Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #70
コメント一覧へジャンプ    コメント投稿へジャンプ
戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式)アイリスの匣#70



 京都祇園の料亭「花よ志」は大騒ぎになっていた。
 裏庭で、誰とも知れぬ遺体が発見されたのだ。
 パトカーが駆け付け、警官が押し寄せる。
 野次馬が店の前を取り巻く。
 とうてい、店を開けられる状況ではなくなっていた。

「花よ志」の大広間にはすべての従業員が集められ、遺体を見せられたうえで、順に小部屋に呼ばれて事情聴取を受けていた。
 女将の志摩子は、事情聴取の後自室に戻り、仲居頭のお道に当たり散らした。

「もう、なんやのん! どういうことなん、一体!!」
「へえ」
「へえ、やないわ!」
「はあ」

 志摩子は、お道を一喝した。

「はあっ、て、おまんはうちを馬鹿にしとんのか!」
「いいえ、そないなこと、めっそうもおへん。ほんでも、うちにもどないなってんのか、さっぱり……」
「なんで、うちの庭に死体なんぞ……」
「へえ」
「自殺なん、他殺なん?!」
「さあ、それは……警察の調べ待ちどすなあ」

 志摩子はお道を睨め付ける。

「まさか……食中毒やないやろね」
「そんな、おかみさん。めっそうもない」
「なに言うてんねん。噂云うのんはこういうとっから広がるんや。いや、噂を流すやつがおるんや」
「へえ……」

 お道は俯いた。
 志摩子は大声でわめく。

「ええいもう。どっちゃにしても気色(きしょく)の悪い。
 お道!! 塩撒き、塩や!!
 店中の塩、撒き倒すんや!!
 ほんで、酒や、酒もっといで!」
「へえ」

 お道が、そそくさと座敷を出かかる。その鼻先に刑事が立ちふさがった。

「おおっと」
「あ、すんまへん」
「お道さんでしたなあ。女将さんにもう少し、お話をお伺いしたいんでっけど」
「へえ、あの……」
「あきまへんか」

 お道は、刑事の耳元に口を寄せ、囁いた。

「あの、女将はん、爆発寸前ですので、そのあたりよろしゅう」
「はあ、心得ました」

 座敷の中から、癇性な甲高い声が上がった。

「なんしてんねん、お道!」
「あ、へえ……あの、刑事はんが……」
「刑事ぃ。これ以上警察がうちに何の用や!
 塩撒け、塩撒いて追っ払い!
 警察なんぞに用はないわ!!」

 刑事は、悠然と座敷に入った。
 志摩子は、睨みつける。

「なんや、なんの用や!
 これ以上祇園『花よ志』に土足で踏み込むんやない!
 下劣な官憲なんぞに、これ以上用はないわ!!」
「まあまあ、女将さん。わたしらも仕事ですんで、もう少しご協力を」

 志摩子は、座敷に座り込んだ刑事を睨みつけた。

「なんやねん、一体! そもそも、裏庭に死体って、一体どういうことやねん!」
「はは、それは儂らもぜひ知りたいとこですんで。そのために是非ご協力を」
「御協力もなんも、さっき散々取り調べられましたわいな。ほんまに無礼な。うちが犯人や言うんかい! これ以上、何やっちゅうねん!」

 お道が、盆の上に銚子と盃を乗せて戻ってきた。

「女将はん……」
「ああ、お道、酒、酒や。もう辛抱たまらんわ」
「へえ、女将はん。どうぞ」

 お道は銚子を取り上げ、志摩子の前にかざす。
 志摩子は酌を受け、一気に飲み干した。

「お道、もう一杯や」
「へえ、女将はん」

 志摩子は、注がれた酒を再び一気に飲み干し、ついでに前の刑事を睨みつける。

「よろしおまっか、女将さん」
「なんやねん。こっちはいわば被害者や。死体の出た料理屋やなんて……今日は商売にならんし、明日っからも客くるかどうか。
 いや。ほやのうて(そうでは無くて)、なんでこんな取り調べみたいなことされんならんねん」
「いやあ、取り調べて、そういうことではのう(無)てですな。女将さんやないとわからん店の事情とか、そういうことをですな……」
「なんやねん! 店の事情て。この機会に『花よ志』の台所(だいどこ)を嗅ぎまわろうっちゅうんかい! おまんは税務署の回しもんか!」

