Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
東北に行こう!(8)
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み「あ~。
 もう時間だ」
律「え~。
 早すぎ」
み「だから、1時間なんかあっという間だって言ったでしょ」
律「飼育員さんと話しこんじゃったしね」
み「急ごう」
律「うん」

 1階のミュージアムショップに後ろ髪を引かれますが……。
男鹿水族館・ミュージアムショップ

 残念ながら、覗いてる時間はありません。
 このほか、素敵なレストラン「フルット」もあります。
男鹿水族館・レストラン「フルット」

 男鹿の海が、目の前ですね。
 こんなメニューになってます。
男鹿水族館・レストラン「フルット」メニュー

 GAOのホームページによると……。
 “しょっつるベースのタレ”の「男鹿のやきそば」がお勧めのようです。
男鹿水族館・レストラン「フルット」男鹿のやきそば

 しかし……。
 メニューを見ると、大盛りは200円増し。
男鹿水族館・レストラン「フルット」男鹿のやきそば・大盛りは200円増し

 秋田って、大盛りが高いよね。
 なぜじゃ?

 さて、わたしたちはもちろん、レストランに寄ってるヒマはありません。

律「また来たいね」
み「そうだね。
 今度来るときは……。
 きっと、豪太の子供と会えるんじゃない?」

 バスに戻ると、ちょうど11時40分。
 ぎりぎりセーフです。
 ほかの乗客のみなさんは、もう席に着いてました。

み「遅くなりました」
律「すみませーん」

 遅れてはいませんけど……。
 最後になったってことで、一応みなさんに謝ります。

 さて、わたしたちが席に着くと、バスは発車しました。
 再び、崖を上がり……。
 男鹿西海岸に沿って走り出します。
GAOを出て、男鹿西海岸に沿って走り出します

律「そろそろお昼ね」
み「お腹空いた?」
律「朝ラーだったもん」
み「人の分までスープ飲んだくせに」
律「スープなんて、もう出ちゃったよ」
み「お下品」

 走ること20分。
 ちょうど12時。

ガ「間もなく、入道崎に到着します。
 ここは男鹿半島の最北端で、北緯40度線が通ってます」
律「40度線!
 秋田って、そんなに北なの?」
み「韓国と北朝鮮の境界が、38度線だよね」
韓国と北朝鮮の境界が、38度線

律「平壌(ピョンヤン)の緯度が、ちょうど39度あたりよ」
み「さて、ここで問題です」
律「何よ?」
み「緯度1度の距離は、何キロあるでしょう?」
律「わかるかい!」
み「簡単じゃない。
 地球の円周÷360度だよ」
律「その円周がわからんの」
み「だいたいでいいから」
律「38万キロ?」
み「それは、月までの距離でしょ!
 地球の円周は、4万キロ」
律「じゃ、4万÷360か……。
 暗算できん」
み「約111キロ。
 つまり入道崎は、平壌より100キロ以上も北ってことだよ」
律「『紙上旅行倶楽部』、ためになるね~」
み「えっへん」

ガ「この入道崎は……。
 残念ながら、今日は見れませんが……。
 『日本の夕日百選』に選ばれた、夕日の名所でもあります」
入道崎の夕日

ガ「この夕日だけを見に来る方もいるくらいですよ。
 みなさんも、今度はぜひ、見に来て下さいね」
客「は~い」
み「しつもーん」
ガ「何でしょう?」
み「入道崎という地名の由来は何ですか?」
入道崎の地図

ガ「そういえば……。
 何ででしょう?」
み「ネットで調べても、出てなかったんですよね。
 バスガイドさんなら、知ってると思って」
ガ「残念ながら……。
 マニュアルには、書いてないです。
 今度、先輩に聞いてみます」
律「きっとここに、大入道が出たのよ」
大入道

み「そんな話があれば、ネットに載ってると思うけどな」
律「じゃ、何だと思う?」
み「お坊さんが身を投げたんじゃない?
 悲恋の果てに」
悲恋の果て

律「そっちの方が、ロマンチックか。
 でもあんた……。
 ↑ヘンな方向、想像してない?」
み「入道崎の夕日は……。
 お坊さんの血の色に染まっているのだ」
悲恋の果て・血の海

