Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #94
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式)アイリスの匣#94



 あやめは、一瞬の間をおいて返事した。

「親爺(おやっ)さんとこ」
「おやっさんって……花板の、野田さん?」
「せや。もう長いこと、出てきてはれへん(出勤されていない)やろ」
「せやなあ。なんや、身体、悪しはった(悪くされた)て聞いてるけど、詳しいことはなあ……」

 久美は、野田の顔を思い浮かべてでもいるのか、目を泳がせた。
 あやめは、少し勢い込んで返事する。

「せやろ。うちら板場のもんかて、何にも聞かされてへんねん。関目の兄さんやったら、なんぞ知ってはるかもしれんけど、何にもおせ(教)えてくれはらへんし……こっちからは聞きにくいし」
「まあ、あの狂犬とは、そないな個人的な話はでけんわねえ」
「せやねん」
「よっしゃわかった。いといで(行ってきなさい)あやめ」
「おおきに、久美」
「ほの(その)かわり、一人はあかんで、うちも行く」

 久美はあやめを見詰め、決め付けるように宣言した。
 あやめは抗議する。

「えー、なんでぇ。あんた親爺(おやっ)さんのこと、あんまし(あまり)知らんのんちゃうのん(知らないのじゃないの)。
 ほれに、あんたも言うたやん。あんまし外、出るな言うてるて、警察。二人いっぺんて、よけ(よけいに)ようないんちゃう?(良くないのじゃないの)」
「ほらほやけど……あかん。あんた一人て、あぶのうてかんわ(危なくっていけない)」
「危ないて、久美……」
「あんた、自分ではそない思てへんやろけど、ほんまに危なっかしいで。周りが見えてへん、云うのんか……」

 久美は一旦言葉を切った。あやめを見詰め直し、改めて問いかける。

「あやめ、あんた……どない思てんのん、狂犬の事」
「どないて、狂犬て……関目の兄さんの事?」
「この店の狂犬て、あいつしかおらんわ。うちなあ……」

 久美は少し声を落とした。あらためてあやめを見上げ囁く。

「うち……今度の事件の犯人、あいつやないか思てんねん」

 あやめは目を見開いた。

「なに言うのん、そないなこと。証拠もなしに、めったなこと言うたらあかん」
「証拠てかいな。うちらは警察やないんやで、あやめ。犯人を逮捕しよ、ゆう訳やなし、ほないなもんいるかい。心証で十分や」
「ほやかて、久美……」
「うちに言わせたらなあ、あいつは真っ黒けのけや。うちの推理、聞かしたるわ。ええか。
 ゆんべ、店閉めた後やな、どこぞで引っかけた女を連れ込みよったんや。ほんで、女将はんの目ぇもあるし、まさかそこらの部屋で、ゆうわけにいかんやろ。しやから(だから)厨房でごしょごしょやりよったんやな。厨房はまあ、ゆう(云う)たら、あいつの巣ぅみたいなもんやろ。ほんで、事が終わってからか、途中でかはわからんけど、なんや、めんど(面倒)くさなりよったんやな」
「めんどくさいて……そんなもんなん」
「そんなもんや、あいつはな。あやめ。自分の、ゆう(云う)か、普通の人間の感覚であいつを考えたらあかんで。
 あいつを狂犬ゆうのはな、手ぇ早い、ゆうだけやないんや。あいつは人やない、人間やない、ゆう意味もあるんやで。あいつは犬や、獣や。けだもんなんや。
 しやから(だから)何しでかすかわからん。ひとの形してるけど人やない。いぎょうのもん、なんやで」

“いぎょう”という耳慣れない言葉の意味が、しばらくの間あやめには分からなかった。“いぎょう、いぎょう”と、頭の中で転がすように呟くうち、「異形」という文字に思い当たった。
 あやめの背筋を、言葉にできない気味の悪いものが、ゆっくりと通り過ぎて行った。

「まあ、相手の女がぐじゃぐじゃごねたんかもしれんけど、めんど(面倒)なったあいつは、あっさり刺し殺しよったんや。凶器は、自分の包丁やな」
「凶器までわかんのん? 久美」
「ただの想像や。しやけどあやめ、あんたも見たやろ、死体。あの傷口、たぶん刺し傷やで。
 ほんで現場が厨房やときたら、凶器は包丁に決まってるやんか。たぶん、刺身包丁やな」
「柳葉てかいな……。しやけど久美。仮にも料理人が、大事な包丁、そないなことに使うやろか」
「くどいようやけどあやめ。あいつを常人の尺度で考えたらあかん。何でもありや、あいつはな。ほんでや、ほの後、死体を裏庭にほかしよったんや」

