2012.3.3(土)
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●3月21日(日)2日目
陽の光で目覚めました。
「Mikikoさん、おはようございます。
こっち来て、外見てくださいよ。
スッゴい青い海」
寝ぼけ眼のまま、美弥ちゃんの立つ窓際まで這って行きます。
「ほんとだ」
見てるのが、太平洋なのか浦戸湾なのか判然としませんが……。
確かに、綺麗な海です。
「あのさ……。
ゆうべ、お風呂で気を失ってからの記憶が無いんだけど」
「ちゃんと体洗ってあげましたよ」
「ぇ”。
そんとき、美弥も裸だったの?」
「当たり前でしょ。
お風呂なんだから」
「なんで起こしてくれないのよ!」
「起こしたら、またヘンなことしようとするでしょ。
洗われながら、大イビキかいてましたよ。
一瞬、脳溢血かって心配になった」
「年寄り扱いすな!
それより、もう一度再現してくれない?
そんな記憶が無いなんて、もったいなすぎる。
お風呂入ろ」
「Mikikoさん。
展望風呂、行きません?」
「でも、きっとジロジロ見られるよ」
「この時間なら、そんなに混んでないでしょ。
お風呂から、海が見たいな」
展望風呂は、3階にあります。
なお、このお風呂、23:00~翌朝6:00は入れません。
このへんも、民間旅館とは違いますね。
ま、サービスが制限されてるからこそ、安く泊まれるわけだけどね。
朝風呂も、6:00~8:30までです。
その後、10:00~15:00までは、日帰り入浴タイム。
それが終わると、16:00~23:00がメインタイム。
日帰り入浴タイム以外の時間は、宿泊者しか入れません。
城跡の高台に建ってるので、3階と言っても眺望抜群です。
窓の外一面に太平洋が広がります。
「すっごーい。
綺麗」
綺麗なのは……。
あなたです……。
ほかの客がいなかったら、間違いなく抱きついてたでしょう。
こんな体を独占してる由美が、憎たらしくなります。
「Mikikoさん、背中流しますよ」
「はい。
すみません」
鏡に映る2人は……。
ビーナスと、ビーナスが飼ってる子猿、のようでした。
さて、気を取り直していきましょぅ。
身支度を調えたら、朝食です。
場所は、夕食と同じく、1階のレストラン「きてみいや」。
朝食時間は、7:00から8:30までです。
オーソドックスな朝食ですね。
この小魚はなんでしょう?
温泉卵は苦手なので、美弥ちゃんにあげます。
さて、朝食が済んだら、9:00過ぎには宿を発ちましょう。
桂浜荘、大満足でした!
「今日は、どこ行くんですか?」
「まずは、お隣から」
桂浜荘の隣には、「高知県立坂本龍馬記念館」が建ってるんです。
開館は、9:00。
この時間に合わせて、桂浜荘を出たってわけね。
「へー。
この建物、宿から見えましたよね。
龍馬記念館だったんですね。
すっごい、斬新なフォルム」
まさに、桂浜荘に隣接してます。
入館料は、500円。
ここも「MY遊バス」の割引が利いて……。
チケットを持ってれば、団体料金の400円で入れます。
きのう入れば、100円得したんですけど……。
残念ながら、17時閉館なので、無理でした。
「MY遊バス」の有効期間は1日だけです。
500円払って、入りましょう。
ところで、今やってる「龍馬伝」って……。
評判はどうなんでしょうね?
わたしは見てないので、よーわかりません。
母も見てないそうです。
1,2度見た感想では……。
「映像が、小汚い」
だそうです。
特に、岩崎弥太郎が汚いとか。
母の目が批判的なのは……。
官軍方のお話だから、ってこともあります。
新潟県は、幕府方だったので……。
未だに、薩長土肥に対して、好感情を持ってない人が多いです。
まぁ、わたしらの年代では、そんなこともありませんがね。
特に、中越の方では……。
北越戦争を指揮した長岡藩家臣、河井継之助の信奉者が多いから、なおさらのようです。
わたしは、そんなに詳しいわけじゃありませんが……。
やっぱり、継之助の最後の逸話は、心に残ってます。
北越戦争で流れ弾を受けた継之助は……。
やがて死期を悟り……。
自らの火葬の支度を命じます。
目の前で、火葬の火を焚かせたそうです。
新潟のお年寄りの前で、嬉々として坂本龍馬の話なんかすると……。
嫌われるかも知れません。
さて、この記念館ですが……。
龍馬が持ってたというピストル(模型)とか、薩長同盟の裏書き(複製)とかが展示されてます。
正直言って、あんまり面白くありません。
これも、わたしが新潟県人だからでしょうか?
展示品より目を引くのは、やっぱり窓から見える太平洋です。
屋上に昇ってみましょう。
「スゴーい」
まさに、絶景かな。
こんな海を見てると……。
お腹の底から、希望が湧いてくる感じがします。
海援隊などと言う発想が生まれたのは、やっぱりこの海を見て育ったからでしょうね。
龍馬が山国に生まれてたら、果たしてあんな足跡が残せたのか……。
この眺めを見て……。
少しだけ、龍馬を理解できた気がします。
龍馬を感じたければ……。
館内の展示物よりも、窓の外を見るべし、ですね。
さて、あっという間に10:00を回っちゃいました。
龍馬記念館前、10:16発の高知県交通バスに乗ります。
高知駅前着、10:52です。
わずか36分の乗車でしたが……。
高か!
