Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
大分に行こう!(4)
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 メルヘン号のコースは、これでおしまいです。
 一行を乗せたバスは、このまま出発地の別府に戻りますが……。
 途中、由布院で降りることもできます。
メルヘン号・冬コース

 今日のお宿は由布院に取ってあるので……。
 わたしたちは、由布院で下車することに。
 由布院着は、14時30分です。

 ここで、バスが着くまでの時間を利用して……。
 由布院について、ちょっと一言。

 由布院という地名を、聞いたことが無いという人は……。
 まずいないと思います。
 でも、どこにあって、何が有名かとなると……。
 詳しく知ってる人は、多いとは言えないかも知れませんね。
 わたしも、そのひとりでした。
 なんとなく聞いたことはあるんだけど……。
 それが、大分県にある温泉地だってことは、知りませんでした。
 で……。
 「ゆふいん」の表記ですが……。
 ガイドブックやサイトを見てると……。
 由布院のほかに、湯布院という書き方があることに気づきます。
 何ででしょう……。
 ということで、少し調べてみました。

 元々の名称は、由布院でした。
 温泉の名前も、由布院温泉。
 それが……。
 昭和30年(1955年)の町村合併で、湯布院町が出来たんです。

 合併したのは、当時の「由布院町」と「湯平村(ゆのひらむら)」。
 湯平村としては……。
 湯平村の表記がまったく消えてしまうことに、抵抗があったんじゃないでしょうか。
 そのまま「由布院町」になっちゃえば、吸収合併されたみたいになっちゃいますからね。
 読み方は、「ゆふいん」のままで……。
 「湯平村」の湯を、新しい町名のてっぺんに乗せることで、村のメンツを保ったんでしょう。
 てなわけで、湯布院町が出来ました。
 でも、温泉の名前は由布院温泉のまま。

 そして、さらに話は複雑になります。
 平成の大合併です。
 平成17年(2005年)、大分郡の3町、湯布院町、狭間町、庄内町が合併し、由布市となりました。
 で、住居表示ですが……。
 大分郡が由布市に変わっただけです。
 すなわち……。
 大分郡湯布院町XX → 由布市湯布院町XX
 つまり……。
 由布市の中に、湯布院町があり……。
 湯布院町の中に、由布院温泉があるということになったわけです。
 いっそ、由布院に統一しちゃえばとも思いますが……。
 湯布院の名称が出来て半世紀以上経ち、こっちの方もすっかり定着してしまってます。
 湯布院の方が温泉のイメージを強調できるので、観光施設なんかでは、積極的に使われたみたいですし。
 いまさら統一ってのは、難しいようです。

 ちなみに……。
 JR久大(きゅうだい)本線の駅名は、“由布院駅”。
由布院駅

 大分自動車道のインターチェンジは、“湯布院IC”。
湯布院IC

 地元では、由布院駅周辺は、由布院に統一するという方針が出てるそうですが……。
 この方針を、全国的なコンセンサスにしていくのは、なかなか難しいんではないでしょうか。

 さて、楽しませてくれた亀の井バスですが……。
 由布院駅前で降りましょう。
由布院駅前

 時間は、14:30。

「これから、どうするんですか?」
「宿に直行するにはまだ早いよな。
 おいしい夕食を食べるために!
 お腹減らしに、由布院を散策しましょ。
 おしゃれだろ?」
「いいですけど……。
 ちょっと荷物が」

 美弥ちゃんもわたしも、手提げのボストンバッグを持ってます。
 この荷物を持ったまま散策するんじゃ、ちょっとタイヘン。

「いいサービスがあるんだよ」

 由布院駅を背にしてすぐ右手に、小さな店舗があります。
由布院駅「ゆふいんチッキ」

 入り口の看板には、「手荷物受付カウンター」という表示が見えます。
「ゆふいんチッキ・手荷物受付カウンター」

 手荷物の配送サービスを行ってるんですね。
 「ゆふいんチッキ」という名称です。
 システムは、実に簡単。
 ここで荷物を預けると……。
 宿に、荷物を運んでおいてくれるわけです。
 手ぶらで散策でき、そのまま宿に入れるので、とっても便利です。
 由布院は駐車場が少なく、クルマで回るには不便なところ。
 なるべく、公共交通機関で来てもらいたいってことで……。
 こういうサービスを始めたようです。