 あやめは、もう言葉が出ない。
 久美は、さらに声を落とした。しかし出た言葉はあやめに、そして自分に宣言するような強いものだった。

「あいつはな。ほっといたら、絶対あやめのためにならん、うちにはわかる。しやから、うち、いずれ証拠掴んで警察に垂れ込んだんねん(垂れ込んでやる)」
「久美……」


 源蔵は、志摩子女将の部屋で大胡坐をかき、冷や酒を呷っていた。浴衣掛けだが諸肌脱ぎ、浴衣は胡坐の腰の周りに蟠っている。源蔵の剥き出しの上半身にはうっすらと汗が浮き、薄暗い室内の照明を照り返していた。
 志摩子はこれも浴衣掛けで、横座りに源蔵の脇に侍っている。花世は自室に引き上げたのか姿が見えない。
 室内には強い尿臭が充満していたが、源蔵も志摩子も気にする風はなかった。

 源蔵は手にした木製の一合枡を口に運び、中身の半分ほどを流し込んだ。短く、深く息を吐く。酒の香りを含む吐息と、室内の空気が混ざり合った。
 志摩子が源蔵の手から木枡を取り上げ、口に運んだ。酒を含む。微醺を帯びた志摩子の口からも、酒の香りが零れ出た。二人の吐息は、媾合するように中空で混ざり合った。
 志摩子は、源蔵に枡を返した。源蔵は残りの酒を放り込むように口にし、空になった枡を志摩子に突き出した。志摩子は、傍らに置いた一升瓶を取り上げ、酌をする。瓶のラベルには「筺姫」、京都伏見の酒であった。
 なみなみと酒が満たされた。
 源蔵は、木枡を口に持って行く。顔からも迎えに行った。志摩子が声を掛ける。

「なあ、源ちゃん……あんたの仕業やろ」

 枡を運ぶ源蔵の手が止まった。枡に向けて半ば傾げた顔も止まる。枡と源蔵の口は、互いに睨みあうように静止した。

「何のことや」
「何て、源ちゃん。今度の事件、殺しの事に決まってますがね」
「ふん」

 源蔵はそれ以上何も言わず、枡に口を付けた。
 志摩子は、何かを追い立てるように言葉を継ぐ。

「あんた……たいがいにしときよし。これでもう、何人目やのん。二人か、三人か」

 口から離した枡の中を覗き込みながら、源蔵は口元を軽く歪めた。志摩子をあざ笑うように首肯する。

「よう知ってるやないか。三人目や」
「あんた、源ちゃん……」

 あっさり認めた源蔵に、さすがに志摩子は言葉を失った。

「はじめは、宮川町の舞子やったが、それだけにわこうて(若くて)後先考えん奴でのう。めんど(面倒)なったんで、威しのつもりで首絞めたったらあっさりいてもうて(死んでしまって)のう。おろく(死体)は、鴨川にほりこんだった(放り込んでやった)わ」
「………」
「その次は嶋原の太夫や」

 源蔵の嗤いが少し大きくなった。
 志摩子が口を挟む。

「嶋原て、太夫て、たいがい歳ちゃうのん」
「振袖太夫ておるやろ。ほれ、太夫見習、あれや。それでも、そこらの舞子なんぞに比べりゃよっぽど歳、喰うとったが」
「源ちゃん、あんた……。二人も殺して、ばれへんかったん」
「ばれんかったようやのう。ま、ばれりゃばれたで、そのときゃその時」

