2012.8.28(火)
↑舞台用語です(クリックで大きい画像が表示されます)。用語の解説は、第二場第二景のはじめにあります。
↑今回の舞台設定と、女優さんの動きです(クリックで大きい画像が表示されます)。
登場人物
南香奈枝(みなみ かなえ):私立梅ヶ丘女子高 生物科教師
東希美(あずま のぞみ):梅ヶ丘女子高2年生、生物部部長
香奈枝のマンションのリビング。
リビングの床は全面フローリング。
ローテーブルの前に座りこみ、向かい合ってビールを飲む香奈枝と希美。
希美はクッションの上に横座り、香奈枝は背後のベッドの縁に背を凭せ掛けている。
香奈枝「で、希美。何がどうしたんだ」
希美「はいっ。本当に申し訳ありませんでした」
正座し、居住まいを正す希美。
香奈枝「そんなに、かしこまらいでええよ」
希美「あ、いえ。
せんせい、昼間……準備室で、やってたとき、
覗かれてたって、珠恵が言いましたよね」
香奈枝「おお、言っとったな。
ははあ、あれがらみの話か」
希美「はい、あたし……喋られたらいけない、と思って、
それで、あの後、覗いてた子、
テニス部の西木織(にしこり)、
って珠恵が言ってましたから。
テニス部の芳江、せんせいもご存じでしょ」
香奈枝「中垣内(なかがいち)芳江、テニス部の副部長、
おとぼけ芳江、だろ」
希美「そうです。その芳江をつかまえて、
西木織(にしこり)に会わせろって」
香奈枝「ははあ、芳江に脅しかけたろ」
希美「あ、いえ、芳江にはそんなに」
香奈枝「まあいい。で、西木織(にしこり)、
えーと、佳(けい)、だったかな。
会えたのか」
希美「はい、それで、練習中だったんですけど、
ムリヤリ抜けさせて」
香奈枝「脅し、かけたか」
希美「あ、あの、とりあえず芳江に立ち会わせて、
『わたしの顔に見覚えないか』って、問い詰めました」
香奈枝「『知らない』って、言ったろ」
希美「ええー、なんでわかるんですかあ」
香奈枝「だって、あんときのあんたとあたしの位置関係だと、
入り口のガラス戸から覗いただけじゃ、
あんたの顔はほとんど見えんよ。
あたしは丸見えだったろうがな」
希美「どうも、そうらしかったです」
香奈枝「それで、しゃべるなって、脅し、かけたか」
希美「はい、あたしのことはどうでもいいんですけど、
先生のことを言い触らされたらまずい、と思って」
香奈枝「あたしがガッコ、クビになる、か。
心配してくれたんだ」
希美「はい、センセのいないガッコなんて意味ないですし」
香奈枝「ふむ。
それで、どう脅した」
希美「しゃべったら、ただじゃすまさないって。えーと、
『わたしはね、南先生のためならなんだってやるよ。
あんたを殺すくらい、屁でもないんだ』って、
言ってやりました」
香奈枝「おーや、それは勇ましいのう」
希美「で、西木織(にしこり)は、しゃべりませんって、
言ったんですけど、口だけじゃ信用できませんから」
香奈枝「ほう、実力行使か」
希美「すみません。
あの、テニス部の用具室に連れ込んで、
芳江を見張りに立たせて」
香奈枝「おうおう、
よその部の副部長さんを、手下代わりに使い倒したか」
希美「すっ、すみません」
香奈枝「で、用具室で何やらかした」
希美「も一度、念を押しました。
『ほんのこっきりでもセンセのうわさが流れたら、
私は必ずあんたを殺す! 冗談だと思うなよ』って」
香奈枝「うーむ。迫力あったろうなあ。見たかったものじゃ。
ビビってたろ、西木織(にしこり)佳ちゃん」
希美「半泣きでした」
香奈枝「それで堪忍してやったわけではあるまい。
その後、何やった」
希美「あ、あの、裸になれ、って言いました」
香奈枝「おーや。
この機会に、いっぱつやっちゃおう、ってかあ」
希美「ちっ、ちがいます、あたしはそんな」
香奈枝「わかったわかった。
しかし、素直に服、脱いだわけではあるまい、佳ちゃん」
希美「逃げようとしたんで、張り倒しました」
香奈枝「グーか、パーか。まさかチョキではあるまい」
希美「パーです。平手打ちを横っ面に」
香奈枝「おもいっきりだろ。
佳ちゃん、倒れるわなあ」