700円も取られました。
新潟交通のバスだったら、たぶん半額ですよ。
これなら、昨日の「MY遊バス」利用は、大正解だったでしょうね。
さて、高知駅に着きましたが……。
お目当ての「南風3号」の発車は……。
11:34です。
40分ちょっと、間があります。
今日も、「南風3号」に乗った後は……。
お昼を食べる時間を、取れそうにないんです。
といっても、駅の外に出てお昼を摂るには、ちょっと短い。
なので、駅弁を買って、「南風3号」の中で食べることにします。
今日は、朝食をしっかりといただいてきたので……。
お腹が空きません。
ということで、「特製よさこい弁当(1,050円)」を、1つだけ買うことにしました。
車中で、仲良く食べましょう。
わたしのバッグには、ちゃーんと割り箸が入ってますから。
旅行には、割り箸を2,3膳持ってくと、何かと役に立つことがあるんです。
さて、高知駅を出た「南風3号」は、土讃線を一路西へ。
お腹が空かないつもりだったけど……。
いざお弁当が膝の上にあると、ちゃんと減るもんですね。
早いこと食べてしまわないと、1個では足りなくなりそうです。
さっそく開きましょう。
「うわー。
綺麗なお弁当」
まぁ、普通の幕の内弁当ですが……。
いろんなオカズが細々と盛りつけられてて……。
2人でつつくには、最適でした。
でも、通路を挟んだ席で、小学生が食べてた……。
「アンパンマン弁当(1,050円。高か!)」が、大いに気になりました。
赤いウィンナーが美味しそう……。
土讃線は、高知駅を出た後、しばらくは内陸を走ります。
日高村を経て、牧野富太郎博士が生まれた佐川町に入ると、進路を真南に変え……。
須崎市で海に出ます。
でも、海沿いに走るのもわずかな間。
焼坂峠に穿たれたトンネルを入ると、山の中へ。
中土佐町で、わずかに久礼湾が望めますが……。
その後は、小さなトンネルを出たり入ったり。
電車はまるで、山裾の布団を縫う縫い針のようです。
最後に長いトンネルを抜けると、四万十町。
土讃線の終点は、四万十町の窪川ですが……。
「南風3号」は、走り続けます。
窪川からは、土佐くろしお鉄道に乗り入れるんです。
この路線は、中村・宿毛線と云います。
「阿佐線=ごめん・なはり線」のような愛称は付いてないようです。
さて、土佐くろしお鉄道に乗り入れてから36分、高知駅を出てからは、1時間50分で……。
「南風3号」は四万十市にある中村駅に到着。
ここで降ります。
なお、土佐くろしお鉄道に乗り入れた窪川駅があったのは、高岡郡四万十町。
平成18年(2006年)、高岡郡窪川町と幡多郡大正町・十和村が合併して出来た町です。
そして、ここ中村駅のあるのは、四万十市。
平成17年(2005年)、中村市と幡多郡西土佐村が合併して出来た町。
別の自治体です。
上流部が四万十町、中流から河口にかけてが、四万十市。
やっぱ、四万十川の名称は、全国的に知られてますから……。
どちらも、新しい自治体名として、四万十を名乗りたかったんでしょうね。
実は、新潟県にも、阿賀野川流域で同じような例があるんです。
また、ちょっと脱線しますが……。
阿賀野川流域にあるのは……。
東蒲原郡阿賀町と、阿賀野市。
阿賀町は、平成17年(2005年)、東蒲原郡の津川町、鹿瀬町、三川村、上川村が合併して出来ました。
東蒲原郡の全町村が合併したんです。
したがって、東蒲原郡には、阿賀町しかなくなりました。
面積は、952.88平方キロもあります。
東京23区を合計した面積が、621平方キロですからね。
その1.5倍ってことです。
4町村が合併して、それだけの広さになったのに……。
まだ「町」ってのが、逆にスゴいですね。
いかに人がいないかってことです。
人口は、1万3千人。
東京23区の1.5倍の面積に、1万3千人しか住んでないんです。
ちなみに東京23区の人口は、880万人です。
対する阿賀野市は、平成16年(2004年)に、北蒲原郡の安田町、水原町、京ヶ瀬村、笹神村が合併して出来ました。
面積は、192.72平方キロ。
でも、人口は4万5千人いるので、市になってます。
ところで、阿賀野川という名前ですが……。
四万十川に比べると、全国的にはポピュラーじゃないかも知れません。
「阿賀に生きる」という、水俣病のドキュメンタリー映画で、少し知られてるくらいかな。
でも、デカい川なんですよ。
全長は、日本第10位、流域面積は日本第8位。
河口近くの川幅は、1キロもあります。
雪解け水を湛えたころの迫力は、足が竦むほどです。
さて、だいぶ脱線しちゃいました。
話を、戻しましょう。
わたしたちは、「南風3号」を中村で降りたわけですが……。
そのまま乗ってれば、フェリーの出る宿毛まで行くんです。
宿毛着が、14:00。
15:00発のフェリーに、いい具合に接続します。
宿毛から佐伯に向かうフェーリーは、1日3便しかありません。
従って、旅程はこのフェリーへの接続から逆算して作らないといけません。
まず、23:30発ですが、これは論外です。
真っ暗な豊後水道を渡っても、意味がありません。
そんな時間まで、起きてられないし。
「やさし過ぎるわ春の海♪」のイメージからいくと、午後の便が一番合ってるんですよね。
なので当初は、15:00発の方向で旅程を考えたんです。
でも、それだと……。
佐伯着が、18:10。
その時間から、また電車に乗ったりするのは難儀なので……。
その夜は佐伯泊まりということになります。
で、この佐伯という町なんですが……。
正直、食指を動かされる宿が無いんです。
ビジネスホテルみたいのばっかしで。
温泉も無いし。
てことで、佐伯に泊まるのは止め。
となると、フェリーは朝7:00の便しかなくなります。
そんな時間のフェリーに乗るためには……。
宿毛に泊まるしかありません。
さて、宿毛に泊まるにしても、14:00に着いてしまっては早すぎるので……。
途中で、寄り道をすることにしたんです。
というわけで、中村で下車。
中村駅前から、13:42発の高知西南交通バスに乗車します。
あっという間に、目的地の甲ヶ峰停留所着。
13:50です。
乗車時間は、わずかに8分。
なのに、バス代は300円です。
高知って、なんでこんなにバスが高いんですかね?
新潟なら、この程度の乗車時間だと、200円ですよ。
さて、ここで何をするかというと……。
最後の清流と云われる四万十川を、満喫したいと思うんです。
と言ってももちろん……。
春浅い3月じゃ、泳ぐわけにはいきません。
ま、わたしの場合、たとえ夏でも泳げませんが。
カナヅチですからね。
今日は、屋形船に乗ります。
ライフジャケットも付けないようだし……。
正直、泳げない身の上では、怖い気もしますが……。
いざとなったら、美弥ちゃんにしがみつくつもり。
大きな浮き袋を2つ胸に持つ美弥ちゃんなら、浮いてくれるでしょう。
運営してるのは、四万十川観光開発という会社。
乗船場は、山路というところで、ここを出て、50分で元の場所に戻ってきます。
10人以上の団体さんであれば、100分コースもあります。
でも、この季節、50分で十分ですね。
100分も乗ったら、冷えてトイレに行きたくなっちゃうに違いありません。
事前に予約すれば、お弁当も用意してもらえます。
わたしたちみたいに乗船だけの場合は、予約無しで乗れます。
屋形船は、9:30~16:30まで、1時間間隔で運航されてます。
わたしたちが乗るのは、14:30の便。
さて、出発進行。
空の青、河畔林の緑、そして水の青。
日本の春が、目に染みるようです。
屋形船が速度を緩めました。
