2012.5.24(木)
お美代は板張りの上に押し倒されたまま、抱きすくめて来る美夜叉に抗い続けていた。
しかしそんな必死の抗いも虚しく、もうその身体には乱れた襦袢と腰巻が纏わりつくのみとなっていたのである。
「ち、ちくしょう! はあっ、はあっ・・・、はなせっ!」
美夜叉は両足をお美代の右足に絡めて、抗う身体を左手で抱き寄せながら、その顔は歯を食いしばったお美代の顔の脇に埋めていた。
「ああっ、いやだっ! はあ、はあ、・・・・はなせっ、けだものっ!」
ぴったりと絡み付いた美夜叉から逃れようと、お美代は足をばたつかせながら相手の肩を手で押し戻そうとする。
だがお美代を裸に剥く為に騒動した後、ゆるゆるとその身体に絡んで疲れを待つ美夜叉には、そんな抗いも悲しい徒労に思われた。
油断をすれば生きのいい獲物の爪が顔や目を襲う。
美夜叉は首筋に顔を伏せたまま、空いている右手でお美代の乳や腰を撫で廻し、改めて身を弾けさせる事でその精気を奪っていく。
得物の抗いが次第に弱まってきたことを感じると、美夜叉は右手をお美代の艶々と黒い繊毛の中に忍ばせていった。
「ああっ!いやっ!!」
お美代はそう叫ぶと、美夜叉の身体に敷き込まれていた右手を必死で引き抜き、美夜叉の長い黒髪を掴んだ。
「ぐっ!!」
美夜叉は身体でお美代を押さえつけると、髪も引き抜けんばかりに掴んだお美代の右手を左手で掴んで引き離した。
茂みの中に忍び込んだ美夜叉の右腕を、お美代の残された左手が掴んだ。
爪が手首に食い込み、避けた肌から血が滲みだす。
しかし眉を寄せながら美夜叉が弄るお美代の花びらも、同時に微かな露を滲ませだしたのだ。
美夜叉は顔を上げてお美代に囁く。
「ふふふ・・・、お前、この様に辱められながら喜んでおるのか・・・?」
「ちくしょう!!・・や、やめろっ!」
お美代は怒りをこめてそう叫んだが、蠢く指がわざと自分のものに湿った音を立てるのを聞くと、堪らずその愛くるしい目を閉じた。
おぞましい指に犯されながらも、花びらが次第に潤いを増してしまうのをどうする事も出来ないのだ。
「ああっ、や・・やめろっ・・けだものっ!!」
美夜叉はそう叫ぶお美代の耳元で囁く。
「そうじゃ、私は“けだもの”じゃとも・・。しかし獣に応えて身を喜ばすお前もまた、けだものじゃ・・・。」
「あっ・・・、うっ!」
お美代はその囁きの後、小さく呻いて身を震わせた。
美夜叉の指が、潤みの上の敏感な芽を撫で始めたのである。
“はあっ・・、伊織様、助けてっ・・・。”
お美代が心の中で伊織の名を叫んだことは、そのままお美代自身の混乱を表していた。
美夜叉の指は、微妙な指紋の皺で優しく敏感なものを可愛がってくる。
お美代はその意に反して、否が応でも切ない疼きが身体に湧き上がって来るのを感じた。
健気に美夜叉に抗いながら、その腰のくびれから下に戦慄く様な動きが加わっていた。
美夜叉はそんなお美代のしこりが固さを増すにつれ、少しずつ追い立てる様に指の動きを速めていく。
お美代は左手で美夜叉の右手首を掴んで、精一杯自分のものから引き離そうとした。
しかし美夜叉の右手はそんな抵抗など意に介さぬように、その先でお美代を苛んでいる指の動きをお美代の左手に伝えて来るばかりだった。
「あう、くう~・・や、やめろ・・。」
自分のものから生温かい露が流れ落ちるのを感じながら、苦しげにお美代は呻いた。
もうすっかり美夜叉の指で弾き立たされたものから、狂惜しい疼きが身の内に響き渡る。
美夜叉に応えて背筋が反り上がり、若く引き締まった身体に細かい震えが走り始めた。
「ああっ、・・・いやあ・・・。」
そううわ言の様に口走りながら、お美代の心の中に憎悪、怒り、悲しみ、欲望、言葉では言い尽くせぬ思いが混然と渦巻く。
“ああっ、・・伊織様!”
