は、ぜったいに喜ぶと思うよ。
そのほか……。
新潟の米菓の歴史を学べる、資料やミニチュア模型の展示コーナーもあるから……。
み「わたしのような博物館フリークも大満足。
もちろん、お土産グッズも盛りだくさん」
み「飲食コーナーもあります」
み「青海苔風味の『ばかうけコロッケ』なんて、いかがですか?」
律「あなた……。
栗山米菓の回し者?」
み「雇ってくれないかなぁ。
そうそう、敷地内にはもうひとつ……。
面白いものがあるんだよ」
律「なに?」
み「『ばかうけ稲荷』っていう、お稲荷さんの社」
律「お稲荷さんまで作っちゃったの?」
み「そうではない。
このお稲荷さんには、ちゃんとした由緒があるのじゃ。
話は、創業間もないころまで遡る。
栗山米菓の創業は、昭和22年だから、戦後すぐのころだね。
創業者の栗山源太郎氏が……。
社業の発展を願って、新発田市の大友稲荷から勧請したお稲荷様」
み「長らく、『米菓稲荷』と呼ばれて、社員から親しまれて来たもの」
律「なるほど。
60年以上の歴史があるってことね」
み「左様です。
もともとあったお稲荷様の、名前だけ改称したってわけ」
律「社長の発案?」
み「お客さんらしいよ。
『ばかうけ』が全国的にヒットしたころ……。
本社を訪ねたお客さんが、『米菓稲荷』を見て……。
『これは、ばかうけ稲荷ですね』って言ったんだって」
律「なるほど」
み「そのときは、すぐには改称されなかったんだけどね。
本社の敷地内に『新潟せんべい王国』が建つと……。
来館者も、お稲荷さんにお参りするようになった。
で、2005年。
『ばかうけ』発売15周年を記念して、お社を新しくしたのを機に……。
名前も『ばかうけ稲荷』に変えたんだよ」
律「ふ~ん。
なんか、芸人さんとかにご利益ありそうね」
律「ところでさ……。
あんたの頭の中の画像で……。
鳥居の左右に立ってるヘンナノは、何なの?」
律「とても、狛犬には見えないんだけど」
み「ご神体を知らぬのか!」
律「何でご神体が、鳥居の前に出てるのよ」
み「ご神体自ら、客引きをしておるのじゃ」
律「ありがたみの無いご神体ね」
み「フレンドリーな神さまじゃろ?
というのはウソで……。
あの2体は、『ばかうけ』の形をしたキャラクターだよ」
律「あんまり可愛くないわね」
み「そう言わんといて。
向かって左側が女の子で、『バリン』ちゃん」
み「右側が男の子で、『ボリン』くん」
律「恋人同士ってわけ?」
み「左様です。
あなたが今、頭の中で考えたことを……。
当てて進ぜよう。
この2人、どうやってエッチするんだって思ったでしょ?」
律「思うかい!
それ以前に、歩けないでしょ、このスタイルじゃ」
み「着ぐるみにできないよね。
と思ったてたら……。
できてました」
律「足があるじゃないの」
み「大目に見てちょーだい」
律「てことは……。
あの付け根に生殖器があるわけね」
み「やっぱり考えてるじゃん!」
さーて、無駄話をしてるうちに……。
けっこう、時間が経っちゃいましたね。
見回すと、バスのメンバーの姿も見えません。
律「みんな、どうしたのかしら?」
み「やっぱり、展望台の連チャンじゃあね。
下の物産コーナーに行ってるんじゃないの?」
律「時間もそろそろよね。
わたしたちも、ちょっと覗いて見る?」
エレベータに向かいます。
ここで、セリオンを昇るエレベーターからの動画をご紹介します。
昇るときにお見せすれば良かったんですが……。
あとになって見つけたもので。
エレベーターの前で、カメラが上方にパンし……。
一瞬ですが、見事な吹き抜けが見えます。
途中の階が無いので、塔の中が空洞なんですね。
どういう構造なのか……、まるで万華鏡のようです。
その万華鏡に閉じ込められたような、赤い物体に気づかれましたでしょうか?
↓これこれ。
なんだかわかりました?
ヒント。
あの動画は、12月のものです。
答えは、↓こちら。
なんか、配達中に氷漬けになっちゃったみたいですよね。
さて、1階の物産コーナーには……。
いくつもお店がありました。
こちらは、産直コーナー。
地元産の野菜が並んでるようです。
しかし……。
どうも、よーわからん。
野菜を買うってことは、地元の人だよね。
街外れの港まで、野菜を買いに来るものでしょうか?
