2011.9.7(水)
通路の正面は行き止まりの壁だったが、トイレの扉は左側面にあった。
席から見通しても扉が見えなかったのは、このためだったのだ。
ドアノブには、鍵らしいものは付いていなかった。
それでも美弥子は、一応ノックした。
応えは無かった。
内開きのドアを押すと、そこは洗面室だった。
個室は、その奥にあった。
個室の扉は閉まっていた。
大ざっぱに言って、トイレの扉には、2種類のタイプがあるようだ。
使用していないとき、開いているタイプと、閉まっているタイプ。
この扉がどちらにあたるのか、外からは判然としなかった。
やはり、ノックするしか無いようだ。
美弥子は、洗面室に足を踏み入れた。
美弥子が、ノックをしようと拳を返したとき……。
個室の中から、声があがった。
「あぁ」
女性の声だ。
耳を澄ますと、荒い息づかいも聞こえた。
一瞬、個室内で誰かが苦しんでいるのかと思ったが……。
「あひぃ」
続いて聞こえた声は、その懸念を否定した。
声は、明らかに嬌声だった。
美弥子は拳を下ろし、そのまま踵を返そうとした。
「待って!
行かないで」
聞き覚えのある声だった。
「そこにいるの……。
大室さんでしょ?」
姉の声だ。
やはり、美里にはからかわれたのだ。
「あぁっ。
いぃっ」
行かないでと言われても、このまま突っ立っているわけにはいかない。
姉には、個室を譲る意志も無いようだ。
美弥子が、再び踵を返そうとした……。
その時。
個室の扉が、向こう側に開いた。
席から見通しても扉が見えなかったのは、このためだったのだ。
ドアノブには、鍵らしいものは付いていなかった。
それでも美弥子は、一応ノックした。
応えは無かった。
内開きのドアを押すと、そこは洗面室だった。
個室は、その奥にあった。
個室の扉は閉まっていた。
大ざっぱに言って、トイレの扉には、2種類のタイプがあるようだ。
使用していないとき、開いているタイプと、閉まっているタイプ。
この扉がどちらにあたるのか、外からは判然としなかった。
やはり、ノックするしか無いようだ。
美弥子は、洗面室に足を踏み入れた。
美弥子が、ノックをしようと拳を返したとき……。
個室の中から、声があがった。
「あぁ」
女性の声だ。
耳を澄ますと、荒い息づかいも聞こえた。
一瞬、個室内で誰かが苦しんでいるのかと思ったが……。
「あひぃ」
続いて聞こえた声は、その懸念を否定した。
声は、明らかに嬌声だった。
美弥子は拳を下ろし、そのまま踵を返そうとした。
「待って!
行かないで」
聞き覚えのある声だった。
「そこにいるの……。
大室さんでしょ?」
姉の声だ。
やはり、美里にはからかわれたのだ。
「あぁっ。
いぃっ」
行かないでと言われても、このまま突っ立っているわけにはいかない。
姉には、個室を譲る意志も無いようだ。
美弥子が、再び踵を返そうとした……。
その時。
個室の扉が、向こう側に開いた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2011/09/07 07:29
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律「詰め替えるのも、人力?」
み「あたぼーよ。
動力なんか、ありませんて」
律「つくずく、過酷なお仕事ね」
み「ま、こういう人たちがいたからこそ……。
リサイクル社会が成り立ってたわけね」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110904101317d76.jpg
律「その事業が廃れたのは……。
化学肥料ってことね」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011082304581161a.jpg
み「左様です。
化学肥料の登場により……。
糞尿を買い集めて農家に売るという商売は、成り立たなくなってしまったの。
大正時代のことよ。
江戸時代から続いてきたリサイクルの環が……。
プツンと切れたわけだね」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110904101318e8d.jpg
律「その後の処理はどうしたのよ?
肥料への用途は無くなっても……。
下の物は出続けるわけでしょ」
み「もちろんです。
昭和になっても、汲み取り業自体は、そのまま継続されたんだよ。
ただし今度は、料金を取って引き取るという業態になったわけ」
律「なるほど。
お金をもらう相手が、農家から汲み取り先に変わったわけか。
町の人だって、お金を取られるならお断り、なんて言えないもんね」
み「そういうこと」
律「でもさ。
汲んだあとは、どうしたのよ。
もう、農家には売れないんでしょ?」
み「どうしたと思う?」
律「処分場……、なんて無いのよね?」
み「いやいや。
広大な処分場があったわけよ」
律「どこに?」
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2. Mikiko- 2011/09/07 07:31
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み「海。
信濃川から海に出て……。
沖合いで捨てた」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201109041013177bb.jpg
律「汚い!」
み「すべての生命を産んだ母なる海が……」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110904101327ded.jpg
み「不肖の子らの排泄物を、飲みこんでくれたってわけね」
律「いつごろまで、そんなことしてたのよ?」
み「だから、昭和30年代まで。
昭和39年に、新潟国体があったんだよ」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011090410131653f.jpg
↑東京オリンピックではありません。新潟国体の開会式です。
み「それを見据えたインフラ整備で……。
掘割が、みんな埋められちゃったからね。
以後、下水道が普及するまでは、バキュームカーの時代ね」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110904101318450.jpg
律「しかし……。
いくら住んでる町とは云え……。
異様に詳しいよね。
どういうわけ?」
み「わたしの叔父に、こういうのを調べるのが好きな人がいるんだよ。
いわゆる講釈師ね。
『講釈師、見てきたようにモノを言い』」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110904101316be5.jpg
老「それを言うなら、『見てきたようなウソを言い』じゃ」
み「そうだっけ?
