2011.10.13(木)
信子の脳裏に、意識の奥深く捨て去ったはずの光景が浮かび上がった。
荒い吐息と共に大きく起伏する女性の胸・・・。
胸の頂点から、膨らみを伝い、脇腹へと流れ落ちる薄白い滴り。
その滴りにまみれた指が、膨らんだ柔らかみに食い込んでいく。
その濡れ光った指は、信子自身のものに違いなかった。
捨て去ったはず?。
いや、そうではあるまい・・・。
あれから客と接する度に、陽炎のように景色がゆらぎ、信子に微かな眩暈を覚えさせていたものではなかったのか?。
信子は視線を聡美の胸に向けた。
脳裏の光景は、今日はすぐ消え去ることなく、徐々に若妻の綺麗な乳房に重なっていく。
信子の手に、膨らみに指を絡ますような微妙な動きが加わっていった。
"あら・・・、あたし、どうしたのかしら・・・?"
聡美は、戸惑い始めていた。
信子に揉まれている乳房から、心地よさを超えて、悲しいような、血が沸き立つような感覚を覚えたからである。
信子の5本の指は、まるで各々意識があるように、身体が捩れるような感覚を煽ってくる。
息が少し荒くなり、自分の胸が波打つのを必死で堪えなければならない。
「き、気持ちいいでしょう・・? 貴女の場合、もうちょっとで、今日お乳が出るかもね。」
信子は自分の語尾が少し震えているのが分かった。
もうこの若妻が、性の快感を覚えているのをはっきりと感じ取っていたからだ。
"もう、ここで悪戯はやめてしまおうか・・・。"
信子は迷った。
しかし、切なげに変わって来た聡美の表情を見て、口を突いて出た言葉は全く別のものだった。
「さあ聡美ちゃん、今度は後ろから両手でやりますよ。ちょっと背中を起こして・・。」
信子は椅子を跨いで、聡美と椅子の背の間に座り込むと、両手を脇の下から前に廻して、聡美を後ろから抱くような姿勢をとった。
「はい、両手で揉みますよう・・・。 聡美ちゃん、いいからあたしに寄りかかっちゃいなさい。その方が楽よ。」
信子の両手が、後ろから聡美の両方の乳房を揉み上げ始めた。
聡美は一瞬身体を強張らせたが、目を閉じて背中をゆっくりと信子に預けていく。
その身の重さが、信子の胸の膨らみを押してきた。
"ああ・・・、もうやめられないわ・・・。"
信子は後ろから聡美の髪の匂いを嗅ぎながらそう思った。
中年の女が若い女を後ろから抱きすくめ、両手でその乳房を揉みしだいている。
若い女は微かに身を捩じらせながら目を閉じ、中年の女は若い女の髪に鼻を埋める。
いつの間にか、傍から見れば女同士の情交の場面と何ら変わらない光景だった。
ただその自覚が無いのは、聡美ばかりとなっていたのだ。
益々快感を覚えながら、乳揉みとはこんなこともするのだと思っているばかりである。
「・・・・ん、・・・ふっ・・・。」
しかし次第に、優しく強く揉みあげてくる信子の手によって、息が乱れ、身体がうねるように動いてしまう。
信子は頃合いを見て口を開いた。
「気持ちいいでしょう・・? でも、おかしくはないのよ。乳揉みってこんなものなの。
あたしくらいやってると、どんな男の人よりも上手になっちゃうの。 だから、恥ずかしくなんてないわ。 気持ち良くなっちゃっても構わないのよ。」
「え・・・?」
聡美は思わず小さく驚きの声を上げた。
冷静に考えてみれば、自分が身体の喜びを与えられていることに変わりはないのだ。
それも女性から・・・。
聡美が何か言おうとする前に、信子は口を開いた。
「さあ、今度は大事な所。お乳の出口をやりましょうかね。」
そう言うと、乳首の廻りの淡い色に煙っている部分を、両手の人差し指で円を描く様になぞり始める。
「んんっ・・・!」
聡美は声こそ我慢したが、身体を細かくびくつかせた。
散々揉み上げられた乳房の先から、電流の様な刺激がはしったからである。
信子はそんな聡美の反応を、たまらない愉悦として感じ取っていた。
「ほうら、気持ちいいでしょ? 聡美ちゃん、我慢しなくてもいいのよ。
まだお乳が出るまで時間かかるから、声を出しちゃいなさい・・。」
そう言いながら、今度は親指・人差し指・中指の3本で、両方の乳首を摘まみ上げて優しく揉んだり擦ったりする。
「あっ・・・うくっ!」
今度は耐えきれずに、聡美は信子の腕の中で上半身を戦慄かせた。
そこから沸き起こる快感が背筋を走り抜け、泣きそうな気持になるのだ。
"ああ・・いけない、こんなこと。・・・もう、やめて・・・。"
聡美は快感に流されそうな意識の中でそう呟くと、
「あっ、・・・もう、・・・ちょっと。」
やっとの思いで、そうかすれ声を出した。
「だめでしょう・・・? まだ、お乳は出てないわ。 もう少し我慢して。
