2010.1.16(土)
これは、第362回から第364回までのコメント欄で連載した、「『因幡の白ウサギ』(Ⅰ~Ⅲ」)」を、『Mikikoのひとりごと』として、1本にまとめたものです。
以前、コメントで取り上げた「ヤマタノオロチ」の話、覚えてらっしゃいます?
「ヤマタノオロチ」は、出雲の国を舞台にした神話でしたが……。
今回も、同じく山陰地方の神話を、取り上げてみたいと思います。
山陰地方とは……。
一般的には、島根県と鳥取県を指すようです。
島根県は昔、ふたつの国に分かれてました。
西が「石見(いわみ)の国」、東が「出雲の国」です。
石見という名称は、世界遺産になった石見銀山で有名になりましたね。
紙上旅行倶楽部の第2弾は、「島根に行こう!」でしたが……。
当初、コメントで連載したときのタイトルは、「出雲に行こう!」だったんです。
「ヤマタノオロチ」を書いてて、旅心を誘われ……。
それが、「出雲に行こう!」に発展したってわけ。
その時は、出雲のことしか頭に無かったので……。
島根県の西半分、石見の国は、旅程から外れてしまいました。
最初から「島根に行こう!」というタイトルで考えてたら……。
たぶん、石見銀山もコースに入れてたと思う。
面白そうだもんね。
地学系、とっても興味があります。
あと、石見から頭に浮かぶのは、やっぱり森鴎外ですよね。
有名な遺言があります。
「余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス 宮内省陸軍皆縁故アレドモ生死別ルヽ瞬間アラユル外形的取扱ヒヲ辞ス 森林太郎トシテ死セントス 墓ハ森林太郎墓ノ外一字モホル可ラス」
わたしにとって石見は、とっても気になる場所のひとつなんです。
さて、いきなり脱線を始めちゃいましたね。
話を元に戻しましょう。
今日お話する神話の舞台は、島根県のとなり、鳥取県が舞台です。
鳥取県も、昔、ふたつの国に分かれてました。
西が「伯耆(ほうき)の国」、東が「因幡(いなば)の国」。
山陰の4つの国を西から並べると、石見→出雲→伯耆→因幡となります。
今回のお話しの舞台は、この一番東にある、因幡の国です。
さて。
因幡の国の神話と言えば……。
ひとつしか思い浮かびませんよね。
そう、「因幡の白ウサギ」です。
さっそく、お話をおさらいしておきましょう。
「ヤマタノオロチ」のお話は、Wikipediaから引用しましたが……。
Wikipediaにある「因幡の白ウサギ」の梗概は、ちょっとわかりづらいので……。
今回は、「福娘童話集」というサイトさんから、引用させていただきます。
「2010年1月9日現在で、2,315話の童話・昔話と、599話の朗読があります」となってます。
凄いですね。
サイドバーの「お話メニュー」に、「日本の昔話」というコンテンツがあります。
ここには、1日1話、366日分の昔話が収められてます。
毎日、1話ずつ読んでいくのも面白いと思います。
小さなお子さんのいるお母さんにとっても、恰好のネタ元となるんじゃないでしょうか?
