2012.3.3(土)
「Mikikoさん、これ肩こりに効きますよ。
やってみて」
「どれどれ。
ほんとだぁ。
でも美弥、肩こり持ちなの?
若いのに、気の毒な」
「おっぱいが、重たいんです」
「そぉかぁ~。
わたしなんか、肩が軽くて軽くて。
くそっ!」
でも、ほんとに気持ちえー。
思わず、印を結んで修行僧の真似。
「やると思った……」
「受けない?」
「当たり前すぎて」
「じゃあ、命をかけた芸を見せよう」
「何する気です?」
「まんぐり返しになって……。
クリで水流を受ける。
その後、肛門にも……」
「そんなこと、されてたまりますか」
「痛い、痛いって。
耳、引っ張らないでっ!」
海際の突端には、展望サウナ。
「なんか、窓が開けてると……。
サウナって感じしないね」
「ほんとに。
なんだか、バーカウンターみたい」
「そんなとこに、全裸でいるなんて……。
燃えるぜっ」
「燃えんでいい!」
「なんか、もう汗も出ない感じだな。
茹だってきた。
そこらに、ジュースの自販機とか、無い?」
「無いです。
それに、裸なんだから、お金持ってないでしょ」
「なんだよー。
お股のコインケースに、500円くらい入れといてよ~」
「ノドが渇いたら、お湯飲めばいいでしょ。
あんなにたくさんあるんだから」
「カバの昭平じゃないわい」
「もう出ましょう。
さすがに上せそう」
2段目の洗い場まで戻ると……。
そこに、最後のお風呂が。
香り湯と書いてあります。
「これで最後だよな。
よし、全制覇だ」
「Mikikoさん、大丈夫ですか?
ふらふらしてますよ」
「大丈夫」
何か、洞穴に入る感じですね。
「うわぁ~、いい香り」
中は、蒸し風呂。
ローズの香りの蒸気が、立ちこめてます。
「この香り、ずっと残りそうですね。
ね?
Mikikoさん。
ちょっと、Mikikoさん、大丈夫ですか!」
美弥ちゃんに揺さぶられながら……。
わたしの意識は、ぼんやりと遠のいていきました。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
●3月23日(火)4日目
「Mikikoさん、目が醒めました?」
部屋には、明るい光が満ちてます。
「今日も、良い天気ですよ」
「……。
ここ、どこ?」
「杉乃井ホテルのお部屋でしょ。
ほんとよく寝てましたよね」
「わたし、夕べどうしたの?」
「やっぱり、記憶無いんだ。
香り湯で、のぼせちゃったんですよ。
わたしが、お部屋まで負ぶってきたんですからね」
「うぅ……」
「そんなぁ。
大げさなんだから。
泣くほど感謝してもらわなくてもいいですよ」
「またしても、美弥と何もでけんかった……。
わたしの夜を返して……」
「それで泣いたのか。
Mikikoさん、お風呂入って来たら?」
「美弥は?」
「わたし、もう入って来ました。
棚湯のほかにも、宿泊者専用のお風呂が、地下にあるんですよ」
「なんで誘ってくれなかったのさ!」
「あんまり良く寝てるんだもの。
起こすの、可哀想で……」
「いらん気遣いしおって……」
「鼻チョーチン出してましたよ」
「うそ!」
「うそです」
「このアマ……」
だんだん、性格が悪くなってるんじゃないか?
今さら、ひとりで入りに行く気にもならんし……。
時計を見ると、もう7時。
8時前には、宿を出なきゃなりません。
今朝のお風呂は、省略。
朝食は、夕べと同じバイキングレストラン「Seeds」で。
心残りのまま、杉乃井ホテルを後にします。
ホテル前のバス停から、亀の井バスに乗車。
8:05、発車。
別府駅西口着、8:19。
と言っても、JRには乗りません。
駅の東口に回ります。
「今日は、どういう予定なんですか?」
「また、観光バスのお任せコースだよ」
「それが一番楽ですよ~」
「だよね。
考えなくていいってのが、一番」
「考えるの、苦手ですもんね」
「そうなんだよ~。
って、おい!」
「パンフ、見せてください」
:*.☆。 メルヘン号(冬コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原冬景色コース」 。☆.*:
運行はもちろん、亀の井バス!
さて、バスを待つうちに……。
8:30を回りました。
実は……。
「メルヘン号」を待ってる間に、一仕事あるんです。
何かというと……。
会社に、電話しなきゃならんのです。
当初の旅程では……。
旅行は昨日(3月22日・祝日)までで、今日からは出社の予定でした。
しかし……。
その朝、8:30に、別府にいるってことは……。
とーてー出社なぞ出来ません。
せっかく、豊後水道を乗り越えて、九州まで渡ったんですから……。
まだ帰りたくないんだもんね~。
昨日までは会社も休みで、休暇届けの出しようが無かったので……。
事後申請になっちゃうけど、この電話でお願いしちゃおうという算段。
すでに出社していた課長に、恐る恐る有給休暇の届けを願い出ると……。
あっさり、オッケー。
お土産と引き替えでしたけど。
ラッキ~。
ダメと言われても、別府から出社することなど出来ませんでしたけど。
ま、月の後半はそんなに忙しくないからね。
よし、これで後顧の憂い無し!
思いっきり楽しむぞ!
