2014.3.28(金)
母が突きあげた両足の先で、10本の指が花開いた。
真夏の燭台のようだった。
わたしが、再び母の顔に視線を戻したとき……。
母の双眸からは、瞳が失われてた。
真っ白に見開かれた眼球が、天井を睨みつけてる。
その顔の傍らに突っ伏した父の頭が、横ざまに倒れた。
父の顔が見えた。
剥き拡げられた眼球に、やはり瞳は無かった。
顎が外れたみたいな口蓋から、舌がこぼれてた。
その舌先だけが、父の肉体から逃げ出そうとでもするように、ヘラヘラと動いてた。
一瞬、2人が死んだんじゃないかと思ったけど……。
重なった2人の腹部は、長距離走を終えた直後みたいに起伏してた。
終わったのだということが、そのときのわたしにもわかった。
わたしは、舞台を覗く襖の隙間を、そっと閉じた。
起ちあがると、ふらついた。
定まらない脚元のまま、玄関に向かう。
何をしようとしてるのか、自分でもわからなかった。
内奥から突きあげる異様な衝動が、わたしを歩ませてた。
サンダルを突っかけ、表に出る。
舗装されてない真っ白な道に、陽炎が揺れてた。
わたしは、白い道を駈け出した。
道路が上下に弾んで見えた。
どれくらい走ったろう。
とうとう息が切れ、足が止まった。
途端に汗が吹き出す。
そこは、さっきまで身を潜めてた共同墓地だった。
椎の木の日陰がある。
わたしは迷うことなく、樹の下を目指した。
日盛りの墓地には、誰の姿も無かった。
蝉の声だけが降り注いでた。
椎の木の下には、雨に洗い出された根が、蛇のようにうねってた。
枝葉を透いた木漏れ日が、戯れながら踊ってる。
わたしは、2本の太い根の間に座り、背中を幹に預けた。
椎の木に、背中から抱かれる姿勢だった。
弾んでた息が、ようやく静まってきた。
でも、汗が止まらない。
真夏の燭台のようだった。
わたしが、再び母の顔に視線を戻したとき……。
母の双眸からは、瞳が失われてた。
真っ白に見開かれた眼球が、天井を睨みつけてる。
その顔の傍らに突っ伏した父の頭が、横ざまに倒れた。
父の顔が見えた。
剥き拡げられた眼球に、やはり瞳は無かった。
顎が外れたみたいな口蓋から、舌がこぼれてた。
その舌先だけが、父の肉体から逃げ出そうとでもするように、ヘラヘラと動いてた。
一瞬、2人が死んだんじゃないかと思ったけど……。
重なった2人の腹部は、長距離走を終えた直後みたいに起伏してた。
終わったのだということが、そのときのわたしにもわかった。
わたしは、舞台を覗く襖の隙間を、そっと閉じた。
起ちあがると、ふらついた。
定まらない脚元のまま、玄関に向かう。
何をしようとしてるのか、自分でもわからなかった。
内奥から突きあげる異様な衝動が、わたしを歩ませてた。
サンダルを突っかけ、表に出る。
舗装されてない真っ白な道に、陽炎が揺れてた。
わたしは、白い道を駈け出した。
道路が上下に弾んで見えた。
どれくらい走ったろう。
とうとう息が切れ、足が止まった。
途端に汗が吹き出す。
そこは、さっきまで身を潜めてた共同墓地だった。
椎の木の日陰がある。
わたしは迷うことなく、樹の下を目指した。
日盛りの墓地には、誰の姿も無かった。
蝉の声だけが降り注いでた。
椎の木の下には、雨に洗い出された根が、蛇のようにうねってた。
枝葉を透いた木漏れ日が、戯れながら踊ってる。
わたしは、2本の太い根の間に座り、背中を幹に預けた。
椎の木に、背中から抱かれる姿勢だった。
弾んでた息が、ようやく静まってきた。
でも、汗が止まらない。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2014/03/28 07:25
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み「そもそも、終点まで何分かかるの?」
小「45分です」
み「なんだ、そんなもんか。
でも、往復したら、1時間半だよな。
退屈しない?」
小「行きと帰りで、反対側の窓を見れば、ぜんぜん退屈しません。
景色自体は、そんなに絶景ってわけじゃないですけどね。
ずっと、津軽平野ですから」
http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2014032119465834e.jpg
↑津軽鉄道の車窓から。ずっとこんな景色が続くんだと思います。
み「そういう慣れた口調で言うということは……。
初めて来たわけじゃないわね」
小「4回目です。
やっぱり、小学生がここまで来るのはタイヘンです。
早く大人になりたいです」
み「大人になったら、大人料金がかかるではないか」
小「でも、会社に勤めて、お給料がもらえるでしょ。
そしたら、毎月来るんだけど」
み「ぱかもん。
新入社員が、青森に毎月来れるほどの給料もらえるかい」
小「入ってすぐは無理でも、頑張って偉くなればいいでしょ」
http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20140321194655368.jpg
み「またチミは、世の中舐めてますね。
そんなに簡単に出世でけるか!」
小「大丈夫です。
ボク、東大に入りますから」
み「また……。
言っちゃってくれちゃってるじゃないの。
“とうだい”って、足摺岬にある灯台?」
http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201403211946562ce.jpg
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2. Mikiko- 2014/03/28 07:26
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小「違います。
本郷です」
http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201403211947000b4.jpg
小「教養課程は、駒場ですけど」
み「先生。
ほっぺたつねってもいい?」
律「よしなさいって。
でも、東大出た人が入るような会社だと……。
お金があっても、お休み取れないかもよ」
小「どうしてですか?
