2013.7.30(火)
「香奈、顏、上げ」
ああ、あやめだ、何か言ってる。
「顔、上げるんや」
なんて、何て言ってるの、あやめ。
「聞こえんのかい、香奈。顔上げ、言(ゆ)うとるんや」
香奈枝は、遠くに聞こえるあやめの声のとおり顔を上げようとするが、首から先は鉛のように重い。壊れた人形のようにうなだれた首は、言うことを聞いてくれない。
あやめ……ごめん。
あたし、もうだめ。
聞きたいんだよ。
あやめの言いつけだもん。
聞きたいんだよ。
でも、身体がもう、いうことを聞いてくれないんだよ。
ごめん、ごめんね、あやめ。
ごめん、許して……。
香奈枝の顔は不意に上を向いた。
目に入った薄暗い電灯の明かりは、今まで目を閉じていた香奈枝には、真昼の太陽のように眩しかった。
次の瞬間、香奈枝の首は激しく揺さぶられた。
「おい、香奈、上向け言(ゆ)うてんのに、何で向かんのや」
あやめだ。
あやめが、髪を鷲掴んで無理やり顔を上げさせ、激しく揺さぶっていた。
「おい、香奈。ぼーっとしとったら承知せんで」
「ああ……あやめぇ」
「あやめ、やないわ。なんや、その呆けたような顔は。もう、あかんのか、もう音ぇ上げたんかい」
「あやめ……」
香奈枝は、ぼんやりとあやめを見返すことしかできない。目尻には涙の痕が残り、半開きの口元からは絶え間なく涎の筋が糸を引いている。
「よおし、少し気合い入れたる」
言うなり、あやめは髪を掴んだまま香奈枝の頬に平手打ちを見舞った。肉が肉を打つ音が鋭く短く、室内に響いた。
「ひっ」
掴んだ香奈枝の髪を、今、頬を打った手に持ち替え、空いた手でもう片方の頬を張り倒す。容赦のない一撃だった。髪を掴まれていなければ香奈枝は床に倒れ伏していただろう。
「ひいっ」
香奈枝の両頬が真っ赤に染まる。とともに、あやめを見据える香奈枝の両目に生気が戻った。
「あやめっ」
「よおし、正気に戻ったな。ここから最後の仕上げや。ちゃんと見とくんやで」
「はいっ」
あやめは、海老の形に香奈枝を固定した縄の続きをさらに扱いた。香奈枝の両脚が胡坐の形に交差する位置は縄に巻かれている。その位置からは、香奈枝の両肩に向け、それぞれ縄が伸びている。この二本の縄筋が、香奈枝の上体をその脚に向けて折り曲げ、海老の姿勢を強制しているのだ。
あやめは、この二本の縄筋を一筋に束ねる様に、縄の続きを固く巻き付けて行った。香奈枝の脚の側から肩の方に向け、丹念に、隙間なく巻いていく。巻きが進むにつれ、元の二本の縄筋は太くまとめあげられ、野太い縄束に変貌していく。それは、先ほど香奈枝が渡った"瘤ある蛇"より更に禍々しく、香奈枝の上体を更に深く折り曲げていく。
「くっ……くっ……くっ……」
巻きの進行と共に、香奈枝の絞り出すような喘ぎは絶え間なく、その口から涎と共に漏れる。
あやめは、香奈枝の胸元あたりまで巻き上げた。もうほとんど縄尻だ。結び、止める。
香奈枝の両脚から上に、両の乳房あたりまで伸びる一本の、禍々しく野太い蛇は、香奈枝の上体を脚の方に厳しく引き付けていた。
「ふう、ふうう、ぐふううぅ」
「香奈。これが海老縛りの完成形や、どや、感想は」
「うぅっ、くっ、くふうぅ」
「もう声も出んか、香奈。よう聞き。今、縄を束ねて巻いた巻き方なあ、束(つか)巻き、言うんや。覚えとき」
つか……ま、き。
胡坐の姿勢で、上体を更に深く、限界近くまで折り曲げられた香奈枝には、もう答える余裕はない。ただ、あやめの言葉は忘れてはいけない。香奈枝は、その脳裏深くに、今初めて聞いた言葉を刻みつけた。
つか、まき……。
「香奈、次、いくで」
え、まだ……まだ何かするの?