 源蔵は平然と嘯いた。

「源ちゃあん」

 すがるような風情の志摩子を尻目に、源蔵はなんとなく楽しそうに話を続ける。

「ほんで今回の、やな。かみひちけん(上七軒;かみしちけん)で囃子方なんかの師匠やっとるゆうとったわ。得意は笛やそやが、死んでしもたら笛も鼓も無いわな」
「上七軒て、ほないな遠くの……。どないして知りお(合)うたん」
「なんや祇園に知り合いおるらしいで。ほんでゆんべ(夕べ)の大文字見物に、連れもって鴨川の床に来たらしいわ」
「連れ、て……。ほなそのお連れ、あんたとも知りおうたんちゃうのん。ほ(そ)れ、ヤバいやろ」
「いやあ、それがな。その連れ、途中でなんや気分悪なった言うて、先に一人で帰ったらしいわ。
 ほんでその師匠の女、まだ飲み足らん、て一人で飲んで……遅がけに前の通り、ふらふら歩いとった。ほんで儂、帰りがけに出くわして……」
「うちに連れ込んだんかいな」
「そういうこっちゃな。厨房、見せたろか、ゆ(言)うたら珍しがってな、ほいほいついてきよったわ。で、厨房で……」
「やったんかいな」
「そのつもりやったんやが、手ぇ出しかけたら嫌がりよんねん。『そないな女やない』とかなんとか吐かしよってな。もうめんど(面倒)なって……」
「殺(や)ったんかいな」

 源蔵は一息ついた。手にした枡の酒を一気に飲み干す。興が乗ってきたのか、話し口も滑らかになっていった。

「おう、手近の柳葉でな、後ろから一突きや。声も出さんといてまいよったわ(死んでしまった)」
「ほんで、そのまんま庭にほかした(捨てた)んかいな、おろく(死体)」
「せや。けっこう重たかったで。肉付き、ようて(良くて)のう」
「包丁はどないしたん」
「めんどいんで、ざっと拭って塀越しに、土手の方にほかした」
「拭いた布はどないしたん。どうせ手拭いかなんかやろ」
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #93】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #95】

コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2015/03/31 10:37
    •  標準語「わたしの推理を、聞かせてあげる」との宣言で始まりました“名探偵久美”による「花よ志」殺人事件の推理。
       後ほど開陳されます、狂犬・関目源蔵の告白!に照らし合わせても、さほど的外れではないようです。「花よ志」の仲居、田所久美。さすが、自ら“名探偵”と名乗るだけあります。が、まあ、作者が喋らせてるんですけどね。
       (久美「喧しわ。うちがおまんに乗り移って書かせてるんやないかい」)
       
       さらに、久美の源蔵評は「真っ黒けのけ」。
      これもピンポン大当たり。さすが鋭い女の感、と云いたいところですがまあ、このあたりは誰でもわかりますわな。
       (久美「ええかげんにせえよ、おっさん」)
       一方、志摩子女将の部屋では、毎度おおきに、やのうて毎度おなじみ、源蔵-志摩子深夜の酒宴です。けっこう美しい情景でないかい(自分で言うな!)。
       酒の銘柄は、京都伏見の銘酒「筐姫」。「はこひめ」とお読みください。もちろん、架空の銘柄です。筐は匣。要するに箱ですね。
       箱の中の姫といいますと、京極夏彦・百鬼夜行シリーズの『魍魎の匣』を思わせます。面白いよ。
       それはともかく、源蔵の告白、というより自慢話のように聞こえますが、それによりますと、これまでに三人殺しているとか。なんちゅうやっちゃ(なんという奴だ)。
       一人目の被害者は「宮川町」の舞子やそうです。
       京都には、祇園甲部をはじめ六つの花街があり、京の「六花街」と称します。六歌仙にひっかけたのかどうかは……まあ、違うでしょう。
       で、「宮川町」は「花よ志」から見ると鴨川の川向う。京都・東山の、祇園の北側に位置する、六花街の一つです。出雲阿国ゆかりの地で、かつては遊郭でしたが、今は技芸一筋。♪月は朧に東山~、で頑張っております。
       源蔵の二人目の被害者は「嶋原」の太夫(たゆう)。嶋原では、芸妓さんを太夫と呼ぶんですね。
       「嶋原」は、かつては六花街の一つとして殷賑を極めていたのですが、京の中心部から少し離れているということもあり、衰退の一途をたどっているようです。姐さん方の平均年齢も、失礼ですが少々お高い。
       ということで「たいがい歳ちゃうのん」と、志摩子女将が洩らしたわけです。
       「嶋原」。いろいろありまして、六花街から脱退しちゃいました。ですから、現在の京の花街は「五花街」なんですね。
       源蔵の被害者三人目。今回の被害者ですが、舞子・芸妓ではなく音曲の師匠。
       これは大したものです。一つの花街の元締め、とまではいきませんが、若手の頭の上がる相手ではありません。盆・暮れには、その花街の舞子・芸妓が打ち揃って、挨拶に伺います。
       芸道を極めた、といいますかね。それほどのお方です。それにしては今回の被害者、少し若くて貫禄に欠けるような気もします。源蔵あたりの誘いに“ほいほいついて”くるようではねえ。
       ま、それだけ、女の目から見ますと源蔵に魅力、といいますか“魔力”があるのかもしれません。なんせ「蛇の目の男」ですからねえ。
       あ、書き忘れるとこでした。「上七軒(かみひちけん)」は京都市の東北方、北野天満宮のすぐ近くです。あやめと久美が登った大文字山のふもとに位置する、由緒ある花街です。
       少しバラしちゃいますかね。この源蔵の悪事が、実は『アイリス』のラストシーンにつながる、という作者のもくろみなんですね。
       さあ、この後、どのように展開するのでしょうか『アイリスの匣』。久美の活躍は、源蔵の動きは、そして、あやめの運命は!
       次回を、乞うご期待!