「Mikikoさん、良かったですね」
「うん。
今、別府にいるって言ったら、呆れ返られたけどな」
さて、すっかり気分の軽くなったわれらの前に……。
8:55、レインボーカラーの「メルヘン号」が到着しました。
この「メルヘン号」のめぐる観光コースですが……。
季節によって違います。
まず、4月から6月は……。
:*.☆。 メルヘン号(春秋コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原満喫コース」 。☆.*:
7,8月は……。
:*.☆。 メルヘン号(夏コース)「日本一の大吊橋と名水百選の男池コース」 。☆.*:
9,10月は、再び……。
:*.☆。 メルヘン号(春秋コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原満喫コース」 。☆.*:
11月の1ヶ月間だけは……。
:*.☆。 メルヘン号(錦秋コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原・長者原満喫コース」 。☆.*:
そして、12月から3月までが、今回わたしたちの乗るコース。
:*.☆。 メルヘン号(冬コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原冬景色コース」 。☆.*:
それでは、さっそく乗りこみましょう。
連休明けの火曜日とあって……。
席には余裕があります。
もっとも、全席予約制ですけど。
さて、別府駅を出たバスは……。
一路、「日本一の大吊橋」へ向かいます。
その名も、「九重“夢”大吊橋」。
ここで、移動の車中をお借りして、「九重“夢”大吊橋」について、ご説明します。
「九重“夢”大吊橋」は、平成18年10月に完成した、歩行者専用の吊り橋です。
観光橋ですね。
水面からの高さは、173メートル。
長さは、390メートル。
ともに、「日本一」を誇ります。
と言っても、歩行者専用橋の中でって話。
橋が架かってるのは、九酔渓(きゅうすいけい)と云う渓谷。
この谷に橋を架けよう、というアイデアが生まれたのは……。
実に、50年以上も昔……。
昭和31年(1956年)でした。
地元の商店会で、観光客を増やす算段をしてたときのこと。
谷には、「日本の滝百選」にも選ばれてる、高さ80メートルの“震動の滝”がありました。
この滝と紅葉は、売り物になる!
誰もがそう思いました。
しかし……。
滝を見るためには……。
急斜面を、縄で伝い下りなければならなかったのです。
どうしたもんかと、総員クビをひねる中……。
当時、商店会の最年少会員だった時松又夫さんが、こう発言したのです。
「谷に吊り橋を架ければ、滝も紅葉もきれいに見えるぞ」
ですが、このアイデア……。
長老たちから、一蹴されます。
「寝ぼけとるんじゃないか。
誰が金出すんじゃ」
で、あえなくアイデアは、お蔵入り。
しかし……。
それから、30年以上経った1990年代。
突然、お蔵に光が差しこみます。
「町おこし」ブームの到来です。
吊り橋の話を知った若者たちが、町に建設を働きかけたのです。
そして……。
平成16年5月、着工。
2年5ヶ月の歳月をかけ、平成18年10月、ついに完成。
“夢”が現実になったということから……。
橋は、「九重“夢”大吊橋」と名付けられました。
さて、長老たちが嗤った建設資金ですが……。
総工費は、20億円。
この9割を、地域再生事業債などの借金で賄いました。
年間30万人の来場者があれば、入場料収入で、期限の2018年までに借金を返済することができる……。
という皮算用。
フツー、自治体のこういった皮算用は、悪い方に外れることがほとんどなんですが……。
「九重“夢”大吊橋」では、ものの見事に、真逆に外れました。
なんと、開通24日で、年間目標の30万人を突破。
昨年10月には、500万人に到達したそうです。
てなわけで、借金の方は、皮算用より10年以上も早く、2008年に完済。
なので、今は丸儲け状態。
大分県では、平成の大合併で、市を除く町村数が、47から、わずか4に激減したんですが……。
九重町は、この橋一本のおかげで、合併の必要もなし。
中学生以下の医療費を助成できるほど、町は潤ってます。
今では、近県だけでなく北海道や東北からも、自治体の視察が殺到してるとか。
しかし、大吊り橋から眼下の九酔渓を見下ろした視察の人たちは……。
当時、大借金をして大博打に打って出た九重町の人たちの……。
並々ならぬ覚悟に、足が竦む思いだったんじゃないでしょうか?
さて、「九重“夢”大吊橋」に着きました。
ゲートをくぐりましょう。
橋の袂には、「日本一の大吊橋」の看板が立ってます。
観光客が、入れ替わり立ち替わり、看板の隣で写真に収まってます。
今日は平日なので、それほど混んでませんが……。
紅葉時期の休日などは、大混雑だそうです。
袂から眺めるだけでも……。
かなり怖いです。
それでは、渡り初め。
-----
★Mikiko
05/19/2010 07:26:38
□大分に行こう!(ⅩⅩⅣ-2/3)
「Mikikoさん、いい眺めですね。
ね?」
「そ、そうだね……」
「どうして空ばっかり見てるんですか?」
「いい眺めは、ちょっとパスかな……」
「どうして!
もったいない。
ほら、足下見ないと、危ないですよ」
「下、見れないじゃんよ。
穴があいてて」
橋の中央は、グレーチング構造になってて……。
下が丸見えです。
「うぅ。
下が、見えるよぉ」
-----
★Mikiko
05/19/2010 07:27:10
□大分に行こう!(ⅩⅩⅣ-3/3)
「ハイヒールだったら、歩けませんでしたね。
Mikikoさんのおかげで、バッシュ履いて来て大正解。
でも、なんで、こんな構造にしたんでしょうね?」
「恐怖心をあおるためじゃないの?」
「勘ぐりすぎだと思いますよ」
「そんなら……。
スカートが、よくめくれるようにか?」
「そんなわけないでしょ」
「スカートだったら……。
股ぐら、スカスカだぜ」
「わかった。
それですよ。
風が抜けるように、穴が空いてるんです。
だから、この程度の揺れで収まってるんじゃないですか?」
ようやく、橋の中央あたりまで来ました。
「Mikikoさん、ほら滝!
震動の滝ですよ」
「四界をどよもす滝ってことから、この名前が付いたんですよね。
ちょっと、Mikikoさん?
どうしちゃったんです?
固まっちゃって」
「あわ。
あわわわわわわわ」
「もう!
そんなになるなら、渡らなきゃいいのに!」
「うぅ。
ここまで怖いとは、思ってなかったんだよぉ。
おしっこ、漏れそう……」
「そんなことしたら……。
橋から捨てますからね」
「うぇ~ん」
「泣かないの!
