Mikiko's Room

 ゴシック系長編レズビアン小説 「由美と美弥子」を連載しています(完全18禁なので、良い子のみんなは覗かないでね)。
 「由美と美弥子」には、ほとんど女性しか出てきませんが、登場する全ての女性が変態です。
 文章は「蒼古」を旨とし、納戸の奥から発掘されたエロ本に載ってた(挿絵:加藤かほる)、みたいな感じを目指しています。
 美しき変態たちの宴を、どうぞお楽しみください。
管理人:Mikiko
由美と美弥子 1502
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 故郷の空は広い。
 駅舎を出るなり、そう思った。
 東京とは違い、高層ビルは数えるほどしかない。
 平野の河口にある港街からは、山も見えなかった。
 昔ながらの広く青い空が広がっていた。
 美弥子は、同郷の作家が、この港街を描いた小説の冒頭を思い出していた。

『私は蒼空を見た。蒼空は私に泌みた。私は瑠璃色の波に噎ぶ。私は蒼空の中を泳いだ。そして私は、もはや透明な波でしかなかった』

 この一節さながらに、泳ぎ出せそうなほどの真っ青な空だった。

 夏休みの帰省だった。
 こう言うと、地方出身の学生の習わしに、世間並みに従ったように聞こえる。
 しかしこの春、東京に出たときには、もうこの街に帰って来るつもりなど無かったのだ。
 ゴールデンウィークにも帰郷しなかった。
 美弥子の人生にとって、この街は、忌まわしい思い出の染みついたページだった。
 汚れたページを、2度と開きたくは無かった。

 そんな美弥子に変化をもたらしてくれたのは、もちろん由美だった。
 由美と出会い、過ごすことにより、忌まわしいページは次第に色褪せ、過去へと遠ざかっていった。
 故郷に帰ってみようという気になったのは、その由美の帰省だった。
 由美は、東海地方の公務員の家庭で育った。
 一人っ子として、何不自由ない暮らしだっただろう。
 一人娘を東京に送り出し、仕送りをしてくれる両親に、1学期の報告をするのは当然のことだ。
 もちろん、2人とも、夏休み一杯を故郷で過ごすつもりは無かった。
 夏休みの後半は、2人で旅行したりして楽しもうと約束していた。

 美弥子が帰省の決意をしたのは、由美を東京駅で見送った後だった。
 当初は、一人のマンションで、夏休みの宿題を仕上げてしまうつもりだった。
 しかし……。
 一人残された東京は、妙に寂しく感じた。
 由美に出会う前は、一人でいることに、寂しさを感じることなど無かったのだが。
 たしかに、自分は変わった。
 その変化は、誰よりも美弥子が感じていた。
 それなら、変わった自分に、故郷はどう見えるだろう。
 忌まわしい記憶の染みついた街は、わたしにどんな顔を見せてくれるだろう。
 そんな思いも、美弥子に帰郷を決意させた理由のひとつだった。

「だだいま」

 美弥子は、空を見上げてつぶやいた。
 同郷の作家の一節は、こう続く。

『私は窶(やつ)れていた。夏の太陽は狂暴な奔流で鋭く私を刺し貫いた。その度に私の身体は、だらしなく砂の中へ舞い落ちる靄のようであった。私は、私の持つ抵抗力を、もはや意識することがなかった。そして私は、強烈な熱である光の奔流を、私の胎内に、それが私の肉であるように感じていた』

 降りそそぐ日差しは確かに強かった。
 しかし美弥子には、凶暴なほどの光には感じられなかった。
 何も知らない子供のころ、頭上に広がっていた空と同じに見えた。
 光は美弥子を刺し貫こうとはせず、日傘の上で、サイダーみたいに爆ぜていた。