すぐ近くに、小舟が浮かんでます。
タオル鉢巻きをしたおじさんが、舳先に立ってます。
「お~」
船内からは、歓声が……。
おじさんが、網を打ったんですね。
空中に投げられた網が、水面をつかむように広がりました。
投網漁です。
屋形船からは、投網漁や柴漬漁など、伝統漁法を見学できるんです。
四万十川の下流は、海水と淡水の混ざる汽水域です。
きっと魚も豊富なんでしょうね。
昔の人は、こういう漁で生計を立ててたんでしょうかね。
四万十川で網を打って暮らせるなんて、幸せだったろうな。
わたしが男だったら……。
そんな暮らしで一生を送るのもいいかも……。
さて、15:20分、無事山路まで戻り着きました。
帰りのバスは、16:15発ですので、小一時間ほど間があります。
船乗場にある「アカメ館」に入ってみましょう。
レストランや土産物売場があります。
「四万十川天然青のり(650円)」ってのを、母に買って帰ることにしました。
天然青のりの国内生産量では、四万十川産が90%を占めるそうです。
天然青のりは、清流の汽水域でしか採れません。
汽水域が9キロも続く四万十川は、まさに青のりの宝庫なんですね。
それでは、時間になりました。
16:15、甲ヶ峰を発ちます。
16:25、中村駅着。
行きが8分だったのに、帰りが10分なのは、なぜだかわかりません。
料金は、同じ300円です。
さて普通なら、中村駅から、土佐くろしお鉄道で宿毛に行きたいところですが……。
よい接続の電車がありません。
一番早い電車で、17:32。
1時間も待たなきゃなりません。
なので、バスにします。
中村駅から、宿毛行きのバスが出てるんです。
同じく、高知西南交通バス。
中村駅発、16:49です。
わたしは、路線バスが大好きなので……。
電車とバスを選べるなら、断然バスにします。
今回は、接続もいいし、着時刻もバスが17分早いので……。
迷うことなく、バスです。
さて、中村駅前を出たバスは、一路宿毛へ。
でも、さすがにこの時間に乗ると……。
ね、眠い。
3月の夕暮れどき……。
ヒーターの熱が、足元を暖めてくれます。
心地よい振動に揺られていると……。
もう、睡魔にあらがうことはできません。
でも、居眠り前にもうひと仕事。
今夜の宿に、電話をかけます。
もちろん、宿泊予約はしてありますが……。
宿毛駅への到着時間を連絡すれば、迎えの車が来てくれるんです。
宿毛駅着は、17:45分。
バスで着くお客は、たぶんわたしたちだけでしょうが……。
宿の人は、快く迎えを了解してくれました。
さて、あとはもう……。
美弥ちゃんの肩にもたれて、心地よい春の眠りを貪りましょう。
「Zz……、Zzz……」
「Mikikoさん。
着きましたよ」
「う~ん。
もう着いたの?」
宿毛駅着、17:45。
56分の乗車で、料金は1,100円。
……、高いよね?
さて、宿の送迎車には、バスとワゴンがあるようですが……。
やっぱり、このバスで着くのはわたしたちだけだったようです。
当然のことながら、わたしたちを待ってたのは、年季の入ったワゴンでした。
さてさて、わたしたち2人だけを乗せたワゴンは、一路、本日のお宿へ。
今日の宿は、大島という島にあります。
大島と名は付いてますが……。
小島です。
しかも、橋が架かり、道路がつながってます。
さて、宿毛駅からは、約10分。
送迎ワゴンは、今夜のお宿に着きました。
お宿の名は……。
「国民宿舎 椰子」!
そう、国民宿舎の連泊です。
桂浜荘と同じく、ここも高台に建ち……。
なかなかの偉容ですね。
荷物を下ろしたら、もう18:00。
ここのレストランの夕食時間も、18:00~20:30です。
今日も、お風呂は後にして、先に夕食をいただきましょう。
なにしろ、コース料理を予約してあるんで……。
フランス料理、フルコ~スですよ。
値段は、3,150円~8,400円となってました。
いくらなんでも、3,150円のフルコースってのもね。
と言って、8,400円じゃ、部屋代より高くなっちゃいます。
中を取りましょう。
6,300円。
はたして、6,300円のコースがあるか、わかりませんが……。
予約するときに、6,300円でお願いしますって言えばいいんでしょうか?
よくわかりません。
実際に行く方は、ちゃんと確認してください。
実は、コース料理ってのは、わたしの性分に合ってるんです。
つまり、ひとつずつ、お皿を片づけていくって食べ方ね。
わたしは、毎日の夕食でも、これをやります。
もちろん、夕食が、コース料理のわけはありません。
お皿は最初から並んでます。
でも、目の前の皿から、ひとつずつ空にしていくんです。
日本の作法では、こういう食べ方はお行儀が悪いってことになってます。
母にも、あっちを食べたり、こっちを食べたりしなさいと、子供のころから言われ続けました。
子供のころは……。
しかたなしに言うことを聞いてましたが……。
今はもう、好きなように食べさせてもらってます。
毎月家計費を、8万円も入れてるんですからね。
子供のころとは、力関係が違います。
母も、もう何も言いません。
自分でも、何でこんな食べ方になるんだろうと考えてみましたが……。
持って生まれた性分としか考えられません。
仕事でも、ひとつひとつ片づけて行くのが好きだし……。
それに、いろんな食べ物の味が混ざるのが嫌いなんです。
全体が統一の取れてるメニューなら、チャンポンで食べてもいいんでしょうけどね。
母の料理の場合、和洋ごちゃ混ぜで出てきます。
シチューとおでんが、並んでたりする。
これをチャンポンに食べれるという人の方が、わたしには不思議です。
てなわけで……。
コース料理は、ほんとに食べてて気持ちがいいんです。
ひとつひとつ、確実にクリアしていくっていう、達成感がありますよね。
言い忘れましたが……。
さっきのお値段には、飲み物は含まれてません。
ワインは別料金。
もちろん、赤ワインを頼みます。
魚だろうが肉だろうが、わたしは赤ワインです。
赤でさえあれば、銘柄や値段にはこだわりません。
ていうか、わからないんです。
赤しか飲まない理由は……。
白が飲めないってだけ。
まぁ、飲もうと思えば飲み込めますけど……。
あの味はダメですね。
お酢を飲んでるとしか思えません。
さて、大満足のうちに……。
コース料理も終了しました。
お部屋に戻りましょう。
今夜のお部屋は、洋室です。
残念ながら、ダブルはなく、ツインのみ。
もちろん、風呂付きの和室もありますが……。
満室で予約できませんでした(泣)。
洋室には、お風呂は付いてません。
「お風呂のある部屋、取れなくてゴメンね」
「大丈夫ですよ。
今朝、桂浜荘で入ったから、慣れました。
それにやっぱり、広いお風呂は気持ちがいいですよ」
「わたしは、狭いお風呂が良かった……」
「何か言いました?」
椰子の展望風呂も、1階にあります。
高台にあるので、1階でも展望風呂。
でも夜なので、外は真っ暗。
宿毛湾は見えませんね。
お風呂での美弥ちゃんは、もう堂々としたもの。
目が合った女性客のほうが、どぎまぎして下を向いちゃった。
「しっかり、前だけは隠してるな。
オカマと間違われる恐れがあるからな」
「もう!
普段は、そんなに大きくないの!
それに、前を隠すのは、最低限のエチケットでしょ」
「そうなの?」
「そうです!
Mikikoさんも、隠してください」
「そんなぁ。
大手を振って、全裸で闊歩するのが、大浴場の醍醐味じゃないかぁ」
「そんな醍醐味は知りません。
ほら、もう上がりますよ」
「まだ、洗ってないよ」
「今まで、何してたんです?」
「美弥のこと、見てた」
「もう!
