2012.11.30(金)
階段を上りきったところで、ホールを背にした。
正面の理事長室まで、綺麗な遠近法で真っ白い廊下が伸びてる。
左右に、いくつかの扉。
川上先生は、そのどれかに入ったに違いない。
廊下を歩き始めると、思いのほか靴音が響いた。
パンプス、脱いじゃおうかと思ったけど……。
そんな姿を見られたら、言い訳のしようが無いし。
懸命に足音を忍ばせて進んだ。
扉の前では足を止め、中の気配を伺った。
でも、何も聞こえない。
気配もしない。
理事長室の扉が、真正面に迫ってくる。
今にもそれが開き……。
わたしを糾弾する指が突きつけられる。
そんな妄想がちらつき始めたころ……。
聞こえた。
声。
女の人の声。
言ってる言葉までは聞き取れなかったけど……。
日常会話じゃないってことは、はっきりとわかった。
粘るような甘ったるいトーンが、ところどころ跳ねあがる。
2種類の声が交差し、重なってる。
わたしは、声の漏れて来る扉に擦り寄った。
それがこの、理事会室だった。
この部屋の内装工事は、途中で放棄されたはず。
立ち会ったわたしは、その経緯を知ってる。
その後、工事が再開された話なんて聞かない。
それならどうして、その部屋から声が聞こえるのか?
逃げ出したい恐怖に、好奇心が勝った。
鍵穴を覗いたけど、何も見えない。
扉に耳を着ける。
声は、部屋の奥からのようだった。
耳を着けても聞き取れない。
ぷつぷつと粒を潰すみたいな響きに、ときどき裏返った高音が伸びあがる。
我慢できず、ドアノブに手を掛けた。
鍵が掛かってなかったことに気づいたのは、扉が開いてからだった。
でも、この事実に、わたしは意を強くした。
だって、ここに鍵が掛かってないってことは……。
塔の入口に鍵を掛けただけで、事足りるってこと。
つまり、塔の中には、この部屋の声の主しかいないってことじゃない?
それなら、背後から誰かが現れる心配は、もうしなくていい。
わたしは、扉の隙間を少しずつ広げていった。
正面の理事長室まで、綺麗な遠近法で真っ白い廊下が伸びてる。
左右に、いくつかの扉。
川上先生は、そのどれかに入ったに違いない。
廊下を歩き始めると、思いのほか靴音が響いた。
パンプス、脱いじゃおうかと思ったけど……。
そんな姿を見られたら、言い訳のしようが無いし。
懸命に足音を忍ばせて進んだ。
扉の前では足を止め、中の気配を伺った。
でも、何も聞こえない。
気配もしない。
理事長室の扉が、真正面に迫ってくる。
今にもそれが開き……。
わたしを糾弾する指が突きつけられる。
そんな妄想がちらつき始めたころ……。
聞こえた。
声。
女の人の声。
言ってる言葉までは聞き取れなかったけど……。
日常会話じゃないってことは、はっきりとわかった。
粘るような甘ったるいトーンが、ところどころ跳ねあがる。
2種類の声が交差し、重なってる。
わたしは、声の漏れて来る扉に擦り寄った。
それがこの、理事会室だった。
この部屋の内装工事は、途中で放棄されたはず。
立ち会ったわたしは、その経緯を知ってる。
その後、工事が再開された話なんて聞かない。
それならどうして、その部屋から声が聞こえるのか?
逃げ出したい恐怖に、好奇心が勝った。
鍵穴を覗いたけど、何も見えない。
扉に耳を着ける。
声は、部屋の奥からのようだった。
耳を着けても聞き取れない。
ぷつぷつと粒を潰すみたいな響きに、ときどき裏返った高音が伸びあがる。
我慢できず、ドアノブに手を掛けた。
鍵が掛かってなかったことに気づいたのは、扉が開いてからだった。
でも、この事実に、わたしは意を強くした。
だって、ここに鍵が掛かってないってことは……。
塔の入口に鍵を掛けただけで、事足りるってこと。
つまり、塔の中には、この部屋の声の主しかいないってことじゃない?
それなら、背後から誰かが現れる心配は、もうしなくていい。
わたしは、扉の隙間を少しずつ広げていった。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2012/11/30 07:23
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刑「見えました?」
嬢「あまり、よく……」
刑「あなた、目はいい方ですか?」
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嬢「普通だと思います」
刑「普通?