律「ちょっと!
 頭からヘンな想像が溢れてるよ」

 さて、バスが大きな駐車場に入りました。

ガ「みなさまには、ここで昼食をとっていただきます。
 お店はたくさんありますので……。
 お好みのお店で、男鹿の味をお楽しみください。
 なお出発は、12時50分になります。
 時間までにバスにお戻りくださいますよう、お願いいたします」
客「は~い」

 バスを降りると……。
 いかにも観光客相手のお店が、ずら~っと並んでます。
入道崎の食堂群

律「どこがいいのかわからないね。
 どこにしよう?」
み「わたしが、ちゃんと調べてきてある」
律「お~。
 さすが」
み「こっち、こっち」
律「ちょっと、どこ行くのよ」
み「この裏手にあるんだよ」

 駐車場の真ん前に並んでるのは……。
 主に団体さん相手のお店です。
 それなりに美味しいのでしょうが……。
 せっかく自由に選べるんですから……。
 ちょっと捻りましょう。

 わたしがネットで選んだのは、ここ。
美野幸・地図

 駐車場前に並んでるお店からは、1本裏の道にあります。

み「ここここ」
美野幸・店名板

律「へー。
 駐車場前のお店とは、ぜんぜん雰囲気違うね」
美野幸・外観

 さっそく、暖簾をくぐりましょう。
美野幸・暖簾

 案の定……。
 お昼時のお店は、かなり混んでました。
 昔は、知る人ぞ知るというお店だったようですが……。
 テレビで紹介されて以来……。
 今では、かなりな有名店。
美野幸・「全国ふるさとグルメ大賞」グランプリ

 今日は、3連休初日の土曜日とあって……。
 盛況のようです。
 残念ながら、満席ですね。
 レジ脇の椅子に腰掛け、席の空くのを待ちます。
 律子先生は、壁をきょろきょろし始めました。

律「お品書き、貼ってないかな?」
み「お待ちなせい!」
律「また出た」
み「ここは、わたしに任せてちょうだい」
律「新潟では鳥奉行……。
 ラーメン屋では、丼奉行。
 で、ここは何奉行なの?」
み「もちろん!
 鍋奉行です」
律「お財布の方も、任せていいわけ?」
み「それは……。
 鍋奉行の管轄ではない」
律「誰の管轄なのよ?」
み「勘定奉行だろ」
勘定奉行

律「納得いかんなぁ。
 鍋奉行と兼務なんじゃないの?」
み「先生とわたしじゃ……。
 収入が大違いでしょ!
 何倍違うんだろ。
 3倍は確実に違うよね」
律「そんなに違う?」
み「間違いなし。
 わたしがいくらもらってると思うの?
 年収350万だよ」
律「うそ。
 そんなもんなの?」
み「3倍でしょ?」
律「だいたい……。
 そうなるね」
み「普通……。
 これだけの収入差の2人が、一緒に旅行した場合……。
 相手方の分も払おうという気にならない?」
律「ぜんぜん。
 それとこれとは別でしょ。
 第一そんなことしたら……。
 相手に失礼だわ」
み「ぜんぜん失礼ではない!
 わたしなら、泣いて喜ぶ」
律「あんたは矜恃がなさすぎ」
み「まぁ、割り勘でもいいわよ。
 そのかわり……。
 メニューは、わたしに選ばせて」
律「イマイチ納得できない理屈ね」
み「納得しなくてもいいから、鍋奉行だけはさせて」
律「わかったわかった。
 鍋奉行というからには……。
 鍋料理を食べるわけね」
み「鍋的ではあるが……。
 微妙に違う。
 まず、鍋には入ってない」
律「それじゃ、鍋料理じゃないじゃないの」
み「グツグツ煮立てるんだから……。
 コンセプトは、鍋料理なの」
律「鍋で煮立てないの?」
み「さようです」
律「なんで?」
み「だから、今説明しようとしてるの!
 イチイチ合いの手入れられると、説明できないでしょ」
律「わかったわかった。
 それでは、どうぞ」
み「料理は、桶に入って出てきます」
律「それじゃ、桶奉行じゃない」
み「グツグツ煮たって来るんだから、鍋でいいの!」
律「桶が、どうして煮立って来るのよ?」
木桶