 ちなみに、“チッキ”とは、国鉄時代の鉄道小荷物のことなんです。
 駅から駅へ、鉄道を使って荷物を送ったんですね。
 宅配便の普及と共に利用者が激減し、昭和61年(1986年)に廃止されました。
 わたしは、内田百の随筆『阿房列車』が好きなんですが……。
内田百『阿房列車』

 たしかこの随筆に、“チッキ”という語が出てきたような気がします。
 “チッキ”のほかにも、“赤帽”とか“ボイ”とか……。
 古き良き時代の国鉄用語が使われてます。

 “赤帽”は、運送業者の名前として残ってますが……。
 本来は、駅構内で、お客の荷物を運ぶ人のことを、そう呼びました。
 早い話、ポーターのことです。
 赤い帽子を被っていたので、“赤帽”。
 そのまんまですね。
佐藤哲三「赤帽平山氏」

 上の画像は、佐藤哲三(1910~1954)の「赤帽平山氏」(宮城県美術館所蔵)。
 佐藤哲三は、新潟県長岡市出身の画家です。
 これは、20歳のときに描かれたもの。
 “平山氏”は、村上駅(新潟県北部)の赤帽だったそうです。
 この作品は、梅原龍三郎に激賞されたとか。

 “ボイ”ってのは、ボーイ(給仕)の略。
 昔の急行列車には、車両ごとに専属の係が付いてて……。
 この人たちを、“ボイ”と呼んだようです。
 国鉄内での正式な職名は、“車掌補”。
 この“ボイ”ですが……。
 イケメン揃いだったそうですよ。
 と言っても、ナヨナヨ系ではありません。
 体育会系。
 なにしろ、採用条件に、「身体強健・容姿端麗」とハッキリ謳われてたそうですから。
 重たい荷物とかも、運ばなきゃなりませんからね。
 今で云えば、特撮ヒーロー物の主演俳優みたいな感じだったんじゃないでしょうか。
ボイのイメージ

 採用後は、その好青年に、サービス教育を徹底して施したそうです。
 そのため、婦人客には絶大な人気を誇ったとか。
 長身のイケメンヒーローが、何でも言うことを聞いてくれるわけですから。
 贔屓の“ボイ”が乗務する列車を選んで、乗車する女性客もいたそうな。

 またしても、脱線してますが……。
 もう少し、百についてお話させてください。

 『阿房列車』に描かれた風景は、見たことがないはずなのに、妙に懐かしいんです。
 シリーズの最初となった『特別阿房列車』の冒頭の一節は有名。

『なんにも用事がないけれど、汽車に乗つて大阪へ行つて来ようと思ふ。
 用事がないのに出かけるのだから、三等や二等には乗りたくない』

 というわけで、何の用事もない大阪に行くため、一等車に乗り込みます。
 この随筆が書かれた昭和25年ころは、車両が、一等、二等、三等に分かれてたんですね。
 料金も、大違いでした。
 二等は、三等の2倍。
 一等は、3倍したそうです。
 割り増しどころじゃありません。
 3倍ですからね。
 私用で一等に乗れる人は、限られてたと思います。

 しかしながら、百が裕福だと思ったら大間違いです。
 真逆です。
 貧乏で有名な人でした。
 裕福な造り酒屋“志保屋”に生まれましたが……。
 旧制岡山中学(現・岡山朝日高校)に通う16歳のとき、その志保屋が倒産。
 以来、ずっと貧乏生活。
 旧制第六高等学校(現・岡山大学)に入りましたが……。
 寮費が払えず、自宅から通学してたとか。
 でも、東京帝国大学独文科を卒業してますから……。
 貧乏と云っても……。
 いきなりホームレスになるような今時の貧乏とは、違ってたんでしょうけど。

 しかしながら、一等車の切符を、自腹で買えるような内情では無かったようで……。
 切符は、借金して買ったんです。
 堂々と、「何の用事も無いが、一等車で大阪まで行ってこようと思うので」と言って、お金を借りたそうです。
 借りる方も借りる方ですが……。
 貸す方も貸す方ですよね。
 でも、何となく貸してしまう雰囲気が、百にはあったみたいです。

 と言って、百が好人物だったってわけじゃありません。
 人当たりは、はなはだ悪かったそうです。
 天の邪鬼な上に、頑固で偏屈、我が儘な人だったとのこと。
 普通なら、嫌われるとこですが……。
 不思議なことに、そうではありませんでした。