希美「床に体操用のマットが敷いてあったんで、その上に」
香奈枝「で、どうした。
お、ちょっと待て、希美」
リビングの隅の食器棚からウィスキーの瓶とグラスを取り出す香奈枝。冷蔵庫から缶ビールも1本取り出す。
香奈枝「希美、あんたはまだウィスキーは無理だな。
ビール飲みな」
希美「あ、いえ、あたしはもう」
香奈枝「飲んでる横でお茶やジュースを飲まれると、
ウィスキーが不味くなるんだよ。
いいから付き合いな」
希美「はーい」
香奈枝「よしよし、んじゃ、乾杯だ」
希美「何に乾杯でしたっけ」
香奈枝「たわけ、もう忘れたか。
『二人の夜に』であろうが」
希美「あ、そうでしたね。
じゃ『二人の夜に』
香奈枝「『二人の夜に』」
香奈枝・希美「かんぱあい」
希美「え、せんせい、氷とか入れないんですかあ」
香奈枝「入れんよ、んなもん、めんどくせえ」
希美「体に悪いですよ、あたし用意します」
香奈枝「用意するったって、
アイスペールもトングも何もないぞお」
希美「じゃ、せめて水だけでも」
立ち上がり、キッチンに向かう希美。
香奈枝「水ったって、
ミネラルウォーターなんて、こじゃれたものはないぞお」
希美「じゃ、水道水ですね。
えーと、水差しは、ないなあ」
香奈枝「薬缶でええよ、やかんで」
希美「ほんっとに、せんせいらしいですねえ。
はい、お水」
香奈枝「お、すまんの。
こういうのも、ええもんだのう」
希美「ええでしょ。
一緒に暮らす? せんせい。
尽くすよう、あたし」
香奈枝「そういうことは、ちゃんとガッコ出てから言いな」
希美「わあい、ガッコでたら一緒なんだ。
うれしい」
香奈枝「これ、そこまでは言うとらんぞ。
それに、詫びを入れに来たのではないのか、おぬし」
希美「すっ、すみません」
香奈枝「なんだ、こんどはシュン太郎か。
忙しいおなごだのう。
で、話はどこまでいった。
たしか……用具室に佳ちゃんを引きずりこんで、
平手打ちではり倒した、までだったかな」
希美「はい、で、とりあえず、
縄跳びの縄で後ろ手に縛りました」
香奈枝「おー、緊縛プレイか、やるじゃねえか、希美」
希美「そしたら、足で腹、蹴られました」
香奈枝「わはは、返り討ちか。
油断したな。
よかったなあ、テニス部で。
これがサッカー部だったら無事ではすまんかったぞ」
希美「まったく、なでしこじゃあるまいし。
足癖の悪い奴です」
香奈枝「でも、両腕は縛ったんだろ。
それ以上の反撃はできんわなあ」
希美「はい、で、脱がしにかかりました」
香奈枝「どう脱がした」
希美「上体だけ起こさせて、後ろに回って羽交い絞めです」
香奈枝「ふんふん」
希美「で、まずトレーナーの上、脱がせました。
っても、腕、縛ってあるんで"諸肌脱ぎ"って感じで、
中途半端でしたけど」
香奈枝「ふむふむ」
希美「この時点で泣き出しましたけど、
Tシャツを首元まで捲り上げて、ブラも外しました」
香奈枝「泣かせちゃったか」
希美「泣かせちゃいました」
香奈枝「どうだった、佳ちゃんのおっぱい」
希美「結構、かっこよかったです。
大きすぎず小さすぎず。乳首は小振りでピンク色」
香奈枝「ふうむ。
希美、こっちゃこう。
横に座りな」
立ち上がり、クッションと缶ビールを抱えて、香奈枝の右脇に座り直す希美。香奈枝と同様、ベッドに背を凭せ掛ける。
香奈枝は右腕を希美の肩に廻し、抱き寄せる。
軽くキスをかわす二人。
香奈枝「希美ぃ」
希美「あん、せんせ」
香奈枝「で、そのあと、どうした」
希美「下半身も脱がせました。
蹴られないよう、うつぶせにして、
トレーナーの下とパンツを一緒に、
膝のあたりまで下ろしました」
香奈枝「なるほど、なかなかやるのう。
それでは佳ちゃん、抵抗しようがないのう。
うつぶせ、ということは尻が見えたな、どうだった」
希美「悔しいけど、かっこいいお尻でした。
あれは相当鍛えてますねえ」
香奈枝「ふむ。
芳江によると、
気の弱さが災いして使い物にならんらしいが。
あの子の潜在能力はなかなかのものだと、
わたしは見ておる」
希美「先生、スポーツ、わかるんですかあ。
インターハイも知らないお方が」
