2012.2.9(木)
お美代はひとしきり話し終えると、再びそのつぶらな瞳を潤ませた。つんと上を向いた向こう意気の強い鼻を赤くして、肩を震わせている。
「まあ、可哀そうに・・・。」
綺麗に頭を剃り上げたまだ若い尼僧は、品のある顔立ちを曇らせてお美代を見つめた。
「私も今でこそ仏に仕える身ではありますが、世の憂き目に身を委ねたこともあります。あなたの気持ちはよく解りますよ・・・。」
「和尚人様・・・。」
優しい言葉をかけられて、お美代はじっと尼僧の顔を見つめ返す。
尼僧は細い筆で白紙の上に墨を引いた様な、綺麗な眉を寄せながら言った。
「それもこれも、みな人の心に巣くう煩悩の為せる業・・。清らかに心を解き放って、生まれたままの自分に立ち返れば、痛みも少しずつ消え失せていきます・・・。」
可愛く頷くお美代に、微笑みを浮かべて尼僧は続ける。
「心配は要りません。私があなたの煩悩を払ってあげましょう・・。さあ、これを見て・・。」
尼僧は座したまま、両手の平をお美代の方へ向ける。
そしてお美代が見つめるその両手の平を、身体の前でゆっくり円を描く様に動かした。
お美代はその動きを追う自分の目が、何故か焦点を失った様に感じた。
「あなたがその伊織という侍に会った時に、腰元も一緒に居たと言いましたね・・。」
「はい、・・和尚人さま・・。」
「その時、あなたは何か思いましたか・・?」
「いえ・・・、別に・・。」
「本当ですか? ・・よく思い出してごらんなさい・・。」
「はい・・・、和尚人さま。・・・本当は・・・、伊織様とその女の人が・・・、少し憎らしく思いました・・・。」
「そうでしょう・・・? それがあなたの、・・・本当の気持ち・・・。」
尼僧は静かに両手を降ろすと、懐から護身用の短刀と、小さな鐘を取り出した。
「それでは、これを御覧なさい・・・。」
尼僧は短刀を抜いて、お美代の目の前にかざす。
揺らめく蝋燭の炎を映した刃の輝きがお美代の目に飛び込んだ。
"チリーン・・!"
尼僧が振った鐘の音がお美代の頭の中に響き渡る。
「はいっ!!」
その鋭い掛け声に、お美代は夢から覚めた様な気がした。
呆然と板張りに座り込んだままのお美代に、尼僧は静かに口を開く。
「さあ、では私が、あなたの煩悩を取り去ってあげますよ・・。」
そう言って立ち上がると、お美代に背を向けた尼僧はゆっくりと僧服を脱ぎ始めた。
二の腕から背中そして二の足と、抜ける様に白くきめの細かい肌が露わになっていく。
「お、和尚人さま・・・な、何を・・?」
お美代がそう戸惑う間にも、尼僧は一糸纏わぬ姿となって振り返った。
二十代半ばくらいだろうか、なだらかな曲線に包まれた白い身体は、先程の尼僧姿からは想像も出来ないほど美しかった。
ほど良い胸の膨らみは量感を湛えながらも張りを失わず、そのなで肩と腰のくびれが女のしとやかさを際立たせていた。
「私の身体を見て、恥ずかしいのですか・・・?」
「は、はい・・。」
お美代は思わず目を伏せて答えた。
「恥ずかしがることはありません。これが自然なままの女の身体です。ほれ、私の方を御覧なさい。」
お美代はおずおずと顔を上げて尼僧を見る。
「私を美しいと思いますか・・・?」
「は、はい・・・とても・・。」
お美代は我知らずうっとりとして答える。
「あなたも同じなのですよ・・。さあ、私のように、生まれたままの姿におなりなさい。」
「えっ、で、でも・・・。」
「煩悩を捨てなさい。あなたも綺麗な姿になりなさい。」
尼僧はそう言うと、優しげな笑みを浮かべながら、お美代の帯に手をかけていく。
やがて尼僧の前で、お美代の若い裸体が露わになった。
尼僧ほどの輝く白さはないが、その肌は健やかな潤いと張りを感じさせる。
時折は左官仕事も手伝うだけのことはあって、引き締まった体躯と共に、乳房も誇らしげに上を向いていた。
だが生娘の上に人前で裸になる様な経験もなく、お美代は首まで染め上げて、胸の膨らみを両腕で隠している。
「お美代さん、とてもきれい・・・、きれいですよ・・。」
尼僧は恥ずかしげに俯いたお美代に顔を近づけながら囁いた。
「どれ、煩悩を払うために、まずあなたの気を確かめてみましょう・・。」
尼僧の顔が思いがけず近くに近づいて来て、お美代は思わず顔を背けた。
「私がこう近づくのは嫌ですか?」
「い、いえ・・、そういう訳では・・。」
お美代は改めて尼僧の顔を見た。
美しく優しい顔が目の前で微笑んでいる。
上品な口元の脇の小さなホクロが目に入ると、お美代は何故か微かに胸がときめくのを感じた。
