2013.10.30(水)
由美は、造り付けのクローゼットの前に立った。
扉を開く。
優しい布地の香りが頬を包む。
思わず微笑みが零れた。
由美にとってクローゼットは、ただの衣装ケースではなかった。
特別な空間だった。
もうひとつの心の中、と言ってもいい。
学校にいるときや、電車に乗っているときも……。
クローゼットの中には、もう一人の自分が眠っているように思えた。
しかし、今夜の衣類たちは混乱しているかも知れない。
なぜなら、いつもの主人の姿とは違うから。
そう。
股間から、男根が生えているのだ。
ハンガーを繰り送るごとに、衣服たちのそんな囁きが聞こえるようだった。
由美の手が止まり、1本のハンガーが抜き取られた。
少し長めのチュニックだった。
ワンピースと言ってもおかしくない。
色は、ターコイズブルー。
トルコ石に似た、少し緑がかった青。
Aラインの、ゆったりしたデザインだった。
男根は、手で押し下げない限り、下腹部に貼り付いている。
このチュニックなら、男根の膨らみはフォルムの中に隠せるはずだ。
由美はチュニックを頭から被った。
サテンの布地が素肌を滑り落ちる。
クローゼットを離れ、姿見の前に立つ。
思ったとおりだった。
身体を反らせば、股間のわだかまりは微かに浮かぶが……。
普通の姿勢でいるかぎり、布地の広がりに隠れてしまう。
由美は、柔らかな布地の上から、男根を握った。
サテンに包んだまま、指を上下に滑らす。
もちろん、男根に神経は通っていないので、その感覚は伝わらない。
しかしもし、本物の男根だったら……。
あっという間に射精しているかも知れない。
それほどまでに、サテンの肌触りは蠱惑的だった。
由美は、風に吹かれる人形(ひとがた)のように、鏡の前を離れた。
向かったのは、玄関だった。
サンダルに爪先を通す。
コンビニなどへ行くときに履く、ストラップのない突っかけサンダルだ。
扉を開く。
優しい布地の香りが頬を包む。
思わず微笑みが零れた。
由美にとってクローゼットは、ただの衣装ケースではなかった。
特別な空間だった。
もうひとつの心の中、と言ってもいい。
学校にいるときや、電車に乗っているときも……。
クローゼットの中には、もう一人の自分が眠っているように思えた。
しかし、今夜の衣類たちは混乱しているかも知れない。
なぜなら、いつもの主人の姿とは違うから。
そう。
股間から、男根が生えているのだ。
ハンガーを繰り送るごとに、衣服たちのそんな囁きが聞こえるようだった。
由美の手が止まり、1本のハンガーが抜き取られた。
少し長めのチュニックだった。
ワンピースと言ってもおかしくない。
色は、ターコイズブルー。
トルコ石に似た、少し緑がかった青。
Aラインの、ゆったりしたデザインだった。
男根は、手で押し下げない限り、下腹部に貼り付いている。
このチュニックなら、男根の膨らみはフォルムの中に隠せるはずだ。
由美はチュニックを頭から被った。
サテンの布地が素肌を滑り落ちる。
クローゼットを離れ、姿見の前に立つ。
思ったとおりだった。
身体を反らせば、股間のわだかまりは微かに浮かぶが……。
普通の姿勢でいるかぎり、布地の広がりに隠れてしまう。
由美は、柔らかな布地の上から、男根を握った。
サテンに包んだまま、指を上下に滑らす。
もちろん、男根に神経は通っていないので、その感覚は伝わらない。
しかしもし、本物の男根だったら……。
あっという間に射精しているかも知れない。
それほどまでに、サテンの肌触りは蠱惑的だった。
由美は、風に吹かれる人形(ひとがた)のように、鏡の前を離れた。
向かったのは、玄関だった。
サンダルに爪先を通す。
コンビニなどへ行くときに履く、ストラップのない突っかけサンダルだ。
コメント一覧
-
––––––
1. Mikiko- 2013/10/30 07:20
-
み「ま、漢字が“陸奥”になったのはいいとして……。
この読みが、どうして“みちのく”から“むつ”に変わったんだ?」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20131027102449a61.jpg
↑『戦艦陸奥』。昭和18年6月8日、謎の爆発により山口県柱島沖で沈没。
食「2説あるそうです。
“陸”って字は、漢数字の“六”の正字でしょ」
み「領収書を書くとき、“六”は“陸”だな」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20131027102445aa0.jpg
み「でもそれが何で、“むつ”になるんだ?」
食「わかりませんか?
“暮六つ”とか言うでしょ?」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201310271027078fd.jpg
↑長崎の飲み屋のようです。“暮六つ”は、日没に当たります。
み「“むっつ”の“むつ”か!