「大丈夫」

 美弥子は、もう一度つぶやくと、真っ白な街へ歩き出した。
由美と美弥子 1501目次由美と美弥子 1503





コメント一覧
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    • ––––––
      1. Mikiko
    • 2014/05/24 07:22
    • み「平日は、高校生と作業員で一杯だって言ってたからね」
      律「あ、今日は日曜日か」
      み「今日のお客は、観光客がほとんどじゃないの?」
      律「見晴らしのいい店ね」
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20140521195836725.jpg
      ↑『ぽっぽ家』の窓から撮られた写真です。
      み「駅の周りが、ぐるっと見渡せるな。
       ま、見渡して大したものは無いけど」
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20140521195838fd7.jpg
      ↑金木駅から見た、五所川原方面。晴れてれば、岩木山が見えるのでしょうね。
      律「さて、何にしようか」
      み「まずは、“しじみラーメン”でしょ。
       750円。
       さすが、一番高いね」
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20140521195837199.jpg
      律「わたしもそれにしようかな」
      み「おんなじもの注文してどうするのよ。
       別なのを頼んで、半分こでしょ」
      律「あ、昨日もそうだったわね」
      http://blog-imgs-37.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2010120820100405e.jpg
      ↑覚えてます? 秋田市民市場『しな蕎麦 伊藤』で食べた“ラーメン”と“そのまんま冷やし”。
      み「それが、2人旅のいいところ。
       一度しか食べられない場所で、2種類の味を楽しめるわけだ」
      律「3人なら、3種類じゃない。
       あの鉄さんがいたら、3人だったのに」
      み「死んだ子の歳を数えるでない」
      律「死んでないでしょ」
      み「案外、ああいうのが趣味なんじゃないの?」
      http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20131107074850cac.jpg
      律「それとこれとは別の話」
      み「さて、もうひとつ、何にする?」
      律「“ぽっぽラーメン”って何だろ?」

    • ––––––
      2. Mikiko
    • 2014/05/24 07:25
    • み「醤油だからダメ」
      律「醤油味も、美味しいわよ」
      み「“ぽっぽラーメン”は、たぶん石炭が入ってる」
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2014040207512094e.jpg
      ↑クッキーが載ってるかも?
      律「そんなわけないでしょ」
      み「一番安いから、たぶん、普通のラーメンだよ」
      律「それじゃ、その下の“煮干しラーメン”」
      み「それも、醤油でしょ」
      律「“ぽっぽラーメン”と値段が同じよ。
       これも、普通のラーメン?」
      み「同じラーメンを、名前を変えて並べてどうするの」
      律「わかった。
       煮干しが載ってるのよ」
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201405211958391c3.jpg
      ↑ほんとに煮干しが載ってるラーメンは、ほとんど見あたりませんでした。こちらは、東京立川の『煮干しらーめん青樹(http://niboshiaoki.com/)』さんの“こってり煮干しらーめん”¥750。人気店だそうです。
      み「そんなの、猫しか食わんわ」
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201405211958523c4.jpg
      み「煮干しは、スープの出汁でしょ」
      http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20140521195841c57.jpg
       続きは、次回。
      P.S. 本日は、ホテルの部屋から投稿しました。成功!

    • ––––––
      3. ハーレクイン
    • 2014/05/24 14:30
    • えーっ、美弥ちゃんって、新潟なん。
      「両親に、1学期の報告をするのは当然のこと」
      わたしは、そんな気遣いは全くしなかったなあ。
      >凶暴な太陽の日差し
      まあ、まだそれほどでもないけど、
      昨日の京の青空は鮮烈だったなあ。
      大丈夫かなあ、美弥ちゃん。
      学生に「夏休みの宿題」なんてあるのか。
      ま、文系だからなあ。
      書いたんだけど、投稿しないまま二度寝しちまったよ。
      さあ、今から『東北』のコメ書きだ。