「んっ・・・。」
不意に尼僧の唇がお美代の唇に重ねられた。
同時に両脇から差し込まれた尼僧の両手に、優しく身体を抱き締められる。
初めて唇を奪われる感触と共に、お美代は身体がひとりでに震えるのを感じた。
温かい鼻息が交じり合うままに、柔らかく吸い合わされた唇から、背筋を震わす愉悦が走る。
背中に廻された尼僧の両手が、ゆっくりとお美代の腰のくびれから肩先の肌を撫で上げてくる。
「む・・・、んふう~・・。」
お美代はどうしようもなく息が荒くなり、恥ずかしい事に、自分の女の部分が潤ってくる感触を覚えた。
尼僧はゆっくりと唇を離すと、閉じた睫毛を震わせているお美代の耳元に囁く。
「さあ、お美代さん・・。私があなたの煩悩を、全て出し尽くしてあげましょう・・。」
お美代は尼僧に肩を抱かれたまま、誘われる様に板張りの上に身を横たえていった。
コメント一覧
-
––––––
1. ハーレクイン- 2012/02/09 19:33
-
口から出まかせ出放題。
あることないこと、もっともらしい御託を並べたて、お美代ちゃんを誑し込みにかかる赤蛇尼。
先ずはさりげなく、伊織・羅紗姫についての情報収集。
このあたりの抜かりの無さは、敵とはいえあっぱれじゃ。
パームパフォーマンス(なんじゃこりゃ)と、抜身の短刀と鐘。揺らめく蝋燭の炎。
催眠術か。後催眠か。このあたりは忍術の定番。
>さあ、私のように、生まれたままの姿におなりなさい。
煩悩を捨てなさい。あなたも綺麗な姿になりなさい……。
これ、女教師のセリフを思い出すなあ。相手は……体育教師だったかなあ。
“ちりーん”。
お美代ちゃんの背後を閉ざすような不気味な鐘の音。
お美代ちゃんの運命やいかに。
待て! 次回。
-
––––––
2. Mikiko- 2012/02/09 20:04
-
読みは、“しゃくだに”でしたね。
うっかり、“あかだに”と読んでしまった。
というのも、新潟県新発田市に、“赤谷”という地区があるんです。
豪雪地帯。
かつて、この地区に通じる「赤谷線」という国鉄の路線がありましたが……。
1984年に廃線となってます。
女教師のセリフ。
そんなん、あったかのぅ。
まったく覚えておらぬわ。
「このアマ!」の“アマ”って、やっぱり“尼”のことなんでしょうかね。
ま、江戸時代になると……。
宴席にはべって、売春する“尼”もいたそうですから……。
吹っかけられた客が、「この尼!」とでも言ったのかもね。
-
––––––
3. ハーレクイン- 2012/02/09 20:22
-
>オナニーするときは……。
全裸になること。
結婚後の[斜体]性行為は、とうぜん全裸[/斜体]で行われます。
[斜体]オナニーは、その予行演習[/斜体]なんですからね。
自分の身体の隅々まで、反応を確かめる目的もあるし。
それに、[斜体]着衣のままオナニーすると……。
間違った罪悪感にとらわれやすい[/斜体]の。
[斜体]全裸になることで……。
オナニーが、誰にも恥じることのない行為だってことを、正しく認識できる[/斜体]のよ……
-
––––––
4. Mikiko- 2012/02/09 20:31
-
覚えとらんかった。
よくもまぁ……。
こんな無茶苦茶な理屈を考えたものだのぅ。
われながら、感心するわい。
-
––––––
5. ハーレクイン- 2012/02/09 20:41
-
鮮明に覚えとりました。
体育教師の反応も面白かったしねえ。
九州でストリッパーやってるってのは、体育教師だっけ?
このアマ! のアマ
中国語の「阿媽(アーマー)」、母、母上、お母さん、母ちゃん、おっかあ……だと思ってました。
日本国有鉄道赤谷線。
新発田駅-東赤谷駅間、総延長18.9km、駅数7。
全線単線、全線非電化。
もとは赤谷から産出する鉄鉱石の輸送用路線として1920年(大正9年)に敷設される。
1925年(大正14年)旅客輸送業務を開業、
1984年(昭和59年)全線廃線……。











![[官能小説] 熟女の園](https://livedoor.blogimg.jp/mikikosroom2008/imgs/3/e/3e07a9c3.gif)





































































































