2015.11.24(火)
全裸の道代は、志摩子の室内に転がり込んだ。
志摩子から声が掛かる。
「おーや、お道やないかい。何してまんねん、そないなとこ(そんなところ)で」
道代は跳ね起きた。その場に蹲(うずく)る。正座である。
全裸の道代は、両手を畳に突いた。深々と頭を下げた。
「すっ、すんまへん。すんまへん、女将はん。すんまへん」
同時に花世が悲鳴を上げた。
「ひええええええ」
全裸の道代は、志摩子女将の部屋の片隅に縮こまった。
だが、四肢を拘束されている花世には、身を隠す術(すべ)がない。
「いやあああああああ」
悲鳴を上げるしかない花世であった。
道代の横に、悠然と源蔵が歩み寄った。
「裸の女が三人そろうたのう。歳も風貌も、体つきも、見事に三者三様や。華やかなこっちゃ」
道代は畏まり、蹲(うずくま)り、全身を縮こめて頭を下げるばかりだ。土下座の体勢である。その体の下はもちろん土ではなく、畳なのだが……。
道代は一言も発しない。
「ひいいいいいいいいい」
花世は悲鳴を上げ続けた。縄に拘束された四肢は、もちろん身を覆うことは叶わない。花世は悲鳴を上げ続けた。花世は、仄暗い室内の灯りを欺くように、その白い全身を余すことなく晒しながら悲鳴を上げた。
「もう。喧しい子やねえ」
志摩子は花世に躙(にじ)り寄り、その口を自らの口で塞いだ。舌を捻じ込む。
「あぐ、う、ぐ」
花世は激しく鼻から息を噴き上げ、呻きを漏らした。花世の呻きは、自らと志摩子の口内全体に反響する。その呻きは、二人の傍らに仁王立ちの源蔵と、土下座のまま身じろぎ一つしない、いや指一本すら動かさない道代の、それぞれの耳にはっきり聞こえた。
志摩子が口を離した。
「か、はあああ」
自由になった花世の口から、大きな喘ぎが吹き零れた。花世は、瀕死の魚のように大きく口を開いた。幾度も首を左右に振りたくる。それは、より多くの空気を求めているようにも、強い拒否の意思を明確に表明しているようにも見えた。
志摩子が、真上から花世を見下ろした。
「花、大人し、しいや(しなさい)」
「せやかて、女将はん」
「せやかて、やない。なんでそないに、逆らうような真似するんや」
「せやかて女将はん……恥ずかしい」
「せやかて、やない。何が恥ずかしいのん」
「せやかて……」
「知らん仲、ゆ(言)うわけやなし。源蔵はんとお道やないの」
「せやかて……いっつもは服、着てるもん」
花世の抗議は、小学生の、いや、学校前の頑是ない少女のようであった。
いやや、嫌や、いやなもんはいやや。
志摩子は、莞爾として笑った。噴き出すのをこらえるような、そんな笑みだった。再び、上から花世の顔を見下ろす。両掌で花世の両頬を挟み込んだ。
「は・な。はあな。ええ子やねえ」
「おかみ、さあん」
志摩子は、花世の顔を両手で捕らえたまま、首だけで背後を振り返った。源蔵に声を掛ける。
「ええで、源ちゃん」
「おう」
源蔵は、悠然と花世に歩み寄った。花世の足元から近寄る。
志摩子が、花世の顔から両手を外し、一膝遠ざかった。
花世の目に、上から傲然と見下ろす全裸の源蔵の姿が入った。改めて悲鳴を上げる。魂を絞り出すような悲鳴であった。
「ひいいいいいいいいいいいいいいっ」
源蔵は意に介さず、花世のつま先のあたりに膝を突いた。両腕を伸ばし、花世の足首を縛める縄の結び目に手を掛けた。花世の足首の皮膚に源蔵の指先が触れる。
花世は絶叫した。
「いやあああああああああああああっ」
源蔵は、花世などいないかのように手を動かし続けた。花世の両足首を固定していた縄は、あっさりと解けた。
足先が自由になったことに気付いた花世は、すかさず膝を折り、両脚を体躯に引き付けようとした。縮こまろうとする。
源蔵は、花世のその動きを許さなかった。素早く花世の両足首を両手で捉える。両腕を、一気に引き広げた。源蔵の両手に引かれ、花世の両脚は大きく広げられた。花世の股間が剥き出しになった。
「ぎゃああああああああああああああっ」
花世の両腕は、その背後で縛められている。そして花世の両脚は、先ほどまでの縄に代わり、源蔵の両腕で力強く固定された。花世は変わらず身動きできない。花世にできることは、狂ったように頭を左右に振りたくることと、呻きとも喘ぎとも、悲鳴ともつかぬ絶え絶えの声を上げ続けることだけだった。その声は掠れていた。花世の声は、年老いた老婆のように嗄れていた。
志摩子は、花世と源蔵に半ば背を向け、蹲(うずくま)る道代に声を掛けた。
「みち」
道代は動かない。
「おみち」
道代は、蹲(うずくま)った姿勢のまま、更に首を下げた。だが、それ以上に首が下がるわけもない。道代は、畳に額を捻じ込むように、下がらない首を下げようとした。
「み・ち・よ、ゆ(言)うとるやろ!」
志摩子の呼びかけは、少し苛立ちの色を帯びた。
志摩子の声の変化を、道代は敏感に感じ取った。道代はようやく返答した。
「へえっ」
「顔、上げ」
「へええ」
返事とは裏腹に、道代の顔は上がらなかった。逆に、その動きは更に首を下げるような色合いを帯びたが、もちろん道代の首は下がらなかった。
「ええかげんしいや、道。顔上げ、ゆうてん(言っている)のが分からんのか!」
志摩子の声は、明らかな苛立ちを示していた。その声は、明らかに叱咤であった。
道代の首は、反射的に持ち上がった。返答する。
「すっ、すんまへん」
返答し、一瞬志摩子を見詰めた後、道代は再び深々と頭を下げた。そのまま、詫びの言葉を呪文のように繰り返した。
「すんまへん、すんまへん。すんまへん、女将はん。すんまへえん」
道代の声は譫言(うわごと)の様な色を帯びてきた。半ば泣いているようである。
