2011.11.2(水)
由美は踵を返し、扉の向こうの気配を探った。
どうやら、待ち人はいないようだ。
扉を細めに開け、外を確認する。
誰もいない。
由美は、もう一度女性を振り向いた。
女性の肩に手を掛け、大きく揺さぶる。
目蓋の下で眼球が動くのを確認すると、由美は身を翻して扉を出た。
走るような早足で通路を抜け、座席に戻った。
座ると同時に、トイレの使用中を示すランプが点灯した。
由美は、ひやりとした。
人が入ったのだろうか?
いや、そんなことは無いはずだ。
もし誰かが扉を開けたとしたら……。
そこには先客がいるわけだ。
そのまま中に入り、鍵を締めるということはあり得ない。
鍵を掛けたのは、目覚めた女性だろう。
今となっては、そう信じるほかはない。
美弥子は、まだ眠ったままだった。
由美は、美弥子の膝を揺すった。
甘えるような小さな呻きと共に、ようやく美弥子は目覚めた。
「おはよう」
由美が笑いかけると、美弥子は慌てて両脚を閉じ……。
恥じらうような笑みを返した。
なんだか新婚旅行のようだと、由美は思った。
「今、何時?」
「もう降りる時間だよ」
「え?
そんなに?」
美弥子は上体を反らせ、後ろを振り返った。
「おトイレ?」
「うん」
「使用中だね。
時間的にも、ちょっと無理かな。
我慢できそう?」
美弥子が顔を寄せて来た。
「て言うか……。
穿いてないじゃない。
落ち着かないのよ」
どうやら、トイレでショーツを穿きたかったらしい。
しかし、諦めてもらうほかは無いようだ。
チャイム音と共に、降車駅がアナウンスされ始めていた。
どうやら、待ち人はいないようだ。
扉を細めに開け、外を確認する。
誰もいない。
由美は、もう一度女性を振り向いた。
女性の肩に手を掛け、大きく揺さぶる。
目蓋の下で眼球が動くのを確認すると、由美は身を翻して扉を出た。
走るような早足で通路を抜け、座席に戻った。
座ると同時に、トイレの使用中を示すランプが点灯した。
由美は、ひやりとした。
人が入ったのだろうか?
いや、そんなことは無いはずだ。
もし誰かが扉を開けたとしたら……。
そこには先客がいるわけだ。
そのまま中に入り、鍵を締めるということはあり得ない。
鍵を掛けたのは、目覚めた女性だろう。
今となっては、そう信じるほかはない。
美弥子は、まだ眠ったままだった。
由美は、美弥子の膝を揺すった。
甘えるような小さな呻きと共に、ようやく美弥子は目覚めた。
「おはよう」
由美が笑いかけると、美弥子は慌てて両脚を閉じ……。
恥じらうような笑みを返した。
なんだか新婚旅行のようだと、由美は思った。
「今、何時?」
「もう降りる時間だよ」
「え?
そんなに?」
美弥子は上体を反らせ、後ろを振り返った。
「おトイレ?」
「うん」
「使用中だね。
時間的にも、ちょっと無理かな。
我慢できそう?」
美弥子が顔を寄せて来た。
「て言うか……。
穿いてないじゃない。
落ち着かないのよ」
どうやら、トイレでショーツを穿きたかったらしい。
しかし、諦めてもらうほかは無いようだ。
チャイム音と共に、降車駅がアナウンスされ始めていた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2011/11/02 07:27
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老「ばかもん。
美的概念を述べておるのじゃ」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111030105053499.jpg
み「いい歳して、言い訳しないの。
で、衣装は二種類って云ったよね?