    • ––––––
      4. ハーレクイン
    • 2014/05/24 14:50
    • 昨日は土曜日だったからねえ、せんせ。
      ぽっぽ家さんの窓から見える車両。
      キハかな。
      いや、単行だからなあ。さて。
      しじみラーメン。
      あれ?
      味噌より塩の方が高いのか。
      『しな蕎麦伊藤』さん。
      何年前の話や。
      物語世界では昨日だけど。
      そうか「鉄」は死んだ子か。
      んじゃ「小」くんも死んだ子だな。
      >み「煮干しは、スープの出汁でしょ」
      なんで、温度計が突っこんであるんだ。
      ま、温度計は懐かしいけど。

    • ––––––
      5. Mikiko
    • 2014/05/24 19:32
    •  ハンカチをどこかに落とし、帽子をどこかに忘れて来ましたが……。
       ま、これは、わたしには常にあること。
       お財布、パソコン、カメラ、携帯を無事に持ち帰れたことを、喜ばねばなりません。
       関東と云いましたが、ほぼ東京圏です。
       しかし、人の多いのには驚きました。
       新潟とは比べ物になりません。
       乗換駅のホームなんか、人が線路に零れそうでした。
       わたしはもう首都圏では暮らせないなと、しみじみ感じました。
       新潟に帰り、最寄り駅を出ると……。
       人間の姿が見えない。
       これがわたしの街なんですね。
       わたしはすでに、こっち側の人間になってるということです。
       ま、楽しかったです。
       こういう機会、年に1回位あってもいいなと思いました。

    • ––––––
      6. ハーレクイン
    • 2014/05/24 20:43
    • Mikiさんがそっち側だとしますと、私はやはりこっち側でしょうか(なんのこっちゃ)。
      いやいや、新潟駅の賑わいを私は知りませんから、うかつなことは言えませんね。
      >関東と云いましたが、ほぼ東京圏
      ということは、埼玉か神奈川かな。伊豆ということはあるまい。
      >わたしはもう首都圏では暮らせない
      何をおっしゃる、実際に首都圏で暮らしたお方が。
      わたしが東京都に足を踏み入れたのは、ほんの数回です。

    • ––––––
      7. 淡雪
    • 2014/05/24 21:14
    • それと、忘れ物なしで、無事の御帰還なによりです。
      今一番気候のいいときなんですが、小説みたいに暑い日が、すぐにやってくるんでしょうねえ。
      髪を思い切ってショートにしました。
      飽きちゃってたので、周囲の不評は何ともないんですが、まだ何となく落ち着きません。

    • ––––––
      8. ハーレクイン
    • 2014/05/24 22:50
    • 何も無くても、周りからなんやかんや言われると聞いております。
      大変ですねえ。
      お元気なご様子。なによりです、
      淡雪さま。

    • ––––––
      9. Mikiko
    • 2014/05/25 08:03
    • > ハーレクインさん
       ターミナル駅の構内やホームの人混みには、恐ろしささえ感じました。
       あんなところで大規模災害が起きたら……。
       どうしようもないでしょうね。
       救急車や消防車は、数が間に合わない。
       そもそも、現場まで到着できないでしょう。
       被災者の数に対し、救助者の数が圧倒的に足りなくないですよね。
       逆に、人口の少ないところは、被災者の数も少ない。
       そういうところで被災した方が……。
       救助や支援を受けられる可能性が高いんじゃないでしょうか。
      > 淡雪さん
       知ってるメアド2つに挨拶状を出しましたが……。
       両方とも、届きませんでした。
       よろしかったら、使われてるメアドを教えてください。
       関東はもう、夏になりかけでした。
       ショートは、頭が軽くていいですよね。
       頭痛や肩こりが楽になることもあるようです。

    • ––––––
      10. ハーレクイン
    • 2014/05/25 09:25
    • 確かにねえ。
      わたしなんかはまあ、慣れっこになっていますが、JR大阪駅や、その駅前の梅田地下街などの人混みは、冷静に考えるとすごいですね。
      駅はともかく、震災があった場合の地下街がどうなるか、皆考えないようにしているのかなあ。津波も怖いですよね。地下街に津波が押し寄せたら……これはもう、悪夢ですね。
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