先に上がってますからね」
「いけずぅ」
美弥ちゃんは、さっさと出ちゃいました。
大慌てで洗って後を追いましたが、もう脱衣所にもいません。
案外、マイペースな女だね。
まぁ、わたしもそうなんだけど。
部屋に戻ると……。
美弥ちゃんはもう、ベッドに入ってました。
「ちょっと!
もう寝ちゃうわけ?」
「だって、明日は早いんでしょ」
「そりゃそうだけど……」
明日は、7:00のフェリーに乗らなきゃなりません。
「そんなに寝たいんだ……。
まぁ、気持ちは、わかるけど……」
「ちょっと、Mikikoさん!
何でわたしのベッド入ってくるんです!
隣に、自分のがあるでしょ!」
「バカじゃないんだから、そんなことわかってるよ。
ふっふっふ。
ゆうべのカタキじゃ。
観念せい!」
「また、お尻ぶたれたいの?」
「それもいいが、今日は失神しないぞ」
「そんなら今日は……。
くすぐり攻撃!
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ」
「あひゃ。
あひゃっ。
あひゃあひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
「参ったか!」
「ひぃぃぃぃぃぃ。
なぜに、わたしの弱点をぉぉぉぉ……」
「Mikikoさんが生みだした分身なんですからね。
作者のことは、よ~くわかってます。
そ~れ、トドメじゃ。
ほらほらほらほら」
「や、やめれ。
あひ。
あひ、あひ、あひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。
あが、がががが。
ぴぎ」
わたしの意識は、消し飛びました……。
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●3月22日(月)3日目
「Mikikoさん、Mikikoさん」
体を揺さぶられて目が醒めました。
「もう、6時になりますよ。
お風呂、行きましょう」
体を引き起こされました。
もう、窓からは、朝の光が……。
「あ、朝、なの……?」
「そうですよ」
またしても、何もできんかった……。
「7時のフェリーに乗らなきゃならないんでしょ。
お風呂入ってから、行きましょうよ」
「わたしは、いい……。
もう一眠りするから、美弥ひとりで行ってきて」
「一緒に行ってくださいよぉ。
桂浜荘みたいに、お風呂の窓から海が見たいんです」
「ひとりで行けるでしょ」
「Mikikoさんがそばにいないと……。
やっぱり不安です」
「ほー。
そんなわたしを、ゆうべはくすぐり責めにしたわけだな」
「だって……」
美人に甘えられると、イヤとは言えんのぅ。
重い腰を上げましょう。
ここのお風呂も、いつでも入れるってわけじゃありません。
15:00~23:00までと、6:00~8:30までです。
朝の今は、お風呂が開いたばっかり。
やっぱり、朝風呂は気持ちがいい。
窓からは、宿毛湾が一望できます。
今日は、ここを船で渡っていくのかと思うと……。
楽しさの予感で、うんちが漏れそうです。
「Mikikoさん、もう上がりますよ」
「ちょっと。
入ったばっかりでしょ」
「もう6時半なりますよ。
7時のフェリーに乗るんでしょ」
「そうだった」
なにしろ、今日のフェリーに乗るために、高知行きを思い立ったんです。
これに乗り遅れたりしたら、何しに来たのかわかりません。
「Mikikoさん。
お風呂、付き合ってくれて、ありがとう」
美弥ちゃんが、人目の途絶えた脱衣場で、わたしの手を取りました。
その手を、自らの胸元へ……。
手の平が、丸々とした乳房に触れました。
「み、美弥。
やっとその気になってくれたの?
ここでいいから、やろう!」
「調子に乗らない!
早く、服着ましょうね」
これじゃ、生殺しじゃ……。
でも……。
明日への希望が湧いてきた。
よし、今夜こそ!
急いで身支度を済ませ、フロントへ。
もちろん、朝食は食べられません。
朝食は、7:00からなんです。
その代わり……。
フェリーに乗ってから食べれるように……。
おにぎりを握っててもらえるよう、夕べのうちに頼んでおきました。
どうやらフェリーには、食事の取れる設備が無いみたいなんで……。
精算を済ませると、おにぎりの包みを受け取り、大慌てで外へ。
エントランスを出ると、きのう迎えに来てくれたワゴンが横付けされてます。
わたしたちを、フェリー乗り場まで送って下さるんですね。
わがままばっかり言って、ごめんなさい。
やっぱ、美人は得だわ。
フェリー乗り場は、宿毛駅よりもずっと近くにあります。
5分ほどで、着きました。
宿の方に深々と頭を下げ、ワゴンを見送る間もなく、フェリーに駆け込みます。
「ふぅ~。
間に合った」
「ぎりぎりでしたね」
「美弥が、お風呂入るなんて言うからだぞ。
焦ったから、また汗掻いちゃったじゃないか」
「だって、気に入っちゃったんだもん。
展望風呂」
「ま、いっか。
時間めいっぱい楽しむってのが、この旅行のテーマだから」
「テーマなんてあったんですか?」
「今、思いついた」
「いい加減なんだから」
「とりあえず、部屋に落ち着いて、お弁当食べよう」
「どこです?
わたしたちのお部屋」
「2階だよ」
「スイート?]
「そんな部屋は無いの。
ファミリー室」
あるのは、一等と二等、それにファミリー室です。
宿毛フェリーのホームページにある旅客運賃表を下に掲げます。
さて、ファミリー室を予約した場合、いったい2人でいくらかかるのでしょう?
船に乗り慣れてる人は、この表でわかるんでしょうかね?
わたしは、しばし悩みました。
「室料」っていうからには、1室あたりの料金だよね。
何人で使おうが、変わらないはず。
てことは、2人でも5,000円。
これだけ払えば、乗れるの?
そんなわけ、ないよね。
それじゃ、1人あたり2,500円だから、二等運賃と一緒になっちゃいます。
たぶんですが……。
ファミリー室を使う場合でも、1人ずつに二等運賃がかかるんじゃないでしょうか?
つまり、2人でファミリー室を使う場合は……。
2,500円×2+5,000円=10,000円、ってことだと思います。
違う!という情報をお持ちの方は、ぜひ教えてください。
でも、ほんとに↑の料金表だけで、船に乗ったことのない人でも、わかるもんなんですかね?