もう一つは?」
老「彦三(ひこさ)頭巾じゃ」
み「“ずきん”って、頭に被る頭巾?」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111030105055a27.jpg
老「そうじゃ」
み「ますます時代劇だね」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011103010501047c.jpg
↑これは御高祖(おこそ)頭巾
み「どんな頭巾なの?」
老「歌舞伎や文楽に、黒子という介添え役がおるじゃろ」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111030105009cd7.jpg
老「あの黒子の頭巾に似ておる。
実際、歌舞伎の舞台を見た人が……。
黒子をヒントに考案したとも云われとる。
そのとき黒子が介添えしておった役者が、坂東彦三郎だったことから……」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201110301050073c9.jpg
老「彦三頭巾と名付けられたらしい」
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2. Mikiko- 2011/11/02 07:27
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み「“ひこさ”って、そういう字を書くのか。
黒子の頭巾って、顔の前に布が垂れてるじゃない」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201110301050094e4.jpg
み「透けてるの?」
老「真っ黒じゃ」
み「前が見えないじゃないの」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201110301052054e1.jpg
老「彦三頭巾には、目のところに、穴が2つ開いておるんじゃ。
頭に、豆絞りの手拭いを巻いて留める」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111030105053490.jpg
み「“豆絞り”って、どういう意味なの?」
老「柄じゃよ。
白地に紺の水玉模様じゃな」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011103010505423f.jpg
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3. Mikiko- 2011/11/02 07:28
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み「あぁ、あのドット模様ね。
あれを“豆”に見立てたわけか。
頭巾は……。
黒なのよね?」
老「黒い布が、帯のあたりまで垂れておる」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011103010505529e.jpg
み「なんか……。
不気味な感じなんですけど」
老「初めて見た子供は、泣くかも知れんな。
確かに、ぎょっとするような出で立ちじゃが……。
じっと見ていると……。
あの世に引きこまれそうになるな」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111030105015eec.jpg
老「頭巾姿は、亡者を象徴しているとも云われる。
『西馬音内盆踊り』が、“亡者踊り”とも云われる所以じゃな」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111030105104972.jpg
み「お盆に帰ってきた亡者が、一緒になって踊ってる?」
老「踊りの輪の中には、この世のものではない者も、混じっておるかも知れんな」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011103010500853d.jpg
み「怖わー」
続きは、次回。
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4. ハーレクイン- 2011/11/02 08:00
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由美ちゃん、大活躍だったな。
車内で、美弥ちゃんと水色女、二人のオナニーをプロデュース。
自分ではできず(あれがホームランだったらなあ)。
それにしても水色女、この後どうするんだろ。
由美美弥。
今日の名台詞。
>由美「なんだか新婚旅行のようだ」
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5. ハーレクイン- 2011/11/02 08:34
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>み「衣装は二種類って云ったよね」
んなこと云ったかなあマスミン、で調べてみたら2回前(833回)、東北277-3/3で確かに仰せだな。
>老「大きく分けて、二種類の衣装がある」
これだな。
なんせ話題が豊富だからなあ。
話の流れがわからんくなるわ。
>老「頭に、豆絞りの手拭いを巻いて留める」
豆絞りの手拭い!
和風猿轡(さるぐつわ)の定番じゃねえか。
ボールギャグもええが、この手拭いをきりきりっと絞って女性に噛ます猿轡。
ええのう。
別に柄は何でもええと思うが、なんで「豆絞り」に決まってるんだろうな。
これはもう、一種の「お約束」だな。
で、ボールギャグなんかだと、涎がたらたら零れだす。これも捨てがたいがのう。
「豆絞り」の場合、手拭いが女性の涎を吸ってしっとり、じっとり濡れてきおる。あたかも、責められる女性の涙を一緒に吸ったようにのう。
ええのう。
「西馬音内盆踊り」は“亡者踊り”!
>老「踊りの輪の中には、この世のものではない者も、混じっておるかもしれん」
うーむ、確かに。
盆踊りはもともと、あの世から戻ってくる死者を供養するための行事だからなあ。
踊り好きで陽気なばあ様の霊の一人や二人、混じっていてもおかしくないかもしれんのう。
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6. Mikiko- 2011/11/02 20:12
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ボールを使ったギャグ、ではないんですね。
モノは知ってましたけど……。
そういう名称であることは、初めて知りました。
さーて、明日から4連休じゃ。
今日はあんまり嬉しいので、ネットで純米大吟醸を注文してしまった。
もっとも、一合瓶だけど。
525円でした(送料無料)。
休み中に届くかなぁ。
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7. ハーレクイン- 2011/11/02 23:27
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>モノは知ってました
ほんまかあ。
とんでもない勘違いしてへんよなあ。
あのプラ製の、中空の、穴がいっぱいあいたボールでっせ。
これを女性の口に噛ませて、付属の紐をうなじの後ろで結んで止める。
穴から涎がたらたらと……。
gag〔名詞〕さるぐつわ(猿轡) 〔動詞〕さるぐつわをかける
ま、“ボールを使ったギャグ”はお約束のボケだが……。
gag〔動詞〕(芸人が)ギャグを言う。
4連休かあ。
うらやましい、つったら怒られるよなあ。
「普段いっぱい休んでるやつが何言うねん!」
こちらは見事にカレンダー通り。
純米大銀525円か。
送料無料で商売になるんかなあ。
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8. Mikiko- 2011/11/03 07:26
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↓ボールを使ったギャグは、こちら。
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111103064127da4.jpg
わたしが買ったのは、“純米大銀”ではなく、“純米大吟”ね。
現在、セブンネットショッピング(http://www.7netshopping.jp/all/)は、送料無料キャンペーン中。
どんな買い物にも、送料がかからないんです。
↓購入したのは、こちら。
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20111103064838335.jpg
てっきり備前(岡山)の会社と思ってましたが……。
調べてみたら、京都でした(http://www.tamanohikari.co.jp/)。
↓思い切って、こっちにすれば良かったかな。
http://blog-imgs-47.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011110306572211a.jpg
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9. ハーレクイン- 2011/11/03 08:39
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大銀、なんちゅう酒、少なくとも日本にはないぞ。
大吟大吟。
(中国にも韓国にもないと思うぞ)
おー。
玉の光酒造さん「純米大吟醸玉の光」
なんで岡山と思いはったのだ?
