2009.4.4(土)
これは、163回と165回で投稿したコメント「ソメイヨシノのお話」を1本にまとめ、「Mikiko's Garden」に再録したものです。
今日は、わたしが苦手なソメイヨシノについて(158のコメント参照)。
苦手といっても、嫌いなわけではありません。
見てると悲しくなるってだけ。
このソメイヨシノが生まれたのは、そんなに昔ではありません。
幕末です。
江戸の染井村というところでした。
そのあたりに、植木屋さんが集まってたそうです。
この染井村が今のどこにあたるかというと、東京の人なら染井霊園ってご存じでしょ?
つまり、山手線の駒込あたりなんです。
で、幕末の話。
植木屋さんの庭で、人工交配なのか自然交雑なのかはわからないそうですが、ソメイヨシノが生まれました。
両親は、オオシマザクラとエドヒガン。
大輪で、花が満開になっても葉が出ません。
ヤマザクラなんかだと、花と同時に葉が出てしまうので、緑が混じって見えます。
でもソメイヨシノは、いっさい緑が混じらないので、樹冠はまるでおぼろにけぶったよう。
この満開の風情が日本人の情緒をいたく刺激したらしく、ソメイヨシノはたちまち全国に流通していきました。
でも、ここで問題がひとつ。
ソメイヨシノは一代限りの雑種なので、実生で増やすことができないんです。
で、どうしたかと言うと……。
すべて挿し木で増やしました。
ですから今、そこここで見かけるソメイヨシノ、実はすべて同一個体と言ってもいいんです。
つまり、クローンですね。
ヤマザクラみたいに実生の木は、隣り合ってても開花時期が違ったりします。
でも、ソメイヨシノはクローンなので、花の時期がものの見事に一致するんです。
だから、気象庁が観測に使ってるわけですね。
さてさて。
満開に咲きそろったソメイヨシノは、ほんとに綺麗です。
新潟市出身の作家・坂口安吾に、「桜の森の満開の下」という小説があります。
『彼は女の顔の上の花びらをとってやろうとしました。彼の手が女の顔にとどこうとした時に、何か変ったことが起ったように思われました。すると、彼の手の下には降りつもった花びらばかりで、女の姿は掻き消えてただ幾つかの花びらになっていました。そして、その花びらを掻き分けようとした彼の手も彼の身体も延した時にはもはや消えていました。あとに花びらと、冷めたい虚空がはりつめているばかりでした。』
ソメイヨシノの満開の下にいると、ほんとに気がヘンになりそうになります。
さて、日本で最もポピュラーなサクラとなったソメイヨシノですが、重大な欠点があります。
それは、寿命が短いこと。
ヤマザクラなんかだと、何百年も生きる木もあるのに……。
ソメイヨシノは、それに比べて極端に短命。
およそ60年と言われてます。
人の寿命より短いんです。
だから今、戦後植えられた樹体が、そろそろ寿命を迎えてるんです。
なんでこんなに短命なのかは、諸説あるみたいなんですが……。
成長が早いので老化も早いとか。
定説は無いみたいです。
わたしは、ソメイヨシノの樹形が、短命の原因のひとつじゃないかって思うんです。
老木を見てると、どの樹も枝の付け根が異常に太い。
しかも、枝が真横に張り出してる。
たぶん60年近く生きると、その太い枝が重みで折れるんじゃないかと。
枝が太いから、折れたときは、大きな傷口が出来てしまいます。
幹まで裂けてしまうこともあるでしょう。
「サクラ切るバカ」という言葉があるように、サクラ類は切り口から腐りやすいんです。
だから、大枝が裂けた樹体は、たちまち衰えていく。
逆に言うと、運良く枝折れのなかったソメイヨシノは、案外長生きするんじゃないかな?
美しく、そして短い命。
まさに、美人薄命ですね。
だから、見てて悲しくなるのかな。
今日は、わたしが苦手なソメイヨシノについて(158のコメント参照)。
苦手といっても、嫌いなわけではありません。
見てると悲しくなるってだけ。
このソメイヨシノが生まれたのは、そんなに昔ではありません。
幕末です。
江戸の染井村というところでした。
そのあたりに、植木屋さんが集まってたそうです。
この染井村が今のどこにあたるかというと、東京の人なら染井霊園ってご存じでしょ?
つまり、山手線の駒込あたりなんです。
で、幕末の話。
植木屋さんの庭で、人工交配なのか自然交雑なのかはわからないそうですが、ソメイヨシノが生まれました。
両親は、オオシマザクラとエドヒガン。
大輪で、花が満開になっても葉が出ません。
ヤマザクラなんかだと、花と同時に葉が出てしまうので、緑が混じって見えます。
でもソメイヨシノは、いっさい緑が混じらないので、樹冠はまるでおぼろにけぶったよう。
この満開の風情が日本人の情緒をいたく刺激したらしく、ソメイヨシノはたちまち全国に流通していきました。
でも、ここで問題がひとつ。
ソメイヨシノは一代限りの雑種なので、実生で増やすことができないんです。
で、どうしたかと言うと……。
すべて挿し木で増やしました。
ですから今、そこここで見かけるソメイヨシノ、実はすべて同一個体と言ってもいいんです。
つまり、クローンですね。
ヤマザクラみたいに実生の木は、隣り合ってても開花時期が違ったりします。
でも、ソメイヨシノはクローンなので、花の時期がものの見事に一致するんです。
だから、気象庁が観測に使ってるわけですね。
さてさて。
満開に咲きそろったソメイヨシノは、ほんとに綺麗です。
新潟市出身の作家・坂口安吾に、「桜の森の満開の下」という小説があります。
『彼は女の顔の上の花びらをとってやろうとしました。彼の手が女の顔にとどこうとした時に、何か変ったことが起ったように思われました。すると、彼の手の下には降りつもった花びらばかりで、女の姿は掻き消えてただ幾つかの花びらになっていました。そして、その花びらを掻き分けようとした彼の手も彼の身体も延した時にはもはや消えていました。あとに花びらと、冷めたい虚空がはりつめているばかりでした。』
ソメイヨシノの満開の下にいると、ほんとに気がヘンになりそうになります。
さて、日本で最もポピュラーなサクラとなったソメイヨシノですが、重大な欠点があります。
それは、寿命が短いこと。
ヤマザクラなんかだと、何百年も生きる木もあるのに……。
ソメイヨシノは、それに比べて極端に短命。
およそ60年と言われてます。
人の寿命より短いんです。
だから今、戦後植えられた樹体が、そろそろ寿命を迎えてるんです。
なんでこんなに短命なのかは、諸説あるみたいなんですが……。
成長が早いので老化も早いとか。
定説は無いみたいです。
わたしは、ソメイヨシノの樹形が、短命の原因のひとつじゃないかって思うんです。
老木を見てると、どの樹も枝の付け根が異常に太い。
しかも、枝が真横に張り出してる。
たぶん60年近く生きると、その太い枝が重みで折れるんじゃないかと。
枝が太いから、折れたときは、大きな傷口が出来てしまいます。
幹まで裂けてしまうこともあるでしょう。
「サクラ切るバカ」という言葉があるように、サクラ類は切り口から腐りやすいんです。
だから、大枝が裂けた樹体は、たちまち衰えていく。
逆に言うと、運良く枝折れのなかったソメイヨシノは、案外長生きするんじゃないかな?
美しく、そして短い命。
まさに、美人薄命ですね。
だから、見てて悲しくなるのかな。