続いて、物産のお店。
こちらは、「酒の英雄 セリオン店」。
やはり、入り口の暖簾に染め抜かれた「秋田の地酒」が売り物でしょうね。
中でもお勧めは……。
「八郎潟願人(がんにん)どぶろく」。
“どぶろく特区”として認可された、地どぶろく。
ちなみに、願人(がんにん)とは……。
お伊勢参りが出来ない人に代わって伊勢参りをした、山伏や修行僧のことだそうです。
で、その願人たちが、踊りや寸劇を門付けしたそうで……。
それが「願人踊り」。
260年前から行われてるそうですが……。
なんか、ちょっと不気味な風体と振り付けですね。
頼まれもしないのに、おまえの代わりに伊勢参りしてきたんだぞって……。
いきなり家の前で踊り出し……。
お布施を出すまで踊り続けるという……。
一種の、強請(ゆすり)だったんじゃないでしょうか?
ま、今では伝統芸能に奉られてるようですが。
律「わたし、これ買ってく。
なんか、乳製品みたいで美味しそう」
み「300mlなら、荷物にもならないか。
甘口と辛口、2種類あるみたい」
律「当然、2つとも買います」
続いては……。
「安亀商店」。
魚屋さんです。
加工品のほか、新鮮な生魚もあります。
地方発送してくれるのかな?
続いて……。
「小野商店」。
こちらは、山菜や野菜、加工品がメインのようです。
『きりたんぽ鍋セット』というのがありました。
↑イメージ(「小野商店」の商品ではありません)
人気商品のようです。
こちらは……。
「養老昆布」。
その名のとおり、とろろ昆布とか、各種の昆布が主のようです。
煮干しもあります。
なぜか、“稲庭うどん”がありました。
↑イメージ(「養老昆布」の商品ではありません)
稲庭うどんの「切り落とし」というのが、人気商品のようです。
「切り落とし」とは……。
うどんの長さを揃えて切るときに、切り落とされる端っこの部分のこと。
それを集めたもののようです。
なので、長さも太さもまちまち。
もちろん、味は変わりませんが……。
当然、安い!
続いて……。
「ブラスパ」。
こちらには、秋田の名産品がずらっと並んでます。
『あきたこまち(お米)』で作ったパスタやうどんもありました。
そして最後が……。
「フルゥール」。
こちらも、名産品店のようです。
中から、OLさんと鉄道くんが出てきました。
OLさんは、紙袋を胸に抱え……。
嬉々とした表情です。
わたしたちを見つけると……。
鉄道くんを残して、駆け寄って来ました。
律「ひょっとして……」
OL「あった!
あったのよ、なまはげのお面。
ほら、あそこで女の子が被ってるでしょ」
み「すげー。
執念が実りましたね」
OL「ガイドさんに感謝だわ。
ダメもとだったのに、どストライク」
律「彼には、わけを話したの?」
OL「言えるわけないでしょ。
お土産だって言ったら……。
クビ傾げてた」
み「まさか、今夜自分が被ることになるとは……。
思いもしないだろうね」
OL「あ~。
考えただけで、腰が砕けそう」
律「でも、彼で大丈夫かしら」
鉄道くんは、手を後ろに組んで、土産物を眺めてます。
どう見ても、捕食を待つ草食獣ですね。
↑イージーガゼル
み「案外さ、別の人格が出たりするかもよ。
実際のなまはげも、そうだって云うから。
あの格好すると、まったくの別人になるんだって」
「んだす」
律・み「ガイドさん!」
ガ「あの面を被った瞬間……。
人は、なまはげになるのす」
律「それ、わかる!