手を引いてあげますから。
ほら、歩き方、覚えてます?
右足と左足を、交互に出すんですよ」
「くそぉ~。
なぶりものにしおって……」
「ほら、頑張って。
あ、歩いた!
Mikikoが歩いた」
「わたしは、クララか!」
「突っこめるくらいなら、大丈夫ですよね。
とっとと、歩きましょう」
「今日の美弥ちゃん、厳しすぎなんですけど……」
「大吊橋の上で、サドに目覚めました」
「でも、平日に来て良かったんですよ。
混んでる日に、立ち往生なんてしたら……。
大ブーイングでしたよ」
「言われ放題だな……」
「あ~、気持ちいい。
ほら、渡りきりましたよ」
「た、助かった。
足の下が、透けてない。
地面って、なんていいんだろう……」
「じゃ、戻りましょうか?」
「へ?」
「へ、じゃありませんよ。
Mikikoさんのおかげで、もう集合時間が来ちゃうじゃないですか」
「戻るってまさか、この橋を……」
「当然です」
「迂回路は……」
「ありません!」
「うぇ~ん」
「泣く子は置いていきます」
「鬼ぃぃ」
「鬼で結構。
別府で、乗り移ったのかも」
「そうだ、Mikikoさん。
あれやったら?
夕べの棚湯での芸」
「なんだよ?」
「ワニ地獄のマネ。
四つん這いになったら、少しは高さが軽減されるんじゃないの?」
「173メートルもあるのに!
1メートルくらい低くなっても、変わらんだろ!」
「そんなら、さっさと歩きましょうね。
行きますよ」
「うぇ~ん」
ようやく、中村口に戻ってきました。
ほとんど、抜け殻です。
なお、わたしのように帰れなくなる人もいるらしく……。
向こう岸から迂回するシャトルバスが運行されてるようです。
バスの出発には、もう少し時間があるようです。
昨年4月にオープンした、「天空館」という物産直売所を覗いてみましょう。
「天空館」は、2店あります。
1号店は、お菓子類や弁当等、お土産品のお店。
2号店は、採りたての新鮮な野菜など。
ま、旅先で野菜を買うわけにはいきませんが……。
面白いのが、ファストフード。
九重は、ハンバーガーも有名。
その名も、「九重“夢”バーガー」。
町内の飲食店など6カ所で、独自のハンバーガーが提供されてます。
ここ天空館でも、3種類が用意されてます。
まずは、モモガー(550円)。
デミグラスソースのかかった豊後牛のパテ。
続いて、シシガー(550円)。
猪肉が使われてます。
最後が、ヘルガー(500円)。
魚のすり身に野菜を混ぜたフライ。
外観写真では、さっぱりわかりませんね。
あと、メニューにもうひとつあった、ドリーム(800円)ですが……。
ボリューム勝負の一品みたいです(画像、探したけどありませんでした)。
シシガーに興味を引かれますが……。
中身は、豚肉とのミンチのようです。
おすすめは、やっぱりモモガーでしょうか。
「Mikikoさん、ひとつだけ買いません?」
「買いません。
もうすぐ、お昼だろ」
「だから、1つだけ買って分ければいいじゃないですか。
食いしん坊のMikikoさんらしく無いですよ」
「わたしは、だれかさんのせいで、まだ心臓がでんぐり返ってるの。
食欲なんかゼロなの」
「わたしのせいなんですか?」
「そうだよ。
橋も怖かったけど……。
それよか、わたしを見る美弥の嬉しそ~な目が、一番怖かった」
「そんな目、してません」
「してました。
三日月目。
本性見たって感じだね」
「もう。
絡むんだから……。
酔っぱらいみたい」
「橋に酔ったからな。
とにかく、ここでの買い食いは、ぜったい禁止。
お昼は、ホテルで牛ステーキ、食べるんだからね。
その前に、ハンバーガーなんか詰めこむバカがどこにいるんだ。
だいたい、ハンバーガーに500円以上払うなんて、信じられん」
さて、大吊橋を離れたバスは……。
昼食場所のホテルへと向かいます。
地面をしっかり踏みしめて走るバスのおかげで……。
でんぐり返っていた心臓も、元に戻りました。
「う~。
腹減った」
「だから、モモガー食べれば良かったのに……」
「まだ言ってる。
空腹だから、嬉しいんじゃないの」
さて、バスが立ち寄ったのは、ホテル花山酔(はなさんすい)。
さっそく、レストランへ。
出てきました、牛ステーキ(下の写真は、イメージ。花山酔の料理ではありません)。
各テーブルからは、歓声が。
豊後牛、ですぜ。
肉汁が……(これも、イメージ)。
「うめ~」
「ほんとに美味しい」
「赤ワインも美味いや。
いつも飲んでる紙パックのワインとは、やっぱ違うよ」
「同じだったら、大変ですよ」
「ワイングラスで飲むから、美味しいのかな?」
「こないだ、Mikikoさんちに泊めてもらったとき……。
驚きました」
「何が?」
「だって、ワインをジョッキで飲むんだもの」
「家で、ワイングラスでなんか飲めるかよ。
お醤油とか取ろうとして腕を伸ばすと、必ずひっくり返るんだから」
「あんなジョッキ、初めて見ました」
「そうか?
縁が二重構造になってて……。
空洞部分に保冷液が入ってる。
冷凍庫で凍らせて使うわけだ。
最後の1滴を飲み干すまで、冷え冷えが続くって優れもの」
「でも、ビールを飲むためのジョッキでしょ?
