2011.4.24(日)
美弥子は混乱した。
普通、空いた個室が幾つかある場合……。
使用中の隣には、入らないのではないか。
いったいどういうつもりだろう。
立ち尽くす美弥子をよそに、隣室から水音が聞こえて来た。
明らかに小用の音だった。
隣室に入ったのは、他意は無いのかも知れない。
音を消すための水を流さないくらいだ。
大ざっぱな性格なのだろう。
隣室の水音を聞いているうち、美弥子も催してきた。
考えてみれば、トイレに入ってから、まだ用を足していないのだ。
蓋を開けたままの便座に腰掛ける。
水洗レバーに手を伸ばそうとして、美弥子はためらった。
ここで水音を立てたりしたら、隣室の不作法を詰るように聞こえないか……。
と言っても、水洗を流さずに小用を足す気にはなれなかった。
やはり、隣室の主が立ち去るのを待とう。
水洗レバーに伸びかけた美弥子の手が、膝上に戻った。
しかし、水音が消えてからも、トイレットペーパーを繰る音は聞こえて来なかった。
何をしているのだろう?
美弥子は耳をそば立てた。
「ん……」
隣室から、息むような声が漏れた。
声に続いて、微かな水音が立った。
重いものが、便器の底に落ちたようだ。
同時に、濃厚な香りが、板壁の下から這いこんできた。
明らかに大便臭だった。
美弥子は、狼狽を覚えた。
小用だけならまだしも……。
大便をしようという場合、人の入った個室の隣を、わざわざ選ぶだろうか。
あえてそうしたとしか思えなかった。
隣室の主が用を足してる隙に、個室を飛び出したかった。
しかし、全裸ではどうしようも無い。
着衣している間に、隣の用は終わってしまうだろう。
隣室の主が立ち去るまで、このまま待つしかない。
普通、空いた個室が幾つかある場合……。
使用中の隣には、入らないのではないか。
いったいどういうつもりだろう。
立ち尽くす美弥子をよそに、隣室から水音が聞こえて来た。
明らかに小用の音だった。
隣室に入ったのは、他意は無いのかも知れない。
音を消すための水を流さないくらいだ。
大ざっぱな性格なのだろう。
隣室の水音を聞いているうち、美弥子も催してきた。
考えてみれば、トイレに入ってから、まだ用を足していないのだ。
蓋を開けたままの便座に腰掛ける。
水洗レバーに手を伸ばそうとして、美弥子はためらった。
ここで水音を立てたりしたら、隣室の不作法を詰るように聞こえないか……。
と言っても、水洗を流さずに小用を足す気にはなれなかった。
やはり、隣室の主が立ち去るのを待とう。
水洗レバーに伸びかけた美弥子の手が、膝上に戻った。
しかし、水音が消えてからも、トイレットペーパーを繰る音は聞こえて来なかった。
何をしているのだろう?
美弥子は耳をそば立てた。
「ん……」
隣室から、息むような声が漏れた。
声に続いて、微かな水音が立った。
重いものが、便器の底に落ちたようだ。
同時に、濃厚な香りが、板壁の下から這いこんできた。
明らかに大便臭だった。
美弥子は、狼狽を覚えた。
小用だけならまだしも……。
大便をしようという場合、人の入った個室の隣を、わざわざ選ぶだろうか。
あえてそうしたとしか思えなかった。
隣室の主が用を足してる隙に、個室を飛び出したかった。
しかし、全裸ではどうしようも無い。
着衣している間に、隣の用は終わってしまうだろう。
隣室の主が立ち去るまで、このまま待つしかない。
コメント一覧
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1. Mikiko- 2011/04/24 08:25
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み「やっぱり……」
老「辰子はようやく、我が身に報いが下ったことを悟った。
そして、出来たばかりの湖に身を沈めたんじゃ」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110422202634c8a.jpg
み「どうして、そこまでの報いを受けなきゃならないんです?
美しくあり続けたいというのは……。
すべての女性の願いじゃないですか。
あ、わかった!
