2014.8.14(木)
「こんなん言うたらなんですけど、たぶん明子はんとうちは同い年です」
「あれ、そうどすか」
「たぶん……。
ほんでも、こんな話題はやめましょうなあ」
「あやめさん、飲みましょ」
あやめは立ち上がり冷蔵庫に向かった。
扉を開ける。
「明子はん、ビールでよろしおすか」
「せやねえ、せっかくやから、『とりあえずまたビール』やね」
あやめは両手に缶ビールを掴みソファに戻った。
「どうぞ」
「おおきに」
明子は缶ビールのプルトップを引き上げ、中身を流し込んだ。あやめもそれに倣う。
「あやめさん、飲んでてね」
明子は立ち上がり、キッチンに向かった。
缶ビールを片手に、食器棚の中段の扉を引き開ける。アイスペールを取り出した。
目ざとく見たあやめが声を掛ける。
「明子はん、ウィスキーどすか」
「うん。やっぱしビールではねえ、物足りんねえ」
あやめは立ち上がり、明子に近づく。
「うちがやりますさかい、明子はんは座っとっておくれやす」
「そんな。
お客さんにそんなんさせられませんがね」
「なに、お言いやすな。
こういうのはうちの領分どす。まかせとくんなはれ」
あやめは、半ば追い立てるように明子をソファに追いやった。
「ええのん? あやめさん」
「かましまへんから、ビール飲んどいてください。あ、ピーナッツなんかも買うてきましたさかい」
「そう? ほなごめんやで」
明子は冷蔵庫を開けて新しい缶ビールを取出す。飲みかけのものとともに、両手に缶を提げてソファに戻った。
あやめは冷蔵庫を開け、冷凍庫を覗く。氷は出来ているようであった。
「明子はん。失礼します」
「なんでも、好きなようにやって。あやめさん。
ここはもう、あやめさんの家やで」
その言葉を聞いたあやめの心臓は飛びあがった。
しかしあやめは平然と、冷蔵庫の扉を閉じる。
明子の取り出したアイスペールの上で、製氷皿を逆さにし、捻る。涼しげな、というよりも騒々しい音を立てて角氷がアイスペールに落ち込んだ。製氷皿はもう一つある。同様に氷をアイスペールに落とし込む。アイスペールはほぼ一杯になった。
あやめは、空になった二つの製氷皿に水を満たし、冷蔵庫の扉を開けた。冷凍庫に製氷皿を納める。あやめはついでに、先ほど買ってきたウィスキーの瓶を取り出した。
食器棚に向かう。
「明子はん。グラス、出してよろしおすか」
「好きなようにやって。なんべんも言うようやけんど、ここはもうあやめさんの家やし」
あやめは、食器棚を開けた。
多彩なグラスが棚を埋め尽くしている。
さすがにあやめは戸惑ったが、思い切って小振りのグラスに手を伸ばす。1客というわけにはいかない。同じものをもう1客。
2客のグラスを、アイスペールをのせた盆に乗せる。
「失礼します」
あやめは再び冷蔵庫の扉を開けた。ドアポケットにミネラルウォターの瓶がある。取り出す。
氷を満杯にしたアイスペール、グラス、ミネラルウォター、ウィスキーの瓶。一杯になった重い盆を捧げ持ち、あやめはテーブルに向かった。
「お待たせしました」
「ごくろうさま、あやめさん」
あやめは盆をテーブルに置いた。
「失礼します」
あやめは再び明子に声を掛け、ソファに座った。明子からは遠いソファの端である。
グラスをテーブルに置き、アイスペールに添えたアイストングを手にする。ペール内の氷を摘み上げ、グラスの一つに投入する。
ウィスキーの瓶を取り上げ、キャップを捻る。涼しげな音を立てて瓶は開栓した。
「どうぞ、明子はん」
「おおきに」
明子はグラスを取り上げ、胸の前あたりまで持ち上げた。
あやめは瓶を傾け、明子のグラスに注ぐ。
明子はグラスをテーブルに置き、あやめの手の瓶を取り上げた。
「ほな、あやめさん、お返しや。どうぞ。
いやあ、その前にあやめさんのグラスに氷を……」
あやめは断れない。
テーブル上の二つのグラスに氷を投入する。明子の傾ける瓶から、あやめのグラスに琥珀色の液体が注がれた。
あやめと明子の二つのグラス。
その腹にはたちまち露が付着した。
二人はグラスを持ち上げる。
「ほな、あやめさん。乾杯や」
「へえ、何に乾杯ですやろ」
「せやねえ、『二人の幸せに』はもうやったけど、なんべんやってもよろしおすやろ。『二人の幸せに』」
「二人の幸せに」
「かんぱあい!」
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2014/08/14 10:57
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あやめ-明子、二人きりの酒宴。
グラスに投入される氷。
注がれるウィスキー。
グラスの腹を濡らす露。
いやあ、涼しげですねえ。
おいしそうですねえ。
夏の飲み物ですねえ。
ま、要するにロックなんですねえ。
ただし、アテはピーナッツとポテチ。
学生時代の酒宴を思い出すなあ。
で、現在、あやめにアテを作らせるかどうかを思案中。
外は暑いしなあ、また買い物に行かせるのもかわいそうだし。
要するに作者は、先のことをなーんにも考えんと書いとるのですね。
しかし、話のタイミングが季節にぴったしだね。
別に企んだわけではないのだが。
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2. Mikiko- 2014/08/14 19:24
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ええかげんにしなはれ。
下痢ピーになりまっせ。
アテは……。
出前を取ればいいんでないの。
ハモとか、寿司とか。
そうだ。
料理人ごと呼べばいいんだ。
ネタと包丁持ってすぐ来いと。
明子なら、そのくらいの強権は発動できるんでないの?
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3. ハーレクイン- 2014/08/14 20:58
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ま、それは確かにあるんですが、それが発動されるのは次回以降。
乞う、ご期待。
それより、二人の酒宴のアテ。
ここはあやめに作ってもらわんと、どもならんでしょうが。
ハモは難しおすが……、
次回、乞うご期待。
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4. Mikiko- 2014/08/15 08:08
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ポテチとピーナッツでアテを作るわけね。
↓こんなのがありました。
http://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1750011306/
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5. ハーレクイン- 2014/08/15 09:51
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子供のおやつ、という感じですね。
練乳というのがな、どうもな。酒には合いそうにないが。
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6. Mikiko- 2014/08/15 12:28
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ウィスキーには合うと思います。
ウィスキーの牛乳割り、美味しいよ。
今も飲んでます。
そうか。
いっそ、あのデザートの中に、ウィスキーを混ぜればいいんだ。
食べるお酒ってのも、面白いよね。
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7. ハーレクイン- 2014/08/15 14:23
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気持ち悪くなってきた。
わたしは近頃、焼酎の水割りです。
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8. Mikiko- 2014/08/15 19:31
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カルピスのメロン味割りを飲んでます。
難点は、使い切るまでに飽きてしまうことですね。
今夜は、ピーチジュース割りにします。











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