「因幡の白ウサギ」は、2月1日の童話になってました。
朗読付きです。
それでは、お話を引用させていただきます。
------------------------------------------------------------
むかしむかし、隠岐の島という小さな島に、一匹の白ウサギが住んでいました。
ウサギは毎日浜辺に出ては、海の向こうに見える大きな陸地に行きたいと思っていました。
ある日の事、良い事を思いついた白ウサギは、海のサメに言いました。
「サメくん、ぼくの仲間と君の仲間と、どちらが多いか比べっこをしよう。君たちは向こう岸まで海の上を並んでくれ。ぼくはその上を数えながら飛んで行くから」
「いいよ」
お人好しのサメは、白ウサギの言う通りに向こう岸まで並びました。
「じゃあ、始めるよ。ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」
白ウサギはサメの上をジャンプしながら、向こう岸まで渡りました。
「やーい、だまされたな。比べっこなんてうそだよ。お人好しのサメくん。ぼくはこっちに渡りたかっただけなのさ」
それを聞いたサメは怒ってウサギを捕まえると、ウサギの皮をはいでしまいました。
「うぇーん、痛いよ!」
皮をはがされたウサギが泣いていると、若い神さまたちがそこを通りかかり、
「海水を浴びて、太陽と風に当たるといいよ」
と、言いました。
ウサギが教えられた通り海水を浴びると、ますます痛くなりました。
そして太陽と風に当てると、さらにもっと痛くなりました。
そこへ、大荷物を持った神さまがやって来ました。
その神さまは意地悪な兄さんたちに荷物を全部持たされていたので、遅れてやって来たのです。
「かわいそうに、まず池に入って、体の塩気を良く洗うんだ。それから、がまの穂をほぐしてその上に寝転がればいいよ」
ウサギがその通りにすると、やがて痛みも消えて、全身に元通りの毛が生えてきました。
この心やさしい神さまは、のちにオオクニヌシノミコトと呼ばれ、人々にうやまわれたそうです。
おしまい
------------------------------------------------------------
元の神話を、そのまま写すと……。
ウサギが赤裸で泣いているシーンが冒頭に置かれ、その訳は後で語られます。
でも、上記のお話は、順序を時系列に並べ直してあって、とてもわかりやすいと思います。
さて、それでは!
「因幡の白ウサギ」というお話は……。
いったい、何を表しているのでしょうか?
ざっと読み下しただけでも……。
次々と疑問が湧き起こります。
ウサギは隠岐の島にいたのに、なぜ「因幡の白ウサギ」なのか?
ウサギは、どうして対岸の陸地に渡りたかったのか?
隠岐の島から陸地までを埋め尽くすサメの群とは、いったいなんだったのか?
白ウサギが赤裸にされたということが、いったい何を意味しているのか?
そしてそもそも、なぜ白ウサギなのか?
これらの謎について……。
Mikikoの灰色の脳細胞は、いかなる強引な推論を展開するのでしょうか?
さあさ、お立ち会い!
ご用とお急ぎのない方は、ゆっくりと聞いておいで。
って……。
ほとんど香具師の口上ですが……。
さて、始めましょう。
まず、白ウサギがいたという隠岐の島ですが……。
今の地名は、島根県隠岐郡。
島根半島から、海を隔てること50キロメートル。
北の沖合に浮かぶ島です。
島と言っても、ひとつの島ではありません。
隠岐諸島と呼ばれます。
小さな無人島まで数えると、その数、実に180以上。
さて、この島が、昔どういう島だったかというと……。
黒曜石の採れる島だったんですね。
はるか縄文の昔……。
割ると鋭い破断面を示す黒曜石は、槍の穂先などの石器として利用されました。
しかし黒曜石は、限られた場所でしか産出しない、貴重な石でもあったんです
中国地方では、隠岐が唯一の産出地です。
隠岐の黒曜石で作られた石器は、海を隔てた山陰の縄文遺跡から数多く出土してます。
山陽側の遺跡からも出土してるそうです。
それどころか……。
日本海を越えた中国大陸からも……。
人々は、黒曜石を求め……。
隠岐の島へ渡ったんですね。
もちろん、因幡の国からも、隠岐の島を目指して、船を漕ぎ出したことでしょう。
しかし……。
隠岐の島は、まさに沖の島。
島根半島から、フェリーで2時間半かかります。
新潟と佐渡よりも遠いんです。
当時の航行術では、渡ることすら並大抵じゃなかったでしょう。
それでも、黒曜石を求めて危険を冒したわけです。
しかし……。
ようやく辿り着いても……。
船が破損したりして、帰れなくなった人も大勢いたはずです。
因幡の白ウサギとは……。
隠岐の島に取り残された人たちのことだったんじゃないでしょうか?