わたしが、よっぽどバカなんだろうか……。
わたしがこの料金表を作るとしたら……。
基本運賃 1人2,500円
二等 基本運賃+0円
一等 基本運賃+1,000円
ファミリー室 利用人数分の基本運賃+ファミリー室料5,000円
という感じになるでしょうか。
これなら、船に詳しくない人でも、わかるんじゃないかな。
たぶん、ホームページは、制作会社に外注してると思うんだけど……。
制作会社は、受け取った資料を、そのまま載せてるんだと思う。
宿毛フェリーの関係者にとっては、運賃表の読み方なんか、あたりまえのことだから……。
素人にはわかりづらいことに、気づかないってことじゃないでしょうか。
この先は……。
「大分に行こう!」に続きます。
●3月21日(日)2日目
陽の光で目覚めました。
「Mikikoさん、おはようございます。
こっち来て、外見てくださいよ。
スッゴい青い海」
寝ぼけ眼のまま、美弥ちゃんの立つ窓際まで這って行きます。
「ほんとだ」
見てるのが、太平洋なのか浦戸湾なのか判然としませんが……。
確かに、綺麗な海です。
「あのさ……。
ゆうべ、お風呂で気を失ってからの記憶が無いんだけど」
「ちゃんと体洗ってあげましたよ」
「ぇ”。
そんとき、美弥も裸だったの?」
「当たり前でしょ。
お風呂なんだから」
「なんで起こしてくれないのよ!」
「起こしたら、またヘンなことしようとするでしょ。
洗われながら、大イビキかいてましたよ。
一瞬、脳溢血かって心配になった」
「年寄り扱いすな!
それより、もう一度再現してくれない?
そんな記憶が無いなんて、もったいなすぎる。
お風呂入ろ」
「Mikikoさん。
展望風呂、行きません?」
「でも、きっとジロジロ見られるよ」
「この時間なら、そんなに混んでないでしょ。
お風呂から、海が見たいな」
展望風呂は、3階にあります。
なお、このお風呂、23:00~翌朝6:00は入れません。
このへんも、民間旅館とは違いますね。
ま、サービスが制限されてるからこそ、安く泊まれるわけだけどね。
朝風呂も、6:00~8:30までです。
その後、10:00~15:00までは、日帰り入浴タイム。
それが終わると、16:00~23:00がメインタイム。
日帰り入浴タイム以外の時間は、宿泊者しか入れません。
城跡の高台に建ってるので、3階と言っても眺望抜群です。
窓の外一面に太平洋が広がります。
「すっごーい。
綺麗」
綺麗なのは……。
あなたです……。
ほかの客がいなかったら、間違いなく抱きついてたでしょう。
こんな体を独占してる由美が、憎たらしくなります。
「Mikikoさん、背中流しますよ」
「はい。
すみません」
鏡に映る2人は……。
ビーナスと、ビーナスが飼ってる子猿、のようでした。
さて、気を取り直していきましょぅ。
身支度を調えたら、朝食です。
場所は、夕食と同じく、1階のレストラン「きてみいや」。
朝食時間は、7:00から8:30までです。
オーソドックスな朝食ですね。
この小魚はなんでしょう?
温泉卵は苦手なので、美弥ちゃんにあげます。
さて、朝食が済んだら、9:00過ぎには宿を発ちましょう。
桂浜荘、大満足でした!
「今日は、どこ行くんですか?」
「まずは、お隣から」
桂浜荘の隣には、「高知県立坂本龍馬記念館」が建ってるんです。
開館は、9:00。
この時間に合わせて、桂浜荘を出たってわけね。
「へー。
この建物、宿から見えましたよね。
龍馬記念館だったんですね。
すっごい、斬新なフォルム」
まさに、桂浜荘に隣接してます。
入館料は、500円。
ここも「MY遊バス」の割引が利いて……。
チケットを持ってれば、団体料金の400円で入れます。
きのう入れば、100円得したんですけど……。
残念ながら、17時閉館なので、無理でした。
「MY遊バス」の有効期間は1日だけです。
500円払って、入りましょう。
ところで、今やってる「龍馬伝」って……。
評判はどうなんでしょうね?
わたしは見てないので、よーわかりません。
母も見てないそうです。
1,2度見た感想では……。
「映像が、小汚い」
だそうです。
特に、岩崎弥太郎が汚いとか。
母の目が批判的なのは……。
官軍方のお話だから、ってこともあります。
新潟県は、幕府方だったので……。
未だに、薩長土肥に対して、好感情を持ってない人が多いです。
まぁ、わたしらの年代では、そんなこともありませんがね。
特に、中越の方では……。
北越戦争を指揮した長岡藩家臣、河井継之助の信奉者が多いから、なおさらのようです。
わたしは、そんなに詳しいわけじゃありませんが……。
やっぱり、継之助の最後の逸話は、心に残ってます。
北越戦争で流れ弾を受けた継之助は……。
やがて死期を悟り……。
自らの火葬の支度を命じます。
目の前で、火葬の火を焚かせたそうです。
新潟のお年寄りの前で、嬉々として坂本龍馬の話なんかすると……。
嫌われるかも知れません。
さて、この記念館ですが……。
龍馬が持ってたというピストル(模型)とか、薩長同盟の裏書き(複製)とかが展示されてます。
正直言って、あんまり面白くありません。
これも、わたしが新潟県人だからでしょうか?
展示品より目を引くのは、やっぱり窓から見える太平洋です。
屋上に昇ってみましょう。
「スゴーい」
まさに、絶景かな。
こんな海を見てると……。
お腹の底から、希望が湧いてくる感じがします。
海援隊などと言う発想が生まれたのは、やっぱりこの海を見て育ったからでしょうね。
龍馬が山国に生まれてたら、果たしてあんな足跡が残せたのか……。
この眺めを見て……。
少しだけ、龍馬を理解できた気がします。
龍馬を感じたければ……。
館内の展示物よりも、窓の外を見るべし、ですね。
さて、あっという間に10:00を回っちゃいました。
龍馬記念館前、10:16発の高知県交通バスに乗ります。
高知駅前着、10:52です。
わずか36分の乗車でしたが……。
高か!