嫉妬だ」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110422202547fb1.jpg
み「観音様の嫉妬です。
観音様は、『世界で一番美しいのは誰?』って、毎日鏡に聞いてたんですよ」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/201104222025485e7.jpg
み「そしたら、ある日鏡が、『それは院内の辰子です』って答えた。
嫉妬に燃えた観音様は、辰子をおびき寄せ……。
毒リンゴを与えた」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110422202631058.jpg
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2. Mikiko- 2011/04/24 08:26
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老「話が違って来ておるぞ。
辰子も、哀れには相違ないが……。
もっと哀れなのが、母親じゃった。
帰ってこない辰子を案じた母親は、昼も夜も山に入り、探し回った。
そしてある夜、見たことのない大きな湖を見つけた」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110422202547ee8.jpg
老「すると湖面から、母親を呼ぶ辰子の声が聞こえてきた」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110422202635c9e.jpg
老「辰子は、自らの身に起きた報いを母親に告げた。
母親は嘆き悲しみ、泣き叫んだ。
しかし、いくら呼んでも、もう辰子の声は応えてくれなかった。
夜の白むころ……。
母親は、辰子に別れを告げるため……。
手に持った松明を、湖に投げた」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110422202546b74.jpg
み「うぅ。
悲しすぎます」
老「母親の投げた松明が水に落ちると……。
たちまち魚となって泳ぎだしたという。
これが、田沢湖のクニマスじゃ」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/2011042220255312d.jpg
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3. Mikiko- 2011/04/24 08:27
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老「クニマスの色が黒いのは……。
もともとが焼けた松明だったから、というわけじゃ」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110422202636478.gif
み「え?
クニマスって、あの“さかなクン”が発見したっていう?」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110422202552fbd.jpg
老「そうらしいの」
み「あれって、田沢湖でしたっけ?」
老「発見されたのは、山梨県の西湖じゃ」
http://blog-imgs-33.fc2.com/m/i/k/mikikosroom/20110422203045624.png
老「田沢湖のクニマスは、とっくの昔に死滅してしまった」
み「どうしてです?」
老「かつての田沢湖は、摩周湖に迫るほどの透明度を誇っておった。
昭和6年(1931年)の調査によると、透明度31メートルというデータが残っておる」
み「今は違うってことですね」
老「戦争のせいじゃよ。
昭和15年(1940年)、電力供給量を増やすため……。
田沢湖の湖水を利用した水力発電所が作られた。
当然、そのままでは、田沢湖は枯れてしまう。
で、よその水系から水を引いて、田沢湖に流し入れたんじゃな」
続きは、次回。
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4. Mikiko- 2011/04/24 09:25
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「東北に行こう!(ⅩⅣ)」をアップしました。
https://mikikosroom.com/archives/2805047.html
女子大生2人組から三角点の話を聞くシーンから……。
映画『剱岳「点の記」』の番宣コーナーを経て……。
菅江真澄翁再登場の場面までです。
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5. ハーレクイン- 2011/04/24 09:41
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う~む。
何をたくらんでおるのだ、「靴音の少女」よ。
(だ・か・ら、勝手に命名すんなって)
①はじめから美弥ちゃんをつけねらってた。
②相手は誰でもよい「便臭freak」。
③ただの偶然、美弥ちゃんの考えすぎ。
さあ、どれでしょう。
明日を待て!
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6. ハーレクイン- 2011/04/24 09:51
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画像は美人画の大家、上村松園女史「焔」。
松園さん、このころスランプと共に男にふられるというダブルパンチを受けていました。
その情念が結実した、松園さんにしてはきわめて異質な作品です。
モデルは、源氏の愛人の一人、六条御息所。
しかし、凄い。
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7. ハーレクイン- 2011/04/24 10:10
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ううっ。
なんちゅう悲しいお話や、田沢湖伝説。
母と娘の最後の会話。
夜明け前、ようやく気を取り直し、長年身を削り手塩にかけて育てた娘に別れを告げる母。
湖面に吸い込まれる松明の炎……。
涙なしにはとても読めんわ。
辰子姫はともかく、何の罪とがもない母親をここまで悲しませるとは。
観音様よ、あんまりでねえだか。
それにしても、さかなくんのクニマスに、このような謂れがあろうとは……。
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8. ハーレクイン- 2011/04/24 10:29
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今、気付いたのだが。
白雪姫のセリフ、
「ちょっとまって! あんた、日本から来たの?」
疑わしげなまなざし(虫眼鏡まで使って)。
なあんか、意味ありげでないかい。
持ってる新聞の見出しも……。
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9. Mikiko- 2011/04/24 13:23
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大した男ですね。
わたしが男だったら、ぜったいそんなことはしません。
だって、髪結いの亭主ならぬ……。
絵描きの亭主として、遊んで暮らせたんじゃないですか?
