2012.1.26(木)
三島の宿の町外れ、からりと晴れあがった昼下がりである。
まだ四月とは言え、川船に荷を積み込む人足連中の額に、きらりと光るものが見て取れるほどの陽気であった。
酔狂にも一人の若侍が川端の木陰に腰を下ろして、木の幹に背をもたれながらその様子を見ている。
そかしよく見ればその眼差しは、荒くれ男達の仕事など目に入らぬかの様に、虚ろな光を放っているばかりであった。
やがて一人の若い行商の女が通りかかると、若侍の横に腰を下ろし、荷を解いて物売りの御用を尋ねているようである。
汗が伝う浅黒い首筋の肌に手拭いを使いながら、物売りは口を開いた。
「謹慎中だった若い侍が、腰元を連れて東海道を国元へ向かったそうだよ。
それから・・、これはおまけだけど、話を聞きこんだ先の娘が侍を追って家出しちまったんだとさ。どう思う、水月・・・?」
水月は川面の光をおぼろげに見つめながら答える。
「それですね・・・。その者達の人相、風体を調べてきましたか・・?」
「あたしがその辺にぬかりあるはず無いじゃないか。」
「ご苦労でした、黒麗。それでは赤蛇尼、春秋花にもそれを伝えて、各々街道を探ってください。姫の足では、そう遠くまで進めるはずはありません。
それからその家出した娘、使えますよ。赤蛇尼に伝えておけばよいでしょう・・。」
「わかった。」
水月ゆらりと立ち上がると続けた。
「お方様が首尾を気にかけて、尾張のお頭の所までお出ましとのこと。私は速足で尾張まで報告に行って来ます。その間何かあれば、カラスを飛ばしなさい。
では、よろしく・・・。」
去って行く水月の背中を見送りながら、黒麗は小さく呟いた。
「いい女なんだけど、いつも何だか背中が震える様な気がするねえ・・・。
抱かれて骨抜きになった女が沢山いるのに、あれで本当は抱かれる方が好きってんだから分からないもんだ。・・・さあ、どっこいしょ。」
黒麗は行李を担ぐと、水月とは逆の方へ歩き始めた。
宿の部屋へ上がって荷物を降ろすと、伊織と姫は畳に座りほっと一息ついた。
「姫、本日もお疲れでございました。」
伊織は二人だけになると、改まって両手をついて頭を下げた。
「まあ、伊織様・・。もう毎日その様な挨拶はやめてください。」
姫はあどけなさが残る顔を曇らせて答える。
「いえ、そういう訳には・・・。どれ、少々おみ足を拝見・・・。」
お行儀の悪い格好に恥じらいながら、姫はおずおずと両足を伸ばして見せる。
「ああ、もうだいぶ良くなりました・・。また後ほど、お湯を使われました後に膏薬を貼ってさしあげましょう。」
「本当にすみません・・。」
伊織の横顔を見つめていた姫が、何か思い切った様に口を開いた。
「い、伊織様・・。世の夫婦たちも、きっとこの様に旅をするのでしょうね・・・?」
物思う年ごろを迎えつつある姫は、初々しい表情で睫毛を伏せている。
はっとした顔を上げた伊織も、みるみる色白の頬を染めた。
その時天井裏で、何やらギシギシいう音が二人の耳に入った。
不安そうに天井を見上げる姫を制する様に、伊織は笑いながら口を開く。
「何、姫、心配いりません。このような家には、大概鼠などおるものでございます。
薬調達のついでに、私が宿に苦情の申し入れをしておきましょう。」
天井を見上げながら、伊織は続けた。
「下の帳場へ行ってまいりますが、私以外誰が参りましても、この棒を立てたままお入れになりませんようお願いいたします。」
伊織は部屋を後にした。
部屋を出ると、伊織は辺りを窺いながら廊下を歩いていく。
ある部屋の前まで来た時、突然引き戸が開いて白い手が伸びたかと思うと、伊織の襟首を掴んで中へ引っ張り込んだ。
「もう~、何ですかあんなにいちゃついて。あたしゃお二人が休まれた後も、何か間違いでも起きゃあしないかと、夜もおちおち寝てられないんですよ!」
伊織は慌てて口の前に人差し指を立てながら囁いた。
「何を言ってるんだ。間違いがあるどころか、お役目じゃないか・・。私も姫も、ただ国元を目指して旅を続けているだけだろう・・?」
伊織はいからせたお蝶の両肩に、優しく両手を添えながら見つめる。
「わかるもんですか。ほんとについて来てよかった。御姫様を拝見する限り、伊織様に何でもないはずはありません。あたしには分かるのよ。それに伊織様ったら、こんな男の恰好してるんですもの、もう~~っ!」
「ば、ばかを言うな、お蝶。」
「いやっ! もう隠れてるのは沢山、もういやっ、むっ! ・・むん・・。」
いきり立つ語気を呑みこむ様に、伊織はお蝶の唇を奪った。
伊織の腕の中で、お蝶の身体がぶるっと震える。
表だって会えない日が続いたせいか、二人は白い歯をぶつけ合って唇を貪り合った。
たちまち桃色の舌が激しく絡み合う。
ゆっくり唇が離れると、お蝶はまだ恨みがましい瞳で伊織に囁いた。
「そんな事しても、もう今日は可愛がってあげないから・・。その代わりに、あたしのことを・・、ねえ・・伊織様・・・?」
「お蝶さん、私も会いたかった・・。あまり時間もありませんが・・。」
