2008.9.17(水)
やがて、一糸纏わぬ女教師がガラスの中にいた。
ガラスの中の裸体は、校庭ではしゃぎ回っている生徒たちよりも、更に幼なく見えた。
体重が四十キロを超えたことは、一度も無かった。
女教師は、ずっとこの身体にコンプレックスを抱いて来た。
思春期を迎え、同級生たちが急速に輪郭を変えていく中で、自分の身体だけが変わらなかった。
もしこの身体で性欲も起きなかったら、ずっと少女のままでいられたかも知れない。
しかし、神は残酷だった。
この身体に、人並み以上の性欲を芽吹かせたのだから。
だがその性欲は、女教師を異性との性行為には走らせなかった。
こんな身体を、男の前に曝す気にはなれなかったからだ。
自慰の習慣は、中学生の頃から始まった。
まさしく、自分で慰めるしかなかった。
高校に進学すると、周りからは初体験の話も聞こえて来るようになった。
円やかな輪郭を完成させた女生徒たちが、誇らかに雌の匂いを振り撒いていた。
そんな同級生たちの中で、女教師はひとり、小学生に間違われるような体形のままだったのだ。
大学に入っても、体形に変化は現れなかった。
大学は女子大を選んだ。
男の目から、他の女と自分を比べられたくなかったのだ。
就職先に女子高を選んだのも、同じ理由からだった。
しかし、二十代も半ばに差し掛かるころから、新たなコンプレックスが生じてきた。
それはもちろん、自らに性交の体験が無いということだった。
すなわち「処女」という事実が、新たに女教師を苛み始めたのだ。
この新たなコンプレックスは、やがて、自分の身体に対するそれよりも大きくなっていった。
二十五歳の冬。
忘年会の夜だった。
勤め先である女子高の教師は、ほとんどが女性だった。
その忘年会である。
二次会に誘われたが断った。
普段学校で生真面目な顔を崩さない同僚たちが、まったく別の顔を見せていた。
華やかに女を香らせていた。
これからホストクラブへ行くグループもあるようだった。
女教師は、一人別れて駅に向かった。
繁華街を抜けるアーケードの中だった。
そこで、男に声を掛けられたのだ。
初めての経験だった。
男は、父親と同じくらいの歳に見えた。
やはり忘年会帰りらしく、赤い顔をしていた。
薄い額に、髪の毛が数本貼りついていた。
ガラスの中の裸体は、校庭ではしゃぎ回っている生徒たちよりも、更に幼なく見えた。
体重が四十キロを超えたことは、一度も無かった。
女教師は、ずっとこの身体にコンプレックスを抱いて来た。
思春期を迎え、同級生たちが急速に輪郭を変えていく中で、自分の身体だけが変わらなかった。
もしこの身体で性欲も起きなかったら、ずっと少女のままでいられたかも知れない。
しかし、神は残酷だった。
この身体に、人並み以上の性欲を芽吹かせたのだから。
だがその性欲は、女教師を異性との性行為には走らせなかった。
こんな身体を、男の前に曝す気にはなれなかったからだ。
自慰の習慣は、中学生の頃から始まった。
まさしく、自分で慰めるしかなかった。
高校に進学すると、周りからは初体験の話も聞こえて来るようになった。
円やかな輪郭を完成させた女生徒たちが、誇らかに雌の匂いを振り撒いていた。
そんな同級生たちの中で、女教師はひとり、小学生に間違われるような体形のままだったのだ。
大学に入っても、体形に変化は現れなかった。
大学は女子大を選んだ。
男の目から、他の女と自分を比べられたくなかったのだ。
就職先に女子高を選んだのも、同じ理由からだった。
しかし、二十代も半ばに差し掛かるころから、新たなコンプレックスが生じてきた。
それはもちろん、自らに性交の体験が無いということだった。
すなわち「処女」という事実が、新たに女教師を苛み始めたのだ。
この新たなコンプレックスは、やがて、自分の身体に対するそれよりも大きくなっていった。
二十五歳の冬。
忘年会の夜だった。
勤め先である女子高の教師は、ほとんどが女性だった。
その忘年会である。
二次会に誘われたが断った。
普段学校で生真面目な顔を崩さない同僚たちが、まったく別の顔を見せていた。
華やかに女を香らせていた。
これからホストクラブへ行くグループもあるようだった。
女教師は、一人別れて駅に向かった。
繁華街を抜けるアーケードの中だった。
そこで、男に声を掛けられたのだ。
初めての経験だった。
男は、父親と同じくらいの歳に見えた。
やはり忘年会帰りらしく、赤い顔をしていた。
薄い額に、髪の毛が数本貼りついていた。