ひょっとして「雄町」からかあ。
「雄町」は岡山県を主産地とする酒造好適米。
最も主要な好適米は兵庫県産の「山田錦」。
酒造好適米の米質には色々ありますが「大粒であること(精白作業がやりやすい)、「タンパク質含有量が少ない(雑味が出にくい)」などですね。
雄町や、山田錦はこれらの特徴を兼ね備え、多くの酒蔵で用いられています。
玉の光酒造さんは「純米」にこだわる酒蔵さん。
売れてますよお。
こちらでは、そこらのコンビニにも置いてあります。
もちろん純米吟醸。
アル添酒・普通酒を作ってはるかどうか……わかりませんが、あっても少量でしょうね。
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10. Mikiko- 2011/11/03 12:49
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なんか、相撲取りみたいな名前ですね。
↓わたしが購入したページでは……。
http://www.7netshopping.jp/drink/detail/-/accd/2101959971/subno/1
『備前雄町』という表示がありました。
“雄町”が酒米の名称であることは、ぜんぜん知らなかったので……。
岡山のお酒だと思ったわけ。
純米大吟醸、まだ届きません。
で、ついつい今日は、バーボンを買って来てしまった。
ゆうべ、『刑事鬼貫八郎』の再放送を見てたら……。
夜遅くまで机に向かう鬼貫さんに……。
奥さんが、「一杯だけよ」と水割りを持ってくる恒例シーンがありました。
鬼貫さんは糖尿で、お酒を制限されてるんですね。
一口飲んだ鬼貫さんのノドが、ぐびりと動くのを見て……。
久しぶりに、ウィスキーを飲みたくなったんです。
バーボンは、学生時代を思い出す味です。
当時は格好つけて、バーボンばっかり飲んでたんですね。
今、飲みながら書いてます。
考えてみれば、グラスで飲むのも久しぶりだな。
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11. ハーレクイン- 2011/11/03 13:55
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若いころはよく飲んだなあ。
あの独特の香りがいいんだよね。
一番好きなのはジム・ビーム、それからアーリー・タイムズかなあ。
有名なワイルド・ターキーは何か口に合わない。
私の中ではハードボイルド→バーボン、何ですよね。
「探偵」にはバーボンがよく似合う。
「刑事鬼貫八郎」
知らんなあ、初めて聞いた。
作者すら記憶にないのだが(おそらくコーネル・ウールリッチか、ウィリアム・アイリッシュ。この二人は同一人物だが)、若いころに読んだハードボイルドにこんな粗筋のがあります。
ある殺人事件の犯人として逮捕され、死刑になった男。その後これは誤認逮捕で、犯人は別の人物であることが判明する(ひどい話や)。しかし、いわゆる「一事不再理」でどうすることもできぬ。
もちろん警察は手を引くしかないのだが、ここに一人、正義感に燃える刑事が「許さん!」とかなんとか桃太郎みたいなセリフを吐いて、この真犯人を付け回す。今でいうストーカーだな。しかしもちろん始めの殺人事件ではどうすることもできぬ、闇討ちするか。それでは意味がない。この刑事、法による裁きを受けさせたいのだよ。
で、肝心のその方法がうろ覚えなのだが、この刑事、真犯人を徹底してストーカーしてプレッシャーをかけ、ノイローゼ状態に追い込み、ついに別の殺人事件を起こさせることに成功する。被害者は刑事自身。で、かの刑事、薄れゆく意識の中で勝利を確信する……。てな感じなのですがね。
うーむ。書いていて、なんか違うなあと思えてきたぞ。どうもかの刑事、自らを被害者にしたのではないような気がしてきた。
んならどやねん。わからぬ。覚えていない。無念じゃ。
何とかもう一度読みたいものだがのう。
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12. Mikiko- 2011/11/03 14:06
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まさにその、『Early Times』。
学生時代も、よく飲みました。
安いよね。
今日は、1,150円でした。
スコッチとの味の違いはわかるが……。
バーボン同士では、さっぱりわからん。
鬼貫八郎を演じるのは、大地康雄。
リアリティ、ありまくりです。
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13. ハーレクイン- 2011/11/03 14:36
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どちらかといいますと「味」よりも「香り」の違いの方が顕著ですね。
だから“口に合わない”というよりも“鼻に合わない”と言うべきかなあ。
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14. Mikiko- 2011/11/03 20:25
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わたしの鼻は、バーボンを嗅ぎ分けることなぞ出来ませぬ。