Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
大分に行こう!(2)
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 さて、ついに最後の地獄となりました。
 第8の地獄は……。
 龍巻地獄。
龍巻地獄

 龍巻という名称は、ちょっとコジツケですね。
 早い話、間欠泉なんです。

 噴出の間隔は、20~40分。
 同様の間欠泉は、アイスランドやニュージーランドにもありますが……。
 これほど、周期は短くないそうです。

 せっかく龍巻地獄に来たからには……。
 1度は、噴出する様子を見たいものです。
 長くて40分待ちなら、よほどお急ぎの人じゃない限り、見れますね。
 観光バスのコースで、ここが最後になってるのは……。
 お客さんに、必ず間欠泉を見てもらうためじゃないでしょうか。
 コースの途中にあると、後の時間計算が面倒ですからね。

 さて、この間欠泉。
 地上50メートルまで噴き上げる力があるそうですが……。
 今は、屋根で止められてます。
 観光客の頭上から降り注いだら、大変だからです。
 なにしろ、加圧された熱泉は、150度もあるそうです。
 圧力釜が破裂したようなものですよね。

 さて、そうこうするうちに……。
 龍巻地獄のまわりに人が集まってきました。
 そろそろ、噴出時間のようです。
 一同、固唾を飲んで見守るなか……。
龍巻地獄

「おぉ~」

 噴き出しました~。
 群衆から、歓声が沸き上がります。
 そっと、美弥ちゃんの横顔を、覗き込みます。
 心なしか……。
 上気してるような……。

 たぶんですが……。
 この間欠泉から、別のことを連想してるのは、わたしだけじゃ無いはず……。


 ですよね?
 男性のあの瞬間。
 もちろん、こんな勢いがあったら……。
 女性は、ロケットみたいに飛んでっちゃいますけど。

「美弥……。
 今、スケベなこと考えてたでしょ?」
「そ、そんなこと、考えてませんよ!」
「うそこけ。
 何で、顔赤くしてる?」
「だって……。
 Mikikoさんが、ヘンなこと言うから」
「ほー」
「だって、わたし、まだ見たことないんですからね」
「何を?」
「あ”」

 美弥ちゃん、語るに落ちちゃいましたね。
 顔真っ赤にして、そっぽ向いてます。
 可愛ゆ~い♪
 ふっふ。
 今宵こそ……。

 さて、地獄めぐりのバスは、無事、別府駅に戻ってきました。
 おぉ~。
 懐かしや、油屋熊八っつぁん。
油屋熊八

 全行程、2時間半。
 でもまだ、15:30です。
 宿に入って、ゆっくりするのもいいけど……。
 この紙上旅行倶楽部は、欲張りです。
 もう1カ所、行きましょう。

 別府駅から、日豊本線の普通列車に乗り込みます。
 15:41発。

「降りるよ」
「え?
 一駅?」

 そう、たった一駅。
 隣の駅は、別府大学駅。
別府大学駅

 4分間の乗車で、15:45着。

 駅名となってる別府大学ですが……。
 もちろん、近くに別府大学があるからです。
別府大学

 別府大学は、外国人(主にアジア)留学生が多いことで有名。
 しかも、別府にはもうひとつ、立命館アジア太平洋大学があります。
立命館アジア太平洋大学

 その名のとおり、ものスゴく留学生が多いです(日本一みたいです)。
 ということで、別府の町には、外国人留学生が溢れてます。
 今年のミス別府には、立命館アジア太平洋大学の留学生(ベトナム出身)が選ばれたそうです。

 駅を出て、ちょっと東に歩き……。
 国道10号線を渡ると、そこはもう海です。
 砂浜の向こうに、別府湾が広がってます。
別府湾

 地獄めぐりで、たっぷりと別府を満喫しましたが……。
 ここでトドメを刺しましょう。
 別府、そして砂浜と云えば……?
 そう、砂湯です!
「別府海浜砂湯」地図

 昔テレビで見て、一度体験したく思ってました。
 砂に埋もれるって、ぜったい気持ちいいに違いない。

 程なく着いたのは、その名も「別府海浜砂湯」。
別府海浜砂湯

 市営の施設です。
 入口は、何の変哲もない銭湯のよう。
別府海浜砂湯・入口

 今日は祝日とあって、少し混んでるようです。
 順番待ちでした。
 やっぱりというか、何というか……。
 順番を待ってる人たちは、おとっつぁん、おっかさんが多いです。
 あと、アジア系観光客。
 その中にあって、わたしは残念ながら、あんまり異質感無かったんですが……。
 美弥ちゃんは、異質感ありまくり。
 好奇の視線を浴びて、ちょっと居心地悪そうでした。