お美代はもうただ、江戸からその後を追った伊織の顔を思い浮かべた。
はかない胸の内の抵抗の直後、体中に赤い炎が燃え広がり、お美代の下半身が大きく揺れ動いた。
「ああ~っ、あはっ・・・ああ~っ!!」
美夜叉からしっかりと抱かれながら、お美代は襲い来る極みに身体を跳ねさせた。
「おうおう堪らぬか、身体がよう跳ねて・・・。よしよし、ほれもっと・・・気の済むまでほれ・・・。」
美夜叉はそんな事をお美代の耳に囁きながら、その右手を忙しなく動かし続ける。
「あはああ~、いやああ~~~、あはっ・・・!」
眉の間に深い縦皺を刻んで、お美代の若い裸身に幾度も極みの痙攣が走り抜けて行く。
絶妙に愛しんでくる美夜叉の指は、なだらかに愉悦を盛り返してお美代を更なる極みへ誘うのだ。
赤蛇尼との交わりとは違って、お美代は生身の女の喜びを味わっていた。
本来女の極まりは愛を身体に満ち溢れさせるもので、お美代を落しむるべく美夜叉が囁く様な獣のあがきとは違うのである。
しかし残念な事に、今そんな美しい女の喜びを見守ったのは愛する伊織ではなく、暗い闇にお美代を導こうとする美夜叉に他ならなかった。
うららかな五月晴れの昼下がり、丹波の国藩主中川信勝は別邸の縁側から眩しげに庭を眺めていた。
綾の方はうやうやしく下げた頭を上げて、おずおずと藩主を見上げる。
「綾、わざわざ静養先から大儀であったの・・・。」
信勝は意外と穏やかな顔で綾の方に声をかけた。
「いえ、殿におかれましてはご機嫌麗しゅう、恐悦至極にございます・・。」
信勝はその言葉に深く頷くと、庭の景色を遠くに眺めながら口を開く。
「綾、お前とは血を分けた実の兄妹とは言え、思い起こせばこの様に近しく過ごすこともなかったのう・・・。」
幼少より世継ぎとして育てられた信勝は、妹である綾と睦まじく遊んだ記憶さえほとんど無かったのである。
「殿・・・?」
綾の方は遠い眼差しをした信勝の真意が測りかねて、じっとその横顔を見つめた。
信勝はふとその眼差しを綾の方に向けると問いかける。
「江戸家老、陣内左内と配下十数名が命を落とした件、お前も聞き及んでおろう?」
「は、はい・・。」
綾の方は思わず視線が彷徨うのを覚えながら信勝に答えた。
その様子をしっかりと見極めた信勝は、じっと綾の方の目を見て口を開く。
「今わしは、世継ぎとして羅紗姫を江戸より迎えつつある。わしも家来を引き連れて、京まで姫を出迎えに赴こうと思っておる。
もしそれまでに羅紗姫の身に何か起こるような事があれば、わしは断じてその咎のある者を許す事は出来ぬ。」
その語気の鋭さに、綾の方は身のすくむ思いだった。
しかし信勝は、何故かその表情を悲しげに変えて言った。
「生まれ落ちてすぐ呪われた子供として忌み、江戸へ託した羅紗姫も血肉を分けたわしの子に変わりはないのじゃ・・・。
此度わしは世継ぎを亡くして、その事が改めて身に染みた。不覚にもそれまでのわしは、その様な当たり前の事も分からぬままであった・・・。」
じっと見つめる綾の方に、信勝は憐れむ様な眼差しを向けて続ける。
「もうわしは、その様な自分の不徳の為に無益な血を流しとうはない・・。
羅紗姫を無事国元へ迎え入れた後は、何もかも忘れてご政道に努めようと思っておる。
この世でたった一人血肉を分けて生まれた妹である、綾、お前とも手を繋いでな・・。」
綾の方はじっと信勝の目を見つめた。
「殿・・、いえ・・兄上様・・・。」
綾の方は見つめる目をみるみる潤ませると、耐え切れぬ様にその顔を伏せた。
やがて顔を上げた綾の方は、喉を絞る様な声で信勝に言った。
「兄上様・・、私の歪んだ心で浮かべた笹舟は、もう私の手の届かぬ所まで流れて行ってしまいました・・。
もう今の私には、ただ祈るより他に如何ともし難くなってしまったのでございます・・。」
「な、なんと・・・?」
もう今頃、羅紗姫一行は尾張の地に足を踏み入れているに違いなかった。
丹波に戻った綾の方にとって、会いまみえつつある白蝋に手を下す事は不可能に近かったのである。
綾の方は悲壮な顔つきで口を開いた。
「殿、私はもう覚悟は出来ております。ただ忠興だけは・・、何も知らぬ忠興だけは何卒お許しを・・・。」
そのあまりに哀れな風情に、信勝は黙って頷いた。
「血肉を分けた親と子を引き離す様な、同じ過ちを二度と繰り返してはならぬ。
しかし、もう祈るより他に手立てが無いとは・・・。」
信勝は目を閉じると、まるで自分に言い聞かせる様にそう呟いた。
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2012/05/24 10:50
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とうとうやられちゃったか、お美代ちゃん
>暗い闇にお美代を導こうとする美夜叉
……か。
何処へ行く! お美代ちゃん。
なんと!綾の方のたくらみは、藩主中川信勝にバレバレ。
ほーう。信勝と綾は実の兄妹。
そうか、今回のお家騒動は要するに兄妹喧嘩か。
>しかし、もう祈るより他に手立てが無いとは……
殿さん。中川の殿さん。
気楽なこと言うてんと、なんか手をうちなはれ!