なまはげ館で変身したとき……。
体の奥から、衝動が突き上げてきたもの」
み「それで……。
わたしを脅かしたわけね」
律「だからあれは、ミーのせいじゃないのよ~」
み「ぜったいリベンジしてやるから」
OL「ガイドさん、ほんとにありがとう。
これ、父が欲しがってたのよ」
ガ「ほんとですか。
良かったですぅ」
大ウソつきが……。
真相を言ってやろうかしら。
と思ったら……。
OLさんに、思い切り睨まれてしまいました。
なお、この「フルゥール」では……。
以前、下記の商品を企画したようです。
発売前に話題になりましたが……。
苦情が山のように来て、あわれ、販売自粛となったとか。
同じく1階では、飲食コーナーも充実しているようです。
レストランもありました。
「港家厨房 海鮮ばやし」。
透視の術を使い、ちょっとメニューを覗いてみましょう。
ふむふむ。
やはりお店の名前どおり、お刺身やフライなど、海鮮系が充実してますね。
別のページを繰ると……。
地元産の桃豚を使った肉料理から……。
稲庭うどん、きりたんぽ鍋まであります。
好き嫌いがバラバラな同士で入っても……。
必ず食べられるものがあるって感じですね。
迷ったら、旬の食材を使った『海鮮ばやし定食』で、外れが無いでしょう。
小腹を抑えたい方には、軽食も充実してます。
1階のフードコートに、3店。
まずは、「茶苑」。
こちらは、水餃子のお店。
続いて、「AKADAMAセイラーズ」。
こちらは、ホットドックやハンバーガー、ソフトクリームなど……。
ポピュラーなメニューが揃ってます。
セリオンオープン当初からのテナントさんです。
もう1店の「はまなす亭」は……。
麺類がメイン。
各種ラーメンのほか、稲庭うどんもあります。
麺だけじゃ物足りないという方は……。
ミニカレーを200円で追加できます。
もちろん、カレーの単品もありますよ。
でも現在、改装中のようで……。
画像がぜんぜんありませんでした(泣)。
あと、4階には展望カフェもあります。
「カフェ・ファリガ」。
2010年4月オープンのニューフェース。
スイーツが豊富に揃ってます。
カレーやカツ丼、ハンバーグなど……。
ランチメニューも充実してますので……。
お腹を空かしていても、大丈夫。
これだけいろんなお店があれば……。
何度来ても楽しめそうですね。
2階には、キッズコーナーもありますから……。
案外、子供連れのリピーターが多いかも。
さて、男鹿半島を巡る『なぎさGAO』ツアー。
長いと思ってた行程も、過ぎてしまえばあっと言う間でした。
セリオンからバスに乗ってしまえば……。
あとは、秋田駅まで一直線。
名残惜しげな乗客たちを乗せ……。
バスは、陽の傾いた秋田市街を進みます。
ガ「さて、みなさま。
本日は、秋田中央交通の『なぎさGAO』コースをご利用いただきまして、ありがとうございます。
楽しんでいただけましたでしょうか?」
客「は~い」
ガ「ありがとうございます。
みなさまと過ごさせていただきました1日……。
わたしも、本当に楽しませていただきました。
しかしながら……。
日の暮れとともに、お別れの時が近づいてまいりました」
み「うぅっ。
そんなこと言わないでよ……」
思わず声が詰まります。
ガ「はい。
すみません」
ガイドさんの声も、思いなしか震えているようです。
ガ「さて。
最後は、明るく締めましょうね」
と言ったとたん……。
ガイドさんは絶句してしまいました。
ガイドさんの震える唇をみたら……。
もう堪えきれません。
堰を切ったように、涙が溢れます。
「何泣いてんのよ!」
後ろの席から、声が上がりました。
OLさんです。
でも、言った本人が泣いてます。
OL「これは、お別れなんかじゃない。
これから、ずっとおつき合いするんだよ。
わたしたちの結婚式には……。
ぜったい、全員に出てもらうからね。
だってみんなは、わたしたちの出会いの場に立ち会ったんだから」
OL「あなたたちは……。
わたしたちにとって、特別な人なの。
このままバイバイなんて、ぜったいにイヤだから」
女子大1「みなさん、メアド交換しませんか」
律「そうよ!
なんで、そんなこと思いつかなかったんだろ」
バスの中は、しばしメアド交換会となりました。
さて、そうこうするうち……。
バスは、見覚えのある大通りに入りました。
もう、駅まで間近です。
ガ「Mikikoさん。
じゃ、この先あたりになりますけど……。
よろしいですか?」
み「はい。
わがまま言ってすみません」
ガ「いいえ。
通り道ですから」
実は、セリオンでバスに乗りこむとき……。
ガイドさんに、途中で降ろしてくれるよう、お願いしてあったんです。
秋田駅まで行っちゃうと……。
今夜の宿は、また同じ道を戻ることになるからです。
ガイドさんは、わがままを快く聞いてくださいました。
ガ「はい。
みなさん。
Mikikoさまと律子さまが、一足先にお降りになります」
客「え~」
一斉に、悲鳴のような声があがりました。
み「そんな声、出さないでよ。
メアド交換したんだし、お別れじゃないんだから。
あ、わざわざこっちに曲がってもらわなくても……。
千秋公園の前で大丈夫ですよ」
ガ「いえ。
駅前通りの広小路は、一方通行なんです。
駅に向かうには、中央通りに回りますから……」
バスが左側に寄ります。
み「それじゃ、みなさん……。
うぅっ」
律「Mikiちゃん、あなた喋らなくていいから。
ほんとにみんな、楽しかったわ。
ありがとう。
OLさん、鉄道くん……。
あ、ごめんなさいね。
勝手にこんな呼び方させてもらってたの。
式には、必ず出させてもらいますから……」
律「あと、社長さん……。
じゃなかった、オペラ歌手さん。
すばらしい歌声をありがとうございました」
律「おみ……、じゃなくて、奥さまと、いつまでもお幸せに」
律「あと、女子大生のお二人。
三角点の話、とても楽しかった」
律「旅から帰ったら、ぜったい『点の記』見るから」
律「あと……。
運転手さん、ありがとうございました」
み「うわーん。
ひとこともセリフが無くて、ゴメンなさい」
律「しゃべらなくていいってば!
