2014.5.13(火)
「明子はん」
「なあに、あやめさん」
「今日はおおきに、ありがとさんでございます。こんな素敵なお料理、頂かせていただいて」
「なに言うてはりますのん。これはあやめさんのお料理へのお返しどすがな」
「そんな、とんでもおへん。うちの料理なんて……」
「なにをそないに謙遜しはるのん。あなたのお料理はほんまに凄おすのに」
「明子はん」
「なあに、あやめさん」
「さっきの『ニルス』のお話。もう少し聞かせていただけますやろか」
「『ニルス』どすか。長(なご)なりますえ」
「へえ」
あやめは銚子を取り上げ、明子の杯に酒を注いだ。明子は、酒を含んだ後、ひと呼吸おいて語り始めた。
「ニルスは腕白な少年でしてなあ。
なまけもので、勉強は大嫌い。いたずら好きで、家畜たちをしょっちゅう虐めとりました」
「へえ」
「友達にも嫌われとりました」
「へえ」
「両親も持て余す腕白少年どした」
「へえ」
「ある日、家に住みついていた妖精を怒らせてしまい、魔法を掛けられて小さな体にされてしまいます」
「へええ」
あやめは銚子を取り上げ、明子の杯を満たした。
「おおきに」
飲みほした明子は話を続ける。
「で、小さくなったニルスは、動物とお話が出来るようになるんですね」
「へえ、それはすごいですね」
「で、ニルスの家では、ガチョウを一羽、飼っていたんですね。名前はモルテン」
「へえ」
「このモルテンが、渡り鳥のガンの群れにからかわれるわけです。地上をのたのた歩くしかない情けないやつ、とね」
「へえ」
「で、負けん気を出したガチョウのモルテン、精一杯羽を広げ、空に飛び立ちます」
「はああ」
「飛び立とうとするモルテンを、ニルスは止めようとします。で、はずみでそのモルテンの背に、小さくなったニルスが乗り、ガンの群れに加わってスウェーデン旅行が始まるわけどす」
「へええ」
今度は、明子が銚子を取り上げ、あやめの杯に酒を注ぐ。あやめは一気に飲み干した。
「ガンたちの目的地はスウェーデン最北部のラップランド。サンタクロースの住む地、とされるところですね。で、ガンたちの故郷でもあります」
「はあ」
「旅が始まった最初の夜、ガンたちと、モルテン、ニルスは、とある湖で眠ります。そこへキツネが襲い掛かります。ニルスは、小さい体で精いっぱい戦い、キツネを追い払います。
この様子を見たガンの群れの隊長、雌ガンのアッカはニルスの勇気を褒め、モルテンとニルスが同行するのを許します」
「ははあ」
「で、翌日から、ラップランドへ向けた本格的な空の旅が始まります。その後、様々な冒険、エピソードが展開されるわけですが、ここから先はそれこそ切りがおへんので端折りましょう」
「へえ」
明子とあやめは、互いの杯に酒を注ぎ合った。
「この旅行の途上、アッカ隊長の励ましや叱咤を受け、様々な経験を重ねることで、ニルスは成長していくわけですね。
他者を思いやる心、勤勉に働くこと、困難に立ち向かう勇気……などを身に付けていきます」
「ちょっとお説教っぽいですね」
「まあ、『ニルス』はスウェーデン政府が、子供たちにスウェーデンの地歴を教えるため、という目的でラーゲルレーヴに執筆を依頼したものですからねえ。ある程度のお説教臭さはしょうおへんわねえ」
「ははあ」
「物語の最後に行きましょう。ラップランドから南へ向かうガンの群れと共に、ニルスとモルテンは故郷に戻ります」
「へえ」
「で、無事に故郷にたどり着いたニルスは妖精の魔法が解け、元の体に戻ります」
「へええ」
「両親は、逞しく、正しく成長したニルスを温かく迎える。で、さらに南の地を目指し飛び立っていくガンの群れ。見送るニルス、とこういうお話どすね」
「ふうん」
「それよりあやめさん、次のお料理、来ましたえ」
入って来た若い仲居が、小鉢を置きながら声を掛けた。
「箸休めどす」
箸休めは、料理と料理の間に出され、客の気分転換を促す小料理である。
短冊に切ったダイコンと、柚子の皮の千切りを和えてある。上に散らしてあるのはパセリのみじん切り。十分に冷やしてある。
あやめは一口、口に運んだ。
甘酸っぱい味が広がる。
(米酢、薄口醤油に砂糖、か……それに塩)
それにもちろん、ゆずのしぼり汁。
あやめの口から咽喉にかけ、さわやか、としか言いようのない味が滑り降りていった。
かんたんな料理であるが夏の味である。
あやめの緊張感は更にほぐれ、浮き立つような思いになっていった。
若い仲居は、次の料理を運んできた。
「鮎(アユ)でございます」
大きな籐籠に笹の葉を敷き、塩焼きにしたアユを数匹乗せてある。
川魚であるアユは、川底の石などに付着するいわゆる水苔を食物とするため、独特の香りがする。そのため、別名「香魚」とも呼ばれる。
日本料理では、魚介類は刺身で食するのが一般的であるが、アユについては例外で、塩焼きにするのが最も味と香りを引き出せるとされている。
アユ漁の解禁は、京都では6月上旬が多い。初夏から夏にかけては、アユの香りが最も引き立つ季節である。今、京のアユは、まさに匂い立つような旬であった。
あやめは、アユを一尾取り上げた。別に添えてある柳葉皿に載せる。柳葉皿は、特に魚の焼き物によく用いられる細長い皿である。名前の通り、両端が細くなった形のものもあるが、長方形のものもある。
いい形の鮎であった。小型のものなら骨ごと食べられるのだが、このくらいの形のものになると中骨を抜いたほうが食べやすい。これを「アユの骨抜き」という。
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2014/05/13 08:38
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ニルス、モルテンはともかく、鮎(アユ)。
アユ漁の解禁はだいたい6月。これ以前に獲ってはいけません。
6月以前にアユが出てきたら、養殖物ということですね。
養殖物と自然物。
全く異なります。
アユの持ち味は何といってもその香り。
なんせ「香魚」ですからねえ。
養殖物にはほとんど香りが無いとか。
知らんで、聞いた話や(わはは)。
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2. Mikiko- 2014/05/13 19:42
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いくらなんでも、鮎に振り仮名はいらんのでないの?