700円も取られました。
新潟交通のバスだったら、たぶん半額ですよ。
これなら、昨日の「MY遊バス」利用は、大正解だったでしょうね。
さて、高知駅に着きましたが……。
お目当ての「南風3号」の発車は……。
11:34です。
40分ちょっと、間があります。
今日も、「南風3号」に乗った後は……。
お昼を食べる時間を、取れそうにないんです。
といっても、駅の外に出てお昼を摂るには、ちょっと短い。
なので、駅弁を買って、「南風3号」の中で食べることにします。
今日は、朝食をしっかりといただいてきたので……。
お腹が空きません。
ということで、「特製よさこい弁当(1,050円)」を、1つだけ買うことにしました。
車中で、仲良く食べましょう。
わたしのバッグには、ちゃーんと割り箸が入ってますから。
旅行には、割り箸を2,3膳持ってくと、何かと役に立つことがあるんです。
さて、高知駅を出た「南風3号」は、土讃線を一路西へ。
お腹が空かないつもりだったけど……。
いざお弁当が膝の上にあると、ちゃんと減るもんですね。
早いこと食べてしまわないと、1個では足りなくなりそうです。
さっそく開きましょう。
「うわー。
綺麗なお弁当」
まぁ、普通の幕の内弁当ですが……。
いろんなオカズが細々と盛りつけられてて……。
2人でつつくには、最適でした。
でも、通路を挟んだ席で、小学生が食べてた……。
「アンパンマン弁当(1,050円。高か!)」が、大いに気になりました。
赤いウィンナーが美味しそう……。
土讃線は、高知駅を出た後、しばらくは内陸を走ります。
日高村を経て、牧野富太郎博士が生まれた佐川町に入ると、進路を真南に変え……。
須崎市で海に出ます。
でも、海沿いに走るのもわずかな間。
焼坂峠に穿たれたトンネルを入ると、山の中へ。
中土佐町で、わずかに久礼湾が望めますが……。
その後は、小さなトンネルを出たり入ったり。
電車はまるで、山裾の布団を縫う縫い針のようです。
最後に長いトンネルを抜けると、四万十町。
土讃線の終点は、四万十町の窪川ですが……。
「南風3号」は、走り続けます。
窪川からは、土佐くろしお鉄道に乗り入れるんです。
この路線は、中村・宿毛線と云います。
「阿佐線=ごめん・なはり線」のような愛称は付いてないようです。
さて、土佐くろしお鉄道に乗り入れてから36分、高知駅を出てからは、1時間50分で……。
「南風3号」は四万十市にある中村駅に到着。
ここで降ります。
なお、土佐くろしお鉄道に乗り入れた窪川駅があったのは、高岡郡四万十町。
平成18年(2006年)、高岡郡窪川町と幡多郡大正町・十和村が合併して出来た町です。
そして、ここ中村駅のあるのは、四万十市。
平成17年(2005年)、中村市と幡多郡西土佐村が合併して出来た町。
別の自治体です。
上流部が四万十町、中流から河口にかけてが、四万十市。
やっぱ、四万十川の名称は、全国的に知られてますから……。
どちらも、新しい自治体名として、四万十を名乗りたかったんでしょうね。
実は、新潟県にも、阿賀野川流域で同じような例があるんです。
また、ちょっと脱線しますが……。
阿賀野川流域にあるのは……。
東蒲原郡阿賀町と、阿賀野市。
阿賀町は、平成17年(2005年)、東蒲原郡の津川町、鹿瀬町、三川村、上川村が合併して出来ました。
東蒲原郡の全町村が合併したんです。
したがって、東蒲原郡には、阿賀町しかなくなりました。
面積は、952.88平方キロもあります。
東京23区を合計した面積が、621平方キロですからね。
その1.5倍ってことです。
4町村が合併して、それだけの広さになったのに……。
まだ「町」ってのが、逆にスゴいですね。
いかに人がいないかってことです。
人口は、1万3千人。
東京23区の1.5倍の面積に、1万3千人しか住んでないんです。
ちなみに東京23区の人口は、880万人です。
対する阿賀野市は、平成16年(2004年)に、北蒲原郡の安田町、水原町、京ヶ瀬村、笹神村が合併して出来ました。
面積は、192.72平方キロ。
でも、人口は4万5千人いるので、市になってます。
ところで、阿賀野川という名前ですが……。
四万十川に比べると、全国的にはポピュラーじゃないかも知れません。
「阿賀に生きる」という、水俣病のドキュメンタリー映画で、少し知られてるくらいかな。
でも、デカい川なんですよ。
全長は、日本第10位、流域面積は日本第8位。
河口近くの川幅は、1キロもあります。
雪解け水を湛えたころの迫力は、足が竦むほどです。
さて、だいぶ脱線しちゃいました。
話を、戻しましょう。
わたしたちは、「南風3号」を中村で降りたわけですが……。
そのまま乗ってれば、フェリーの出る宿毛まで行くんです。
宿毛着が、14:00。
15:00発のフェリーに、いい具合に接続します。
宿毛から佐伯に向かうフェーリーは、1日3便しかありません。
従って、旅程はこのフェリーへの接続から逆算して作らないといけません。
まず、23:30発ですが、これは論外です。
真っ暗な豊後水道を渡っても、意味がありません。
そんな時間まで、起きてられないし。
「やさし過ぎるわ春の海♪」のイメージからいくと、午後の便が一番合ってるんですよね。
なので当初は、15:00発の方向で旅程を考えたんです。
でも、それだと……。
佐伯着が、18:10。
その時間から、また電車に乗ったりするのは難儀なので……。
その夜は佐伯泊まりということになります。
で、この佐伯という町なんですが……。
正直、食指を動かされる宿が無いんです。
ビジネスホテルみたいのばっかしで。
温泉も無いし。
てことで、佐伯に泊まるのは止め。
となると、フェリーは朝7:00の便しかなくなります。
そんな時間のフェリーに乗るためには……。
宿毛に泊まるしかありません。
さて、宿毛に泊まるにしても、14:00に着いてしまっては早すぎるので……。
途中で、寄り道をすることにしたんです。
というわけで、中村で下車。
中村駅前から、13:42発の高知西南交通バスに乗車します。
あっという間に、目的地の甲ヶ峰停留所着。
13:50です。
乗車時間は、わずかに8分。
なのに、バス代は300円です。
高知って、なんでこんなにバスが高いんですかね?
新潟なら、この程度の乗車時間だと、200円ですよ。
さて、ここで何をするかというと……。
最後の清流と云われる四万十川を、満喫したいと思うんです。
と言ってももちろん……。
春浅い3月じゃ、泳ぐわけにはいきません。
ま、わたしの場合、たとえ夏でも泳げませんが。
カナヅチですからね。
今日は、屋形船に乗ります。
ライフジャケットも付けないようだし……。
正直、泳げない身の上では、怖い気もしますが……。
いざとなったら、美弥ちゃんにしがみつくつもり。
大きな浮き袋を2つ胸に持つ美弥ちゃんなら、浮いてくれるでしょう。
運営してるのは、四万十川観光開発という会社。
乗船場は、山路というところで、ここを出て、50分で元の場所に戻ってきます。
10人以上の団体さんであれば、100分コースもあります。
でも、この季節、50分で十分ですね。
100分も乗ったら、冷えてトイレに行きたくなっちゃうに違いありません。
事前に予約すれば、お弁当も用意してもらえます。
わたしたちみたいに乗船だけの場合は、予約無しで乗れます。
屋形船は、9:30~16:30まで、1時間間隔で運航されてます。
わたしたちが乗るのは、14:30の便。
さて、出発進行。
空の青、河畔林の緑、そして水の青。
日本の春が、目に染みるようです。
屋形船が速度を緩めました。