 法政大学の教授をしてたころの教え子たちは……。
 還暦を過ぎた百の誕生会を、毎年祝ってくれました。
 誕生会の名称は、「摩阿陀会(まあだかい)」。
 百先生は“まあだ生きてるのかい”って洒落ですね。
 この時期の百と教え子たちの交流は、黒澤明の遺作映画になってます(「まあだだよ」)。
黒澤明の遺作映画「まあだだよ」

 百を松村達雄が演じ……。
 教え子役に、所ジョージ。
 百の妻を演じた香川京子の演技が、あまりにも見事で……。
 黒澤監督は、彼女にはまったく注文を付けなかったそうです。
 それどころか、彼女の演技シーンは、見てさえいなかったとか。
 完全に信頼しきってたんですね。

 わたしが百を知ったのは、随筆よりも小説が先でした。
 初めて読んだのは、『冥途』という掌編集。
内田百間『冥途』


 わたしは昔、夜見る夢を表現する手法に興味を持ってて……。
 そういう小説を読みあさってたことがあるんです。
 “夢”を描いた小説では、夏目漱石の『夢十夜』が有名ですよね。
 確か、現国の教科書で読んだんじゃなかったかな。
 百は、その漱石の弟子でした。
 で、師の『夢十夜』に、一番影響を受けた弟子が百。
 弟弟子の芥川龍之介は、『冥途』を、「戞々(かつかつ)たる独創造の作品なり」と評しています。
 『夢十夜』は、理に落ちるようなところがありますが……。
 『冥途』には、それがまったくありません。
 異様な夢の気配だけが描かれてます。
 夢の気分を表現しているという点では、『夢十夜』を凌ぐと云ってもいいでしょう。

 掌編以外の作品には、『東京日記』『サラサーテの盤』などがあります。
内田百間『東京日記』

内田百間『サラサーテの盤』

 『サラサーテの盤』は、鈴木清順監督により、「ツィゴイネルワイゼン」という映画になってます。
鈴木清順監督「ツィゴイネルワイゼン」

 わたしはこの映画、何回も見ました。
 大谷直子が綺麗でしたね~。
「ツィゴイネルワイゼン」の大谷直子

 ちなみに、夢を題材にした小説では、内田百と島尾敏雄が双璧だと思います。
 島尾敏雄については、またいつか話す機会があるかも知れません。

 さて、脱線を元に戻しましょう。
 「ゆふいんチッキ」に立ち寄ったところからでしたね。

 配送料金は、荷物1個500円。
 2個なら800円、3個だと1,000円。
 4個以上は、1個あたり300円になります。
 グループで利用すると、お得ですよ。
 わたしたちは2つなので、800円ですね。
 1人400円で重い荷物から解放されるんだから……。
 安いもんでしょ。

 さて、ポシェット一つの身軽になりました。
 とりあえず、駅前から歩き出しましょう。
 良い雰囲気の町並みです。
 正面に見えるのは、由布岳。
由布院駅前から見る由布岳

 そうそう。
 最近、ネットを見てたら、由布院を舞台にした朝ドラがあったんですね。
 2005年だから、5年前。
 「風のハルカ」というドラマ。
「風のハルカ」

 勤めの身にとって、朝ドラは無縁な世界なので……。
 ネットで見つけるまで、まったく知りませんでした。
 5年経ってるから、観光客もだいぶ落ち着いたでしょうかね。
 あんまり混んでると、イヤですから(わたしらも観光客だけど……)。

 ところで、この朝ドラですが……。
 この春から、開始時間が15分繰り上がって、8時ジャストからの放送になったんです。
 これが、わたしには大迷惑。
 チャリに乗れる日は、8時7分頃、パソコンを切って部屋を出るんですが……。
 それまでは、ずっとNHKを点けてます。
 パソコンでは、コメントの推敲をしたりしてます。
 テレビは点いてますが、ニュースの音声はほとんど気になりません。
 でも、ドラマはダメです。
 声に感情が籠もってると、耳に障るんですね。
 民放を見ないのは、コマーシャルが入るからです。
 CMになって、音声のトーンが変わったりすると、途端に波長が乱れる。