 さて、程なくわたしたちの順番が回ってきました。
 浴衣を渡され、そのまま男女別のロッカーへ移動。
 浴衣に着替えます。
 もちろん、浴衣の下はすっぽんぽんになります。
 美弥ちゃんは、周りの視線が恥ずかしいのか、浴衣を羽織って下を脱いでました。
 可愛ゆい!
 後ろから抱きしめたくなったけど……。
 周りの目があるので、自粛。

 さて、無事お召し替えも済ませ……。
 外に出ると……。
 大きな砂場がありました。
別府海浜砂湯・砂場

 コンクリートの縁で囲まれ……。
 まさしく、公園の砂場のよう。
 もちろん、それよりずっとでかいですが。
 長辺は、20メートルくらいあるでしょうか。
 短辺は、6メートルくらい。
 ちょっとしたプールのような大きさです。
 短辺と平行に2段になって、たくさんの人が、砂に埋もれてます。
別府海浜砂湯・砂場に2段

 中には、明らかに爆睡中の人も……。
 よっぽど気持ちいいんでしょうね。

 わたしたち2人が砂場に降りると……。
 もんぺスタイルも勇ましい砂かけさんが、人型の穴を掘ってくれます。
別府海浜砂湯・砂かけさん

 クワみたいな道具を使うんですが……。
 湿った重たい砂が、見る見る除けられていきます。
 ほとんど土木作業と同じでしょうに、息一つ乱しません。
 わたしなら、一日で腰が伸びなくなるでしょうね。

 さて、あっという間に、墓穴のような窪みが掘られました。
 ここに、寝ころぶわけです。
 もちろん、頭だけは、穴の外に出します。
 頭は、木枕に載せます。
 男性は、枕にタオルを載せるだけで大丈夫ですが……。
 髪の長い女性は、ちょっとやっかい。
 そのままだと、髪が砂に着いちゃいます。
 砂から上がった後は、内湯で砂を落とすので……。
 髪まで洗うつもりなら、気にする必要もありませんけど。
 リンスインシャンプーやドライヤーが、無料で使えますし。
 でも、ここで髪まで洗いたくない人には……。
 売店で、ヘアキャップを売ってます。
 110円。
 でも、たぶん蒸れちゃって……。
 髪を洗いたくなると思います。

 あと、タオルも有料で、250円。
 バスタオルは用意されてないようなので……。
 タオルは、自分で持ってない限り、買うしかないみたいですね。
 さらに言うと、コインロッカーも有料で、100円です。
 そのほかにもちろん、入浴料が1,000円かかります。
 1,500円でもいいから、タオルもヘアキャップもロッカーもコミコミにしてくれた方が、便利みたいなんだけど……。
別府海浜砂湯・料金表

 さて、観念して墓穴に入ったわたしたちに……。
 砂かけさんが、容赦なく砂をかけてくださいます。
 地獄の鬼みたいですね。
 やはり、別府。

 湿った砂は……。
 思いのほか、重い!
 身動きならんほどです。

 首だけ出して、すっかり埋め尽くされると……。
 温泉熱で暖められた砂で、まさに蒸し饅頭状態。
 3月の風があたる顔から、汗が噴き出します。
 体の方は、もっと発汗してるはず。
 目の前には、広々とした別府湾。
砂湯前の別府湾

 まさに……。
 極楽。
 地獄をめぐって、極楽にたどり着いたって感じですね。
 爆睡してた人の気持ちがわかりました。

 蒸されること15分。
 終了です。
 もっと埋もれてたいけど……。
 水分補給なしだと、下手すりゃ脱水状態になりかねません。
 それほど、全身汗まみれ。

 砂を掻き分け……。
 ウミガメの孵化のように外に出ると……。
 信じられないほど、体が軽い。
 体重が30キロくらいになった気分です。

 宙を歩くようにして、内風呂へ。
別府海浜砂湯・内風呂

 浴衣を脱ぎ捨てると……。
 おぉ!
 全裸が、気持ちえー。
 美弥ちゃんも、恥ずかしさも忘れたように、すっぽんぽん。
 なにしろ、汗と砂で、全身ドロドロ状態ですからね。

 頭にタオル巻いてたんだけど……。
 蒸され頭がカイカイです。
 やっぱり、髪を洗わずにはおれません。

 汗と砂を流して、湯船に浸かります。

「あ”~。
 極楽じゃぁ」
「ほんとですね~」
「近くにあったら、ぜったいリピするわ」
「スーパー銭湯で砂湯やったら、ぜったい流行りますよね」
「間違いないね。
 でも、砂かけさんの人材確保は……。
 難しいだろうなぁ」

 てなわけで、砂風呂、最高!

