Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
センセイのリュック/幕間 アイリスの匣 #53
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戯曲『センセイのリュック』作:ハーレクイン



幕間(小説形式) アイリスの匣 #53



 翌朝、あやめと久美は、祇園「花よ志」の裏口を出た。あやめは小型のディパックを背負い、久美は大型のウェストポーチを腰に巻いていた。あやめが、久美に問いかける。

「どこ行くの、久美」
「まあまあ、そないに急がんと。とりあえずそこらでお茶、しよ」
「せやねえ」

 あやめと久美は、普段のお仕着せ、板場の作業衣と仲居の和服を脱ぎ、上はTシャツ一枚、下はジーンズという軽装で、京都最大の通り、四条通(しじょうどおり)を連れ立って歩いた。西に向かう。
 すぐに阪急電車の終点、河原町駅に行き当たる。ただし電車は地下を走っている。ここを右に、北方向へ折れると京都の繁華街の一つ、新京極通(しんきょうごくどおり)である。アーケード街になっており、各種商店、土産物店、飲食店などが立ち並ぶ。寺院や映画館もある。そんなに長い通りではない。500m程であろうか。北が、三条通、南が四条通に接している。

 あやめと久美は新京極通には入らず、そのまままっすぐ歩き続けた。四条通の歩道は、同様の軽装の若者たちでごった返している。とうていまっすぐには歩けない。やがて烏丸通(からすまどおり)との交差点に行き当たった。ここにも阪急電車の駅、烏丸駅がある。久美は、通り沿いの一軒の喫茶店にあやめを誘った。

「うっわー、涼(す)っずしいー」

 背中を伝う汗が一気に引いていく。あやめと久美は思わず微笑みあった。

「何にしはります?」

 声を掛けるウェイトレスに久美は答えた。

「うち、れーこ(冷コーヒー;アイスコーヒー)。あやめは、何にする」
「うちはホット」
「えー、この暑いのにホットかいな」
「なに言うてんのん。暑い時に熱いものを飲む、この方が暑さ凌ぎになるんやで」
「えー、ほうなん、初めて聞いたわ」
「ま、覚えときよし」

 ウェイトレスが注文を確認する。

「ほな、アイス一つ、ホット一つですね」
「へえ、お願いします」
「かしこまりました」

 ウェイトレスは盆を片手に歩み去る。

(えらいスタイルのええ子やなあ)

 あやめは、ウェイトレスの後ろ姿に見とれた。顎をしっかり引き背筋はすっきりと伸びている。ウェストの括れ、尻の張り、腿から脹脛へかけての締まりも見事である。足首は、俊敏な草食動物を思わせた。

「こら、あやめ。何を見とれてんのん」
「え、見とれるって?」
「とぼけるんやないわ。あのお運び姐ちゃんの尻、食いつきそうに見てたやん」
「お運びって……ウェイトレスやろ」
「ごまかすんやない、そういうことやないやろ」
「もう。ただ『綺麗やなあ』て思(おも)ただけやないの」
「ふん、何とかものにして、全身舐めたおそ、とか思てたくせに」
「もう、久美がおるのにそないなこと……」
「ほな、今すぐキス、し」
「えー、こないなとこでぇ」
「こないなとこもあないなとこもあるかいな。でけんのか。でけんねんやったら、うちらの仲もこれまでや」
「もう……」

 あやめは、すばやく店内を見回し、身を乗り出して久美の唇にキスを与えた。すぐに身を引こうとするあやめの後頭部を、久美の両手が捉えた。引きつける。あやめの唇を割って、久美の舌が侵入した。

「うぶ」
「むむむむむ」

 離れようともがくあやめの視界の隅に、近づいてくるウェイトレスの姿が入った。あやめは、テーブルの端に手を突き、強引に久美から身を引いた。

「お待たせしました」

 ウェイトレスは、久美の前にグラスを、あやめの前にコーヒーカップを置いた。手を引きながら、さりげなくあやめの手の甲に指を這わせる。思わず見上げるあやめに、ウェイトレスは軽く微笑みかけた。