そして、ガイドさん」
律「楽しい旅を、本当にありがとう。
一生忘れられない、すばらしい一日になりました。
ちょっと、泣かないでよ……。
わたしまでおかしくなっちゃうじゃない」
ガ「本日はありがとうございました。
バスガイドになって、本当に良かったです」
OL・鉄「おふたりとも、お元気で」
お水「お元気で」
社「おおきに」
女子大「メールしますから」
いい加減にしないと、読者に怒られるな。
あ、わかった。
“欽ドン”って、『めだかの兄妹』でしょ」
律「それは、“欽どこ”。
“欽ドン”は、『良い子悪い子普通の子』よ」
み「なんでそんなに詳しいわけ?」
律「見てたもの。
幼稚園くらいから……。
小学校の低学年くらいまでだったかな」
み「へー。
そういうテレビ、見るタイプだとは思わなかった」
律「子供のころは、ごくごく普通の子だったの。
自分の体が、ほかの人と違うなんて、思いもしなかったもの」
み「あ、そうか。
子供のころは、生えてなくてあたりまえだもんね」
律「そゆこと。
屈折し出したのは、中学くらいからね。
Mikiちゃんは、見てなかったの?」
み「欽ちゃんは、あんまりね。
あの、オクターブの高いノリにはついていけなかった」
律「案外、醒めた子ね」
み「でも、ドリフは見てたよ」
律「へー。
どう違うのよ?」
み「欽ちゃんは、アドリブメインなんじゃないの?
その点、ドリフのコントは、台本がしっかりしてるし……。
あと、やっぱり子供には……。
舞台の仕掛けみたいなのが面白かったんだと思う」
律「なるほどねー」
み「ところで……。
何の話だっけ?」
律「だから、テレビの話よ」
み「その前よ。
何でテレビの話になったの?」
律「不幸のズンドコ?」
み「その前!」
律「その前なんか、無いんじゃないの?
展望台に昇ってきたばっかりよ」
み「それだ!
万代島ビルの展望台の名前!
『Befcoばかうけ展望室』!」
律「それが、どうしてテレビの話になったのよ?」
み「『ばかうけ』だよ」
律「思い出した。
その『ばかうけ』って言葉……。
小学校のころ、流行ってたの」
み「流行らせたのが、“欽ドン”ってこと?」
律「そうそう。
視聴者からの投稿ハガキを読んで……。
面白かったら、『ばかうけ』って言ったわけ」
み「なるほど。
栗山米菓の『ばかうけ』が出たのは……」
み「わたしが中学生くらいだったと思うから……。
“欽ドン”より、ずっと後だね。
パクっちゃって、大丈夫だったんだろうか?」
律「『ばかうけ』って、普通の言葉じゃないの?」
み「そうかなぁ。
でも確かに、“バカに受ける”ってのを縮めただけだからね」
律「それを、ちゃっかり商品名にするってのは……。
一種の頭の良さよ」
み「バントヒットみたいなもんかね」
律「そうそう。
で、お味の方はどうなの?」
み「うーむ。
決して、おいしくないわけじゃないが……。
食べて感動するほどでもない」
律「そんなら、“ややうけ”ね。
あー、おせんべい食べたくなってきた。
“ばかうけ”、物産店に売ってないかな?」
み「あるかい!
そう言えば、“なまはげ”のお面、あったのかな?
OLさんたちの姿が見えないから、物産店に直行かもよ」
律「なんでそんなに“なまはげ”面にこだわるのか……。
鉄道くんには言ったのかしら?」
み「言ってたら大したものだけどね」
律「今夜、どうやって切り出すつもりかしら?