一応、ウソは言ってないと思うけど。
いずれにしろ、マスミンタイプだね」
老「わしは、見てないことも、ウソも言いませんぞ」
続きは、次回。
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3. ハーレクイン- 2011/09/07 09:04
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な~んや。
姉はトイレでオナニー中だったか。
まったく、私の予測は当たらぬのう。
さあ、どう出る。
元、極悪の美影姉。
美弥ちゃんを個室に引っ張り込もうというのか。
次回、乞う御期待。
まさか、まだ夢の中……ということは、ないよな。
昔、夢から覚めた夢、というのをみたことある。
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4. ハーレクイン- 2011/09/07 09:33
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新潟では海に捨てていたのか。
まだ良心的だな。
東京では隅田川に捨ててたそうだぞ。
大阪ではどうしていたのかなあ。
しかしよく考えれば「野生の王国」ではもともと、全員が垂れ流しの、ひりっぱなしだからなあ。
やはり「不肖の子」の場合、人口の増加に加え、「都市」という生活形態が始まったことから「糞尿譚」が大きな問題になっていったんだろうな。
人口が少なく、かつ広く分散して生活していれば、そこらに垂れ流してたってフンコロガシ君たちが処理してくれてた。
ところが都市が出来ていき、人口が増加し、人口密度が高くなると、「都市」の排泄する多量の糞尿は、とてもフンコロガシ君の手におえるものではなくなったんだな。
それ以前に、フンコロガシ君は都市には住めんだろうしなあ。
参考文献
“羽仁五郎「都市の論理」”
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5. Mikiko- 2011/09/07 19:59
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マズかろうなぁ。
唱歌『花』のイメージが、台無しだわ。
なんで、そう横着なことするかね。
もうちょっと漕げば、海なのに。
大阪も、淀川とかに流してたんじゃないのか?
それとも、大阪らしい独自のシステムでもあったんだろうか?
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6. ハーレクイン- 2011/09/07 23:23
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しかもよりマズいのは、公式には「海に捨ててる」と言いながら、こっそり隅田川に流してたらしい。
う~ん、大阪はどうだったんだろうね。
と思って調べてみました。
事情は新潟と全く同じですね。
肥料としての価値がなくなった糞尿は、収集し廃棄するしかないわけですが……。
昭和20年代(1945-1954年)は、やはり淀川に下水道を通じて流していました。
で、淀川の汚濁があまりにひどくなったので、大阪湾への投棄も始まりましたが、こちらもあっという間に汚濁。漁業組合や海水浴場などからの抗議が殺到したそうです。
んで、昭和30年代(1955-1964年)に入り、何か所かし尿処理場が新設され、大阪湾への投棄は中止になりました。
現在はもちろん水洗ですが、下水管を通じてすべて処理場に集め、糞を分解する微生物(平たく言えば、フンコロガシ君の仲間)により、完全に衛生的な無機物に分解した後、いろんなものに利用しているそうです。
つまり、江戸期以来の、新たなリサイクルシステムが出来上がっているわけですね。
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7. Mikiko- 2011/09/08 07:48
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そら、怒るわな。
糞尿は、非常に有用な資源ですから……。
遅ればせながら、リサイクルシステムが出来上がったのは、喜ばしいことです。
現在の下水処理場では、汚泥から発生するメタンガスで、発電もしてるそうです。
使う電力の半分位を、これで賄ってる施設もあるとか。
下水から、真水って取れないんでしょうかね?
もし出来れば、電気、ガス、水道、みんな賄えることになる。
将来的には、外部からのエネルギー供給無しでやっていける施設も造れるんじゃない?
それなら、下水処理場を、地域の防災拠点すべきだよな。
あ、下水管が破壊されたらダメか。
下水管こそが、エネルギー供給源なんだからね。
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8. ハーレクイン- 2011/09/08 12:36
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糞尿は“見るのもいや”と顔をしかめ「見なかったことにする」というお方が、さらに
“わたしはうんこなんかしませんよ”というようなお顔のお方が、特に女性には多いようですが、
我々人間がヒトという動物の一種である限り、糞尿を日々排泄する存在であるのは厳然たる事実です。
この事実から、また糞尿処理の問題から顔をそむけるようでは、立派な人間になれませぬぞ。
現に、スペースシャトルや宇宙ステーションでは、糞尿から飲料水の生成もなされ、糞尿の完全リサイクルが行われております。TVなどではあまり報道されませぬがのう。
「宇宙船地球号」というTV番組がついこの間までありましたが(いつなくなったんだあ)、糞尿処理をはじめとするリサイクル問題については、地球規模で考えねばならない時代が来ておるのかもしれませぬ。
そういう意味で、スカトロジーは立派な文学の題材なのですぞ。
頑張れ、由美と美弥子&東北に行こう!
うーむ。
さすがに昨夜は飲み過ぎた。日が変わった後もだらだらと飲み続けておったからなあ。いつ寝たのかも記憶にない。
今朝、目覚めたのはつい先ほど、11時頃だ(どこが“今朝”や!)。
涼しくなったなあ。
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9. Mikiko- 2011/09/08 19:45
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体力あるねー。
わたしはとても、日をまたいでまでは飲み続けられまへん。
日付が変わるのを見るのは、年に1回、大晦日だけですね。