み「そこです!
 料理の名前は……。
 『石焼き鍋』」
石焼き鍋

み「ちゃんと“鍋”が付いてるでしょ」
律「じゃ、どうして“桶”に入ってるのよ」
み「“石焼き”って名前聞いたら、わかりそうだけどね。
 テレビの紀行番組なんかで、良く出てくるよ。
 漁師町なんかのとき」
律「漁師さんの料理なの?」
み「そう。
 テレビだと、浜辺なんかでやってる。
 焚き火」
律「焚き火に桶をかけたら、焼けちゃうじゃないの」
み「焚き火で焼くのは、“石”なの。
 だから、“石焼き鍋”」
律「あ……。
 わかった。
 見たことあるかも。
 焼けた石を、桶に入れるわけね」
み「やっとわかっていただけましたね」
律「なるほど。
 美味しそうだ。
 じゃ、それ2人前ね」
み「聞きなさい!」
律「まだあるの?」
み「ちょっと顔寄せて」
律「何よ?」
み「ここの『石焼き定食』は、高いの……」
律「いくら?」
み「2,100円」
律「なるほど。
 ランチとしては、かなり豪勢だね」
み「もう一度聞くけど……。
 奢る気ない?」
律「毛ほども」
み「いい根性しとる」
律「お金に厳しくなけりゃ……。
 女ひとり、生きてはいけぬのだ」
み「ま、それに異議はありません。
 つまり、旅行初日のランチから……。
 2,100円の料理を2人前も注文するのは、いかがなものか」
律「じゃ、どうすんのよ?」
み「『石焼き定食』は、1人前にします。
 このお店のいいとこは……。
 1人前から注文できることなんだよ」
律「ほかの店は、違うの?」
み「2人前からみたい」
律「へー。
 じゃ、1人前を半分こするわけね?
 足りる?
 言っとくけど、わたしお腹空いてるよ。
 朝ラーだったからね」
み「石焼き1人前を半分こだけじゃ……。
 やはり侘びしい。
 『一杯のかけそば』じゃないんだから」
一杯のかけそば

み「節約もいいけど……。
 侘びしくなったら元も子もない」
律「そんなら、どうすんの?」
み「安い料理も1品頼んで、それも半分こ」
律「な~んだ。
 『支那そば伊藤』方式じゃない」
み「そのとおり」
律「で、その安い料理って何よ?」
み「ずばり!
 焼きそばです」
律「また、意表を突いてきたわね。
 石焼き鍋と焼きそばとは。
 確かに、“焼き”繋がりではあるけど」
み「実は、“男鹿やきそば”は有名なんだよ。
 ご当地グルメってやつだね。
 “しょっつる”ベースのタレが特徴」

 男鹿水族館のレストランにもありましたね。
 『男鹿のやきそば』。
男鹿水族館・レストラン「フラット」『男鹿のやきそば』

律「それなら安そうだ。
 いくら?」
み「500円」
律「おー。
 いきなりリーズナブルじゃない」
み「だしょ。
 男鹿水族館のレストランでさえ……。
 900円の品です。
 それがわずか、500円!
 どうだ、お立ち会い!」
律「買った!」
み「ありがとうございます。
 実際これは、採算度外視のサービスメニューらしいですから……。
 『美野幸』さんに寄られたおりは、ぜひ注文してください」
律「誰に言ってんの?」
み「でも、あまりの人気メニューなので……。
 こんなこともあるようです」
美野幸・やきそば売り切れ

律「今日は、まだ大丈夫みたいね」
み「品切れの紙は貼ってなかった。
 このやきそばを一品追加すれば、石焼きの2,100円と合わせても……。
 2,600円。
 ひとり頭、1,300円に収まる」
律「ランチの許容範囲ってわけ?」
み「やっぱ、1,500円越えたら、躊躇するよね」
律「つましいね」
み「お医者さまの感覚とは、ちょっと違うでしょうけど」
律「何言ってるの。
 わたしのお昼なんか、コンビニのおにぎりよ」
コンビニのおにぎり