あれでワインを飲む人なんていませんよ」
「ここにいるだろうが。
二重構造だから、見た目より入らないんだぜ。
それよか美弥、ステーキ、一切れちょうだい」
「イヤです。
わたしがもらいたいくらいなんだから」
「失敗したな……」
「何がです?」
「美弥に、モモガー食わせとくんだった。
そうすりゃ、ステーキ全部入らなかったろうに」
「ハンバーガー、止めてもらって、感謝してます」
美弥ちゃんの口に、最後の一切れが……。
「あ~」
さて、食事の後ですが……。
希望する人は、ホテルのお風呂に入れます。
「わたし、入りたい。
朝、入ってないから」
「わたしは、朝入ったからなぁ」
「美弥も入ろうよ」
「お腹いっぱいだから、億劫だなぁ」
「入ろうよぉ」
「バカに勧めますね。
ここのお風呂って、有名なんですか?」
「知らん……」
「じゃ、なんでそんなに入りたがるんです?」
「実は……」
「何です?」
「さっきの大吊橋で……。
ちょっと、ちびっちゃいました」
「もう!
そんなパンツ穿いて、豊後牛食べてたの?
あきれた!」
「うぇ~ん」
「泣かないの!
仕方ないなぁ。
それじゃ、一緒に入ってあげます」
「わ~い」
お風呂は、あんまり広くなく……。
ほかにも入浴希望者がいたので……。
せっかく美弥ちゃんと一緒ですが、何することも出来ません。
素直に、お股だけ清め……。
湯船に漬かります。
「大分県で、昼風呂に入ってるのかと思うと……。
なんか不思議な気がする」
「ほんとですね。
別の時間が流れてるみたい」
「いい旅だね」
「ほんとに。
最高の旅」
「わたしは、まだ最高じゃないけど」
「どうして?」
「まだ、本懐を遂げてないからな。
寝屋で」
「まだ言ってる。
さ、もう時間ですよ」
パンツも穿き替え、さっぱりして出発です。
ホテルを出たバスは、やまなみハイウェイに入ります。
信号の無い牧草地を、バスは快適に走ります。
「日本の風景じゃないみたいですね」
「ほんと。
ハイジが出てきそうだよ」
「こんなとこで、乳搾りして暮らしたいな」
「酪農は、体力的にキツいって云いますよ」
「誰が牛の相手するって言った?
わたしは、人の乳搾りがしたいの。
特に、こんなやつ……」
ペシッ。
「痛て」
伸ばしかけた手を、叩かれちゃいました。
「着いたみたいですよ」
バスが、大きな駐車場に入りました。
九重やまなみ牧場に到着です。
観光牧場ですが、入園料は無料。
直売店やレストラン、温泉まであります。
温泉(まきばの温泉館)では、ミルク風呂が注目。
搾りたての牛乳が、惜しげもなく温泉に注がれたお風呂。
真っ白ですよ。
温泉プラス牛乳で、湯上がりのお肌はスベスベだとか。
入ってみたいけど……。
残念ながら、メルヘン号のコースには入ってません。
牛乳風呂は諦めて……。
ふれあい広場で、動物と遊びましょう。
別府以降、やたらと動物を見てますが……。
まだ、触れ合ったことはありませんでしたね。
ま、ワニやカバと触れ合いたいとは思いませんでしたけど。
ふれあい広場では、動物に餌をやったり、抱っこしたりできます。
飼われてる動物は……。
馬、ポニー、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、カモ、アヒルなど。
馬さんは、目が可愛いけど……。
やっぱり、ちょっと大きくて怖いです。
ヒツジやヤギは、目がちょっと怖いですね。
特にヤギ(写真は、やまなみ牧場のヤギではありません)。
この目から、欧米では悪魔の化身と云われてます。
でも、やまなみ牧場のヤギは、こんな有様なので、ぜんぜん怖くありません。
しかしながら、抱っこするには、大きすぎですね。
カモやアヒルは、話が通じない相手のような気がしますし……。
となれば、残るは1種類。
ウサちゃんです。
わたしの干支なので、仲良くなれそう。
ペレット状の餌を100円で買い、まずは手なずけます。
無表情で食べてますね。
ワニ地獄のワニは、餌が食いてーという意志を全面に出してましたが……。
ここのウサギは、ただ淡々と食べてます。
ワニと違って、毎日餌が食べられるからでしょうね。
100円分食ったウサギを、恐る恐る抱っこします。
ふかふかですね~。
考えてみれば、動物を抱くのは久しぶり。
猫のターボが死んで以来です。
「Mikikoさん、ママの顔になってますよ」
「暖かくてモゾモゾ動くものを抱っこすると……。
気持ちいいね」
「アニマルセラピー効果って、云いますもんね」
「ほんとに癒されるよ」
後ろ足が、腕を優しく蹴ってます。
愛しい生き物ですね。
ウサギ年に生まれて良かったな~。
「情が移らないうちに、バイバイしましょう」
「もう移った。
連れて帰りたい」
「ダメです」
「この子だって、ずっとわたしに抱かれていたいんだよ」
「そんなことありません。
はい、バイバイしましょうね」
泣く泣くウサちゃんを手放します。
なんか、乳母車から抱き取った乳児を、そのまま連れ帰る女の気持ちがわかりました。
後ろ髪を引かれつつ、振り返ると……。
さっきのウサちゃんは、小学生らしい子に抱かれてました。
わたしじゃなくてもいいんだって、ちょっとだけ寂しい。
女の子は、傍らのお母さんに、しきりに何かを訴えてる様子。
お母さんは、首を横に振ってます。
ひょっとしたら、わたしと同じこと言ってるのかも?
さて、気を取り直して、売店でも覗いてみましょう。
自家製の牛乳や、飲むヨーグルトが並んでます。
このヨーグルトは、製造過程で、水を全く加えてないとか。
しかも、お乳を出す牛ちゃんたちは……。
広大な牧場で放牧されてるので、ストレスがありません。
さっそく、150mlの飲むヨーグルトを買ってみます(200円)。
その場で、立ち飲み。
「うめ~」
「ほんとだぁ。
濃いですね」
「こいつで、赤ワインを割って飲みたい」
さて、バスはやまなみ牧場を後にします。
やってみて」
「どれどれ。
ほんとだぁ。
でも美弥、肩こり持ちなの?
