2013.5.31(金)
夫人が、手の平を上に見せながら、天を仰いだ。
雲はまだ厚く垂れこめていたが、さっきまでの驟雨がうそのようだった。
「あーあ。
また、お洗濯し直し」
夫人は、竿に残っている洗濯物を外し始めた。
由美も手伝う。
「畳まなくていいからね。
籠に放りこんでちょうだい」
と言われても、雨を存分に吸った洗濯物を、そのまま籠に放りこむわけにはいかないだろう。
籠が重くなりすぎるからだ。
由美は、皺を付けないように気を使いながら、布地を絞った。
洗濯物には、もちろん、下着も含まれていた。
まったく人目に触れない場所なのだから、下着類を一緒に干すのは当然だった。
由美は、なるべくそれらを見ないようにして、無難な衣類を手に取った。
「2人分でこれだけあるんだから……。
3人になったら、どうなっちゃうんだろう。
もうちょっと、こまめにやった方がいいのかな。
あー、やっと終わった」
洗濯物が下げられていた物干しは、洒落た形をしていた。
大きなビーチパラソルを、骨だけにしたような形だ。
1本の柱の頂点から、放射状に竿が伸びている。
「これ、風が吹くと回るのよ」
夫人が、竿のひとつに手を架けると、パラソルの骨が、カタカタと回った。
「いっぱいに下がった洗濯物が回ってるのを見ると……。
帆船みたいなの。
ねえ?
『とぶ船』って知ってる。
読んだことある?
そう。
わたしも、小学校のとき読んだわ。
面白かったなぁ。
憧れた。
あんな船が欲しいって、心から願った。
もちろん、叶わなかったけど」
雲はまだ厚く垂れこめていたが、さっきまでの驟雨がうそのようだった。
「あーあ。
また、お洗濯し直し」
夫人は、竿に残っている洗濯物を外し始めた。
由美も手伝う。
「畳まなくていいからね。
籠に放りこんでちょうだい」
と言われても、雨を存分に吸った洗濯物を、そのまま籠に放りこむわけにはいかないだろう。
籠が重くなりすぎるからだ。
由美は、皺を付けないように気を使いながら、布地を絞った。
洗濯物には、もちろん、下着も含まれていた。
まったく人目に触れない場所なのだから、下着類を一緒に干すのは当然だった。
由美は、なるべくそれらを見ないようにして、無難な衣類を手に取った。
「2人分でこれだけあるんだから……。
3人になったら、どうなっちゃうんだろう。
もうちょっと、こまめにやった方がいいのかな。
あー、やっと終わった」
洗濯物が下げられていた物干しは、洒落た形をしていた。
大きなビーチパラソルを、骨だけにしたような形だ。
1本の柱の頂点から、放射状に竿が伸びている。
「これ、風が吹くと回るのよ」
夫人が、竿のひとつに手を架けると、パラソルの骨が、カタカタと回った。
「いっぱいに下がった洗濯物が回ってるのを見ると……。
帆船みたいなの。
ねえ?
『とぶ船』って知ってる。
読んだことある?
