2011.9.5(月)
美弥子は、通路の奥を覗きこんだ。
トイレを探したのだ。
むろん、替えのショーツなどは持っていないが、ペーパーで拭き取るだけでもしたかった。
求める扉は見えなかった。
しかし、店の構造を考えれば、通路の奥にしかあり得ないはずだ。
美弥子は、窓際の椅子に置いたバッグを手に取った。
そのまま起ちあがろうとしたが、トイレに行く断りを言うのがためらわれた。
美里には、見透かされるかも知れない。
股間を拭いに行くことを。
代わりに口をついて出たのは、さっきから気になっていたことだった。
「お姉さんは?」
「え?
何のこと?」
「何って……」
美弥子は、斜向かいの窓際に目をやった。
つられたように、美里も隣席に視線を向けた。
「その席にいた、あなたのお姉さんよ」
「美弥子さん……。
まだ半分寝てるんじゃないの?
この席には、最初から誰もいないよ」
「そんな……」
美弥子は混乱した。
そんなはずは無い。
もし、美里が言うように、最初から姉がいないとしたら……。
この喫茶店に入るときから、すでに夢だったことになる。
いくらなんでも、そこまでは遡らないはずだ。
美弥子は、改めてバッグを掴んだ。
とにかく、場所を変えて、気を落ち着けたかった。
「トイレ?」
「え、ええ」
「この通路の奥だよ」
起ちあがってみると、まだ目まいがするようだった。
思わず、テーブルに手を突いた。
「気をつけて行ってきて」
「え?」
「ふふ。
まだ夢の中みたいだから」
美里の含み笑いに送られ、美弥子は通路の奥に歩みを進めた。
トイレを探したのだ。
むろん、替えのショーツなどは持っていないが、ペーパーで拭き取るだけでもしたかった。
求める扉は見えなかった。
しかし、店の構造を考えれば、通路の奥にしかあり得ないはずだ。
美弥子は、窓際の椅子に置いたバッグを手に取った。
そのまま起ちあがろうとしたが、トイレに行く断りを言うのがためらわれた。
美里には、見透かされるかも知れない。
股間を拭いに行くことを。
代わりに口をついて出たのは、さっきから気になっていたことだった。
「お姉さんは?」
「え?
何のこと?」
「何って……」
美弥子は、斜向かいの窓際に目をやった。
つられたように、美里も隣席に視線を向けた。
「その席にいた、あなたのお姉さんよ」
「美弥子さん……。
まだ半分寝てるんじゃないの?
この席には、最初から誰もいないよ」
「そんな……」
美弥子は混乱した。
そんなはずは無い。
もし、美里が言うように、最初から姉がいないとしたら……。
この喫茶店に入るときから、すでに夢だったことになる。
いくらなんでも、そこまでは遡らないはずだ。
美弥子は、改めてバッグを掴んだ。
とにかく、場所を変えて、気を落ち着けたかった。
「トイレ?」
「え、ええ」
「この通路の奥だよ」
起ちあがってみると、まだ目まいがするようだった。
思わず、テーブルに手を突いた。
「気をつけて行ってきて」
「え?」
「ふふ。
まだ夢の中みたいだから」
美里の含み笑いに送られ、美弥子は通路の奥に歩みを進めた。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2011/09/05 06:23
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み「新潟の町中から出た糞尿は……。
評判高かったそうよ。
いいもの食べてるからって」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110903101833449.jpg
み「でも、ま……。
楽な商売じゃなかっただろうことは、想像できるけどね。
堀際の家だけ汲んでたわけじゃないんだから」
http://blog-imgs-24.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/200909130731409ac.jpg
律「どうやったの?
ホースで吸い上げるわけじゃないんでしょ」
み「バキュームカーじゃないんだから。
そんな動力、ありますかって」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110903101836e97.jpg
楽天市場→http://pt.afl.rakuten.co.jp/c/025ceb89.3859455a/?url=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fmokeiyabigman%2f4904810211556%2f
↑ミニカーになると、なぜかカッコ良い(欲しくないけど)
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2. Mikiko- 2011/09/05 06:25
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律「馬に引かせる?」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110903101835fda.jpg
み「あのね……。
その馬は、どうやって運んでくるのよ?
