2014.2.6(木)
狙撃手との付き合いは、当時18歳で父の勧め……というより父から逃れるようにロシア軍へ入隊した時からだった。
狙撃手の名前は、ナデージュダ・クリヴェリョワ。
女性スナイパー……この国では今更目新しいことではない。
↑本文とは関係ありません。
先の「大祖国戦争」では、2,000人の女性狙撃手が活躍した。ある狙撃手は、終戦までに約300人のドイツ兵を血祭りにあげている……。
強靭な精神力、卓越した洞察力、そして優秀な射撃を持ち合わせているにもかかわらず、その容姿は、そんなことを微塵も表さない美貌を誇っていた。
「ねぇ、ヴェロニカ」
彼女は銃床の底に先ほど倒した標的のキルマークを刻みながら尋ねた。
一列目は埋まり、優に二桁は超えているだろう。
そんな様子をやや軽蔑しながらヴェロニカは思った。
(彼女の一番嫌な部分だわ)
「なに?」
「私たち、知り合って何年になるかな?」
「そう……6年ほどっていう処ね」
彼女たちは敵からは畏怖として、味方からは尊敬を込めて“サイレント・デビルス”と呼ばれていた。
静かに近づき、一発の弾丸で相手を倒し、跡を残さず姿を消していたからだ。
彼女も入隊の動機がヴェロニカに似ていたが、もっと深刻であった。
父からの性的暴行を長年にわたって加えられ続けていたからだ。
当然、父というより男自体を憎んでいた。そんな彼女が銃を持つとどうなるかは訓練課程で予想はついた。
丸い標的では、ばらついて当たっていたのが、人型標的に変わった途端、頭部と顔面そして右胸に、確実に丸い穴が空いていた。
コメント一覧
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1. ハーレクイン- 2014/02/06 09:51
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聞き始めでした。
第二次世界大戦中の、ソ連-ドイツの1941-1945年の戦いをソ連でいう用語ですね。
ふーん。
ヴェロニカはキルマークを嫌っている、と。
前回では自分で刻んでいたのにね。
そうか、格闘技とは異なり、狙撃は男女の体力差があまり問題にならないのか。だからソ連では、女性狙撃手が活躍した、と。
で、新登場人物、ナデージュダ・クリヴェリョワ。
今後、ヴェロニカ姉妹にさらに関わってくるのでしょうか。
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2. Mikiko- 2014/02/06 20:21
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「彼女」という指示代名詞、ちょっと対象がわかりづらいです。
この後の原稿をいただいてないので……。
わたしの判断だけでは、加筆することができませんでした。
次回は、お休みかも知れません。
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3. ハーレクイン- 2014/02/06 22:07
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そうかな。
全部、ナデージュダ・クリヴェリョワを指していると思いますが。
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4. Mikiko- 2014/02/07 07:57
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ソチ!
いよいよオリンピック開幕です。
どうなるんでしょうね。
個人的には、葛西選手にメダルを取ってもらいたいです。
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5. ハーレクイン- 2014/02/07 10:55
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オリンピックは過去、アルベールビル、リレハンメル、長野、ソルトレイク、トリノ、バンクーバーの6大会に出場。で、今回のソチ、と。まさに鉄人ですね。
わたしは、スピードスケートの岡崎朋美さんですが、残念ながら昨年末のソチ選考会で敗退し、引退を表明されました。ご苦労様でした。
ま、今回は何といってもジャンプの高梨沙羅ちゃんでしょう。
圧倒的な力でWCを制しましたが、さあ、何がおこるかわからないのがオリンピック。頑張ってほしいものです。
ソチってどこやねん、で地図を見ました。
黒海の東沿岸、もうロシアの南端といっていい位置です。
北緯43度くらい、ということは札幌と同じくらいですね。
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6. Mikiko- 2014/02/07 20:36
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一発勝負ですから、何が起こるかわかりません。
確実と言われてた人がコケて、思いがけない人が勝ったりするものです。
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7. ハーレクイン- 2014/02/07 22:02
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「オリンピックは、勝つことではなく参加することにこそ意義がある」(ピエール・ド・クーベルタン男爵)。