2014.9.27(土)
「あっ、はあっ、はああ~……」
河津民は両手でシーツを掴んで、焼け付く様な熱い息を吐いていた。
うつ伏せの民のお尻に目方慶子の引き締まった腰の筋肉が躍動している。
「はあっ! ゆるして、……ああ……またいきそうっ!!」
「ふうっ、まだよ、まだ……今度はあたしも……」
じくじくと湿った音を響かせて、慶子と民の下半身はお道具でつながっていた。
慶子の下半身に臀部を競り合わされて、民のお尻の柔らかみが激しく揺れる。
「はあああ~~、ゆるして、もう……ああ、いきそうっ!」
両手を民の前に廻して乳房を鷲掴みにすると、慶子は上体を引き起こす様にして激しく腰を使った。
「まだだめ! はあ、はあ……あたしまだ……」
「ああっ……ごめんなさい! ………ああもうだめえっ!」
慶子に狂おしく揺さぶられながら、オーガズムを迎えた民のふくよかな裸身が硬直した。
「うぐう…………」
指の間から固くなった乳首が弾き立って、慶子に抱かれた民の身体に大きく痙攣が走る。
「まだ、だめようっ!」
極みに打ち震える民を抱きしめて、慶子はそのうなじに歯を立てた。
慶子は脱力して大きな息を吐く民を上向かせた。
お道具を自分にあてがいながら仰向けの民に身体を重ねていく。
そして民の顔や唇にキスの雨を降らせた。
「はあ……お願い、ちょ、ちょっとまって慶子ちゃん……」
「なによ、あたしまだ……」
民は押し込んでくる慶子の尻の肉を掴んだ。
「ね、少し休ませて。続けたらあたしまた、すぐだめになっちゃうわ」
「だって……民さん、ずるいわ……」
民は目の前の慶子の不満げな表情に笑みを浮べた。
「ふふ、わかってる。ね、今日は泊まっていけるんでしょう?」
慶子は小さな溜息をつくと頷いた。
「まだ時間はたくさんあるわ。今夜はあたしがお口で……してあげる」
民の言葉を聞くと、慶子は顔を斜にして“本当?”という表情をした。
「あなた子供みたいに泣いちゃうかも……」
「ふん、それは楽しみね」
慶子は民の身体の上から、ごろりと横になった。
二人は並んで杉板天井の複雑な木目を眺めた。
「でも、あなたのお道具の使い方、凄いわ」
「学生時代の恋人と同じような経験があるの」
慶子はぽつりとつぶやいた。
「へえ……」
民は首を廻して慶子の横顔を見る。
「彼女は黒人でね。あたしより背も高くて、陸上やってたけど物理学で博士号を取ったりして、優秀な人だったわ」
「黒人……?」
慶子はじっと天井を見つめたまま続けた。
「彼女にかかると私はまるで少女だった。このお道具に似たもので、あたしがもうだめって言うまで何度も愛してくれたわ」
「へええ……」
「そしてその後、彼女はあたしを抱いて自分でするの。見つめ合って頬や唇にキスしながら、あたしは彼女が満足するのを見ててあげたわ」
ふと慶子は思い出し笑いを漏らした。
「彼女ね、あたしがあなたのこれとても好きよって言うと、とっても喜ぶの」
「うふふ……」
民は小さく笑った。
「あなた、このおちんちん好きって彼女に言ったんでしょう?」
「あはは、ええまあ……」
慶子は照れくさそうに笑った。
「彼女はどこの国の人?」
「アメリカ人よ。私たち、アメリカの大学に通ってたの」
「へえ、どこの大学……?」
「マサチューセッツにあるんだけど、聞けば誰でも知ってる学校よ」
「ふうん、凄いのね」
「そんなことないわ」
しばらくの沈黙の後、民はまた天井に視線を戻して口を開いた。
「あの……、聞いていいかしら……?」
「何?」
「いいかな……」
「水臭いわね、何でも聞いてよ」
「その彼女とは、今は……?」
慶子は小さく鼻で笑った。
「別れちゃったわ」
「え? どうして?」
「ある日、彼女が私に言ったの。わたし結婚することにしたわって」
民は言葉が出なかった。
「相手は同じ黒人の男の人でね、とてもいい人だった。あたしたちは、お互いの幸福を祈って別れたの」