一緒に泊まりたい気分」
み「鉄道くんは、介添えが必要みたいだよね」
律「案外……。
テクニシャンかもよー」
み「ゴールドフィンガー?」
律「ははは。
だいぶ、話が落ちてきたわね」
み「立て直しましょう。
『ばかうけ展望室』の話だったね」
律「それそれ。
その前に、なんか付いてたじゃない。
“赤べこ”だっけ?」
み「思い切り違うでしょ。
『Befco(ベフコ)』だよ」
律「栗山米菓の頭文字とは、ぜんぜん繋がらないみたいだけど」
み「『Befco』は、いわゆる“コーポレートブランド”ってやつ」
律「どういう意味なの?」
み「たしか、“Beika Frontier Company”だったかな」
律「誰もわからないわよ。
“セリオン”みたいじゃないの」
み「あ、そうか。
“Sea Pavilion”で、“セリオン”だったね。
2つの展望台、もう一つ、共通点があったってわけか。
意味のわからん名前が付いてるっていう」
律「でも、ユニフォームに付けるのなら……。
『Befco』の方がカッコいいよね」
み「あ、それで思い出した。
栗山米菓は、バレーボールのチームを持ってるんだよ。
たしか、『Befcoビービースターズ』」
律「聞いたことないんですけど」
み「チャレンジリーグだからね」
律「どんなリーグよ?」
み「バレーボールでは……。
トップリーグが、プレミアリーグって云って……。
たしか、8チーム。
JTとか、東レとかが所属してる」
み「チャレンジリーグは、その下のリーグ」
律「サッカーのJ2みたいなもの?」
み「そうそう」
律「プレミアに上がれそうなの?」
み「ぜんぜん無理。
チャレンジリーグは、12チームくらい所属してるんだけど……。
『ビービースターズ』は、下から2番目くらいだね」
律「それじゃ、『ブービースターズ』じゃないの」
み「うまい!
座布団1枚」
律「お~。
今日、2枚目。
じゃ、プレミアへの道は遠いってわけね」
み「プレミア入りは、ハードルが高いんだよ。
チャレンジリーグでトップになっても、自動的に上がれるわけじゃないし」
律「そうなの?
サッカーは、自動入れ替えよね」
み「バレーは、入れ替え戦に勝たなきゃならないんだ。
プレミアの8位とチャレンジの1位、同じく7位と2位が戦う。
プレミアで負けが混んだチームは……。
リーグ戦捨てて、入れ替え戦に照準を合わせて調整して来るしさ」
律「それは、本末転倒だわね。
やっぱり、自動的に入れ替えるべきよ」
み「だよね。
ま、東京六大学野球なんかは……。
入れ替え戦自体無いけどね」
律「そうなの?」
み「知らない?」
律「東京六大学とは……。
無縁だわ」
み「卒業した先生とか、いない?」
律「六大学で医学部があるのは……。
東大と慶応だけよ。
どっちも、超難関。
卒業生がうちの病院に来るなんてこと、ぜったい無いわね」
み「律子先生は、どこの医学部だっけ?」
律「お茶の水女子大医学部」
み「ウソ!
超優秀じゃん」
律「ばーか。
お茶の水に医学部なんかありまっせん」
み「なんだ……。
びっくらこいた。
ほんとはどこなのよ?」
律「ヒ、ミ、ツ」
み「ニセ医者じゃないのか?」
律「それよか、栗山米菓!
バレーボールの2部リーグなんか持ってたって……。
あんまり宣伝効果、無いんじゃないの?」
み「ま、確かにね。
地元でも、知らない人の方が多いかも」
律「チームなんか持たないで……。
サッカーのスポンサーになればいいのよ。
胸マークの」
み「それは……。
同じ米菓同士で、亀田製菓が譲らないんじゃないの?」
律「それなら両方で競わせて、高い方と契約すればいいわけじゃない」
み「案外、シビアだね」
律「女は、洗練されてないものに対して厳しいものです。
あのユニフォームの色合いと、胸の『亀田製菓』は、一考の余地ありです」
み「わたしから、関係者に伝えます」
律「お願いします。
胸のスポンサーロゴは、Befcoにしましょう」
み「あ、栗山米菓で、もうひとつ。
本社に、面白い施設が併設されてるんだよ」
律「なに?」
み「その名も、『新潟せんべい王国』。
米菓に関する、体験・展示施設」
律「へ~。
誰でも入れるの?」
み「もちろん!