 そんなわけで……。
 8時になったら、テレビを消さなきゃならなくなったんです。
 あと数分で家を出なくちゃならないってときに……。
 リモコンがすぐに見つからなかったりすると、イラッと来ますね。
 なので最近は、朝ドラにいい感情を持ってません。
 最近の朝ドラって、いきなりセリフから始まるんですよ。
 主題歌(?)じゃなくて。
 テレビを背にしてるわたしには……。
 アナウンサーの声が、いつの間にか俳優の声に変わってるわけです。
 声が耳に憑きだして、初めて、ドラマが始まってることに気づきます。
 紛らわしい。
 あのドラマ、水木しげるさんのお話みたいですね。
「ゲゲゲの女房

 テレビ消す瞬間しか見てないけど……。
 なんかさ……。
 若いのにさ。
 ふたりっきりでいて、あんなホノボノしてるわけないじゃんね。
 あの若さで、ふたりでいたら……。
 寝る間も惜しんで、ケモノみたいに番ってるもんでしょ。
 わたしなんかが見ると……。
 ウソくさいとしか思えんよ。
 わたしの方が、異常なのかね?
 もし、わたしが新婚だったら……。
 休みの日なんか、パンツ穿いてるヒマ無いと思うけど。
 ま、そんな夫婦じゃ、NHKでは放送できんでしょうけど。

 さて、いい加減、歩き出しましょうね。

 駅前の“由布見通り”を歩き出して、すぐに感じることですが……。
由布院駅前「由布見通り」

 いわゆる温泉街って雰囲気じゃありませんね。
 そう言った猥雑さとは無縁。
 こじんまりとした、可愛いお店が目に付きます。
 「るるぶ」を小脇にして歩いてても、違和感がありません。

 すこし行くと、左手にハンバーガー屋さんがありました。
 と言っても、マックとかのチェーン店じゃありません。
 そう言えば……。
 どこの駅前にもあるような、全国チェーンの飲食店が見あたりません。
 パチンコ屋も無いし。
 なんか、条例でもあるんでしょうかね?

 さて、ハンバーガー屋さんです。
 “YUFUIN BURGER”というお店です。
YUFUIN BURGER

 ちょっと覗いてみたところ……。
 大吊橋にあったような、ご当地バーガー店のようです。
 大分県って、ご当地バーガーがトレンドなんですかね?
 それで、駅前にマックが無いんでしょうか?

「ここでも、買い食いは禁止ね」
「さすがに、牛ステーキの後で……。
 ハンバーガーは食べれませんよ」

 けっこう、食べ物屋さんが目立ちますね。
 お腹いっぱいで歩くのが、もったいない町並みです。
 お腹空かして由布院駅に降りて……。
 買い食いしながら歩くってのも、楽しいかも?

 さて、駅前から、比較的広い道路を歩いて来ましたが……。
 白滝川という小川にかかる橋で、道は二手に分かれます。
白滝川にかかる白滝橋

 左手の道は、駅前からの続きみたいで、広い道路がまっすぐに伸びてます。
 右の道は、ずっと細く、幹から分かれた小枝のようです。
 でも、わたしたちが進むのは、こちらの細い道。
 この道は、“湯の坪街道”と呼ばれ、由布院観光のメインストリートなんですね。
 平日ですけど、狭い道を、けっこう観光客が歩いてます。
湯の坪街道

 グループで来てる人たちは……。
 どうしても道一杯に広がっちゃいます。
 ま、楽しくおしゃべりしながら歩きたいですからね。
 軍隊じゃないんだから、一列で歩く団体は無いですよね。
 その人混みの中を、車が分け入って来ます。
 車両進入禁止にすればいいのに、と思いますが……。
 駅から遠い旅館などは……。
 車が通れなくなったら、影響大きいんでしょうね。
 でも、マイカーで来たら、ほんと駐車場に苦労すると思う。
 由布院泊まりの人は、旅館に車を置いてから町に出た方がいいんじゃないかな。
 でも、車で日帰りの人は、どうするんだろうね。
 途中、Aコープがありましたが……。
 警備員が、駐車場で見張ってました。
 観光客の無断駐車が絶えないんでしょうね。

「ちょっと、寄り道して行こう」

 “ゆふいん夢蔵”という土産物屋さんの手前を右に折れると……。
 すぐに、見えてきます。
由布院トリックアート迷宮館・遠景

「へ~。
 由布院トリックアート迷宮館
由布院トリックアート迷宮館

「面白そう!」
「だろ~」

 由布院に、そんな施設無かったぞ!と思われる方もおられるでしょうが……。
 それもそのはず。
 昨年4月にオープンしたばっかりです。

「ほら、Mikikoさん、見て。
 あのチケットカウンター」
「はは。
 入館前から、トリックが始まってるってわけだね」
迷宮館・壁に描かれたチケットカウンター

 さっそく、入ってみましょう。
 まずは、「逆さの空間」。
 なんのこと無いんですけどね。
 室内の調度が、逆さに描いてあるだけ。
 でも、天井を歩いてるような、変な気分になります。
 館内は撮影自由。
 みなさん、記念写真を撮ってます。