律「それも、食べられればラッキーってくらい」
み「産婦人科って、そんなに忙しいの?
 これだけ少子化が進んでるのに?」
律「それ以上に、産婦人科医のなり手が減ってるんだよ。
 忙しいうえに……。
 何かあると、すぐ訴えられるし」
法廷イメージ

み「ふーん。
 大変だ」
律「でも、ようやく取れたお休みなんだから……。
 秋の東北、思い切り楽しむぞ!
 覚悟してちょうだい」
み「オッケー。
 受けて立ちましょう」
律「あ、席空いたみたい」

 席に案内されると同時に、『石焼き定食』と『男鹿のやきそば』を注文します。
 すぐに、『石焼き定食』が運ばれてきました。
 調理の必要がないんだから、早いわな。

み「来た来た!」
店「『石焼き定食』になります」
律「すごーい。
 桶が煮立ってる」
美野幸・桶が煮立ってる

み「運ぶ直前に、焼けた石を入れるみたい」
律「桶から、木の香りがするね」
店「こちらの桶は、秋田杉から作られてます」
律「へー。
 中身も入れ物も、秋田産ってことですね」
秋田杉の桶

店「さようです。
 1人前で、よろしかったですよね?」
み「はいそうです。
 『石焼き定食』と『男鹿のやきそば』を、1人前ずつです」
店「『石焼き定食』は、どちらさま?」
律「はい!」

 律子先生が、すかさず手を上げました。
 睨みつけましたが、知らんぷりです。

店「熱いので、お気をつけください」
美野幸「石焼き定食」

 律子先生の前に、『石焼き定食』が着地してしまいました。
 奪い合ったりしたらみっともないので、涙を呑んで自粛。

 ↓沸騰する桶の様子を、ぜひ動画でご覧ください。


律「お~。
 美味しそう」
み「このお魚は、何ですか?」
美野幸・石焼き鍋の魚

店「天然の真鯛になります」
律「スゴ~い」
み「綺麗なお出汁ですね」
店「特性の塩味になっております」
み「塩味の『石焼き鍋』は珍しいんですよね」
律「そうなの?」
店「ほかのお店では、味噌味がほとんどですね」
律「お塩の方が、美味しそうだよ」
み「あとは、何が入ってるんですか?」
店「岩のりとおネギです」
律「香る、香る」
店「ご飯には、こちらのゴマとわさびを載せて……。
 出汁を注げば、“鯛茶漬け”がお楽しみいただきます。
 それでは、ごゆっくりどうぞ」
み「う~。
 お腹が鳴る」
律「もう煮えたかな?」
み「いくら何でも、まだでしょ」
律「大丈夫よ。
 鯛に岩のりにネギなら……。
 みんな生でも食べれるでしょ」
み「いやしい先生だね」
律「目の前の欲望には忠実なの。
 どれ、わたしが味見してやる。
み「まだ沸騰してるよ」
律「焼け石の火力ってスゴいね」
み「“焼け石に水”って言葉があるくらいだもんね」
律「それじゃ、真鯛ちゃんから、いかせてもらいますよ……。
 ひっくり返してみようか。
 ほら、顔が出た。
 鯛の顔してる~」
美野幸・石焼き鍋の鯛

み「当たり前でしょ。
 早く食べてみてよ」
律「熱いんだから、急かさないで。
 それじゃ、行かせてもらいます。
 あつっ。
 はふっ、はふっ。
 美味しい!
 Mikiちゃんも食べてごらん」
み「食べたいのは山々なれど……。
 すごく熱そうだね」
律「当然でしょ。
 煮えくり返ってるんだから。
 お皿に取ってあげる。
 はい、どうぞ」
み「……」
律「なにお皿見てるのよ。
 早く食べなさいって」
み「急かさないでよ」
律「これがほんとの、じれっ鯛。
 それじゃ、わたしが食べさせてあげる。
 ほれ、あ~ん」
み「あ、あ~ん」
律「もっと大きく、口開いて」
み「あ~ん」
あ~ん

律「はい、どうぞ」
み「ぅあちっ。
 あちゃちゃちゃちゃ」
律「こら!
 何で吐き出すのよ!
 もったいない」
み「あひあひぃ。
 わらひは、ねこひたなの」
律「ねこひたって何よ?」
み「ねこひた!」
律「わからんやつ……。
 あ、そうか。
 ひょっとして、猫舌?」
猫舌