若いのに、気の毒な」
「おっぱいが、重たいんです」
「そぉかぁ~。
わたしなんか、肩が軽くて軽くて。
くそっ!」
でも、ほんとに気持ちえー。
思わず、印を結んで修行僧の真似。
「やると思った……」
「受けない?」
「当たり前すぎて」
「じゃあ、命をかけた芸を見せよう」
「何する気です?」
「まんぐり返しになって……。
クリで水流を受ける。
その後、肛門にも……」
「そんなこと、されてたまりますか」
「痛い、痛いって。
耳、引っ張らないでっ!」
海際の突端には、展望サウナ。
「なんか、窓が開けてると……。
サウナって感じしないね」
「ほんとに。
なんだか、バーカウンターみたい」
「そんなとこに、全裸でいるなんて……。
燃えるぜっ」
「燃えんでいい!」
「なんか、もう汗も出ない感じだな。
茹だってきた。
そこらに、ジュースの自販機とか、無い?」
「無いです。
それに、裸なんだから、お金持ってないでしょ」
「なんだよー。
お股のコインケースに、500円くらい入れといてよ~」
「ノドが渇いたら、お湯飲めばいいでしょ。
あんなにたくさんあるんだから」
「カバの昭平じゃないわい」
「もう出ましょう。
さすがに上せそう」
2段目の洗い場まで戻ると……。
そこに、最後のお風呂が。
香り湯と書いてあります。
「これで最後だよな。
よし、全制覇だ」
「Mikikoさん、大丈夫ですか?
ふらふらしてますよ」
「大丈夫」
何か、洞穴に入る感じですね。
「うわぁ~、いい香り」
中は、蒸し風呂。
ローズの香りの蒸気が、立ちこめてます。
「この香り、ずっと残りそうですね。
ね?
Mikikoさん。
ちょっと、Mikikoさん、大丈夫ですか!」
美弥ちゃんに揺さぶられながら……。
わたしの意識は、ぼんやりと遠のいていきました。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
●3月23日(火)4日目
「Mikikoさん、目が醒めました?」
部屋には、明るい光が満ちてます。
「今日も、良い天気ですよ」
「……。
ここ、どこ?」
「杉乃井ホテルのお部屋でしょ。
ほんとよく寝てましたよね」
「わたし、夕べどうしたの?」
「やっぱり、記憶無いんだ。
香り湯で、のぼせちゃったんですよ。
わたしが、お部屋まで負ぶってきたんですからね」
「うぅ……」
「そんなぁ。
大げさなんだから。
泣くほど感謝してもらわなくてもいいですよ」
「またしても、美弥と何もでけんかった……。
わたしの夜を返して……」
「それで泣いたのか。
Mikikoさん、お風呂入って来たら?」
「美弥は?」
「わたし、もう入って来ました。
棚湯のほかにも、宿泊者専用のお風呂が、地下にあるんですよ」
「なんで誘ってくれなかったのさ!」
「あんまり良く寝てるんだもの。
起こすの、可哀想で……」
「いらん気遣いしおって……」
「鼻チョーチン出してましたよ」
「うそ!」
「うそです」
「このアマ……」
だんだん、性格が悪くなってるんじゃないか?
今さら、ひとりで入りに行く気にもならんし……。
時計を見ると、もう7時。
8時前には、宿を出なきゃなりません。
今朝のお風呂は、省略。
朝食は、夕べと同じバイキングレストラン「Seeds」で。
心残りのまま、杉乃井ホテルを後にします。
ホテル前のバス停から、亀の井バスに乗車。
8:05、発車。
別府駅西口着、8:19。
と言っても、JRには乗りません。
駅の東口に回ります。
「今日は、どういう予定なんですか?」
「また、観光バスのお任せコースだよ」
「それが一番楽ですよ~」
「だよね。
考えなくていいってのが、一番」
「考えるの、苦手ですもんね」
「そうなんだよ~。
って、おい!」
「パンフ、見せてください」
:*.☆。 メルヘン号(冬コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原冬景色コース」 。☆.*:
運行はもちろん、亀の井バス!
さて、バスを待つうちに……。
8:30を回りました。
実は……。
「メルヘン号」を待ってる間に、一仕事あるんです。
何かというと……。
会社に、電話しなきゃならんのです。
当初の旅程では……。
旅行は昨日(3月22日・祝日)までで、今日からは出社の予定でした。
しかし……。
その朝、8:30に、別府にいるってことは……。
とーてー出社なぞ出来ません。
せっかく、豊後水道を乗り越えて、九州まで渡ったんですから……。
まだ帰りたくないんだもんね~。
昨日までは会社も休みで、休暇届けの出しようが無かったので……。
事後申請になっちゃうけど、この電話でお願いしちゃおうという算段。
すでに出社していた課長に、恐る恐る有給休暇の届けを願い出ると……。
あっさり、オッケー。
お土産と引き替えでしたけど。
ラッキ~。
ダメと言われても、別府から出社することなど出来ませんでしたけど。
ま、月の後半はそんなに忙しくないからね。
よし、これで後顧の憂い無し!
思いっきり楽しむぞ!