観光バスが来るよ。
おせんべいのアミューズメントパークだね」
み「おせんべい作りの行程も見学できるし……」
み「自分でおせんべいを焼く、手焼き体験コーナーもあります」
み「おせんべいに、いろんな絵を描いたり……」
み「“ばかうけ”に、オリジナルの味付けが出来たりします」
律「へ~。
面白そう」
み「子供は、ぜったいに喜ぶと思うよ。
そのほか……。
新潟の米菓の歴史を学べる、資料やミニチュア模型の展示コーナーもあるから……。
み「わたしのような博物館フリークも大満足。
もちろん、お土産グッズも盛りだくさん」
み「飲食コーナーもあります」
み「青海苔風味の『ばかうけコロッケ』なんて、いかがですか?」
律「あなた……。
栗山米菓の回し者?」
み「雇ってくれないかなぁ。
そうそう、敷地内にはもうひとつ……。
面白いものがあるんだよ」
律「なに?」
み「『ばかうけ稲荷』っていう、お稲荷さんの社」
律「お稲荷さんまで作っちゃったの?」
み「そうではない。
このお稲荷さんには、ちゃんとした由緒があるのじゃ。
話は、創業間もないころまで遡る。
栗山米菓の創業は、昭和22年だから、戦後すぐのころだね。
創業者の栗山源太郎氏が……。
社業の発展を願って、新発田市の大友稲荷から勧請したお稲荷様」
み「長らく、『米菓稲荷』と呼ばれて、社員から親しまれて来たもの」
律「なるほど。
60年以上の歴史があるってことね」
み「左様です。
もともとあったお稲荷様の、名前だけ改称したってわけ」
律「社長の発案?」
み「お客さんらしいよ。
『ばかうけ』が全国的にヒットしたころ……。
本社を訪ねたお客さんが、『米菓稲荷』を見て……。
『これは、ばかうけ稲荷ですね』って言ったんだって」
律「なるほど」
み「そのときは、すぐには改称されなかったんだけどね。
本社の敷地内に『新潟せんべい王国』が建つと……。
来館者も、お稲荷さんにお参りするようになった。
で、2005年。
『ばかうけ』発売15周年を記念して、お社を新しくしたのを機に……。
名前も『ばかうけ稲荷』に変えたんだよ」
律「ふ~ん。
なんか、芸人さんとかにご利益ありそうね」
律「ところでさ……。
あんたの頭の中の画像で……。
鳥居の左右に立ってるヘンナノは、何なの?」
律「とても、狛犬には見えないんだけど」
み「ご神体を知らぬのか!」
律「何でご神体が、鳥居の前に出てるのよ」
み「ご神体自ら、客引きをしておるのじゃ」
律「ありがたみの無いご神体ね」
み「フレンドリーな神さまじゃろ?
というのはウソで……。
あの2体は、『ばかうけ』の形をしたキャラクターだよ」
律「あんまり可愛くないわね」
み「そう言わんといて。
向かって左側が女の子で、『バリン』ちゃん」
み「右側が男の子で、『ボリン』くん」
律「恋人同士ってわけ?」
み「左様です。
あなたが今、頭の中で考えたことを……。
当てて進ぜよう。
この2人、どうやってエッチするんだって思ったでしょ?」
律「思うかい!
それ以前に、歩けないでしょ、このスタイルじゃ」
み「着ぐるみにできないよね。
と思ったてたら……。
できてました」
律「足があるじゃないの」
み「大目に見てちょーだい」
律「てことは……。
あの付け根に生殖器があるわけね」
み「やっぱり考えてるじゃん!」
さーて、無駄話をしてるうちに……。
けっこう、時間が経っちゃいましたね。
見回すと、バスのメンバーの姿も見えません。
律「みんな、どうしたのかしら?」
み「やっぱり、展望台の連チャンじゃあね。
下の物産コーナーに行ってるんじゃないの?」
律「時間もそろそろよね。
わたしたちも、ちょっと覗いて見る?」
エレベータに向かいます。
ここで、セリオンを昇るエレベーターからの動画をご紹介します。
昇るときにお見せすれば良かったんですが……。
あとになって見つけたもので。
エレベーターの前で、カメラが上方にパンし……。
一瞬ですが、見事な吹き抜けが見えます。
途中の階が無いので、塔の中が空洞なんですね。
どういう構造なのか……、まるで万華鏡のようです。
その万華鏡に閉じ込められたような、赤い物体に気づかれましたでしょうか?
↓これこれ。
なんだかわかりました?
ヒント。
あの動画は、12月のものです。
答えは、↓こちら。
なんか、配達中に氷漬けになっちゃったみたいですよね。
さて、1階の物産コーナーには……。
いくつもお店がありました。
こちらは、産直コーナー。
地元産の野菜が並んでるようです。
しかし……。
どうも、よーわからん。
野菜を買うってことは、地元の人だよね。
街外れの港まで、野菜を買いに来るものでしょうか?
続いて、物産のお店。
こちらは、「酒の英雄 セリオン店」。
やはり、入り口の暖簾に染め抜かれた「秋田の地酒」が売り物でしょうね。
中でもお勧めは……。
「八郎潟願人(がんにん)どぶろく」。
“どぶろく特区”として認可された、地どぶろく。
ちなみに、願人(がんにん)とは……。
お伊勢参りが出来ない人に代わって伊勢参りをした、山伏や修行僧のことだそうです。
で、その願人たちが、踊りや寸劇を門付けしたそうで……。
それが「願人踊り」。
260年前から行われてるそうですが……。
なんか、ちょっと不気味な風体と振り付けですね。
頼まれもしないのに、おまえの代わりに伊勢参りしてきたんだぞって……。
いきなり家の前で踊り出し……。
お布施を出すまで踊り続けるという……。
一種の、強請(ゆすり)だったんじゃないでしょうか?