(ええねえ。仲がおよろしゅうて)

 あやめは、ウェイトレスのそんな言葉が聞こえたような気がした。俯き、立ち去って行くウェイトレスの後ろ姿を、横目で再び見やる。

「ええかげんにしいや、あやめ」
「だあって久美。見られたよ」
「ええやないの、見られたって。別に悪いことしてるわけやなし」
「それはせやけど。ほんでも、公然わいせつ罪になるんやないん?」
「この程度でなるかいな」

 久美はミルクとシロップをグラスに流し込む。鷲掴みにしたグラスを口元に持って行き、一気に半分ほどのコーヒーを流し込んだ。

「はあー、なんや豪快やねえ、久美。ストロー、使わんのん」
「面倒(めんど)いわ、そんなもん」

 あやめはカップを持ち上げた。ミルクも砂糖も入れない。一口啜り込んだ。

「あ、おいしい」
「せやろ。結構有名やねんで、この店。それより、あやめ。ブラックかいね」
「うん」

 あやめは、カップを皿に戻した

「美味しい店、よう知ってんねやねえ、久美」
「あやめが知らな過ぎるんよ。ほとんど出歩かんやろ」
「せやねえ。そもそも、お休みが無いもんね。店が暇な時間帯は、なんやかんや料理の練習とかしてるしねえ」
「ほんまに真面目やねえ、あやめ」
「真面目いうより、好きなんよ、料理が」

 あやめは、もう一口コーヒーを啜った。

「ほんでもあやめ。子供のころ、街中に遊びに来たりせんかったん?」
「うーん。学校は小中高と叡電(叡山電車)の、鞍馬線の沿線やったし、終わったらすぐ家に帰って、厨房の手伝(てった)いとかしとったしねえ」
「はあー。ほんまに真面目というか……。うちなんか高校の頃は遊びまくってたけどねえ」

 久美は残りのコーヒーを一気に空けた。ついでに、角氷を一つ口に含む。

「なあ、久美。『花よ志』に勤めるようになったんはどういう経緯なん」
「いやあ、それがな。その、遊びまくった崇りで、高校中退になったんよ」
「え、ほうなん」
「で、うちでぶらぶらしてたら、親戚のおっちゃんに『花よ志』に出入りしてる植木職人さんがおってな。『いつまいでもそんなことしとったらあかん』て説教されて、紹介してもろたんや『花よ志』」
「ふうーん」
「慣れん頃はもう嫌でなあ。いっつも辞めることばっかり考えてたんやけど、ほんなんしたらおっちゃんの顔、潰すしなあ。何とか辛抱してたらだんだん慣れてきて……。しやからうち、『花よ志』では結構古顔や。ほのおかげで、あやめに会えたわけやけどな」
「ふうーん」

 あやめは改めて久美を見詰めた。

(いつもお気楽そうにしているけど、それなりに苦労してるんやなあ)
(うちのこと、よう気に掛けてくれるし)
(ええ子やなあ)

 あやめは身を乗り出し、自分の唇で久美の唇に触れた。
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コメント一覧
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    • ––––––
      1. ハーレクイン
    • 2014/03/04 09:29
    • 関西外の方は、まず間違いなく「からすまる」とお読みになると思います。そそっかしいお方は“とりまる”とか。あ、失礼。
      わたしも子供の頃はそうでした。正しくは「からすま」や、とはじめて知ったとき、「なんでやねん、おかしいやんけ」と思ったのを覚えています。
      ま、固有名詞というのはそういうものでしょうね。
      「れーこ」。
      いわゆるアイスコーヒーの関西での呼称です。
      ただし、いささか品が落ちます。関西でも上品なお方はあまり使われないかな、と思います。
      関西外では通じないでしょうね。
      ああ、イントネーションが伝わりませんね。“麗子”ではありません。
      →→↑なんですが……。
      あやめと久美。
      初めての、連れもって(関西語;連れ立って)のお出かけです。
      どこへ行くのかなあ。
      ほれにしても、季節感のないお話になってしもたなあ。ま、しょうおへんけんど。