伊織も、取り澄ました侍の顔を捨てて囁く。
「もう何日離れてると思ってらっしゃるの? そんなこと心配しなくったって、うふふ・・・あたし、すぐ・・・。」
何とも色気のある目で見つめ返されて、伊織は夢中でお蝶の唇を奪うと、その身体を布団の上に押し倒していった。
お蝶のほどよく柔らか味を帯びた裸体に、さらしだけを残した伊織の身体が覆い被さっていた。
なまじさらしを残しただけに、伊織の小さめだが形のよいお尻の膨らみが際立っている。
その白桃の様なお尻の狭間から、下から廻ったお蝶の白い指が、伊織の黒々とした繊毛を撫でているのが見え隠れしていた。
お蝶は伊織の身体の下で、大きく胸を起伏させながら、荒い息を吐いている。
伊織はお蝶の濡れたものから右手の指を抜くと、左手をお蝶の右手と固く握り合わせながら、上からお蝶の右の乳房に頬を預ける。
「んん・・・ああ・・・ねえ、お蝶さん・・・。」
「まだだめ・・・。伊織様・・、もう一回あたしを落として・・。」
お蝶は伊織の繊毛を引っ張りながら意地悪をする。
「お蝶さん、許して・・。そうされると、わたしだって、もう・・。」
無理もない。伊織も久しぶりの情交で、身体が燃え上がっている。
一度目は熟れたお蝶をすぐ果てさせたものの、その後はお蝶を組み敷いたまま、下から自分の方が喜びを弄られている様なものであったのだ。
さらに、今日はお蝶を責める事で、何かゾクゾクとした喜びを感じていたのも明らかである。
愛するお蝶が我を忘れて、はしたない極みの表情を見せた時は、身震いする様な愉悦が伊織の背筋を走ったのだ。
その顔が脳裏に浮かぶと、伊織はお蝶の唇を吸いつけながら、再び右手をお蝶の濡れたものに割り込んでいった。
「あああ~・・いいっ。伊織様っ・・ああ、いいっ・・。」
「はあ・・・いいの? ・・お蝶さん、いいの?・」
くねる身体に縋りつく様にして、伊織は右手を使い続ける。
「ああ~いいのよう~。・・あたしのこと好き? ああっ、ねえっ、好き? いおりさま~あああ・・・・。」
「ええ、好き! ・・・・お蝶さん、好きよ!。」
「はあっ、うれしいっ! ・・あああああもうっ! いおりさまあああ~っ!」
豊かなお乳を震わせながら声を上ずらせると、お蝶の身体が戦慄く様にせり上がった。
同時に下からお蝶の指が、今日初めて伊織のものを乱暴に弄ったのだ。
「はあっだめだめっ! はううっ・・・!!」
お蝶の身体に極みの痙攣が走り、浅ましく伊織にしがみつくと、その白いうなじに歯を立てた。
「ああっ・・、ああっ・・、あはあっ!」
しなやかな体を硬直させて、伊織の尻がさざ波を打った。
奈落に落ちながらもお蝶の指が、伊織の濡れたものを狂おしく揉み上げてくる。
「あ、ああ~~~っ!!!」
突き上げて来る極みの快感に、伊織は泣くような女の叫びを上げた。
少し息が静まると、お蝶は下から伊織の首に両手を廻して囁いた。
「今日はとっても嬉しゅうございました。伊織様があたしを、二度も往生させてくだすったんですもの・・・、うふふ・・。」
伊織はそんなお蝶が堪らなくいじらしかった。
下から微笑むその目を見つめると、伊織は優しくお蝶に唇を重ねていった。
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2012/01/26 11:01
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箱根の険は無事に越えたか、羅紗姫様御一行。
それにしても敵方に情報が筒抜けだな。こちらのガードが甘いのか、尾張衆が優秀なのか。
両方だろうなあ。
密談を凝らす水月、黒麗。
なんと、あのお美代ちゃんが家出!
伊織ちゃんの後を追ったか、お美代ちゃん。なんとなんと、そこまで思い詰めてたのかあ。
それにしても通行手形などもっとらんだろうに。どうするのだ、お美代ちゃん。
身代わり娘に続き、黒麗の毒牙にかかってしまうのか。
羅紗姫様をほったらかして、久方ぶりにいちゃつく伊織・お蝶。
ほんとに、大丈夫か。
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2. Mikiko- 2012/01/26 20:48
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江戸関連の新書を2冊読みました。
『幕末単身赴任 下級武士の食生活』と『観光都市 江戸の誕生』。
通勤車中で読める軽い本です。
平和な時代の武士ってのは……。
気楽な家業だったようですね。











![[官能小説] 熟女の園](https://livedoor.blogimg.jp/mikikosroom2008/imgs/3/e/3e07a9c3.gif)





































































