単なるダジャレじゃないか。
誰がこんな阿呆な説を唱えたわけ?」
食「本居宣長ですよ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201310271027091bc.gif
↑『敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花』で有名。神風特攻隊の部隊名『敷島隊』『大和隊』『朝日隊』『山桜隊』は、ここから採られました。
み「あらそう。
けっこうビッグネームだったわね。
もう一つの説は?」
食「東北弁です」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20131027102443f47.jpg
み「どういうこと?」
食「“みちのく”が訛って、“むつのく”になった」
み「はぁ。
これまた力が抜ける説だのぅ。
今度は誰じゃ?」
食「保田光則と云う人のようです」
み「知り合いか?」
食「知りませんよ。
江戸時代後期の国学者みたいです。
仙台藩士ですね」
-
––––––
2. Mikiko- 2013/10/30 07:21
-
み「でも、どっちの説も……。
“陸奥(みちのく)”の後ろ半分、“奥(のく)”が発音されなくなったことを言ってないではないか」
食「ま、省略されたんじゃないですか」
み「国名なんか、そんな簡単に省略されないだろ。
“にいがた”を、“にい”なんて言っても、誰もわからん」
食「“陸奥国(みちのくのくに)”が縮まって、“むつのくに”になったんじゃないですか。
そうなると、“陸奥”で“むつ”と読むことになります」
み「どうもすっきりせん」
食「言葉の変遷なんて、そんなもんですよ」
み「あっさり片付けおって。
ま、とりあえず“むつ市”はいいとしても……。
“つがる市”の“津軽”は、読み間違えようがないだろうが」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20131027102705a7a.jpg
食「確かに。
漢字の『津軽市』には、近隣市町村から、異論が出たのかも知れませんね。
津軽地方の中心地みたいな感じになりますから」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20131027102706227.gif
み「新潟でも、銀行の名前が変わるとき、そういう問題が出たな」
律「また、新潟の話?」
み「良いではないか。
新潟には昔、『新潟相互銀行』って銀行があったの」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20131027102448b95.jpg
↑新潟県阿賀野市に残る琺瑯看板(2009年の画像)。
み「で、法律が変わったか何かで、『相互銀行』って種別が無くなった」
律「そう云えばあったわね。
『相互銀行』って」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201310271024460af.jpg
↑これまた良い味わい(上2枚とも、こちらのサイトさんから拝借→http://www.geocities.jp/kazetaro2002/hoken103.html)。
続きは、次回。
-
––––––
3. ハーレクイン- 2013/10/30 09:38
-
懐かしのクローゼット。
あの、女教授のクローゼット。
夏実にも使わせていただいたクローゼット。
「特別な空間」クローゼット。
チュニック。
ターコイズブルー。
Aライン。
うーむ。
サテンは……なんとかわかる。
なるほど。
由美ちゃん、表へ出るか。
-
––––––
4. ハーレクイン- 2013/10/30 10:18
-
へえ、知らなかった。
零、壱、弐、参までは知ってる。あ、伍もね。
昔の銭湯の、えーと、なんていうんだ、脱衣ケース、はおかしいな。箪笥? も変だな。要するに、脱いだ衣服を入れておく箱。あの扉に番号が書いてあって、それがこんなだった。でも、6は六だったな。
>領収書を書くとき、“六”は“陸”
へえ、そんなの見たことないなあ。
暮れ六つの六つは、時を知らせる鐘の音の数だな。
「あれ数うれば暁の、七つの時が六つ鳴りて、残る一つが今生の、鐘の響の聞き納め、寂滅為楽と響くなり……」(近松;曽根崎心中)
暁七つは午前4時。六つは午前6時ですね。暮れ六つは午後6時。
ただし、不定時法だと時刻は異なります。
明るく親切「新潟相互銀行」
あったねー、相互銀行。
関西相互銀行とか、大阪相互銀行とか。大阪にもあったよ。
出発点は無尽、無尽講だってね。いやあ、江戸の匂いがプンプンするねー。
-
––––––
5. Mikiko- 2013/10/30 19:45
-
そのまんま、脱衣箱でいいみたいです。
↓漢数字の脱衣箱、ありました(大阪市城東区)。
http://sairosha.com/furo/tekusen/2013-3kikusui.htm
「お江戸日本橋七つ立ち」が、いかに早立ちかわかります。
朝4時から、夕方まで歩くんでしょうか?
現代人には、ぜったい無理ですね。
-
––––––
6. ハーレクイン- 2013/10/30 22:15
-
さすがに、古色蒼然としてますね。
そうそう、右から左へ数字が大きくなっていったんだよね。
で、自分が決めた番号に入れる人が多かった。そこがふさがっていると、残念無念で他の箱に入れる。
わたしも決めていましたが、何番だったかは忘却の彼方です。
日本橋を七つに立って、高輪で「夜あけて提灯消す」。つまり明け六つ。
ということは日本橋から高輪まで(季節によって異なりますが)2時間。、日本橋-高輪は7kmくらい。ということは時速3.5km、ちょっと遅いな。ま、行列だからな。
一日の歩行距離は、宿場間の距離にもよりますがおよそ十里、40km。
歩行速度が現代人と同じ4km/時だとしますと、10時間ほど歩いたわけですね。明け六つ(午前6時)に立ったとして午後4時。途中で休憩も取るでしょうから、のんびりしていたら暮れ六つ(午後6時)まで歩くことになります。半日歩くわけだ。すごいね。
-
––––––
7. Mikiko- 2013/10/31 07:23
-
川上哲治さんが亡くなりました。
現役のころはきっと、脱衣箱の16番が人気だったんでしょうね。
16番は、巨人軍の永久欠番。
『巨人の星』で、星飛雄馬が受け継ぐ設定でした。
お江戸日本橋。
あれはいったい、何の行列なんでしょうね?