 売店には、こんな強烈なのも売ってました。
別府海浜砂湯・砂かけババロア

 さて、体が軽くなったところで……。
 再び別府大学駅まで戻ります。

 16:57分発の別府行きに乗車。
 別府着、17:01。

 別府駅には着きましたが……。
 JRには乗りません。
 駅を突っ切って、西口に出ます。
 ここから再び、地獄めぐりでお世話になった亀の井バスに乗ります。
 と言っても、今度のは路線バスです。

 17:10分、別府駅西口発。

 これから向かうのは、今日のお宿がある観音寺温泉。
 と言っても、今夜の泊まりは、温泉旅館ではありません。
 高知では、2日続けて国民宿舎でしたので……。
 大分の初日は、気分を変えましょう。
 今宵のお宿は、杉乃井ホテル
杉乃井ホテル・地図

 スギノイパレス(劇場・大浴場)などのアミューズメント施設を併設した、大型リゾートホテルです。
 客室数「562室」、収容宿泊客数「2,434名」。
 別府最大の規模を誇ります。

 バス停「スギノイパレス」着、17:24です。

 見よ、この偉容。
杉乃井ホテル・外観

 大型の屋内プール(アクアビート)や、ボウリング場、ゲームセンターなども併設されてます。
杉乃井ホテル・アミューズメント

 たぶん、ここに丸1日いても、飽きないと思います。
 わたしは、アクティブに遊ぶのが苦手なので……。
 泊まるだけにしちゃったけどね。

「Mikikoさん、わたし、お腹空いた」
「わたしもペコペコ。
 やっぱ、砂湯が効いたよな。
 シーフードチャンポンなんか、跡形も無くなった。
 ここは、お風呂が面白いんだけどな……」
「お夕食、先にしません?」
「賛成。
 お風呂は、砂湯で入ったばっかりだしね」

 今日の夕食は、バイキングです。
 わたしのように、好き嫌いの多い人間には……。
 好きなものを好きなだけ食べれるバイキングってのは、嬉しい限り。

 さっそく、本館地下1階、バイキングレストラン「Seeds」に下りましょう。
 レストランの営業は、17:30から21:00まで。
 夕食前に遊ぼうって人は……。
 時間を忘れて楽しんでると、夕食が短くなっちゃいますよ。

 さすが、広いですね~。
 コックさんが、ずらーっと並んでます。
杉乃井ホテル・バイキングレストラン「Seeds」・オープンキッチン

 オープンキッチンなんですね。
 料理の作られていく様子が、ライブで見れます。
 その料理も、盛りだくさん。
杉乃井ホテル・バイキングレストラン「Seeds」・料理

「Mikikoさん、席間違えないようにしてくださいね」
杉乃井ホテル・バイキングレストラン「Seeds」・席

「酔っぱらったら、マジで迷子になりそうだな」

 そして……。
 ……2時間半後。

「もしもし?
 美弥?」
「Mikikoさんなの?
 何で携帯なんかかけてくるんです?」
「席がわからなくなった。
 迎えに来て」
「もう!
 どこにいるんです?」
「それがわかったら、席に帰れるよ」
「酔っぱらいのくせに、理屈言って。
 じゃ、コックさんの並んだカウンターのとこ行ってください。
 迎えに行きますから」

「あ、美弥!
 ここここ」
「手なんか振らないの。
 子供が笑ってるじゃないですか」
「どこに?
 キョロ@@キョロ。
 ん、おまいか。
 なるほで、こまっしゃくれたマセガオしとるな。
 どっから来たんだ?
 なに!
 大阪ぁ。
 エロの本場じゃないか。
 『ikiko's Room』にスパムコメント入れる輩は……。
 十中八九、大阪のプロバイダ経由だ。
 こりゃ、ガキ。
 いくらマセてても、まだ母ちゃん以外のアソコは見たことないだろ?
 お姉さんが、見せてやろうか?
 最上級アワビ。
Mikikoのアワビ