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2015/03/31 20:20
    •  普通、倒叙物の犯人は、優れた知能の持ち主にするものでしょうが。
       そういう犯人だからこそ、その些細なミスを逃さない探偵役が、さらに引き立つという仕掛けです。
       まさか、無計画な粗暴犯が犯人とはね。
       ざっと拭ったくらいでは、指紋は残ってますよ。
       包丁が見つかれば終わりです。
       しかし、人を刺すとき、柳刃を選ぶものでしょうかね。
       ちょっと角度が狂えば、まっすぐ入らないんじゃないですか?
       出刃のほうが、よっぽど扱いやすく、威力もあるように思えます。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2015/04/01 00:46
    •  まあ……世に推理小説・警察小説は山ほど、それこそ日本アルプスかヒマラヤか、というほどおまっさかい、いっこ(一個)くらい、こういうのがあってもよろしおまっしゃろ。「枯れ木も山の賑わい」て、云いまんがな(ちょっと違うぞ)。
       凶器の包丁はもう見つかってまっせ。#89です。鑑識の若い衆、東野英二が捜査会議の場に持ち込みました。現在、鑑識で詳しく検査中。
       とりあえずモン(指紋)は残っとりまへんでした。さすが料理人、「ざっと拭った」だけで綺麗にしよりましたんですなあ。
       “彼は如何にして柳葉包丁をえらびし乎”
       まあ……たまたま手近におましたから、でんなあ。なんでもよかったんですわ、刃物やったら。
       確かに刺すのは難しおまっしゃろけんど、そこは包丁を扱いなれたプロの手際、と考えとくんなはれ。
       で、殺伐な殺しの話はとりあえず置いときまして、甲子園です。
       もう「耳たこ」とは思いますが、書かないわけにはいきません。
       選抜準決勝第1試合、敦賀気比vs.大阪桐蔭は、11-0で敦賀気比の圧勝でした。いやあ、まさか桐蔭がこんな負け方をするとは誰が予想したでしょう。
       初回、2回に飛び出た敦賀の6番バッター松本君の、2打席連続の満塁ホームラン。これで、序盤で早々と勝負がついてしまいました。あとは何もありません。
       「敦賀気比(つるがけひ)」。全国の野球ファンの脳裏に、この校名は焼き付いたことでしょう。「福井県」の高校だ、というのはどうだかわかりませんがね。
       まあ、心配なのは、打った松本君と、打たれた大阪桐蔭の投手田中君の将来ですが、これはわたしが気を揉んでもしょうの無いところです。
       とりあえず、敦賀気比には明日の、あ、もう今日か、の決勝戦を、大阪桐蔭には夏の甲子園をめざし、頑張ってほしいものです。
       敦賀気比の相手は、北海道代表の東海大四。新鮮な組み合わせです。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2015/04/01 07:47
    •  見つかってましたか。
       でも、板前の包丁って、店の備品じゃなくて……。
       自分の持ち物でないの?
      ♪包丁一本 さらしに巻いて 旅へ出るのも 板場の修業♪
       ご存知、『月の法善寺横丁』の歌詞です。
       立板の包丁が板場に無いことは、誰でもわかるんじゃ?
       それに、包丁には、鍛冶職人の銘が彫ってあります。
       注文品でしょうから、鍛冶屋に見せれば、誰に作ったものかわかるはず。
       あ、誰かの包丁を使ったのか?
       でも、店にあった包丁だと云うことは……。
       誰に聞いてもわかるでしょう。
       これで捜査は、内部犯行に絞られることになりますね。
       高校野球、決勝戦。
       北信越代表の敦賀気比には、ぜひ頑張ってもらいたいです。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2015/04/01 11:23
    •  「板前」と呼ばれるほどの料理人なら、もちろん自前です。
      ♪意地と恋とを包丁にかけて
      両手あわせる水掛不動……
       『月の法善寺横丁』3番の出だしです。
       法善寺境内の水掛不動像にはびっしりと苔が張り付き、顔つきも判然としません。あれね、柄杓を使わず、バケツで水を掛ける近所のおばちゃん、とかいるんだよ。
       『月の法善寺横丁』主人公の若い包丁人の勤め先は「藤よ志」いいます。「花よ志」と似ていますが、パクった訳ではありません。まったくの偶然です。いや、無意識のうちにパクっていたかも……。
       あのね、包丁人の持ってる包丁が1本ということはありません。柳葉ひとつにしたって複数本、それに薄刃や出刃やを合わせれば、さあ全部で何本持っているのか。もちろん、下っ端は少ないですがね。
       ですから、よっぽど注意しない限り、1本くらい無くなってたってわかりゃしません。それに、無くなりゃすぐに新しいのを補充するし(ほんとは、だいじに大事に使うんですがね)。
       源蔵が夜中に庖丁を研いでたろ。あれは、新しいのを下ろしていたんですよ。
       犯人は京の料理人でしょうからねえ(源蔵だというのはもうバラしちゃいましたが)。包丁はもちろん「堺」に注文したものです。だから、堺の包丁屋を虱潰しに当たれば、「花よ志」の裏手で発見された包丁(おそらく凶器)の由来は簡単に判明します。
       現場の状況もあるし、犯人は「花よ志」の者、という当たりは簡単につくでしょう。あとは証拠固めですね。「動かぬ証拠は……だ!」