つまり因幡は、白ウサギの故郷だった。
白ウサギは、海を渡って故郷の因幡に帰りたかったんですね。
サメの背を踏んででも……。
さて、それでは、隠岐の島から陸地までを埋め尽くすサメの群とは、いったい何だったのか?
ということですが……。
あまりにも期待を持たせすぎたんじゃないかと……。
少々心配になってきました。
早い話……。
ヤマタノオロチと、同じ結論なのよ~。
またまた火山がらみね。
「ヤマタノオロチ」では……。
八つの首を持つ真っ赤な大蛇は……。
山肌を下る溶岩流ではないか!、という推測をいたしました(寺田寅彦さんが、とっくの昔に思いついてましたが……)。
わたしが、火山フリークだからでしょうか?
ヤマタノオロチを筆頭として……。
日本神話って、火山活動を思わせる記述が多いんです。
たとえば、この「因幡の白ウサギ」の後になりますが……。
大国主命が、意地悪な八十神たちに騙されるシーン。
大国主命は、八十神たちに、「山から赤いイノシシを追い落とすから、下で掴まえろ」と命じられます。
で、真っ赤に焼けた岩を落とされるわけ。
これなんか、あからさまなほど「火山」ですよね。
さて、それでは……。
海を埋め尽くすサメの群とは、いったい何を表象するのか?
それは、ずばり!
火砕流だったのではなでしょうか?
火砕流に含まれる岩石は、ポップコーンのように発砲してます。
早い話、軽石ですね。
なので、水に浮きます。
火砕流は、海を渡るんです。
わたしの本棚には、鎌田浩毅という人が書いた「火山はすごい」という本があります。
この本に、海を渡った火砕流のことが書いてありました。
今から9万年前に起こった阿蘇山の大噴火。
大規模な火砕流が発生しました。
西に下った火砕流は、島原湾になだれ落ち……。
そのまま有明海を渡って、島原半島まで到達したそうです。
さらに!
北東に下った火砕流は、別府湾を埋め尽くし……。
そのまま瀬戸内海を渡って……。
なんと!
山口県まで達したのです。
海の上ってのは、障害物が無いので……。
思いのほか遠くまで届いちゃうんですね。
今、こんな大火砕流が発生したら……。
熊本市と大分市は、全滅です。
それでは、隠岐の島まで届く火砕流を噴き出した山とは……。
いったい、どの山なんでしょう?
考えられる山はひとつだけです。
中国地方の最高峰、大山。
大山が最後に噴火したのは、1万年前。
まさに、黒曜石の石器が使われていた縄文時代のころです。
大山の裾野は広大で……。
そのまま日本海に落ち込んでます。
すなわち、大山から噴き出した火砕流は、一直線に日本海へ駆けくだり……。
そのまま海を渡って、隠岐の島まで届いたんです。
海を埋め尽くす灰色の軽石で……。
隠岐の島から対岸まで、地続きになったように見えたでしょう。
まるでサメの背が、向こう岸まで並んでいるかのように。
因幡に帰りたくて、毎日海を眺めていたウサギは……。
その光景を見て……。
一瞬、帰れる!
と思ったんじゃないでしょうか?
でも……。
大山って、因幡じゃないでしょ?
と気づいたあなたは……、偉い!
そう、大山は、伯耆富士とも云われるとおり……。
伯耆の国にあります。
因幡ではありません。
ではなぜ白ウサギは、それを渡って因幡に帰れると思ったのか……。
ま、とりあえず岸に渡りたかった、ってのがひとつ。
もうひとつ……。
ひょっとしたらって思うのが……。
対馬海流の影響です。
隠岐の南を流れる対馬海流が……。
海に浮かぶ火砕流を、東に流したんじゃないでしょうか?