ま、今では伝統芸能に奉られてるようですが。
律「わたし、これ買ってく。
なんか、乳製品みたいで美味しそう」
み「300mlなら、荷物にもならないか。
甘口と辛口、2種類あるみたい」
律「当然、2つとも買います」
続いては……。
「安亀商店」。
魚屋さんです。
加工品のほか、新鮮な生魚もあります。
地方発送してくれるのかな?
続いて……。
「小野商店」。
こちらは、山菜や野菜、加工品がメインのようです。
『きりたんぽ鍋セット』というのがありました。
↑イメージ(「小野商店」の商品ではありません)
人気商品のようです。
こちらは……。
「養老昆布」。
その名のとおり、とろろ昆布とか、各種の昆布が主のようです。
煮干しもあります。
なぜか、“稲庭うどん”がありました。
↑イメージ(「養老昆布」の商品ではありません)
稲庭うどんの「切り落とし」というのが、人気商品のようです。
「切り落とし」とは……。
うどんの長さを揃えて切るときに、切り落とされる端っこの部分のこと。
それを集めたもののようです。
なので、長さも太さもまちまち。
もちろん、味は変わりませんが……。
当然、安い!
続いて……。
「ブラスパ」。
こちらには、秋田の名産品がずらっと並んでます。
『あきたこまち(お米)』で作ったパスタやうどんもありました。
そして最後が……。
「フルゥール」。
こちらも、名産品店のようです。
中から、OLさんと鉄道くんが出てきました。
OLさんは、紙袋を胸に抱え……。
嬉々とした表情です。
わたしたちを見つけると……。
鉄道くんを残して、駆け寄って来ました。
律「ひょっとして……」
OL「あった!
あったのよ、なまはげのお面。
ほら、あそこで女の子が被ってるでしょ」
み「すげー。
執念が実りましたね」
OL「ガイドさんに感謝だわ。
ダメもとだったのに、どストライク」
律「彼には、わけを話したの?」
OL「言えるわけないでしょ。
お土産だって言ったら……。
クビ傾げてた」
み「まさか、今夜自分が被ることになるとは……。
思いもしないだろうね」
OL「あ~。
考えただけで、腰が砕けそう」
律「でも、彼で大丈夫かしら」
鉄道くんは、手を後ろに組んで、土産物を眺めてます。
どう見ても、捕食を待つ草食獣ですね。
↑イージーガゼル
み「案外さ、別の人格が出たりするかもよ。
実際のなまはげも、そうだって云うから。
あの格好すると、まったくの別人になるんだって」
「んだす」
律・み「ガイドさん!」
ガ「あの面を被った瞬間……。
人は、なまはげになるのす」
律「それ、わかる!
なまはげ館で変身したとき……。
体の奥から、衝動が突き上げてきたもの」
み「それで……。
わたしを脅かしたわけね」
律「だからあれは、ミーのせいじゃないのよ~」
み「ぜったいリベンジしてやるから」
OL「ガイドさん、ほんとにありがとう。
これ、父が欲しがってたのよ」
ガ「ほんとですか。
良かったですぅ」
大ウソつきが……。
真相を言ってやろうかしら。
と思ったら……。
OLさんに、思い切り睨まれてしまいました。
なお、この「フルゥール」では……。
以前、下記の商品を企画したようです。
発売前に話題になりましたが……。
苦情が山のように来て、あわれ、販売自粛となったとか。
同じく1階では、飲食コーナーも充実しているようです。
レストランもありました。
「港家厨房 海鮮ばやし」。
透視の術を使い、ちょっとメニューを覗いてみましょう。
ふむふむ。
やはりお店の名前どおり、お刺身やフライなど、海鮮系が充実してますね。
別のページを繰ると……。
地元産の桃豚を使った肉料理から……。
稲庭うどん、きりたんぽ鍋まであります。
好き嫌いがバラバラな同士で入っても……。
必ず食べられるものがあるって感じですね。
迷ったら、旬の食材を使った『海鮮ばやし定食』で、外れが無いでしょう。
小腹を抑えたい方には、軽食も充実してます。
1階のフードコートに、3店。
まずは、「茶苑」。
こちらは、水餃子のお店。
続いて、「AKADAMAセイラーズ」。
こちらは、ホットドックやハンバーガー、ソフトクリームなど……。
ポピュラーなメニューが揃ってます。
セリオンオープン当初からのテナントさんです。
もう1店の「はまなす亭」は……。
麺類がメイン。
各種ラーメンのほか、稲庭うどんもあります。
麺だけじゃ物足りないという方は……。
ミニカレーを200円で追加できます。
もちろん、カレーの単品もありますよ。
でも現在、改装中のようで……。
画像がぜんぜんありませんでした(泣)。