これ以上、何をするの?
あやめ。
いとしいあやめぇ。
あたし、耐えられるかなあ。
あやめは、香奈枝の上体を両手で支え、ゆっくり前に倒した。香奈枝の顔が床に付く。あやめはその顔を横に向け片頬を床に付けさせた。
胡坐の姿勢のまま床に這う香奈枝。その体は、片頬と両膝のみが床に付いて全身を支えている。両腕は高手小手に縛られ、背に組んでいる。その尻は、高々と中空に突き上げられた。
「ぐっ、いっ、いやああああああ」
なんて、なんて恰好させるの、あやめ。
いくらなんでも、これは……。
香奈枝は、全身を緊張させて、今の姿勢を逃れようとするが、縛めが緩むはずもない。僅かに両手と、両足の指が空しく宙を掻き毟るだけだった。
「香奈ぁ、おめこ、丸見えやで」
いやっ。
「ケツの穴、ひくひくしてるで」
いや、いや、いや、いや。
香奈枝は、声にならない声を上げ続けた。あやめに逆らおうというのではない、抗議しようというのでもない。香奈枝の体そのものが上げる悲鳴だった。
「可愛いなあ、ほんまに可愛い尻やなあ、香奈。こんだけ可愛いと、どないしても苛めとなるなあ」
あやめは、香奈枝の右の尻の丸みを右の手の平で打った。かなり強い力である。
「ひっ」
左の手で左の尻を打った。室内に乾いた音が響く。
「ひいっ」
あやめは、左右交互に続けて尻を打った。
「ひっ、ひっ、ひいっ、ひいいい、いいっ」
あやめの打擲はいつ果てるともなく続いた。香奈枝の尻は赤く染まり、あやめの手の形まで写していく。
「香奈、舐めるで」
え、なんて?
なんて言ったのあやめ。
まさか。
あやめは香奈枝の股間にむしゃぶりついた。肛門から会陰、膣口、膣前庭、陰核まで、舐め、吸い、噛み、貪った。蹂躙した。蹂躙し尽くした。
香奈枝は、涙と涎と、大量の膣液を撒き散らし、失神した。
コメント一覧
-
––––––
1. ハーレクイン- 2013/07/30 09:13
-
『アイリス』#9から今回#22まで、14回にわたって(ひつこく、だらだらと)書いて参りました緊縛講座?!。今回でひとまず終了でございます。
いやあ、しんどかった。
なんせ、普通は画像や動画で見る緊縛法を、文章のみで詳細に表現し、かつ縛られる者の心情を並行して書こうという試み。どこまで成功したものやら、作者にはわかりませぬ。
御批評・ご批判を頂ければ幸いです。
『アイリス』を始めた頃は、これっぽっちも頭になかった緊縛。まさかこんなことになろうとは予想だにしておりませんでした。
本当に、書く、というのは難しく、また面白いものです。もちろん本来、小説というのはきちんとプロットを作ってから書くものでしょうし、こういうのはど素人の慨嘆なのですけどね
#19にも一部書きましたが、あやめさんが香奈枝せんせに施した緊縛法。確認しておきましょう。
まず、縛りの王道「高手小手縛り」。ついで「縄渡り」「股縄」「胡坐縛り」「海老縛り」、都合5通りになります。ま、胡坐と海老はセットのようなものですが。
いずれにしても、基本的でポピュラーな緊縛法ばかりです。縄の世界にはまだまだ、それこそ無限と言っていいほど、ユニークで華麗な緊縛法が存在します。いずれ機会があれば、もう少し書いてみたいなあ、と思います(もうええ)。
今回の最後に出てきます趣向。海老縛りから前に倒し、顏と両膝のみで体を支えさせる、両腕は高手小手。
これを「座禅転がし」と云いまして、江戸期の拷問に使われたくらい苦しいもののようです。(参考文献:小池一夫作・神田たけ志画『御用牙』)
座禅転がしで陰部を嬲られ、香奈枝せんせ、悶絶しちゃいました。
-
––––––
2. Mikiko- 2013/07/30 19:59
-
ま、興味のない人や拒絶反応のある人は、最初から読んでないでしょうしね。
「普通は画像や動画で見る緊縛法を文章のみで詳細に表現し」た文章をじっくり読んでいただけたら、これ以上嬉しいことは無いですね。
言われるとおり、SM雑誌などでは、たいてい挿絵が付いてます。
わたしは、天井看板にも掲げてるとおり……。
加藤かほる画伯の絵がとても好きです。
ちなみに、この“かほる”という表記……。
小比類巻かほるもそうですね。