香奈枝「たわけ、それは単なる知識不足じゃ。
わたしは登山をやる。れっきとしたスポーツではないか。
生徒の身体能力くらい、見抜けいでか」
希美「ははあ、そんなもんですか」
香奈枝「で、下半身も脱がせた、と」
希美「はい、で、両足首を揃えて縛っちゃいました」
香奈枝「おうおう、可哀想に佳ちゃん。
これで何も抵抗できんのう」
希美「で、仰向けにしておいて、写真撮る、と言いました」
香奈枝「で、その写真をネットに流す、とかなんとか脅したか」
希美「はい。よく分かりますねえ、せんせい」
香奈枝「そらあ、あたしだってそうやるだろうからな」
希美「で、カメラがないの、携帯で写すの、
携帯が見当たらんの、あったあっただのと嬲っておいて」
香奈枝「おうおう。
この希美さんにかかれば、佳ちゃんなんて子供だな。
朝飯前に赤子の手をねじるようなもんだろ。
ん? 希美さん」
希美「いやあ、それほどでも」
香奈枝「おい、褒めてるのではないぞ」
希美「すっ、すみません」
香奈枝「まあええ。それでどうした」
希美「写真撮ろうとしたら顔をそむけるので」
香奈枝「そらあ、そうだろ」
希美「あらためて張り倒しました」
香奈枝「今度はグーかあ」
希美「いえ、パーです。ただし一発じゃなくて4,5発」
香奈枝「てことは、往復ビンタか」
希美「往復ビンタって言うんですか。
この右手の平と甲で交互に……」
香奈枝「それを往復ビンタっていうんだよ」
希美「はあ。
で、おとなしくなったんで写真撮ろうとしたら」
香奈枝「どうした」
希美「珠恵に乱入されました」
香奈枝「ははあ、なるほど」
希美「なるほどって、せんせい」
香奈枝「あの時あんたが出て行った後、しばらくして珠恵も、
思いついたようにそそくさと出てったんだよ。
何も言わずになあ。
なあるほど、さすが珠恵、
あんたのことはきっちり見抜いてるわけだ」
希美「あたしが西木織(にしこり)を何とかしようとしてる、
ってですか」
香奈枝「そういうことだな。
で?」
希美「あたしが珠恵に『邪魔するな、出てけ』って言ったら、
『この馬鹿!』って、いきなり張り倒されました」
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2012/08/28 10:19
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誠に申し訳ございません。
書く側としては実に簡単、第二場第一景・第二景のほとんど引き写しですからねえ。
で、次の第五場第三景もこの流れになりますので、もう書き上げたも同然。
こんな機会はめったにない。ここで原稿のストックを溜めねばどうする。
ということで、第一場第一景からご観覧の皆々様には申し訳ございませんが、今景、次景は第二場でご承知の場面、希美ちゃんの回想場面となります。
「ああ、あったねえ、そんな場面」と、笑ってご覧いただければ深甚に存じ上げます。
とざい東西。
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2. Mikiko- 2012/08/28 19:42
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水だけでウィスキーを割る気にはなれませんねー。
氷の解けたウィスキーの味になると思うから。
マズいよね、あれ。
やっぱ、そういう場合……。
ウィスキーは割らずに味わって、水はチェイサーにした方がいいでしょう。
ビールが冷えてるなら……。
ビールにウィスキーを入れて飲めば、手っ取り早く酔えると思う。
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3. ハーレクイン- 2012/08/28 22:07
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わたしも水だけで割ったウィスキーなど飲む気にはなれません。
んなものを飲むくらいならストレート。