子供のころ、県内の簗場に連れてってもらったことがあります。
↓のどっちかだと思うのですが……。
http://kawaguchiyanaba.s1.bindsite.jp/
http://www.hoyumedia.com/co/bk/yanaba/
距離から云って、越後川口でしょうかね。
味の記憶はほとんどありません。
その後、大人になってから、鮎を食べただろうか?
とんと、覚えがありません。
スイカやキュウリの香りがするそうですね。
香りの違いは、食べてる苔の違いから来るのだとか。
水質が良いほど、スイカの香りがするそうです。
スイカを食わせたら、どうなるんだろ?
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3. ハーレクイン- 2014/05/13 21:49
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越後川口簗場さん
ふうむ。
お昼定食1600円、けっこうなお値段どすなあ。
・鮎塩焼き(一尾)
・鯉洗い
・サケフライ(なんじゃこりゃ)
・ご飯(魚沼産コシヒカリ、ま、越後や、そらそやろ)
・みそ汁
・小鉢
アユも鯉もサケもよろし。
わたしが知りたいのは「小鉢」ですね。
なんですやろ。
「小鉢」の中身。
教えとくんなはれ、越後川口簗場はん。
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4. Mikiko- 2014/05/14 07:44
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確かに、ちょっと引きますね。
サケフライに、キャベツの千切りくらいは付くのでしょうが……。
野菜不足は否めません。
小鉢は、キュウリの酢の物か何かでは?
本物のキュウリで、鮎の香りを補ってたりして。
↓単品メニューには、ラーメンもありましたが……。
http://kawaguchiyanaba.s1.bindsite.jp/menu.html
これからの季節、冷し中華とかザル蕎麦がいいんじゃないでしょうか?
わたしが選ぶとしたら……。
「鮎のフライ(840円)」、「白飯・お香みそ汁付(260円)」、「漬物(420円)」でしょうか。
これだけで、1,520円!
やっぱり、定食のほうがお得のようです。
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5. ハーレクイン- 2014/05/14 08:40
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は、まだしも、
漬物420円、はなんぼなんでも……
何のどんな漬物でっか、越後川口簗場はん。
うちの近くの山中に、鮎釣りの川場があります。
深い谷底でね、道からは深く見下ろすほど。
ようやるわ、と見下ろして通り過ぎますが、今年もそろそろ季節ですな。
釣り師たちはうずうずしてるんでしょうね。
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6. Mikiko- 2014/05/14 19:39
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侮れません。
丼ひとつ分、出てくる場合もありますので。
大量に食べられることでは、枝豆が有名ですね。
↓新潟の居酒屋で枝豆を注文すると、このくらい出てきます。
http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20140514124847b6e.jpg
鮎釣り。
トイレ問題があるので、女性釣り師は少ないのでしょう。
胸まであるゴム長を脱ぐだけでも大変だよ。
あ、これは男性も一緒か。
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7. ハーレクイン- 2014/05/15 01:06
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こちらではこういうのを……、
「アホほど出てくる」いいます。
どうぞよろしゅうに。
鮎釣り。
ほんまに、解禁が楽しみですなあ。
アユくんにとっては大変ですが。
しつこいようですが、鮎は「香魚」。
楽しみですなあ。
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8. Mikiko- 2014/05/15 07:19
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知りませんでした。
ハーさんに釣られる鮎なんて、おるのか?
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9. ハーレクイン- 2014/05/15 08:34
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全くやったことおへん。
食べるのが趣味どす、鮎。
で、授業で喋るわけですね「アユの友釣り」。
受験で必須です「アユの友釣り」。
アユの鼻といいますか口といいますか、に釣り針を付けます。
で、その釣糸に釣り針を数個、つける。
そしてそのアユを泳がせるわけですね。
泳がせたアユが縄張りに入る。
縄張りの主は「この野郎、出てけ」で、体当たりをかませます。で、針に引っかかって釣り上げられると、こういうことです。
実にヒキョーな釣り方ですね、鮎の友釣り。
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10. Mikiko- 2014/05/15 19:36
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友釣りについて、いったいどういう問題が出るんだ?
胴長に関係するか?
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11. ハーレクイン- 2014/05/15 21:14
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その通りですがね。
友釣りの原理を問われるわけですがね。
要するに「アユは縄張りをもつ」「非常に攻撃的な動物である」という知識を問われるわけです。
ま、「縄張り」という知識を問われるわけですね。
勇ましいなあ、鮎。
受験に胴長は出ません。
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12. Mikiko- 2014/05/16 07:46
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中学生でも知ってるんでないの?
それより、胴長にドジョウが潜り込んだ時の対処法とかを問うた方が、有用ではないのか?
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13. ハーレクイン- 2014/05/16 11:16
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中学生でも知ってる。
そうかなあ。
わたしは高校で習ったように記憶しているが……。











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