 お道は、志摩子をなだめるように銚子を取り上げる。
 志摩子は、注がれた酒を再び一気に飲み干した。

「いやいや、そういうことではのう(無)てですな」
「なんやねん!!」
「すんまへんなあ、これも儂らの仕事でっさかいに」

 志摩子は、髪に差したかんざしを抜き、いらいらと頭を掻いた。

「ほんで? なんやのん、あの死体は、気色の悪い」
「ほれを今調べとるとこで。ほの為にもどうぞご協力を」
「ふん、で、何を聞きたいんや」

 志摩子は、煙管に刻みを詰め、いらいらと火を付ける。煙管の先は志摩子のいら立ちを表すように激しく上下した。付かない。
 お道がライターの火をかざし、器用に火を付けた。
 志摩子は大きく煙を吸い込み、盛大に吐き出す。室内に煙が広がった。

「で、女将さん。しつこいようでっけど、あの死体に見覚えは……」
「ない! 言うとるやろが。ほんまに気色悪い。なんでうちの庭にあんなもんが……」
「はは、お気持ちお察し致します」
「ふん」
「で、ですな。従業員全員のお方にお話を伺いたい、と、こういうことでんねんけど」
「勝手に聞いたらええやないか。さっきみんなを集めとったやろ」
「そこでんねんけど。あれで全員ですやろか」
「全員やろ。パートやアルバイトまでは知らんわ」
「今日、お休みのお方は……」
「そんなん、うちが知るかい! そこのお道に聞き!!」

 お道は、横から口を出した。

「今日は、仲居も板場も珍しゅう皆、揃とります」
「そうでっか……」
「あ……」

 お道は顔を上げ、声を上げた。
センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #69】目次センセイのリュック【幕間 アイリスの匣 #71】