そう、因幡の方角まで……。
隠岐の島に取り残されていた白ウサギたちは……。
サメの背を踏んででも、因幡まで帰りたかった。
でも……。
いくら古代人でも……。
そんなことが出来ないことは、ひと目見りゃわかります。
サメの背のように見える火砕流が、とてつもなく熱いということも……。
神話では、後一歩のところで渡りきれなかったウサギは……。
サメに皮を剥かれ、赤裸にされます。
皮を剥かれて赤裸ってのは、明らかに大やけどを表してますよね。
渡りたくても渡れない……。
そんな思いが、最後の最後に失敗して大やけどをする、あの結末になったんじゃないでしょうか?
何度も何度も、失敗するシーンを反芻しては……。
帰りたい気持ちを宥めていたのかも知れません。
それでは、最後の謎。
隠岐の島に取り残された人たちは、なぜウサギとして描かれたのか?
それはきっと……。
羽があったら飛んで帰りたい、という気持ちの表れだったんじゃないでしょうか。
望郷の思いから……。
耳が羽のように伸び……。
目を赤く泣きはらした自らを……。
白ウサギになぞらえた。
ウサギって、一羽二羽って、鳥のように数えますしね。
~おしまい~
以前、コメントで取り上げた「ヤマタノオロチ」の話、覚えてらっしゃいます?
「ヤマタノオロチ」は、出雲の国を舞台にした神話でしたが……。
今回も、同じく山陰地方の神話を、取り上げてみたいと思います。
山陰地方とは……。
一般的には、島根県と鳥取県を指すようです。
島根県は昔、ふたつの国に分かれてました。
西が「石見(いわみ)の国」、東が「出雲の国」です。
石見という名称は、世界遺産になった石見銀山で有名になりましたね。
紙上旅行倶楽部の第2弾は、「島根に行こう!」でしたが……。
当初、コメントで連載したときのタイトルは、「出雲に行こう!」だったんです。
「ヤマタノオロチ」を書いてて、旅心を誘われ……。
それが、「出雲に行こう!」に発展したってわけ。
その時は、出雲のことしか頭に無かったので……。
島根県の西半分、石見の国は、旅程から外れてしまいました。
最初から「島根に行こう!」というタイトルで考えてたら……。
たぶん、石見銀山もコースに入れてたと思う。
面白そうだもんね。
地学系、とっても興味があります。
あと、石見から頭に浮かぶのは、やっぱり森鴎外ですよね。
有名な遺言があります。
「余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス 宮内省陸軍皆縁故アレドモ生死別ルヽ瞬間アラユル外形的取扱ヒヲ辞ス 森林太郎トシテ死セントス 墓ハ森林太郎墓ノ外一字モホル可ラス」
わたしにとって石見は、とっても気になる場所のひとつなんです。
さて、いきなり脱線を始めちゃいましたね。
話を元に戻しましょう。
今日お話する神話の舞台は、島根県のとなり、鳥取県が舞台です。
鳥取県も、昔、ふたつの国に分かれてました。
西が「伯耆(ほうき)の国」、東が「因幡(いなば)の国」。
山陰の4つの国を西から並べると、石見→出雲→伯耆→因幡となります。
今回のお話しの舞台は、この一番東にある、因幡の国です。
さて。
因幡の国の神話と言えば……。
ひとつしか思い浮かびませんよね。
そう、「因幡の白ウサギ」です。
さっそく、お話をおさらいしておきましょう。
「ヤマタノオロチ」のお話は、Wikipediaから引用しましたが……。
Wikipediaにある「因幡の白ウサギ」の梗概は、ちょっとわかりづらいので……。
今回は、「福娘童話集」というサイトさんから、引用させていただきます。
「2010年1月9日現在で、2,315話の童話・昔話と、599話の朗読があります」となってます。
凄いですね。
サイドバーの「お話メニュー」に、「日本の昔話」というコンテンツがあります。
ここには、1日1話、366日分の昔話が収められてます。
毎日、1話ずつ読んでいくのも面白いと思います。
小さなお子さんのいるお母さんにとっても、恰好のネタ元となるんじゃないでしょうか?