すぐ近くに、小舟が浮かんでます。
タオル鉢巻きをしたおじさんが、舳先に立ってます。
「お~」
船内からは、歓声が……。
おじさんが、網を打ったんですね。
空中に投げられた網が、水面をつかむように広がりました。
投網漁です。
屋形船からは、投網漁や柴漬漁など、伝統漁法を見学できるんです。
四万十川の下流は、海水と淡水の混ざる汽水域です。
きっと魚も豊富なんでしょうね。
昔の人は、こういう漁で生計を立ててたんでしょうかね。
四万十川で網を打って暮らせるなんて、幸せだったろうな。
わたしが男だったら……。
そんな暮らしで一生を送るのもいいかも……。
さて、15:20分、無事山路まで戻り着きました。
帰りのバスは、16:15発ですので、小一時間ほど間があります。
船乗場にある「アカメ館」に入ってみましょう。
レストランや土産物売場があります。
「四万十川天然青のり(650円)」ってのを、母に買って帰ることにしました。
天然青のりの国内生産量では、四万十川産が90%を占めるそうです。
天然青のりは、清流の汽水域でしか採れません。
汽水域が9キロも続く四万十川は、まさに青のりの宝庫なんですね。
それでは、時間になりました。
16:15、甲ヶ峰を発ちます。
16:25、中村駅着。
行きが8分だったのに、帰りが10分なのは、なぜだかわかりません。
料金は、同じ300円です。
さて普通なら、中村駅から、土佐くろしお鉄道で宿毛に行きたいところですが……。
よい接続の電車がありません。
一番早い電車で、17:32。
1時間も待たなきゃなりません。
なので、バスにします。
中村駅から、宿毛行きのバスが出てるんです。
同じく、高知西南交通バス。
中村駅発、16:49です。
わたしは、路線バスが大好きなので……。
電車とバスを選べるなら、断然バスにします。
今回は、接続もいいし、着時刻もバスが17分早いので……。
迷うことなく、バスです。
さて、中村駅前を出たバスは、一路宿毛へ。
でも、さすがにこの時間に乗ると……。
ね、眠い。
3月の夕暮れどき……。
ヒーターの熱が、足元を暖めてくれます。
心地よい振動に揺られていると……。
もう、睡魔にあらがうことはできません。
でも、居眠り前にもうひと仕事。
今夜の宿に、電話をかけます。
もちろん、宿泊予約はしてありますが……。
宿毛駅への到着時間を連絡すれば、迎えの車が来てくれるんです。
宿毛駅着は、17:45分。
バスで着くお客は、たぶんわたしたちだけでしょうが……。
宿の人は、快く迎えを了解してくれました。
さて、あとはもう……。
美弥ちゃんの肩にもたれて、心地よい春の眠りを貪りましょう。
「Zz……、Zzz……」
「Mikikoさん。
着きましたよ」
「う~ん。
もう着いたの?」
宿毛駅着、17:45。
56分の乗車で、料金は1,100円。
……、高いよね?
さて、宿の送迎車には、バスとワゴンがあるようですが……。
やっぱり、このバスで着くのはわたしたちだけだったようです。
当然のことながら、わたしたちを待ってたのは、年季の入ったワゴンでした。
さてさて、わたしたち2人だけを乗せたワゴンは、一路、本日のお宿へ。
今日の宿は、大島という島にあります。
大島と名は付いてますが……。
小島です。
しかも、橋が架かり、道路がつながってます。
さて、宿毛駅からは、約10分。
送迎ワゴンは、今夜のお宿に着きました。
お宿の名は……。
「国民宿舎 椰子」!
そう、国民宿舎の連泊です。
桂浜荘と同じく、ここも高台に建ち……。
なかなかの偉容ですね。
荷物を下ろしたら、もう18:00。
ここのレストランの夕食時間も、18:00~20:30です。
今日も、お風呂は後にして、先に夕食をいただきましょう。
なにしろ、コース料理を予約してあるんで……。
フランス料理、フルコ~スですよ。
値段は、3,150円~8,400円となってました。
いくらなんでも、3,150円のフルコースってのもね。
と言って、8,400円じゃ、部屋代より高くなっちゃいます。
中を取りましょう。
6,300円。
はたして、6,300円のコースがあるか、わかりませんが……。
予約するときに、6,300円でお願いしますって言えばいいんでしょうか?
よくわかりません。
実際に行く方は、ちゃんと確認してください。
実は、コース料理ってのは、わたしの性分に合ってるんです。
つまり、ひとつずつ、お皿を片づけていくって食べ方ね。
わたしは、毎日の夕食でも、これをやります。
もちろん、夕食が、コース料理のわけはありません。
お皿は最初から並んでます。
でも、目の前の皿から、ひとつずつ空にしていくんです。
日本の作法では、こういう食べ方はお行儀が悪いってことになってます。
母にも、あっちを食べたり、こっちを食べたりしなさいと、子供のころから言われ続けました。
子供のころは……。
しかたなしに言うことを聞いてましたが……。
今はもう、好きなように食べさせてもらってます。
毎月家計費を、8万円も入れてるんですからね。
子供のころとは、力関係が違います。
母も、もう何も言いません。
自分でも、何でこんな食べ方になるんだろうと考えてみましたが……。
持って生まれた性分としか考えられません。
仕事でも、ひとつひとつ片づけて行くのが好きだし……。
それに、いろんな食べ物の味が混ざるのが嫌いなんです。
全体が統一の取れてるメニューなら、チャンポンで食べてもいいんでしょうけどね。
母の料理の場合、和洋ごちゃ混ぜで出てきます。
シチューとおでんが、並んでたりする。
これをチャンポンに食べれるという人の方が、わたしには不思議です。
てなわけで……。
コース料理は、ほんとに食べてて気持ちがいいんです。
ひとつひとつ、確実にクリアしていくっていう、達成感がありますよね。
言い忘れましたが……。
さっきのお値段には、飲み物は含まれてません。
ワインは別料金。
もちろん、赤ワインを頼みます。
魚だろうが肉だろうが、わたしは赤ワインです。
赤でさえあれば、銘柄や値段にはこだわりません。
ていうか、わからないんです。
赤しか飲まない理由は……。
白が飲めないってだけ。
まぁ、飲もうと思えば飲み込めますけど……。
あの味はダメですね。
お酢を飲んでるとしか思えません。
さて、大満足のうちに……。
コース料理も終了しました。
お部屋に戻りましょう。
今夜のお部屋は、洋室です。
残念ながら、ダブルはなく、ツインのみ。
もちろん、風呂付きの和室もありますが……。
満室で予約できませんでした(泣)。
洋室には、お風呂は付いてません。
「お風呂のある部屋、取れなくてゴメンね」
「大丈夫ですよ。
今朝、桂浜荘で入ったから、慣れました。
それにやっぱり、広いお風呂は気持ちがいいですよ」
「わたしは、狭いお風呂が良かった……」
「何か言いました?」
椰子の展望風呂も、1階にあります。
高台にあるので、1階でも展望風呂。
でも夜なので、外は真っ暗。
宿毛湾は見えませんね。
お風呂での美弥ちゃんは、もう堂々としたもの。
目が合った女性客のほうが、どぎまぎして下を向いちゃった。
「しっかり、前だけは隠してるな。
オカマと間違われる恐れがあるからな」
「もう!
普段は、そんなに大きくないの!
それに、前を隠すのは、最低限のエチケットでしょ」
「そうなの?」
「そうです!
Mikikoさんも、隠してください」
「そんなぁ。
大手を振って、全裸で闊歩するのが、大浴場の醍醐味じゃないかぁ」
「そんな醍醐味は知りません。
ほら、もう上がりますよ」
「まだ、洗ってないよ」
「今まで、何してたんです?」
「美弥のこと、見てた」
「もう!