そう。
わたしも、小学校のとき読んだわ。
面白かったなぁ。
憧れた。
あんな船が欲しいって、心から願った。
もちろん、叶わなかったけど」
コメント一覧
-
––––––
1. Mikiko- 2013/05/31 07:23
-
律「癌か……。
医学にとっては、未だ大きな壁のひとつね」
み「医者が言うな」
律「癌は、早期発見に限るわ」
み「女優さんだからさ。
会社の検診みたいなのは無いだろうし……」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130527193644ae7.jpg
み「自分一人で定期的に受けるってのは、大変だよね」
律「そうね」
み「そう言えば、こないだ……。
アンジョリーナ・ジョリーが、乳房切除したでしょ」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201305261935148df.jpg
↑このおっぱいは、もうこの世には無いのですね。
律「大々的に報道されたわね」
み「どうよ、あれ?」
律「あれったって……。
あれは、特殊ケースとしか言えないわね」
み「乳房再建手術、何百万でしょ?」
律「アメリカの保険制度はよく知らないけど……。
全額自費でしょうね」
み「あ、保険にすればいいんだ」
律「日本じゃ無理よ」
み「健康保険じゃなくて……。
がん保険。
乳がんになる可能性が、たとえば85%以上と診断された場合……。
乳房の切除と再建手術が受けられるって保険」
律「なるほど」
み「再建時に、サイズを2割増ししてくれる特約も付ける」
律「あんたは、5割増しくらい必要なんじゃないの?」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2013052719364640f.jpg
み「じゃかっし」
律「ま……。
そんないい女優さんの苗字をいただいて、光栄だわ」
み「そうだよ」
律「ヘンなシーン、書かないでよね」
み「へ?」
律「その女優さんに申し訳ないから」
み「それとこれとは別問題です」
律「きっと、ファンの方から文句が来るから」
み「来ません。
エロサイトなんて、まともな人は相手にしないでしょ」
律「書き放題ってこと?」
み「お金ももらってないしね」
律「そう言えば……。
『三和出版』はどうなったのよ?」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201305271936441ae.jpg
↑『三和出版』想像図。
み「まだ、連絡なしです」
律「また立ち消えるんじゃないの?」
み「縁起の悪いこと言わんといて。
挨拶状に2回も書いて、何も起きなかったら……。
マジで立場が無いわ」
律「書かなきゃいいのに」
み「何か、報告もしたいじゃないの」
律「いくらくらいもらえるのよ?」
み「さー。
長すぎるので……。
どういう形がいいか考えてるとか書いてあったから」
律「それって……。
全文掲載されないってこと?」
み「さー」
律「大体、あんたの小説は、スカスカなのよ」
み「読みやすさを思ってのことなの」
律「つまり、ネット用ってことでしょ。
あれを縦書の紙に印刷したら……。
下半分、真っ白になるんじゃないの?」
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201305271936458d5.jpg
↑これはいったい……。
というわけで……。
続きは、次回。
-
––––––
2. ハーレクイン- 2013/05/31 12:22
-
現実に戻れば、当然、濡れた洗濯物のとりこみが待っている。
ブラだろうがパンツだろうが取り込まねばならぬ。
会話もなんか所帯じみて来たなあ。
なかなかエロくならんなあ。
放射状に竿が伸びる物干しねえ。
小物を懸けるやつならよくあるが、ビーチパラソル並みの大きさとは。そんなのあるのか。
で、帆船ねえ、『とぶ船』ねえ。
また夢の世界に入りそうだけど、
エロくなりそうにはないなあ。
-
––––––
3. ハーレクイン- 2013/05/31 14:20
-
切除ったって、丸ごと切り取るわけじゃないけどね。だから、元の形には結構戻ってると思うよ、知らんけど。
それにこのお方は、乳がんになったから手術したんじゃなくて、将来、乳がんになる可能性が高い(たしか80%くらい)ので、いわば予防のために手術したんだよね。
思い切ったよねえ。
彼女の出演映画は多いです。調べてみたら意外と見ていない。