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2014/03/04 20:26
    •  烏丸せつこという女優が出て以来……。
       “からすま”の正解率は上がったんじゃないかな。
       “れーこ”は、こっちではまったく通じません。
       喫茶店で注文しても、ウェイトレスさんが目を丸くするだけでしょう。
       喫茶店に、最後にコーヒーを飲みに入ったのは、いつのことだったかな。
       記憶が無いほど昔のことです。
       最近、金曜日は、焼酎のコーヒー割りを飲むようになりました。
       朝、3時半に起きてるので、飲んでると眠くなるんです。
       コーヒーのペットボトル(900ml)って、スーパーで100円しないんですよね。
       ただ、胃には少々キビしいみたいで、翌朝、少し痛みます。
       本日は、休肝日。
       インスタントのしじみの味噌汁を飲んでおります。
       これはこれで、なかなかイケます。

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2014/03/04 21:20
    • ああ、はいはい。いてはりましたなあ。
      近頃、あまりお見かけしませんが。
      そうか、このお方のおかげで「からすま」が全国区になりましたか。
      滋賀県大津市ご出身だそうです
      「四季・夏子」「駅STATION」は懐かしいですねえ。
      「れーこ」、は、やはり関西でしか通用しないようです。
      ウェイトレスさんは……ま、今後お楽しみ。
      インスタントしじみ汁。
      あの、インスタントのやつですよね(ようわからんぞ)。
      いっつも、横目で見て通りますが、ふむ。
      今度試してみるかな。

    • ––––––
      4. Mikiko
    • 2014/03/05 07:52
    •  部屋が味噌汁臭くなりましたが……。
       味は、まずまずでした。
       3杯も飲んでしまった。
       1杯で、しじみ70個分と書いてあったので……。
       きのうは、210個分も食べたことになります。
       といっても、十三湖のしじみを想像しちゃダメですよ。
       個体も入ってますが、たまげるほど小さいです。
       小指の爪ほどもない。
       アリが背負えるくらい。
       こんな小さいしじみを捕っていいんでしょうかね。
       3杯も飲んで、塩分が心配だったのですが……。
       翌朝、血圧を測ったところ、むしろ普段より低めでした。

    • ––––––
      5. ハーレクイン
    • 2014/03/05 13:28
    • 美味そうですが3敗、あ、いや、3杯
      いっぺんにそないに……。
      ぼちぼちやりましょう。
      小指の爪ほどもない、小さいしじみ。
      それはあかんやろ。
      ま、入ってたら食うしかないが……。

    • ––––––
      6. Mikiko
    • 2014/03/05 19:59
    •  もうひとつの方を削除しておけばわからんのに。
       あやめさんが、どんなしじみ料理を作ってくれるか楽しみです。
       インスタント味噌汁に一工夫という手もあるな。

    • ––––––
      7. ハーレクイン
    • 2014/03/06 04:05
    • へ?
      間違い?
      もう一つの方を削除?
      意味わからんぞ。
      あやめのしじみ料理。
      ま、そりゃあ、
      作れというならなんぼでも作りますし、
      作るんなら、インスタントというわけにはいきまへんわなあ。

    • ––––––
      8. ハーレクイン
    • 2014/03/07 21:46
    • 紫式部なんかには「淫乱女」と罵られたそうですが。
      で、和泉式部の恋人が式部に送った歌が↓これ。
      ●五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
                          帥宮敦道親王
      返歌が↓これ。
      ●薫る香によそふるよりはほととぎす聞かばや同じ声やしたると
                          和泉式部
      京の繁華街、新京極通りに位置する誠心院という寺院に、和泉式部の破瓜、あ、いや、墓があります。
      ま、式部の墓は全国数十か所にあるそうですが。
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