ストレート・ノウ・チェイサーですなあ。
ま、究極のめんどくさがり、香奈枝センセの所業とお考え下さい。
で、どうも香奈枝センセ。
希美ちゃんの捨て身の献身に、少しクラっときたかな、と。
それはそれで結構なことだと。
ま、しかし、ほんまに究極のめんどくさがり、香奈枝さん。
どう転ぶかは全くわかりません。
頑張れ、希美。
「『二人の夜』に、かんぱあい」
ああ、そうそう。
御忠告通り「まれみ→希美」で単語登録しました。
けど、やはり「のぞみ」で打ち込むのがほとんどです。
身に染み込んだ習慣というのは、一朝一夕では変えられませんねえ。
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4. Mikiko- 2012/08/29 07:43
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薄めたウィスキーを飲む方法。
ありました。
ホットウィスキー。
http://www.nikka.com/start/home/hot.html
氷は、すぐには出来ないけど……。
お湯なら、1分で沸くもんね。
温くならないよう、少量ずつ作るのがコツでしょうか。
↑のサイトにも書いてありますが、レモンスライスが合いそうです。
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201208290631582ce.jpg
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5. ハーレクイン- 2012/08/29 14:08
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季節感のない飲み物を持ち出すでない。
このくそ暑いのに、何が悲しゅうてホットウィスキーじゃ。
レモンスライスを添えようが、シナモン、クローブなどを加えようが、暑苦しいのはやめてくれ。
と書いたら、雨だよ。
しかも、久方ぶりの「しとしと雨」。
いやあ、こんなおとなしい雨は久しぶりだわ。
このまま、涼しくなるのかなあ。
そんなことは期待せんほうがええだろうなあ。
暑いなあ。
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6. Mikiko- 2012/08/29 20:20
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暑い物を体内に入れれば……。
相対的に、体外の空気が涼しく感じられる。
という理屈を知らんかえ?
母上の教えは正しいと思うぞ。
こちらは、連日ピーカン。
今日も、35度。
人も木も、くたばりかけてます。
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7. ハーレクイン- 2012/08/29 22:44
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一応突っ込んでおこう。
1行目の「暑い」は「熱い」だぞ。
“母上の教え”って何なんだよう。
「真夏でも熱燗」かあ。
ピーカン:快晴のこと。もと映画撮影で用いた俗語。
〔広辞苑第六版〕
ピーカン:(屋外撮影現場の俗語から)直射日光の当たる
快晴の状態。 〔スーパー大辞林〕
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8. Mikiko- 2012/08/30 07:40
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毎日暑いから、“暑い”と書いても違和感がなかったようです。
真夏こそ熱燗。
小さな盃で“熱い”お酒をすするって、案外涼しげじゃありません?
今朝方、少し雨が降りました。
でも、地表2センチが湿るくらいでしょう。
喜んだのは雑草だけ。