『ボーン・コレクター』『Mr.&Mrs.Smith』『トゥームレイダー』
この三作だけ。すまぬ、アンジー。
この人、アカデミー賞もゴールデングローブ賞も取っていますが、ゴールデンラズベリー賞(いろんな賞があるんやなあ)の「最低主演女優賞」にノミネートされたことがあります。しかも4回も。そのうちの2回の当該作品は、日本でも有名な『トゥームレイダー』の1と2です。何度かTV放映もされましたから見たことある人も多いはず。
ま、たしかに駄作ですが、女優のせいだけではないと思うがなあ。
ゴールデンラズベリー賞は、アカデミー賞などと同じく最低作品賞、最低監督賞をはじめ各部門があります。ま、USA特有の“おふざけ”ですね。
授賞式はアカデミー賞授賞式の前日に行われますが、ほとんどの受賞者は会場に姿を見せないとか(そらそやろ)。
で「最低主演女優賞」、わたしが見たことのあるやつから“それほど悪ないやん”を幾つか挙げておきましょう。受賞、またはノミネートです。
●ブルック・シールズ『青い珊瑚礁』:可愛かったけどなあ。
●ホイットニー・ヒューストン『ボディガード』:主演のケビン・コスナーに食われたな。ま、本職が歌手だからなあ。歌手役として作中で歌った歌が素晴らしいので許す。
●キム・ベイシンガー『ナインハーフ』:結構エロかったけど。
●ジュリア・ロバーツ『ジキル&ハイド』:原作をひねり過ぎたからなあ。女優さんに責任はないぞ。
●サンドラ・ブロック『スピード2』:作品が面白いので女優さんが目立たなかったな。
●ローレン・ホリー『乱気流/タービュランス』:航空パニック。確かに女優さんはダサい。がパニック物、好きなので許す。
●ミラ・ジョヴォヴィッチ『ジャンヌ・ダルク』:バイオハザード大当たり姐さんも形無しだな。何でやろ、作品が大作過ぎたかな。
●ミラ・ジョヴォヴィッチ『バイオハザードⅤリトリビューション』:ま、シリーズ物というのはねえ、だんだんつまらなくなるというのが通り相場だからなあ。このシリーズもねえ、まⅡまでかな。Ⅰは鮮烈だった。
●ジェニファー・ロペス『イナフ』:2002年の作品だけど見てないんだよ。こないだTVでやってたんで録画した、けどまだ見ていない(見ていないのを書くな!)。
>律「そんないい女優さんの苗字をいただいて、光栄だわ」
えーと、「いい女優さん」というのは、アンジェリーナ・ジョリーじゃなくて、深浦加奈子さんだな。
>み「エロサイトなんて、まともな人は相手にしない
なにをいうか、何を。それは読者に失礼だぞ。
『三和出版』想像図画像。
わはははは。
久方ぶりに笑かしてもらった。最高! 座布団三枚!!
でまあ、これで掲載中止、決定だな。
それはともかく、まだかよ。
1年以上もほったらかしといて、2回も肩すかし食わされたら、温厚なわたしも怒るぞ。
うーむ、どうしてくれよう。やみげんさんは頼りにならんしなあ(ゴメン)。
「火ぃつけてやる」言うてもなあ、あの建物では“つけがい”がないし。
それになにぃ?
>律「全文掲載されない
バカなこと言ってんじゃないよ。あの見事な構成、組み立てのどこをどう削るというのだ!(ちょっち褒め過ぎ)
もうええ。
「み」さん、ケツまくれ。
パンツは替えとけよ(これ前にも書いたなあ)。
そんなはっきりせん出版社なんぞ、こっちからお断りじゃい。
引き揚げ引き揚げ、原稿引き揚げ。
こっちから頼んで「載せとくんなはれ」言うてったわけやなし。
読んでくれるMikiko’s Room読者の人数は、三和出版の比ではないのだ(どっちが多いんや)。
-
––––––
4. Mikiko- 2013/05/31 19:58
-
朝のNHKニュース、『まちかど情報室』で見ました。
http://blog-imgs-48.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20130531170310c72.jpg
↓輸入品で、結構なお値段です。
http://item.rakuten.co.jp/m-worldplus/10000009/
10坪の敷地には、設置不可能と思われます。
『とぶ船』。
この冬、読み始めましたが……。
見事に挫折しました。
わたしの心は、もうあの世界を受け入れられなくなってたということです。
名作には、読むべき年齢というものが、明確にあるようです。
乳房切除。
癌になってないのですから……。
患部というものが存在しないわけです。
どこに発症するかわからないとなれば……。
ぜんぶ切らなきゃ意味ないんじゃないの?