「Mikikoさん、わたしも撮って」
「はい、チーズ。
 う~ん。
 突っ立ってたら、面白味が無いな。
 天井から、コウモリが下がってるみたいだ」
迷宮館・逆さの空間・コウモリ

「じゃ、どうすればいいんですか?」
「四つん這いだね。
 天井に貼り付いてる気分で。
 ほら、あの人、上手じゃない」
迷宮館・逆さの空間・スパイダーマン

 その他は、お馴染みの“だまし絵”みたいなものですね。
迷宮館・だまし絵

 美術品じゃないから、べたべた触っても大丈夫。
 1箇所ずつで写真撮ってると、けっこう時間食っちゃいます。
 ここだけで時間を使うわけにはいかないので……。
 そこそこに切り上げましょう。

「あ~、面白かった。
 きっと、子供は大喜びだろうね」
「Mikikoさんもね~」

 うーん。
 まだ、頭がぐるぐるする。

 さて、湯の坪街道まで、戻りましょう。

 お腹の具合から、食べ物屋には心引かれないので……。
 お土産系のお店を覗きます。
 まず目に入ったのが……。
 “藍づくし やす形”さん。
藍づくし やす形

 地元の藍染職人の作品が販売されてます。
藍づくし やす形・作品販売

 ランチョンマット(1,575円~)なんかもあります。
藍づくし やす形・ランチョンマット

 藍には、殺菌効果があるって云いますからね。
 食卓周りには良いかも。
 これを、テーブルに敷くだけで……。
 料理の格が、1段上がりそうですね。
 2枚購入。
 美弥ちゃんも、2枚買ってました。
 由美との夕食に使う気だな……。
 ちょっと妬けます。

 少し行くと、味わい深げなお店が……。

「ここ、ずいぶん賑わってますね」
「入ってみよう」

 お店には、「醤油屋本店」という看板が出てます。
醤油屋本店

 お醤油だけ売ってるんでしょうか?
 醤油の専門店なんか、見たこと無いので……。
 ついつい入ってみたくなります。
 この賑わいも、理解できますね。

「いろんなお醤油がありますね~」
「どれにする?」
「これにしようかな?」
醤油屋本店・かぼす蜂蜜醤油(650円)

「“かぼす蜂蜜醤油(650円)”?
 何にかけるの?」
「ステーキなんかにも合いそうですよ。
 あと、これをベースに、ドレッシングも作れそう。
 Mikikoさんは?」
「これにしようか。
 “ゆずこしょう(450円)”」
醤油屋本店・ゆずこしょう(450円)

「お醤油以外のものも、あるんですね。
 ラーメンとかの薬味に?」
「そうだね。
 あと、寝てる美弥ちゃんの鼻にかけるとか」
「やったら許しませんからね」
「お尻、ペンペン?」
「当然」
「そんなら、なおさらやる」
「もう!」

 大盛況の醤油屋本店を出ます。

 しばらく行くと、左手に面白そうな施設が……。
 「湯の坪横丁」という案内板が出てます。
湯の坪横丁・案内板

 案内板にある図は、こんな感じ。
湯の坪横丁・街並み

 自然に出来た横丁ではなく、一種のテーマパークのようです。
 さっそく、入ってみましょう。
 いろんなお店が並んでます。
 お菓子屋さん、手作りの豆腐屋さん、豆腐料理店。
 土産物屋、民芸品店、甘味処、天麩羅屋、うどん屋、漬物屋に……。
 かりんとうの専門店まであります。
 1つ1つ覗いてたら、日が暮れちゃいますね。
 でも、1件だけ、わたしの興味を異常に引いたお店がありました。