今で云う、団体旅行でしょうか?
時速、3.5㎞ということは、女性も入ってますよね。
-
––––––
8. ハーレクイン- 2013/10/31 09:17
-
2013年10月28日、三日前ですね。老衰のため逝去。
享年93歳。
いやあ、こんなん言うたらなんですけど、まだご存命だったんですねえ。
打撃の神様のご冥福をお祈りします。
星飛雄馬は『巨人の星』で川上氏の背番号16を、『新巨人の星で』長嶋茂雄氏の背番号3を受け継ぎ、父一徹をして「背番号だけは『巨人の星』だわい」、と言わしめました。
お江戸日本橋の行列。
大名行列じゃないですかね。
だって、江戸の木戸が開くのは明け六つ。七つなんてまだ堅く閉まってますから、コソッと木戸番を拝み倒して……ならともかく、庶民の行列がぞろぞろ、なんて通れるわけありません。
ところが2番以後を見ると、女郎衆はでてくるわ、饅頭は食うわ、痴話で口説はするわ、女を騙して寝かすわ、わらび餅は焼くわ、桑名で焼蛤は食うわ……到底大名行列とは思えません。
うーむ。
日本橋-高輪間7kmというのは地図上で適当に物差しで測った値ですから、あまり正確ではありませんし、そもそも直線距離です。
ですから、時速4kmという普通の速度なのかもしれません。
で、例によって品のない大阪の替え歌。
♪お江戸日本橋屁こき橋……
それだけ。
-
––––––
9. Mikiko- 2013/10/31 19:33
-
↓距離表がありました。
http://350ml.net/labo/tokaido.html
品川までが、2里ですね。
↓なんと、実際に東海道を歩いたご夫婦がおられました。
http://www11.plala.or.jp/soutan/g/1hi.htm
日本橋から高輪大木戸跡までは、1里19町、6.0㎞だそうです。
歌詞の冒頭に、“初のぼり”とあります。
参勤交代の行列が、“初のぼり”のわけないでしょうに。
↓“講”による団体旅行じゃないでしょうか?
http://blogs.yahoo.co.jp/uozumi_kazuo/27889443.html
-
––––––
10. ハーレクイン- 2013/10/31 21:39
-
始めは丹念に読んでいたんですが、とても読みきれるものではありませぬ。ご自宅が千葉のようで、3日目くらいまではいちいち電車でご自宅に戻っておられたようですが、先行きはどうなったのかなあ。
結局、30日かけて踏破されたようです。
ご苦労様といいますか、何といいますか。
しかしこんなのを読むと『続元禄』を思い出すなあ。八十郎さん、お元気かな。たまには顏出しとくんなはれな。
日本橋から高輪まで6.0km。ということは時速3.0km。
えらくのんびりだな。
ま、確かに大名行列がおかしいというのは、2番以後の歌詞からも明らかなんだけどね。
でもなあ、どうしても「七つ立ち」が引っ掛かるんだよね。大名行列なら無理矢理木戸を開かせたろうけど、そこらの八っつぁん熊さんはなあ、無理だろ。
どやねん、で少し調べてみましたらなんと! 「木戸は夜間も開けっ放しだった」という説が見つかりました。唱えているのは例の、江戸研究家の石川英輔氏。
開けっ放しなら七つ立ちでも何の問題もない。なんなら、八つ立ちでも九つ立ちでも。
しかしどうなんかなあ、開けっ放し。俄かには信じがたいな。第一、それなら木戸番の意味ないじゃん。
-
––––––
11. Mikiko- 2013/11/01 07:58
-
逆に、木戸番は不要になります。
閉めきってしまえばいいだけですから。
木戸番というのは、人を通すためにいたようです。
通りたい人は、木戸番に言って、木戸を開けてもらう。
木戸番は拍子木を打って、次の木戸に、通行人のあることを知らせたそうです(拍子木送り)。
-
––––––
12. ハーレクイン- 2013/11/01 09:04
-
そだね。
ただ、木戸番に言ってもフリーパスというわけではなく、行き先を聞かれたり住所!氏名?!を聞かれたり、なかなかやっかいだったそうです。
ただし、医者と産婆はフリーパスだそうで、これは納得ですね。だけど、夜遊びの医者なんて可能性もあったのでは。
そういえば、吉原の大門が閉まるのは四つ(午後10時)。その直前に引き上げた客は、木戸も四つに閉まってるわけだから、「木戸番拝み倒し組み」ということになるのかなあ。
拍子木送りをして、しばらくたっても次の木戸に誰も来ないと、大騒ぎになったそうです。夜中、人を繰り出して町内の捜索をするわけですね。
そらそうだ、火付け、盗賊などの可能性があるもんね。