み「はひはひ」
律「なんだー。
 こんなに熱々で美味しいのに。
 可哀想にねー。
 それじゃ、仕方ないね。
 また吐き出されたらもったいないから……。
 わたしが食べちゃおぅっと。
 はぐはぐ。
 おいピー」
み「ほ、ほんなに食うな!」
律「やだよー。
 Mikiちゃんは、ほらこの小鉢食べなよ」
美野幸・「石焼き定食」小鉢

律「なんだろ、これ?
 とろとろのワカメみたいなのと……。
 いい色した塩辛。
 どうぞ、召し上がれ」
み「ひぎゃー。
 やだよー。
 鯛がひいよー」
律「ほんとに泣くな!
 みっともない!」
み「わ、わたひの1,300円……」
律「いじましすぎて……。
 興醒めだわ」

店「お待たせしました。
 こちら、『男鹿のやきそば』になります」
美野幸「男鹿のやきそば」

律「ほら、Mikiちゃん、やきそばが来たよ。
 ちょっと。
 ほんとに美味しそうだわ。
 鯛はちゃんと取っててあげるから……。
 やきそばから食べなさいって。
 ほんとに泣くんだからタマゲる女だよ。
 ほら、涙拭いて」
み「鼻水まで出た」
律「やきそばに垂らすなよ」
み「じゃ……。
 いただきます」
律「ちょっと。
 上目で睨んでなくても、ちゃんと残しておくって」
み「イマイチ、信用でけん。
 ほんとに残しておいてよね。
 それじゃ……。
 やきそば、いかせて頂きます」
律「どう?」
み「美味しい!」
律「見るからに美味しそうだもの」
み「まわりに、とろとろの“あん”がかかってる」
美野幸・「男鹿のやきそば」とろとろの“あん”

律「まさか……。
 鼻水じゃないでしょうね?」
み「違わい!
 あ、“あん”の中に鯛の身がほぐしてあるんだ。
 美味しい」
律「麺は、なに味?」
み「お醤油系のさっぱり味」
律「みんな食べないでよね」
み「だって、桶の中、まだグツグツ言ってるじゃん」
律「塩辛食べなさい」
み「やだ」
律「困ったお子ちゃまだね。
 テーブルに吐き出した身なら、冷めてるよ。
 拾って食べれば」
み「鬼……」
律「ウソだよ。
 ほら、鯛の身、お皿に取って冷ましておいたから。
 もう、猫でも食べれるよ。
 はい、どうぞ」
美野幸「石焼き定食」鯛の身

み「うぅ。
 先生、やっぱり優しい」
律「また泣く。
 はい、お皿交換ね」
み「や、やっとわたしの元に来てくれたね……。
 鯛の身ちゃん。
 それじゃ、いただきます。
 はぐはぐ。
 お、美味しい!」
律「うむ。
 やきそばも美味しい!
 これ、2皿頼めばよかったのに」
み「予算オーバー」
律「ちょっと……。
 あのテーブル。
 スゴいのが出てきたよ。
 何だろ?」
美野幸「ウニ丼」

み「あれは、『ウニ丼』だね。
 『石焼き定食』と並んで、ここの看板メニューだよ」
律「ウニがてんこ盛りじゃん」
み「あれも2,100円」
美野幸・メニュー

律「う……。
 となると、『石焼き定食』に『ウニ丼』ってのは、無理か」
み「論外ですね」
律「なんで『石焼き定食』にしたの?」
み「わたし、ウニ嫌いだもん」
律「ほー。
 それで、『ウニ丼』の“ウ”の字も出さなかったわけか。
 それって、情報操作じゃないの」
み「いいじゃないの。
 『石焼き定食』と『男鹿のやきそば』に、文句ある?」
律「ま、ありませんけど。
 そろそろ、鯛茶漬けしようよ。
 石が冷めたんじゃないの?」
み「ブクブク言わなくなったね。
 どんな石が入ってるんだろ。
 ちょっと掬ってみるね」
美野幸「石焼き定食」の石