アフリカ人の普通は、視力6.0だそうだから、油断なりません」
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嬢「そんなには見えません」
刑「それじゃ、もう一度。
チラ」
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刑「どうです?
読めました、階級?」
嬢「いいえ」
刑「そう。
大曲署の焼畑と申します」
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刑「署では、警部補なんて呼ばれてます」
部「詐称はマズいですって」
刑「あだ名なんだからいいだろ。
隣にいる男、見えますか?
視力1.5以上じゃないと、見えないかも知れません」
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2. Mikiko- 2012/11/30 07:24
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刑「小さすぎて」
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部「見えないわけないでしょ。
ノミじゃないんだから」
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刑「それじゃ、ダニかね?」
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部「いい加減にしてください」
刑「この小うるさいのは、わたしの部下で、金閣寺と云います」
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↑金閣寺での野点で出されるお菓子のようです。
部「云いませんよ」
刑「“金隠し”だっけ?」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201211260747001f0.jpg
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3. Mikiko- 2012/11/30 07:25
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部「違います。
山田でしょ」
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刑「ダメじゃないか、そんな名前じゃ」
部「本名ですって」
刑「わたしが“焼畑”とひねったんだから……」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2012112607471903b.jpg
刑「キミも習いなさい。
法隆寺にするか?」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20121126074624ecc.jpg
部「だから、それじゃ詐称でしょ」
刑「つまらん男だね。
そうだ。
仁和寺にしよう」
http://blog-imgs-53.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201211260747181c5.jpg
↑立派なお寺です
刑「知ってるだろ?
仁和寺の法師の話」
続きは、次回。
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4. ハーレクイン- 2012/11/30 10:24
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靴音を気にし始めるあけみ先生。
よく思うんだけど、女性の履物ってなんであんなに大きな音が出るんだろうね。
そういう構造になっているのか、それともわざと音たてて歩いているからなのか。
とにかく喧しい。
ま、それはともかく、理事会室から漏れる「甘ったるい声」に気付くあけみ先生。
大胆にも扉を開くあけみ先生。
いよいよ“秘密の花園”は、あけみ先生の眼前に!
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5. ハーレクイン- 2012/11/30 10:26
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ランドルト環ならぬ“工事中”環(ん?)。
こんなものをどこから……。
新しい警察手帳の仕様。
こんなものを、一体どこから……。
警視庁の古畑に非ず、大曲書の焼畑。
仇名は警部補、本名は巡査部長、長さん。
久しぶりのキャラ弁は任三郎。
刑事さん、台湾高速鉄道の可愛い販売員さんをからかうのはやめて下さい。
怪奇、ノミ男。
こんなのいたかなあ。
ノミに非ずダニ。
ノミは節足動物門昆虫綱ノミ目。体は頭・胸・腹部。胸部に3対の脚。
ダニは節足動物門クモ綱ダニ目。体は頭胸・腹部。頭胸部に4対の脚。
両者は似て非なるもの。
西園寺に非ず、金閣寺に非ず、金隠し、でなくて山田くん。「ダメじゃないか、ひねりなさい」。
改めまして、西園寺に非ず、法隆寺に非ず、仁和寺。
さあ、話は仁和寺に迷走する、かな。
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6. Mikiko- 2012/11/30 20:34
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接地面積が小さいからでしょうかね?
ピンヒールはゴムの減りが早く、金属の芯が出てしまう場合もあるようです。
綺麗な歩き方をしてる人は、音も静かなように思いますね。
↓工事中の視力検査表はこちらから拝借。
http://gajetdaisuke.com/archives/10611_173248.php
↓警察手帳は、警察庁のホームページからです。
http://www.npa.go.jp/kouhousi/police-50th/history/equipment/notebook02.html
↓古畑弁当は、こちらから。
http://ricocoblog.seesaa.net/category/334403-2.html
この顔の作り方は、ちょっとねー。
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7. ハーレクイン- 2012/11/30 21:29
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工事中の視力検査表。
サイト主催者さんも書いておられますが、あまり詫びていないように見えますね。
警察庁のHP。
へえー、とても官庁のHPとは思えない雰囲気ですねえ。
やはり「愛される警察」を標榜しているのでしょうか。
「現行警察法施行50周年」を記念して作成されたHPだそうです。
キャラ弁。
顔は型紙を基に作ってはるみたいですねー。