コメント一覧
コメント投稿へジャンプ    ページトップへ

    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2014/07/01 09:06
    • 「花よ志」の裏庭に死体!
      驚天動地(ちょっとオーバー)の展開です。
      始まる警察の取り調べ。
      久美はどうしているのでしょうか。そして、源蔵を始め板場の面々は……。
      >志摩子「まさか……食中毒やないやろね」
      料理屋で、死体とまではいかなくとも、病人が出ると真っ先に心配するのが食中毒です。そういう意味では志摩子女将、立派な経営者ですね。
      ガラは悪いけど。
      >志摩子「下劣な官憲なんぞに、これ以上用はない」
      >志摩子「おまんは税務署の回しもんか!」
      ほんまに、どんどんガラが悪くなっていきます、志摩子女将。
      というより、地が出て行ってる、ということかな。
      ということでございまして、突如始まりました「『花よ志』裏庭変死事件」。
      どう展開していくのでしょうか。そしてどう解決するのでしょうか。あやめはどう絡む?!
      待て! 次回。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2014/07/01 19:56
    •  いきなりな展開ですね。
       今『花よ志』に来てる刑事は、所轄の刑事なんでしょうね。
       殺人事件と断定されたら、京都府警が出張って来るんでしょうか?
       狩矢警部が来るといいんですけど。
       志摩子はん。
       現場に、塩なんか撒けないと思いますぞ。
       以前勤めてた会社に、空き巣が入ったことがありました。
       ケチな会社で、警備会社と契約もしてなかったので……。
       まんまと、裏口の窓を破られて侵入されました。
       被害は、机の引き出しに入れてた小銭程度でしたけど。
       翌日、鑑識みたいな人がたくさん来て……。
       従業員全員、指紋を採られました。
       両手の10本の指、全部だったんじゃないかな。
       なかなか面白い体験でした。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2014/07/01 20:50
    • そう言えばかなり前だけど『ショカツ』という警察ドラマがありました。
      主人公を演じたのは松岡昌宏。
      原作は佐竹一彦『ショカツ』。佐竹は元警察官です。最終階級は警部補。
      狩矢警部って誰や、で調べてしまった。
      有名なドラマのようですね。
      >現場に塩なんか撒けない
      ああ、それはそうですね。
      ま、その場の勢いで言ったと思ってください。
      指紋採取。
      「花よ志」の従業員も全員取られたんだろうね。
      志摩子女将も。で、よけいにカッカしてるんや。
      学生時代の部活(例のバンド活動)で、部費の通帳が盗まれるという事件があり、部員全員指紋を取られました。
      数日して、一円も引き落とされないまま郵送で返却されてきましたが、今度はその封筒の筆跡を調べるということで、筆跡鑑定をやられました。
      あまり思い出したくない思い出です(ん?)。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2014/07/02 07:43
    •  空き巣事件のときは、社員が疑われてたわけではなく……。
       現場で採取される指紋から、内部の者の指紋を除外するために必要だったわけです。
       通帳は盗んでみたものの……。
       印鑑が一緒に無かったんですね。
       そう言えば、昔の通帳には、印影が押してありました。
       三文判ではなく、ちゃんとした銀行印だったので、どうしようも無かったのでしょう。
       そうこうしてるうちに、警察まで来たので、驚いて返送した。
       でも、通帳に住所まで書いてありましたっけ?
       書いてなければ……。
       内部犯行ってことですよね。
       筆跡。
       パソコンが無かったころのお話ですねー。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2014/07/02 08:45
    • 指紋は無かったそうです。拭き取ったんでしょうね。
      で、筆跡鑑定になったわけです。
      もちろん、犯人の住所・氏名が書いてあるわけないです。
      大学の事務局あてに返送されたので、その住所の文字を基の鑑定でした。
      最後どうなったのかといいますと、この筆跡鑑定を受けた最初の2,3人は無茶苦茶不愉快な思いをさせられました。ほとんど犯人扱いなんですね。そのうちの一人がわたしでした。
      で、皆で話し合って、「こんな嫌な思いを他のメンバーにさせるのはやめよう」ということで、犯人探しは断りました。
      警察も、学生のことだし……、ということでそれ以上の追及はしませんでした。つまり、犯人はわからずじまいでした。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2014/07/02 19:49
    •  それが一番利口な幕引きでしょう。
       ところで、通帳には、いくら入ってたんだ?

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2014/07/02 20:28
    • まったく記憶にありませんが、当時の、しかも学生としては、けっこうな金額だったと思います。なんせ、楽器が買えるだけの金額だったからねえ。
      楽器といっても、ハモニカやカスタネットや、トライアングルではないぞ。

    • ––––––
      8. Mikiko
    • 2014/07/03 07:28
    •  ↓サックスなどの管楽器で、プラスチック製のものが紹介されてました。
      http://matome.naver.jp/odai/2137890208438387701
       ライブでも十分使える音質だそうです。
       値段は、サックスで3万円代。
       わたしからすれば、「高い!」ですが……。
       金属製のものと比べたら、破格に安いそうです。
       でも、これを買うのは、女性が多いとか(軽いという理由もあるようです)。
       男性は形から入りたがる人が多く、いきなり金属製を買うみたいです。

    • ––––––
      9. ハーレクイン
    • 2014/07/03 10:22
    • うーむ、信じられん。
      どんな音質なんだろう。
      サックスが3万!
      なんと……。
      絶句するしかありませんな。
      本来の金属製のものは安いもので数十万、高いものはキリがありませんが、プロは最低でも百万以上のものを用いるようです。
      プラ製管楽器。
      フルートもあるようですね。
      試奏を聞いてみました。
      ま音質は、奏者の技量もありますから何とも言えませんが、楽器自体の見栄えは……どうもなあ、という感じです。
      やはりフルートは……あの、銀色に光り輝く姿が持ち味です。
      サックスは金色だね。

    • ––––––
      10. Mikiko
    • 2014/07/03 19:43
    •  男性は、そういう感想を抱く方が多いようですね。
       プラ楽器は軽いから、練習してても疲れないんじゃないの?
       ま、腕が疲れるほど練習する人もいないか。