「Mikikoさん、良かったですね」
「うん。
今、別府にいるって言ったら、呆れ返られたけどな」
さて、すっかり気分の軽くなったわれらの前に……。
8:55、レインボーカラーの「メルヘン号」が到着しました。
この「メルヘン号」のめぐる観光コースですが……。
季節によって違います。
まず、4月から6月は……。
:*.☆。 メルヘン号(春秋コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原満喫コース」 。☆.*:
7,8月は……。
:*.☆。 メルヘン号(夏コース)「日本一の大吊橋と名水百選の男池コース」 。☆.*:
9,10月は、再び……。
:*.☆。 メルヘン号(春秋コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原満喫コース」 。☆.*:
11月の1ヶ月間だけは……。
:*.☆。 メルヘン号(錦秋コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原・長者原満喫コース」 。☆.*:
そして、12月から3月までが、今回わたしたちの乗るコース。
:*.☆。 メルヘン号(冬コース)「日本一の大吊橋とくじゅう高原冬景色コース」 。☆.*:
それでは、さっそく乗りこみましょう。
連休明けの火曜日とあって……。
席には余裕があります。
もっとも、全席予約制ですけど。
さて、別府駅を出たバスは……。
一路、「日本一の大吊橋」へ向かいます。
その名も、「九重“夢”大吊橋」。
ここで、移動の車中をお借りして、「九重“夢”大吊橋」について、ご説明します。
「九重“夢”大吊橋」は、平成18年10月に完成した、歩行者専用の吊り橋です。
観光橋ですね。
水面からの高さは、173メートル。
長さは、390メートル。
ともに、「日本一」を誇ります。
と言っても、歩行者専用橋の中でって話。
橋が架かってるのは、九酔渓(きゅうすいけい)と云う渓谷。
この谷に橋を架けよう、というアイデアが生まれたのは……。
実に、50年以上も昔……。
昭和31年(1956年)でした。
地元の商店会で、観光客を増やす算段をしてたときのこと。
谷には、「日本の滝百選」にも選ばれてる、高さ80メートルの“震動の滝”がありました。
この滝と紅葉は、売り物になる!
誰もがそう思いました。
しかし……。
滝を見るためには……。
急斜面を、縄で伝い下りなければならなかったのです。
どうしたもんかと、総員クビをひねる中……。
当時、商店会の最年少会員だった時松又夫さんが、こう発言したのです。
「谷に吊り橋を架ければ、滝も紅葉もきれいに見えるぞ」
ですが、このアイデア……。
長老たちから、一蹴されます。
「寝ぼけとるんじゃないか。
誰が金出すんじゃ」
で、あえなくアイデアは、お蔵入り。
しかし……。
それから、30年以上経った1990年代。
突然、お蔵に光が差しこみます。
「町おこし」ブームの到来です。
吊り橋の話を知った若者たちが、町に建設を働きかけたのです。
そして……。
平成16年5月、着工。
2年5ヶ月の歳月をかけ、平成18年10月、ついに完成。
“夢”が現実になったということから……。
橋は、「九重“夢”大吊橋」と名付けられました。
さて、長老たちが嗤った建設資金ですが……。
総工費は、20億円。
この9割を、地域再生事業債などの借金で賄いました。
年間30万人の来場者があれば、入場料収入で、期限の2018年までに借金を返済することができる……。
という皮算用。
フツー、自治体のこういった皮算用は、悪い方に外れることがほとんどなんですが……。
「九重“夢”大吊橋」では、ものの見事に、真逆に外れました。
なんと、開通24日で、年間目標の30万人を突破。
昨年10月には、500万人に到達したそうです。
てなわけで、借金の方は、皮算用より10年以上も早く、2008年に完済。
なので、今は丸儲け状態。
大分県では、平成の大合併で、市を除く町村数が、47から、わずか4に激減したんですが……。
九重町は、この橋一本のおかげで、合併の必要もなし。
中学生以下の医療費を助成できるほど、町は潤ってます。
今では、近県だけでなく北海道や東北からも、自治体の視察が殺到してるとか。
しかし、大吊り橋から眼下の九酔渓を見下ろした視察の人たちは……。
当時、大借金をして大博打に打って出た九重町の人たちの……。
並々ならぬ覚悟に、足が竦む思いだったんじゃないでしょうか?
さて、「九重“夢”大吊橋」に着きました。
ゲートをくぐりましょう。
橋の袂には、「日本一の大吊橋」の看板が立ってます。
観光客が、入れ替わり立ち替わり、看板の隣で写真に収まってます。
今日は平日なので、それほど混んでませんが……。
紅葉時期の休日などは、大混雑だそうです。
袂から眺めるだけでも……。
かなり怖いです。
それでは、渡り初め。
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★Mikiko
05/19/2010 07:26:38
□大分に行こう!(ⅩⅩⅣ-2/3)
「Mikikoさん、いい眺めですね。
ね?」
「そ、そうだね……」
「どうして空ばっかり見てるんですか?」
「いい眺めは、ちょっとパスかな……」
「どうして!
もったいない。
ほら、足下見ないと、危ないですよ」
「下、見れないじゃんよ。
穴があいてて」
橋の中央は、グレーチング構造になってて……。
下が丸見えです。
「うぅ。
下が、見えるよぉ」
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★Mikiko
05/19/2010 07:27:10
□大分に行こう!(ⅩⅩⅣ-3/3)
「ハイヒールだったら、歩けませんでしたね。
Mikikoさんのおかげで、バッシュ履いて来て大正解。
でも、なんで、こんな構造にしたんでしょうね?」
「恐怖心をあおるためじゃないの?」
「勘ぐりすぎだと思いますよ」
「そんなら……。
スカートが、よくめくれるようにか?」
「そんなわけないでしょ」
「スカートだったら……。
股ぐら、スカスカだぜ」
「わかった。
それですよ。
風が抜けるように、穴が空いてるんです。
だから、この程度の揺れで収まってるんじゃないですか?」
ようやく、橋の中央あたりまで来ました。
「Mikikoさん、ほら滝!
震動の滝ですよ」
「四界をどよもす滝ってことから、この名前が付いたんですよね。
ちょっと、Mikikoさん?
どうしちゃったんです?
固まっちゃって」
「あわ。
あわわわわわわわ」
「もう!
そんなになるなら、渡らなきゃいいのに!」
「うぅ。
ここまで怖いとは、思ってなかったんだよぉ。
おしっこ、漏れそう……」
「そんなことしたら……。
橋から捨てますからね」
「うぇ~ん」
「泣かないの!
