2011.11.6(日)
半泣き顔であたりを見回していた美弥子だったが、ようやく覚悟を決めたらしい。
「わかった」
トランクを手放すと、美弥子は身を屈め、脇の藪を覗いている。
「藪に入るつもり?」
「だって……。
道の真ん中じゃ出来ないよ」
「藪は止めた方がいいよ。
虫がいるから」
美弥子の上体が跳ね起きた。
美弥子の虫嫌いは、尋常ではなかった。
「あのクリちゃん見たら……。
ぜったいに刺すと思う」
「イヤよ!」
「きっと、パンパンに腫れちゃうよ」
「止めて!」
「だから……。
ここでしなって」
べそを掻きながら立ち竦んでいた美弥子だが、突然トランクを引きずり始めた。
諦めて戻るのかと思ったが、そうではなかった。
トランクを立てたまま、道を塞ぐような角度に据えた。
どうやらトランクを、目隠しの衝立にするつもりらしい。
「考えたね。
その前にしゃがめば、後ろからは見えないよ。
こっちは、わたしが塞いであげる」
由美は、美弥子の正面に立った。
「お願いね」
美弥子はトランクを振り返りながら、その場にしゃがみ込んだ。
しかし、スカートはたくし上げないままだ。
「由美ちゃん……。
向こうから見えちゃう」
美弥子は、由美の後ろを見通していた。
「わたしもしゃがもうか」
由美は、美弥子と向かい合ってしゃがんだ。
「わかった」
トランクを手放すと、美弥子は身を屈め、脇の藪を覗いている。
「藪に入るつもり?」
「だって……。
道の真ん中じゃ出来ないよ」
「藪は止めた方がいいよ。
虫がいるから」
美弥子の上体が跳ね起きた。
美弥子の虫嫌いは、尋常ではなかった。
「あのクリちゃん見たら……。
ぜったいに刺すと思う」
「イヤよ!」
「きっと、パンパンに腫れちゃうよ」
「止めて!」
「だから……。
ここでしなって」
べそを掻きながら立ち竦んでいた美弥子だが、突然トランクを引きずり始めた。
諦めて戻るのかと思ったが、そうではなかった。
トランクを立てたまま、道を塞ぐような角度に据えた。
どうやらトランクを、目隠しの衝立にするつもりらしい。
「考えたね。
その前にしゃがめば、後ろからは見えないよ。
こっちは、わたしが塞いであげる」
由美は、美弥子の正面に立った。
「お願いね」
美弥子はトランクを振り返りながら、その場にしゃがみ込んだ。
しかし、スカートはたくし上げないままだ。
「由美ちゃん……。
向こうから見えちゃう」
美弥子は、由美の後ろを見通していた。
「わたしもしゃがもうか」
由美は、美弥子と向かい合ってしゃがんだ。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2011/11/06 07:22
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老「泊まれるところなど、数えるほどしかないからの。
大型バスでの、日帰りツアーのようじゃ」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111104195257d5c.jpg
み「ほとんど、お金が落ちないんじゃない?」
老「かも知れんの」
み「わたし、混んでるとこ苦手だから……」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110626200924890.jpg
み「見物は無理かも」
律「そうね。
路線バスしか無いところじゃ……。
帰りの足が心配よね。
旅館なんて、取れないだろうし」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011110419525961f.jpg
↑街中には、こちらの1軒だけのようです(http://www.touhoku.com/kagaribisou.htm)
み「西馬音内に、知り合いとかいない?」
律「いるわけないでしょ」
み「本町通りの二階家の窓が……。
きっと特等席だよな。
お酒飲みながらさ。
あー、一度でいいから、そんな夏を過ごしてみたい」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111106072421733.jpg
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2. Mikiko- 2011/11/06 07:25
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律「西馬音内にお嫁に行けば?」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011110419525687f.jpg
み「なるほど、その手があったか。
でも嫁が……。
酒飲みながら見れるかな?」
律「集まった親戚とかの接待で、てんてこ舞いかも」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011110419525869f.jpg
み「だよな。
そのシチュだけは……。
ぜったいに避けたい。
うーむ。
何か、手がないものか……」
律「本気で考えこまないの」
み「そう言えば……。
何の話から、盆踊りになったんだっけ?」
律「お蕎麦じゃないの?」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111022104223661.jpg
み「よく覚えてますねー」
律「お蕎麦には、興味があるからね」
老「それでは……。
続きを語ってよいかな?」
み「許可する」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011110419525633e.jpg
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3. Mikiko- 2011/11/06 07:25
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老「いちいち偉そうじゃな。
まあ、よい。
この西馬音内で、農家の七男坊に生まれた弥助には……。
生来、放浪癖があったんじゃな」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201111041953199f0.jpg
老「ひょっとしたら、亡者踊りを見たせいかも知れんの」
み「あの彦三頭巾を、子供が見たら……。
心の奥まで食い込むよね」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111104195320999.jpg
律「そうね。
夢に見るかもね」
み「ナマハゲもそうだけど……」
http://blog-imgs-37.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011021119573405e.jpg
み「秋田って、トラウマになりそうな行事が多いんじゃないの」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111104195258a40.jpg
老「続けてもよいかな?」
み「許可する」
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011110419525633e.jpg
続きは、次回。
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4. ハーレクイン- 2011/11/06 08:04
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そうか美弥ちゃん、虫は苦手か。
それは残念。
では野外うんこは無理だのう。
ん?