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2015/04/01 20:52
    •  包丁に何かあったときのために、予備の包丁を誂えておくということですか。
       ほんまかいな。
       そういうことは、コメントでなく、本文で書くべきでないの?
       発見された包丁は、源蔵のものなんですか?
       人を刺すんなら、他人のを使いそうですけど。

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2015/04/01 22:09
    • ということもありますが、食材によって使い分けるんですよ。だからひと口に刺身包丁といっても、長いの、短いの、幅広の、肉厚の……とさまざま。「鱧包丁」なんてのも出て来ただろ。
       だからこそ、ベテランは多種多様な包丁を、しかも自前で所有していますし、下っ端はせいぜい1,2本しか持っていないわけです。
       「本文に書け」
       気ぃ付きまへんでした。そんなん、当たり前の知識やと思うとりました。今後は気ぃ付けまひょ。
       発見された凶器の包丁は、源蔵のものです。犯人は、狂犬源蔵で決まり。
       これは今回、本人が得々と喋った通りです。いずれ近いうちに、警察の手が身辺に伸びてきます、立板源蔵。
       発作的、突発的犯行ですからね。とっさに手近にあった包丁を使ったわけです。自分のもんか他人のもんかまで、気にする暇はなかったんですね、鬼畜源蔵。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2015/04/02 07:29
    •  柄を差し込むところに(↓中子と云うようです)、銘が彫ってあるんでないの?
      http://blog-imgs-74.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20150402072043e4b.jpg
       源蔵。
       そういう男は、警察が疑う前にトンズラこくと思います。
       腕のある料理人なら、どこへ行っても食べられますからね。

    • ––––––
      9. ハーレクイン
    • 2015/04/02 08:42
    •  これには、狂犬・関目源蔵という人物の人格、習性、来歴などが深く関わっているんですよ。このあたり、今後徐々に明かされていくことになります。
       ともあれ、「包丁の構造」画像のup、おおきに、ありがとさんで御座います。
       銘はもちろん、彫ってありますね。
       いつの間にやら料理小説に変貌した『センセイのリュック(このタイトル、もう忘れ去られてたりして。もとは学園ものだったんだよ)』。更に警察小説に変貌しようとしておりますがさあ、今後どう展開していくのでしょうか。
       繰り返しますが……、
       乞う!ご期待。
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