「因幡の白ウサギ」は、2月1日の童話になってました。
朗読付きです。
それでは、お話を引用させていただきます。
------------------------------------------------------------
むかしむかし、隠岐の島という小さな島に、一匹の白ウサギが住んでいました。
ウサギは毎日浜辺に出ては、海の向こうに見える大きな陸地に行きたいと思っていました。
ある日の事、良い事を思いついた白ウサギは、海のサメに言いました。
「サメくん、ぼくの仲間と君の仲間と、どちらが多いか比べっこをしよう。君たちは向こう岸まで海の上を並んでくれ。ぼくはその上を数えながら飛んで行くから」
「いいよ」
お人好しのサメは、白ウサギの言う通りに向こう岸まで並びました。
「じゃあ、始めるよ。ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」
白ウサギはサメの上をジャンプしながら、向こう岸まで渡りました。
「やーい、だまされたな。比べっこなんてうそだよ。お人好しのサメくん。ぼくはこっちに渡りたかっただけなのさ」
それを聞いたサメは怒ってウサギを捕まえると、ウサギの皮をはいでしまいました。
「うぇーん、痛いよ!」
皮をはがされたウサギが泣いていると、若い神さまたちがそこを通りかかり、
「海水を浴びて、太陽と風に当たるといいよ」
と、言いました。
ウサギが教えられた通り海水を浴びると、ますます痛くなりました。
そして太陽と風に当てると、さらにもっと痛くなりました。
そこへ、大荷物を持った神さまがやって来ました。
その神さまは意地悪な兄さんたちに荷物を全部持たされていたので、遅れてやって来たのです。
「かわいそうに、まず池に入って、体の塩気を良く洗うんだ。それから、がまの穂をほぐしてその上に寝転がればいいよ」
ウサギがその通りにすると、やがて痛みも消えて、全身に元通りの毛が生えてきました。
この心やさしい神さまは、のちにオオクニヌシノミコトと呼ばれ、人々にうやまわれたそうです。
おしまい
------------------------------------------------------------
元の神話を、そのまま写すと……。
ウサギが赤裸で泣いているシーンが冒頭に置かれ、その訳は後で語られます。
でも、上記のお話は、順序を時系列に並べ直してあって、とてもわかりやすいと思います。
さて、それでは!
「因幡の白ウサギ」というお話は……。
いったい、何を表しているのでしょうか?
ざっと読み下しただけでも……。
次々と疑問が湧き起こります。
ウサギは隠岐の島にいたのに、なぜ「因幡の白ウサギ」なのか?
ウサギは、どうして対岸の陸地に渡りたかったのか?
隠岐の島から陸地までを埋め尽くすサメの群とは、いったいなんだったのか?
白ウサギが赤裸にされたということが、いったい何を意味しているのか?
そしてそもそも、なぜ白ウサギなのか?
これらの謎について……。
Mikikoの灰色の脳細胞は、いかなる強引な推論を展開するのでしょうか?
さあさ、お立ち会い!