律「へー。
 案外普通の石じゃん。
 これも、秋田産?」
店「はい。
 入道崎で採れた火成岩になります」

 通りがかった店員さんが、教えてくれました。

み「おー、火成岩!
 マグマが固まった石だね」
火成岩

律「出たな、火山オタク」
み「なるほど……。
 海の反対側に聳えてた山は、火山であったか」
男鹿半島・火山

店「この石は、金石(かないし)と呼ばれてまして……。
 これじゃないと、割れてしまってダメなんですよ」
律「へー」
み「火成岩ってのが、ミソだね」
律「味噌じゃなくて、塩味でしょ」
み「うまい。
 座布団1枚。
 じゃ、早くその塩味のスープをご飯にかけてよ」
律「おー。
 ほぐれた鯛の身が、だいぶ沈んでた。
美野幸「石焼き定食」沈んだ鯛の身

み「こりゃ豪華な鯛茶漬けになるよ」
律「ほら、ゴマとわさびを載っけて」
み「う。
 わさびが香ってくれますぅ」
美野幸「石焼き定食」豪華な鯛茶漬け

律「じゃ、わたしが味見してあげる」
み「なんで!
 味見なんかしなくても、美味しいに決まってるでしょ」
律「まだ熱いかもしれないじゃない。
 舌で温度を測ってあげるから」
み「やだ。
 邪悪な気配を感じる。
 味見っていいながら、全部食べちゃうんでしょ」
律「そんなこと、するかいな」
み「信用でけんわい。
 ラーメンの汁くらいなら、諦めもつくけど……。
 鯛茶漬けは譲れません」
律「じゃ、早く先に食べてよ」
み「熱そうなんだもん」
律「やっかいなヤツ……。
 ほら、その空いた小鉢に入れてごらんよ。
 冷めるから」
み「うん」
律「少しずつ入れて冷ますのよ」
み「ふー。
 ふー。
 冷めたかな?」
律「食べてみて」
み「う……。
 うめー!」
律「ちょっと、隣の子供が笑ってるじゃない」
み「マジ、うまいっす。
 やっぱ、2,100円のことだけはある」
律「じゃ、わたしにも分けてちょうだい」
み「うん。
 取っていいよ」
律「とつぜん寛容になったじゃない」
み「これだけ美味しいと……。
 人にも味わってもらいたくなる」
律「じゃ、いただきます」
み「どう?」
律「美味しい!」
み「美味しい顔っていいね」
律「昔のCMに、そんなフレーズあったな」
み「そうだっけ」

 さて、男鹿の味を十分に満喫しました。
 まだ並んでる人もいるようなので……。
 食べ終えたら、すみやかに席を譲りましょう。
 レジでは、かすかな期待もしましたが……。
 しっかり、1,300円徴収されました。

 お店を出るときになっても、大盛況。
 まだ並んでる人もいます。

み「あ」
美野幸「男鹿のやきそば」品切れ

 やきそば品切れの紙が貼られてました。

律「あれが、最後の一皿だったんじゃないの?」
み「ラッキーだったね」
律「味は大満足なんだけど……。
 やっぱり量が、ちょっと物足りないなぁ」
み「旅のお昼は、それくらいでいいの。
 夜、また美味しくいただけるでしょ」
律「そだね。
 小腹が空いたら、買い食いもできるし」
み「細いくせに、食は太いんだね」
律「産婦人科医は、胃が丈夫じゃなきゃ勤まらないよ」

 駐車場まで戻りましたが、まだ少し時間があります。

み「どうする?」
律「せっかくだから、海のそばまで行ってみようよ」

 道路を渡ると、広い芝生が広がってます。
入道崎・広い芝生

 その向こうに、変わった色合いの灯台。
入道崎・灯台

律「あの灯台、なんで黒白ツートンなの?」
入道崎・黒白ツートンの灯台

み「知るかいな」
律「ひょっとして、チンアナゴをかたどってるとか?」
入道崎の灯台はチンアナゴ?

み「なわけないでしょ」
律「中に入れないのかな?」
ガ「入れますよ」
律・み「え?」

 振り返ると、バスガイドさんがにこにこ笑って立ってました。
なぎさGAOツアー・バスガイドさん
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