    • ––––––
      11. ハーレクイン
    • 2014/07/03 20:33
    • 楽器の重さというよりも、構え方・姿勢という要素の方が大きいんじゃないかなあ。つまり、金属製でもプラ製でもそんなに変わりはないのでは。フルートについての感想ですがね。
      女性の場合はわかりません。
      でも、凛々しいよね、女性のサックス奏者。
      女性のフルート奏者が美しいのは言うまでもありません。
    コメントする   【センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #70】
コメント一覧へジャンプ    ページトップへ


Comment:本文 絵文字  ※入力できるのは、全角で800字までです。

↓お帰りのさいには↓
愛のワンクリ お願いします
新しいウィンドウは開きません

相互リンクサイトのみなさま(Ⅰ)
問答無用の吸血鬼R18 新・SM小説書庫2 Japanese-wifeblog 愛と官能の美学
知佳の美貌録 未知の星 熟女と人妻エロンガ 赤星直也のエロ小説
[官能小説] 熟女の園 電脳女学園 官能文書わーるど 只野課長の調教日記
ちょっとHな小説 都会の鳥 人妻の浮気話 艶みるく 西園寺京太郎のSM官能小説

相互リンクサイトのみなさま(Ⅱ)
熟女・おばさんの性体験談 黒い教室 人に言えない秘密の性愛話 Playing Archives
被虐願望 女性のための官能小説 性転換・TS・女体化劇場 性小説 潤文学ブログ
羞恥の風 女の陰影 女性のH体験告白集 変態小説
むね☆きゅんファンサイト 週刊リビドー かおるの体験・妄想 ぺたの横書き
あおいつぼみ 葵蕾 最低のオリ 魔法の鍵 Mikiko's Roomの仮設テント
恥ずかしがりたがり。 官能的なエロ小説 濠門長恭の過激SM小説 淫芯

相互リンクサイトのみなさま(Ⅲ)
お姫様倶楽部.com 被支配中毒 出羽健書蔵庫 かめべや
HAKASEの第二読み物ブログ 女教師と遊ぼう 平成な美少女ライトノベル 官能の本棚
禁断の体験 エッチな告白集 おとなの淫文ファイル エッチのあとさき 恥と屈辱の交差点 潤文学
ましゅまろくらぶ 空想地帯 恍惚團 ~ドライ・オーガズムの深淵~ Angel Pussy 週刊創作官能小説
ろま中男3 渡硝子の性感快楽駆け込み寺 漂浪の果てに アダルト検索一発サーチ

快感小説 SM・お仕置き小説ブログ 官能秘宝園 制服美少女快楽地獄
秘密のエッチ体験談まとめ 18's Summer 淫鬼の棲む地下室 被虐のハイパーヒロインズ
ひめ魅、ゴコロ。 おしっこ我慢NAVI 妄想ココット ライトHノベルの部屋
レズ画像・きれいな画像倉庫 riccia 調教倶楽部 ちょっとHなおとなのための…
緊縛新聞 Eros'Entertainment オシッコオモラシオムツシーン収集所 エピソードセックス
マルガリテの部屋 アダルト官能小説快楽機姦研究所 渋谷子宮 RE:BIRTH 羞恥集
黒塚工房 プライド 女性作家専門官能小説 官能小説 レイプ嗜好
人妻!人妻!人妻! wombatの官能小説 黒イ都 羊頭狗肉
ひよこの家 美里のオナニー日記 エロショッカー軍団 相互リンク、募集してます!
★相互リンク募集中!(メールしてね)★

ランキング/画像・動画(1~10)
シンプルアダルト動画サーチ 人気ブログランキング
にほんブログ村 ライブドアブログ
官能小説アンテナ エログちゃんねる
官能文章アンテナ アダルトブログランキング


ランキング/画像・動画(11~30)
GL Search Adult Novels Search オンライン小説検索・R小説の栞 おたりんく








<ランキング/画像・動画(31~50)ここまで-->
△Top