あと、4階には展望カフェもあります。
「カフェ・ファリガ」。
2010年4月オープンのニューフェース。
スイーツが豊富に揃ってます。
カレーやカツ丼、ハンバーグなど……。
ランチメニューも充実してますので……。
お腹を空かしていても、大丈夫。
これだけいろんなお店があれば……。
何度来ても楽しめそうですね。
2階には、キッズコーナーもありますから……。
案外、子供連れのリピーターが多いかも。
さて、男鹿半島を巡る『なぎさGAO』ツアー。
長いと思ってた行程も、過ぎてしまえばあっと言う間でした。
セリオンからバスに乗ってしまえば……。
あとは、秋田駅まで一直線。
名残惜しげな乗客たちを乗せ……。
バスは、陽の傾いた秋田市街を進みます。
ガ「さて、みなさま。
本日は、秋田中央交通の『なぎさGAO』コースをご利用いただきまして、ありがとうございます。
楽しんでいただけましたでしょうか?」
客「は~い」
ガ「ありがとうございます。
みなさまと過ごさせていただきました1日……。
わたしも、本当に楽しませていただきました。
しかしながら……。
日の暮れとともに、お別れの時が近づいてまいりました」
み「うぅっ。
そんなこと言わないでよ……」
思わず声が詰まります。
ガ「はい。
すみません」
ガイドさんの声も、思いなしか震えているようです。
ガ「さて。
最後は、明るく締めましょうね」
と言ったとたん……。
ガイドさんは絶句してしまいました。
ガイドさんの震える唇をみたら……。
もう堪えきれません。
堰を切ったように、涙が溢れます。
「何泣いてんのよ!」
後ろの席から、声が上がりました。
OLさんです。
でも、言った本人が泣いてます。
OL「これは、お別れなんかじゃない。
これから、ずっとおつき合いするんだよ。
わたしたちの結婚式には……。
ぜったい、全員に出てもらうからね。
だってみんなは、わたしたちの出会いの場に立ち会ったんだから」
OL「あなたたちは……。
わたしたちにとって、特別な人なの。
このままバイバイなんて、ぜったいにイヤだから」
女子大1「みなさん、メアド交換しませんか」
律「そうよ!
なんで、そんなこと思いつかなかったんだろ」
バスの中は、しばしメアド交換会となりました。
さて、そうこうするうち……。
バスは、見覚えのある大通りに入りました。
もう、駅まで間近です。
ガ「Mikikoさん。
じゃ、この先あたりになりますけど……。
よろしいですか?」
み「はい。
わがまま言ってすみません」
ガ「いいえ。
通り道ですから」
実は、セリオンでバスに乗りこむとき……。
ガイドさんに、途中で降ろしてくれるよう、お願いしてあったんです。
秋田駅まで行っちゃうと……。
今夜の宿は、また同じ道を戻ることになるからです。
ガイドさんは、わがままを快く聞いてくださいました。
ガ「はい。
みなさん。
Mikikoさまと律子さまが、一足先にお降りになります」
客「え~」
一斉に、悲鳴のような声があがりました。
み「そんな声、出さないでよ。
メアド交換したんだし、お別れじゃないんだから。
あ、わざわざこっちに曲がってもらわなくても……。
千秋公園の前で大丈夫ですよ」
ガ「いえ。
駅前通りの広小路は、一方通行なんです。
駅に向かうには、中央通りに回りますから……」
バスが左側に寄ります。
み「それじゃ、みなさん……。
うぅっ」
律「Mikiちゃん、あなた喋らなくていいから。
ほんとにみんな、楽しかったわ。
ありがとう。
OLさん、鉄道くん……。
あ、ごめんなさいね。
勝手にこんな呼び方させてもらってたの。
式には、必ず出させてもらいますから……」
律「あと、社長さん……。
じゃなかった、オペラ歌手さん。
すばらしい歌声をありがとうございました」
律「おみ……、じゃなくて、奥さまと、いつまでもお幸せに」
律「あと、女子大生のお二人。
三角点の話、とても楽しかった」
律「旅から帰ったら、ぜったい『点の記』見るから」
律「あと……。
運転手さん、ありがとうございました」
み「うわーん。
ひとこともセリフが無くて、ゴメンなさい」
律「しゃべらなくていいってば!
そして、ガイドさん」
律「楽しい旅を、本当にありがとう。
一生忘れられない、すばらしい一日になりました。
ちょっと、泣かないでよ……。
わたしまでおかしくなっちゃうじゃない」
ガ「本日はありがとうございました。
バスガイドになって、本当に良かったです」
OL・鉄「おふたりとも、お元気で」
お水「お元気で」
社「おおきに」
女子大「メールしますから」