「すんまへん、すんまへえん。ほんまに、すんまへん。す……すっ、うっ、うひ、うひいいい」
志摩子の声が柔らかくなった。この人には珍しい声音であった。
「お道……うち、怒っとるんやない。叱ろっちゅうんやないんや。ええから……顔、上げ」
道代は、ようやくしっかり顔を上げ、志摩子を見詰めた。
道代と志摩子。二人の視線が絡み合った。
コメント一覧
-
––––––
1. ハーレクイン- 2015/11/24 09:26
-
何してまんねん(何をしているのですか)と言われてもねえ、お道姐さん。答えよう、おませんわなあ。
できることは、ひたすら身を縮込めるだけ。
とっとと逃げ出せばええのに、とは思いますが、源蔵・志摩子コンビに睨まれていては、それもかないませんわなあ
「すんまへん、すんまへえん。ほんまに、すんまへん。す……すっ、うっ、うひ、うひいいい」
あーあぁ。泣きだしちゃいました、お道姐さん。
可哀そうによう。
で「詫びの言葉を呪文のように繰り返」すお道姐さんですが、「呪文のように」ときますと↓これ
♪窓を開ければ緑が飛ぶの
快速特急音を立てる
扉の近くに陣取りながら
呪文のようにつぶやくの
I came from横須賀
あなたに会いに来た……
(山口百恵『I came from横須賀』。もう、誰も知らんか)
一方、花世姐さん。
「ひいいいいいいいいいいいいいいっ」
「いやあああああああああああああっ」
「ぎゃああああああああああああああっ」
絶叫、また絶叫です。
実は当初、花世姐さんは源蔵ともええ仲、という設定だったのです。でも、よう考えたら、それではあまりにしたたか過ぎる。ちょっとは可愛げも、ということでこうさせていただきました。
可愛がってやって下せえ、お道&お花。
-
––––––
2. Mikiko- 2015/11/24 19:44
-
この歌は知りません。
B面ですか?
なんとなく、『プレイバック Part2』に似てますね。
作詞作曲とも、同じ作者のようです。
しかし……。
“陣取りながら”ってのは、どんなもんでしょう?
なんとなく、甲冑を着て、軍扇を振りかざしてそうなんですが。
-
––––––
3. ハーレクイン- 2015/11/24 20:05
-
♪緑の中を走り抜けてく真っ赤なポルシェ……
あるんですねえPart1
♪あれは真夏の出来事でした
今から話すけど
もらい泣きなどしないでくださいね
「聞いてね」
思い出の中の遠い季節Play Back
痛みを覚えた若い季節Play Back……
百恵姐さん。
御年56におなりだそうです。
隔世の感がありますなあ。
-
––––––
4. Mikiko- 2015/11/25 07:41
-
↓わたしが一番好きなのは、『イミテーションゴールド』です。
http://www.youtube.com/watch?v=n02z8pqFZA0
このときの彼女は、18歳。
眉が色っぽいです。
この歌詞、今なら、淫行になるんでないの?
-
––––––
5. ハーレクイン- 2015/11/25 10:38
-
♪シャワーのあとの髪のしずくを
乾いたタオルでふきとりながら……
ここだけだろ。
それにこれ男(彼)だし。
ま、状況は淫行かも知れんが。
-
––––––
6. Mikiko- 2015/11/25 19:51
-
彼でも、しちゃいかんのではないか?
彼が成人なら、犯罪だろ?
-
––––––
7. ハーレクイン- 2015/11/25 20:28
-
♪勝手にしやがれ(沢田研二)
-
––––––
8. Mikiko- 2015/11/26 07:24
-
対象は、18歳未満のようです。
従って、『イミテーションゴールド』の相手は、お咎め無しですね。
-
––––––
9. ハーレクイン- 2015/11/26 08:57
-
「プレイバックPart2」「イミテイション・ゴールド」「ひと夏の経験」「横須賀ストーリー」「秋桜」「いい日旅立ち」「ラスト・ソング」「乙女座宮」「しなやかに歌って」
こんなとこかな、思いつくまま書いてみました。
なんか、最も有名なのを忘れてる気がします。
デビュー曲も、忘れちまったなあ。
-
––––––
10. Mikiko- 2015/11/26 19:51
-
わずか21歳で引退。
引退から34年、1度も表舞台に出てません。
とくれば……。
往年の大女優、原節子さん。
9月5日に亡くなられてたそうです。
95歳だったとか。
引退したのは、42歳。
こちらは、53年間、1度も表舞台に出なかったわけです。
小津安二郎の映画でしか見たことありませんが……。
確かに美人ですよね。
日本美人というより、西洋的な美人です。
でも、演技は……。
-
––––––
11. ハーレクイン- 2015/11/26 22:26
-
「永遠の処女」とも称されたとか。
>でも、演技は……
お、きついなあ。
先日、BSで成瀬巳喜男監督『めし』をやっていました。
原作、林芙美子。
主演は原節子&二枚目俳優上原謙。
録画してありますので、明日あたり演技ぶりを拝ませていただきましょう。











![[官能小説] 熟女の園](https://livedoor.blogimg.jp/mikikosroom2008/imgs/3/e/3e07a9c3.gif)





































































