先に上がってますからね」
「いけずぅ」
美弥ちゃんは、さっさと出ちゃいました。
大慌てで洗って後を追いましたが、もう脱衣所にもいません。
案外、マイペースな女だね。
まぁ、わたしもそうなんだけど。
部屋に戻ると……。
美弥ちゃんはもう、ベッドに入ってました。
「ちょっと!
もう寝ちゃうわけ?」
「だって、明日は早いんでしょ」
「そりゃそうだけど……」
明日は、7:00のフェリーに乗らなきゃなりません。
「そんなに寝たいんだ……。
まぁ、気持ちは、わかるけど……」
「ちょっと、Mikikoさん!
何でわたしのベッド入ってくるんです!
隣に、自分のがあるでしょ!」
「バカじゃないんだから、そんなことわかってるよ。
ふっふっふ。
ゆうべのカタキじゃ。
観念せい!」
「また、お尻ぶたれたいの?」
「それもいいが、今日は失神しないぞ」
「そんなら今日は……。
くすぐり攻撃!
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ」
「あひゃ。
あひゃっ。
あひゃあひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
「参ったか!」
「ひぃぃぃぃぃぃ。
なぜに、わたしの弱点をぉぉぉぉ……」
「Mikikoさんが生みだした分身なんですからね。
作者のことは、よ~くわかってます。
そ~れ、トドメじゃ。
ほらほらほらほら」
「や、やめれ。
あひ。
あひ、あひ、あひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。
あが、がががが。
ぴぎ」
わたしの意識は、消し飛びました……。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
●3月22日(月)3日目
「Mikikoさん、Mikikoさん」
体を揺さぶられて目が醒めました。
「もう、6時になりますよ。
お風呂、行きましょう」
体を引き起こされました。
もう、窓からは、朝の光が……。
「あ、朝、なの……?」
「そうですよ」
またしても、何もできんかった……。
「7時のフェリーに乗らなきゃならないんでしょ。
お風呂入ってから、行きましょうよ」
「わたしは、いい……。
もう一眠りするから、美弥ひとりで行ってきて」
「一緒に行ってくださいよぉ。
桂浜荘みたいに、お風呂の窓から海が見たいんです」
「ひとりで行けるでしょ」
「Mikikoさんがそばにいないと……。
やっぱり不安です」
「ほー。
そんなわたしを、ゆうべはくすぐり責めにしたわけだな」
「だって……」
美人に甘えられると、イヤとは言えんのぅ。
重い腰を上げましょう。
ここのお風呂も、いつでも入れるってわけじゃありません。
15:00~23:00までと、6:00~8:30までです。
朝の今は、お風呂が開いたばっかり。
やっぱり、朝風呂は気持ちがいい。
窓からは、宿毛湾が一望できます。
今日は、ここを船で渡っていくのかと思うと……。
楽しさの予感で、うんちが漏れそうです。
「Mikikoさん、もう上がりますよ」
「ちょっと。
入ったばっかりでしょ」
「もう6時半なりますよ。
7時のフェリーに乗るんでしょ」
「そうだった」
なにしろ、今日のフェリーに乗るために、高知行きを思い立ったんです。
これに乗り遅れたりしたら、何しに来たのかわかりません。
「Mikikoさん。
お風呂、付き合ってくれて、ありがとう」
美弥ちゃんが、人目の途絶えた脱衣場で、わたしの手を取りました。
その手を、自らの胸元へ……。
手の平が、丸々とした乳房に触れました。
「み、美弥。
やっとその気になってくれたの?
ここでいいから、やろう!」
「調子に乗らない!
早く、服着ましょうね」
これじゃ、生殺しじゃ……。
でも……。
明日への希望が湧いてきた。
よし、今夜こそ!
急いで身支度を済ませ、フロントへ。
もちろん、朝食は食べられません。
朝食は、7:00からなんです。
その代わり……。
フェリーに乗ってから食べれるように……。
おにぎりを握っててもらえるよう、夕べのうちに頼んでおきました。
どうやらフェリーには、食事の取れる設備が無いみたいなんで……。
精算を済ませると、おにぎりの包みを受け取り、大慌てで外へ。
エントランスを出ると、きのう迎えに来てくれたワゴンが横付けされてます。
わたしたちを、フェリー乗り場まで送って下さるんですね。
わがままばっかり言って、ごめんなさい。
やっぱ、美人は得だわ。
フェリー乗り場は、宿毛駅よりもずっと近くにあります。
5分ほどで、着きました。
宿の方に深々と頭を下げ、ワゴンを見送る間もなく、フェリーに駆け込みます。
「ふぅ~。
間に合った」
「ぎりぎりでしたね」
「美弥が、お風呂入るなんて言うからだぞ。
焦ったから、また汗掻いちゃったじゃないか」
「だって、気に入っちゃったんだもん。
展望風呂」
「ま、いっか。
時間めいっぱい楽しむってのが、この旅行のテーマだから」
「テーマなんてあったんですか?」
「今、思いついた」
「いい加減なんだから」
「とりあえず、部屋に落ち着いて、お弁当食べよう」
「どこです?
わたしたちのお部屋」
「2階だよ」
「スイート?]
「そんな部屋は無いの。
ファミリー室」
あるのは、一等と二等、それにファミリー室です。
宿毛フェリーのホームページにある旅客運賃表を下に掲げます。
さて、ファミリー室を予約した場合、いったい2人でいくらかかるのでしょう?
船に乗り慣れてる人は、この表でわかるんでしょうかね?
わたしは、しばし悩みました。
「室料」っていうからには、1室あたりの料金だよね。
何人で使おうが、変わらないはず。
てことは、2人でも5,000円。
これだけ払えば、乗れるの?
そんなわけ、ないよね。
それじゃ、1人あたり2,500円だから、二等運賃と一緒になっちゃいます。
たぶんですが……。
ファミリー室を使う場合でも、1人ずつに二等運賃がかかるんじゃないでしょうか?
つまり、2人でファミリー室を使う場合は……。
2,500円×2+5,000円=10,000円、ってことだと思います。
違う!という情報をお持ちの方は、ぜひ教えてください。
でも、ほんとに↑の料金表だけで、船に乗ったことのない人でも、わかるもんなんですかね?
わたしが、よっぽどバカなんだろうか……。
わたしがこの料金表を作るとしたら……。
基本運賃 1人2,500円
二等 基本運賃+0円
一等 基本運賃+1,000円
ファミリー室 利用人数分の基本運賃+ファミリー室料5,000円
という感じになるでしょうか。
これなら、船に詳しくない人でも、わかるんじゃないかな。
たぶん、ホームページは、制作会社に外注してると思うんだけど……。
制作会社は、受け取った資料を、そのまま載せてるんだと思う。
宿毛フェリーの関係者にとっては、運賃表の読み方なんか、あたりまえのことだから……。
素人にはわかりづらいことに、気づかないってことじゃないでしょうか。
この先は……。
「大分に行こう!」に続きます。