 もっとこっち寄りな。
 ここで、ご開帳してやるから。
 痛てっ。
 美弥、痛い!
 耳がチギレる!」
「飲み過ぎです!
 下品な酔い方して!
 退場!」
「痛い痛い。
 お願いだから……。
 耳引っ張られながら、レストラン出るのは勘弁して……」
「2度と、ああいう言動しない?」
「しません」
「じゃ、耳は許してあげます」
「おー、痛かった。
 耳を摘まれ、大分県」
「懲りてませんね?」
「反省してます!
 ちょっと、何で襟首掴むのよ?」
「放し飼いに出来ない気分」
「猿回しのサルじゃないんだから……」

 とうとう、襟首釣られたまま、部屋まで連れ戻されました。
 お部屋は、広々とした和洋室。
杉乃井ホテル・和洋室

 ですが……。
 このホテル、部屋でくつろぐよりは……。
 併設されたアミューズメントで楽しむのが本道でしょう。

「美弥、お風呂行こうよ」
「もう少し、酔いが醒めてからにした方がいいんじゃないですか?
 脳卒中になっちゃいますよ」
「年寄りみたいに言うな!
 お風呂を楽しまなかったら、ここに泊まる意味が無いんだよ。
 お風呂は、23時で終わっちゃうし」
「まだ2時間以上もあるじゃないですか」
「そのくらい、すぐに経っちゃうって。
 なにしろ、入場が21:30までなんだから」
「え?
 そんなに早く?
 ほんとですか?」
「ほんとだよ。
 ホームページをプリントしたの持ってきた。
 見てみ」
「どれどれ。
 ……。
 Mikikoさん、違うじゃない」
杉乃井ホテル「棚湯」説明書き

「どこが?」
「23時までなのは、日帰りの人じゃないですか。
 21:30は、日帰り入場券の販売終了時間でしょ。
 泊まりの人は、入場券買わなくていいんだから、もっと後でも入れるんじゃないですか?」
「なら、お泊まりの人は、23:00より遅くまで入ってられるの?」
「24:00になってますよ。
 ほら」
「ほんとだ……。
 でも……。
 23時になったとき……。
 どうやったら、日帰り客だけを風呂から上げられるんだ?
 みんな素っ裸なんだから、日帰り客か泊まり客かなんて、わからんだろ」
「そうですよね。
 玄関、締めちゃうんでしょうか?」
「そんなことしたら、帰りそびれた日帰り客が、朝まで居座っちゃうだろ。
 ホテルにとっちゃ、大迷惑だよ」
「それもそうですね。
 どうするんでしょう?」
「わたしに聞くな。
 ともかく……。
 うちらは泊まりなんだから、関係ないの!
 でももし、泊まり客も21:30で打ち止めだったらタイヘンだ。
 別府なんか、一生に一度来れるかどうかなんだから。
 ささ、支度せい」

 お風呂は、ホテルにつながったアミューズメント施設「スギノイパレス」にあります。
スギノイパレス

 スギノイパレスには、お風呂のほかに、ボウリング場やゲームセンター、劇場があります。
 スギノイパレスの向かいには、温泉プール「アクアビート」もあり……。
アクアビート

 親子連れなら、ここだけで丸1日楽しめるでしょう。

 さて、わたしらは、お風呂にしか用がありませんので……。
 お風呂に直行。
 お風呂に付けられた名前は、「棚湯」と云います。
スギノイパレス「棚湯」

 さっそく入ってみましょう。

「広ろ」

 まだ、お風呂には入ってません。
 驚いたのは、脱衣場の広さ。
 ま、当然ですよね。
 収容人数は、男湯・女湯共に300人ずつ。

「美弥、また迷子になりそう……」
「ロッカーの番号でわかるでしょ。
 鍵、無くさないでくださいね」

 しかし……。
 そう言いながら美弥ちゃんは、パッパカ浴衣を脱いでいきます。
 変われば変わるもんだ。
 置いてかれたらタイヘンナので……。
 わたしも慌てて浴衣を脱ぎ捨てます。
 自慢じゃないが……。
 全裸になるスピードは速いです。