 ここです。
湯の坪横丁・フィッシュスパ

 これ、テレビでやってましたよね。
 足を浸けると、たちまちこの魚が寄ってきて、皮膚を突っつくってシーン。
足の角質を突っつく魚

 画面で見てるだけで、こそばゆかったけど……。
 まさか、由布院にいたとは!
 これは、体験しない手はありません。

 この魚、本名は“ガラ・ルファ”と云います。
ドクターフィッシュ=ガラ・ルファ

 コイ科の淡水魚です。
 原産地は、トルコ、イラン、イラク、シリア、レバノンなど、西アジア周辺の河川。
 原産地のトルコなどでは、アトピー性皮膚炎や乾癬、ニキビなどの皮膚疾患の治療に用いられているそうです。
 なんとドイツでは、この魚による治療が、保険適用の医療行為となってます。
 そのため、“ドクターフィッシュ”と呼ばれてるんです。
 ちなみに日本では、“ドクターフィッシュ”は、㈱エコマネジメントにより商標登録されてるようです。
 そのため、↑の看板は、“ドクター・キッスフィッシュ”って別名になってるんですね。

 原産地のトルコでは、この魚、温泉に住んでるとか。
 トルコ中央部に「カンガル」という天然温泉があり……。
 何百年も前から、この温泉に住んでるそうです。
トルコ「カンガル」のガラ・ルファ

 温泉と言っても、あんまり熱ければ煮魚になっちゃいますからね。
 ぬるめの37度くらいのお湯だそうです。
 う~む。
 温泉に住む魚。
 やっぱり、由布院にいるのは、意味があったんですね。

 それでは、なぜに人の皮膚をついばむのか?

 さて、ドクターフィッシュが、なぜ人の皮膚をついばむかってことですが……。
 この魚、本来は、石に付着したコケなんかを食べてました。
コケを食べるドクターフィッシュ

 でも、温泉にはコケなんか生え無いので……。
 入浴する人の、皮膚の角質をついばむようになったとか。
 早い話、温泉に住むドクターフィッシュは、エサが無くて飢えまくってるわけですね。
 で、人が入ると、たちまち群がり集まって来るわけ。
角質を食べるドクターフィッシュ

 しかしながら、健康な皮膚は肌に密着してるから、ついばむことが出来ない。
 角質化して浮き上がった皮膚しか食べれないわけです。
 よって、ドクターフィッシュが、老化した皮膚を食べてくれた後は……。
 お肌、ツルリンてなわけです。

 やがて、天然温泉「カンガル」における、ドクターフィッシュの“医療行為”が評判となり……。
 ほかの温泉にも放たれることになりました。
 しかし、なぜ「カンガル」に住み着くようになったかは……。
 わかりませんでした。
 川から迷いこんだんですかね?

「美弥、やってみてよ」
「わたしだけ?
 Mikikoさんは、体験しないんですか?」
「わたしは、無類のくすぐったがりなの」
「しましょうよ」
「う~ん」

「ぜひ、ご体験ください」

 入り口で迷ってるわたしたちに、お店の人から声がかかりました。

「クレオパトラも、美肌維持のために、この魚を飼ってたそうですよ~」
クレオパトラ

「なに!
 クレオパトラが!
 この魚に角質を食わせれば、クレオパトラみたいになれるわけだな?」
「そうは言ってないと思いますけど……」

 聞く耳持たず。
 さっそく、チノパン裾めくりです。
 美弥ちゃんも、ジーンズを捲ってます。

「やっぱり、美弥はやらなくていい」
「何で?」
「今さら、クレオパトラになる必要なんか無いでしょ」
「だから……。
 そうは言ってなかったと思います」

 女性客の中には、ご主人や子供さんが楽しんでるのを、恨めしそうに眺めてらっしゃる方も……。
 ストッキング穿いてるから、体験出来ないんですね。
 由布院まで来て、しかも、こんな話のネタに出来る体験が出来ないなんて……。
 もったいない!
 ストッキングを脱ぐ更衣室があればいいのにね。
 みなさん、由布院には、生足で行きましょう。

 さて、わたしたちの番になりました。
 設置されてるのは、イベントなんかで見かける、足湯のユニットです。
ドクターフィッシュ・足湯ユニット

 早い話、足湯の中を魚が泳いでるわけね。
 ユニットの縁に座り、恐る恐る足を入れます。
 たちまち、わらわらと寄ってきました。
たちまちドクターフィッシュが群がる

「うひゃぁ」

 何とも言えない感触です。
 お魚の口が、皮膚をつつく感じが何とも言えません。
 心なしか……。
 乾癬の患部を、集中攻撃してくれてるみたい。
 なんか、愛しくなりますね。
 ドクターフィッシュ、家でも飼おうかな?