ご用とお急ぎのない方は、ゆっくりと聞いておいで。
って……。
ほとんど香具師の口上ですが……。
さて、始めましょう。
まず、白ウサギがいたという隠岐の島ですが……。
今の地名は、島根県隠岐郡。
島根半島から、海を隔てること50キロメートル。
北の沖合に浮かぶ島です。
島と言っても、ひとつの島ではありません。
隠岐諸島と呼ばれます。
小さな無人島まで数えると、その数、実に180以上。
さて、この島が、昔どういう島だったかというと……。
黒曜石の採れる島だったんですね。
はるか縄文の昔……。
割ると鋭い破断面を示す黒曜石は、槍の穂先などの石器として利用されました。
しかし黒曜石は、限られた場所でしか産出しない、貴重な石でもあったんです
中国地方では、隠岐が唯一の産出地です。
隠岐の黒曜石で作られた石器は、海を隔てた山陰の縄文遺跡から数多く出土してます。
山陽側の遺跡からも出土してるそうです。
それどころか……。
日本海を越えた中国大陸からも……。
人々は、黒曜石を求め……。
隠岐の島へ渡ったんですね。
もちろん、因幡の国からも、隠岐の島を目指して、船を漕ぎ出したことでしょう。
しかし……。
隠岐の島は、まさに沖の島。
島根半島から、フェリーで2時間半かかります。
新潟と佐渡よりも遠いんです。
当時の航行術では、渡ることすら並大抵じゃなかったでしょう。
それでも、黒曜石を求めて危険を冒したわけです。
しかし……。
ようやく辿り着いても……。
船が破損したりして、帰れなくなった人も大勢いたはずです。
因幡の白ウサギとは……。
隠岐の島に取り残された人たちのことだったんじゃないでしょうか?
つまり因幡は、白ウサギの故郷だった。
白ウサギは、海を渡って故郷の因幡に帰りたかったんですね。
サメの背を踏んででも……。
さて、それでは、隠岐の島から陸地までを埋め尽くすサメの群とは、いったい何だったのか?
ということですが……。
あまりにも期待を持たせすぎたんじゃないかと……。
少々心配になってきました。
早い話……。
ヤマタノオロチと、同じ結論なのよ~。
またまた火山がらみね。
「ヤマタノオロチ」では……。
八つの首を持つ真っ赤な大蛇は……。
山肌を下る溶岩流ではないか!、という推測をいたしました(寺田寅彦さんが、とっくの昔に思いついてましたが……)。
わたしが、火山フリークだからでしょうか?
ヤマタノオロチを筆頭として……。
日本神話って、火山活動を思わせる記述が多いんです。
たとえば、この「因幡の白ウサギ」の後になりますが……。
大国主命が、意地悪な八十神たちに騙されるシーン。
大国主命は、八十神たちに、「山から赤いイノシシを追い落とすから、下で掴まえろ」と命じられます。
で、真っ赤に焼けた岩を落とされるわけ。
これなんか、あからさまなほど「火山」ですよね。
さて、それでは……。
海を埋め尽くすサメの群とは、いったい何を表象するのか?
それは、ずばり!
火砕流だったのではなでしょうか?
火砕流に含まれる岩石は、ポップコーンのように発砲してます。
早い話、軽石ですね。
なので、水に浮きます。
火砕流は、海を渡るんです。
わたしの本棚には、鎌田浩毅という人が書いた「火山はすごい」という本があります。
この本に、海を渡った火砕流のことが書いてありました。
今から9万年前に起こった阿蘇山の大噴火。
大規模な火砕流が発生しました。
西に下った火砕流は、島原湾になだれ落ち……。
そのまま有明海を渡って、島原半島まで到達したそうです。
さらに!
北東に下った火砕流は、別府湾を埋め尽くし……。
そのまま瀬戸内海を渡って……。
なんと!
山口県まで達したのです。
海の上ってのは、障害物が無いので……。
思いのほか遠くまで届いちゃうんですね。
今、こんな大火砕流が発生したら……。
熊本市と大分市は、全滅です。
それでは、隠岐の島まで届く火砕流を噴き出した山とは……。
いったい、どの山なんでしょう?
考えられる山はひとつだけです。
中国地方の最高峰、大山。
大山が最後に噴火したのは、1万年前。
まさに、黒曜石の石器が使われていた縄文時代のころです。
大山の裾野は広大で……。
そのまま日本海に落ち込んでます。
すなわち、大山から噴き出した火砕流は、一直線に日本海へ駆けくだり……。
そのまま海を渡って、隠岐の島まで届いたんです。
海を埋め尽くす灰色の軽石で……。
隠岐の島から対岸まで、地続きになったように見えたでしょう。
まるでサメの背が、向こう岸まで並んでいるかのように。
因幡に帰りたくて、毎日海を眺めていたウサギは……。
その光景を見て……。
一瞬、帰れる!