『シクラメンのかほり』もそうでした。
歴史的仮名遣いでは、“かをる”が正しいという意見もあるようです。
でも、平安から明治まで使われた『定家仮名遣(ていかかなづかい)』では、“かほる”なんだそうです。
あと、これは余談ですが……。
『シクラメンのかほり』について。
実は、シクラメンには香りが無いのです。
でも逆に、『シクラメンのかほり』のヒットにより……。
香りのあるシクラメンが求められるようになりました。
結果……。
1996年、埼玉県農林総合研究センターのバイオ技術により、『香りシクラメン』が作出されることとなったのです。
歌の力って、スゴいですね。
-
––––––
3. ハーレクイン- 2013/07/30 20:31
-
梅ヶ丘女子高1年生、生物部員の「乾かほり」ちゃんがいます。読み方は「かおり」ですね。
第九場「乱交の場」あ、いやいや「浴室の場」では、主に犬養翔子ちゃんと絡みました。
バイオ技術といいますと、香りではなく色ですが、数年前に青いバラが作出されたのは有名ですよね。これに刺激されたのかどうか、今、青いチューリップを作り出そうという研究が行われているそうです。
-
––––––
4. Mikiko- 2013/07/31 07:53
-
薄寒い春先に、青は求められるでしょうかねー。
むしろ、青いヒマワリってどうでしょう?
ヒマワリらしくないと言ってしまえばそれまでですが……。
青いヒマワリ畑って、涼しげですよね。
-
––––––
5. ハーレクイン- 2013/07/31 09:21
-
>らしくないと言ってしまえばそれまでですが……。
らしくないですね。
涼しげといってもねー、あの暑苦しい風情がヒマワリの持ち味ですからねー。
そういえば最近見ていないなー、ヒマワリ。
-
––––––
6. Mikiko- 2013/07/31 19:40
-
青いヒマワリを作るような仕事がしたかった。
-
––––––
7. ハーレクイン- 2013/07/31 20:11
-
まだまだ、二度目の人生にチャレンジできる御歳だと思います。わたしはさすがに無理ですが。
-
––––––
8. Mikiko- 2013/08/01 07:47
-
受験なしにやり直せるのなら、今すぐにでも研究所に入りたい。
年収は、1千万くらいでいい。
数式関係は一切できないが、突拍子もないヒラメキだけはあると思う。
-
––––––
9. ハーレクイン- 2013/08/01 09:02
-
研究者は金に執着してはいかんぞ。
ひたすらストイックに、真理の探究に人生を捧げるのじゃ(そんなお人が何処におる)。
ちょっと調べてみましたら、大学教授の平均年収が、もろもろの手当てを含め1千万くらいだそうです。平均時給が4千円ちょい。
うーむ。時給なら勝ってるのになあ。
ちなみに、予備校講師の間では「1千万を超えて一人前」という俗説があります。わたしは半人前以下だな。
-
––––––
10. Mikiko- 2013/08/01 20:39
-
大したこと無いではないか。
↓の4人分でしかないわい。
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130704073029b92.jpg
わたしは、ほぼ1人分だが。
-
––––––
11. ハーレクイン- 2013/08/01 22:01
-
時給の対象になる実働時間は、日に5時間くらいらしいです。
ま、平均年齢が57歳くらいだそうですから、あまり無理もできない、ということでしょうか。
座ってるだけ、寝てるだけ、だったりして。
うーむ。
座ってるだけ、のお人と同じ時給か「み」さん。
ま、頑張れ。











![[官能小説] 熟女の園](https://livedoor.blogimg.jp/mikikosroom2008/imgs/3/e/3e07a9c3.gif)





































































