手を引いてあげますから。
ほら、歩き方、覚えてます?
右足と左足を、交互に出すんですよ」
「くそぉ~。
なぶりものにしおって……」
「ほら、頑張って。
あ、歩いた!
Mikikoが歩いた」
「わたしは、クララか!」
「突っこめるくらいなら、大丈夫ですよね。
とっとと、歩きましょう」
「今日の美弥ちゃん、厳しすぎなんですけど……」
「大吊橋の上で、サドに目覚めました」
「でも、平日に来て良かったんですよ。
混んでる日に、立ち往生なんてしたら……。
大ブーイングでしたよ」
「言われ放題だな……」
「あ~、気持ちいい。
ほら、渡りきりましたよ」
「た、助かった。
足の下が、透けてない。
地面って、なんていいんだろう……」
「じゃ、戻りましょうか?」
「へ?」
「へ、じゃありませんよ。
Mikikoさんのおかげで、もう集合時間が来ちゃうじゃないですか」
「戻るってまさか、この橋を……」
「当然です」
「迂回路は……」
「ありません!」
「うぇ~ん」
「泣く子は置いていきます」
「鬼ぃぃ」
「鬼で結構。
別府で、乗り移ったのかも」
「そうだ、Mikikoさん。
あれやったら?
夕べの棚湯での芸」
「なんだよ?」
「ワニ地獄のマネ。
四つん這いになったら、少しは高さが軽減されるんじゃないの?」
「173メートルもあるのに!
1メートルくらい低くなっても、変わらんだろ!」
「そんなら、さっさと歩きましょうね。
行きますよ」
「うぇ~ん」
ようやく、中村口に戻ってきました。
ほとんど、抜け殻です。
なお、わたしのように帰れなくなる人もいるらしく……。
向こう岸から迂回するシャトルバスが運行されてるようです。
バスの出発には、もう少し時間があるようです。
昨年4月にオープンした、「天空館」という物産直売所を覗いてみましょう。
「天空館」は、2店あります。
1号店は、お菓子類や弁当等、お土産品のお店。
2号店は、採りたての新鮮な野菜など。
ま、旅先で野菜を買うわけにはいきませんが……。
面白いのが、ファストフード。
九重は、ハンバーガーも有名。
その名も、「九重“夢”バーガー」。
町内の飲食店など6カ所で、独自のハンバーガーが提供されてます。
ここ天空館でも、3種類が用意されてます。
まずは、モモガー(550円)。
デミグラスソースのかかった豊後牛のパテ。
続いて、シシガー(550円)。
猪肉が使われてます。
最後が、ヘルガー(500円)。
魚のすり身に野菜を混ぜたフライ。
外観写真では、さっぱりわかりませんね。
あと、メニューにもうひとつあった、ドリーム(800円)ですが……。
ボリューム勝負の一品みたいです(画像、探したけどありませんでした)。
シシガーに興味を引かれますが……。
中身は、豚肉とのミンチのようです。
おすすめは、やっぱりモモガーでしょうか。
「Mikikoさん、ひとつだけ買いません?」
「買いません。
もうすぐ、お昼だろ」
「だから、1つだけ買って分ければいいじゃないですか。
食いしん坊のMikikoさんらしく無いですよ」
「わたしは、だれかさんのせいで、まだ心臓がでんぐり返ってるの。
食欲なんかゼロなの」
「わたしのせいなんですか?」
「そうだよ。
橋も怖かったけど……。
それよか、わたしを見る美弥の嬉しそ~な目が、一番怖かった」
「そんな目、してません」
「してました。
三日月目。
本性見たって感じだね」
「もう。
絡むんだから……。
酔っぱらいみたい」
「橋に酔ったからな。
とにかく、ここでの買い食いは、ぜったい禁止。
お昼は、ホテルで牛ステーキ、食べるんだからね。
その前に、ハンバーガーなんか詰めこむバカがどこにいるんだ。
だいたい、ハンバーガーに500円以上払うなんて、信じられん」
さて、大吊橋を離れたバスは……。
昼食場所のホテルへと向かいます。
地面をしっかり踏みしめて走るバスのおかげで……。
でんぐり返っていた心臓も、元に戻りました。
「う~。
腹減った」
「だから、モモガー食べれば良かったのに……」
「まだ言ってる。
空腹だから、嬉しいんじゃないの」
さて、バスが立ち寄ったのは、ホテル花山酔(はなさんすい)。
さっそく、レストランへ。
出てきました、牛ステーキ(下の写真は、イメージ。花山酔の料理ではありません)。
各テーブルからは、歓声が。
豊後牛、ですぜ。
肉汁が……(これも、イメージ)。
「うめ~」
「ほんとに美味しい」
「赤ワインも美味いや。
いつも飲んでる紙パックのワインとは、やっぱ違うよ」
「同じだったら、大変ですよ」
「ワイングラスで飲むから、美味しいのかな?」
「こないだ、Mikikoさんちに泊めてもらったとき……。
驚きました」
「何が?」
「だって、ワインをジョッキで飲むんだもの」
「家で、ワイングラスでなんか飲めるかよ。
お醤油とか取ろうとして腕を伸ばすと、必ずひっくり返るんだから」
「あんなジョッキ、初めて見ました」
「そうか?
縁が二重構造になってて……。
空洞部分に保冷液が入ってる。
冷凍庫で凍らせて使うわけだ。
最後の1滴を飲み干すまで、冷え冷えが続くって優れもの」
「でも、ビールを飲むためのジョッキでしょ?