舟に馬なんか乗せたら……。
それだけで、重量オーバーでしょ」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201109031018565a7.jpg
律「じゃ、どうすんの?」
み「人力運搬に決まってるでしょ。
肥たごよ、肥たご」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110903101856c89.jpg
み「二斗桶を2つ、天秤棒の前後に吊るして運んだの」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201109031018322ef.jpg
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3. Mikiko- 2011/09/05 06:25
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律「二斗って、どのくらいよ?」
み「一斗は、十升でしょ。
つまり、二斗は、一升の20倍。
1.8リットル×20は?」
律「えーっと。
……、36?
36リットル!」
み「そう。
それを2つ下げてるわけだから……。
72リットルだよね。
中身が水でも、72キロあるわけだよ」
律「2リットル入りのペットボトル、36本……」
み「固形物が多かったら……。
いったいどれくらいあったんだろ」
律「過酷なお仕事ね」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201109031018359d0.jpg
↑江戸東京博物館では、実際の重さを体感できます
↓上手な担ぎ方
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110903101834a84.jpg
み「汲んでからもタイヘンなんだよ。
信濃川の川岸に、長舟がもやってあるの。
その舟の大樽に、移し替えなきゃならない」
律「なんでよ?」
み「堀に入りこめるような小舟じゃ、積める量もたかが知れてるでしょ。
そのまま売りに行ったら……。
新潟の町と農村を、頻繁に往復しなきゃなんない。
大量に積んで帰らなきゃ、効率が悪いわけ。
で、掘割に散った小舟から、大舟に移し替えるわけね。
大舟の樽は、直径六尺あったそうよ」
律「横幅が、1.8メートルってこと?」
み「左様です」
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110903101855ab4.jpg
↑これは味噌樽ですが、大きさはだいたいこのくらい
続きは、次回。
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4. ハーレクイン- 2011/09/05 09:21
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美影姉がいない?
あれも夢?
素直に考えれば、美弥ちゃんが寝てる間に、美里が命じて帰宅させた、というところか。
ひょっとして、トイレにも何かあるのか?
うーむ。
どうも里ちゃんに振り回されとるなあ、美弥ちゃん。
気を確かにもて!
それにしても、ウサギはどこへ行ったんだ?
由美と美弥子、連載794回。
“鳴くよ鶯平安京”
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5. ハーレクイン- 2011/09/05 09:38
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お、トミカのバキュームカー。
Limited Vintageとはまた……。
昔の汲み取り。
柄杓に肥えたごかあ。
そんなに昔の話でもないんだよな。
ずっと以前に「昭和の思い出」コメを書かせていただいたが、大阪市内でも、昭和30年代前半頃(1955-1960年)はまだ、人力汲み取り、人力運搬だった。
二斗桶は「1斗缶二つ分」の方がわかりやすいんでねえか、今は。
うーむ。
世の中に“楽して儲かる仕事はない”とは言うが、大変な仕事だなあ、汲み取り業。
ご苦労様でございます。
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6. Mikiko- 2011/09/05 19:51
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最近話題になりましたからね。
天秤棒の前後に一斗缶を2つずつ下げてる、の方がわかりやすかったか?
でも、実際に一斗缶を目にしたことのある人は、そんなにいないんじゃなかろうか。
卸の段階では流通してるんだろうけど……。
小売りレベルで、一斗缶で買うものなんて無いもんね。
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7. ハーレクイン- 2011/09/05 22:43
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昔、ポリタンクのないころは、一斗缶は普通に見かけたよ。
灯油とか、食用油とか……。
食品関係では今も使ってるのでは。
学生時代に寿司屋でバイトしたとき、生姜(業界用語では「ガリ」)は一斗缶に入ってた。ここから小出しにして店で使うわけだ。
小学校の頃、近所のおっちゃん連中が冬の朝、一斗缶で薪や木っ端を燃やして焚火してたのを覚えてる。
んで、学校の行きしなにこれにあたるわけだな、子供連中も。
♪垣根の垣根の曲がり角~
のような情緒はなかったがな。
791回のコメで
江戸時代は通貨がえらいややこしかった、という話題に絡んで、
半村良『戦国自衛隊』の話をさせていただいた。
この作品中、
「自衛隊のリーダー伊庭三尉が、朝廷に対し『通貨を統一しろ、その宣下を天皇の名で出せ』と強訴する場面があります」と書きました。
で
田辺節雄作の漫画版『戦国自衛隊』には、この場面があるが、
半村良の原作にはこの場面はありません、と書いてしまいました。
これがとんでもない間違い。原作にもちゃんとありました。
だってこのエピソードが、戦国自衛隊の終焉「妙蓮寺(本能寺)の変」につながるわけですからね。ないわけがない。
半村良、ごめん。
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8. Mikiko- 2011/09/06 07:35
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小売レベルでは……。
あるとしても、お寿司屋さん向けとかの業務用でしょうね。
スーパーで、一斗缶で売ってる食品なんて見たことない。
そういえば!