ゴルゴで、こんな話があったぞ。
姪を何者かに殺されたアラブの王族、犯人の解明と殺害をゴルゴに依頼する。
ところがその直後、犯人が何と!その王族の息子であることが判明した(この息子、要するに従妹を殺したわけだな)。
あわてて、息子を守るため、ゴルゴの抹殺を自らの手の者に命令する王族。
次々とゴルゴに襲い掛かる暗殺集団、これを苦も無く退け続けるゴルゴ。
その戦いの中で、心中呟くゴルゴ。
「……無益なことを……。事は一言の中止命令(ストッペイジ・オーダー)で収まるものを……」
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2. Mikiko- 2012/05/24 19:35
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このあたりです。
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201205241645292c0.jpg
現在で云うと……。
兵庫県の丹波市・篠山市、京都府の福知山市・綾部市・京丹波町・南丹市・亀岡市にまたがる地域だそうです。
どういうあたりなのか、皆目わかりません。
丹波でまず頭に浮かぶのは、故・丹波哲郎さんですが……。
丹波地方とは、関係ないようですね。
丹波さん以外で、丹波を全国に知らしめたものは……。
何と言っても、『デカンショ節』の一節。
♪丹波篠山(たんばささやま)山家(やまが)の猿が
♪ヨイヨイ
♪花のお江戸で芝居する
♪ヨーイ、ヨーイ、デッカンショ
さっぱり意味がわかりませんが……。
丹波を褒め称える内容では無いことは察しられます。
夏目漱石が『坊ちゃん』で……。
「猿と人が半々に住んでる」と書いたのも、丹波篠山じゃなかったか?
丹波篠山には、篠山鳳鳴高校という兵庫県立の伝統校があるようです。
秋田県にも、県立の大館鳳鳴高校がありますが……。
関係は無いようですね。
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3. ハーレクイン- 2012/05/24 21:48
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こう並べられると……行ったことあるのは、福知山市と亀岡市だけだな。
どういうあたりって、何にもない山の中だよ。
解説しましょう、デカンショ節。
【山家(やまが)】山中や山里にある家。また、山里。
(広辞苑第六版)
山家の猿とは、この場合「田舎者」ということですね。
で、その山だしの田舎者が、都会に出て浮かれて、みっともないことをやらかす。しかし本人は、まわりの都会人に笑われているのがわからない……。
ということで、もちろん丹波篠山がど田舎であり、そこの住民が田舎者である、ということを自ら歌った自虐の歌詞ですね。
ちなみにデカンショとは、「デカルト」「カント」「ショーペンハウエル」の三人の哲学者の名前にちなむ、という説がありますが、どうもこれは眉唾のようですね。
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4. Mikiko- 2012/05/25 07:56
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誤りがありました。
漱石が、「猿と人が半々に住んでる」と書いたのは……。
丹波篠山ではなく、“うらなり”先生が転任して行った、延岡のことでした。
原文は、以下のとおり。
『延岡と云えば山の中も山の中も大変な山の中だ。赤シャツの云うところによると船から上がって、一日馬車へ乗って、宮崎へ行って、宮崎からまた一日車へ乗らなくっては着けないそうだ。名前を聞いてさえ、開けた所とは思えない。猿と人とが半々に住んでるような気がする』
これについて、宮崎の人が、誤りを指摘しておられました。
猿と人が半々ではなく、明らかに猿のほうが多いそうです。
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5. ハーレクイン- 2012/05/25 10:54
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こいつは“忘却の彼方”だったな。
持ってるはずだが文庫本。ペラペラだし背表紙はかすれてるだろうし、発見は困難だろうな。
「小さい頃(幼い頃?)からの無鉄砲で損ばかりしている……」だったかなあ、出だしは。
ラストは確か、昔世話になったばあやさん(名前なんてったっけ、お清?)が亡くなって、しみじみ回想する……てな場面だったかなあ。
調べたら、出だしは「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」だった。
ばあやさんの名前は「清(きよ)」。こっちは大当たり。ただし「ばあや」ではなく「下女(げじょ)」とあった。
中学の時、読書感想文を書いたことがあるよ『坊っちゃん』。
『三四郎』あたりにしておけばかっこよかったのになあ。
んでもって「姿三四郎のことではない。姿三四郎の得意技『山嵐』は『坊ちゃん』の同僚のことではない」とか、ギャグをかましたりして。
しかし延岡ってそんな山の中なのか。海沿いの街と思っていた。
>猿と人が半々ではなく、明らかに猿の方が多い
宮崎県民に座布団3枚!!
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6. Mikiko- 2012/05/25 20:14
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ネットで全文が読めます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/752_14964.html
清の最後の願いと……。
黙って応えた坊ちゃんの気持ちが切ないです。
延岡市の現在の人口は、13万人だとか。
今は、人の方が多いでしょうね。











![[官能小説] 熟女の園](https://livedoor.blogimg.jp/mikikosroom2008/imgs/3/e/3e07a9c3.gif)





































































