でも声は出たわね、・・・そう、それでいいのよ・・・。 気持ちよかったら、声に出して、ね? ・・・ほら。」
そう言いながら信子は、両手の指の間に乳首を挟むと、優しく乳房を揉みしだき続ける。
「・・・ん、んくっ・・・ふ、うううう・・・。」
聡美の口から、悲しげな声が漏れ始めた。
「・・うん? ・・・はい、いいのよ、いいの。大丈夫・・声に出して・・・。」
信子は後ろから聡美の右耳にそう囁きかける。
いやそればかりか、片手を乳房から離して、臍の廻りから滑らかな脇腹の肌を擦り、再び乳首をつまんで聡美の身体を弾けさせたりするのだった。
「ああっ、・・・ああああ・・・。」
白い歯で唇を噛んで我慢していた聡美だったが、ついに喜びの声じみたものを漏らしてしまった。
信子は自分も息を荒げながら、聡美の右耳に唇を擦り付ける様にして囁く。
「ん~、聡美ちゃん、可愛いわ・・・。それでいいのよ、それでいいの・・・。
もうちょっとでお乳も出るわ。だから遠慮しないで、・・・思いっきり、気持ち良くなっちゃいなさい・・・。」
そう言って信子は、さらに聡美が狂いたくなるような愛撫を続けていく。
「あはああっ、・・・ああ・・・あああん・・。」
一度堰を切った喜びの声はもう止めることが出来なかった。
信子に後ろから抱かれた聡美の身体がだだをこねる様にうねり、片方ずつ曲げ伸ばしされる足のつま先が、強張って開き閉じしていた。
「あら、下着が汚れちゃうと悪いかな? 大丈夫・・・?」
信子はわざと他愛も無くそう言うと、左手で乳房を揉み上げながら、右手を聡美のパンテ
ィーの中に滑り込ませた。
「ひゃっ!」
突如襲って来た感触に、聡美は声を上げ、身体を反らせた。
疼いていた部分に、信子の指が蜜を滑らせながら触れて来たからであろ。
聡美のその部分は、もうじくじくと蜜をしみ出させ、パンティーを通して椅子のレザーの
上まで濡らしていた。
「あら、もう汚しちゃったわね・・・。でももう仕方ないわ、脱いじゃいましょ、ね?。」
信子は後ろから聡美のパンティーに両手をかけると、器用にそれをお尻の膨らみをかわして下げた。
さらに少しでも聡美の熱を冷まさないよう、そのまま自分の両足を左右からそのパンティーにかけて引き下ろす。
パンティーは聡美の膝を過ぎ、足首に落ちた。
機を損なわぬまま、信子は聡美を後ろから抱き締める。
「あははっ、恥ずかしい? 大丈夫よう、女同士だもの。」
聡美は目を閉じたまま、荒い息を吐いている。
信子は背後から、興奮した若妻の甘酸っぱい髪の香りを吸った。
再び聡美の乳首に指を添わせてみると、それは少し粘った感触を信子の指に伝えてきた。
「さあ聡美ちゃん、もうそろそろおっぱい出そうよ。これから、あっちのお布団のほうで、ね?」
信子は素早く立ち上がると、聡美の両脇を支えて椅子から立たせた。
ふらつく聡美の身体を支えながら、傍に敷いてある、客の休息用の布団に聡美を誘う。
聡美はよろけながら布団に身を横たえ、横向きになって両手で胸を覆った。
焦点の合わない眼差しで、火照った顔を紅潮させている。
信子は聡美の前に腰を下ろすと言った。
「もう少しよ、聡美ちゃん。今度はおばちゃんが、口でお乳を吸い出してあげる。」
聡美は信子の顔を見た。
信子の笑顔が、何か熱く揺らめく様に感じた。
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2011/10/13 09:29
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>両手を脇の下から前に廻して、聡美を後ろから抱くような姿勢をとった
背後から両腕で抱きしめられ、胸を愛撫される。
さらに耳やうなじに、舌と唇を這わせられる……。
私、AVではこのシチュ好みです。
男女ペアの場合、女性の表情や喘ぐ様が男に隠されず、たっぷりと堪能できるのがいい。
そして、当然のことですが、むさい男があまり見えないのもいい。
ビアンものの場合。
このシチュ、意外と少ないような気がするのですがどうでしょう。
もっとビアンペアにもこのシチュを展開してほしいものだが……。
現実世界か、活字か、映像か、ネット上か、もはや定かではありませんが……。
ある女性が「私、これ好き」と仰ったのを覚えております。
八十八十郎さん、有難う。
初孫。
今回の名言。
>その滴りにまみれた指が、膨らんだ柔らかみに食い込んでいく
>その濡れ光った指は、信子自身のものに違いなかった
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2. 八十八十郎- 2011/10/13 16:12