有給休暇は、労働者の権利です」
http://blog-imgs-69.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201403211947015b9.jpg
み「ばっきゃもーん!
そう簡単にはいかんのじゃ。
誰も有給を取らないような会社で……。
自分だけ取るってのは、ものすごく気まずいの。
残業だって、そうよ。
自分の仕事を片付けたから、とっとと帰ると……。
なんで、残ってる人の仕事を手伝わないんだとか言われる」
律「それはちょっと、ヒドいわね」
み「だよねだよね。
結局、仕事を効率化して、早くこなせるようになると……。
ほかの仕事まで押し付けられるってことになるんだよ。
とろとろ仕事して、残業代稼いでるヤツが一杯いる!」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2013060704562181a.jpg
み「ま、旅先で、こういう話は止めよう。
滅入ってくる」
http://www.youtube.com/watch?v=dWUI0v3C5Ok
↑『メーデーの歌』。なぜか、運動会でよく聞きました。
続きは、次回。
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3. ハーレクイン- 2014/03/28 10:53
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山田さんご夫妻。
しかし、奥さんはともかく、旦那まで失神するかね。
しかも、「舌がへらへら」って……。
「重なった二人の腹部」って、まだ奥さんの上に乗っているのか、旦那。奥さん重たがりまっせ。
で、椎の木に抱かれて何するんだろうね、典ちゃん。若き日の山田せんせ。
もちろん、あれしかなかろう。
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4. ハーレクイン- 2014/03/28 10:57
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それはそうだな、ボクちゃん。
津軽鉄道だ、ちがいない。
それにしてもこのボクちゃん、どっから来たんだろうね。
まさか東京とかではあるまいな。小学生にそんな贅沢、わたしが許しても天が許さんぞ。
足摺岬ってどこじゃい、で地図を見ちゃいましたよ。
いや、高知県だってのはわかるんだけど、室戸岬もあるから、すぐどっちかわからなくなるんだよ。
室戸岬で思い出すのは、昭和36年(1961年)の「第二室戸台風」。
室戸岬に上陸した後、関西を直撃。瞬間最大風速、なんと84.5m/s、大阪でも33.3m/s、各地に甚大な被害をもたらしました。大阪市でも高潮による浸水がありました。
わたしが小学生の時です。
おー赤門。
東大の象徴にして、国の重要文化財。かつては国宝でした。
左右にちらっと見えるのは番所ですが、別に番人はいないと思います。
労働者ねえ。そういえば、♪聞け万国の労働者……ってのがあるなあ
ありゃ、UPしてはるのか、で覗いてみたら早くも停止になっていました。
それにしても「み」さんの残業話。
まさに、血涙の叫びだね。
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5. Mikiko- 2014/03/28 20:30
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このイメージ、好きですねー。
ワニガメの擬餌状体がモデルです。
足摺岬で思いつくのは……。
●やれ打つな蝿が手をする足をする
蝿はフケツですが……。
蚊のように、人に直接害を与えないのは、認めてもいいところです。
路上からウンチが無くなった今、彼らはどうやって子孫をつないでいるのでしょうか。
東大赤門。
加賀藩前田家上屋敷の門でした。
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6. ハーレクイン- 2014/03/28 22:03
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懐かしいですね。
足摺岬が、なぜ蝿なんだろうと一瞬思ってしまった。
一茶「……足をする」ですね。
蝿の食物は、ウンチだけではなく、生ゴミや動物の死体なども食べるそうです。養鶏場で大発生したこともあるとか
直接害を与えなくても、不愉快であることは確かです。
「ザ・フライ」は、蝿に変身した男が主人公のホラー映画。気持ち悪かったなあ。
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7. Mikiko- 2014/03/29 08:40
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怖がられる存在ではなく、嫌われる存在であるわけですね。
いじめの構造に似てますが……。
蝿の場合、病気を媒介したりもするわけですから、仕方ないでしょう。
ウジ虫は、釣り餌として売られてるようです。
よく触れるよな。
それを食う方もどうかしてるが。
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8. ハーレクイン- 2014/03/29 10:25
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蝿の食べる物はもっと様々にあるそうです。
中には、ヒトの眼球に取り付いて、涙を啜る蝿もあるとか。こうなると、直接の害だよね。
例によってWikiで読んだんだけど、気持ち悪くなってきたよ。