「そう……」
二人が視線を天井に戻すと、再び沈黙が流れた。
天井を見つめる慶子の目に次第に輝きが戻って来る。
「ねえ、民さん教えてくれる?」
「なに?」
「室の外から中の人間を殺す方法って……?」
「え?」
民は一瞬ためらった後に、静かに話し始めた。
「教えてあげるわ。あなたも自分のことを話してくれたんだもの」
「ありがとう」
民は布団から上体を起こした。
「それはね、排水路を塞ぐことなの」
「で、でも……」
慶子も布団の上に起き直る。
「それじゃあ、中に水が充満して、二人とも溺れてしまうんじゃないの?」
「ええ、でもね、どういう計算か私には分からないけど、扉の穴から水が逃げて、中の水は天井の穴の下で止まるのよ」
「ええ?!」
「そして、天井の穴に首を入れられるのは、一人だけなの……」
慶子は慌てて枕元の黒縁眼鏡を取り上げると、それをかけた。
レンズの奥の瞳が宙の一点を見つめている。
民はそんな慶子に再び口を開く。
「でも慶子ちゃん、排水路を塞ぐだけでも大変なことよ。意外に水流が強いから大きな石が必要だし、崖の中腹の排水口を塞ぐなんて普通の人間じゃ出来ないわ」
それを聞くと、慶子は眼鏡をずり上げながら呟いた。
「そうかそれで排水路の工事を……。でも鉄板で囲った石積みをどうやって……」
「どうかしたの……?」
「ううん、ありがとう民さん。ごめんなさい、残念だけどあたし今夜泊まれなくなったわ」
「ええ……?」
民の顔に落胆の表情が浮かぶ。
「残念だけど、残念だから、民さん……」
「なに?」
「今から……して……?」
「もう!」
民は呆れ顔で慶子を睨んだ。
「だあって民さん自分ばっかり、あたしまだ……」
「ああもう、わかったわかった。でも先にお風呂に入ってからよ」
「あはは、じゃあ早速……」
慶子は民の手を取って立ち上がると、風呂へと引っ張っていく。
「もう、中で下を剃ってあげるわ、やりやすいように」
「ええ~!? いやだあ~」
そんな嬌声を残して、二人は風呂へと続く外廊下に消えて行った。
碧と亜希子は。十日室八日目の夜を迎えていた。
やがて夜中の12時になると、九日目最初のお祈りの時間である。
碧は畳の上で静かに本を読んでいる。
亜希子はここ数日の出来事をノートに書き記していた。
パソコンや携帯など人工的な機器は一切持込みできなかった。
もちろん記事に出来ない事柄もあったが、差し障りなく面白くアレンジして紹介するのが亜希子の仕事だった。
鉛筆の手を止めると、亜希子は今日碧に支配されたひと時を思い出していた。
それは室入り前には想像もしていない出来事だったが、何故かそれに懐きたくなるような、隠された喜びを亜希子に感じさせたのである。
“本当に私が欲しくなるまで、あなたのものにはならないわ。”
室入り後に碧に何らかの変化が起きているのは明白だった。
そして夢の中の言葉、
“本当の自分に気付きなさい。”
そして変化は、ひょっとして自分の身にも起こることかもしれなかった。
「亜希子さん」
背中の碧の声に亜希子は振り返った。
「お祈りの時、亜希子さんにしたいことがあるんですけど」
亜希子は再び碧の瞳に妖艶な輝きを見た。
それは微かに欲情した女が放つ、独特の粘りを帯びていた。
「何をするの、碧ちゃん……?」
「巫女の私に任せて下さい。さあ、そろそろ用意しましょう」
そう言って、碧は祭壇へと向かう。
祭壇に一礼すると、亜希子を振り返って言った。
「鎖から畳を降ろしてください」
「え……?」
亜希子は容量を得ない返事をした。
「お祈りを始めますよ。畳を外して」
「ええ……」
亜希子はその意図を訝しく思いながら、重い畳を鎖から外し始めた。











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