と思ったんじゃないでしょうか?
でも……。
大山って、因幡じゃないでしょ?
と気づいたあなたは……、偉い!
そう、大山は、伯耆富士とも云われるとおり……。
伯耆の国にあります。
因幡ではありません。
ではなぜ白ウサギは、それを渡って因幡に帰れると思ったのか……。
ま、とりあえず岸に渡りたかった、ってのがひとつ。
もうひとつ……。
ひょっとしたらって思うのが……。
対馬海流の影響です。
隠岐の南を流れる対馬海流が……。
海に浮かぶ火砕流を、東に流したんじゃないでしょうか?
そう、因幡の方角まで……。
隠岐の島に取り残されていた白ウサギたちは……。
サメの背を踏んででも、因幡まで帰りたかった。
でも……。
いくら古代人でも……。
そんなことが出来ないことは、ひと目見りゃわかります。
サメの背のように見える火砕流が、とてつもなく熱いということも……。
神話では、後一歩のところで渡りきれなかったウサギは……。
サメに皮を剥かれ、赤裸にされます。
皮を剥かれて赤裸ってのは、明らかに大やけどを表してますよね。
渡りたくても渡れない……。
そんな思いが、最後の最後に失敗して大やけどをする、あの結末になったんじゃないでしょうか?
何度も何度も、失敗するシーンを反芻しては……。
帰りたい気持ちを宥めていたのかも知れません。
それでは、最後の謎。
隠岐の島に取り残された人たちは、なぜウサギとして描かれたのか?
それはきっと……。
羽があったら飛んで帰りたい、という気持ちの表れだったんじゃないでしょうか。
望郷の思いから……。
耳が羽のように伸び……。
目を赤く泣きはらした自らを……。
白ウサギになぞらえた。
ウサギって、一羽二羽って、鳥のように数えますしね。
~おしまい~
コメント一覧
-
––––––
1. フェムリバ- 2010/01/23 21:17
-
そういえば
ガマ蛙の油って毒らしいですね。
もしかしたら、当時、偽の薬を買った人の中には危険な目に遭った方もいたかもしれませんね・・・
-
––––––
2. Mikiko- 2010/01/23 21:31
-
おめでとうございます。
でも……。
二番は来ないかも?
ガマの油。
毒と薬は紙一重、ってことなんでしょうかね?
ガマは、この毒で身を守ってるわけですが……。
ヤマカガシという蛇は、この毒に耐性があり……。
平気でガマを食べるそうです。
しかも、ガマの毒を体内に取りこみ、自らの毒とするそうな。
上には上がいるもんです。
-
––––––
3. フェムリバ- 2010/01/24 11:18
-
二番も、私がゲッツしちゃう♪
毒でも、少量なら大丈夫なのかもしれませんね。
しかし・・・
ヤマカガシ凄い!
毒をリサイクルしちゃうなんて・・・
彼らにとっては、私達が牛乳飲んで、カルシウムを骨にするのと一緒なんでしょうね。
(ラクターゼがない人だと、下痢ピーになっちゃいますけど・・・)
皆さ~ん!
書き込まないと、私がドンドン一番をゲッツしてっちゃいますよ~
恥ずかしがらず
さぁ、私と競争しましょう!
-
––––––
4. Mikiko- 2010/01/24 12:01
-
意表を突かれました。
怖ろしいヤツ……。
だれがそんな競争に乗るか!
普通、恥ずかしいわい。
-
––––––
5. 間 黒男- 2015/07/21 22:49
-
皮剥かれてるからあんな色なのか?…一杯訊けて、…一杯喋れる!