三和出版の件。
そないに焚きつけられてものぅ。
わたしは、ちーっとも怒ってないので。
ま、こんなもんなんじゃないすか。
こーゆー業界は。
原稿引き上げったて、そもそも送ってませんがな。
それ以前の段階ということです。
-
––––––
5. ハーレクイン- 2013/05/31 20:53
-
さすがに支えはしっかりしてるんだなあ。
そらそうだな。ヤワな構造だとたちまち竿が外れるか折れるだろうしね。竿と竿の間を繋いでるたくさんの……ワイヤーかなあ。ここに洗濯物を掛けるんだね。
で、支柱の中ほどちょい下に、えーとなんてったっけ、あの回すやつ。これを回すと全体が上下するのかなあ。
> 10坪の敷地には、設置不可能
ほっとけ。
うちの物干し場はベランダで十分だわい。
あれ?ちょっと待ってくれ。
今掲載中の『由美美弥』は1年以上前に書いたやつだろ。なんでまちかど情報室の情報が入れられるのだ、と思ったら、今朝の放送とは限らんわな。あ、今朝のでも、原稿を修正すりゃすむことか。
『とぶ船』挫折。
ああ、君はもう少女の感性を無くしてしまったのか。
♪会いたいのは……そばかす気にしてた日のわたし
翻訳ものだから読みづらかっただけじゃないの。
乳がん予防。
発症しやすい部位というのがあるんじゃないの、知らんけど。
三和出版一件。
そらあかんで。
人間、怒るときは怒らなあきまへん、と揉め事を期待して楽しむわたし。
-
––––––
6. Mikiko- 2013/05/31 22:07
-
今年の2月13日だったようです。
http://www.nhk.or.jp/ohayou/machikado/20130213.html
ということは……。
今の部分を書いてたのは、『放課後』を書き終えた後ってことですね。
翻訳物。
確かにねー。
わたしならもっと上手く訳せるのにという、ゴーマンな思いが頭をもたげ……。
物語に没頭できなかったのかも知れません。
三和出版。
何で腹が立たないのか、わたしも不思議なんですが……。
やっぱり、今のままが一番だという思いが、どこかにあるんでしょうね。
-
––––––
7. ハーレクイン- 2013/05/31 22:36
-
今のシーン、オレンジ爆弾とか、を書いたのは放課後(ⅠかⅡか忘れた、たぶんⅡ)を書きはじめる前だって言うてはりませんでしたっけ。
>わたしならもっと上手く訳せる
ほお、「み」さんは語学も堪能ですか。
それはそれは。
翻訳家も儲かるみたいでっせ。売れれば、だけどね。
別にいまさら載せてなんぞいらんけど、不誠実な対応、というのが腹立つんだよね。いったい何様のつもりだ!
あれ?
怒りって、エスカレートするなあ。
言ってみりゃ、わたしにとっては他人事なのだが。いやいや、Mikiko’s Roomのことはもはや他人事ではないわ。
-
––––––
8. Mikiko- 2013/06/01 07:57
-
確かに、『放課後Ⅱ』の前でした(『Ⅰ』のわけあるかい)。
今の部分はもう、書き終えた後ですね。
語学は不堪能です。
下訳を翻訳ソフトにやらせれば……。
ちょちょいと直して出来上がりじゃないの?
だから……。
一般社会の常識が通用しない世界なんじゃないすか。
怒りは万病の元。
ポジティブシンキングはストレスの元です。
あんたもえーかげんでんな、うちかてそうや、ほなさいなら。
これで世の中、あんじょう回ります。
-
––––––
9. ハーレクイン- 2013/06/01 09:28
-
えー。
放課後Ⅰって、もうそんなに前になるのか。時の経つのは……というやつですなあ。
>語学は不堪能
なんだよ、またヨタかい。
翻訳ソフトなんてアホやろ、うちかてアホや、ほなさいなら。
>常識が通用しない世界
なんか映画になるみたいやけど、杉田玄白が平賀源内の死を悼んだ碑文の一節が「非常の人」。もちろん、常識のない人、という意味ではありません。