辰子の母親は、ほんとに可哀想です。
観音様には、明確な悪意があったとしか思えん。
毒リンゴの絵は……。
21日付の国際英字紙「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」に掲載された1コマ漫画。
ニューヨーク総領事館は、新聞社に抗議したそうですが……。
これが、外国人が日本に持ってる標準的な感覚でしょうね。
チェルノブイリでは……。
独裁国家ソ連が、家畜を皆殺しにしたり……。
村ごと砂で埋めたりしたそうです。
日本では、とうていそんなことはできませんから……。
怖いのはこれからかも知れません。
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10. ハーレクイン- 2011/04/24 14:14
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松園さんは、もともと京都画壇で、女性ということもあり(今の時代なら女性であること自体がハンデになることはまずないですが)、幼くして数々の受賞を重ねる松園さんへの「へんねし(京都語;妬み、嫉み)」もあり、いろいろあることないこと噂を立てられ、苛め抜かれていたようですね。
ま、松園さん自身に何の問題もないということもなかったのでしょうが……。実際、未婚の母になったわけですしね。
で、相手の男の実家がその松園さんの「噂」を聞いて、男のほうがかなり年下ということもあって大反対し、とどのつまり、男も松園さんを振ることになった、ということのようです。
ま、そのあたりのもろもろの事情が松園さんの数々の素晴らしい作品に昇華した、とも言えるのではないかな。清廉潔白・品行方正の芸術家なんて、かえって胡散臭いですよね。
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11. ハーレクイン- 2011/04/24 18:04
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やっぱりねえ。
新聞の見出しは「日本の放射能」だろうな。
毒リンゴならぬ、放射能リンゴか……。
ま、震災復興への支援はともかく、原子炉事故についてはこういう感覚だよな。ある意味当たり前。東電と国の対応がお粗末過ぎるわ。
いずれ復興の方が進んでくれば、放射能問題で諸外国の日本たたきが活発になるのは目に見えている。国内でも騒がしくなるだろうし……。
1コマ漫画による揶揄くらいで済んでいる内に、なんとかせんとのう。
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12. Mikiko- 2011/04/24 20:22
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とーてー、アーチストにはなり得ないでしょうね。
でも、なんとかアルチザンにはなりたいと思っております。
国の対応の悪いとこは、事態がじわじわと悪い方向に後退していくことだよね。
震災直後に重大災害であることをアピールして、総員退去を命じていれば……。
こんなことにはなっていなかったのにな。
津波と違って、放射線は目に見えないから……。
自主的な避難を促すのは難しい。
“タイミング”って、ほんとに重要なんだね。
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13. ハーレクイン- 2011/04/24 21:06
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一瞬、パルチザンかと思ってあせったぜい。
「アルチザン」ってなんや、でWikiを見たら、
フランス語で「職人」。
なるほどねえ。
納得。
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14. Mikiko- 2011/04/24 22:18
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チーズの名前かと思ったら……。
非正規の軍事活動家。
レズビアン解放のため、日夜戦っておるのじゃ。
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15. ハーレクイン- 2011/04/25 01:30
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み「チーズの名前か」
H「そら、パルメザンでんがな、
ええかげんにしなはれ!」
み・H「おあとがよろしいようで」
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16. マッチロック- 2011/04/28 18:14
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鏡といえば
風水的にはとても良いアイテムだそうです。
玄関に置けば、玄関より入ってくる邪気を跳ね返すそうです。特に全身映せる鏡が良いそうです。
(私の憧れの美弥子さんは知ってか知らずか、風水の恩恵をたっぷり受けられていられるみたいですね)
小説を読んでいる途中だったかな、月の青い光を浴びた全裸の女性が自分自身を映している鏡を見入っているシチュエーション絵画的に想像できました。油絵でも書けそうな感じでいい場面でした。
(やっぱエロおやじだな・・オレって・・)