 あとでネットで調べたら……。
 ドクターフィッシュは、通販で買えるんです。
ドクターフィッシュ・通販

 飼い方も、ごく簡単。
 早い話、コイですからね。
 水温だけ、30度前後に保つようにすれば……。
 餌なんて、何でも食うみたいです。
 ま、人間の角質を食うくらいなんだから……。
 究極の雑食魚と言えるかも知れません。

「きゃわいいね~」
「ほんとですね~」

 真上から見下ろしてると……。
 一生懸命、足に吸い付くお魚ちゃんたち、もう愛しくてなりません。
 でも、よく考えたら、これって魚に食われてるってことなんですよね。

 なんとなく、この顔つき……。
おとぼけ顔のドクターフィッシュ

 どこかで見たような。
 そう!
 “アクアマリンふくしま”にいた、チンアナゴちゃんに似てますね~。
“アクアマリンふくしま”のチンアナゴ

 どちらも、おとぼけ系。

「指の間も食べてもらおうかな」
「うわ。
 Mikikoさん、器用~」
「えっへん」

 わたしは、足の指が大きく開くんです(↓わたしの足ではありません)。
足の指が大きく開く

 4つの指の股を、お魚ちゃんが潜り始めました。

「挟んでやる。
 えい!
 ほら、1匹挟まった。
 指の間で、ピチピチしてる~。
 きゃわいぃ~」
「かわいそうでしょ!
 放してあげて」
「はいはい。
 うわっ。
 足の裏に回り込まれた。
 うひゃひゃ。
 うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
くすぐりの刑

「Mikikoさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない!
 も、悶絶するぅぅぅぅ。
 足の裏は、ダメぇ~~~」
「足の裏、底に着ければいいでしょ」
「ダメだよ~。
 下に潜り込まれてるから、踏んじゃうよ~」
「じゃあ、水から足抜けばいいでしょ」
「あ、そうか」

 ようやく、くすぐり攻撃から解放されました。

「あ~、びっくりした。
 危うく、イクとこだったぜ。
 この魚、マジで拷問に使えるな。
 美弥も出ちゃうの?」
「もう、制限時間終了ですよ」
「うそ~。
 足上げちゃって、損した。
 もう1回、やろう?」
「順番待ちの人がいるから、ダメです」
「ちぇ~~。
 でも、15分で1,000円ってのは、高いよな」
「聞こえますよ」
「時給、4,000円じゃん。
 人間のエステシャンより高いじゃないか」
エステシャン

「もう、未練たらしい!」

 美弥ちゃんに引きづられ、フィッシュスパを出ます。

 さて、湯の坪街道に戻りましょう。
 まだ、足の裏がムズムズする。

「これから、どこ行くんですか?」
「この先に、金鱗湖って湖があるらしい」
「へ~。
 遊覧船でも出てるんでしょうかね?」

 湯の坪街道を折れ、小道を抜けると……。
 湖面が見えてきました。
金鱗湖が見えて来ました

「これって……。
 湖ですか?」
「……だよね」

 そこにあったのは、こぢんまりとした“池”でした。

 金鱗湖と名付けたのは、毛利空桑(くうそう・1797~1884)という儒学者。
 初めて聞く名前でしたが……。
 地元では、知られてるようです。
 尊皇論者で、幕末の志士たちとも交流があったそうです。
 大分市には、“毛利空桑記念館”という施設もあります。

 金鱗湖の命名は、明治17年、空桑が亡くなる年のこと。
 魚の鱗が夕日に輝く様を見て、この名を付けたそうです。
金鱗湖・名前の由来

 まぁ、「金鱗」までは、それで納得できますが……。
 “湖”は違うだろ!

 あとで調べたら、この“湖”、周囲が400メートルしか無いんですよ。
 陸上のトラックくらいですよね。
周囲400メートルの陸上トラック

 上野の不忍池でさえ、周囲2,000メートルあるんですから……。
 どう見間違えても、“池”です。
 地元の人だって、ここを“湖”と称するような大それた考えは持ってませんでした。
 元々の名前は「岳下(たけした)の池」だったそうです。
 さすが儒学者、白髪三千丈ですね。

 でも、さらに調べてみたら……。
 もしかすると、本当に湖だったかも知れないんです。
 湯布院盆地全体が、大きな湖だった時代があったかも知れないとのこと。
 金鱗湖は、その名残だとも言われてます。
 もちろん、有史以前のお話ですが……。
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