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ハーレクインさん。
気に入られた部分があって
よかったです。
それに、今回の名言に取り上げて頂いた部分、
実は8年前のオリジナルにはありませんでした。
それだけに、書き入れてよかったと感謝しております。
8年前に掲載していただいた時は、
ある理由から、
敢えて(下)の最終の1行を入れませんでした。
その時はホームドラマの様に終わったものが、
今回、その1行を入れたことで、
(中)の序盤に誰のものとも分からぬ呟きが入ることになりました。
感想をいただき、ありがとうございました。
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3. ハーレクイン- 2011/10/13 18:27
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うーむ。
『初孫』。
只者ではありませんねえ。
>最後の一行
8年前はなぜ削除されたのでしょうか。
深まる謎。
尽きせぬ興趣。
1週間が待ちきれません。
で、次回は「初孫(下)」、つまり最終回ですよね。
どうか、(下“その1”)、次回に続く、ではありませんように……。
『最後の一句』は森鴎外。
「よろしうございます……
お上の事には間違はございますまいから」
『最後の晩餐』はダ・ヴィンチ。
「この中に私を裏切るものがいる」
『最後の授業』はA・ドーデ。
「皆さん、私が授業をするのはこれが最後です
今日はフランス語の最後の授業です」
『最後の一葉』はO・ヘンリー。
「ああ、ジョンジー、
あれがベーアマンさんの傑作なのよ ――
あの葉は、ベーアマンさんが描いたものなのよ。
最後の一枚の葉が散った夜に」
“最後の晩酌”はフーテンの寅さん。
「おいちゃん! それを言っちゃあおしまいよ」
しょうこりもなく、編集しちゃいました。
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4. Mikiko- 2011/10/13 20:08
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そう言えば……。
後ろから羽交い締めのシチュは、まだ書いたことなかったな。
φ(・_・")メモメモ。
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5. ハーレクイン- 2011/10/13 20:18
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書いてね。
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6. 海苔ピー- 2011/10/14 03:29
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昔、読んだのと酷似している。
このまま、終わると…
少しだけ海苔ピーの記憶と話の展開が違う感じがする。
これ以上、書けないな…
でも....
あぁ~!
海苔ピーの記憶が…
まだまだ…
はずなのにな~!
話の内容がカケラの様に散らばって
断片的にしか覚えて無くて
記憶の片隅にあるのて
こんなに
残酷で
不条理で
心もとなさすぎて
なんとも云えない
苛立ちにさいなまれる
なんて、想わなかったよ!
無慈悲過ぎるよ!
うぅ!
あの時に
変に思い出さないでスルーしていれば
今頃、違う楽しみ方が出来たのに
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7. 八十八十郎- 2011/10/14 14:58
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次回の(下)で最後になります。(笑)
読まれてみれば、
「なあ~んだ」、と思われる程度です。
強いて言えば、
青だったのに、ちょっと赤を入れたら、
紫っぽくなっちゃった、くらいの感じです。
海苔ピーさんが不透明さを感じられるのは、
オリジナルがホームドラマの様に終わっちゃって、
「あれ?」っていう不条理さを覚えられたからかな、
なんて想像しています。
まだ、この作品とは分かりませんが、
だとしたら、沢山読まれている中で、
すごい記憶力だと思います。
色々と感想をいただき、
本当に有難うございます。