 うぅ……。
 お腹ぽっこり。
 バイキング、目一杯詰め込んだからな。
 隣の美弥ちゃんを盗み見ると……。
 やっぱり膨れてる。
 良かったぁ。
 美女のぷっくりお腹、ものすげー萌える……。
 思わず、手が伸びます。
 その手を、美弥ちゃんの手が、がっしりと掴みます。
 おぉ!
 今夜は、バカに積極的じゃないか。
 と思ったのも束の間、わたしの手を握ったまま、美弥ちゃんはズンズン歩き出しました。

「はぐれないでくださいよ。
 今度は、携帯無いんですから」
「子供じゃないんだから」
「子供並みです」
「う。
 それじゃ、オンブして」
「甘えない。
 ほら、足元気をつけて。
 滑らないようにね」
「デイサービスの祖母ちゃんじゃないわい!」

 脱衣場を抜けたお風呂は、ずらーっとカランが並んだ内湯です。
 ここでは、お湯をかぶるだけにしましょう。
 まだ、先があるんです。

 このお風呂の名称を、「棚湯」と云うことを書きましたが……。
 これはもちろん、「棚田」をイメージしたもの。
「棚田」

 つまり!
 満々とお湯を湛えた湯船が、棚田のように続いてるってわけですね。
 棚は5段あります。
スギノイパレス「棚湯」平面図

 最上段①が、今入った内湯。
 内湯と云っても……。
 全面ガラス張り。
 この内湯だけでも、展望大浴場として売り出せるでしょう。

「ガラス越しじゃなくて、ジカに見よう」
「はい」
スギノイパレス「棚湯」平面図

 2段目②のお風呂へ……。
 ここは、屋根が掛かった半露天。
 屋根って云うか、庇が長~く伸びた感じですね。
 壁はないので、景色はジカに見れます。
 ホームページには、「雨天でも雨に濡れずゆったりと眺望をお楽しみいただけます」とあります。
 裸でお風呂に入ってて、雨に濡れるのを気にする人がいるんでしょうか……。

 今夜は晴れてるので、2段目は通過。
 3段目③に進みます。

「おぉ~」
「広い~」

 屋根がないと、一気に開放感を感じますね。
 それにこの湯船、ほんとに広い。
 露天風呂に付きものの岩組みなどは、まったく無く……。
 まさしくプールのようです。
 シンプルな作りが、広さをより強調してる感じ。

 見渡す限り、別府の夜景が広がってます。
棚湯から見た別府の夜景

「綺麗ですね~」
「凄いほどの夜景だね」

 昼間は、夜景の代わりに、別府湾が青々と広がります。
棚湯から見た別府湾

 四国愛媛県の佐多岬まで見えるそうです。

 夕景もまた、凄絶だとか。
棚湯から見た夕景

「なんかさ、この世の景色じゃないよね」
「ほんとですね」
「真上を見れば、星空。
 星の光を浴びながら、生まれたまんまの姿で、夜景を見下ろしてるんだよ。
 なんだか昔、こんな夢を見た気がする」
「ほんとに、夢の中にいるみたいですね」
「美弥、つねってみてよ。
 出来れば、乳首を……」
「もう!
 次、行きますよ
「いけずぅ」

 4段目④に進みます。

「いきなり浅くなったね」
「足湯ですね」
「しかしさぁ……。
 足湯ってのは、服着て、足だけ捲って入るもんだろ。
 素っ裸で足湯ってのは、どういうもんかね?」
「確かに……。
 ちょっと、寒いですね」
「次、行こ」

 5段目⑤。

「なんだこれ」
「浅……」

 さっきの足湯より、さらに浅いお湯です。

「うぅ。
 寒くなってきた。
 3段目に帰ろうよ」
棚湯の3,4,5段目
↑棚湯の3,4,5段目

「Mikikoさん。
 暖かそうなのがありますよ。
 わたし、アレに入ろ」

 美弥ちゃんが、ブリブリとお尻を振り立てながら駆けて行った先には……。
 大樽が据えてありました。
「棚湯」樽湯

 掛け流しの湯が、縁から溢れてます。
 美弥ちゃんは、たしなみもなく大股開きで湯の中へ。
 ま、この大樽じゃ、お上品には入れませんわな。
 さっそく、続きましょう。

「ちょっと、Mikikoさん!
 何で同じとこ入って来るんです!
 これって、たぶん一人用ですよ。
 隣も空いてるでしょ」
「2人でも余裕じゃない。
 おぉ~、湯が溢れる。
 アルキメデスは……。
 別府で、『アルキメデスの原理』を発見したんじゃなかろうか?」
『アルキメデスの原理』を発見