どうも位置関係がも一つわからぬ。
美弥ちゃんは、やってきたバス通り側をトランクで塞いだのか。
そして、バス通り側にお尻を向けてしゃがむと。
んで、その反対側に美弥ちゃんと向かい合う形で由美ちゃんがしゃがむ。
これで、ええのか?
ということは、二人はおしっこをかけあう体勢というこということに……。
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5. ハーレクイン- 2011/11/06 09:04
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おー、バスガイドさん。
秋田中央交通のガイドさんもよかったが、このこもよさげな娘じゃのう。
“混んどる”はもうわかった!
そうだな。
西馬音内の嫁さん。
ガキどもをひと夏預けられた安土の嫁さん(我が叔母じゃ)より大変だろうな。
「許可印」は大阪税関、桜島出張所。
鹿児島ではないぞ(ん? 引っ掛けかあ)。
大阪環状線・西九条駅から分岐し、大阪湾へ向かう支線「桜島線」の終点が「桜島駅」。この近くに大阪税関の桜島出張所があるのだ。
「桜島線」は総延長わずか4.1km。途中駅は2つ。
かつてはほとんど貨物線の様だったが、沿線にユニバーサル・スタジオ・ジャパンUSJができて、大きく様変わりした。終着の「桜島駅」の一つ手前に「ユニバーサルシティ駅」が新設され、USJの玄関口になった。往時に比べ大変な賑わいじゃ。
そういえば「桜島線」は「ゆめ咲線」という愛称で呼ばれるようになっておるのう。
終着駅の桜島駅を利用するのは、今はほとんどがUSJの職員。日中は閑散としておる。
よかったー。
「み」さん、蕎麦を忘れてなかったか。
一瞬考えたのち、不覚にも笑ってしまったぜ。
「放浪」→「琺瑯」か
トラウマの画像。
加工か?
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6. Mikiko- 2011/11/06 12:44
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そんなにわかりにくい?
自分の頭の中には映像が見えてるので……。
ついつい端折ってしまうのかも知れない。
気を付けねばならぬな。
「許可印」には……。
何の意図もありません。
そうか。
税関だったのか。
何の出張所かと思ってた。
トラウマの画像は、拾いです。
あんな加工をする技量、わたしにはありません。
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7. Mikiko- 2011/11/06 12:44
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コメントをお読みになっている方は、すでにご存知かと思いますが……。
ハーレクインさんから、作品をお寄せいただいております。
夏実(第61章『脅迫者』から第63章『百鬼昼行』に登場)を主人公にした、サイドストーリーです。
すでに、木曜日には『八十八十郎劇場』を掲載させていただいており……。
更新のない日は、火曜日のみ。
ということで、今週の火曜日、11月8日からの連載とさせていただきます。
送っていただいてるのは、最初の3回分ですが……。
面白いですよ。
乞うご期待!