一斗缶で思い出した。
テレビです。
ドリフ。
一斗缶で頭を叩くコント。
叩くというか、頭に振りおろすんだね。
でも、真似てる男子を見なかったのは……。
すでに、身の回りに一斗缶が無かったからではなかろうか?
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9. 海苔ピー- 2011/09/06 23:26
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一斗缶が駄目ならポリタンクはどうかな?
最近のポリタンクは18ℓが多いから判りやすいかもね!
一斗缶て結構、目にするよ!
工場関係の薬品・飲食関係の食用油は一斗缶が多いよ!
小・中学校の床のワックスは一斗缶に入ってたな!
ホームセンターに行けば、一斗缶に入った薬品を見るけどな!
未だにお笑い番組では定番のごとく登場するよ!
実物を目にする機会は仕事によって違うかもね!
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10. Mikiko- 2011/09/07 07:28
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スーパーに行ったら、一斗缶を探してみよう。
お笑い系の小道具を売ってる店に、置いてあるかも?
そんな店があるかどうかは、ギモンですが。
そういえば、一斗缶の写真を貼ってなかったな。
ひょっとして、わからん子がいるかも知れん。
↓これです。
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110907062608e3f.jpg
この写真は、大阪のホームセンターのようです。
ちゃんと容器として売られてる。
大阪って、一斗缶が生きて使われてるんだね(死体を入れるとかにも)。
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11. 海苔ピー- 2011/09/07 17:04
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>大阪って、一斗缶が生きて使われてるんだね(死体を入れるとかにも)。
死体の一斗缶は、このタイプではないと思われます。
箱タイプの一斗缶だと思います。
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12. ハーレクイン- 2011/09/07 18:34
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死体入りは、上から四角いふたをかぶせるタイプでしたね。お菓子なんかはこのタイプを使ってました。
Mikikoさんの画像の一斗缶のうち、向かって左の二つ。ふたは、はめ込み式です。外すときはふたの中央を親指の腹でぐっと押しますと。ふた全体がぺこっと広がって外れます(説明、下手)。
右の一つは……見たことないなあ。
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13. Mikiko- 2011/09/07 19:58
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いろんな形の一斗缶があるのかと思った。
調べてみたら、丸い一斗缶はありました。
http://blog-imgs-34.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110907172544865.jpg
でも、ハーレクインさんのコメントで……。
ようやく海苔ピーの言った意味がわかりました。
つまり、四角い一斗缶には……。
液体を入れるタイプと、乾き物を入れるタイプの二種類があるってことだよね。
ドリフのコントで使われてたのも、この乾き物タイプなんでしょう。
で、乾き物を入れる一斗缶を見たことを思い出したんです。
ばあちゃんの部屋でした。
割れせんべいが入ってたんです。
割れせんべいってのは、工程の途中で割れたり欠けたりしたもの。
味は変わらないわけだから、廃棄してしまうのはもったいない。
ということで、割れたせんべいだけを集めた商品が売られてたんですね。
それが、一斗缶に入ってた。
上からパカッと蓋を被せるタイプ。
部屋の隅に置かれてたのを、まざまざと思いだしました。
蓋を開けたときの匂いまで一緒にね。
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14. ハーレクイン- 2011/09/07 23:39
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液体用は、蓋が直径5㎝位の円形。
乾き物用は、蓋が四角くって、縦横が本体とほぼ同サイズの大きなもの、上からガボッとかぶせます。
一斗缶入りの割れせんべいかあ。
相当食べでがあると思うが、湿気ったりしませんでしたあ?
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15. Mikiko- 2011/09/08 07:46
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直接入ってたわけではなく……。
ガサガサする厚手のビニール袋に詰められてました。
一斗缶の中では、ビニールの口を絞ってあった。
ま、それでも湿気たでしょうけどね。
厚さが1センチ近くあるせんべいだったので……。
中までは湿気らなかったみたいです。
しかし……。
乾き物に、一斗という単位は、意味があるんだろうか?
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16. ハーレクイン- 2011/09/08 13:02
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かつては、少し多めの物を入れる容器は一斗缶、と決まってたんでしょうね。
液体ものなら最も身近なものは一升、一升瓶。
一斗はその10倍ですからね。
それほど、かつての日本では、一斗缶というのはポピュラーで当たり前の容器だったんでしょうね。