「そんなわけないでしょ」
「なんか、こんな樽から首出してると……。
 釜茹でにされる石川五右衛門みたいだね」
釜茹でにされる石川五右衛門

「はは。
 それか……。
 ジャングルに行った探検隊。
 ほら、原住民に掴まって……」
「わはは。
 縄でぐるぐるに縛られて、大鍋に入れられてるシーンだな。
 漫画であったよな。
 うぅ。
 我が身もこれまでか……。
 美弥、今生の別れに、最後にヤラせてくれ!」
「調子にのらない。
 そういう子は、こうしてあげます。
 えいっ」
「ブクブク。
 ぷふぁ。
 こ、殺す気か!
 わたしは水中で呼吸出来ないんだぞ!」
「普通、出来ませんって。
 ちょっと、Mikikoさん、わかった!」
「何だよ、急に。
 何がわかったんだよ?」
「5段目の入り方。
 ほら、あの人たち、見て」

 美弥ちゃんの指指す先には……。
 水死体が……。
 しかも、3体。
 死後、かなり経過してるらしく、ぶくぶくに膨れてます。

「ここって、寝湯ですよ」
「あっ、そうか!
 仰向けになって漬かるお風呂なんだ」

 3体の膨れた死体は、太ったオバサンたちでした。

「わたしも、やろ」
「わたしも!」

 樽から飛び出した美弥ちゃんは、寝湯に滑りこみました。
 はぁ、美しかぁ。
 ミレーのオフィーリアと見紛うばかり。
ミレーのオフィーリア

 水死体のオバハンとは、大違いだよ。
 さっそく、わたしも続きます。

「こりゃ、ええわ」

 泳げないわたしは、水に浮かないんですが……。
 ここなら、背中が底に着いてるから、沈む心配がありません。
 夜景は見えなくなりましたが……。
 代わりに、視界の限りを星空が覆い尽くしてます。
満天の星空

「美弥……。
 何だか、泣きそう……」
「ほんと……」
「この星空を仰げただけで……。
 生まれてきた甲斐があったよ」
「Mikikoさん、わたしを生んでくれてありがとう……。
 って、前にも同じセリフ、言いませんでした?」
「そうだっけ?
 ま、いいじゃん。
 感謝の心は、大切だよ。
 それじゃ、感謝を体で表してちょうだい」
「やっぱり、そのパターン!
 ちょっと、乗ってこないで!
 わたしに力で勝てると思ってるの!
 こうしてやる!」
「ぶくぶくぶく。
 や、やめれー。
 参った、参ったから!」
「これだけ学習しない人ってのも、珍しいと思います」
「一度くらい、いいじゃんよ-。
 一度すれば、気が済むんだから」
「わたしの気が済みません」
「けち。
 あ、美弥、面白い芸、思いついた」
「今度は、何するんです?」
「ワニ地獄の真似。
 どう?」
「ワニ地獄」のワニ

「キモい!
 寝湯で這わないで!」

 美弥ちゃんは、さっさと上がっちゃいました。
 視線を感じて振り返ると……。
 さっきの土左衛門3人組が起きあがり……。
 四つん這いのわたしを、冷たい目で見ていました。
 オバチャンに、ケツの穴まで見られちまったぜ……。

「美弥ちゃん、待って。
 ひとりにしないで~」

 棚湯には、5段の湯船のほかにも、まだまだいろんなお風呂があります。
 さっき入った樽湯もそのひとつ。
 美弥ちゃんは、その樽湯の脇を通って、デッキに据えられた“ほぐし湯”へ。
「棚湯」ほぐし湯

 早い話、ジャグジーですわな。

「これは……。
 一人用じゃないから、一緒に入ってもいいよな?」
「どうぞ」
「気持ちえぇ~」
「全身が、泡になって消えてしまいそう。
 ちょっと、Mikikoさん。
 起きあがって何しようとしてるんです」
「背中でこんな気持ちいいんだから……。
 アソコに当てたら、どんだけいいかと思ってね」
「や・め・な・さいっ!」
「痛い、痛い。
 耳、引っ張らないでって」

 ムリヤリ引きずり上げられちゃいました。

 その隣には、一筋の太い水の柱が……。
 一瞬、龍巻地獄かと思いましたが……。
 お湯の方向が、逆さまです。
 上から下に落ちてます。
 打たせ湯です。
「棚湯」打たせ湯

 美弥ちゃんは、さっそくに打たれてます。
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