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8. ハーレクイン- 2011/11/06 16:35
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判子の縁に CUSTOM HOUSE とあります。これが「税関」。
この単語はゴルゴ13で覚えました。
正体不明の敵に命を狙われたゴルゴ。
その正体を暴くため、スイス銀行に預けてある自分の全財産を懸けようとするゴルゴ。
以下ゴルゴと銀行の頭取との会話です。
ゴ「全額引き出す。トラベラーズチェックに換えてくれ」
頭「な、何百万ドルを全てですか」
ゴ「俺には税関(カスタムハウス)も検査(インスペクション)もない」
このゴルゴのセリフで覚えたんですね。税関の英語 CUSTOM HOUSE。
で、ゴルゴが目星をつけた相手はイスラエルの元秘密諜報員。
これを炙りだすため、第二次大戦中のドイツの戦闘機メッサーシュミットを2機、連合軍側の輸送機ダグラスDC8を1機、などなどとんでもない買い物に全財産をはたき、壮大なフェイクを仕掛けるゴルゴ……。
何かのってきたぞ。
ついでに、裏世界のなんでも調達屋の爺さんとゴルゴとの会話。
ゴ「まず……メッサーシュミット109を2機」
爺「ゴホッ(飲みかけのウィスキーを吐いた、あんたはあぶさんか)
そ、そんなものがこの世にあるとでも……」
ゴ「チェコ空軍に改良型があるはずだ。それを手に入れて塗り替えろ」
爺「まったく……あんたって人は」
ゴ「次にダグラスDC8を1機。各機の優秀な搭乗員、エキストラ20人。
コスチュームはすべて大戦中のものを用意する。
マッチ一箱に至るまでな」
爺「ガッシャーン(手に持っていたウィスキーの瓶を床に落とした音。もったいねえ)
わ、悪いことは言わん、やめた方がいい。
これは一匹狼のやる領分の仕事じゃあない。
やめるべきだ。あんたらしくない」
ゴ「俺は自分が納得できるようにしたいだけだ」
爺「き、聞かせてくれ、一言でいい。
歴史を25年前に戻す理由は」
ゴ「…………」
爺「ハーケンクロイツ(ナチスドイツの紋章、鉤十字)を復活させようという理由は」
ゴ「…………」
爺「相手は……ユダヤ人だな」
ゴ「すべて……俺自身が生きるための賭けだ」
と長々書きましたが、現物は手元にありません。
記憶をたどって書きましたが、そんなに大きな間違いはないはずです。
自分でも「よう覚えてたな」と思いますが、それだけ印象の強い作品だったんでしょうね。
作品タイトルは「最後の間諜 虫(インセクト)」だったかなあ。これは怪しいです。
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9. ハーレクイン- 2011/11/06 18:02
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「桜島」とくると、一般にはまず「鹿児島」でしょうからね。
府外の人は「え、大阪に桜島?」と驚かれるようです。
夏実サイドストーリー。
Mikikoさんに「面白いですよ。乞うご期待!」と持ち上げていただきましたが、どの程度の出来なのか、自分では全く判断付きません。出来は期待なさらないようにお願い申し上げます。
今年3月の初めころでしたか、うっかり「裏夏実を書く!」と宣言してしまったのが運のつき。サイドストーリーがこんなに大変だとは思いませんでした。まあ、なんとか書き上げてMikikoさんとの約束を果たせ、ほっとしております。
で、Mikikoさんのコメでは、「夏実の登場は第61章『脅迫者』から第63章『百鬼昼行』」とありますが、厳密にいいますと夏実の初登場は第56章『Sentimental Journey』の549回です。この回にも目を通しておいていただきますと、より興趣が増すと思います(番宣はよせ!)。
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10. Mikiko- 2011/11/06 20:22
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よく、そんなに詳しく覚えてたね。
何回も読み返したんじゃないの?
ってことは……。
ズバリ!
その『ゴルゴ13』は、ラーメン屋に置いてあったでしょう!
新刊がほとんど補充されない店なので……。
油が染みた古い巻を、何度も読み返してた。
どう?
裏夏実。
「面白い」とは言ったものの……。
わたしも3回分しか読ませてもらってないので、先のことはわかりません。
でも、出だしは、いい雰囲気です。
ほっとしておらんと……。
次作にとりかからんかい!
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11. ハーレクイン- 2011/11/06 21:04
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>その『ゴルゴ13』はラーメン屋に置いてあったでしょう
これは残念ながらブッブーです。
持ってたんですよゴルゴ。文庫版の第1巻から最新刊まで。当然何回か読み返しています。
で去年の引っ越しのおり、家人から「書籍を処分せよ」との下命があり、持っていく分と処分する分を交渉して決めたんですね。で、まさか専門書や小説は処分できるはずもなし、処分したのはコミックのほとんどでした。この中にゴルゴも入ってたんですね(無念じゃ)。
“ラーメン屋”で油じみた古い巻を何度も読んだのは「巨人の星」でした。
次回作って、ちょっと待ってくれい。
まだ夏実のけりもついておらんのに……。
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12. Mikiko- 2011/11/06 21:59
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残念。
実は、ラーメン屋で『ゴルゴ13』を読んでたのは、わたしなんです。
しかし内容は、まったくといっていいほど覚えておらん。
「俺の後ろに立つな」、くらいですかね。
処分しないで、ラーメン屋に寄付すればよかったのに。
そうすれば、通って読めるでしょ。
ケリをつけてから送ろうとするから、大仕事になる。
2,3回分書いたら、連載始めちゃえばいいんだよ。
あとは、どーにかなるものです。
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13. ハーレクイン- 2011/11/07 00:22
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わたしはせこいですからね。ブックマート(古本屋、新潟にはないかな)に売り払いました。
>2,3回分書いたら、連載始めちゃえばいいんだよ
しかしそうなると、締め切りに追われることになるしなあ。
(おお~、プロ作家みたいじゃねえか)
管理人さんみたいな才能もないし、ストックもないし、開き直りもできんしのう。
ま、しかし。
途中で破綻してもケセラセラかな。アマチュアなんだし。
いよいよとなれば「作者急病のため休載します」。
わはは。
ま、構想だけは考えておきます。