あれでワインを飲む人なんていませんよ」
「ここにいるだろうが。
二重構造だから、見た目より入らないんだぜ。
それよか美弥、ステーキ、一切れちょうだい」
「イヤです。
わたしがもらいたいくらいなんだから」
「失敗したな……」
「何がです?」
「美弥に、モモガー食わせとくんだった。
そうすりゃ、ステーキ全部入らなかったろうに」
「ハンバーガー、止めてもらって、感謝してます」
美弥ちゃんの口に、最後の一切れが……。
「あ~」
さて、食事の後ですが……。
希望する人は、ホテルのお風呂に入れます。
「わたし、入りたい。
朝、入ってないから」
「わたしは、朝入ったからなぁ」
「美弥も入ろうよ」
「お腹いっぱいだから、億劫だなぁ」
「入ろうよぉ」
「バカに勧めますね。
ここのお風呂って、有名なんですか?」
「知らん……」
「じゃ、なんでそんなに入りたがるんです?」
「実は……」
「何です?」
「さっきの大吊橋で……。
ちょっと、ちびっちゃいました」
「もう!
そんなパンツ穿いて、豊後牛食べてたの?
あきれた!」
「うぇ~ん」
「泣かないの!
仕方ないなぁ。
それじゃ、一緒に入ってあげます」
「わ~い」
お風呂は、あんまり広くなく……。
ほかにも入浴希望者がいたので……。
せっかく美弥ちゃんと一緒ですが、何することも出来ません。
素直に、お股だけ清め……。
湯船に漬かります。
「大分県で、昼風呂に入ってるのかと思うと……。
なんか不思議な気がする」
「ほんとですね。
別の時間が流れてるみたい」
「いい旅だね」
「ほんとに。
最高の旅」
「わたしは、まだ最高じゃないけど」
「どうして?」
「まだ、本懐を遂げてないからな。
寝屋で」
「まだ言ってる。
さ、もう時間ですよ」
パンツも穿き替え、さっぱりして出発です。
ホテルを出たバスは、やまなみハイウェイに入ります。
信号の無い牧草地を、バスは快適に走ります。
「日本の風景じゃないみたいですね」
「ほんと。
ハイジが出てきそうだよ」
「こんなとこで、乳搾りして暮らしたいな」
「酪農は、体力的にキツいって云いますよ」
「誰が牛の相手するって言った?
わたしは、人の乳搾りがしたいの。
特に、こんなやつ……」
ペシッ。
「痛て」
伸ばしかけた手を、叩かれちゃいました。
「着いたみたいですよ」
バスが、大きな駐車場に入りました。
九重やまなみ牧場に到着です。
観光牧場ですが、入園料は無料。
直売店やレストラン、温泉まであります。
温泉(まきばの温泉館)では、ミルク風呂が注目。
搾りたての牛乳が、惜しげもなく温泉に注がれたお風呂。
真っ白ですよ。
温泉プラス牛乳で、湯上がりのお肌はスベスベだとか。
入ってみたいけど……。
残念ながら、メルヘン号のコースには入ってません。
牛乳風呂は諦めて……。
ふれあい広場で、動物と遊びましょう。
別府以降、やたらと動物を見てますが……。
まだ、触れ合ったことはありませんでしたね。
ま、ワニやカバと触れ合いたいとは思いませんでしたけど。
ふれあい広場では、動物に餌をやったり、抱っこしたりできます。
飼われてる動物は……。
馬、ポニー、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、カモ、アヒルなど。
馬さんは、目が可愛いけど……。
やっぱり、ちょっと大きくて怖いです。
ヒツジやヤギは、目がちょっと怖いですね。
特にヤギ(写真は、やまなみ牧場のヤギではありません)。
この目から、欧米では悪魔の化身と云われてます。
でも、やまなみ牧場のヤギは、こんな有様なので、ぜんぜん怖くありません。
しかしながら、抱っこするには、大きすぎですね。
カモやアヒルは、話が通じない相手のような気がしますし……。
となれば、残るは1種類。
ウサちゃんです。
わたしの干支なので、仲良くなれそう。
ペレット状の餌を100円で買い、まずは手なずけます。
無表情で食べてますね。
ワニ地獄のワニは、餌が食いてーという意志を全面に出してましたが……。
ここのウサギは、ただ淡々と食べてます。
ワニと違って、毎日餌が食べられるからでしょうね。
100円分食ったウサギを、恐る恐る抱っこします。
ふかふかですね~。
考えてみれば、動物を抱くのは久しぶり。
猫のターボが死んで以来です。
「Mikikoさん、ママの顔になってますよ」
「暖かくてモゾモゾ動くものを抱っこすると……。
気持ちいいね」
「アニマルセラピー効果って、云いますもんね」
「ほんとに癒されるよ」
後ろ足が、腕を優しく蹴ってます。
愛しい生き物ですね。
ウサギ年に生まれて良かったな~。
「情が移らないうちに、バイバイしましょう」
「もう移った。
連れて帰りたい」
「ダメです」
「この子だって、ずっとわたしに抱かれていたいんだよ」
「そんなことありません。
はい、バイバイしましょうね」
泣く泣くウサちゃんを手放します。
なんか、乳母車から抱き取った乳児を、そのまま連れ帰る女の気持ちがわかりました。
後ろ髪を引かれつつ、振り返ると……。
さっきのウサちゃんは、小学生らしい子に抱かれてました。
わたしじゃなくてもいいんだって、ちょっとだけ寂しい。
女の子は、傍らのお母さんに、しきりに何かを訴えてる様子。
お母さんは、首を横に振ってます。
ひょっとしたら、わたしと同じこと言ってるのかも?
さて、気を取り直して、売店でも覗いてみましょう。
自家製の牛乳や、飲むヨーグルトが並んでます。
このヨーグルトは、製造過程で、水を全く加えてないとか。
しかも、お乳を出す牛ちゃんたちは……。
広大な牧場で放牧されてるので、ストレスがありません。
さっそく、150mlの飲むヨーグルトを買ってみます(200円)。
その場で、立ち飲み。
「うめ~」
「ほんとだぁ。
濃いですね」
「こいつで、赤ワインを割って飲みたい」
さて、バスはやまなみ牧場を後にします。